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アトリビューションとは

前回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)ではアタラ・メソッド(ATARA Method)について紹介したが、掲載後に読者の方々からいくつか質問と激励をいただいた。その中で気になったものがあったので、回答してみたい。

気になったものの中に、「アトリビューションCPAの合計値と全体の費用があわないのはおかしいのではないか?」という質問があった。具体的に質問の意図を説明するために、前回の投稿で使った<表2>を再掲してみる。

<表2>
表2

この<表2>にあるアトリビューションCPAを、バナーA、バナーB、リスティング広告で足し合わせてみると、1800万円となるから「これはおかしいのではないか」というのが質問の趣旨だ。バナーA、バナーB、リスティング広告の費用の合計は600万円なので、これと一致しないといけないのではないか、と。これはとてもいい質問だが、アトリビューションCPAの合計値は、費用の合計値と一致するものではないので、問題視する必要はない。たとえば、これまでのラストクリックCPAも同様に一致しないはずである。ここで前回の投稿の<表1>をみてみよう。

<表1>
表1

これまでのラストクリックCPAは、リスティング広告が300万円、ほかは計算できないので、NAとなっている。そのため、合計しても、バナーA、バナーB、リスティング広告の合計値=600万円にはならず、300万円となってしまう。これまでのラストクリックCPAもアトリビューションCPAも同様だが、発生したコンバージョンに対しての流入元別の獲得効率を示している指標であるため、全体の費用の合計と一致するものにはならないのである。

ただし、いい質問であると言ったのには訳がある。全体の費用の合計と一致するという視点でのCPAもあり得るからだ。前回の投稿で例示した流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)を一つのコンビネーション(組み合せ)として捉えてみよう。そうすると、発生したコンバージョンは1個であり、そのコンビネーション単位でかかった費用は、バナーA=100万円、バナーB=200万円、リスティング広告=300万円で、合計すると600万円である。このコンビネーション単位でみたときのCPAを計算すると、費用の合計(600万円)をコンバージョン1個で割ることになるので、600万円÷1=600万円となる。つまり、流入経路という一つのコンビネーション単位でみたときのCPAと費用の合計は一致するのだ。じつは、これと同じ視点で算出したCPAを「Total CPA(TCPA)」と呼んで紹介している秀逸な論考がある。マーケティングメトリックス研究所の中川氏の「CPA至上主義からの卒業 トータルでいくらかかったの?を評価する新指標『TCPA』」(http://markezine.jp/article/detail/11999)だ。この中で中川氏は「TCPA は、ユーザーがコンバージョンに至るまでに経由した広告CPC(Cost per Click)を合算したものです」と定義して紹介している。

ここで、議論の筋から逸れるが、「Total CPA」という用語について、同じ言葉で異なる概念を表しているケースもあるため紹介しておきたい。それは、Fringe81 代表取締役社長の田中氏の記事「純広告は博打か? 第三者配信による真の広告効果測定|第三者配信その2」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/06/09/10265)で「トータルCPAは、媒体費÷(直接コンバージョン+10〜15日以内のビュースルーコンバージョン数)で算出できる」として直接効果だけでなく間接効果も計測することの重要性を説いている。こちらも、第三者配信の効用を正しく理解するために、ぜひ読んでおきたい記事である。

さらにここでは「Total CPA」についてもう一つ、触れておきたい。オーバーチュアとグーグルでリスティング広告の営業に携わっていたころに、個別のキーワードのCPAではなくて、キャンペーン全体のCPA、あるいは、アカウント全体のCPAを表す用語として「Total CPA」という単語をよくみかけた。たとえば、アカウント全体で月間のコンバージョン数が2万でその時の費用が2000万円だったとすると、2000万円÷2万コンバージョン=1000円という数字になる。そして、この数字を改善するために運用していくという話しだ。

このように「Total CPA」はそれぞれの立場で異なる定義で使われているケースがあるため、注意が必要であることを覚えておいて欲しい。

さて、話しを元に戻すと、アトリビューションCPAはラストクリックCPAと同様に、全体の費用と合計値が一致するものではないことを理解していただければと思う。じつは、このアトリビューションCPAという用語だが、どのように呼称すべきかについていろいろと悩んだのも事実だ。これまでのラストクリックCPAとの違いを明確に示しつつも、さきほどの「Total CPA」との混同を避けられるようにしなければならないと考えていた。結局、今回の質問のように「Total CPA」との混同を招いてしまったので、ネーミングとしてはいまいちだったのかもしれない。ただ、アトリビューションCPAという、ある意味、なんの捻りもない名前にしたのは、やはり、アトリビューションということを強調しかったからである。

アトリビューションの視点から、ラストクリックCPAとアトリビューションCPA、そして、さきほどの「Total CPA」を説明すると、次のようになる。

「ラストクリックCPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中でコンバージョンに至ったラストの流入元だけに100%の貢献度を与えて、そのラストの流入元の費用をそのコンバージョン数で割って算出する。

「アトリビューションCPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中で、初回〜中間〜ラストに至るすべての流入元にそれぞれ貢献度を割り振り、それぞれの流入元の費用をそれぞれの流入元の貢献度で割って算出する。アタラ・メソッドでは、それぞれの流入元の貢献度をアトリビューション・スコアで表す。

「Total CPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中で、初回〜中間〜ラストに至るすべての流入元にそれぞれ100%の貢献度を与えて、それぞれの流入元の費用をその100%の貢献度で割って算出し、それらを合計して得られる。

ラストクリックCPAとアトリビューションCPAについては、これまで<表1>と<表2>で説明したので、<表3>としてこの「Total CPA」のケースを示してみる。

<表3>
表3

バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン に至る経路はこれまでと同じでコンバージョン1個が発生したとする。このとき、アトリビューションCPAの合計値を全体の費用の合計値と同じにするためには、この<表3>のように、バナーAの貢献度=1、バナーBの貢献度=1、リスティング広告の貢献度=1として、アトリビューションCPAを算出し、それらを合計しなければならない。この場合は、バナーAのアトリビューションCPAは100万円÷1=100万円、バナーBのアトリビューションCPAは200万円÷1=200万円、リスティング広告のアトリビューションCPAは300万円÷1=300万円で、合計すると600万円となる。この合計を「Total CPA」と呼んでいると考えてよい。ただ、これでは、コンバージョン1個の貢献度をそれぞれに配分していることにはならないことが分かるだろう。コンバージョン1個に対して、バナーAもコンバージョン1個分の貢献、バナーBもコンバージョン1個分の貢献、リスティング広告もコンバージョン1個分の貢献としていることになる。つまり、各流入元の貢献度を足し合わせると3になってしまい、もともとのコンバージョン1個を超えてしまうのだ。したがって、たしかに、この場合には、アトリビューションCPAの合計値とそれぞれの流入元の費用の合計値は一致するのだが、繰り返すが、これでは、貢献度を割り振ったことにならないのである。割り振っているというよりは、それぞれが1個のコンバージョンを発生させていると仮定して計算していることになる。つまり、アトリビューション分析をおこなうという視点で考えると、アトリビューションCPAの合計値と費用の合計値を一致させるという考え方は適切ではないことが分かる。アトリビューションという視点、あるいは、1個のコンバージョンの貢献度を各流入元に割り振るという視点では、各流入元の費用をトータルで考えるというのは適切ではないことが分かる。

ところで、さきほどの中川氏の記事の中でも、後段に「CPAとTCPAの違い」について解説していて、個別の流入元を評価する際には、分析対象以外の流入元の費用を足したり引いたりしている。流入経路を評価するのと、個別の流入元を評価するのは別なのだ。つまり、アトリビューションCPAと分析手法は異なるが、間接効果を見えるようにしたいという試みとしては、向かっている方向は同じであると考えてよいだろう。

また、アトリビューションという視点を離れて考えると、この流入経路の費用をトータルで考えるという視点は非常に重要になる局面がある。流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)を一つのコンビネーション(組み合せ)として捉えてみようという話しをしたが、このコンビネーションについて、実際にクライアントのデータを分析すると、非常にたくさんの異なるコンビネーションが出てくる。1万個のコンバージョンがある場合でも、このコンビネーションは何千という桁で出現する。それだけコンビネーションのパターンは分散しているということだ。分散しているパターンではあるが、詳細に分析すると、コンバージョンを多く生み出しているパターンと1個だけしか生み出していないパターンに分けることができる。そして、もちろん、最も多くコンバージョンを発生させているパターンも分かるのである。さらに、そのパターンごとの費用を考慮して獲得効率を算出すると、最も効率のよいコンビネーションのパターンも明らかになる。このような分析を便宜的に「勝ちパターン分析」と呼んでいるのだが、この分析もクライアントにとって非常に有益なものになる。たとえば、仮に、バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン というコンビネーションが最も獲得効率のよいパターンであると分かったとしよう。そうすると、このクライアントの場合には、バナーAをクリックしてクライアントのサイトに流入し離脱してしまったユーザーに対しては、バナーBを表示させて再訪問を促すことが効果的である可能性があることが分かるだろう。なぜなら、バナーAからバナーBと経由してくる場合は勝ちパターンになる可能性が高まるからである。第三者配信によって、このような特定のユーザーに対して特定の広告(ここではバナーB)を表示させる、出し分ける、というコントロールが技術的に可能になるので、この勝ちパターン分析はアトリビューション分析の応用として視野に入れておきたいものである。

さて、あらためて、アトリビューションCPAのネーミングでのこだわりについて記したい。これは、「割り振っている」ということを強調するために付けた名前である。<表1>、<表2>、<表3>でそれぞれ説明したように、それぞれの違いは、適切に貢献度を割り振っているかどうかである。ラストクリックCPAはラストだけに100%の貢献度を割り振っている。これでは他の流入元が無視されているので適切ではないことは自明だろう。そして、<表3>も、すべてに1を振っていることになるため各流入元で貢献度を適切に分け合ってはいない。<表2>は、コンバージョン1個の貢献度を、各流入元に均等に割り振っているのだ。割り振っているため、それぞれの流入元のアトリビューション・スコアを足すと1になる。つまり、コンバージョン数と同値になるのである。この割り振りを適切におこなって算出しているのがアトリビューションCPAということになるのだ。

次回は、前回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)で紹介したアタラ・メソッド(ATARA Method)に対して寄せられた質問の中で気になったものがもう一つあるので、その質問に対しての回答をしたいと思う。その質問の趣旨は「アタラ・メソッドでは結局、広告の価値をコンバージョン効果でしかみていないのですか?認知や態度変容については考慮していないのですか?」というものだ。この質問への回答は字数が必要となるので、次回の投稿で丁寧に回答することにしたい。

アタラ合同会社
COO
有園雄一

浴衣のアトリくん 【アトリくんの視点】 普段自然と使っている用語も、それぞれの解釈があるので注意が必要ですね。ところで関係ありませんが、梅雨明けしてとても暑いのでスーパークールビズで浴衣で登場してみました。似合うでしょう?皆さんも暑いですが体調管理に気をつけて!
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アタラではこのAttribution.jpを昨年から開始したが、それと軌を一にしてアトリビューションコンサルティングも事業として始めている。ここ最近はアタラに寄せられるお問い合わせの数も増加し、少しずつアトリビューションが日本市場にも普及していることを感じている。しかし、お問い合わせの内容はさまざまで、アトリビューションについての理解度にはかなりバラツキがあるようだ。「御社ではどのようなモデルで分析しているのですか?」という比較的レベルの高い質問もあれば、「アトリビューションって何ですか?」や「アトリビューションってどんなメリットがあるのでしょうか?」というような、基本的なものまで多岐にわたる質問を受けている。また、「アトリビューションというツールについて教えてください」という質問もあり、アタラからの情報発信が少ないために誤解を招いているものもある。(ちなみに、今後は分からないが、いまのところ、アタラではアトリビューションのツールを提供してはいない。)

このような状況を踏まえ、アタラでおこなっているアトリビューションコンサルティングについて、その一端を紹介することにした。アトリビューションは、その分析をおこない成果を上げるのには多くの障壁があるといわれていて、現場の実務で実践することが困難であるとの認識がある。事実、実務でおこなうのはとても大変だ。そのような中で、アタラとしては、現状の課題を受け入れつつも、現時点で取得できるデータで対応できる範囲での分析とコンサルティングをおこなっている。そのすべてを紹介するのは難しいが、ここではコアとなる考え方を紹介してみたい。

基本的に、アタラではアトリビューション分析とシミュレーションをコンサルティングサービスとして提供している。
アトリビューション分析とは、簡単にいうと、コンバージョンに至るまでの流入元の履歴のデータを使い、コンバージョンへの貢献度を各流入元に配分することである。アタラでは、各流入元に割り振った貢献度を数値で示すために「アトリビューション・スコア」という言葉を用いている。また、この「アトリビューション・スコア」で各流入元にかかった費用を割って得られる数値を「アトリビューションCPA」と呼んでいる。これは、これまでのラストクリックだけで算出したCPA(今後は「ラストクリックCPA」と表記する)と同様に、費用を成果で割って得られる数値である。「アトリビューションCPA」では、成果、つまり、コンバージョンにあたるのが貢献度を示す「アトリビューション・スコア」になっている。費用は、これまでのラストクリックCPAと同様に、その流入元に投下した費用となる。
もう一つ、アタラでは「アトリビューション・ランク」という用語も使っている。これは、各流入元を「アトリビューションCPA」によって比較するもので、もっとも効率がよかったものはどれか、2番目によかったものはどれか、という違いを表すために使っていると考えていただければよい。ちなみに、「アトリビューション CPA」と同様に「アトリビューション ROAS」も算出できるが、CPAとROASは逆数の関係になっているだけなので、ここでは「アトリビューション CPA」で説明を進めていくことにする。

それでは実際に、「アトリビューション・スコア」「アトリビューション CPA」「アトリビューション・ランク」をどのように使うのか? 簡単な例でみてみよう。

たとえば、最初にバナー広告Aをクリックして広告主のサイトにアクセスしたユーザ(ただしくはブラウザ)がいたとする。初回ではすぐにコンバージョンに至らず離脱するが、その後、しばらくしてバナー広告Bをクリックして広告主のサイトに再訪問する。この2回目のアクセスでもコンバージョンには至らずに、結局、離脱する。しかし、2回の接触を通じてユーザの記憶に広告主のブランド名が残る。その結果、ブランド名で検索をしてリスティング広告経由で3回目のアクセスをした際にコンバージョンが1個発生したとする。つまり、バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン となったケースがあったとする。このときに、投下している費用がそれぞれ、バナーA=100万円、バナーB=200万円、リスティング広告=300万円だったとしよう。まずここで、比較のために、これまでのラストクリックCPAを算出してみる。すると以下の表のようになる。

表1

発生したコンバージョン1個は、リスティング広告のみのお陰であると考えるのがこれまでのラストクリックでの分析の仕方である。そのため、貢献度を各流入元に割り振ると、表にあるように、バナーA=0、バナーB=0、リスティング広告=1となる。したがって、ラストクリックCPAはリスティング広告のみでしか算出されず、表にあるように、バナーA=NA、バナーB=NA、リスティング広告=300万円(300万円÷1=300万円)となる。通常、このような結果をみて、バナーAとバナーBは、リスティング広告に比べて獲得効率が悪い、コンバージョンにまったく貢献していないと判断されてしまうのが、これまでのやり方だった。

これに対して、「アトリビューション・スコア」「アトリビューション CPA」「アトリビューション・ランク」を使って表を作ってみる。

表2

ここでは、「アトリビューション・スコア」をそれぞれ1/3としている。これは、いわゆる、均等配分モデルを使っているからで、流入元であるバナーA、バナーB、リスティング広告をそれぞれ均等に扱い、発生した1個のコンバージョンの貢献度をそれぞれ均等に割り振っている。この場合は流入元が3つあるために、3分の1ずつ割り振っている。アトリビューションのモデルについてはいろいろな考え方があるのだが、詳細はまた別の機会に触れることにして、ここでは均等配分モデルで単純に配分したと理解して欲しい。

さて、このように均等に割り振った状態で、それぞれのCPA(「アトリビューション・CPA」)を算出すると、表にあるとおり、バナーA=300万円(100万円÷1/3=300万円)、バナーB=600万円(200万円÷1/3=600万円)、リスティング広告=900万円(300万円÷1/3=900万円)となる。「アトリビューション・ランク」は、バナーA=1、バナーB=2、リスティング広告=3となっている。

表1と表2の違いをみて欲しい。表1の方では、リスティング広告が最も獲得効率がよいと判断されていた。一方で、表2では、どうだろうか。説明するまでもないが、最も効率のよいのはバナーA、順に、バナーB、リスティング広告となっている。表1と表2の大きな違いは、各流入元に貢献度を割り振っているかいないかだけだ。それをやるかやらないかで、結果は大きく変わってしまうのである。

これまでの表1のやり方では、バナー広告は効果が悪いということで出稿予算を減らされる、あるいは出稿停止になってしまっていた。しかし、この結果をみると、それが本当に適切なやり方なのかどうか一考の余地があることが分かるだろう。

日本人メジャーリーガーを例にとってみよう。イチローはシングルヒットを大量に打つバッターで、松井は打点を稼ぐのが得意なバッターである。これまでの表1のラストクリックCPAで評価するなら、イチローはチームに対してまったく貢献していないことになる。それはなぜか。打点を稼がないからだ。ラストクリックCPAでの評価は松井を過大評価し、イチローを過小評価しているようなものだ。イチローは打点が少ないのに対して、松井は、得点圏にランナーがいるときにきっちりと打点を挙げてくれる。ラストクリックでコンバージョンを発生させるのが得意なリスティング広告のようなものである。それでは、もし、ラストクリックでのコンバージョンが少ないイチローを評価せずに、先発メンバーから外したらどうなるだろうか。松井のような打点を稼ぐバッターばかりを1番から9番まで並べるのである。その場合、チームとしての得点力は落ちるだろう。イチローのようなシングルヒットを確実に打つバッターもいないと、効果的に得点を挙げることはできないはずだ。また、そのように評価されているからこそ、イチローは起用され続けているはずだ。いや、年棒だけで判断するならば、松井よりもイチローの方が高く評価されているのが現実のはずだ。つまり、ここでのバナー広告のように初回や中間クリックを発生させてくれる流入元、イチローのようなバッターもメジャーリーグにおいては高い評価を得ていると考えていい。チームにおいては、イチローのようなバッターも、松井のようなバッターも必要であり、それぞれのコンビネーションで得点力を高めていくはずである。先の流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)の例も同様で、バナー広告とリスティング広告のコンビネーションでコンバージョン力を高めていくことができるのだ。そして、そのためには、ラストクリックだけを評価する現在のフレームワークを捨てて、初回、中間、ラストのそれぞれを正当に評価するアトリビューション分析が必要なのである。

さて、ここまでは単純な例を使ってアタラで実施しているアトリビューション分析の基本的な考え方を紹介してきた。次に、具体的なクライアントのケースに沿ったアトリビューション分析と、その分析結果に基づいてシミュレーションをおこなった結果を紹介しよう。

このクライアントは、リスティング広告に月額2000万円ほど投下し、バナー広告に月額500万円ほど投下していた。合計で月額2500万円だ。これまでは、ラストクリックCPAで媒体の評価をおこなっており、バナー広告はあまり効果が高くないようにみえるため、需要期以外ではバナー広告は使わないという状況だった。このクライアントから依頼を受け、4月の広告出稿状況とコンバージョンに対してアトリビューション分析を実施した。結果は次のとおりであった。

表3

表3のCVはコンバージョン数、A-スコアは「アトリビューション・スコア」、L-CPAはラストクリックCPA、A-CPAは「アトリビューションCPA」とする。ちなみに、リスティング広告は10万個ほどのキーワードをGoogle AdWordsとYahoo!リスティング広告にそれぞれ出稿しており、バナー広告は純広告、アドネットワーク、リターゲティングなどを含んでいて、それらの集計値、平均値をこの表には掲載していると考えて欲しい。ここで、バナー広告にアドネットワークやリターゲティングを入れているのはあくまでも議論を簡略化するためである。

ラストクリックベースでの評価では、リスティング広告が20000個のコンバージョンをたたき出し、ラストクリックCPAは1000円となっている。その一方で、バナー広告は1000個のコンバージョンでラストクリックCPAは5000円である。この状態では、バナー広告の評価が低いのも無理はない。

しかし、アトリビューション分析結果の方はどうなっているかというと、リスティング広告の「アトリビューション・スコア」は16750スコアで、バナー広告の「アトリビューション・スコア」は4250スコアとなる。そして、「アトリビューションCPA」をみると、リスティング広告が1194円で、バナー広告が1176円となっている。これは何を意味しているのだろうか。

つまり、バナー広告は、これまでのラストクリック評価ではコンバージョンが1000個、「アトリビューション・スコア」は4250スコアだ。単位はここでは関係ないので、1000が4250に増えたと理解していい。この差分である、3250(4250−1000=3250)は何なのか? これは、初回や中間のクリックでコンバージョンを発生させていたものがこれだけあったということだ。いわゆる、間接効果の数だといっていい。

ここで次のことに注意して欲しい。気づいている方がいるかもしれないが、ラストクリック評価のときのリスティング広告のCV=20000個とバナー広告のCV=1000個を合計すると21000個になり、リスティング広告の「アトリビューション・スコア」=16750とバナー広告の「アトリビューション・スコア」=4250個を合計すると21000個となって、この両方の数字は同じ値になる。コンバージョン貢献度を異なるやり方で割り振ったあとでそれぞれを合計しているので、結局、最後のコンバージョン数としては同じになる。この合計値が異なっていれば、計算間違いをしているなどなんらかの原因があるはずだ。

つぎに、「アトリビューションCPA」でみると、リスティング広告=1194円、バナー広告=1176円になっている。ということは、間接効果も含めて考えると、わずかながらバナー広告の方が獲得効率のよいという結果が出たのである。そうなると、これまでのリスティング広告重視の姿勢を変更してバナー広告の出稿金額を増やした方がコンバージョン数の増加する可能性も出てきたといってよい。

さらに、このアトリビューション分析結果に基づいて、出稿最適化のシミュレーションを実施してみる。このクライアントはリスティング広告に約10万個のキーワードを出稿していた。キーワードの中には、コンバージョンに寄与しているものもあれば、寄与していないものもある。当然、コンバージョンに寄与しているキーワードの中には、「アトリビューションCPA」が1194円というリスティング広告全体の平均値よりも高くなっているものが存在している。これらは、獲得効率があまりよくないキーワードになるため、ここで投下している費用をバナー広告に再配分することが考えられる。同様に、実は、ラストクリックでのコンバージョンも発生していなければ、間接効果としてのコンバージョンも発生していない(いわゆるアシストもない)キーワードもある。これらのキーワードは、「アトリビューション・スコア」が0になるもので、間接効果も直接効果もないものになる。このようなキーワードも出稿停止にして、そこで使っている費用をバナー広告に配分するとする。
「アトリビューションCPA」が1194円より高いキーワード群と、間接効果も直接効果もないキーワード群の両方で使っていたコストを割り出すと、このクライアントの場合、約800万円もの金額を捻出できた。キーワードの中には、300円程度でコンバージョンしているものもあれば、5000円以上かかっているようなものまであった。それらすべての「アトリビューション・スコア」「アトリビューションCPA」を算出し、「アトリビューション・ランク」の低いものから順番にバナー広告への再配分対象としていく作業をおこなったのだ。そして、「アトリビューションCPA」が1194円以下で獲得できているキーワード、つまり、効率のよいキーワードだけを残して引き続きリスティング広告をおこなうことにする。

この800万円だが、これはちょっと多いかな、と最初は思ったものだ。だが、他のクライアントでも同じような結果が出ているケースがあるので、もしかするとよくあることなのかもしれない。とくに、リスティング広告での出稿キーワード数が多い場合、リスティング広告全体の平均でみたCPAが見合っていればOKとなっているケースが多いため、個別キーワードでコンバージョン貢献度を厳密に測っていないケースがあり得る。今回のケースはそれにあたるのだが、そのような例は他にもあると考えてよいだろう。

このようにして、捻出した800万円をバナー広告にスライドしたとしてシミュレーションを実施してみる。全体の出稿金額は引き続き月額2500万円で変更はない。まず、バナー広告経由でのコンバージョン数はどうなるだろうか。1コンバージョンが「アトリビューションCPA」=1176円で獲得できるとすると、800万円をバナー広告に追加で投下することによって、6800個のコンバージョンが追加的に獲得できることになる。ただ、ここでリスティング広告でのマイナスの影響も考慮しないとならない。リスティング広告では800万円の出稿金額を減らすことになる。この800万円はさきほど説明したとおり、「アトリビューションCPA」が1194円より高いキーワード群、それと、間接効果も直接効果もないキーワード群の両方から捻出したものなので、これらのキーワードで獲得していたコンバージョンは減ることになる。その数を計算すると、約2000個のコンバージョンがあった。つまり、800万円をバナー広告にスライドさせることによって、プラスで6800個、マイナスで2000個となり、プラスマイナスでトータルは4800個のコンバージョンが増加するという結果になった。出稿金額は月額2500万円のまま変更無しで、4800個のコンバージョンが増加するという結果だ。表3にあるとおり、4月の実際のコンバージョン数は21000個だ。プラスで4800個も増加するというのはとても大きいといえるだろう。

この最適化シミュレーションはあくまでもシミュレーションであって、出てきた数値も参考値程度に解釈すべきものである。そもそも、シミュレーションとはそういうものであって、予測してコンバージョン数を正確にあてようとするものではない。とくに、今回のシミュレーションでは、4月に発生した流入経路のすべてが5月にもまったく同じだったと仮定して算出していることになるが、当然のこととして、初回、中間、ラストに至る流入経路が4月と5月でまったく同じであることはあり得ない。初回、中間、ラストのコンビネーションは変わるはずである。また、アトリビューションモデルも均等配分でおこなっているが、実際には他のモデルを当てはめた方がよいという可能性も否定できないであろう。そのため、あくまでも単純なシミュレーションであると理解して欲しい。

ただし、確かに単純なシミュレーションではあるが、しかしながら、まったく意味がないかといえば、そんなことはない。単純なモデルと単純なシミュレーション方法で導いた結果とはいえ、これまで貢献度を評価していなかったラストクリック以外の各流入元についても考慮した上でシミュレーションをおこなっている。少なくとも、ラストクリックだけに偏っていたこれまでの手法よりは現実に近い形で評価ができている可能性があるはずだ。

どの程度、このシミュレーション結果が確からしいのかを調べるためには、シミュレーションにしたがって実際に800万円分をバナー広告にスライドしてみればいいのである。ただ、クライアントには確からしさを調べたいというような冒険心はないのが普通だ。当たり前である。実際のお金を使ってマーケティングをおこなっているからだ。今回の分析では、バナー広告の獲得効率が良い可能性があり、シミュレーションの結果にしたがえば4800個もコンバージョンが増えると主張しても、クライアントは「はい、分かりました」とはならない。クライアントはもちろん半信半疑だった。いろいろと議論した末に、実験的に200万円分だけバナー広告へスライドさせてみることに落ち着いた。

スライドさせた結果をいうと、プラスマイナスで500個ほどのコンバージョンがプラスになったのだ。実は、200万円分で同様のシミュレーション計算をすると、800個ほどのプラスになるという結果が得られていたので、それと比較すると、やや下振れしたことになる。シミュレーションの結果どおりにはならなかったが、月額2500万円でコンバージョン数は21000個から21500個に増えたことになる。200万円をリスティング広告からバナー広告にスライドさせたことによって、獲得効率はよくなったといってもいい。もちろん、断定はできない。コンバージョンが増えた理由は、季節的な要因などもあり得るし、バナー広告のフリークエンシーなどが変化したことや、初回、中間、ラストのコンビネーションが大きく変化したことなども影響を与えるかもしれない。200万円をスライドさせたこと以外にもいろいろと検討する余地があるのはたしかである。コンバージョンへの影響はさまざまな要因が考えられるため、単純化して考えることにリスクが伴うのは承知している。しかし、現場で実際に最適化のオペレーションをおこなっていくためには、ある程度の単純化はやむを得ないと考えている。さまざまな要因があり得るとはいえ、それらを厳密に分析することが非現実的である以上、分析できるデータと使用可能なモデルを使ってソリューションを導き出し、少しでも前に進んで行く方が懸命であろう。すくなくとも、これまでのラストクリックでの評価よりは良い分析ができるはずだ。ラストクリックでの評価は、ここで紹介しているものよりもはるかに単純な手法であるのはいうまでもない。

さて、コンバージョンが増加した要因はさまざまなことが考えられるが、仮にそれらが変化しなかったとしよう。200万円をスライドさせたこと以外は変化しなかったと仮定するのである。そうすると、このシミュレーションでは800個増加のコンバージョンと実際の500個増加のコンバージョンの差異=300個は、何から発生しているのだろうか。これは、アトリビューションモデルとして均等配分を採用していることから発生していると考えられる。つまり、リスティング広告もバナー広告もすべて均等に配分して「アトリビューション・スコア」「アトリビューションCPA」を算出していたのだが、他の条件が一定として考えると、このシミュレーションの結果が下振れしたということは、その分だけ、バナー広告への評価を高めに配分していたと考えられる。つまり、本当はもっと低めに配分した方がよかったといえるのだ。したがって、次のアトリビューション分析ではリスティング広告とバナー広告への配分を均等ではなく、バナー広告への配分を少し割り引くことで、このクライアントへのアトリビューション分析とシミュレーションの精度を向上することが可能であろう。

ところで、他のクライアントでは、シミュレーションよりも上振れすることもあった。その場合は、バナー広告への配分を少し割り増して、再度アトリビューション分析をおこない、シミュレーションすることになる。

このように、上振れ/下振れに応じてアトリビューションモデルの修正プロセスを繰り返しおこなっていくことで、全体の精度が向上していく。この繰り返しの手法を、アタラでは「プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチ(Progressive Optimization Approach)」と呼んでいる。また、「アトリビューション・スコア」「アトリビューションCPA」「アトリビューション・ランク」を使ってアトリビューション分析を実施し、最適化シミュレーション、そして、プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチを取る一連の方法を、「アタラ・メソッド(ATARA Method)」と名付けて紹介している。

先述したメジャーリーガーの例でいえば、このアタラ・メソッドによってイチローの貢献度を、これまでのラストクリックベースの評価に比較してより正当に評価できる。その結果、全体の得点力=コンバージョン力の向上につながるのである。

今回のアタラ・メソッドの紹介では議論を簡略化するために、リスティング広告とバナー広告という2つに流入元を分けて考え、最適化シミュレーションの例を紹介している。実際の現場の実務においては、さまざまな純広告、タイアップ広告、動画広告、アドネットワーク、アフィリエイト、ソーシャルネットワーク、リスティング広告、自然検索など、多数の流入元別に分析することになるため、リスティング広告からバナー広告への出稿予算のスライドという単純なシナリオになるとは限らない。また、リスティング広告への出稿金額に対してバナー広告への出稿金額が少なすぎた場合には、シミュレーションがうまくできないケースも実際にあった。というのは、初回や中間でコンバージョンに影響を与えているクリック数があまりにも少なかったために、バナー広告の「アトリビューションCPA」が非常に高い数字になってしまったのである。

このように、実務においては今回紹介したケースよりも複雑であるし、場合によってはうまくシミュレーションできないケースもあるのはたしかだ。しかしながら、多くの場合はサイトカタリストなどの効果測定ツールでコンンバージョン・パスのデータ、つまり、流入経路と流入元のデータが計測できているならば、ここで紹介した方法を使ってコンバージョンの効率を向上できる可能性が高い。ラストクリックだけを評価していた評価方法から脱却し、初回、中間の各流入元まで含めて評価する方法を使って、コンバージョン数を増加できる可能性は大きい。もし、データが計測できているのであればぜひ、アトリビューション分析をご自分でも試していただきたい。それによっては得られるメリットは大きいと信じている。

アタラ合同会社
COO
有園雄一

喜ぶアトリくん 【アトリくんの視点】 アタラのメソッドをここまで解説したのは初めてです。参考にしていただけましたでしょうか?今回を皮切りに、有園さんのコラムの連載を開始します!
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RealWebAnalytics
http://d.hatena.ne.jp/ryuka01/20110308/p1

ウェブ分析論」の小川さんがアトリビューションを切り口にブログで連載を開始しています。とてもわかりやすいので、アトリビューションにこれから取り組もうとされている方は必読です。

アトリくん 【アトリくんの視点】 図解がいいです!「李=直接効果 長友=間接効果」もわかりやすい。連載の続きがとても楽しみです。
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View throughに注目。ネット広告の最新のトレンド、アトリビューションとは
http://www.venturenow.jp/column/tsubaki/20101019008879.html

アドテク関連で注目度の高いcybozu.net株式会社 代表取締役CEO 椿奈緒子さんにアトリビューションについて取り上げてもらった。

【アトリくんの視点】
あっという前にサマライズする能力が優れてるな、と感じた情報提供セッションだった。わかりやすくアトリビューションについて解説してくれている。おすすめ。
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アトリビューションは、目標コンバージョンに至ったユーザーの行動軌跡を測定し、接触した施策それぞれに貢献度合いを割り当て、各施策の貢献度合いに応じた広告予算の最適配分を行う取り組みである。

今までは、広告キャンペーンの目標コンバージョンに至る直前にクリックされた施策が、直接的に貢献をして効果を発生させたと見なされてきた。しかし、その前に接触した他の施策に関しても、間接的に貢献していると見なそうという動きが、米国では数年前から活発に議論されてきた。

「Attribution Management」「Attribution Modeling」という言葉がサーチのメジャーなカンファレンスであるSES(Search Engine Strategies), SMX(Search Marketing eXpo)で語られ始めたのは2007-2008年頃である。

広告の間接効果は以前から語られてはきたが、今になってアトリビューションという形で再び注目度が上がっている背景としては様々なことが考えられる:

  • 最もラストクリックに貢献することが多いとされるサーチの(一部広告主の)頭打ち感から、サーチをさらにドライブするビークルが何かを追求する動きへと変わってきた
  • 昨今の経済状況の折、会社に対してマーケティング予算を上申する上で、より一層一つ一つの効果を正当化しないと認められなってきたため
  • テクノロジーの進化で、ユーザーが商品を購入する場合、あらゆる情報源をたどって最終的に購入に至っているということがわかってきたから
  • テクノロジーの進化で、ユーザのコンバージョンパスのデータを計測し、深い分析ができるようになってきたから
  • 単純なクリックベースの獲得効率で比較すると、ディスプレイ広告は分が悪いため、接触による間接効果(いわゆるビュースルーコンバージョン)に関係者が注目するようになってきた。
  • 昨今盛り上がりつつあるアドエクスチェンジ環境の中で、ディスプレイ広告、リスティング広告、ソーシャル広告を統合評価、統合入札する動きが出てきた(サーチの自動入札ツールとディスプレイ広告のDSPツールの相互乗り入れ)。その場合、媒体をクロスして効果を評価した上で入札戦略に反映させる必要があるため

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独自のアトリビューション分析手法、ATARA Method でコンバージョンをアップ!

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