アトリビューション特別対談:Adobe, Mikel Chertudi, Scott Harris × アタラ有園雄一

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特別対談です!今回は、初の海外の方との対談です。Adobeはアトリビューション分野においてもソリューションプロバイダーですが、今回のお二人はAdobeの中でアトリビューションを実践している立場の方々です。しかも経験も長いので、多岐に渡るトピックにおいて貴重なお話を伺えました。(英語での対談内容を日本語訳しています)

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【主な内容】
・ アトリビューションの課題は、その複雑性である
・ アメリカの広告主のうち、アトリビューションを導入しているのは何パーセントぐらいか?
・ もっとも高いレベルでアトリビューションを行っている広告主は1%以下
・ アトリビューションをきちんとやらないとマーケターは首になるかもしれない
・ 全体的、統合的なソリューションをオフライン、オンラインに渡って提供できるのは現時点ではMarket Shareという企業だけ
・ 広告弾力性以外に、価格弾力性もみている
・ アメリカのアトリビューションベンダーは日本に進出してくるか?
・ 企業内部の政治情勢が最適な予算配分の障壁になることはないか?
・ 日本の広告主へのアドバイス。まず、始めてみること。

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Adobeに聞くアトリビューションの可能性

有園:今日は非常に特別なセッションです。アメリカから来日中のAdobeのマイケル チャトゥーディ(Mikel Chertudi, Senior Director, Marketing, W.W.Media, Demand, & Enterprise)さんとスコット ハリス(Scott Harris, Director – Demand Marketing)さんのお二方と対談させていただけることになりました。Attribution.jpのために、このような取材が出来ること大嬉しく思います。それではお二人にいろいろとお伺いしていきます。まずは、ご自身の経歴や会社における役割、特にアトリビューションに関する部分のお話をお願いできますか?

マイケル: マイケル チャトゥーディと申します。お会いできて光栄です。デジタルマーケティングの領域で13年近く仕事をしています。13年に渡って、さまざまな役割を担ってきました。デジタルマーケティングに関する役割です。アドサービング、Eメールマーケティング、ディスプレイ、サーチエンジンマーケティング、アフィリエイトなど様々ですが、共通して言えるのは、会社の売り上げ増加のために効率と効果を追求してきたことです。そこで、まさにアトリビューションの話がはまるわけです。アトリビューションのもっともシンプルな形というのは因果関係を分析するということですから、マーケティングの活動のスタートから、最後の利益の部分まで見るということが本質です。今は、シニアディレクターという肩書きでデジタルメディア&デジタルマーケティング全般をみています。つまり、全てのメディア広告を担当しています。有料メディア全てです。例えば、PRメディア、プリント、テレビ、ディスプレイ広告、ウェブサイト、まぁ全部です。これら全てを担当している訳ですが、どれもアトリビューションに注意を払わなければいけない分野ばかりです。それでは、スコットに代わります。

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スコット:スコット ハリスです。デジタルマーケティングの経験は10年くらいです。マーケティングやその他の領域でも仕事をしてきました。アドビでの経験は4年半、マイケルと一緒に仕事をしています。エンタープライズ、企業のビジネスtoビジネスにおいてもアトリビューションは非常に重要です。私たちがやっていること、やろうとしていること、マネージしようとしていることは、マーケッターに対して関連性が高いコンテンツをオンラインで提供するということです。だから、それをやるにあたって、今まさに何が起きているのか、それぞれの領域の中で、ペイドサーチもそう、SEOもそう、データベースマーケティングも含め、全てにおいて細かく現象を理解することが必要です。現象というのは、どこにお金が払われて、どこからビジネスがやってくるのかということです。これは非常に楽しい領域であると思います。デジタルマーケティングのために、デジタルマーケティングの人のために仕事をして、デジタルマーケティングのトラッキングをしているわけですから、非常に興味深い仕事だと思っています。

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アトリビューションの課題

有園:お二人ともこの領域で10年以上仕事をしているわけですね。そのご経験のなかで、どのような課題を感じていますか?広告のキャンペーンやプロモーションにおいて、どのようなご苦労がありますか?特にアトリビューションに関してはいかがでしょうか?

マイケル:そうですね。アトリビューションの課題ということになると思いますが、過去15年に渡って、オンラインマーケティング、デジタル広告というものが進展してきました。今日まで、ソーシャルメディアなどのさまざまなマーケティングチャネルの爆発がおきています。よって複雑性が増しています。暗号を解いて理解することが本当に難しい。一体、どの活動が売り上げを伸ばしているのか、3000年前はロックアートという洞窟の中で壁に何かを書くということがきっと広告だったのでしょうが、現在は非常に複雑で複数の要素があります。繰り返しになりますが、どのマーケティング活動が売り上げに貢献しているのか、その相関関係を結ぶということが本当に大きな課題です。チャネルが増えて、拡大し、爆発していることによって複雑になっています。私たちがマーケティングをしている複数のチャネルもありますし、複数あるというだけでなく、同時に起きているということも非常に大きな課題です。というのも、ひとりの消費者が複数のチャネルに同時アクセスしていますからね。ですから、どれがどの程度貢献したのか、検索連動型広告にしても、どのマーケティング活動が効果を発揮したのかというのが一番難しい質問であり、その答えを模索するのが私たちの仕事です。非常に複雑なんですよ。ビジネスにおいては、マーケティングtoコンシューマー、これはより取引中心のものになってきます。ですから、テレビにせよ、ラジオにせよ、あるいはディスプレイ広告にしろ、電子メール広告マーケティングにせよ、今Scottがまさに言ったとおり、機会が増えれば増えるほど、一人のユニークカスタマーにとっては複数のタッチポイントができてくるということなんですね。ですから、それを分析し、どのチャネルが一番大きな影響力をもったのかということを調べるのは非常に難しいわけです。さらに複雑になることがあります。それはBtoBになった場合です。というのはBtoBになった場合は、フロントエンドにさきほど言ったタッチポイントが全部あります。でも、それだけではないんですね。インフルエンサー、意思決定者がいるんです。そのインフルエンサーの人が4つ、5つ、6つ、あるいは7つの種類の異なるメディアに触れていた可能性があるわけです。でも、そのインフルエンサーも一人ではありません。4人いたとします。その4人のうちのどの人が売り上げを牽引してくれる人なのかということも含め、BtoBにおいてはさらにアトリビューションが複雑になってきます。その複雑性が私たちのいま直面している課題です。

世界中の企業のアトリビューション導入状況

有園:非常に難しそうですね。広告主にとってはアトリビューションをやるといったこと自体が難しそうです。そのような中で、広告主の何パーセントが一体アトリビューションマネジメントをソリューションとして使っているのでしょか?

マイケル:それはとてもいい質問です。状況によります、というのは、その成熟度に違いがあるからです。その成熟度の一番下のレベルはビギナーです。初心者という人がいます。彼らがやっているのは、ウェブアナリティクスのソリューションを使ってはいるのですが、タギング、トラッキングを行なう事によって、それぞれのメディアタクティクスを使っています。サーチ、ディスプレイ、Eメールといったものをやっているのですが、単に相関関係を見ようとしているだけなんです。ラストモデルのアトリビューションはなんなのか、あるいは、リニア(均等配分)モデルのアトリビューションを見ようとしているだけなんです。システムによってはそれさえもできないこともあります。フリープロバイダーの物なんかは正確なトラッキングは出来ないのですね。なので、非常に複雑です。だた、成熟度の上のほうにいきますと、次は、システムはあるんだけれどサイロ(縦割り)化されている。ディスプレイはディスプレイ、EメールはEメールのサービスプロバイダー、サーチはサーチでマネージメントしているということで、それぞれのシステムでそれぞれのトラッキングコード、ウェブサイトはウェブアナリティクスがあるけれども全部分担化されているというサイロ(縦割り)化されたシステムという状況があります。もちろん、初級の方たちはこのシステムを使おうとしているわけですけれども、そのシステムを使うことによってなんと重複カウントがおきるんですね。重複カウントすることによって正確に把握することが出来なくなってしまいます。でも足してしまいますからね。全部足すと、実は20億円売り上げができたと思うかもしれないですが、それは正しくないわけです。さらにもう少し成熟度の上のほうにいきますと、より正しくアトリビューションをしている訳ですが、世界にある全ての企業の1パーセント程度しかそのようなレベルにはありません。厳密には1パーセント以下です。それはもちろんサイロ(縦割り)化されていない、トラッキングシステムはすべて統合されている、そして重複カウントも行なわれていないという状況を示しています。これは、もちろんregression analysis(回帰分析)をやることによってできる訳です。逆に分析していくことによって、それぞれの現象を分離して見ていきます。それができているのは世界中の企業の1パーセント以下です。つまり、いかにお金が無駄に使われているか、そして投資の分配についても、いかに正しくないかということが現れています。

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有園:回帰分析というのは、econometrics、つまり計量経済学的な手法を応用しているということですね?

マイケル:そうです。様々な分析メソッドがあります。

有園:そのレベルでのアトリビューションができている人は1パーセント以下だとおっしゃいましたが、リニアモデル(均等配分モデル)の場合はいかがですか?

アトリビューションの分析モデルについて

マイケル:興味深いですね。私はこの業界でかなり講演をやっていまして、皆さんに聞くんですが、ラストクリックを見ていますか?リニア(均等配分)を見ていますか?それとも何かの加重を使っているんですか?などと聞くと、ほとんどの人がラストクリックモデルを使っていることが分かります。たぶん70パーセントくらいだと思います。そして、リニア(均等配分)、加重は10パーセントくらいで、加重していないものも20パーセントくらいでしょうか。

有園:なぜ、この質問をしたかというと、日本ではアトリビューションが始まったばかりなんです。いろいろな人がようやくアトリビューションを話題にし始めた状況です。ですから、リニアモデル(均等配分モデル)だけでも日本の広告主の中では1パーセントだと思うんです。

マイケル:リニアモデル(均等配分モデル)で1パーセント?ラストクリックではなくて?全部見るってこと?

有園:そうです。基本的に取得できるすべてのタッチポイントを見た場合です。というのも、日本の広告主も第三者配信のアドサーバーを使い始めていますので、ビュースルーとかのデータも利用しているんですよ。

マイケル:日本では、それにEメールも入れているんですか?アフィリエイトはどうですか?トラッキングコードを入れていくんですか?

有園:そういうことをしている人もいます。

マイケル:でも、たいていは一つのチャネルだけ?

有園:私が知る限りでは、ディスプレイ広告の効果を見ようとしている広告主が多いと思います。

マイケル:その効果(ディスプレイ広告の効果)をサーチ(広告)に反映しようとしているんですね。

有園:そうです。

アトリビューションの大問題

マイケル:なぜ、いろいろと質問しかといいますと、これにはストーリーがありまして、私自身にも強い考えがあります。アタラの代表、杉原剛さんにもお話ししていますが、10年ほど前に実は発見をしたんです。アトリビューションには大問題があるぞと。当時、非常に大きなオンラインサブスクリプションシステムをトラッキングの記録用として使っていたんです。それをアドサービングに使って、オンラインアフィリエイトにも使って、サーチにも使っていたんです。それで、その会社は大きなミスを犯しました。同じトラッキングシステムを使っていると思っていたんですが、インスタンスが3種類あったんです。つまり、コンバージョンをダブルカウントではなく、トリプルカウントしていたんです。過剰投資でした。しかも、20~30パーセントの過剰投資です。ほとんどクビになりそうでしたよ、それをやっていた担当者は。ですから、私にとって、これは重要な問題だと。アトリビューションの問題は大問題だなと個人的に思ったわけです。本当に痛い経験でした。忘れることができません。だから、それ以来、私は、いままで務めた会社や仕事をさせていただいたパートナー企業に対してもアトリビューションをやろうとしていますし、カンファレンスにおいてもできる限りアトリビューションの重要性を話すとともに皆さんの状況を学ぼうとしています。学ぶなかでアトリビューションの問題を包括的に統合的に全体的にソリューションとして提供できる企業は本当に少ないことを知りました。

有園:アトリビューションをきちんとやらないと、マーケターは首になるかもしれないということですね。日本の状況で考えると恐ろしいことです。ところで、いまおっしゃった包括的にというのはオンラインとオフラインを含めてということですね。これも実は質問したいことの一つですが、アトリビューションのソリューションプロバイダにはVisual IQやAdometry、C3 Metrics、ClearSaleingといったところがありますけれども、彼らは最近オフラインとオンライのアトリビューションのソリューション、特にeconometrics(計量経済学)を使ったものをローンチしているのですが、それらについてはどのように評価されていますか?

オフラインとオンラインを統合的に見るために

マイケル:そうですね。私は他社製品について評価、コメントする立場にはないのですが、私の知る限りでは、彼らは現時点では最も高いレベルではないといえるのではないでしょうか。というのは、さっき申し上げたような、全体的、統合的なソリューションをオフライン、オンラインに渡って提供できるのは現時点ではMarket Shareという企業だけだと確信できるからです。

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有園:御社(Adobe)はMarket Shareともパートナーなんですよね?

マイケル:そうです。私たちはMarket Shareのパートナーです。

有園:AdobeのSiteCatalyst (サイトカタリスト)とMarket Shareのソリューションが連携しているのでしょうか?

マイケル:はい。私たちは共同でソリューションを作ろうとしています。ウェブソリューションのデータ、そしてサーチ、それからディスプレイ広告、全部をとってMarket Shareに入れて彼らのフィードバックをもらう。それをレポーティング用に使うというシステムを作っています。私たちは、アトリビューションのソリューションを持っていまして、サーチ、ディスプレイ、ソーシャルに対応しています。Efficient Frontier(※)という企業を買収しましたから。このEfficient Frontierという企業は、その3つの領域(サーチ、ディスプレイ、ソーシャルの3つ)に専門性をもっていますが、プリントやテレビといったオフラインに対するソリューションはもっていませんでした。だから、私たちはMarket Shareと一緒に仕事をすることによって、オフラインとオンラインを合わせたソリューションを顧客に提供しようとしています。例えば、ClearSaleingをはじめとする一部の製品は非常に良い仕事をしているところもありますが、しかしながら、オフラインへのフォーカスという意味ではデータも経験も不十分です。システムも不十分なので、オフラインのデータを十分集められてはいません。もちろん、彼らは最善を尽くしてretailer(小売業者)向けのクーポンコードとかを出してトラッキングしようとしているんですが、かなり多くの広告を打っているretail(小売り)関係の企業であればクーポンだけでトラッキングできるわけはないと思うんです。そのメディアが効果を発揮しているのかを見るのにクーポンだけでは不十分だと思うんです。だから、オンラインに照準をあてるのはよいと思いますが、オフラインとの連携がないので、私はやはりミスがあると思います。それを見ると非常に近視眼的になってしまいます。オンラインしか見ていないことになり、より伝統的なオフラインとの連携が見逃されてしまうからです。

有園:オンラインとオフラインのアトリビューションということになると、Market Shareがナンバーワンのプレーヤーということですね。

マイケル:私の意見ではそうです。だからこそ、AdobeはMarket Shareと仕事がしたいと言っているわけです。彼らの数式、アルゴリズムを活用して私たちの顧客に提供したいと思っているんです。

オンラインのアトリビューションの現状

有園:では、オンラインのアトリビューションはどうですか?

マイケル:さっきお話しなさったような企業の名前、彼らはよくやっていると思います。オンラインマーケティングだけをやっている広告主がいて、そしてオンラインのトランザンクションだけを見るということであれば彼らのソリューションはよいと思います。少なくとも伝統的な広告をやっていなければという話ですが。でも、オフラインとの連携がないのであればMarket Shareのような企業はいらないわけですよ。彼らがやってくれるのは、そのオンラインでの投資の仕方を示してくれるということです。でも、オフラインを含めた全体のミックスに対する提言は彼らにはできません。

有園:では、御社(Adobe)のソリューション、アトリビューションのソリューションについて質問をさせてください。昨日、御社のウェブページにある記事を読んだのですが、アドビコンサルティングがメディアミックスモデルをやっていて、それをもとにコンサルティングをやっていると書いてありました。

マイケル:そうですね。Adobeのソリューションはとても良いソリューションです。デジタルのソリューションなら。さきほど申しましたように、私たちはEfficient Frontierを買収しました。そして、彼らはディスプレイ、サーチ、ソーシャルに対しては非常に良いソリューションをもっています。しかし、それ以外の戦術を使っている場合は、ソリューションにならないわけです。だから先ほどの話になるわけですが、Market Shareと協業しています。

有園:なるほど。

マイケル: Efficient Frontierには非常に優秀な人がたくさんいます。私たちの顧客と一緒に仕事をし始めています。顧客に対してデジタルアトリビューションの教育をしています。彼らも一緒にMarket Shareと仕事をし、市場に対してより幅広いソリューションを提供していくことになるでしょう。ごく最近のテクノロジーがこのようなことを可能にしました。本当に最近のことです。デジタルマーケティングはトラッキングやメジャリングに注目をしてしまっていますが、そのほとんどが正しくはありません。リニアだったりしますから、そこだけにフォーカスするのではなく、Market Shareとの協業も含め、Adobeと仕事をすることによって、より統合的、包括的なサービスができるんです。

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有園:なんかすごくMarket Shareがお好きなようですね。

マイケル:そうです。私はMarket Shareが好きです。別に、好きと言ったからといって、何か得られるわけではないのですが。とにかく現時点ではMarket Shareだけが、全体を捉えたメディアミックスに対応するソリューションを提供している企業だと思うからです。それが、私がMarket Shareが好きな理由です。総括的、全体的だからです。でも、私もAdobeにおいて同じような役割をもっています。ペイドメディアのミックス全体を見るという仕事に携わっています。

ブランドの重要性

有園:スコットはMarket Shareについてはどのように考えていますか?

スコット:Market ShareとAdobeが作った独自の技術、この二つを組み合わせると素晴らしいパートナーであると思います。Adobeのパートナーであるというだけでなく、私たちにとっては非常に有効に働けるパートナーなんです。もちろん、連携部分については今後少し改善しなければなりませんが、それを使うことによって売り上げの最大化のためのソリューションを提供できます。実は、数か月前に、私たちのビジネスのデジタルメディアのスタッフと非常に面白いミーティングをしました。Market Shareと会い、私たちのインベストメント、オフライン、プリント、ディスプレイ広告、PRなどをすべて、Market Shareの数式の中にマーケットデータを入れていくということを話していました。ただし、それらに加えて、ソフトウェアや製品を再販しているチャネルがあったら、またそれも数式に入れていかなければならないのですが、それはとても複雑な要素であることを話し合いました。その会議がとてもエキサイティングでした。データを見ていたのですが、それは実は期待していた結果ではなかったのです。その会議の出席者にとって望んでいたものではありませんでした。たとえば、ディスプレイ広告は、もっと貢献度は高いはずなのにと。実は、ディスプレイよりもサーチのほうが貢献していたことが分かったりしたんです。さらに、私たち全員が少し見過ごしていたのがブランドの重要性でした。アトリビューションとメディアミックスモデリングにおいては、ベースあるいはモメンタムという考えがあります。つまりベースラインです。ある日、企業が広告を全てストップしたら売り上げがどの程度推移するだろうかというような、ベースラインの話です。重要なのはそのベースラインが時間と共に落ちていくわけですよ。広告がなければ。ベースラインが10億ドルだったとしましょう。その上に広告による増分があるんですね。サーチ、ディスプレイ、テレビ、PR、その他、全部あります。私たちの場合、ベースラインの上に乗っかってくる増分が、なんと4億ドルくらい追加分がありました。一例ですが。私たちはベースはもっと小さいと思っていましたが、実は巨大でした。4億ドルどころか10億ドルくらいあったんですね。ベースってすごいんだ、つまりブランドはすごいんだってことに気づいたんです。増分というのは意外に小さかった。ディスプレイ、サーチの人がみんなテーブルに座って「えぇ!?こんなに貢献が少ないの?」「クビになってしまうの?」というような反応をしていました。もちろん、そういうわけではありませんが。言いたかったのは、ベースがいかに高いかということ。でも、この部屋にいる皆さんは、そのベースにも貢献しているんですよという話をしたんです。そのベースというのは、四半期ごとに変わることではありませんが、時間が経つにつれベースが落ちていくわけです。だからこの部屋にいるディスプレイやサーチの皆さんも最初は「売り上げに貢献していると思ったのに違うじゃないか」とショックを受けていましたが、このデータを誤解してはいけません、皆さんはベースにも貢献しているんですよと、ベースの維持にも貢献していますよと伝えました。彼らは増分のところだけに目がいっていたんですね。ちゃんと、ベースプラス増分も見てねという話があったんで、非常に興味深く勉強になる話ができました。あれだけ洗練されたデータを見たのは生まれて初めてでした。本当の回帰分析、そして正しい加重をもとにしたフォーキャスティングがなされていました。ですから、大きなデータソリューション、私たちのウェブアナリティクス、サーチ、ディスプレイ、Eメールなどすべてを一つのシステムに入れてデータを統合して、クリーニングして戦術を出してくる。チャネルごとに見ていくということですね。売り上げに対する貢献度をここまで綺麗に見ていくというのは初めてです。

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有園:それは、チャネルごとの広告弾力性のことですか?

マイケル:そうですね。弾力性が計れるからです。微分係数を使っているとすれば、最適な投資レベルを見ることができるわけです。収穫逓減のことも念頭においたうえで、それぞれのチャネルでの貢献度を計算し、出すことができるわけです。

有園:最適ポイントはどこなのか。広告弾力性が一番いいのはどの程度の広告出稿量のときなのか、それをメディアごとに算出できるということですね。では、その弾力性について聞きたいと思います。ちょっと難しい話になるかもしれませんが、広告弾力性以外にも、販売量に影響を与えるものとして、価格弾力性もありますね。その価格の要素というのもモデルに組み込んでいるのでしょうか?

ファイナンス出身者がマーケッターに変身

マイケル:もちろんです。価格も一要素です。だからMarket Shareのアプローチ、彼らのソリューションが一番洗練されていると思うんですよね。彼らは価格を見ています。たとえば、今日本にいたら日経インデックスまでモデルに入れると思いますよ。アメリカではS&P、ニューヨーク証券取引所の数字、つまりマクロ経済のデータも入れていくんです。広告の弾力性を出すにあたってそれも入れています。競合の情報も入れています。ですから、競合の名前を入れていって、その競合のデータを入れていけば彼らが自分の会社に対してどういうタイミングでどういうプロモーションを打って、それが自社にどういう影響が出るのかとういうことを含めて分析していくことができます。競合の動き、マクロ経済も全部が広告の成果に影響を及ぼすのです。だから1パーセント以下の企業しかこれを正しく出来ていないと言っているのです。

有園:ということはつまり、Market Shareは季節性や気温なども見ているのでしょうか?暑い日はビールが売れるとか、そう言う影響がありますよね?

マイケル:ビールも売っていれば、それは参考になるでしょうね。そのため、たとえば、日経インデックス、証券取引所といったところのデータを見ているんです。彼らの数字は業界ごとに、いろいろなことを示していますからね。経済の状況、業界ごとの経済情勢を表現していますから。ちょっと笑えるかもしれませんが、Scottは実は財務的なバックグラウンドもありファイナンスは強いのですが、最近のマーケッターはファイナンス出身者が多いですよ。あるいは物理。そのどっちかですよ。私たちの部署ではファイナンスの経験を持った人が4~5人います。これだけ定量分析や数字が大事なので、ファイナス出身者をマーケッターに変身させています。係数、回帰分析といったことを理解していなければいけないので、それに合った人材を選んできました。マーケティングというのは技とサイエンスの組み合わせです。私たちがマーケティングアトリビューションを重要だと思うのは、やはりマーケッターはCFOや財務の人などにちゃんと説明ができないといけないわけですからね。きちんと描写できなければ、そのマーケッターの人にとってもビジネスケースは立てられないわけですよ。「そんな気がします」とか「勘でこう思います」とか「こうなるような気がします」とか言っても全く駄目です。広告における最も大きな問題は、ジョン・ワナメーカーが言った有名な名言にあるとおりです。「広告費の半分が金の無駄使いに終わっている事はわかっている。分からないのはどっちの半分が無駄なのかだ。」つまり、どっちの反応が上手くいっているのか分からないことだということです。ファイナンスの人間を含めて、いまでは信頼関係を築くことができています。なぜなら、サイエンスによって、ジョン・ワナメーカーの課題をかなり解決できるようになったからです。ファイナンスの人間も最近では私たちを信頼してくれています。ちゃんと収益までプロジェクションできるからです。

アトリビューションベンダーの動向

有園:ところで、博報堂という日本の企業をご存じですか?博報堂はMarket Shareと提携しました。だから、いま、Market Shareは日本への進出を試みていますね。

マイケル:もちろん知っています。

有園:他のプレーヤー(アトリビューションベンダー)はどうですか?Visual IQ とかその他の企業はどうでしょうか?日本に来そうですか?

マイケル:分かりません。それは良い質問ですね。いろいろなプレーヤーが、日本市場に参加することはいいことだと思います。

有園:私もそう思います。だから質問してみたのですが。

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マイケル:これは本当に新しい領域で大きなデータをきちんと扱う能力がなければ、こんな話さえできなかったと思うんです。5~6年前には出なかった話題です。いまは大きなデータセレクションそしてアナリティクスが出来るようになったんで、このソリューションは可能です。このテクノロジー、ソリューションは生まれたばかりの赤ん坊の段階です。Visual IQ とかその他の北米系の企業が日本に来るときは、市場のスピードに出来るだけ早く追い付くように頑張って成長しなければいけないでしょうね。

有園:私はVisual IQが、Market Shareがもっているような統合的なソリューションを持ってくると良いなと思っています。そうすると、全ての広告主にとって価格効率を上げてくれますからね。

マイケル:Adobeとしては複数のパートナーがいたらいいなと思っていますから。でも、いまはベストだと思うところが一社しかいないのでね。そこと仕事をしたいと思っています。

アトリビューションの障壁

有園:いままではテクノロジーやアナリシスの話をしてきましたが、政治的なところもお伺いしていきたいと思います。私が日本の広告主に話をしていますと、サーチは販促部、ディスプレイは宣伝部というように、担当が部門ごとに分かれていると言うんです。アトリビューションをしたいのだけれども、一部はこっちに再投資ということが部署の垣根があるために難しいと言われます。やはり、企業の政治情勢がありますから。そう意味で、企業内部の政治情勢が最適な予算配分の障壁になることはありませんか?

マイケル:その問題は私たちの中でも解決してきました。全ての有料メディアは私の責任下にあるからです。企業の中に複数の事業部門がある場合は多いです。そこでポイントとなるのは、投資レベルの話でいきますと、当社を例にすれば、スコットのところに行って「君はねデジタルマーケティングの最適リターンの責任者だよ」と言います。そして、スコットの別の同僚に「あなたはAcrobat、Creative Suiteの最適化をやりなさい」と言います。彼らはアトリビューションをベースに決めていくことができます。スコットの指示の元に決めていくことができます。サーチにするのか、ディスプレイにするのか、Eメールなのか、有料のソーシャルなのかというのはスコットの権限下にあります。彼のチームの中では政治的な動きがあるかもしれませんが、結局はスコットが全体の売り上げの責任者ですから意思決定権を持っています。あとは文化ですね。データ中心の意思決定をするということです。売上数字はどうなのか、ROIの最適な実現の仕方はどうなのかということです。ですから、そうした意味では、それほど政治的だとは思いません。私たちは、最初から構造を正しく作ったので政治的な問題はそんなに起きえないのです。チームとして全てがROIだと理解しています。各人が売り上げの各パイプラインを担当していて、それを実現するためには自由にお金を使って投資が出来るということを最初から合意していて、データが第一の優先事項であることも全員が理解していて数字を信用しているので、そのような問題はあまり社内では起きません。Do the right thing という言葉がありますが、戦術そのものを単体で見ると金額が減ることがあっても、全体として売り上げを伸ばすための数式の一部であるということを理解していれば、その一部の数式だけの立ち位置に立って投資をしすぎるのはマズイということを彼らはちゃんと理解しています。だから、やはりこの話というはヘルプするということ、マーケッターを教育し、組織における財務部門の人に対してアトリビューションの教育をするということではないでしょうか。アトリビューションやトラッキングの話は、さっき言ったような洗練されたソリューションもできるのですが、社内の改善も必要です。人の教育、アトリビューションの認知、アトリビューションの波及効果の理解も必要です。ここにはもっと投資をするという考え方を浸透させる必要があります。多くの企業がサイロ(縦割り)化されています。事業部門という縦割り、あるいは機能別にサーチ、ディスプレイ、Eメール、テレビと分断されていますので、全てを統括している人がアトリビューションを理解していないと正しく投資することができませんし、いま言ったような難しい会話をしなければならなくなります。お金を自由に動かすためには非常に難しい状況が出てくると思います。6~7年前、オムニチュアでの仕事を始めた頃、私たちの広告はほとんどトレードショーでした。ですが、アトリビューションを通して、トレードショーでお客様と接することによるコストとリターンがどれだけであるかを見ました。トレードショーでお客様を獲得するのは、デジタル手法に比べて4~5倍のコストがかかると分かりました。もちろん、リターンが4~5倍あるなら良いのですが、そうじゃなかったんです。展示会の成果はデジタルの成果と同じでした。コストが4~5倍であるにも関わらず。ですから、それから3~4年かけてトレードショーへの投資額を減らし、デジタルに投資していきました。そうすることによって、より効率的に投資できるようになりました。米ドル1ドルに対するリターンが10ドルとしましょう。私たちのミックス全体で10ドルあるとして、75パーセントがトレードショーでした。でも、そのあとに70パーセントをデジタルにして、トレードショーは30パーセントに変更しました。すると、米ドル1ドルに対するリターンが30ドルになりました。3倍です。効率に対する非常に大きな影響力がありました。予算の最適化によってこれだけの効果が出たんです。予算を再配分するだけです。

アトリビューションを始める前に理解すべきこと

有園:そろそろ時間がなくなってきましたので、最後の質問をします。日本の多くの広告主がアトリビューションに興味をもっています。アトリビューションを始めたいと思っている状況です。アトリビューションマネジメントを始める前に、どのようなことを理解しておいたらいいですか?日本の広告主に対して、アドバイスをお願いいたします。

マイケル:一点目は、出来る限り勉強をするということです。この領域において、ありとあらゆる知識を勉強しましょう。そうですね、Attribution.jpを読んでくださいということにしましょうか(笑)

有園:それはとっても重要ですね(笑)

マイケル:教育が必要なのです。必ずしもリニア(均等配分)アトリビューションあるいはラストクリックアトリビューションをやることは悪いとは思いません。特にデジタルの領域ではね。アトリビューションの仕組みを理解するには良いので、少しサイロ(縦割り)化されたシステムではありますが、そういうモデルを勉強するのは良いと思います。一番シンプルな方法からスタートするとすれば、トラッキングコードの標準化です。すべてのデジタルチャネルにおけるトラッキングコードを統一化しなければなりません。電子メール、デジタル、全てバラバラでは出来ませんので。二点目は、トラッキングコードを標準化した後に、ラストクリックモデル、リニア(均等配分)モデル、ウェイティング(加重)モデル、どれにするかを決めるべきです。できれば全部使うべきだと思います。三つの違いを見て、違いが大きければ、例えば、リニアとラストクリックの差が大きければ、それを三角関係で見て意思決定するべきだと思います。もう少し成熟度が上がれば、オンラインとオフラインの両方を見るソリューションを検討すべきだと思います。とにかくそういう形で勉強しましょうということです。そして、ラストクリックモデル、リニア(均等配分)モデル、ウェイティング(加重)モデルといったものを使ってでも勉強をしてウェブアナリティクス、サーチ、ディスプレイ、Eメール、それぞれのデータがどう関係しているのかを見るべきです。その後、アフィリエイト等その他のツールを最大限に活用するべきだと思います。やはり、伝統的な広告をやっていれば、それだけでは不十分だと理解するでしょう。でも、とにかく始めて、試してみてください。そうですね、要するに「始めよう!」というのがメッセージです。

有園:Adobeのソリューションを使ってみるのもよいですよね?

スコット:ぜひ使ってみてください。Adobeのユーザーでしたら、ぜひAdobeを使ってみてください。そうでない場合でも何でもいいので、ぜひ使い始めてみてください。とにかく何でもいいのでやってみること。それに尽きます。でも、それを過剰に信頼するのは危険ですよ。正しくない可能性がありますからね。最後に、先ほど政治という話がありましたが、システムを使うだけではなくて、その体制に会社も合わせていく必要があるということです。データだけでは十分な効果を出すことはできません。その製品、システムを使う人たち、組織、組織の改編も含めて検討する必要があります。ガバナンスですよ。

有園:力強いメッセージをありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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(※)Efficient Frontier:2011年11月30日のAdobeによる買収完了後、2012年7月18日現在「Adobe AdLens」にブランド変更されている。

マイケル チャトゥーディさんには書籍「アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法」にもご登場いただいています。

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(END)

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【アトリくんの視点】さすがアトリビューション黎明期以前から様々なことに取り組んでこられたお二人だけあって深いお話でしたね!色々なお話を伺うことができましたが、一番印象に残ったのが、アトリビューションやデータドリブンなマーケティング環境に合わせる形で組織やその中に所属する人が変わってきている点ですね。Adobeはソリューションプロバイダーであるだけでなく、最先端でアトリビューション・マネジメントを自ら実践しているのですね。これからも先端を走って業界をドライブしていただきたく思います。Mikelさん、Scottさん、ありがとうございました!

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