アトリビューション分析は認知や態度変容も対象にしているのか?

初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)について紹介し、その後、いくつかの質問があったと前回の投稿(http://www.attribution.jp/000072.html)でも書いたが、一つ気になる質問があるので回答しておきたい。

今回の質問は「アタラ・メソッドでは結局、広告の価値をコンバージョン効果でしかみていないのですか? 認知や態度変容については計測していないのですか?」というものだ。まず、この質問に回答し、その後、さらに論を進めて、認知や態度変容についてアトリビューション分析でどのように数値化しているかについて解説していきたい。

計測はしていないが、考慮はしている
「認知や態度変容を計測していないのですか?」と問われれば、もちろん、「計測はしてはいない」という回答になる。では、もし「認知や態度変容について考慮していないのですか?」と問われれば、答えは「考慮はしている」である。

これは、どういうことだろうか。認知や態度変容について測ってはないが考慮はしているとはどういうことなのか? 認知や態度変容について計測する場合に多くみられる手法は、アンケート調査を実施することだ。特定のブランドやキャンペーンについての純粋想起や助成想起などを調べる。あるいは、特定のブランドに対する好意度や購買意向などを調査し、認知の変化や態度への影響を測定するのである。このような従来のアンケート調査などでの計測は、アタラでは通常、実施してはいない。ただし、アトリビューション分析では、認知や態度変容について考慮していないのかというと、そうではないのだ。これは、アタラ・メソッドに限った話ではなく、米国などでアトリビューション分析が紹介される場合にも同様だと考えていい。

各流入元には役割がある
アトリビューション分析では、コンバージョンに至るまでの流入経路のデータを測定し、各流入元のコンバージョンへの貢献度を算出する。どのようなアトリビューション・モデルを使った場合でも、この基本的な考え方は同じだといっていい。

たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C → コンバージョン という流入経路があったとしよう。このような経路の説明として、アタラでは、初回 → 中間 → ラスト → コンバージョン と呼び換えている。同様に、米国の資料などでは、First Engagement → Middle Engagement → Last Engagement → Conversion あるいは、Introducer → Influencer → Closer → Conversion などと言い換えているケースも多い。Engagement をあえて翻訳すれば、「顧客との関係構築」という意味になる。つまり、最初の顧客との関係構築 → 中間の関係構築 → ラストの関係構築 と展開していくことを示す。Introducer は「顧客に紹介した流入元」という意味だろう。Influencerは「顧客に影響を与えた流入元」、Closerは「顧客との取引を締結させた流入元」といった感じだろうか。

流入経路の各流入元をこのように言い換えているのはなぜだろうか? それは、各流入元が顧客との関係性において何らかの役割を担っているという考え方が根底にあるからだ。

たとえば、初回の流入元を First Engagement や Introducer と言い換えているのはなぜか。それは、初回の流入元が顧客との最初の接点であり、顧客に対して商品やサービスを最初に紹介するという役割を担っていると考えているからだ。最初に紹介するということは、顧客の側からみると、その商品やサービスを初めて「認知(Awareness)」した瞬間であると言える。

同様に、Middle Engagement や Influencer というのも、顧客に何らかの影響を与え、コンバージョンする可能性を高めてくれる役割だと考えていることになる。つまり、コンバージョンする可能性を高めたということは、コンバージョン意向を、あるいは、購買意向を高めてくれる役割を担っているということだ。これは、まさしく、「態度変容(Attitude Change)」にあたる。

Last Engagement や Closer とは、コンバージョンに至る顧客との最後の接点で、顧客に最終決定を促す役割を担っていると考えていることになる。顧客にコンバージョンという「行動(Action)」をさせた役割を担ったことになるのだ。

購買プロセスの中で認知や態度変容を考えている
アトリビューションで分析する流入経路は、このように顧客との関係構築やその変遷を前提としている。いわゆる、購買プロセスや購買サイクル、すなわち、消費者の意思決定プロセスを前提にして、初回の流入元が「認知」、中間の流入元が「態度変容」、ラストの流入元が「行動」という役割を担っていることを仮定しているといってよい。そのため、この初回〜中間〜ラストの各流入元に貢献度を配分するという手法は、認知や態度変容も考慮して貢献度を割り振っているということになるのだ。

そもそも、アトリビューション分析のはじまりは、「認知や態度変容に影響を与えているはずの初回や中間の顧客接点を考慮しないのはおかしいではないか!」という叫びにも似た訴えではなかったのか。ラストの顧客接点だけを対象にした従来のラストクリックCPAが、コンバージョン効果だけしかみていないと問題視され、その代替的アプローチとして勃興してきたのがアトリビューション分析なのだ。アトリビューション分析はその起源において、認知や態度変容を分析対象にしているのは明らかである。

コンバージョンに至らなかったものも何らかの効果があるはずだ
このようにアトリビューション分析は、認知や態度変容も考慮している。しかし、コンバージョンに至った流入経路だけを分析対象にしているのであれば、まだ不十分だと言える。コンバージョンには至らなかったとしても、認知させたり、態度変容を促したりしている可能性はある。だから、広告の効果としては、コンバージョンに至った流入経路とコンバージョンに至らなかった流入経路の両方を分析した方がよいのである。

実際によくあることだが、広告は非常に効果的に展開されていて、多数の流入をサイトにもたらしている。それにもかかわらず、サイトのユーザービリティが悪く、コンバージョン数が非常に少ないということがある。この場合に、その原因を広告に求めることは不当であろう。同様に、商品やサービスが魅力的ではないために、せっかくサイトに流入してきた消費者を逃してしまうこともある。ブランド力がないために消費者の信用を得られず、コンバージョンに至らないケースもあるだろう。一般的に、サイトのユーザービリティ、商品・サービスの競争力、そして、ブランドの競争力がコンバージョンに与える影響は大きい。これらの競争力が低いクライアントの場合は、広告出稿を効果的に展開したとしても、コンバージョン数をあまり稼げないという結果に陥りがちだ。このようなケースでは、コンバージョン数が少なかったとしても、広告が悪かったからだとはいえないであろう。

アトリビューション分析では、コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にできる。使用するデータは、流入経路で得られる範囲に限定されはするものの、コンバージョン効果だけではなく、認知や態度変容も考慮して評価できるようになる。つまり、コンバージョンには至らなくても、その流入経路の中に出現する各流入元には何らかの効果があったはずだと考え、そこを分析対象とするのである。ただし、認知や態度変容をアンケート調査などで測るのとは別である。あくまでも、考慮して評価するということになる。たとえば、認知率が何パーセントあるか、クライアントのブランドイメージがどのように変化したか、などを流入経路のデータ分析で把握するのは難しい。そのようなことを把握したい場合、現時点では、アンケート調査などの手法を使った方がよいであろう。

コンバージョンに至らなかった流入経路の分析方法
さて、コンバージョンに至らなかった流入経路を分析対象にする場合、実際にはどのようにして分析をすればよいのだろうか。コンバージョンに至らなかった流入経路とは、たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C で終わっていてコンバージョンは発生していないものである。

アタラでは、コンバージョンを発生させなかった流入経路の分析をする際には、まず、すべての流入経路(コンバージョンに至ったものと至らなかったものすべて)を履歴数ごとにグルーピングすることから始めている。履歴数とは、この流入経路の中に出現する流入元の数のことだ。流入元A → 流入元B → 流入元C の場合は履歴数が3回となる。グルーピングでは、履歴数が1回のグループ、履歴数が2回のグループ、履歴数が3回のグループ、履歴数が4回のグループ、…… と分けていく。測定ツールの設定などによって、取得できる履歴数の上限が決まっている場合は、その上限までグルーピングしていく。グルーピングしたあとに、グループでのユニークユーザー数を分母にコンバージョン数を分子にして、コンバージョンレート(CVR)を算出する。これを各グループでそれぞれ算出していくと、履歴数1回グループのCVR、履歴数2回グループのCVR、履歴数3回グループのCVR、履歴数4回グループのCVR、…… と算出できる。このようにグルーピングしてCVRを算出した場合、どの履歴数のグループがもっとも高いCVRになるのかをみていくのである。

いくつかのクライアントのデータを分析して分かったのだが、クライアントや分析時期によって差はあるが、だいたい履歴数5回ぐらいまではCVRが徐々に上昇していき、そこをピークとして、その後はCVRが低減していく現象がある。つまり、1回、2回、3回と履歴数が増えるにつれて顧客育成が起こり、消費者がコンバージョンしやすい状態に変わっている。態度変容が起こっているといってもよいだろう。そして、5回前後を境にして効果が飽和し、CVRが下がり始めると考えられる。このようなCVRの変化は、コンバージョンのしやすさが変わっているからだと判断できる。1回よりも2回、2回よりも3回の方がコンバージョンしやすくなっているからこそ、CVRが上がっていくのだ。

38-3-1.jpg

コンバージョン性向を高めるために
アタラでは、このコンバージョンのしやすさを表すために「コンバージョン性向(Propensity to Convert)」という用語を使っている。経済学を学んだ人なら馴染みがあるかもしれないが、消費性向(Propensity to Consume)という言葉があり、可処分所得のうちで消費支出にあてられる額が占める率のことを指す。この消費性向は消費意欲を示す指標として使われている。消費性向が高いほど、消費意欲が高いことになる。たとえば、「アメリカは日本よりも消費性向が高い」などと使われる。この消費性向とのアナロジーで、「コンバージョン性向」という用語を使っている。そもそもコンバージョンとは消費という大きな概念の一形態であるため、このアナロジーも分かりやすいだろう。「コンバージョン性向」が高いほど、コンバージョン意欲が高い、つまり、コンバージョンしやすいことを示す。この用語は、アタラの造語ではない。欧米のウェブマーケティングの資料の中でも使われているので言葉としての新しさはないが、アタラにおいては、この「コンバージョン性向」を確率として捉えて、アトリビューション分析に導入している。

初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)の基本的な考え方について紹介した。その中で、アトリビューション・スコアやアトリビューションCPAを用いてアトリビューション分析をおこない、シミュレーションを実施していることを書いた。このシミュレーションは、実際に得られたデータを分析し、その結果に基づいて予算配分やクリエイティブなどを変更したり、組み合せを変えたりして効果を高めること目的としている。予算配分の組み合せを変えることによって、より多くのコンバージョンを発生させられないかを模索する。あるいは、より多くのコンバージョンを発生させられる状況を作ったり、よりコンバージョンしやすい状態にしたりする方法を探していると言ってもよい。要するに、シミュレーションでは「コンバージョン性向」を高めようとしているのだ。コンバージョンする確率が高くなるように操作しようとしているのである。

コンバージョン性向として数値をはじきだす
履歴数グループごとにCVRが変化するという事実は、それぞれのグループごとにコンバージョンする確率が変化していることを示す。「コンバージョン性向」が変化するといってもよい。そして、すでに発生した過去の事象が分かっていれば、それに基づいてコンバージョンする確率を推定できると考えてよい。たとえば、履歴数1回グループのCVRが1%、履歴数2回グループのCVRが2%と過去のデータが示していれば、今後も大きく外的状況が変わらない限り同様のCVRになると推定できる。このような推論を展開していくと、コンバージョンが発生しなかった流入経路についても、どのくらいの確率でコンバージョンが発生するのか予測できるのだ。

履歴数1回グループにコンバージョンに至らなかった200個の流入経路があったとしよう。つまり、クライアントのサイトに1回訪問したが、コンバージョンせずに離脱したのが200あったとする。このうちの50%が2回目の訪問をするとする。この履歴数1回グループのうちで履歴数2回グループに推移する率も過去のデータを分析すれば分かることである。この200個のうちの50%が履歴数2回グループに推移すると、履歴数2回グループが200個の50%分だけ増加するので、100個増える。先述のように履歴数2回グループのCVRは過去のデータで2%になっているならば、履歴数2回グループの増加分100個の2%で、2個のコンバージョンを発生する確率になる。

このように過去のCVRに依拠してコンバージョンが発生する確率を計算していくと、すべての流入経路に対して「コンバージョン性向」を算出することが可能になるのだ。

39-3-2.jpg

ここからは、また、アトリビューション・スコアの話に戻る。つまり、コンバージョンが発生しなかった流入経路については、確率を使うことによってアトリビューション・スコアを割り振っていくのだ。「何個のコンバージョンを発生させる確率がありますよ」ということが分かるので、その確率で捉えたコンバージョン数をアトリビューション・スコアとして流入元に割り振っていくのである。その結果、実際にはコンバージョンに至らなかった流入経路も、どのくらいコンバージョンしやすい状態になっていたかを数字で示すことができる。そして、そのどのくらいコンバージョンしやすいか、つまりは、「コンバージョン性向」をさらに高めるためには、どのように予算配分やクリエイティブなどを変更すればよいかをシミュレーションできるようになる。シミュレーションを通じて、次なる施策をよりよいものにしていけるようになるのだ。

従来の手法とあわせて使っていく
今回は、広告の効果として、購買プロセスを前提に解説した。しかし、広告の効果や広告の役割については、さまざまな議論や指標があり、短絡的に論じることは危険であることも承知している。あくまでも、アトリビューションという視点で、流入経路から取得できるデータに限定して、分析をおこなう際の考え方や手法に絞って解説している。当然のことであるが、アトリビューション分析にプラスして、これまでのアンケート調査などによる認知や態度変容の把握は引き続き重要だ。アタラとしても、予算的に余裕のある広告主に対しては、従来の手法での認知や態度変容の把握も勧めている。理想を言えば、アトリビューション分析と従来の手法をあわせて、広告の認知や態度変容への影響を測定し、広告プランニングに活用していきたいものである。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

6-atori.jpg
【アトリくんの視点】
コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にすることが、アタラの場合は一つのポイントになっています。また、初期の頃から、従来の手法での認知や態度変容の把握も並行して行うことを勧めています。

コメント