アトリビューション特別対談:Fringe81代表田中弦×アタラCOO有園雄一(4/4)

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第4部/全4部(2011年7月29日公開分)

クリックした人はいつ買うの

有園:私も大手アパレルや大型ネット書店を担当したことがありますが、大手アパレルなどは3000円以上が送料無料になったりすることも理由だと思いますが、その場で1000円のものを3つ買ったりしてすぐに成約をするケースがけっこう多いんですね。ただ、たとえば、PCの購入になると検討期間は延びますよね。お客さんの検討期間と単価によって、コンバージョン率や数がかわってきますよね。

田中:そうですね。

有園:インターネット広告で効果が出やすいところで、1〜2ヶ月の検討期間がある場合は、アトビューションで効果を感じやすいはずですね。

田中:コンシューマーパッケージでも直接コンバージョンの何倍かは間接のコンバージョンがでるので両方足しておいて判断した方がいいですよね。その中でも、より購買までの期間が長いものは絶対やった方がいいですね。

有園:リスティング広告でやっていてもすぐに買わないものがあります。たとえば、海外旅行とか。比較検討するもの。このようなクリックしてもすぐ買わないものは、間接コンバージョンがけっこう発生します。このような商品は、アトリビューションでもっと間接コンバージョンを測定できるといいですね。

田中:やってみないとわかりませんから。まずはやってみてもらいたいですね。きっとびっくりするはずです。

有園:そうですね。

田中:加えて、ビュースルーサーチクエリを見るだけで、このバナーは外していたんだ、当たっていたんだということがちゃんとわかります。そして、サーチで刈り取ってくれていたんだということもよくわかります。

有園:「ビュースルーサーチクエリ」という言葉は田中さんの言葉ですか?

田中:うちで使っている言葉ですが、厳密に言うと「ビュースルーサーチキーワード」です。

有園:バナーがサーチを誘発したというケースのことですね。この効果がバナーにあるので、きちんと見ましょうと言うことですね。

田中:はい。

有園:ちょっと話が脱線しますが、TVCMを見て検索するんじゃないかと思ってTVCMに検索ボックスが入りました。あれと発想は一緒ですよね。リスティング広告以外の媒体を見て検索をしているので、きちんと測定しましょうと言うことですね。

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純広告に価値はあるか

有園:そろそろ時間がなくなってきたので、最後に、1年くらい先の業界がどうなっているか、その辺の考えをきかせてください。どのような予測や期待がありますか?

田中:純広告の価値がやっぱりすごくあったんだ。という仮説を実証したいですね。純広告やアドネットワークからもっと効果が出ている、売れているということを示したいですね。

有園:私はサーチに対しての過剰投資をしているお客様に会うことがあるんです。たとえば、10万キーワードを入れていて、CPAが1000円の目標。この場合、全体のキーワードでの平均値がこのCPA1000円という数値に落ちつていればいいと言われますが、当然、その中には無駄なキーワードもあります。

田中:ありそうですね。

有園:その無駄を削り、バナー広告にふったほうがいいというロジックがアトリビューションから導き出せそうなので、それをスライドさせることをまずは実現することから手をつけたいですね。名前を出してもいいような成功事例がでると、ライバル会社もやりたがると思います。そうなると、他も追随するので、アドネットワーク、第三者配信、純広告など、お金の流れが変わるでしょうね。

リスティング広告の過剰投資を防ぐ

田中:今リスティングの市場は2000億円ありますが、このうちどの程度が過剰投資なんでしょう?

有園:どのくらいかわかりませんが、いまコンサルティングしているお客様を見ていると1/4くらいは流れても良さそうですね。

田中:25%はすごいなぁ。

有園:ただ、スライドする先がGoogleのリマーケティングだったりするんですよ。そうなるとサーチは減るけど、全体のGoogleの売り上げは上がりそうですね。

田中:でも、リマーケだと母数は稼げないから予算は消化できないですよね。そうなるとさらに伸ばそう、となるとユーザー属性で買えるDSPや純広告に流れそうですが。

有園:リマーケやリターゲティングの数が足らないとバナーへの投資につながるかもしれませんね。

田中:かりに20%流れても400億円ですからね。それは市場が大きく変化する規模感ですね。

有園:そのくらい流れる可能性があるように感じています。別にリスティングからスライドさせることがゴールではなく、バナーで効果が出そうな企業は流れる可能性があるかなと。

田中:はい。

有園:ただ、バナーがききますよって事がわかっていれば、スライドではなくてもいいと思うんです。全体の広告予算が1%増と微増で、特にリスティング広告が伸びているのがここ数年の日本の状況だと思いますが、バナー広告も成長しつつリスティング広告も微増していくというのもあり得ますよね。

田中:確か直近でアメリカでは、リスティング広告の市場伸び率をディスプレイ広告の伸び率が抜いたんですよね。そういうことが日本でも起きて、全体が伸びて、広告の改善をすることになるわけですから広告主にとってはいいですね。

有園:そうなると理想論ですが、広告主も、媒体も、代理店もみんなハッピーな形になりますね。

田中:そうですね。

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アトリビューションを日本に広めるために

有園:いままで見えていなかったバナー広告の効果を見える化することによって、リターンを示すことができ、そこにアトリビューションが少なからずお役に立てます、と。今年はその土台作りになりそうです。

田中:投資とリターンの関係で、一つ一つのチャネルだけで測定していると一生バナーはだめだと言われかねません。でも、この投資リターンの関係がこの1年で見えるようになると思うので、がらっとインターネット広告からの集客が変わりますね。でもどうしてアメリカではあれだけディスプレイ広告が伸びているのに日本では伸びないんですかね?

有園:どこかにティッピングポイントがあって田中さんが火付け役になるんじゃないですかね?(笑)

田中:僕はワーワーやりますよ(笑)こういうのってアジテートしないとだめですよね。誰かが声を上げないと、変わりませんからね。輸入してきたものだけで全て決まるのっておもしろくないですからね。

有園:アトリビューションの考え方はアメリカからはじまったと思いますが、確立しているわけではないですからね。だからこそ、日本独自で、日本にあったものを普及させていきたいですね。

田中:そうですね。

有園:いずれにしても、第三者配信でビュースルーを見ていくという考えを広げ、価値を伝えていくことで、普及の年にしたいですね。

田中:お客さんの反応を聞くと、びっくり玉手箱だと思う人が多いですね。パンドラの箱だと思って開けたら、宝物が入っていた。そういう印象を持つ人が多いです。

有園:そうですか。

田中:あとはDSPですね。あとは、エクスチェンジ。第三者配信。この3つが日本では同時にバンと立ち上がっているのでおもしろいです。アメリカだと、第三者配信が最初に出てきて、そのあとDSP、エクスチェンジという市場進化の順番ですからね。日本のインターネット広告産業が、がらっと変わるかもしれません。

有園:がらっと変わる気配を感じますね。インターネット広告は2000年くらいから成長を加速して日本でも安定した市場になりましたけど、最近はちょっとリスティング広告など頭打ちなところもあります。このDSP、第三者配信などのテクノロジーで効果が出るようになると次のブレイクスルーがきそうですね。

人間にしかできないこと

田中:そうなると次は人間の力が試されると思います。クリエイティブ・・・たとえばこういうキーワードを誘発しそうなものは何か。機械が絶対にできないことですよね。

有園:できませんね。

田中:そのとき人間の力が試されることになりそうですね。今はテクノロジー偏重で左脳の年ですが、来年は普及すると右脳の年になりそうですね。

有園:最後は徹底的に自動化するとか、枠を最適化するとか、ある程度できることが完了すると、あとはクリエイティブ勝負ですね。そして、データを見てプランニングをするとか。

田中:その左脳と右脳の両方の力を持っているプレイヤーが勝つ時代になりますね。今だとディスプレイ広告の左脳・右脳、サーチの左脳・右脳の人がいますが・・・。今はサーチはほとんど左脳で、左脳8割、右脳2割みたいなところがありますよね。

有園:広告文をきちんと書くと効果が上がったりするんですけど・・・。

田中:そうですね。その力を融合するといいですね。このときって左脳に右脳を融合するとうまくいきますよね。

有園:田中さんって、Yahoo!で働いていたときはバナー広告の制作もやっていたんですよね?そのときの田中さんは左脳だったんですか?

田中:僕はYahoo!のときはどんなバナーを作ろうか考えていたので完全右脳でしたよ。キャリア的にはコンサルタントやっていたこともあるので、左脳にもいきましたが、本当は右脳なんですよ。テクノロジーは大事だけど右脳のクリエイティブを忘れちゃいけないといいますが、左脳がちゃんと整備されていないと、右脳も働きませんよ。両方大事ですからね。

有園:広告とかマーケティングはアートかサイエンスかとよくいわれますが、それと同じですね。

田中:日本の広告市場は左脳と右脳の融合を今年一年でやらないといけないんですね。

有園:右脳は遅れてもいいんですよね?

田中:まず、左脳は今すぐやらないといけませんね。アメリカはプレイヤーがいっぱいいるのでカオスって言われているんです。日本は、同時発生で動いているので、違う種類のカオスだと思います。でも、カオスの中でのチャレンジから新しい産業が生まれてくると信じてます。楽しいじゃないですかカオス。

有園:これがこの1年間くらいの動きですかね。10年だったらどうでしょう?

田中:もうわかりませんね。こればっかりは。。。

インターネット広告の未来

有園:そうやってバナーの価値が再評価されていくと、近い将来、TVCMの出稿金額をインターネットが超える可能性はありますよね?

田中:イギリスはそうなっているって言いますよね。イギリスまでいくとちょっと極端ですが、インターネット広告市場がまだまだ伸びる余地があるなぁって思います。このまだまだ余地があるというところが面白いですね。

有園:そうですね。そのような状況に日本市場も近づいていくのかもしれません。アドネットワークの普及とエクスチェンジなどで在庫が効率的に売れるようになり、オーディエンスターゲティングのようなアドテクノロジー進化によって広告主の満足度も高まっていく。そのような相乗効果の中で、まだまだ成長していく予感がしますね。

田中:そうですね。

有園:ところで、ちょうど、7月24日でテレビのデジタル化、アナログ停波を迎えますが、テレビやラジオのデジタル化によって、このようなインターネットでおこっているアドテクノロジーの波は、いわゆるマス広告にも影響を与えていくのではないかと感じています。それは、5年、10年先もかもしれませんが、広告業界をアドテクノロジーが大きく変えていくことだけは間違いないでしょうね。

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聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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(END)

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田中さん、熱いトークをありがとうございました!まさに革命前夜のインターネット広告業界。共にがんばりましょう!

第1部(2011年7月26日公開予定)
第2部(2011年7月27日公開予定)
第3部(2011年7月28日公開予定)
第4部(2011年7月29日公開予定)

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