アトリビューションとコミュニケーション・デザイン

コミュニケーション・デザイナーは作曲家であり指揮者である
5〜6年前だろうか。「コミュニケーション・デザイナーってどんな仕事なの?」と総合代理店の知人に訊いてみたことがある。
「たとえて言うなら、作曲家でもあり、指揮者でもあるってところかな」。
こんな答えが返ってきた。

コピーライターやウェブデザイナーたちは、職人気質な演奏者のようなもの。メディアであるそれぞれの楽器を使って、いかに素晴らしい音を奏でるか。それに集中する。職人はそれぞれで完成度の高い作品を作ろうとする。
作曲家は、各楽器の特徴を把握し、緻密に計算して素晴らしい音楽を構成していく。指揮者は、各演奏者の個性まで把握して各楽器の音色を紡ぎ、反物に織り込んでいく。コンサートホールでは、リアルタイムに奏でられた生のオーケストラに、聴衆は感動し拍手喝采する。指揮者は音楽というコミュニケーション手段で聴衆にメッセージを送り、聴衆はそれによって心が動かされるのだ。聴衆は音楽の消費者であり、指揮者は音楽というメッセージの送り手であり生産者でもある。

コミュニケーション・デザイナーとは、メディアやクリエーティブのさまざまな要素を考慮し、緻密に全体を構築していく作曲家である。そして、最終的に広告コミュニケーションを消費者に届ける指揮者でもある。

なるほど。すてきな比喩だな、と素直に感心した。

アトリビューションとコミュニケーション・デザインの共通点
ところで、じつは最近、これと同じようなアナロジーを使っている記事に遭遇した。「Attribution Data Preparation: Like Rehearsing for Opening Night」(http://www.visualiq.com/press-and-events/newsletter-archive-attribution-data-preparation-like-rehearsing-for-opening-night)で、アトリビューションに関する記事だ。

オーケストラでは開演前、各演奏者がチューニングや音を合わせたりするために、各自でバラバラに音を出している時間がある。しばらくして、指揮者が現れタクトを叩く。各楽器は静まる。そして、オーケストラが美しい音楽を奏でるのを耳にする。

開演前のチューニングの時間、バラバラに出している音を聞いている状態は、まるで、各メディアやクリエーティブの効果をそれぞれ別々に測定しているようなものだ。過去のラストクリックベースでの分析手法はこれにあたる。
その一方で、指揮者がタクトを振りオーケストラの美しい音楽を聴いている状態は、クロスチャネル・アトリビューション分析を実施し、各メディアやクリエーティブの相互インパクトも考慮して、シナリオどおりに広告コミュニケーションが実施できているかを分析できている状態だ。
バラバラに音を聞いたのでは、コミュニケーション・デザイナーが設計したコミュニケーション・デザインが功を奏しているか分からない。すべての音をひとつの楽譜の上にならべて、すべてのパートを俯瞰し、すべての音の影響を測定できるように準備する必要がある。それが、アトリビューション分析をすることだ。

アトリビューションもコミュニケーション・デザインも、すべての要素を俯瞰してみる視点を共通して持っているし、細部まで緻密に計算し全体を構成していくスタンスも同じであろう。どちらも、ある意味で”総合芸術”としての広告コミュニケーションの成功を目指しているのだ。

アトリビューションはコミュニケーション・デザインを補完していく
アトリビューションはコミュニケーション・デザインを補完する。フィードバックを提供し、コミュニケーション・デザインは進化していく。もちろん、アトリビューションはまだまだ不完全ではある。すべてのタッチポイントのデータが取得できないからだ。主にインターネットの領域でしか望むデータが取得できない。それでも、アトリビューションはその重要性を増していくだろう。
技術の進歩によって取得できるデータは増え続けている。クリエーティブなコミュニケーション・デザインという仕事をアナリティカルなアトリビューション分析が補完しつつ、”総合芸術”としての広告コミュニケーションがもっともっと素敵なものになっていくといい。

アトリビューション分析をしていると、「クリエーティブAとクリエーティブBの組み合せが効果的だ」というようなことを発見するときがある。「Aを見せてからBを見せるのがよい。その逆ではない」みたいな。今後、そのような分析結果の例も紹介していけたらいい。クライアントの許諾も必要になるので簡単ではないが、トライしていきたいと思う。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
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【アトリくんの視点】
ホリスティックなアプローチがますます必要になっていく中、まさにオーケストラの指揮者のように、それぞれの分野のエキスパートを束ね、全体を俯瞰して見れ、それぞれの役割を判断できることはますます重要ですね。結局は「人」が大きな問題になっていくのは、今後も変わらないですね!

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