アトリビューションでより効率的に需要を喚起できるのはなぜか?(1/2)

アトリビューション分析だけではダメ、アトリビューションマネージメントが必要
先日、あるクライアントにアトリビューション分析の基本についてプレゼンテーションをした際に、「貢献度を分析してもコンバージョンが増えないと意味ないよね」というコメントをいただいた。もっともなご意見だ。
せっかくコンバージョンパスデータを取得してアトリビューション分析をしても、それだけではあまり意味がない。アトリビューション分析の結果に基づいて、クリエイティブを変更したり、フリークエンシーをコントロールしたり、出稿枠を変更したり、出稿媒体を変えたりしなければならない。あるいは、媒体ごとの予算配分を変更したりして、より効率的に需要を喚起させることによってコンバージョンが増加するようにマネージメントしていかなければ意味がない。つまり、アトリビューション”分析”だけで終わってはダメ。アトリビューション”マネージメント”までおこうことが大事なのだ。

このクライアントの場合は、同じ商材のマーケティング施策をおこなう際、純広告などのバナー広告を担当する宣伝部とSEMなどを担当する販促部が別部隊になっていて、予算も別々に管理している。そのためアトリビューション分析をやったとしても、アトリビューションマネージメントをするには部署間の調整が必要になり、すぐにはできそうにないのだ。そのように組織的な課題が背景にあり、先のコメントにつながった訳だ。アトリビューション分析はしたいけれど、アトリビューションマネージメントができるかな。できないと意味ないよね、と。

では、アトリビューションマネージメントまでできればコンバージョンは増加するのか? 必ず増えるという保証はない。しかし、いくつかのクライアントをコンサルティングした経験からいえば、コンバージョンが増えるのは事実である。それはなぜか? ここには明確な理由がある。アトリビューション分析をすることで、これまで隠れていたものが見える化し、その結果、より効率的に需要を喚起できる方法が見つかるからだ。

今回は、アトリビューション分析とアトリビューションマネージメントを連動させることによってより効率的に需要を喚起し、その結果、コンバージョンの増加につながる理由について解説していく。

確認事項1:前提条件
解説に入る前に、確認事項がある。それは、ここでコンバージョンが増えるという場合は、広告出稿金額は一定で、かつ、クライアントサイトのコンバージョンレート(CVR)もほぼ一定という条件下での話だということだ。
出稿金額を増やしてコンバージョンを増やすという話ではないし、クライアントサイトのリニューアルなどをしてCVRが上がった結果、コンバージョンが増えるという話でもない。もちろん、季節変動やイベントなどの影響でCVRが上昇するという話でもない。

確認事項2:アトリビューション即コンバージョン増ではない
もうひとつ確認したい。アトリビューション分析やアトリビューションマネージメントで即コンバージョンが増える訳ではない。そうではなくて、より効率的に需要を喚起できるようになり、その結果として、コンバージョンが増加する可能性が高まるのである。
前回の投稿(http://www.attribution.jp/000079.html)ではコンバージョン性向(Propensity to Convert)という概念を紹介したが、これも同じ理由からだ。コンバージョンそのものは、広告以外の要因でも大きく変動するため、コンバージョンの増減を直接的に広告の効果と判断するのはリスクがある。広告はコンバージョンを生み出す構成要素のひとつに過ぎない。
さらに言えば、広告だけでコンバージョンを増やせると信じてはいけない。どんなに広告が良くても、商品やサービスが魅力的でなければコンバージョンしないことはよくある。そのため、より厳密に書けば、アトリビューション分析とアトリビューションマネージメントによって、より効率的に需要を喚起できるようになる。その結果として、コンバージョン性向を効率的に上げることができるのである。

本筋から離れるが、ここには私なりにこだわりがある。ある意味、需要がなければコンバージョンは増やせない。もし、広告でコンバージョンを増やせるとすれば、需要を喚起できてコンバージョン性向が高まるからだと考えている。

リスティング広告はコンバージョンを”創出”するか
オーバーチュアやグーグルに在籍していた頃、リスティング広告の営業に携わっていた。その経験を通じて、「リスティング広告はコンバージョンを”創出”するか」と考えるようになった。
とくに、最大手のアパレルメーカーを約2年間、アカウントマネジャーとして担当していたのだが、そのときの経験が与えた影響は大きい。当時、リスティング広告はコンバージョン効果が高いと言われていたし、自分もそう考えていた。あたかも、リスティング広告がコンバージョンを”創出”しているような錯覚に陥っていたのだ。
だが、このクライアントのアカウントマネージメントを通じて、そのような考え方は必ずしも正しくないと思うようになった。それには、ある”事件”があったのだ。

このクライアントの場合、最適化をやり尽くし、目標CPAを達成した後は安定的に運用できていた。顧客満足度も上がっているのは明らかだった。
しかし、人間とは欲深いものだ。効果がよくても、さらに上を目指したくなる。そして、クライアントは「もっとコンバージョンを増やせないか」と求めてきた。目標のCPA以下で運用できれば、青天井で出稿金額を使ってよいことになっていたので、もちろん青天井で予算を増やしたが、もはや消化できない。こちらの回答としては「目標CPAの上限を緩くしないとできません」としか言えなかった。
最適化をほとんどやり尽くした後は、リスティング広告の改善施策によってCTRが急に上がることはないし、CVRが伸びる訳でもない。リスティング広告でできることは限界まできていた。正直に言えば他力本願な話になるかもしれないが、「クライアントのサイトをリニューアルして、もっとCVRが上がるようにして欲しい」というのが本音だった。
ちょうどその頃、ある”事件”が起こった。それは何か? 劇的にCVRが上がったのだ。ある特定の日に約2倍のCVRをたたき出した。他の条件が同じであれば、コンバージョン数も約2倍になることになる。ある特定の日とは、1月1日、初売りキャンペーンの日だった。

おそらく、冬物のジャケットが欲しいとかコートが欲しいとか、潜在的な需要はあったはずだ。新聞の折り込みチラシなどで初売りキャンペーンが認知され、一気に需要が喚起されて1月1日にサイトに殺到したのだろう。いや、正確に言えば、殺到したという表現は少し違うかもしれない。年末年始の検索ボリュームは落ちるので、アクセスが殺到したというほどではない。そうではなくて、購買意向の高いユーザーが集中し、CVRが高くなったというのが正しかった。つまり、初売りキャンペーンという仕掛けによって、需要が喚起された購買意向の高いユーザーが数多くアクセスしてきたのだ。そして、コンバージョンは約2倍になった。リスティング広告的には、とくに何もしていないにもかかわらずだ。

ショックだった。自分は何もしていないのに、コンバージョンがこんなに増えたのだから。もちろん、初売りキャンペーンでコンバージョンは増えるとみていたが、これほど変わるとは想定外だった。
リスティング広告は何なのか? 果たして、コンバージョン効果とは何なのか? 考えが変わった瞬間だ。リスティング広告でコンバージョンを創出していると言えるのか? CPAが見合っているとか、獲得効率が高いとか、そういうことが、コンバージョン効果が高いということになるのだろうか?

生活雑貨や日用品などの業界では「棚をとる」という言葉がある。コンビニやスーパーなどの量販店で、他社より多く自社商品を棚に並べてもらう、あるいは、より目立つ場所の目に付きやすい棚に置いてもらうというような意味だと思う。あるいは、駅近に店舗を出すという立地の話に近いかもしれない。交通量があり人の往来が多い場所に店舗を構えた方が来店者数は増える。
リスティング広告で上位に表示するのはこれに似ている。いい場所に出せば、もちろん、アクセス数は伸びる。しかし、その場所の交通量が上限だ。やり尽くしてしまえば、それ以上は伸びない。

さきほどの、アパレルメーカー最大手のリスティング広告のケースもこれに似ている。レストランでいえば、良い場所に店舗を出してしまったということだ。そして、看板の表現を最適化し、店舗内の動線やレイアウト、メニューなど、回転数を向上するための施策はすべてやり尽くした。
リスティング広告は、ほとんどのキーワードでCVRのよい表示順位に掲載し、広告文もA/Bテストなどで効率化した。アクセス数やCVRの改善など、リスティング広告でできることはやり尽くす。この状態までくると、もはや、そう簡単にはコンバージョン数を増やせない。

需要を喚起しないとならない
それでも、さらに、コンバージョン数を増やそうと思えば、需要を喚起するしかないと気づかされる。もはや、リスティング広告には多くを期待できない。リスティング広告に需要喚起の力がまったくない訳ではないが、多くを期待できるものではない。たとえば、「おいしいレストランらしいよ」というような口コミを広めたり、レストラン自体の認知を拡大したり、魅力を訴求したりして、そのレストランに行ってみたいなと消費者に思わせたいとする。そのような需要を喚起するには、リスティング広告が最適な解とは限らない。コンバージョン数を増やしたければ、需要を喚起しなければならず、それを得意とするのは、インターネット広告ではバナー広告や動画広告などリスティング広告以外の手段だと考えられる。

このように、リスティング広告のコンバージョン効果が高いという考え方は必ずしも正しくないかもしれない。コンバージョン数を増やそうと思えば、まずは需要を喚起しなければ増えないという局面があるからだ。

コンバージョン性向というコンセプトを使う理由
コンバージョン性向(Propensity to Convert)というコンセプトもここから生まれている。おそらく、新聞の折り込みチラシなどで需要を喚起されて、コンバージョンしやすい状態になっている消費者の一群が形成されたのだろう。
その人たちは、当たり前のことだが、1月1日00時00分の初売りキャンペーン開始までは、サイトに訪問してもコンバージョンはしない。つまり、コンバージョンそのものは、広告以外の要因でも大きく変動するため、コンバージョンの増減を直接的に広告の効果と判断するのはリスクがあると書いたとおりだ。
広告に接触し、需要喚起され、コンバージョン性向が高まったとしても、それだけでは、即コンバージョンにはつながらない。1月1日00時00分を時計の針が指すまではコンバージョンしないのだ。
もちろん、こうした時間の制約もひとつの要素に過ぎない。どんなに広告がよくて、キャンペーン開始時刻になっても、商品やサービスが魅力的でなければコンバージョンしないこともあるはずだ。こうした理由から、需要を喚起しコンバージョン性向を高めるという部分を、広告のコンバージョンへの役割として切り出し、論じたり分析したりしたいと考えているのだ。

リスティング広告は「いまそこにある需要」を刈り取るのが得意だ。そうした意味でも、「刈り取り型の広告」であり、一見、「費用対効果が高く見える広告」でもあるというのは腑に落ちる。しかし、リスティング広告は「コンバージョン効果が高い広告」であるかといえば、上述の理由からもそうとは言えない。そうすると、テレビCMやバナー広告などリスティング広告以外の広告については、なおさらコンバージョン効果が高いとは言えないことになる。リスティング広告ですら、即コンバージョンにつながると言えないのだから。
広告のコンバージョンに果たす役割としては、需要を喚起しコンバージョン性向を高めることと考えている。コンバージョン性向の代わりに購買意向といってもいいのだが、コンバージョンは必ずしも購買とは限らない。そのため、コンバージョン性向という言葉が適切なはずだと考えて、この言葉を使っている。

リスティング広告以外の広告がコンバージョンに果たす役割を再認識することが重要
アトリビューションでコンバージョンを増加させることを考える際に、リスティング広告以外の広告がコンバージョンに果たす役割を再確認することは大事である。なぜなら、コンバージョンの手前のラストクリックだけを分析対象にしている訳ではないからだ。
ラストクリックだけを分析対象にしていると、リスティング広告はコンバージョン効果が高く、リスティング広告以外の広告、たとえばバナー広告はコンバージョン効果が低いという錯覚に陥る。しかし、アトリビューションでコンバージョンパスデータを取得し、初回〜中間〜ラストという流入経路を分析対象にすると、リスティング広告はコンバージョン効果が高く、バナー広告はコンバージョン効果が低いとは必ずしもいえないのでは?という思いに至る。
バナー広告の需要を喚起させる力があって初めて、リスティング広告でのコンバージョンにつながっていることが、アトリビューション分析によってみえてくるのだ。需要を喚起しコンバージョン性向を広告で高めることが重要だと分かるのである。

そして、おそらくは、アトリビューションをやり尽くして、それ以上は効率化できないという状況になるだろう。リスティング広告をやり尽くした状況と同じ地平だ。そのとき、広告のコンバージョンへの役割が、さらに抉りだされる。需要喚起が濾過されるのだ。コミュニケーションによって、人をどう動かすのか、需要をどう喚起させるのか、結局は、そのようなことを広告がきちんと担っていないとコンバージョンは増えないと気づかされるのである。
(次回に続く)

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
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【アトリくんの視点】
お久しぶりです、アトリくんです。秋に差し掛かって過ごしやすくなってきました。読み物にも集中しやすくなってきたということで、有園さんのコラム再開です。リスティング広告の運用経験は有園さんにとって大きかったようです。

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