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アトリビューション特別対談:DMP最新動向~「AudienceOne」の魅力に迫る - モデューロ重原氏×アタラ有園

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有園:株式会社モデューロの代表取締役社長、重原洋祐さんをお招きして、データマネジメント事業「AudienceOne」の特徴や将来性、今後の展望などについてお話を伺います。

株式会社モデューロの成り立ち

重原:モデューロは2013年7月に立ち上がった会社で、株式会社アイメディアドライブが前身です。

アイメディアドライブは、DACグループのなかでは、アドネットワーク事業に従事していた会社です。もともとは、アメリカのオーディエンス・サイエンス社のサービスを、日本で独占販売する契約をDACグループが結び、行動ターゲティングと呼ばれているターゲット広告をいち早く導入しました。

有園:impActネットワーク自体は古くからありますよね?

重原:1998年からでしょうか。2006年頃に株式会社アイメディアドライブという会社を立ち上げたタイミングで、impActネットワークとしてリブランディングし、行動ターゲティング商品を販売する事で、オーディエンスデータの運用ノウハウを身につけていきました。

そのような中、ここ数年でDSP市場が拡大。オーディエンスデータの利用が期待できる市場が整った事で、データ領域への対応を2012年頃から協議していました。

従来、最新のアドテクノロジーと呼ばれるものは、海外から輸入して使うケースが多かったのですが、データというものは、それぞれの国の市場というか考え方というか、傾向があらわれるんですよね。あとは使い方が、国によって違うのではないかなと思ったりもして。海外だと、クレジットカード会社がデータを管理して、使える状態にして販売するケースがあります。でも、日本だと、データを販売することや提供する事に対して非常に高いハードルが有ります。

そのように、海外と日本ではデータの使い方が違うだろうから、海外のものを、そのまま利用しても、利用方法が異なる事が想定される日本では、ビジネスにはまらないのではないかと思っていました。

ずっと研究してきたなかで、自分たちで構築したほうがよいのではないかということで、DACグループでDMPを構築することになりました。僕は、アイメディアドライブでデータを扱っていたので、そのプロジェクトに参加して、ビジネスモデルの構築を担当。その後、1年くらいかけて準備し、2013年4月1日にローンチを行いました。

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社名の「モデューロ」に込められた意味

有園:以前は、株式会社アイメディアドライブにいらしたけれど、いまは株式会社モデューロにいらっしゃるわけですね。ちなみに、ずっと聞きたかったんですが、「モデューロ」ってどういう意味ですか?

重原:AudienceOneの事業を行う事で、アドネットワーク単体の会社からリブランディングを行う必要があるかなと思い「モデューロ」を設立致しました。ちなみに「モデューロ」は造語なんです。意味としては「物事をシンプルにする」という。

有園:「モジュール」からきているんですか?

重原:そうです。「モジュール」の部分が、意味としては込められています。

有園:いろいろなデータを集めてきて、ソリューションにするときのハブになる「モジュール」になろうよってことですか?

重原:そういう意味です。さらには、僕らのビジネスのなかには、媒体社と広告主とユーザがいて、その三者を、うまくつなげていくという意味も込めています。いろいろな捉え方ができますが、僕らが関わるところを複雑ではなくシンプルにつなげていこうという意味を込めたのが、株式会社モデューロという会社名です。

株式会社モデューロの位置関係

有園:なるほど。資本関係としては、親会社が株式会社アイメディアドライブで、その子会社ということですね。株式会社アイメディアドライブの親会社がデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社なので、御社はDACグループの一つになると。デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社の親会社には博報堂がいるので、業界のなかでは博報堂系とくくられるわけですね。

重原:はい、博報堂DYさんとも様々な取り組みは今進めさせていただいております。

同じ日にリリースされた「AudienceOne」と「Xrost DMP」

有園:単刀直入に聞きます。AudienceOneを2013年4月1日にリリースされたわけですが、同じ日に、御社の競合にあたる株式会社オプトの子会社、株式会社Platform IDからXrost DMPのリリースが発表されました。同じ日にリリースが発表されたので、僕は「これ、エイプルフールなのかな?」って思ったくらいです。

重原:あれはすごい偶然で(笑)。我々はAudienceOneをAOneと社内で呼んでいます。そのためAOneであれば、April Oneだろうという事で4/1にリリースしました。

有園:いまや、御社のAudienceOneやPlatform IDのXrost DMPの登場を皮切りに、株式会社フリークアウトのDMPなど、日本国内でも、いろいろとDMPが立ち上がっています。ヤフーのDMPもでてくるなど動きがありますが、そんななかで、御社のAudienceOneは、どんな特徴があり、他とはなにが違うとお考えですか。

「AudienceOne」はデータを保有するDMP

重原:我々の特徴は大量のデータを保有しているDMPです。呼び方はさまざまで、いろいろなケースがあります。AudiencOneでは直接的なデータ販売は行っておりませんが、お客様の保有するデータ以外の、外部データを利用できる事でパブリック、データセラー、アウトバウンドのDMPと呼ばれることもあります。

今の我々のフィールドにあるDMPは、CRMに寄っているか、広告に寄っているかで二分化されます。AudienceOneは、お客様が持つ自社のデータ(1stParty)を基に我々が持つ外部のデータ(3rdParty)を掛け合わせ、既存顧客の分析や、見込み顧客の発見、分析したデータを様々なチャネルと連携し活用する事で顧客との最適なコミュニケーションを行う事の出来るDMPです。一方、株式会社ALBERTさんのsmarticA!DMPや、株式会社ブレインパッドさんのRtoasterAdsは、どちらかというと、お客様の保有する顧客データの分析や管理、データを元にしたレコメンドアルゴリズムの開発等に特化した領域だと考えております。

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有園:広告主から「DMPってなにができるの?」「DMPってなんでもできるんだっけ?」「DMPって、いくつかあって違いが分からない」と相談されることがあるので先の質問をしたわけですが、インターネットのなかの行動履歴としての、オーディエンスデータとかを集めているか、いないかの違いですよね。

DMPは外部データをもっているか、もっていないかで分かれる

有園:株式会社ALBERTがsmarticA!DMPと呼ぶようになったのは最近のことで、それまではDMPとは呼んでいませんでした。インターネット上の行動履歴データはもっていないと思います。株式会社ブレインパッドのRtoasterAdsも、基本的には外部データをもっていません。外部データをもっていないDMPと、もっているDMPがあり、ここで大きくわかれるわけですね。この違いって、広告主が導入するにあたって、「どっちを入れたらいいですか?」と相談を受けたら、どのように説明しているのですか?

重原:最近は、お客様も詳しくて、その違いを理解されています。そのため、弊社を指名していただくことも増えてきたのですが、はじめたばかりの2013年頃は、ブレインパッドさんなどと比較されることが多くありました。でも、いまは少なくなってきました。

僕らのお付き合いしているお客様は、いままで、CRMの分析はやってきた、自社データで見られる部分はけっこう見てきたから、自社データで見られないことを、外のデータを使って見たいというケースが多いです。その場合は、弊社のサービスが適していると思います。一方で、これまで自社データをあまり見ていなくて、まずは、いまきているお客様のリピート率を向上したいといった場合には、弊社のDMPではなく他社さんのDMPを紹介することもあります。

僕らは、ALBERTさんやブレインパッドさんのDMPは、お客様の1stPartyデータを管理している企業と認識していて、競合ではないんです。DMPという言葉は広く、DMPがついているからといって競合にはならないこともあります。お互いに補完しあう関係でビジネスをしています。ALBERTさんを紹介したり、ALBERTさんから紹介されたりすることは、よくありますよ。

DMPってなにができるの?

有園:僕が広告主から聞かれた際に説明している例えがあります。広告主のサイトにインターネット上で1回も訪れたことがない人がいたとします。そういう人であっても、AudienceOneは約4億のユニークブラウザをトラッキングできているので、たいがいの人は、その4億のなかに入っています。だから、AudienceOneであれば、その人が20代の女性であるというデモグラフィック分析が終わっている可能性が高いので、一回も来たことがない人であっても、その人が20代の女性であるという推定はできている。推定精度はよくて80パーセントくらいだと思いますが。

ということは、一回も来たことがなくても、20代の女性にバナー広告を出すことができるのが、外部データをもっているDMPの特徴だと。一方、株式会社ALBERTのsmarticA!DMPなどは、自社サイトに訪れた人が、どのような行動をとったといった履歴に基づいてDSPを使い、リターゲティングしてバナー広告を打つことはできるけれど、一回も訪れたことがない人には、それができない。もちろん、ノンターゲティングで、オールリーチでバナー広告を打つことはできますが。そんな理解で大丈夫ですか?

重原:厳密にいうと、冒頭にもお話しした通り僕らもデータ単体での販売は現状しておりませんので、お客様のサイトにきたユーザを軸に考えてはいます。

たとえば、消費財メーカーがDMPを導入したケースでは、その消費財メーカーのオウンドメディアに来た人を起点に、外部のサイトでどのような行動を取っているのか、どのようなサイトに類似ユーザが多いのかをドメイン単位で分析し、拡張を含めたオーディエンスのプランニングを行っております。拡張の際には弊社が持つオーディエンスデータに基づいて広告配信をしますので、その際にはお客様のサイトにはまだ来ていない人へも広告を配信することになります。

有園:一回サイトにきた人が20代女性、アウトドア派で山に行く人といった行動履歴がとれていたら、同じような属性の人を集めてくることができるわけですね。そこにバナーを配信することもできると。

重原:「リターゲティングの細分化になるだけでは?」と聞かれることもあるのですが、そうするとマーケットが縮小するだけなので、外部データをもっているDMP会社としては、既存顧客との関係を深めることを前提としつつも、見込み客との接点をもつために広告をあてていけます。

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「AudienceOne」や他社のDMPとどっちがよい?

有園:外部データをもっているところと、もっていないところの違いは分かりました。競合他社とどっちがよいですか?と聞かれたら、どう答えていますか?

「AudienceOne」と競合他社との違い

重原:最近はIntimateMergerさんと比較されるケースが多いかなと。ただビジネスモデルが少し違う印象でIMさんは最近データ販売に力を入れられているかなというイメージです。先日リリースされたセグメントギャラリーなんかはまさにそうですし。ただ、目指している所は近いかなと思っていたりします。違うとすれば僕らは保有するデータを販売するということではなく、お客様のデータを軸に、制限なく、データを幅広くマーケティングに活用してもらう、という事に注力をしています。そのために、データ解析に特化したデータサイエンティストチームを構築しておりデータの解析に力を入れる事で、デモグラフィックの推計等の機能を提供したり、ユーザのサイコグラフィック分析を行う機能など様々なものを開発中です。また、オフラインデータ等を保有する企業等、様々なデータを保有する企業とアライアンスも行っております。
その中でデータの量がよく比較されますが、我々も莫大なデータを保有しています。実は自社発表の4億ユーザより、もっともっとデータはあります。きちんと使えると判断したクッキーだけに絞っていて、絞った上で4億にしています。データを保有している事で、拡張するユーザの幅を広げ多くのターゲットにリーチする事が出来ますし、精度の向上を行う事が出来ます。

また、親会社のDACはメディアレップですので媒体社様にアドサーバー等のテクノロジーや広告販売支援を行っています。どちらかというとDMPはまだ広告主様側での利用が多いですが、媒体社様に対して、我々の保有するデータを活用した広告商品の開発や、サイト価値向上や収益向上のため様々な分析や支援を行っている事も特徴です。広告主様は媒体社のデータをみられる環境が整いつつありますが、一方で媒体社様は広告主様のデータをみる事がまだまだ出来ていない。もちろんお客様の許諾を得る事が前提ですが、両サイドがデータを活用できるような環境にする事で市場は拡大できると思っています。そのため媒体社様への支援という面においても非常に力を入れています。

今媒体社様向けのアドサーバーの話しがありましたが、幅広く広告配信システムと連携している事も特徴です。広告配信システムとの連携はデータの精度を高めるためにも有効的だと考えています。AudienceOneで分析し、仮説に基づきセグメントを作成。そのデータを広告配信で利用し、配信結果のデータをきちんと“見る“事で、実際にクリック等の反応するオーディエンスはどのようなオーディエンスなのか等、仮説検証を行う事が出来ます。DSPとの連携は他社もできていますが、グループとしてEffectiveOneという、第三者配信ソリューションと連携をしており、DSP以外の広告配信の結果を分析する事が出来ます。この連携は非常に我々の強みかと思っています。

DSPでは出せない詳細レポートが「AudienceOne」では手に入る

有園:オーディエンスごとに、属性が分かっている状態で、どんな人がクリックしてくれていて、その人にどういう趣味があり、どのような行動をとっているのかが分かる状態でレポートがでると思っていいですかね。

通常のDSPはそんなレポートでてこないので、ここが決定的な違いであり、付加価値でもあると思います。レポートが戻ってくるというと、簡単なことのように聞こえますが。

重原:クリックした人の傾向値が分かります。クリックしただけの人と、コンバージョンした人でオンライン上での行動パターンが異なったりします、その情報をもとに、広告を配信するターゲットを変えたりできます。

広告ターゲットに使うだけでなく、顧客データベースと連携することでメール配信などにも活用する事が可能です。クリックしたけれどコンバージョンしない人には、クリックした製品について、もう少し機能を説明したメールを配信しようとかできるわけですよ。これが、結果をレポートで戻すことの利点です。

MarketOne(DSP)とEffectiveOneでは、これがすでにできます。通常のディスプレイ広告では一定期間で配信して、終わったらレポートを出して、CTRなど、よしあしを見るのが一般的なケースです。でも、EffectiveOneを使うと、お客様が広告を出稿した結果を、お客様のDMPのなかに戻すことができるので、広告に反応した人、クリックした人がどういう人だったのか分かり、そういう人にメールなど、他のチャネルを活用してアプローチを行える事が大きいかなと思います。

DSPだけでなく、第三者配信プラットフォームとつながることによって、DSPに網羅できないところでも対応できるようになります。DSPでは買えないプレミアムなバナー広告や、リスティング広告をクリックしたユーザをDMPに蓄積して、次のキャンペーンを考えてもらうこともできるし、恒常的にユーザのデータを蓄積してもらうこともできます。

「EffectiveOne」とデフォルトで連携

有園:EffectiveOneとデフォルトで連携しているのがAudienceOneってことですね。これは大きいですね。

重原:僕らも、AudienceOneを提供しながら、アドネットワーク事業も行っております。最近ではDSPを活用した配信も行っておりますが、多くのケースで、EffectiveOneを活用しています。

もし、花王のキュレルが50~60代の男性にうけていたら?

有園:私の仮説があります。たとえば、花王にキュレルって商品があります。これは、たぶん、敏感肌の女性向けスキンケア商品だと思います。女性向けにターゲットされた雑誌に、女性を使った広告を載せたりしていると思うのです。でも、もし、DMPを入れて属性を分析したら、全体の10パーセントくらいは50代から60代の男性がきていることが分かったとしたら。年を取ると男性も肌が荒れたり、敏感肌のような症状がおきたりするかもしれません。そういう人たちは、キュレルの商品を使うとよいのではないかと考えられる。こういったことが分かるわけですね。そうすると、女性誌に広告を出すだけではなく、50代から60代の男性が読んでいそうな、媒体社にEffectiveOneを活用し、反応ユーザの分析を行う事が可能なわけですね。

これは、私の仮説なので、花王の担当者が、どうしているか分かりませんが、この仮説があたれば、そもそも、50代から60代の男性向けにサイトを作って、ランディングページも用意して、クッキーにあわせて切り替えたほうがよいかもしれません。

さらには、キュレルメンズって商品を作って、50代から60代向けの雑誌に広告を出すのがよいかもしれない。もしかしたら、すでにキュレルメンズってあるかもですけど。まぁ、あくまでも仮説ですが、そうなると、ユーザの属性を知ることって商品開発にもつながるし、マス広告のターゲティングの仕方にも影響を与えてくるって話ですよね。

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重原:おっしゃるとおりです。我々の特徴でもありますが外部データの活用はそのような点が非常に有効的です。お客様だけでは発見できない、想像もつかなかったけども実際に顧客になっているオーディエンスを知る事が出来ます。
AudienceOneでは、リサーチ会社との連携もしています。リサーチパネルとAudienceOneのクッキーが紐づいている状態です。もちろんリサーチパネルに登録をしている個人が特定されないように処理されている状態ですが、生成したクラスター単位で直接アンケートを送ることができます。従来できなかったマーケティングの使い方ができるようになっています。

アサヒビールのサイト「CAMPANELLA」のケース

有園:最近、アサヒビールがCAMPANELLA(カンパネラ)というサイトをもっています。日経BPにつくってもらっているようですが、オウンドメディアの拡張版、あるいは、テレビのタイムを買うような感じかなと思っています。みた感じでは、30代から40代のビジネスパーソンに向けたサイトです。たとえば、このサイトで、二年間に500万人のユニークユーザを集めて囲い込みたいとします。継続してコミュニケーションをとっていきたいということで、会員制にしていくとします。仮にですよ。

CAMPANELLA[カンパネラ]ビジネスパーソンにひらめきの鐘を
http://business.nikkeibp.co.jp/campanella/

会員登録してもらえれば、もちろんメールも送れるようになります。だから、アサヒビールの工場見学を告知するときも、CAMPANELLAを訪れた人にメールを送付する、あるいは、リターゲティングすることも可能になります。似たような話が他のクライアントでもあったりするのですが、このようなケースで、AudienceOneではどのようなことができるのでしょうか。

CAMPANELLAを訪れる人が、よく飲むビールは、アサヒのアサヒスーパードライなのか、キリンの一番搾りなのか、サントリーのザ・プレミアム・モルツなのかといった情報がとれるのでしょうか。ちょっとハードルあげてみました。

重原:最近ではお客様自信が実施したアンケートの回答情報をAudienceOneに格納するという事も実施して行っております。また、先ほどもお話をした通り、リサーチ会社と連携しているので、CAMPANELLAのサイトに訪れていない人に対しても、普段どんなビールを飲んでいるかアンケートを行い、その回答結果を蓄積する事も可能です。そのように蓄積したオーディエンスデータを用いて、例えば既に自社の顧客であれば、自社アンケートから購買頻度が低い人と高い人を分類。それぞれの外部のメディア接触状況から嗜好性に違いが有るのかを分析し、そのオーディエンスに最適なクリエイティブを用いてメールやディスプレイ広告でアプローチを行う事も可能です。また、自社の顧客ではない場合は、リサーチから回収したオーディエンスデータを基に、類似するオーディエンスへ拡張を行い、新規の顧客を呼び込むという施策を打つ事も可能です。

有園:CAMPANELLAはビジネスパーソン向けにつくっているように見えるので、訪れている人もビジネスパーソンだと想定されます。読んでいる人のクッキーがたまり、コンビニやクレジットカード会社などのポイントカードと連携できたらどうでしょう。

たとえば、Xrost DMPをやっているPlatform ID社はCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)とオプト社の合弁なので、TSUTAYAのTカードとつながっているのではないかと業界では想定されています。Tカードの提携店などで買っているビールが、アサヒのアサヒスーパードライなのか、キリンの一番搾りなのか、サントリーのザ・プレミアム・モルツなのかといったデータがとれる可能性がある。そうすると、詳しい仕組みは割愛するとして、CAMPANELLAを訪れた人が、どんなビールを飲んでいるかが分かる可能性があるってことですよね。

いま、これと同じようなことが他でも起きています。そして、これはXrost DMPに限らず、AudienceOneなどのDMPを入れておけば、購買履歴に紐づく形でデータがとれるようになるかもしれないってことですよね。

重原:単一の広告主で考えると、アサヒビールのサイトとスーパードライを買ったことを紐づけて、購買情報をAudienceOneへ蓄積していくことは、実現できるかなって思っています。実際にとあるお客様と連携をして、リアルの店舗で購買した履歴をAudienceOneと連携、その情報を基にオンライン上でキャンペーンを行うという事は今まさにテスト的に実施をしております。今はオンラインのディスプレイ広告のみの活用ですが、メールマガジンへの利用や、ソーシャルメディア情報との連携等幅広い活用をご提案しております。

しかし、これは購買履歴のデータと我々のデータが、どれだけ重複しているか、というところが重要で、システム的に連携していても、重複が少なければ活用の幅は限定されてしまいます。

100パーセント、オフラインでのユーザの動きを見ることは、しばらくは難しいと思います。そこは、リサーチやキャンペーン施策で補っていくしかありません。だから、我々も、広く、様々なデータを保有する企業と連携するようにしています。いろいろな企業と連携することで可視化できるデータを増やしていきたいなって思っています。

有園:ということは、CAMPANELLAを訪れる人が、よく飲むビールがなんであるか、ゆくゆくはデータがとれるようになるわけですね。サントリーのザ・プレミアム・モルツをよく飲んでいる人だけに向けて、DSPでバナーを配信することもできるわけですね。

重原:競合さんのオーディエンスデータを直接活用する事は物理的にも出来ないですが、アンケートデータやリサーチデータを有効活用する事で可能になりますね。img_modulo_conversation

フェイスブック広告とDMP

有園:フェイスブックだと、たしか、メニューで競合を選べますよね。アサヒビール側が、サントリーのフェイスブックページに「いいね!」をしている人をターゲットすることができるときいたことがあります。これは、「ガチで競合指定できるじゃん」と盛り上がっていたのですが。

広告主としては競合を指定してキャンペーンをやりたいわけですよね。テレビも、番組を見ている人が飲んでいるのは、アサヒのアサヒスーパードライ、キリンの一番搾り、サントリーのザ・プレミアム・モルツといろいろなので、そのなかで絨毯爆撃のようにCMを打っているわけですが、アサヒのアサヒスーパードライのCMを打つときは、競合の商品を飲んでいる人のブランドスイッチも狙っていると思うのです。違いは、ピンポイントにターゲティングできるかどうかだけなのではないかと思います。

あるECサイトでは、アサヒスーパードライをまとめ買いしている人、キリンの一番搾りをまとめ買いしている人がいたとき、競合の商品をまとめ買いしている人に、自社の商品をレコメンドすることができるそうです。でも、総合代理店の方と話していると、ガチで競合にぶつける提案はしにくいという声もあります。なぜなら、それをやったら「うちも相手から同じことをされてしまうかもしれない」と広告主が思うかもしれないというわけですが、いままでも別のところでは似たようなことをやってきたと思うんですけどね。ガチで競合指定したターゲティングには心理的なハードルがあるというのも、分からなくはないですが。

オーディエンスデータって誰のもの?

重原:例えばですが、オーディエンスデータって誰のもの?っていう議論もあるわけですよ。

有園:CAMPANELLAだと、訪れた人のオーディエンスデータってことですよね。この情報にくっついている情報は、訪れたオーディエンスのものなのか、CAMPANELLAが持っているものなのか、この二者択一ですか?

重原:オーディエンス視点で考えれば、オーディエンスに紐づいている情報。CAMPANELLA視点で考えると、CAMPANELLAのサイトで収集しているデータなのでその情報を、他広告主様に開示する事は出来ません。我々はお客様のサイトに訪問したオーディエンスに紐づく形で、我々が保有するオーディエンスデータとどの程度の重複が有るかを開示しています。ただ、これって実はごく一部のオーディエンスデータで、オーディエンス単位で情報をみれば様々なサイトを渡り歩いているはずです。
この市場が拡大し、競合をしないお客さん同士でデータの相互に連携するという未来もみえると思っています。そうなることで、よりオーディエンスデータの活用の幅は広がっていくと考えています。

クッキーはいつまで保持できるの?

有園:そういう形で、二年間で500万ユニークユーザを集めたいとき、ユニークユーザかどうかを含めて見ていかなければならないわけですが、クッキーって、長い時間保持することはできるんですか?

重原:我々では最長で二年間は保持できます。ただし、クッキーはユーザのPCに保存されているものなのでユーザが消すなど、ユーザがクッキーをリフレッシュしていることで頻繁に変わっていきます。我々もこの部分において、クッキーの代替技術等を日々研究しております。例えばソーシャルログインを活用するという事も1つの方法だと思っています。

ソーシャルログインと「AudienceOne」の連携

有園:二年間で500万ユニークユーザを集めることは、企画次第だと思いますが、ゆるく会員制を設けて、フェイスブックを使ったりすることを想定していれば、そこはそんなに問題ないってことですね。ソーシャルログインを使った場合のIDとAudienceOneの紐づけはどうですか?

重原:ソーシャルログインとの連携はできるようにしています。日本でいうと、グループ会社の株式会社トーチライトがGIGYAというプラットフォームを提供しています。あとは、株式会社フィードフォースがソーシャルPLUSを提供しています。我々は、この二社と連携しています。どちらのツールを使っていても、ソーシャルログインしていただき、ユーザに許諾を得る形であれば連携が可能です。

有園:フェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアでログインして、アサヒビールのCAMPANELLAで会員登録したら、AudienceOneのクッキーとIDと連携できるようになっているわけですね。

ソーシャルログインは効果あり

重原:ソーシャルログインは、おすすめというか、絶対にやったほうがよいと思います。
メリットは様々ですが、ソーシャルメディアのIDでログインすることによって、ユーザがクッキーを消していても、もう一度、同じクッキーIDを発行することができます。技術的には、クッキーが消えると、その人に紐づく情報は消えるのですが。たとえば、ソーシャルメディアのID「A」、AudienceOneのクッキー「B」と紐づいていて、AudienceOneのクッキー「B」には、いろいろな情報が紐づいているとします。ある日、ソーシャルメディアのID「A」を持っている人が、突然「C」になりました。こういうケースが想定されます。ユーザが、クッキーを消してしまった。違うデバイスでログインした、違うブラウザでログインしたなどと。

有園:「C」は、ソーシャルメディアのIDが変わったのではなく、クッキーが変わったってことですね。

重原:はい。固有のIDを軸にすると、クッキーやデバイスが変わっても、情報をコピーすることができます。パソコンでソーシャルログインして、スマートフォンでもソーシャルログインすると、クッキーが2つ発生している状態です。パソコンの方がクッキー情報は多ければ、スマートフォンのクッキーに対して、パソコンのクッキー情報をコピーすることができます。そうすることによって、スマートフォンでもパソコンと同じようなターゲティング広告を打つことも、できるようになります。

ソーシャルログインを活用するメリットは他にも有ります。ソーシャルログインは(特にモバイルで)ユーザビリティを高めることができるので、会員登録やログインといった認証コンバージョンを上げることができます。認証してもらえれば、固有のIDを特定できる機会が増える訳です。例えばトーチライト /GIGYAの事例では会員登録率が最大で+100%、ログインアクティブ率が86%(内、ソーシャルログインがログインアクションの80%を占める)なんて事例も出てきております。

あと、通常の会員サイトって、登録するときに、そんなに項目は多くはないと思うんですよ。名前や年齢、性別や住所など。でも、ソーシャルメディアの情報は、ユーザが結婚しているのか、子どもがいるのか、引っ越したのかなどが分かります。ソーシャルメディアは、ユーザが誰かに何かを伝えるために使っていると思うので、情報のリフレッシュ頻度が高いし、情報が深いです。AudienceOneで得られる、自社サイト訪問履歴や、広告配信結果に加え、ソーシャルメディア情報を加え、さらに顧客を見える化する。自社のリピーターや新規顧客はどのような嗜好性を持っているのか、自社のファンなのかなど、オーディエンスの情報をより把握する事で、アプローチの方法も無限大に広がっていくと考えています。

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フェイスブックのデータはどこまで使えるの?

有園:フェイスブックログインを使ったときに、フェイスブック側がもっているデータは、AudienceOne側で使えるんですか?ソーシャルログインを使う際に、「○○を承認します」とか出てきますよね。「ああ、いいよ。ポチ」って押すわけですが、あそこに出ている情報はすべて連携されますよね。それプラス、その人が、たとえば、サントリーのフェイスブックページに「いいね!」しているとか、そういった行動履歴をひろうのでしょうか。

重原:ソーシャルログインをする際にはパーミッションが必ずあって、ユーザが許諾している情報は連携が可能です。ただし、AudienceOneは、個人情報に該当する情報は取得をしないポリシーですので、メールアドレスなど個人情報に該当する情報は取得しないで、嗜好性などのデータがAudienceOneに蓄積されるようになります。

有園:個人情報にあたる部分をデータベースに取り組むと面倒なことがあり、法的にトラブルがあるかもしれないので、事業者としても使いたくないので省いていますね。

重原:単純にソーシャルログインをして入ってきたユーザの情報はCRMと同じ扱いになります。たとえば、ECサイトにソーシャルログインして、特定の企業に「いいね!」を押していたら、お客様が、そこから得られた情報として、そのユーザに特定企業の新商品をレコメンドとしてオススメしたり、メールを送ったりするとことはできます。

有園:広告主が会員制を企画するんだったら、ソーシャルログインを使った方がよいわけですね。

重原:間違いなくえられる情報は、圧倒的に多く、深いです。

ソーシャルメディアのデータ活用法

有園:御社の場合は、それがAudienceOneではデフォルトでできるわけですね。

重原:ただ、利用には注意をしなくてはいけないポイントが多くあります。

有園:そうなんですか?

重原:アサヒビールやキリンのサイトにソーシャルログインしましたと。そのデータを自社のマーケティング活動に利用することはFacebookの規約の中で問題がないとされているのですが、第三者にデータを提供してはだめだということになっています。

どういうことかというと、外部のDSPにデータを連携して広告を配信したり、アドネットワークにデータを提供して広告を配信したりすることはできないルールになっています。

有園:その解釈っておもしろいですね。広告の出稿も、広告主が自社のマーケティングのためにデータを利用していることになりますよね。物理的に自社内のデータベースという領域の外に出なければいいってことなのですね。たとえば、新聞社などの媒体社がソーシャルログインをさせた場合はどうでしょうか。

重原:同様に様々な情報がとれます。ソーシャルログインをして「子どもがいる人」というクラスターをつくって、「子どもがいる人」というターゲティング広告を広告主に販売することはオッケーなんです。あくまでも、自社(媒体社)のなかで完結することなので。

有園:AudienceOneを媒体社が使うときも、ソーシャルログインは積極的に使ってほしいわけですね。使うことによって、新しい広告商品を開発できるかもしれないと。子持ちに向けたバナー広告を出したりと。これって、けっこうお得ですね。

媒体社のDMP導入状況

有園:媒体社の導入状況はいかがですか?

重原:2014年に入り、導入が増えてきました。行動ターゲティングの中でデータをレベニューシェアするケースでの取引は、これまでもありますが、DMPを媒体社にフル活用してもらうケースは、まだ少ないです。

広告主はDMPの利用目的が比較的はっきりしています。しかし媒体社の場合は、広告収益をどう拡大するかというのが目的としては大きいので、サイトの価値をあげていく活動が一番大きい軸になると考えています。一方で、ページビューやユニークユーザ数など、データのボリュームが大きくなってしまうので、広告主様よりDMP利用に費用がかかるケースが大半です。そのためメリットを明確にし、マネタイズをどう行っていくかが重要になってきます。

インターネット広告市場はここ数年で大きく変わっており、媒体社様の収益構造も変わっていると思います。媒体社とは密に連携してデータを分析しながら、サイトの価値をどうあげるかを提案し、ようやく活用してもらえるようになってきた感じです。

とある媒体社で「砂糖」に関する記事があり、AudienceOneの保有するオーディエンスデータでユーザが過去にどれだけ「砂糖」に関することに触れているか、関心があったかを調べたところ、「砂糖」に関する記事に触れる前は、まったく「砂糖」に興味がなかったけれど、その記事に触れたことで、その後、他のサイトでも「砂糖」というキーワードに触れることが増えるといったことがありました。

ニュースサイト単体で見ると、砂糖に関する記事が注目されることは少ないと思いますが、その記事がどれだけユーザに影響を与えたというのが可視化されます。影響力あるサイトは、その後の行動に影響を与えることが予想されます。AudienceOneでデータを分析することで、このようなサイトの影響力を見出すことができるようになるかと思います。いろいろな軸でデータを見ながら、媒体社と話しあっています。ひとつのコンテンツが与える影響力を数値化できると、面白いなって思っています。

自社のユーザを把握しなければならない理由

有園:僕は学生時代、90代前半から半ばですが、新聞社でアルバイトをしていました。その頃ちょうどNIFTY-Serve(ニフティサーブ)が盛り上がっていて、NIFTY-Serveに向けて新聞の記事要約を出したりしていて。「新聞社のウェブサイトを作らないとね」って話が出たりもしていました。

ただ、そのときも少し話題になったのですが、新聞社だけでなく雑誌社もそうですが、自分たちの読者がどんな属性なのかを、あんまり詳しく知らないんですよね。把握しようともしていなかった。テレビ局もそうですよね。きちっとマーケティングをする部署がない。いまはあるかもしれませんが。ウェブサイトとかも、自社サイトに訪れているのは20代男性が多いのかどうかは、調査しているかもしれませんが、あんまり分かっていません。

でも、AudienceOneを入れると、だいたい推定で、20代男性はこれくらい。20代女性はこれくらい、しかも、リアルタイムでとれるわけですよね。それだけでも十分価値があるように思います。

媒体社は「それって調査ですよね。調査にそんなにお金をかけられない」と言うかもしれませんが。サイトの記事を読みに来ている人がいて、記事を読みに来た人が会員登録をしていても、していなくても、AudienceOneを入れていたら、SSPを経由して属性を飛ばせることになると思うのですが、間違ってないでしょうか。

重原:DACグループとしてその領域に着手をしています。SSP領域においては株式会社プラットフォーム・ワンが提供するYIELDONE、アドサーバーはDACが今期リニューアルをしたFlexOneがその領域に対応しています

有園:10回インプレッションがあり純広の枠がでるときに、いまは基本的には、その10回の枠は純広で売ったものが出るんだけど、DSP側には純広より高い値段で入札している広告主がいても純広を出しているわけですね。御社グループは、そうした状況を変えようとしていると。

DSP側って、〇○な条件だったら、高い金額を出してもいいですよってなっていると思います。となると、媒体社側も訪れている人が、どんな属性かを把握できないと、その○○の条件を出せないですよね。純広枠のすべてのユーザのインプレッションを買いたいのではなくて、20代女性がきたときだけ買いたいとかある訳です。

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重原:その通りです。媒体社がAudienceOneを導入する事で、自社が保有するオーディエンスデータ特性を活かした情報をリクエストとして出すことが出来る。さらに、自社のユーザを深く分析し、精度や価値を高めることで、媒体社のレベニューも改善されるのではないかと思っています。

DMPの未来

重原: DMPは単体ではデータをためるだけの箱です。「なんでもできるよね、DMP」っておっしゃる方は多いですが、本当に使い方次第です。

DMPを入れてタグ入れて、データを放置している。タグを入れただけ。これだと、データがたまるだけで何もできていません。DMPは使いこなせば魔法の箱になりますが、使わなければただの高い箱。ぜひ使ってほしいです。DMPをつかった事例は、まだ少ないと思っています。

有園:オリックスの事例など、記事があります。

重原:ようやく出始めた感じですね。でもまだまだ少ないと思っています。本来、DMPが与える価値は、広告配信につなげて使うケースだけではありません。ソーシャルとの連携で「いいね!」を押している人が、どんな行動をとっているのかとか、メール配信につなげてとか、いろいろなものとつなげることができます。本来DMPはマーケティング活動の中核にあるものだと思います。しかしそのような事例はまだ少ないと感じています。2015年はそのような事例が多く出てくると考えています。

DMPは最終的には、お客様が自社で能動的に使っていくと考えています。しかし、僕らは今ツールだけを提供するという事は行っていません。お客様と一緒になって「DMPをどう使っていくのか」を考え、実践するという事を最も重要なポイントとして考えています。自ら使い、その価値を高めていくことで、市場を拡大していけると思っております。

システム面では、細かいマイナーチェンジを月に1回は行っています。機能的な部分はどんどんブラッシュアップしていきます。お客様視点で使うために、管理画面はどう変えていくべきか、もっと研究が必要ですし、お客様と話をしながら日々変えていくことになるのかなと思っています。もちろん、外部の事業者との連携などもロードマップはひいています。

DMPの活用はまだ始まったばかりです。我々は、単にデータを保有するだけでも、テクノロジーを提供するだけでもありません。今はDMPを我々も活用することで、お客様のビジネスをドライブさせる、そのような「価値」を提供する事でこの市場を拡大していきたいと考えております。

有園:広告主も媒体社も抱えている課題を解決するために、データは役立つと思うので、早い時期にDMPを導入し、経験を積むことが必要ですね。ありがとうございました。

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アカデミックなアトリくん
【アトリくんの視点】DMPの分類や、DMPの導入状況・事例など、業界を牽引されている企業の視点からお話を聞くことができ、大変勉強になりました!
DMPの活用方法に関しては、まだ広告配信への利用が主流になっていると感じます。テクノロジーを提供する側、テクノロジーを利用する側ともに既存の考え方に囚われない活用方法を考えていくのが今後のDMPを考えていく上で非常に大事だと改めて感じました。重原さん、ありがとうございました!

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【海外ニュース】Visual IQ、AdobeのMarketingCloudと連携

米大手アトリビューションソリューションベンダーのVisual IQが、
AdobeのMarketing Cloudと連携したことを発表しました。

http://www.adotas.com/2014/03/visual-iq-completes-integration-with-adobe-marketing-cloud/

 

今回の連携によりAdobe Marketing Cloudの、以下の4つの機能を拡張することができるそうです。

・オーディエンスターゲティング
AdobeのAudience Managerの各種データと、Visual IQのAudience IQのアルゴリズムによって貢献度を付与されたデータを統合し、
アプローチするべきオーディエンスをより正確に把握

・統合レポーティング
Adobe AnalyticsとVisual IQのTrue Metricsのデータを統合することで、
チャネルを横断したデータを正規化し、共通のKPIでパフォーマンスを比較

・キーワード最適化
Adobe Media OptimizerへVisual IQのIQ Deployから送られるフィードを送ることで、
検索連動型広告のパフォーマンスの確認とキーワードの最適化を、貢献度が付与されたより正確なデータを元に行うことが可能

・タグマネジメント
AdobeのDynamic Tag Managementを利用することで、Visual IQのタグをすでにタグが実装されているページに対してすぐに追加することが可能

 

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【アトリ君の視点】Google Analyticsしかりですが、今後統合管理が進んで行くことで、アトリビューションが特別なものでなく、当たり前にある一つの指標として扱われる日もそう遠くはないように感じます!

 

 

 

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アトリビューション特別対談:DMPとアトリビューションはどちらも生活者の行動を明らかにするものだ!HDYMP柴田貞規氏・篠田裕之氏×アタラ有園

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データマネジメントプラットフォーム部を有する広告会社

有園:株式会社博報堂DYメディアパートナーズのデータマネジメントプラットフォーム部部長の柴田貞規さんと篠田裕之さんを迎え、お話を伺います。日本全国を見ても、データマネジメントプラットフォーム部という名前の部署を有する広告会社は珍しいように思います。博報堂DYメディアパートナーズの中で、データマネジメントプラットフォーム部が立ち上がったのは、いつ頃ですか?

柴田:2013年4月1日付で立ち上がりました。

有園:部署名からDMP(Data Management Platform)をやっていることは想像できますが、具体的な業務範囲を教えてください。

柴田:業務としてはDMPを使ってのサービス開発、DMPの運用がコアにあります。その他に、ディスプレイ、サーチといったパフォーマンス広告の設計・運用も行っています。また、オンラインのアトリビューション分析といった業務も担当しています。

有園:2013年頃から電通さんが「運用型広告」という表現をつかっていますが、「運用型広告」とは「リスティング広告」「DSP」「アフィリエイト」などが主なものだと思います。柴田さんたちの部署では、DMPやアトリビューションもやっていると。それらを一貫してやるために立ち上がった部署ということですか?

柴田:経緯はいろいろありますが、結果的には、それらを一か所でマネージしている状況です。広告主様のゴールの達成には、広告のプランニングから出稿、分析が必要になるので、ワンストップであることは必然的な結果かと思います。

有園:2013年後半あたりから私自身も、アトリビューションとDMPは相性が良く、一緒にやることに意義があるのではないかと言ってきました。そういう意味でも、博報堂DYグループの中に、データマネジメントプラットフォーム部があって、アトリビューションも一緒にやっているというのは感動的です。今後の方向性を伺えますか?

生活者の行動を明らかにするためのアトリビューション分析

柴田:私たちの用語で言う「生活者」が、どのような行動をとるか考える。これは、アトリビューションやDMPの共通の考え方かなと思っています。アトリビューションとは、カスタマージャーニーを明らかにすること。今話題のDMPも、生活者がどういう行動をとっているか、生活者の趣味、嗜好がどこにあるのか、それらを明らかにすることが肝になってきます。

生活者が、何を考え、好み、行動するのか。それらを知ることは、私たちのグループにとっても重要になってきます。そのためのソリューションは、アトリビューションマネジメントもあればDMPもあります(切り口や方法は異なりますが)。それぞれがバラバラにあるというよりは、生活者のインサイトが中心にあって、そこを取り巻くように、いろいろな商品や手法が配置されます。生活者のインサイトにメッセージを届けるための手段として、広告があります。メッセージが適切に届いたか、その効果はどうだったのか?を知るためにアトリビューション分析やDMPがある。生活者のデータが真ん中にあることが重要ですね。

有園:スッキリしました。確かに、生活者の行動を明らかにするために、アトリビューション分析をしているんですね。

マスメディアのバイイングにDMPデータを応用

有園:柴田さんのところでは、運用型広告、DMP、アトリビューションを扱っていますが、御社は総合広告会社なので、今後はマスメディアへの影響なども考えていかれるのでしょうか?

柴田:そうですね。現状、ここ1年くらいは、オンラインのメディアに特化してプラニングしてきました。しかし、すでにいくつかの広告主様では、オンラインのデータを使い、他のメディアのプラニングを開始しています。オンラインのデータの使いどころはオンラインメディアに閉じず、他のメディアへの展開を考えており、実際にその動きがもう始まっています。

有園:実際に動きがあるんですね。私自身はインターネット広告を主にやっているので、マス広告側のバイイングがどのようなロジックで行われているのか、実体験として、あまりよく分かりません。いま伺った話ですと、マスメディアのバイイングにもDMPのデータが応用されているということですが、具体的にはどのような内容ですか?

歴史と旅行好きは秋葉原のアイドルが好き?!

柴田:例えば、これはあくまでモデルですが、ある広告主様が新商品を発売するとします。その新商品は、歴史が好きで、旅行が好きな人を対象にしているとします。そのときに、今までだったら、歴史好きが集まってくるウェブサイトや旅行好きが集まってくるウェブサイトに広告を出稿しようということで、オンラインは完結していました。

それが、DMPを使い、第3者データと掛けあわせて訪問者データを分析することによって、サイトに集まっている人たちが歴史や旅行以外に、他にどんなことに興味をもっているのかがわかってきます。たとえば、歴史と旅行が好きな人たちは、あるアイドルが好きだという共通項が見えるといったことがあるかもしれません。その場合、アイドルに関するサイトにオンライン広告を出しても良いですが、そのアイドルがよくライブをする駅にアウトドア広告を掲載したら、その人たちが認知するのではないか、そのアイドルが載っている雑誌に広告を出してみようかということになるのではと考えています。

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DMPのタグを入れユーザーの行動履歴をとる

有園:広告主が取り扱う、歴史や旅といった商品に関するウェブサイトのページ内にDMPのタグを入れると、DMP側ではインターネット上でのユーザーの行動履歴がとれ、その中で、歴史好きの人はある地域を頻繁に訪問していることが分かってくるというわけですね。こうした取り組みは引き合いも多いですか?

柴田:多いです。いままでの発想とは違うターゲットの見つけ方なので、新しいターゲットを見つけたいという広告主様の欲求を満たす取り組みとして、非常に引き合いが多いです。

有園:それじゃあ柴田さん、お忙しいですね(笑)

柴田:いや、僕よりも若手が忙しいです(笑)

有園:忙しい若手の話は後程、伺うとして、今後ますますDMP、アトリビューションは、御社の中でマス広告も含めた、さまざまな業務のバイイングやプラニングに関わってきそうですね。

DMP、アトリビューションがマーケティングを変える

柴田:マーケティングの仕方に影響を与えていきますね。

有園:引き合いが多くて現場は大変だという話が出ましたが、現場の篠田さんは、どのような感想をお持ちですか?

篠田:引き合いは、2012年はアトリビューション、2013年はDMPが多かったです。

有園:DMPの部署を作ったからでしょうか?

篠田:そうだと思います。いままでは、DMPみたいなことがやりたいと思っても、誰に何を相談したらよいか、相談する先が分かりませんでした。でもいまは、明確にDMPというソリューションができて、データマネジメントプラットフォーム部という組織ができたことで「ここに相談したらいいんだ」と分かりやすくなったんだと思います。

有園:御社の中で「データマネジメントプラットフォーム部に相談すればいいんだな」という流れができたわけですね。

篠田:そうです。

広告主に「DMP」を理解してもらうために

有園:おそらくですが、2013年の一年間で、大手の広告主がDMPを理解したように思います。ただ、最初は必ず「DMPとは何か」を説明して回らなければなりません。御社でも結構な数の企業へ説明に行かれましたか?

篠田:企業様のニーズ、状況に応じて、ご提案している状況です。まずは「DMPとは何か。御社がデータを活用すると、こういうことができる」というご説明から始めております。

有園:説明に使う資料も篠田さんがご自分で?

篠田:私含め、部署全員で協議の上、作成しております。

有園:御社のグループの中にDAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社)があり、DACグループの子会社である株式会社モデューロでは「AudienceOne®」を持っていますね。御社では、基本は「AudienceOne®」を提案するスタンスですか?

柴田:いえ。基本はオープンで、DMPはどこでも対応しています。とはいえ、データ量が多くて結果的に「AudienceOne®」を選ばれることが多いですね。

有園:ということは、いろいろなDMPに詳しくならなければなりませんね。

柴田:そうですね。研究はしています。

DMPのタグ発行からセグメントまで

有園:DMPの説明をした後、実際に案件がとれたとして、DMPの管理画面に入ってタグの発行や設定、セグメントといった業務は、篠田さんたちが自らやっていらっしゃるのですか?

篠田:はい。いまはデータマネジメントプラットフォーム部のメンバーがタグを発行し、管理画面に登録、運用するところまで自分たちでやっています。

有園:アトリビューション業務と絡むと思いますが、いろいろなデータがとれるようになると、その分析も自分でやっているのでしょうか?

篠田:以前は、データ分析専門のパートナーに協力してもらっていました。自分たちはレポートの設計をして、データの集計はパートナーに頼むことが多かったのですが、それだと仮説を立てて結果を見て検証する、というサイクルが遅くなってしまうのが難点でした。そこで今は、部署内でできるデータ分析の領域を広げております。
実際に私たちの部署では、統計ソフトやデータベース言語の「SQL」なども使用しています。ロケットサイエンスが必要な巨大なデータとまではいかなくても、ある程度の規模のデータは、出来るだけ自分たちで分析できるようにしようとしています。

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有園:統計ソフトやSQLも使うんですか?

篠田:使います。

柴田:僕ですらインストールしています。まだまだ、使い方がわからないところたくさんありますが、超楽しいですよ。

有園:楽しいですか(笑)なるほど。

柴田:データを整形するのが大変ですが。

有園:最初にデータセットを作るのが大変ですね。

柴田:コマンドをたたくのは苦ではないので。

有園:もともと、バックグラウンドはエンジニア系ですか?

柴田:エンジニアではないですが、新人の頃いろいろやらせてもらったので。だから、まったく苦ではない。面白いですね。

篠田:僕はもともと理系で、コンピューターサイエンス専攻でした。

データを分析する業務に携わる者に必要なスキルとは?

有園:そうなんですね。いまの話を伺い、これまで総合広告会社の中で必要とされていたスキルとは違うものを要求される時代になりつつあるのかなと思ったのですが、御社のデータマネジメントプラットフォーム部として、またはデータを分析する業務に携わる者として、必要なスキルはどのようなものだと考えていますか?

篠田:基本的には、メディアや生活者の変化にあわせて、広告主様の要求がますます高度になっているので、それを正しく理解できるスキルだと思います。具体的には、タグマネジメントやデータ分析のスキルがあると思います。データ分析スキルには統計知識も含まれます。ツールとして、「R」や「SQL」が使えることも望ましいと思います。

また、アウトプットとして、レポートだけでなくメディアのバイイングに活かすことも求められます。僕らは研究部門ではなくメディアのプラニング部門なので、最後にメディアのプラニングまで落とし込むことがデータマネジメントプラットフォーム部に求められているスキルだと思っています。

有園:けっこう広いですね。

篠田:冒頭で柴田が申したとおり、私たちの部署は、最初はリスティング広告やDSPの運用から始まっていて、アトリビューションが盛り上がってきた頃にアトリビューションをやり始め、2013年からDMPを本格的に取り組み始めました。

私たちの部署のメンバーは、もともとリスティング広告やDSP広告の運用から関わっているので、タグマネジメントへの理解がありました。一から覚える状態ではないことは幸運だったかなと思います。

有園:ということは、篠田さんはずっと柴田さんと仕事をしているんですね?

柴田:パフォーマンス系の仕事を一緒にしてきました。

統計学の身に付け方

有園:自分の経験からも、統計学の知識を社会人になってから身に付けるのは、ハードルが高いと感じているのですが、篠田さんはバックグラウンドに統計学がおありでしたか?

篠田:僕は、たまたまそうでしたが、データマネジメントプラットフォーム部には文系出身もいます。そうした者には、統計の知識を身に付ける場が用意されています。博報堂DYグループは学びの場が多いと思います。

有園:「R」を使って統計を覚える研修があるのですか?

篠田:「R」を使うまではいきませんが「クラスター分析とは」「主成分分析とは」といった、統計についての知識を学ぶ場は広く用意されています。統計に限らず、いろいろな学びの場が用意されています。

有園:回帰分析や重回帰分析も、ご自身でやっているのですか?

篠田:はい。周りに得意な人がいますし。もともと、弊社のマーケッターがアンケートデータを中心にやっていたことが、いまはPOSデータやメディアのバイイングデータ、アクセス解析データに変わっただけで、もとからかなり統計を使っている会社だと思います。

有園:いわゆるマス広告の分野で、伝統的にマーケティングの部署が統計はやっていますよと。

篠田:データの粒度と量が変わっただけで、クラスター分析の鬼みたいな人がいるなど、環境には恵まれています。

実行スピードを速くするために、やらないことを決める

柴田:僕らの仕事はメディアのプラニングをすることで、研究開発が目的ではありません。広告主様を含め「ここまでで良い」という線を引ければ、統計をすべて理解できてなくても、最低限のことさえ分かればプラニングできるケースは増えます。

実行スピードを速くするために、やらないことを決める作業は、今後ますます重要だと思います。できるだけ、分析作業自体は出来る人にやってもらいます。僕らは現場の最前線にいて、広告主様のマーケティングゴールと常に向き合っているので、広告主様のスピードに遅れることが許されません。常に早く答えを出し続けるために、どのような分析のスキルが必要なのかを考えていかなければなりません。単純に統計だけ勉強すれば良いという話ではなく、なんのために分析するのか。その理由を考え続けなければなりません。できるだけシンプルに、広告主様のマーケティングゴールからボリュームダウンしていくアプローチをしています。篠田のようなアプローチもあれば、いろいろなアプロ―チ方法があって、いろんな人がいて良いと思っています。

有園:PDCAの中で回している印象を受けました。ぜひ、具体的な事例を伺えますか?

篠田:僕たちはアトリビューションとDMPをやっている部署なので、アトリビューションの事例、DMPの事例、それから、アトリビューションからDMPにつながった事例を紹介します。

アトリビューション事例

篠田:まずは、アトリビューションの事例です。今回ご紹介するのは、ビュー効果の持続時間を分析した事例です。
もともとは、ビュー効果は、バナーが表示されてから時間が経つごとに減少していくのではないかと考えたところからスタートしました。

バナー広告を表示させたとき、どれくらいの人がサイトに来訪したかというビュースルー流入率を、広告を出稿していないときのサイト流入率をベースラインとして、バナー広告表示後の時間経過ごとに有意差検定をしていきます。すると、バナーのビュースルー流入率とベースラインのサイト流入率の差は、時間を経るごとに減っていって、やがて有意差がなくなります。結果、最後にバナーが表示されてから何時間までは、バナーのビュー効果として考えて良い、ということをベーシックな考え方としてやっています。

有園:有意差とは、統計的に有意な差があるかどうかということですね。

篠田:そうです。その結果を用いて、このクリエイティブで、このメディアで出した時の有意差が出る範囲はここで、ビュースルーでの流入がこれくらいあって、ビュースルーでの資料請求数はこれくらいある、といった算出ができます。

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有園:ちなみに、こちらの画面の中の、とある広告主様に関する結果で、その有意差は何日間くらいまで続いているのでしょうか?

篠田:せいぜい何時間です。

有園:何時間なんですね。

篠田:最後にバナーが見られてからのバナーのビュースルー流入率とベースラインとしての流入率との差は、もちろん1日以上あります。でも、有意差が出るのは、バナーを最後に見られてから何時間というところでした。

有園:逆に言うと、最後にバナーが見られてから何時間というは、5時間から6時間でしょうか。

篠田:そうですね。ただ業種などにもよると思います。

DMPの事例

有園:では、DMPに関してはいかがですか?

篠田:DMPを用いた案件では、想定しているターゲットに、ちゃんとバナー広告が届いているかどうか、もともと想定していなかったターゲットがウェブサイトに来ているかの2点を分析しました。

DMPのデータを用いて、ある広告主様サイトにおけるサイト流入者を分類したとき、この事例では大きく4つのクラスターにまとめることができました。もともと想定していた、ビジネスマンのボリュームは大きく、きちんと広告を届けられていました。しかし、他にも健康興味シニア層や地方育児ファミリー層、そして都会派高所得者層など、これまで狙って出していたわけではないけれど、確かに広告主様サイトにはきていたボリュームが見つかりました。

有園:クラスター1がビジネスマン。これが想定するターゲット。クラスター2、3、4は想定外の人たちだったわけですね。

篠田:そうです。クラスター2、3、4は、そのように狙ってはいなかったけれど、そのような人たちがいるということは、こういう人たちに対して適したメッセージを出していくべきではないかということが分かりました。

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有園:バナー広告経由でサイトに流入してきた人たちに限らず、全流入に対して分析したわけですね。クラスター別にバナー広告のメッセージを変えたり、クラスター別にサイト内で動的にコンテンツを差し替えたりするようなことをイメージしていますか?

篠田:どちらもあると思っています。サイトにきている人たちに対して、メッセージを変えることはもちろんですし、狙ったクラスターとは違う人たちも来る可能性があるならば、こちらから積極的にそのような人たちにメッセージを届ければ、そのような人たちをもっと呼び込めるかもしれません。

アトリビューションからDMPにつながった事例

篠田:最後が、有園さんもおっしゃっていた、アトリビューションとDMPは相性が良いのではないのかという話につながる、コンテンツアトリビューションからDMPの提案につながったという事例です。

有園:まず、コンテンツアトリビューションとは、具体的にどのようなことをやっていらっしゃるのか教えてもらえますか?

篠田:もともと、僕らの部のミッションはメディアの再価値化です。さまざまなポータルサイトや専門サイトを対象に、広告以外に、広告主様にどのような価値が考えられるかを検証しています。

柴田:そこに貼った広告以外に、その広告を見た人たちが直接広告主様サイトには行かないけれど、広告主様の商品を買いたくなったり、実際に買ったりするかをきちんと証明することです。これまで、媒体ではサイトに貼られた広告が、何インプレッション出たか、どれだけクリックされたかしか効果測定されてきませんでした。

でも、今回僕らがアトリビューション分析することで、直接ではないけれどコンバージョンするにあたって、この媒体に接触し、記事を読んだからこそコンバージョンしたのではないかということを、きちんと数値化していこうではないかと。このアクションをとったのが2011年の終わり頃からです。

有園:広告が出ている、出ていないに関わらず、仮に広告が出ていないとして、某ポータルサイトに訪れた人が、広告主様サイトでコンバージョンするということが起こっているかどうかを見ていくわけですね。

柴田:いま、いくつかの媒体で実験的に取り組んでいます。

有園:自動車の記事とか、Q&Aとか、いろいろなコンテンツがあります。そこを見た人が、結果的に自動車のメーカーサイトに行って試乗予約などをしているとすると、自動車メーカーの広告を自動車の記事とか、Q&Aが載っているサイトに出したほうが、より効果は高まるのではないのかということですね。

篠田:広告と比較して、コンテンツ経由のユーザーがどれくらいモチベーションは高く、CVRが高いかが分かりました。

2012年までは僕らの提案としてのアウトプットは「ここに広告を出しましょう」「ここに広告を増やしていきましょう」というものでしたが、DMPが出てきて広告を出すこと以外に「この媒体のデータをDMPに取り込みましょう」という提案ができます。

具体的には媒体との取り決めになりますが、媒体から、その媒体を訪れているユーザーのデータをもらい、広告主様のDMPに入れます。そうすると、広告主様がもともと持っていたデータとDMPがもっているデータと、広告主様媒体のデータを組み合わせて、新たなセグメントが作れます。コンテンツアトリビューションをやって、それをDMPに取り入れるデータの選定に使い、最後はDMP経由でのアウトプットに活かす。このような流れを作るのが2014年の取り組みです。

有園:DMP経由でのアウトプットとは、DSPで買い付けを行うってことになるわけですね。それは、もうやっているのですか?

篠田:はい、出稿中です。

革命的な取り組み

有園:そのような分析結果に基づいて、広告主様が出稿するというのは、革命的なことだと思います。

柴田:たぶん、そうですね。他ではやっていないと思います。

有園:2012年のコンテンツアトリビューションでは、バナー広告経由よりも、記事経由の方がコンバージョンする率が高かったとおっしゃいましたが、そのようなことを言って、広告会社として、大丈夫ですか?

篠田:役割が違うと思っています。記事は、もともと興味のある人を熟成させるためにあり、広告はターゲティングするにしても、もっと広く潜在者も含めて振り向かせるためにある。そのとき、クリックしてくれるくらいモチベーションの高いユーザーでなくても、広告はあてると思うので。

有園:いまの話でいくと、記事やQ&Aといった、何らかのコンテンツをクリックして読んでいる人のクッキーを媒体社からもらって、例えば広告主のDMPと連携させ、プライベートDMPと連携させてDSPで出稿するというのは、リターゲティングするってことですよね?

篠田:そうですね。

有園:記事を読んでいる人の方が広告経由よりCVRが高いのであれば、それは御社の出稿でそのように仕組みを作り、記事で読んだ人にリターゲティングみたいなことをしていくわけですね。

篠田:この広告主様事例の場合、ユーザーの検討期間は長いです。記事の内容に応じて、購買の半年から一年くらい前であると思われる人たちには、こういった広告を出そう、購買直前の人たちには別のメッセージを出していこうということになります。

有園:検討期間の初期段階にあるのか、最終段階にあるのかみたいなことを行動パターンから読み取るのでしょうか?

篠田:そうですが、それは今後の課題として試行錯誤中です。

行動から分析してユーザーのフェーズを知る

有園:とある広告主が、オーディエンスターゲティングとリターゲティングをやっています。そこに、どのようなクリエイティブのバナーをあてれば効果が高まるかを検証しているのですが、リターゲティングは一度サイトを訪問した人に出しているので、一回来てすぐにコンバージョンしなかった人ということになります。

一回来てすぐにコンバージョンしなかった人は、何かしら理由があって悩んでいる可能性があるのではないかという仮説を立て、競合他社もいる業界なので、おそらく他の競合他社の商品と比較検討している可能性があるということになり、リターゲティングで出すバナー広告のクリエイティブを、比較検討している人に刺さるようなクリエイティブに変えたんです。すると、CTRが上がってCVRも少し上がりました。

ユーザーがどのフェーズにあるかを行動から分析し、クリエイティブを差し替えることは、次のアトリビューションやDMPである程度見えてくるところではあります。ただ、課題でもあると私も感じているところです。まさに、そのようなことが業界でもどんどん出てきそうですね。

篠田:たとえば、「車が好き」となってから車の広告をあてるというよりは、もう少し遡ると、引っ越しや結婚や出産など、車が欲しくなるタイミングの予兆みたいなものがあるはずです。そういったユーザーのモチベーションの変化を、いろいろなメディアと協力しながらデータを集めて、DMPの分析を通して上手くターゲティングできれば、より早くユーザーをターゲティングできるのではないか。そのような取り組みをしています。

コンテンツアトリビューションの事例

有園:コンテンツアトリビューションの話に戻します。とある広告主では、媒体社と話をして、いわゆる記事の中に戦略PRという形で記事化してもよいとされたものを、広告ではなく純粋な記事にしてもらったのですが、その記事を読んだ人が広告主のウェブサイトに飛んでくるかを調べました。結果的に、バナー広告経由の方が出稿量も多いのでアクセス数、コンバージョン数といった数字は大きいのですが、コンバージョン率は記事経由の方が二倍くらい高かったんです。

そういう現象って、他の広告主でも十分ありえると思います。そのとき「記事を読んだ人にリターゲティングで広告を出そうよ」という話が出てきます。とある媒体の記事を読んだという情報を分析するのは構わないけれど、記事を読んだ人にリターゲティングの広告を出すとなると、読者であるユーザーに対して広告を出すわけなので、これはいわゆるプライバシーの問題としてどうなのかという話になります。御社としてはどうされていますか?

柴田:媒体社様と広告主様の両方に、プライバシーポリシーをきちんと記載していただくとか、ユーザーに許諾をとってもらうことは大前提です。それがクリアできた段階で、実施できます。

有園:媒体の方で、そのような記事を読んだユーザーの興味関心に基づいて、アドネットワークやDSPから広告が出る可能性があることの許諾をとる旨、明記することが重要ですね。そういう風な許諾をとる方法の取り組みも、御社は一緒にやっていらっしゃるのですね。

柴田:そうですね。

データに対する感覚をもつということ

篠田:話が戻りますが、データマネジメントプラットフォーム部で必要なスキルセットとしてもう一つ、僕の中で持っておいたほうが良いと考えているものが「データに対する感覚」です。具体的には、メディアやサービスが、どういうデータを提供していて、そのデータを使うと、どういうことができるのかということを考えるスキルです。

僕は個人サイトで自分のデータを可視化することを趣味でやっています。自分のデータとは、自分のフェイスブックのデータであったり、自分のLINEのチャット履歴などです。それらを可視化しています。

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篠田:これは自分のLINEの履歴です。自分の最頻出ワードを24個、自動的に抽出し、何時に、どんなことを言っているかを可視化しています。この過程で、LINEのローデータにはどんなことがあるんだろうかとか、フェイスブックのローデータにはどんなことがあるかなど、あくまでも自分のデータを通じてですが、どのようなアウトプットができそうかを考えています。

有園:どういうアプトプットになるんでしょうか?

篠田:これからです(笑)

有園:なるほど(笑)

柴田:いま、ソーシャルグラフを分析している会社が増えていますが、それを広告領域に落とし込めているケースはあまりなくて。

そこで、人様のデータを使って分析することは難しいので、まずはn=1の本人が実験台となって、自分のデータを分析してみようということになりました。データを分析した後に、篠田に広告を打つとしたらどういう広告主様が、どういうタイミングで、どういうクリエイティブで、どういう基準で打つのが良いのかを考えるきっかけになればと思っています。

ツイッターのつぶやきを使って、広告モデルを考えてみたりもできるかなと。効果分析でツイッターを使うことはありますが、広告領域では適用されていないので。そういうのも「本人がやりたいならいいんじゃない」ってことでやってもらっています。完全に趣味ですが、いずれ仕事にすることも可能かもしれない。

有園:さすが、懐が深いですね。これが「データに対する感覚」ということですね。

DMPで、「見ることができなかったものを、見えるように」

篠田:これまで見ることができなかったものを、見えるようにするのがDMPです。同じメディアに同じクリエイティブを出して、同じターゲティング方法をとったはずなのに、CPAが全く違うとき、その理由を季節変動で片付けるのではなく、いままで考慮してこなかったデータを考えるということです。実は、同じに見えた広告配信も、世帯年収や家族構成が全く違う人に出していた等、いろいろな原因が考えられます。

どういうデータを扱うべきなのか、いま見えていないデータは何かを考えられることが、データに対する感覚かなって思っています。

データサイエンティストに求められること

柴田:データ自体はファクトです。縦軸、横軸に都道府県や購買件数などが並んだ表があるとして、それだけ見ていても面白くない。都道府県をGDPの多い順に並べ替えたとき、購買行動に何か違いが出るのではないかとか、一つのファクトに対して、僕らが思っている「東京都ってこういう都市だよね」「千葉県にはこういう人が多いよね」といった数値にない情報と組み合わせて数字を読めることが、総合広告会社としての強みだし、データのセンスかなって思います。ファクトだけ見て「東京都が多いですね」「千葉県がどうですね」と言うのは誰でもできる。「東京都はGDPがこうで、都知事選挙があるから、こういう数字になっていると思われます」みたいな、風が吹けば桶屋が儲かるではないですが、データの裏にある情報をどれだけ深ぼって、いけるか。それができるかどうかが、データサイエンティストとして非常に重要な要素だという気がしています。

有園:篠田さんはデータサイエンティストということですか?

篠田:違います。

柴田:それっぽい動きはしていますね。

篠田:僕は現場の人間だと思っています。広告主様と相談させていただきながら、一緒にいろいろな提案をしています。

有園:つまり、それがデータサイエンティストってことですね。

柴田:どう定義するかですね。データサイエンティストはフロントにいて、裏にはいないかもしれません。

有園:分析のみしているのではなく、広告主のニーズを伺いながら、ときに「お前は分かっていない」と言われながら、フロントに立つ。それは大事ですね。

柴田:弊社は媒体社様のパートナーでもあるので、媒体社様に寄り添って、メディアの価値を高めていきたいと思っています。それには広告主様側の強いニーズを知らないと価値を高めることはできません。広告主様と媒体社様の両方の声を聞くために、現場の最前線にいるべきだと思っています。

有園:媒体社と広告主の現場を理解して、媒体の価値を上げる提案をしていくということでしょうか?

柴田:それが僕らの仕事です。

媒体社、広告主、そしてユーザー

有園:広告主と話していて感じることがあります。アトリビューションやDMPを媒体社と広告主の両方にとって意味のある使い方をしていく際、ここにユーザーという視点を入れなければならないと思います。媒体社と広告主がハッピーになる使い方をしたとして、そこから発信される情報がユーザーに届いたとき、ユーザーの役に立ち、喜ばれないと意味がありません。「CMはトイレタイムです」みたいに「広告としての情報を届けられてもウザイです」になってはいけない。媒体社と広告主、そしてユーザーの三者がハッピーになる使い方を考えていかないと、業界としてはいけないんだろうなって思います。

僕はグーグルにいたので、グーグルの広告の「ユーザーの役に立つものを出す」というスタンスが染みついているのかもしれません。理想かもしれませんが。ユーザーの役に立つ広告が出て、その媒体も役に立つものであり、広告主も広告をクリックされてハッピーになるという関係性って、DMPやアトリビューションでも意識すべきことです。その思いで仕事をしたほうがハッピーだし、広告主も喜ぶなって思ったんです。

柴田:生活者にとって気持ちの良いタイミングで、気持ちの良いクリエイティブを出せるかどうか。さらに、飛んだ先のコンテンツがどのような形で作られているかも重要です。良いタイミングでクリックしたけれど、飛んだ先のコンテンツが思っていたものと違ったら、みんないなくなってしまう。生活者のいまのモチベーションをいかに理解し、それに合せたコンテンツ作りを広告主様とともにできるか。その方向とセットじゃないと上手くいかなと思います。

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有園:そうですね。

柴田:幅広いターゲットへのアプローチが増える、ユーザーのニーズもぼやけてしまいます。そのときに用意するコンテンツって、やっぱりぼやけているというか。迷っている人と、買うと決めた人では接客方法が全く異なるのと一緒で、広告もそこは変えていかなければならないなと思います。DMPをやっていると、それがますます重要だと感じます。

有園:先日、ある広告主から言われた「結局、うちの社長は、顧客満足度を高めたいって言うんです」という一言が印象的でした。アトリビューションとDMPで、いろいろなことができるのは多くの広告主が分かってきています。それがブランドの価値としてユーザーに届いたとき、ブランドのファンを増やしたいし、顧客を増やしたい、顧客満足度を高めたいし、嫌われたくない。DMPとDSPを使ってリターゲティングがいっぱい出ていってユーザーから嫌われては意味がない。そこをきちんとケアしていきたい。それが広告主の声です。そのための施策やクリエイティブを考えていかなければならないと思いました。ありがとうございました。

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■対談者プロフィール
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株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
データマネジメントプラットフォーム部
部長
柴田貞規(Sadanori Shibata)

1996年からネットビジネスに関わり、現在まで、制作、開発、コンテンツ編成、オンライン広告領域を幅広く経験。2007年に博報堂DYメディアパートナーズに入社。運用型広告(リスティング広告、アフィリエイト広告、DSP)の領域の責任者として、運用体制の構築・販売推進を行う。13年4月から現職。

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株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
データマネジメントプラットフォーム部 兼 メディア環境研究所
篠田裕之(Hiroyuki Shinoda)

リスティング、アドネットワーク、DSPなどの運用型広告のプランニングに携わるほか、特に2013年度データマネジメントプラットフォーム部発足後は、アトリビューション分析やDMP業務を担当。また、メディア環境研究所研究員として、生活者の様々なメディア接触データのヴィジュアライズを行う。
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【アトリ君の視点】数年前のad:tech Tokyoでコンテンツアトリビューションの取り組みをプレゼンしておられたのを拝見しましたが、あの頃から取り組みが早かったですね。「データに対する感覚」を持つ人の話はインパクトがありました。最近データサイエンティストと言われる人の守備範囲はケースバイケースで、いずれにしても篠田さんのような現場寄りでデータ感覚を持った人がクライアントとデータ寄りの人とのブリッジになることは必要ですね。そういう人が増えてくると総合代理店としてもソリューションの広がりが出てくるように思いました。柴田さん、篠田さん、大変勉強になりました。ありがとうございました!

コメント

アトリビューション特別対談:アトリビューション分析にはベイジアンネットワークが最適だ!ALBERT上村崇様・安達章浩様×アタラ有園

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有園:今回は、株式会社ALBERTの代表取締役社長である上村崇さんと、執行役員でありデータ分析部部長の安達章浩さんを迎え、アトリビューションとDMPについて伺います。

上村崇さんの経歴

上村:ALBERTは2005年7月に設立しました。前身は、代表取締役会長の山川義介が2000年に創業したインタースコープという、マーケティングリサーチやデータマイニングを手がけていた会社です。私はそこで2001年から学生インターンとして、データマイニングやマーケティングレポートの作成、テキストマイニングシステムの開発などをしていました。

有園:そうだったんですね。

上村:当時は、データを集計・分析したレポートのパワーポイントが納品物でした。しかし当時から、レポーティングに留まらず、分析技術を活用したマーケティングソリューションを提供することで、クライアントの企業価値を直接的に向上するビジネスができるのではないかという思いがあり、2005年にインタースコープからも出資を受け設立したのが、ALBERTです。創業当初は、レコメンデーションの専門企業という事業コンセプトで、レコメンドエンジンを搭載したメディア運営とレコメンドエンジンの提供を、主たる事業としていました。

有園:最初から山川さんが会長で、上村さんが社長だったんですか?

上村:はい。当時、山川はインタースコープとALBERTの会長を兼務していましたので。

有園:2005年にALBERTを創業されたとき、上村さんはおいくつでしたか?

上村:25歳です。

有園:創業当初の従業員は何名でしたか?

上村:3人です。創業後1ヶ月くらいは、インタースコープのオフィスを間借りしていました。

有園:今は何名ですか?

上村:50名くらいです。

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムとの関係

有園:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社とは、どのような関係になるのですか?

上村:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムとは、2011年に資本業務提携を締結しました。これまで、弊社はCRM領域を得意としてきましたが、ビッグデータを扱う以上はアド領域の最適化エンジンも取り組む必要があると考え、実は一度もお会いしたことがなかったのですが、同社CTOの徳久さんにツイッターで話しかけたんですよ。

有園:ツイッターで?

上村:日曜日の午前中って、タイムラインが静かになるんです。そのタイミングで話しかければ目に留まるのではないかと思って(笑)「うちの最適化ソリューションで、アド領域でこういうことがやりたいんです」って話しかけたのがきっかけです。

有園:上村さんは、結構したたかなんですね(笑)

上村:いやいや、したたかって(笑)

有園:仕掛けたわけですね。

上村:(笑)

有園:御社を知ったのは、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムさんのリリースで「どこか分析の会社と提携したんだな」と思ったのが2011年でした。ALBERT、山川さん、上村さんという名前をリリースで目にして以来「何をやっているんだろう」と注目していました。御社は2011年以降、CRM領域から広告領域まで手掛けるようになったわけですが、現在、アトリビューション分析はオフラインと呼ばれるマス広告まで入ってきていますか?

上村:ほとんどの場合、マス広告まで含めて分析しています。ずっとCRM領域の、今で言うところのデータマネジメント領域をやってきました。大量データを解析して、マルチチャネルにおけるパーソナライゼーションを実現する、システムの提供をビジネスにしてきました。さらに2009年には、アフィリエイト領域でレコメンデーションバナーをパーソナライズドして出す「アフィレコ」というサービスを開始しました。

いまでこそ、リターゲティングレコメンデーションバナーのCriteo(クリテオ)さんが参入されてメジャーな考え方になっていますが、当時はまだ、そのようなサービスはありませんでした。サービスを始めた直後から「アフィレコ」は、通常のバナーに比べるとクリック率が5倍から10倍出ていました。リターゲティングした上でのレコメンデーションバナーは効果が高いことに気付き、広く世に出すために、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムさんに声をかけたという経緯です。

「ADreco」と「アフィレコ」の違い

有園:そうでしたか。御社には「ADreco」というサービスもありますが、それと「アフィレコ」の違いを教えてください。

上村:「アフィレコ」スタート当時のビジネスモデルは、アフィリエイトだったので「アフィレコ」でしたが、CPMまたはCPC課金へのモデル転換で「ADreco」になりました。アフィリエイトはメディアに大量に貼ってもらえないと収益化が難しいので、今はモデルチェンジして「ADreco」を提供しています。

有園:「ADreco」は御社のレコメンド型DSPでしょうか?

上村:配信面も自動最適化する仕組みであるため、レコメンドバナー専用のDSPと呼んでいます。「ADreco」にしてもプライベートDMPにしても、最近「ビッグデータ」がトレンドワードになったことで、急にスポットライトを浴びるようになりました。現在のメインビジネスとしては、CRMと広告の両方の領域を含めたプライベート・DMPとして「smarticA!DMP」を展開しています。

smarticA!DMP

有園:事業の柱は「smarticA!DMP」領域と他にはありますか?

上村:弊社のたいていのビジネスが「smarticA!DMP」領域に入っていて、データマイニングエンジンだったりキャンペーンマネジメントシステムであったり、広告配信の最適化だったりします。付随して安達の部署は、各ソリューションを提供するにあたり、あるいは分析単体で依頼をいただき、クライアントのデータを預かって分析する専門の部署です。

有園:「smarticA!DMP」の各ソリューションで分析が必要なので、分析業務が発生し、広告の最適化でアトリビューションの業務が発生しているわけですね。

上村:そうです。

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ベイジアンネットワークとは?

有園:会社概要をおおむね理解したところで、アトリビューションの話を伺います。ALBERTさんでは主にベイジアンネットワークを使って分析しているそうですが、私自身はグーグルに勤めていた頃から「ベイジアン」という言葉を耳にしていました。「グーグルの検索エンジンは最適化の部分でベイジアンが走っているらしい」とか、いろいろなところで「ベイジアン」という名前は聞くものの、アトリビューションに関してベイジアンネットワークのどんなところが良いのか、実はよく分かっていません。対談という名を借りて勉強させていただこうと思ってやってきました(笑)

安達章浩さんの経歴

安達:私がALBERTに参加したのは、2013年2月です。前職では20年以上、分析業務の会社を経営していました。主に広告代理店がクライアントで、分析業務を委託されていました。広告の分析業務だけでなく、ERPが流行っていた時代は全社的なリソース配分の分析業務なども行なっていました。その前は、日本国内のコンサルティングファームに勤めていました。そこはIBMと近い関係にあったのですが、当時のIBMは、汎用機と言われる巨大コンピュータの製造・販売が主流でした。

有園:メインフレームと呼ばれる、企業の基幹業務などに利用される、大規模なコンピュータのことですね。

安達:例えば3090とか。

有園:COBOL(コボル)やFORTRAN(フォートラン)とか。

安達:そこのリソースをクライントに使ってもらうために、汎用機で動かす統計解析パッケージが米国のIBMで開発されました。SASの前身ともいうべき言語で、ASという統計解析パッケージです。CPUをたくさん食うので、たくさん3090が売れるのではないかというIBMの戦略があり、このパッケージをIBMと共同で販売していたのですが、その際「ASという仕組みを使うと、こういう分析ができますよ」とクライアントに提案するための分析業務を請け負うという、特殊なコンサルティングをやっていました。そこに6年以上在籍しましたが、その前は日産自動車のマーケティング担当として、商品開発をしていました。主にスカイラインを担当していました。

有園:日産自動車が、新卒で入った会社ということですか?

安達:そうです。

有園:そこでマーケティングと商品開発、しかもスカイラインって、メインどころですね。

安達:市場調査をして、次期型の仕様や価格を決めるといったことを6年くらいやっていました。統計解析などに日産自動車勤務時代から関わり、コンサルティング会社では、統計解析パッケージを売りつつバージョンアップといったことにも携わった後に独立し、長らく広告業務の分析などをやっていました。「そろそろ仕事を辞めようかな」と思っていたときにALBERTを知り「面白そうな会社だな」と思って参画するに至りました。

有園:重厚な経歴ですね。マーケティング寄りの分析畑で、長く活躍されてきたわけですね。30年以上になりますか?

安達:そのくらいになりますね。

有園:新卒で入った頃は、日産自動車といえども一人に一台パソコンがない時代ですよね?

安達:部署に一台でした。

有園:おそらく、その後のコンサルティング会社の時代も、クライアント-サーバ型のマシンで分析していて、サーバから分析結果の返事が戻ってくるのに……。

安達:一昼夜かかった時代ですね。

有園:そのような状態だから、分析にもすごく時間がかかったと思います。僕も大学院で、IBMの統計解析ソフトウェアのSPSSとかをかじっていました。クライアントマシーンにSPSSを入れていて、パチッとやるとガーッと回っていましたが、それでもすごい時間がかかっていました。

安達:SPSSの日本国内での初利用者は、勤めていたコンサルティング会社でした。

共分散構造分析、構造方程式モデリング、ベイジアンネットワーク

有園:本日は、統計解析の歴史とともにいろいろ伺っておりますが、オフライン、オンラインとアトリビューション分析をするなかで、オフラインの分析では主に、共分散構造分析(covariance structural analysis)や構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling、通称SEM)というものを使って構造の分析をするわけですが、ベイジアンネットワークとは何が違うのでしょうか?

安達:仰るようにマス広告の分析をする場合は、もちろんSEM(構造方程式モデリング)を使ったりもします。必ずしもどれかの手法が最適ということではなく、案件によって使い分けています。さらにALBERTには、独自に開発した状態空間モデルのようなものがあり、それを使うことのほうが多いです。クライアントにとって、そちらのほうが分かりやすいので。のちほど詳しく説明しますね。

有園:お願いします。

安達:話を戻します。ベイジアンネットワークを導入した経緯は、ALBERTに入ったときに上村から「これをやりたいんです」と1枚の企画書を見せられまして。そこには4大マス広告が書いてありました。さらにリスティング広告があり、DSPがあり、そこから何らかのブラックボックスを通ってコンバージョンしている。「このブラックボックスの中身を解明する手法を、すぐに開発してほしい」といきなりオーダーをもらいました。

有園:なるほど。

安達:方法論として、一つは重回帰分析があります。マス広告を含め、全ての広告を全部パラレルに評価する、構造ではなく足し算で評価していく方法です。もう一つはSEM(構造方程式モデリング)です。SEMは、重回帰分析の発展形であるという考えがあります。ただ、SEMは、自分である程度、構造を特定しなければならない。これは、分析者のノウハウにかかる部分が非常に大きいわけです。さらに、広告のことをよく知っていたり、広告を出している企業の業種業態にも詳しかったりする必要もあります。つまり「この業界では、こういう風にモノやサービスが売れている」ということをよく理解している人であれば、その構造を作ることができるのですが、全ての業種に精通できるわけではない。

そこで、SEMを使うのは厳しいと思い、人のノウハウに頼らずに解析できる方法があれば、クライアントにとってもメリットがあると考えて、マルコフモデルかベイジアンネットワークを使うことを考えました。有園さんが執筆されたアトリビューション本を拝読し、アトリビューションスコアの付け方を勉強させていただきましたよ。

有園:原始的な(笑)

安達:いえいえ。有園さんの提唱されるモデル、つまり、均等配分モデルは、ある意味非常に優れています。ファーストとラストを重視するとか、U字型に評価するとか、均等に評価するとかありますが、最終的には、均等配分モデルに落ち着くんだと思います。あるいは、U字型ですね。

有園:最終的にはですね。

マルコフモデルとは?

安達:マルコフモデルを研究したときに思ったのは、最終的には均等配分モデルにどうしても近づくという結論でした。マルコフモデルは、パスを全部切り出して、パスに出てくるアトリビューションポイントを全部足しあげて、頻度計算をして確率に落とすというものです。そこに人間の思いを入れない限り、全部同じウェイトで計算されます。そうなると、最終的に収束するのは均等配分モデルかU字型に近い。

有園:U字型なんだ。

安達:ラストのクリックが若干ウェイトは高く、真ん中が落ちていくパターンに最近は落ち着くことが多く、だったら最初から均等配分モデルでやればよいではないかということになるわけです。

有園:私が「均等配分モデルでやればよい」と書いていますからね(笑)あんまり悩む必要はないよと。

安達:有園さんが仰っている均等配分モデルが良いというのは、パスに全部均等にウェイトをかける点だと思います。人によってパスの長さが違うので、2回でコンバージョンした人には2回のタッチポイントに、合計1だとしたら0.5ずつ割り当てて高く評価する。5回でコンバージョンした人には0.2ずつ割り当てる。これは合理的な考え方ですね。

有園:私が考えたわけではないんですけどね(笑)

安達:アメリカの方では、そのように考えられていたんでしょうか(笑)なので、マルコフで面倒くさい分析をしなくても、均等配分でやるという手もあります。

有園:一般のマーケターがマルコフとかはできないので、そういう人たちがやるレベルであれば十分だろうという発想です。

安達:こういう研究を経て、より良いモデルはないかということで、ベイジアンネットワークでいこうと思ったのです。過去に、ベイジアンネットワークを使って、意思決定の構造がどうなっているかを考えたことがあります。ある会社が役員会で、今後の経営戦略上、何を最大のポイントにするかをまとめることになり、人それぞれ意見が違うし、時間を経るごとに構造は変わっていくので、これを上手く分析して欲しいという依頼がありました。そこで、経営課題として挙げていることを取締役全員にアンケートをとって、それぞれに点数をつけ、その行列を作っていただいたんです。

有園:よく、コンサルティングファームがやることですね(笑)

安達:そうです(笑)それを単純集計しただけでは面白くないので、1回目は「みなさんの考え方はこうでした」と構造図にして、何か月かアクションプランを試し、その後どうなったかを見てみましょうということになりました。

有園:まず、役員にアンケートをとって、そのときに何の要素が何に影響を与えているか、それぞれ10個ぐらい挙げて点数をつけてもらったわけですね。

安達:そうです。関係性に点数をつけてもらいました。

有園:「営業の数が足りないのではないか」、そうではなく「営業は知識が足りないんだ」、あるいは「商品がマーケットにあってない」といったポイントですね。

安達:「宣伝広告費が足りない」とか「研究開発費が足りない」とか。

有園:例えば、10人の役員が出してきたスコアに応じて構造化していく。

安達:それぞれの関係を得点化していきます。広告宣伝費が足りないことが、どこに影響を及ぼすのか。マス目が縦と横に同じ課題を並べておいて、ここからここにどういう影響を与えているのかを得点化します。

事前確率、事後確率

有園:ここは僕も勉強が足りないところですが、その時点で、そのアンケートをもとに、構造化したものの出てくるスコアを事前確率って呼んでいますよね?

安達:はい。

有園:そのあと何かしらアクションがあって、営業の人数を増やすとか、そのあとに同じアンケートをとって変わったかどうかをスコアで図る。それを事後確率と呼んでいますよね。

安達:はい、そうです。そうすると、事後確率に至るまでのアクションが、どこでどれだけ効いたかを数量化できます。「あなたの会社では、ここをいじると、こういう風に結果が変わります」という予測モデルができます。これによって、どこにウェイトを置くべきかという最適配分ができるようになります。この考え方は、広告にも適用できます。さきほどの経営課題は、広告で言えば各媒体、もっと細かく言えば各クリエイティブに相当します。

有園:そういう意味では、変数と言ってもよいんでしょうか?経営課題の要素が全部変数だし、それは広告のクリエイティブだったり投下量だったり媒体だったりという変数に値する。

安達:同じように考えれば、広告においても、人間の目では見えないブラックボックスになっている部分が、構造として見えてきます。相互間の影響まで解析できるのであれば、そのウェイトに応じてアトリビューションすることができるということです。数社とテストトライアル的な取り組みを行なってみたところ、ベイジアンネットワークで綺麗に分析できることが分かりました。

有園:見えてきたわけですね。

安達:そこで商品化しようということになって始めたのが弊社のアトリビューション分析です。

有園:そうすると、安達さんが入社されたのは2013年の2月ですから、2013年からの取り組みなんですね。

ALBERTのアトリビューション分析サービス

上村:アトリビューションに応用して商品化したのは2013年からです。リリースを発表したのが2013年6月ですね。

2013年6月25日
ベイジアンネットワークを用いたアトリビューション分析サービス開始
~アトリビューションスコアを数理モデルで定量化、
広告予算の最適配分も把握可能~
http://www.albert2005.co.jp/release/archives/201306/25_110018.html

ベイジアンネットワークは、「構造が分からないものの構造を明らかにしよう」というトライなので、そこが非常に良いと思っています。もちろん世の中にはいろいろな手法がありますが、例えば、ボルツマンウェイトを使って物理法則に準じるとか、金融工学でもブラック-ショールズとかがあります。

有園:ノーベル経済学賞をとったブラック-ショールズですね。

上村:あれも、金融の動きが物理運動と同じである、幾何ブラウン運動と同じ動きをするはずだという仮説によるものです。

有園:はい。

上村:自然物理の中で起こる現象が、金融にも広告にも当てはまるといったアプローチが、これまであったと思うのですが、実はそうではなくて、そもそも構造が分からないものは構造を明らかにした上で、その構造間の確率をはかるというアプローチのほうが、外れは少ないと考えています。もし、ターゲットがその運動と同じ行動をとっていなかったら大きく外れてしまうけれど、構造自体を探りに行くのがベイジアンネットワークなので、そこが弊社のポリシーというか方針にマッチしている手法だなと思うんです。

ロング・ターム・キャピタル・マネジメントの破綻

有園:なるほど。ちょっと余談ですが、ブラック-ショールズは、ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(Long Term Capital Management)という会社をつくって、1990年代後半に破綻したじゃないですか。

安達:それは、モデルのせいだと我々は読んでいますが(笑)

有園:そうですか(笑)それでいうと、ある意味、当たらなかったわけですよね。ノーベル経済学賞をとったものの、マーケットの動きは読めなかった。そこが読めていたら儲かっていたと思いますが、最後は破綻してしまった。

上村:幾何ブラウン運動という運動法則と、金融の動きは同じではなかったということですね。

有園:まぁそういうことですね(笑)

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ベイジアンネットワークだったらブラックマンデーは避けられた?

上村:当時いろいろ批判や擁護もあったそうですが、そこをベイジアンネットワークでやっていたら、ブラックマンデーは避けられたのではないかという説もあります。

有園:あるんですか?

上村:あります。避けられたとは明言できないかもしれませんが、ベイジアンネットワークであれば、少なくとも金融マーケットは冷静に株価の動きを見ていただろうという学者さんもいます。

有園:それは知りませんでした。面白いですね。リーマンショック以降、金融業界のエンジニアが広告業界に入ってきて、DSPをやったり仕組みを作ったりしてきました。金融と広告の取引市場の類似性とかもあると思っているので、いまの話は僕の中でヒットしています。もともと、リスティング広告の入札制も株価の入札と変わらないんじゃないかと実は思っていて、類似性を強く感じています。その中で、ベイジアンネットワークだったら、ロング・ターム・キャピタル・マネジメントも破綻しなかったのではないかということですね。

上村:例えば、統計学で著名な元東大教授(その後上智、現聖学院大学大学院教授)の松原望先生が、まさに「ロング・ターム・キャピタル・マネジメント破綻」(http://www.qmss.jp/prob/finance/6-ltcm.htm)というテーマで、そのように書かれていらっしゃいます。金融の動きは物理行動とマッチしなかった。構造自体を探りにいくベイジアンネットワークだったら、結果は違っていたのではないかと言われています。

ベイジアンネットワークって何?

有園:ベイジアンネットワークの理解を深めたいのですが、因果関係の構造を知らなくても使えるという点で、ベイジアンネットワークが優れているとのことですが、今の広告分析では、最初に誰かが数字を与えなければなりませんよね?

安達:ベイジアンネットワークは、2種類に大きく分かれます。動的なベイジアンネットワーク、つまり機械学習的なモデルのベイジアンネットワークと、現状の構造を解析させる静的なベイジアンネットワークです。今はどちらかというと「広告をこういう風に出しました」という結果系データをいただき、その中の構造を解析していく静的なベイジアンネットワークです。当然、今後は動的なものも考えています。スタティックな分析では、現状あるデータそのものから構造をダイレクトに書きだすことができます。

有園:いわゆる、確率推論というものですか?

安達:イメージとしては。

有園:例えば、AからBまたはCに行きますという話で、100人いて、AからBに行った人が50人いた場合、そこに2分の1の確率が入ってくるということですか?

安達:2分の1という確率は用いず、情報量規準に基づいて、その関係性を決めているのが特徴です。普通は、AからBに50人行くと2分の1と格付けしますが、情報量規準は、単純に確率を割り振るわけではありません。AとBの起こりやすさは、本当に他のものに対して優位なのかというところを規準にしています。純粋に確率ではなく、他のものも同じように起こるけれど、その中でこの関係は特別なものなのかを計る。

有園:それって、サイコロを振ったら1の目が出る確率は6分の1ですよね。大数の法則で、200回くらい振れば6分の1に限りなく近づくという話があります。10回振ってみたら、1が5回出たとします。もしかすると、このサイコロは1が出やすいのではないか、1が出る確率は6分の1より高いのではないかと考える発想だと思いますが、AからBへの行きやすさを、100人だったら単純に50人ずつにするのではないとしたら、行きやすさみたいなものを何で判断するんですか?

情報量規準はログを使う

安達:情報量規準はログを使います。

有園:何のログですか?

安達:数学でいうロガリズムです。従いまして、線形の関係ではありません。非線形の関係です。あるところで急激に落ちて漸近線に近づくというモデルです。例えば、ここの間は非常に有意で、こっちに行くと有意ではないという判定の仕方をします。線形に物がつながっていると仮定するのではなく、非線形でかつ複雑な形につながっていると仮定します。

図1. 情報量の価値変化イメージ

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起こりやすいものにはペナルティをつけます。起こりにくいものが起こっているかを判定する。100人中98人がするようなことよりは、100人中1人がしていることの方が非常に価値のあることだと判断します。

有園:現時点では、オンラインのコンバージョンパスデータの話となると、第三者配信エンジンのi-EffectやMediaMind(メディアマインド)などから経路のデータを持ってきて、その経路と媒体費といったデータで分析していくのでしょうか?

安達:CPAを出すことは最後に行ないます。ベイジアンネットワークはそのためのスコアを出すためのものです。

有園:経路のデータ上で、このような考え方を使ってやっていると思って間違いありませんか?

安達:これは、有園さんが仰っているアトリビューションスコアの決め方と同じだと思います。

図2.アトリビューション分析におけるベイジアンネットワーク

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ベイジアンネットワークでウェイトを出した上で全体の数値として用いて、それぞれに値を割り振り、最終的にアトリビューションスコアを出しています。

有園:腑に落ちました。

安達:ここに均等モデルとの違いがあります。ある人は「絶対にファーストクリックが有効だ」と言い、ある人は「絶対にラストクリックでしょう」と言うこともあり、意見もぶつかってしまうので、スコアを数理的に決めるために使っています。

有園:ベイジアンネットワークを使ってアトリビューションスコアを付与していく、算出していく際に、複数のモデルを試すという発想はありますか?

データの切り方は何度もトライアル

安達:そうですね。データの切り方は何度もトライアルします。

有園:データの切り方とは?

安達:例えば、コンバージョンに時間が影響を与えていることがあります。インプレッションが、何日前に出ているかを一つの変数にすると、この何日前をどういう切り方にするかということです。

有園:データの変数としての持たせ方というか、そういう意味での切り方ですね。

安達:そうです。ある企業では、時間よりは回数、つまりバナー広告のフリークエンシーを見ていて、そういう風にデータを持たせた方が良いという結論に至っています。この場合は、回数を変数にしています。他の業種では先ほどのように「何日前に見せたものが効果はあった」といった持たせ方をしていたりします。

有園:データの切り方を考える際、バックテストは入ってくるのでしょうか?過去のデータを参照して、付けたスコアと媒体費で計算してみると合っている、合っていないが分かり、合っていなければ切り方を変えていくということをやっているわけですね。

安達:最終的には、全ログデータを使って計算するわけですが、最初にデータの持たせ方を決めるときは、サンプリングして、モデルを作って、適合性を計って、良いものを選んでいきます。

有園:だいぶ腑に落ちてきました。オフラインのアトリビューションについても伺えますか。

オフラインのアトリビューション

上村:テレビ、新聞、雑誌、ラジオにネットが加わり、一体どのアプローチがどれだけ企業価値を高めているのかを知りたいという要望が最近非常に多く、広告代理店経由であったり、クライアントから直接であったり、4マスも含めたアトリビューション分析の相談は、とても増えています。

有園:増えていますね。

安達:4マスも含めて、広告費のアロケーションを最適化していきましょうという話ですが、特に我々は、販売量が何によって決まっているのかという、要因分解の方法論についてノウハウがあります。マス広告の場合、ネット広告と違って、どこのエリアに何日にどれくらい露出したかという限られたデータしかありません。ですから、構造自体を特定することが非常に難しくなります。ここの特定に、データ自体を要因とする時系列解析の手法を用いているのが特徴です。

季節効果や曜日効果といった、販売に与えるいろいろな効果を把握する技術があり、シミュレーションモデルがあります。どんなモデルを使っているかというと、状態空間モデルに近いのですが、Y軸の販売量を時系列解析することによって得られる長期トレンドや季節指数に加えて、広告効果、その他の効果と誤差などに分解して把握しています。さらに広告効果は、マスとWebとプロモーションなどに分解されるはずです。仮にクライアントが店舗とECサイトの2つのチャネルを持っている場合、販売量は実店舗の販売量プラスECサイトの販売量になります。それぞれを先ほどのモデルで分解するといったやり方です。

図3.販売データの分解例と広告残存効果期間

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有園:これは、ベイジアンネットワークでやっているわけではないということですか?

広告を打つ前、打った後

安達:ベイジアンネットワークを使っている場合もあります。マスとWebとプロモーションが単純に分かれていない場合も多くあります。単純に結合されているわけではないので、マス広告を打つと店頭に来る人が増えてプロモーション効果が変わってきたり、手元にチラシがあると、それを見てネットで買ったりする人もいるでしょう。このように、それぞれの相互間の影響を解明するときに、ベイジアンネットワークを使って予測モデルを作っていきます。

例えば、ある業界は商品が土日に集中して売れることが分かったとします。この曜日効果を抜いてスムージングをかけたものが、この青い線です。スムージングをかけた販売量と実際の販売量の差が、広告効果と商品力によるだろうと推定できます。次に、商品力をここから差し引きます。商品力の推定の仕方は、広告を打たなくなった時期は、商品力だけで売れているはずですし、発売した直後は、商品力が圧倒的に高いはずですから、その2点をポイントとして曲線を推定していきます。

広告の残存効果

有園:広告の残存効果は加味していくのですか?

安達:次のところです。ここが、先ほどの商品力を抜いたところです。この場合、テレビだけで見ていますが、どれだけ広告を打ったかというGRPと差の部分との関係を見ていきます。広告を打ったり打たなかったりしていますが、最後の一番右の部分、ここまでが広告は効いていたことが分かります。あとは効かなくなっています。このような形で広告効果を判定していきます。

図4.限界GRPの推定

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有園:ここでいう限界GRPというのは、どこから出ているんですか?

安達:一番広告を少なく打って、かつ一番売れている日が上限ポイントになります。逆に下限は、ここらへんまで広告を出さないと、この販売量は確保できませんよという最低販売量です。

広告弾力性

有園:GRPの投下に対して、販売量がどれだけ変化するかという形での限界という意味ですね。広告弾力性のことですよね?

安達:まさしく、日別の広告弾力性です。

有園:それをGRPなので、限界GRPと呼んでいるわけですね。

安達:そうです。下限と上限を決める曲線を式に入れています。

有園:そういうことでしたか。僕は経済学をやっていたので、価格弾力性、広告弾力性の方が分かりやすいので。

安達:確かに、弾力性の方が言葉としては合っています。

有園:分かりました。

安達:ここに、Webとチラシそれぞれを加えたモデルもあります。こんな形で、状態空間モデルとベイジアンネットワークを組み合わせたモデルを、マス広告のアトリビューション分析には使っています。

有園:先ほどの状態空間モデルで、線形ではないだろうと思われるものに対してベイジアンネットワークをあてて式を作っていくということですね。いまは何社くらい、ベイジアンネットワークで分析したり、アトリビューション分析をオンライン、オフラインでやっていたりするんですか?

上村:マスまで含めてやっているのは5社くらいですかね。マス広告の分析をやっていて、かつ、アトリビューション分析までというと、かなり先進的な企業ですね。

安達:先進的というか、広告費を大量に投下している企業ですね。現状、我々がデータを預かって分析すると、ある程度人的コストがかかってしまうので、データをDMPに取り込んで、人手をかけずに分析する準備をしています。

有園:なるほど。そういったソフトウェアか何かをお持ちなんですか?

上村:弊社には、smarticA!データマイニングエンジンという製品があり、クラスタリングやアソシエーション分析、時系列予測などを自動計算できます。その中に、新しいモデルをどんどん取り込んでいっています。

有園:オンラインもオフラインも、アトリビューション分析がデータマイニングエンジンの中でできてしまうわけですね。理想的な世界に近づいていきますね。アトリビューションのある程度のモデルや手法が確立したところで、データマイニングエンジンに組み込んでいかれるわけですが、御社の主力商品である「smarticA!DMP」について最後に伺います。

smarticA!DMPについて

上村:smarticA!DMPは、データの蓄積から、データマイニングエンジンによる自動分析、キャンペーンマネジメントを通じてマルチチャネルで情報をパーソナライズして出しわけるところまでを対応しています。最近、こうしたサービスに「データマネジメントプラットフォーム」という一般名称が付きました。いわゆるプライベート・データマネジメントプラットフォームを、弊社では「smarticA!DMP」という名前で提供しています。弊社が提供しているプラットフォームでは、顧客の行動履歴であったり、広告の投下量であったり、コンタクトセンターのコンタクト履歴であったりと、自社で蓄積されるあらゆる大量データを溜めこんで活用していきます。どんなデータ溜めるべきかはクライアントによって異なり、目的によっても溜めるべきデータは変わります。

有園:なるほど。

図5.ALBERTが提供するプライベートDMP「smarticA!DMP」

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上村:各社各様のデータが必要になるため、どんなデータを溜めるかのコンサルティングから携わっています。そうしてデータを溜められる環境ができると、次はデータマイニングエンジンの出番です。溜まったデータを自動解析するためのエンジンは、これまではSASなどの海外製品が主力でしたが、中身がブラックボックスで、なぜその答えが出てきたのかクライアントには分からないという問題がありました。また、例えば新たなアルゴリズムとしてベイジアンネットワークを使いたいと思っても、簡単にはできません。アルゴリズムの追加やシステムのカスタマイズは、開発国依存で直ぐには対応してもらえないといった問題がありました。そこで私たちは、いち早く必要なアルゴリズムをどんどん入れられるように、データマイニングエンジンを自社開発することにしたのです。
時系列予測などもそうです。例えば、ある飲食チェーンで、調布店に来週どれだけの顧客が来るかを予測して、商品の必要在庫を予測したい。そういうニーズに対して考案したアルゴリズムをすぐに取り込めるわけです。

有園:ツイッターか何かで、千葉のコンビニが、ポッキーの日にグリコがキャンペーンをやっていて、大量にポッキーを仕入れたけれど、全然売れなかったというつぶやきを見ました。何をどれだけ仕入れるかって重要ですね。それが、できるわけですね。

上村:例えば飲食店では、明日は雨である、且つ金曜日である、といった場合に、材料をどれだけ仕入れるかを正確に予測しないと廃棄が出てしまいます。ファーストフードチェーンなどの全国の全店舗で考えると、大量の廃棄コストになります。そういう在庫を最適化したいときは時系列予測で計算します。

また、smarticA!キャンペーンマネジメントは、マルチチャネルに対応していることが強みです。キャンペーンマネジメント=「メール配信ソリューション」のような説明をする方もいますが、本来はそうではないはずです。Web、メール、コンタクトセンターやDMなど、あらゆる顧客接点で一貫したストーリー性をもって接客できることが重要だと思います。

有園:マルチチャネルキャンペーンマネジメントのソリューションであり、この図に書いてあるように、メール配信用のシステムとか、コンタクトセンターのオペレーターさんの画面とかとつながっているわけですね。

上村:「オペレーターさんに、今日、この顧客には○○を喋ってもらう」ということまで指示ができます。ただし、最後のところは既存のシステムと連係します。メールは既存のメール配信システムに連係、Webでの表示はCMSに連係するなどです。DMや同梱チラシなどの印刷物なら、オンデマンドプリンティングシステムとつなぎます。既存システムと疎結合できる作りにすることによって、システム投資を少なく、無駄なくすることができるわけです。

有園:御社では、これらをレコメンド特化型DSP「ADreco」や、第三者配信「i-Effect」につなげるわけですね。「ADreco」以外のDSPともつなげられるんですか?

上村:はい。逆に、一般的なDMPは広告領域に偏っていることが多いと思います。

有園:ちょっと違うよねと?

上村:本当にクライアントがやりたいのは、CRMも広告も含めたマーケティング全体の最適化です。広告で人を集めても、そこに接客の仕組みがなければ仕方がありません。広告だけでなく、自社のCRMを最適化するプライベートDMPが必要だという話になります。そこまでカバーできているのが「smarticA!DMP」で、こうしたサービスは極めて少ないと思います。

有園:広告業界的にはAudienceOne(オーディエンスワン)などをDMPと呼んでいますが、AudienceOneを入れてCRMと連携することもできますよね?どちらかというと御社は立ち位置として、CRM領域からスタートしていて、それにAudienceOneみたいなDMP、あるいはインターネット上でのユーザーの閲覧履歴、行動履歴がデータとして溜まっているDMPと連携することができるわけですか?

「smarticA!DMP」と「AudienceOne」のシステム連携を開始

上村:そうですね。2013年12月11日に「smarticA!DMP」と「AudienceOne」のシステム連携を開始しました。トリプルメディア全体の接客を最適化できるようになりました。それができて初めて、DMPの意味があると思います。広告だけ、自社メディアだけでは片手落ちなので。

DMPとアトリビューションはセット

有園:2013年12月10日に「CNET Japan Live」に登壇したのですが、そこでDMPとアトリビューションはセットで使わないとダメですよという話をしました。なぜかと言うと、いろいろ連携して施策が出ていきす。セグメントをきってストーリー性とかシナリオとかを組んでいますが、打たれたものが良かったのか、悪かったのかを検証しないといけません。一連のストーリー性がある施策になる訳なので、ラストだけ見ても意味がありません。

これにマス広告も含めていくと、相互の影響を加味しないと、スイムレーンみたいなテレビの効果だけ見ていても、仕方がないです。DMPでやった施策をきちんと効果検証して、次に活かすためにPDCAを回すためには、アトリビューションは必須ですね。御社のツールには今後、データマイニングやアトリビューション機能がついて、検証しながらDMPのマネジメントというか、PDCAを回していけるようになるのでしょうか?

上村:PDACの仕組みは既にできていて、それはマストですね。ちょっと表現が古いかもしれませんが、「ダッシュボード2.0」の時代がきていると思っています。いままでは、いわゆる「管理画面」といわれるもので、クリック率がどう、コンバージョンどう、それを広告キャンペーン別にみたらどうか、という固定的なものでした。他にも、メール配信の管理画面はというと、何通配信して、何通開封され、何通クリックされたかを見てきました。

それぞれのチャネルでバラバラに管理画面があって、かつ非常に固定的なKPIだけで見ていたのが「ダッシュボード1.0」の時代だとすると、DMP時代には、オフラインも含めた、あらゆるチャネルの施策を統合的に見ていく必要があり、かつ施策と共に変わっていくKPIを動的に追加していかなければいけません。もはや、固定的なダッシュボードだとモニタリングできません。ダッシュボードは必要に応じて常に追加したり、取捨選択できる動的なものでないと、アトリビューションを加味したマーケティング全体の最適化はできないはずです。固定的な管理画面ではなく、その時々に必要なKPIを見い出してモニタリングし、改善できる仕組みが必要だと思っています。「ダッシュボード2.0」の時代に入ったといえるのではないかと。

有園:御社のサービスは柔軟に変更できるんですね。

上村:Web上でどんどん作っていけます。

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現状の課題

有園:現状の課題は、どんなことがありますか?広告主側が理想的なことをやる上での課題や、御社側の課題などを伺えますか?

上村:プライベートDMPの導入プロジェクトでは、クライアントの窓口はマーケティング部門である場合が多いです。日々、施策を設計して、施策を打ち、最適化していく責任部門がマーケティング部門だからです。ただ、導入に関しては、情報システム部と極めて密接に関わります。従って、企業の経営レベルで導入のコンセンサスがとれていて、プライベートDMPが重要だという認識を共有し、マーケティング部門と情報システム部門が一緒になって作る状態になっていないと、非常に難しいと感じます。

有園:そうですね。

マーケティング部門と情報システム部門の連携

上村:仮に、プライベートDMPを導入しても、ダッシュボードを一個作るのに情報システム部門に頼まなくてはならないと、タイムリーなモニタリングはできません。システムによっては、新たな仮説をもってキャンペーンを1つ追加するだけでも、エンジニアや情報システム部門に依頼しなければいけないということがあります。プライベートDMPは、マーケティング部門が単体でも使いこなせるものでなければ機能しません。

有園:御社の「smarticA!DMP」を導入すると、管理画面のクリックとドラッグ・アンド・ドロップで簡単に使えるわけですね。

上村:はい。そうでなければ機能しないと考えて、サービスを設計しています。

全てを統一して見られる人が不在

有園:私がコンサルティングをしていて感じるのは、メールを打って、バナーを打って、ランディングページはこうしてといったシナリオを構築したとき、オペレーションの全てを統一して見ている人が不在である点です。御社では、その点のサポートもしているのでしょうか?

上村:もちろん、すべて連携していなければならないのでサポートしています。弊社にはデジタルコミュニケーション部という部署がありまして、上流の戦略から広告のクリエイティブの最適化も含めてサポートしています。

有園:私のイメージでは、御社は広告クリエイティブやLPOの最適化なども、CRM領域から出ている経験値などもあるだろうなって思っていました。メールマーケティングもサポートしているのでしょうか?

上村:一般的に「メールマーケティング」という言葉で連想されるのは、どんな文章で書こうかといったことだと思いますが、そこはあまり深くやっていません。弊社では、誰に、いつ、どの情報をどんなクリエイティブで送るかを特定するところを支援しています。

条件分岐

有園:条件分岐も手掛けていらっしゃいますよね?誰に、いつ、どの情報を送ったら、どういう反応をしたか、Aの反応、Bの反応の場合に、どう出し分けるかといったことなど。

上村:はい。シナリオ設計と呼んでいます。ロイヤリティのステップアップを実現するために、全体のキャンペーンシナリオを設計します。メールだけでなくWeb、オフラインも含めて設計しています。ただし、メールの具体的な文章として何を書くか、例えば挨拶文が「おはようございます」なのか「こんにちは」なのかといった文章まで作ることはしていません。

有園:大量なパターンが出てきますね。それらは、企業の担当者もしくは外注のメルマガを制作する会社が作っていくわけですね。

上村:そうです。一方、メールに挿入されるレコメンド商品であったり、バナーであったりは、キャンペーンマネジメントシステムから指示が出て自動的に挿入されるので、ヘッダーの導入文や締めくくりの文章だけを作っていただいて、コンテンツを差し込むのは弊社のシステムで自動的に行なわれるわけです。

有園:メールのシナリオに合せた、バナーのシナリオ、LPOのシナリオなどを、統合的に見てマネージしていく人が企業側にも必要ですね。そうしたことのできる人が、企業側には少ないという印象はありませんか?

上村:少ないかもしれません。国内企業のマーケティング部門は、任されている仕事の内容や責任の重さに比べて、人数が少ないと思います。忙しくて、見きれていないところはありますね。

有園:導入前の課題は、マーケティング部門と情報システム部門の連携が上手くいっていないことが挙げられましたが、導入後だと他に何かありますか?

きちんとPDCAを回せているか

上村:プラットフォームは、導入すれば勝手に上手く回りだすというものではないので、PDCAをきちんと回していくことが課題になります。PDCAを回して、自社のマーケティングの最適化をし続けることです。プライベートDMPを導入した後に、いかにPDCAを回していくかは課題になるのではないでしょうか。

有園:広告もCRMも連係して考えてねって話ですね。マス広告でコンペやって、三か月間キャンペーンをやるときは、特定のコピーを露出してアテンションをとることが主な目的なので、代理店任せでもよいかもしれません。しかし、CRM領域に関わってくると、自社のことを十分理解して、ケアしなければならないコミュニケーションがたくさん発生してきます。実際に、コールセンターに電話がかかってくるわけですから、関連した施策が必要になります。その場合、自社の持っている商品やメリットを十分把握していないといけないので、代理店に任せっきりにはできないという話になります。マーケティング領域で全体を見てまとめられる人を育て、自社で考え実行できなければならなくなってきている。それが課題なのかもしれませんね。

また、効果測定する際も「これはベイジアンネットワークで分析した結果です」といわれても理解できない人が多い。経営層にプレゼンすると、理解できる人、できない人が大きく分かれます。「なんでこういう予算配分にしなければならないの?」と質問が出ると進まなくなります。マーケティングに関わる人と経営層には、できれば統計の知識を持ってほしいと思っています。

マーケターに統計の知識は必須

上村:そうだと思います。弊社では、企業に向けて講師を派遣し「データサイエンティスト養成講座」を開講しています。クライアントがプライベートDMPを使って、マルチチャネルのマーケティングを最適化するためには、統計に対する理解がある程度必要になります。実際、統計の分かる人やデータサイエンティストを内部に育てていきたいという企業が増えています。そういう教育機関が世の中にないので、弊社が提供しています。

有園:教育まで含めてやっていただけるわけですね。オペレーションのサポート、クリエイティブの最適化、それらを理解できる人材の育成まで。

上村:ビッグデータ領域で必要なものは、一通り揃うかと思います(笑)

有園:困ったときはALBERTさんへですね。本日は、ありがとうございました。

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【アトリ君の視点】先端プラットフォームを率いる上村さんと重厚な経験をもった分析エキスパート安達さんの経験やノウハウを融合。強いですね!ベイジアンネットワークを少し理解できた気がします。「ベイジアンネットワークでやっていたら、ブラックマンデーは避けられたのではないかという説」は個人(鳥)的には興味深かったです。SmarticA!データマイニングエンジンはとてもすばらしい取り組みですね。新しいアルゴリズムやモデルは自社開発環境でないと追加し続けるのは厳しい面もあると思うので、現在のマーケティングが置かれている状況に応じたアプローチですね。そういう意味では初の国産アトリビューション分析プラットフォームと言ってもいいかもしれません。さまざまな外部のシステムとも「粗結合」できる点も非常に納得ですし、日本のアトリビューションマネジメント環境をどんどん変えていってほしいと思います。上村さん、安達さん、大変勉強になりました。ありがとうございました!

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アトリビューション特別対談: 経営には統計の知識とアトリビューション的思考が必須 – ブレインパッド吉沢雄介氏×アタラ有園

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有園:今回は、株式会社ブレインパッドの吉沢雄介さんをお迎えして、オフラインのアトリビューションについて伺います。

吉沢:株式会社ブレインパッドの吉沢雄介です。ブレインパッドは設立して10年弱の、データ分析及び関連サービスを専業にしている会社です。ビッグデータやデータサイエンティスト、昔だとデータアナリストという肩書でしょうか?といった言葉が世の中で認知される前から、「これからはデータ分析の時代がくる!」と予見して設立された会社です。

現在、社内には50人強のデータサイエンティストがいて、日々、データ分析の業務に従事しています。私自身は大学院を卒業後、データサイエンティストとしてブレインパッドに入社しました。最初に有園さんと出会ったのは今から3年ほど前だったと記憶しています。その後、有園さんとは約20社のクライアント様にアトリビューション分析を提供してきました。

有園:アタラでアトリビューションの分析、コンサルティングを開始した頃、広告主からデータをもらって自分たちで分析していました。でも、大きなデータ、たくさんのビュースルーコンバージョンを計るようになると、普通のパソコンではデータボリュームがおおき過ぎで分析できない、パソコンがとまってしまうという現象が起こりました。「アタラでデータサーバを買うのはちょっと違うよなぁ」とブレインパッドの社長である草野さんに相談して、お手伝いをお願いしてから4年目くらいになるでしょうか。

アタラがアトリビューション分析をする際、データの集計と分析のコアな部分はブレインパッドさんにお願いしています。そこに深い洞察を加えて広告主へ提出し、メディアプランへの落とし込みやコンサルティング、その他のフォローがアタラの仕事です。ブレインパッドさんとのはじめてのプロジェクトでお会いしたのが吉沢さんでしたね。

吉沢:そうでしたね。

ブレインパッドさんとの取り組み

有園:最初に吉沢さんにお願いしたのは、あるクライアントのサイトカタリストからコンバージョンパスデータを抽出してもらって、それを出稿データと紐付ける作業だったと思います。リスティング広告だと、キーワード別に出稿しているデータとサイトカタリストで取れているデータは別なので、各データを合体させて紐づける作業をブレインパッドさんにお願いしたんですよね。

吉沢:そうでしたね。アタラさんと一緒に取り組めて良かったことは、リスティング広告の出稿や運用経験に長けていらっしゃるので、分析結果という紙で終わらず、施策に落とし込みPDCAを実際に動かせるという期待がありました。

有園:いつもありがとうございます。ところで、最初の頃はリスティング広告とバナー広告の出稿データを使って、いわゆる、オンラインアトリビューションをおこなっていました。ただ、やはり、オンラインのデータだけで分析していてはダメだな、と当初から思っていた訳ですが、そのあたりは、吉沢さんも同じですよね?

吉沢:ウェブサイトは、広告主と消費者のコミュニケーション手段、ブランド体験の一部分でしかありません。テレビや新聞、ラジオ、雑誌や交通広告など、いろいろな影響を受けて消費者は動いています。オンラインだけでは見えないことがあります。マスメディアを含め、いろいろな媒体に分析範囲を拡張するという認識や方向性は以前から考えていたことであり、社内でも方法論として模索をはじめていました。

有園:以前は、アタラからの依頼は、オンライン、ネット広告だけのアトリビューションがメインでした。でも、マス広告などの影響が加味されない形でコンバージョン予測を出しでも、どうなのかなって思っていたわけですね。

吉沢:はい。

アトリビューション2つの方法論

有園:徐々に、オフラインのアトリビューションにも仕事の領域が広がっていきましたが、吉沢さんとは、オンライン、オフラインと、アトリビューションについてディスカッションしてきました。オフラインのアトリビューションは、特に高度な統計知識とデータを処理できるシステムが必要となってくることもあって、ブレインパッドさんのデータサイエンティスト抜きでは難しいですね。

吉沢:現在、方法論としてこのような段階にきています(Fig.1)。ここまでくるのに2年から3年くらいはかかりました。

(Fig.1)

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この方法論には2つのポイントがあります。1つ目は、たえず議論している「マスメディアの効果をどのように定量化し、実行施策に結び付ける示唆を出すか」という分析そのものに関する考え方。2つ目は、marketingQED(マーケティングキューイーディー)という分析ソフトウェアの取り扱いを開始したことです。

marketingQED社は、イギリス・ロンドンに本社を置く、最適なマーケティング意思決定を支援するソフトウェアベンダーで、分析ソフトウェアを提供しています。弊社は、2年ほど前にmarketingQED社の販売パートナーになり、海外の最新事例、考え方や分析手法などを日本市場に合った形で提供しています。マーケティングミックスモデルの実現手段の提供です。

モデルとは?

有園:オンラインのアトリビューション分析をしていても、均等配分モデルといった言葉が出てきます。モデルをつくる、モデリングする、あるいは抽象化といった言葉は、統計学の勉強をしていない人にとって理解しにくいものです。簡単に説明していただけますか。

吉沢:こちらをご覧ください(Fig.2)地図、例えばグーグルマップをイメージしてください。渋谷、六本木という場所があっても、地図に「ここが渋谷です」「ここが六本木です」と書いていなければ、どこか渋谷で、どこが六本木か分かりません。抽象化、モデル化するというのは、どこが渋谷で、どこが六本木か書いてあって、経路が線で結ばれていることです。渋谷から六本木へ行く最短距離を示し、余計な情報はそぎ落とすことが抽象化、モデル化です。

(Fig.2)

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有園:現実の世界は複雑なので、すべてを把握することは不可能です。把握するには、何らかの視点で現実を単純化して切り出していることが「モデル」、切り出すことを「モデル化する」、あるいは、「モデリング」という、そんな意味でよろしいでしょうか。

吉沢:その理解で大丈夫です。

有園:本来、人間が、現実の世界を目で見たり、耳で聞いたり、手で触ったりして得ている情報は、現実ではなかったりしますからね。そもそも、人間は現実をすべて把握することはできません。人間が見ている世界は、人間の眼が作り上げている仮の像でしかありません。仮の像をつくっているのが、人間の眼がもっているモデル化する仕組みですね。

マーケティングミックスモデルの3つのステップ

吉沢:例えば、マーケティングミックスモデルは、マーケティング施策への投資・露出と売上・店舗来店といったマーケティング活動とお客様の行動との因果関係をモデル化することです。

マーケティングミックスモデルのステップは3つです。1つ目は、アトリビューション、2つ目は予算配分の最適化、3つ目はシミュレーションです。アトリビューションは、貢献度の割り振りが困難なもの、例えばTV、ディスプレイ広告のビューなどの効果を「見える化」して、貢献度を定量化することです。

有園:貢献度を各媒体や、ものによってはキーワード別に、テレビCMやバナー広告だったらクリエイティブ別に、それらが売り上げやコンバージョンにどれだけ貢献しているのか数値化することですね。

すべて同じ軸で比べられる指標に

吉沢:ポイントは、すべて同じ軸で比べられる指標にすることです。金額は1円単位で数値化し、ウェブ広告やテレビCM、紙広告など、あらゆる媒体で比べることができます。その軸で、いくら投資したら、いくら獲得できるかを「見える化」するのがアトリビューションです。それが決まると、貢献度のバランスから、どのメディアに、いつ、どの配分で投資したら成果が最大になるのかを考えられます。

感覚として、リスティング広告に月額1千万円、テレビCMに月額1億円をそれぞれ投資することはできても、ドラスティックに配分を変えてリスティング広告に月額10億円を投資することって、なかなかできないと思います。でも、アトリビューション分析をしていれば、理論的な配分を導きだせます。リスティング広告に月額10億円投資すべき理由があれば、投資することもできるでしょう。

有園:ちなみに、会社全体としてはリスティング広告に月額10億円ぐらい使っているクライアントはありますね。

予算配分の最適化

吉沢:はい、確かにありますね。次は、予算配分の最適化について。これで、理論的に最適な配分を出すことはできます。やることは簡単で、既にアトリビューション分析でモデル式が出来ているので、最適化計算をコンピュータに任せるだけです。

アトリビューションと予算配分最適化は理論的なことですが、予測シミュレーションはシナリオに即して売上に思いを巡らすことです。この3つをぐるぐる回すことでマーケティングROIが改善していきます。手法的なアプローチと、ビジネス的なアプローチを統合したのがこの方法論です。

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オフラインアトリビューションとは

有園:日本では、これをオフラインアトリビューションと呼んでいます。アメリカの業界トップのマーケットシェアという会社はオフラインアトリビューションのことを単にアトリビューションと呼んでいますが、その他のリサーチ会社などは、マーケティングミックスモデリングをアトリビューションと呼んでいたりします。あるいは、アナリティクス2.0という表現もありますね。これらは、アトリビューションや予算のアロケーション、シミュレーションなどを指しています。

インターネット業界でアトリビューションという言葉が流行ったので、便乗してマーケティングミックスモデリングのことをアトリビューションという言葉で語っているのではないかと思います。

マーケティングミックスモデリングという名前で、かなり前からオフラインのアトリビューションの考え方はあるんですよね。

吉沢:2013年7月号ハーバード・ビジネス・レビューのマーケットシェア社の寄稿にもあるとおり、オフラインのアトリビューションという方法論は2000年初期頃からありました。IT技術の進化に伴い、分析コストが安くなったため、ビジネス分野、マーケティング分野でも利用できるようになってきました。有名なのがワコビアの事例です。2008年11月のハーバード・ビジネス・レビュー日本版に載っています。2002年、2003年頃、予算の使い先としてのウェブは今とは比べ物にならないくらい小さかったはずです。当時からすでにオフラインの事例はあって、研究もしつくされてきました。そしてここ5年から6年でネット広告に対する投資が増えてきましたが、この枠組みにどう取り組んでいくべきか、完全には答えが出ていないと思います。

有園:なるほど。

吉沢:リスティング広告などネット広告にお金をかけていても、テレビCMなどと同次元では並べられません。配分を決めるとき、どう扱ったらよいのか。あとは、ソーシャルメディアを従来のマーケティングミックスの中にどう落とし込んでいくかも課題です。

テレビCMを出稿した結果の調査や分析

有園:テレビCMを出稿した結果の調査や分析は昔から行われていました。Swimlane(スイムレーン)と言われる縦割り的な、テレビはテレビだけ、ラジオはラジオだけ、新聞は新聞だけ、といったレスポンス、効果の分析が主流でした。2000年以降、マーケティングミックスモデルなどで分析できるようになったのは、統計ソフトが良くなったからですよね?

吉沢:そこも大きいと思います。

有園:統計学の進歩もあると思います。構造方程式モデリングや共分散構造分析といった、テレビCMを出稿したら人はどういった行動をとるのかを計算させる統計ソフトも、昔は高くて簡単にできるものではありませんでした。でも、2000年以降は実務レベルで使えるようになりました。先ほど話に出たmarketingQEDで、モデルはデフォルトでも数千くらいつくると聞きました。昔はモデルを1個つくって計算するのにも高いお金がかかりました。しかも、モデルを1個つくって1回目の分析で出てくるのが、統計学的に「当てはまりがよい」と言われる有意な数値、理論的にも現実をよく表した数字とは限りません。でも、分析を2回やるとなるとまたすごいお金と時間がかかっていたのが、2000年以降にIT技術の進歩やサーバーの容量が大きくなって大量のデータの分析結果が、ボタン1個でほんの数分でかえってくるようになりました。数千個のモデルだと?

吉沢:30秒から1分くらいで数千のモデルが出てきます。その中から統計的に良いものをサジェストしてくれます。

有園:数千のモデルなんですね。そういったことができるようになったので、実務で使えるようになったということですね。

計算コストの低下

吉沢:はい、大きな進歩です。ブレインパッドでは、marketingQEDというマーケティングミックスモデリングに特化した分析ソフトウェアを取り扱っています。モデルも1個作ったら終わりではありません。分析的な視点とビジネスの視点両方を加味して、最適なものを選ばなければなりません。計算コストが下がったおかげで、それが速くできるようになりました。

marketingQEDは、遺伝的アルゴリズムを採用しています。1秒間から10秒間に、数百から数千のモデルを自動的につくることができます。その中から、統計値をつかって最良なものを選べます。マーケッターや我々のような分析官が考えることは、いかに現実に則しているか。そして、施策への落とし込みができるかどうかです。分析そのものではなく、よりビジネスへの適用について考える時間が増えました。

専門家のためのツールから、一般のマーケッターが使うツールにまで広がってきたので市場も広がり、MarketShare(マーケットシェア)やThinkVine(シンクバイン)といった専業の会社も出てきました。我々も時間がかかってしょうがなかった部分がミニマムになり、ビジネスになってきました。クライアントもそれにお気づきになり、引き合いも増えています。

ソーシャルメディアをどうモデルに取り組むか

有園:さきほど、オフラインのアトリビューションやマーケティングミックスモデルを回す際の課題は、ソーシャルメディアをどうモデルに取り組むかだとおっしゃいました。投下金額に対するゴール、目的変数が売り上げだった場合、ソーシャルメディアの拡散は投下金額に直せないから課題なのでしょうか?

吉沢:それも1つですね。特に難しいと感じていることは2つあります。1つ目は、おっしゃる通り、ソーシャルメディアは金額換算が困難なのでROIに落とし込みにくいということ。2つ目は、カスタマージャーニーという言葉ですべて表されているかもしれませんが、いまは昔よりも消費行動が複雑になっていることです。売り手と買い手の情報の非対称性が完全に崩れたのも忘れてはいけないポイントですよね。テレビCMを見て、続きはウェブでという古典的な話もありますが。

有園:え!古典なんだ!(笑)

吉沢:どうでしょうか(笑)。有園さんも関わっておられたとお聞きしていますが、直の購買ではなく、間接的により商品を理解してもらう、競合優位性をアピールするという点で、ワンクッション設けるようになりましたよね。

有園:それがモデルに入ってきたのは最近ですね。

吉沢:さきほど紹介した事例は、そういったワンクッションを意図的に設けるといった概念がほとんどなかった頃のものです。

有園:ワコビアの事例ですね。

吉沢:投資と売り上げという2つの関係ならモデル化も単純でしたが、構造的に因果の仮説として、ネット(広告)が間に入ったとき「真ん中はどうやってモデル化したらよいんだろう」というのが課題です。

重回帰分析とは

有園:重回帰分析で、なんでもやってしまう時代がありました。ワコビアの事例も重回帰分析をしていますか?

吉沢:おそらく、一部分ではそうだと思います。

有園:重回帰分析は、説明変数と目的変数。説明変数が複数あり、それに対する目的変数が1個あるという単純な形で数字を入れて、あとはソフトウェアが計算してくれる感じだったと思います。アナリストが分析する前に、ある程度の因果関係を想定してモデルを作らなければならない点で、取り扱いが難しいということでしょうか。

吉沢:そのとおりです。有園さんがおっしゃっているのはここで(Fig.3)古典的なマーケティングミックスモデルは、この重回帰という手法をつかっていました。これはいくら投資するかといった予測には向いていますが、因果関係の理解は難しい。ウェブの行動は多階層の分析が必要になります。統計的にやれば、もっともらしいものが出るだろうと思われるのですが、ここまでくると難しいです。自然検索でも良かったり、リスティング広告でも良かったりと甲乙つけがたい、判断しづらいことが出てきます。手法やマーケティングが進んでも、分析の精度や納得感は腑に落ちないのです。

(Fig.3)

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クローズドループマーケティング

有園:「インターネット・マーケティングの原理と戦略」(日本経済新聞社)という本があります。スタンフォード大学の教授が90年代後半に執筆した本です。

この中で、たとえば、テレビCMを投下したら、それに接触した人が何パーセントかいて、接触した人のうち、認知した人と認知していない人がいるわけですが、認知した人のうち、すぐに店頭へ行く人がいれば、なにも行動しない人がいます。いまだったら、インターネットで検索してネットに行く人がいますね。このように分かれていって、広告に接触したユーザーの行動は、どのようなものがありえるかをツリー構造で整理して、それぞれ何パーセントになるかなどをみていく、という方法論が書いてあります。

これを応用していくと、たとえば、ウェブマーケティングのPDCAを回すときに、ボトルネックはここだから、この点を何パーセント改善するために、クリエイティブを変更すべきなのか、投下量を変えるべきなのか、タイミングの問題なのか、ターゲティングの問題なのか、といったことを割り出すようなことが理論的には可能になることが分かるんです。

そのなかで、クローズドループマーケティング(Closed loop Marketing)ということが書かれているんです。クローズドループというのは、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、ネットなど投下したものがいろいろあり、接触した人がいろいろな行動履歴をたどって最終的にゴールである、広告主側の売り上げに戻ってくる。この流れの中で、広告主が売上をあげるために出したお金、仮に100万円出したとしましょう。それが、ループをたどって最終的に売上として広告主の元に戻ってくることが売上で、ひとつひとつのループがクローズして広告主の元に戻ってくるということを、きっちりやっていかなければならないと説かれています。

吉沢:大きくなって返ってこなければ意味がないですよね。

有園:100万円つかって100万円戻ってきたのではダメですね。たとえば、1,000万円以上ぐらい売上がかえってくるのがよいですね。そのようなクローズドループができるのがネットだと、そんなことがその本には書かれています。インターネットマーケティングの基本は、それができることで、それができるようにきっちりオペレーションすべきだと私は解釈しました。

まったくそのとおりだと思うのです。インバウンドマーケティングと呼ぼうが、アウトバウンドマーケティングと呼ぼうが、アウトバウンドしたものがインバウンドでかえってきて、広告主のお財布に戻ってこなければ意味がありません。そういったループ、あるいはカスタマージャーニーが、ネットの登場によって複雑になっています。構造化して統計的に分析して、結果的に戻ってくるということを、モデルにするのが難しい。それが課題なのかなと思っています。

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ループがクローズしていますか?

吉沢:インターネットがクローズドループの重要なポイントだと思います。それがなければ、ループではなく壁打ちでしょう。

有園:うまいたとえですね。

吉沢:そこに時間軸が加わり、なおかつタッチポイントが増えているので、モデル化が非常に難しいんです。

有園:「ネットだったらできる」という解釈を私はしていたのですが、マーケティングミックスモデルを使えば、基本的にはモデルさえ上手く作れれば、ループがクローズするような形で、どのポイントで、どこの広告出稿を増やせばよいかが分かりますね。

ループをクローズさせる3つの条件

吉沢:ただし、条件が3つあります、などと、条件は必ずついてくると思っています。

1つ目は、「データが溜まれば」という前提が、常につきまといます。現状はその段階で止まっています。

2つ目は「スピード」です。広告主はいかに早くデータを溜めて、分析して、理解できるかが非常に重要になってきます。先週のデータについて1カ月後に分析結果を出しても意味がないので。

最後は「社内組織」です。データを溜ためるスピードと活用の意思決定、いろいろなことを早める体制はリアルなところで最も厳しい成約条件となります。この3つに注意することが重要です。

クライアントには、この3つをセットで理解してもらえるよう、ツールの導入と同じくらいにご説明しているところです。

有園:なるほど。

吉沢:そこまでやらないと、marketingQEDも活かせません。

DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)

有園:最近、DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)という言葉でいろいろなことが語られています。いわゆる宣伝広告費もマーケティングミックスモデルを回すためには、テレビCM、新聞、雑誌、ラジオ、ネットの投下量がデイリーで過去2年分くらい残っているとやりやすいですね。DMPという形で入れていくのがよいですか?

吉沢:そうですね。これはルール、仕組みだと思っています。たとえば、iPhoneアプリで健康管理ツールがあります。何を食べたとか、何時間眠ったとか、体重とかを記録します。

有園:つかっているんですか?

吉沢:つかってます(笑)。あれは結局、「見える化」しているんです。そのときだけを見てもしょうがなくて、過去の推移から、何を食べたらどうなるかを押さえることが大事なんです。企業のデータも同じです。今日のことを考えがちですが、過去の連続が今です。過去のデータを貯めていくことをルール化して、健康管理だったらアプリになりますが、ビジネスのデータ蓄積だとDMPみたいなものになるのかなと思います。

有園:体重アプリをつかって痩せたんですか?

吉沢:一瞬、痩せますね。Fitbitもつかっていたんですが、途中でなくしてしまいました。そしたら体重も増えましたね(笑)

有園:そうですか(笑)。計れないものはマネージできないということですね。DMPというと、サードパーティクッキーの話がでます。オフライン広告のデータなどは、そこに入れてCRMに取り込んで、マーケティングミックスモデリング用の分析データも蓄積したほうがよいですね。

吉沢:そうですね。

有園:スピードに関しては、おっしゃるとおりです。できるだけ早く分析結果がかえってこないと、アクションに移しても意味がない、遅い、ということになるので。社内組織は今後ますます課題ですね。ひとつのブランドであっても、あるテレビCMの担当者は自身の携わっているキャンペーンの投下量は把握していても、隣の席の人が担当している別キャンペーンの投下量は知らなかったり。同じテレビCMでもそうなので、雑誌や新聞、ラジオやネットなど他のメディアのことは、なおさら把握していない状況でしょう。マーケティングでの投下金額は、ほとんどバラバラに管理され、統括されていないのが現状です。

Swimlane(スイムレーン)と言うのがまさしくそのとおりで、自分は平泳ぎしていたけれど、横の人はクロールしていて早く行ってしまったというようなことが現実に起きています。自分たちはクロールで必死に泳いでいるけれど、自社の他部門の人は背泳ぎしていた、泳いでいなかったということがよくあります。他の担当から見ると「なんでそんなことやっていたの?」と言われるような議論が生じます。「見える化」する、共有することは大事ですね。

吉沢:そうですね。

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予測シミュレーション

有園:marketingQEDでは、たくさんのモデルがつくれているわけですが、実際にはどのくらいつかえるレベルですか?予測シミュレーションはどのくらいあっているのですか?

吉沢:マーケティングミックスモデルの3つの要素のうち、予測シミュレーションに関わってくることですが、精度の追及をマーケティングの領域で求め出すと非常に難しいです。絶対的な正解を出しているわけではありませんし、出た示唆で実際にマーケティングミックスを変えて投下すると、現実を変えてしまうことになります。精度は統計的に担保されていれば十分です。マーケティング分野に限っては担保されるか、されないかの二軸でしかないと思います。

大切なことは、いかに予測シミュレーションの結果をビジネスに落とし込み活用するかです。予測して、ベストな予算と配分でも、目標の売上に達することができないという事実が出たときに、このまま積むのか、やめるのか、その判断こそが大事です。担当者レベルではなく、会社としての意思決定に、この結果を活かせるかどうかが最も重要です。5パーセント違うからもっと精度を高めようといった議論は、チャンスを逃している可能性があります。シナリオというか行動規範が作れるかが大事です。

有園:シミュレーションする数字がぴったり合うことはありませんね。

吉沢:まずありません。

有園:あくまで指針です。20億円の広告宣伝費があったとして、それを40億円に増やしたいと思っているときに、40億円に増やすことが統計的に正しい判断なのかを見たいときに役立つものです。あるいは、40億円に増やしたうちの媒体別アロケーションを、どういうふうに変えると過去のデータに基づいて適切なのかを判断する際に、指針として使ってくださいということですね。

指針もなく、前年と同じ金額、あるいは会社の業績が30パーセント伸びたので媒体別の予算も30パーセント増やすよりは、はるかに根拠もあって良いですね。実際、それで売上が改善する例が出てきています。

吉沢:おっしゃるとおりです。まったくテレビCMを出したことがないのに、テレビCMを出したらどうなるか予測シミュレーションすることは難しいです。一方で、新しい商品を出す際、過去の他商品のデータに基づいて、どのように商品が立ち上がり、どのように広告が影響するかを予測することは可能です。

有園:過去に別の商品でデータがあればということですね。

吉沢:そうです。あとは、業界に類似品があるというのが前提です。条件はつきます。なかには、統計よりは担当者の経験や勘を重視する声もあります。でも、そうした個人の経験や勘は、他人に腹落ちする形で説明できない点が課題です。マネージメントへの説明責任が果たせない、担当者が変わるときに引き継げない、そういう問題が生じます。誰にでも客観的に分かる共通言語が統計アプローチです。

(Fig.4)例えば、チーズの売り上げが3年分あり、日別でこのように売れています。「最近、売れ行きが良いな」と思ったとき、分析すると、たとえば3つの変数に分けることができます。3年間に渡る長期のトレンド。そして季節変動。チーズだったら秋から冬にかけて売れて、夏は売れない、とか。このトレンドと季節変動を取り除いたものが、マーケティングやコミュニケーション活動によって増えた売上です。アトリビューション、広告に限って話をしていますが、本来分析するときはトレンドと季節変動を除いた部分(「その他の変動」)を対象にします。分解して考えなければならないのに、できていないケースは多いです。みなさん、頭の中では分かっていて、加味されているのですが、やり方を他人に説明するのが難しいのです。でも、統計的なことは誰がやっても同じように分解できるのがメリットです。しかも、知識としてたまっていきます。それが良いですね。

(Fig.4)

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事業全体の投資のためにアトリビューション

有園:アトリビューションは、財務用語であると言う人がアメリカで出てきています。私がアトリビューションの仕事で企業の役員などにプレゼンすると、年間、広告宣伝費として使っている20億円を40億円にすべきか、それとも20億円の予算で、システムを構築したほうが良いのか、あるいは営業のスタッフを増やしたほうが良いのかといった経営全体のリソース配分の最適化に話が移ることがあります。価格戦略として価格を下げたほうが売上は上がるといった話も含まれてきますが、このようなケースが増えています。某商社からの相談は、グループ企業である保険会社に出資していて、出資の回収として、まずは、広告宣伝費からリアロケーションしたい、さらに事業としてどのように成長するかを見たいので事業全体の、つまり、広告宣伝費以外も含めた事業全体の投資についてアトリビューションをやりたいというものでした。ブレインパッドさんにもこのような相談は多いですか?

吉沢:多くはないですが、ありますね。

有園:実際に分析しているものはありますか?

吉沢:IT投資やヒューマンリソースの投資と比べることは難しいですが、CMOではなくCFOの視点での話はあります。marketingQEDのソフトウェア導入の事例です。資材調達、研究開発、ヒューマンリソース、マーケティング、これらへの投資がどの会社もトップ4になっているはずです。

資材調達は、要素を分解することによって原価が見えてくるので、比較的、投資対効果が見えやすくなってきます。研究開発はライフサイクルに応じた期限を設けると、ある程度のROIが見えます。ヒューマンリソースも労働に対して分配するための分母になるものは見えてきます。これらに比べて、マーケティングへの投資の効果は、見えるようで見えてきません。「テレビCMをやらないとブランド力が落ちますよ」と言われたら、CFOは「それなら数字で示してください」と言います。マーケティングの投資対効果を「見える化」するには、アトリビューションという大きな概念が必要となります。

アトリビューション分析を用いると、「マーケティング全体でどこにどれだけ投資して、どういう効率でどのように回収し、効果があることが分かり、最終獲得はウェブですがテレビCMも必要です」という説明ができるようになります。海外では、こうした事例はCMO向けであるとともにCFOが活用しているケースは多いです。グローバル企業であれば、国や地域で比べられます。国や地域の違いを考えることができ、グローバルROIとして全体的に底上げできるようになります。

経営にはアトリビューション的思考が必須

有園:費用対効果を意識して、投資の回収をはかっていくのは日本全体で必要なことだと思うのですが、現在はクライアント側に課題があると感じています。壁になるのが「分析結果がよく分からない」ということです。分かる人が見れば分かるけれども、統計学を知らない人には何をやっているのか全く分からないという話になります。ブレインパッドさんの方で良いソリューションを用意していたりしませんか?

吉沢:あります。marketingQEDは、統計の知識がなくてもユーザーフレンドリーな画面を見るだけで結果が分かります。ただ、マーケッターや分析結果を見る人は、基礎的な統計の知識は身に付けておいたほうが良いので、当社では実践的な統計の知識を扱う「データサイエンティスト入門講座」を開催しています。企業向けに講座内容のカスタマイズもおこなっています。日本では内製志向の企業が多いかと思いますが、ファーストステップは内製化にこだわらず、まずは外部をうまく使いながら知識を身に付けて、使いこなせるようになってから社内でやるのが良いと思います。

有園:アトリビューションや統計についてアメリカ人と話をしていると、日本との違いに驚かされます。アメリカの大企業の役員クラスは多くの人がMBAを取っていて、MBAの授業に統計やデータ分析があるので、統計に関する知識が身についています。でも、日本の場合は大企業の役員クラスであってもMBAを取っている人はそれほど多くなくて、統計を学んでいない人の方が多いでしょう。日本の大学で学ぶ統計学も、実務で使えるレベルではありません。経営陣の統計学の知識の差が、日本とアメリカの差ではないかと感じています。経営に関わる方は統計学を学んでいただくことで、アトリビューションへの理解、分析結果への理解が高まるのではないかと考えています。

吉沢:弊社の目標は持続可能な社会を作ることです。それを実現するのは、人、モノ、金を適正に配分することで、争いなく配分するには、分析的な視点が必要だと思っています。アトリビューションに関しても、経営に近い方に腹落ちする形で理解していただくことが重要になります。統計的な知識をもっていただいたほうがよいですね。経営資源の配分もある種のアトリビューションですので。

有園:経営者にはアトリビューション的思考が必須ということですね。ありがとうございました。

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【アトリ君の視点】有園も執筆に関わった「アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法」はオンラインアトリビューションを日本で初めて解説した書籍でしたが、オフラインアトリビューションも含め、手法論も含めた形で体系的に説明したものは初めてかもしれません。さらには事業全体のアトリビューションまで進んできており確かな進歩を感じることができました。ただ、課題は多く、「ループをクローズさせる3つの条件」で挙げられたポイントの改善が恐らくどの企業も必須で、組織運営上の各種問題と共に取り組まないといけないことがますます浮き彫りになったように思います。まだまだやることは多いですね!吉沢さん、今回はありがとうございました!

コメント

アトリビューション特別対談: 電通からのMBOで、いま注目のイグニッションワンが語る! – イグニッションワンジャパン代表取締役 松本英人氏xアタラ有園

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電通からのMBOで、いま注目のイグニッションワンが語る! デジタルメディアのバイイング最適化とマーケティング自動化ツールを統合した「デジタルマーケティングスイート(DMS)」が実現するアトリビューション分析の自動化
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出会いはサンフランシスコ

有園:本日は、株式会社イグニッションワンジャパンの代表取締役、松本英人さんにお話を伺います。さっそくですが、松本さんが代表に就任したのはいつからですか?

松本:イグニッションワンジャパンの松本です。代表には2012年11月に就任しました。2008年に入札管理ツールのサーチイグナイトが立ち上がった際、創業メンバーとしてジョインしました。

有園:最初は何人でスタートしたのですか?

松本:2人です。すぐに3人目が入り、しばらくは4人でした。

有園:インターネット広告業界に入ったきっかけはなんですか?何年くらい、この業界にいるのですか?

松本:業界歴は、12年から13年くらいです。大学卒業後にサンフランシスコでホテルマンを目指していたのですが、求人広告を見ていたら検索のディレクトリをつくる会社が日本語のできるメンバーを探していて。90年代後半のドットコムバブルと呼ばれていた頃のことです。結果的に「チャレンジしてみよう!」ということになりまして。そこで有園さんにお会いしたんですよね(笑)

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LookSmartの同僚時代

有園:そうでしたね(笑)実は、LookSmart(ルックスマート)という会社で松本さんとは同僚でした。90年代後半にサンフランシスコで一緒に仕事をしていたのです。

松本:懐かしいですね。

有園:LookSmart(ルックスマート)では、日本のマイクロソフトネットワーク向けのインターネットディレクトリをつくっていましたね。

松本:当時、有園さんにライティングを徹底的に鍛えられたことを覚えています。その後、LookSmart(ルックスマート)が日本に上陸するのと一緒に日本へ帰国し、ずっと検索に携わってきました。

有園:ライティング?当時は、ウェブサイトのレビューを書くことが仕事だったんですよね。LookSmart(ルックスマート)の後はどうしたんですか?

ジェイ・リスティングの立ち上げに参加

松本:ジェイ・リスティングの立ち上げに参加し、1年たたずにライブドアに買収されてグループに入り、ライブドアが検索を強化する時期だったのでディレクトリをつくったりしていました。

イグニッションワンに入社したきっかけ

有園:イグニッションワンに移るきっかけはなんですか?

松本:イグニッションワンの前身はサーチイグナイトという会社で、入札管理ツールを開発している会社でした。アメリカのジョージア州アトランタ市で立ち上がった会社です。サーチイグナイトの親会社がイノベーションインタラクティブで、イノベーションインタラクティブが2005年にライブドアに買収されました。当時、私はライブドアにいたのですが、サーチイグナイトをジェイ・リスティングの中で内製しようという動きがありました。その後、縁があってサーチイグナイトを法人化して、ライブドアとは独立した形で会社を立ち上げることになったときにジョインしました。

有園:それが2008年ですか?

松本:2008年の2月です。

資本関係

有園:そのとき、ライブドアの資本は入っていたのですか?

松本:入っていません。

有園:引き続き、イノベーションインタラクティブはイグニッションワンの親会社ということですか?

松本:直接の親会社です。イノベーションインタラクティブが電通ホールディングスUSAにM&Aされたのが2010年の2月で、そのタイミングで電通グループに入りました。

有園:電通ホールディングスUSAの子会社がイノベーションインタラクティブで、イノベーションインタラクティブの子会社がイグニッションワンということですね?

松本:そうです。

サーチイグナイトからイグニッションワンへ

有園:サーチイグナイトがイグニッションワンに名前が変わったのはいつですか?

松本:2011年の4月11日です。

有園:まだ2年くらいなんですね。

松本:はい。そして、今年7月の事になりますがイグニッションワンの経営陣が主導するかたちでMBOを実施し、電通グループ100%子会社の枠を離れて、より独立性を持った事業体として新しいスタートを切ったところです(詳しくは、こちらのリリース)。

共通キーワードは「検索」

有園:90年代に出会ってから、その後もお互いに検索に携わってきたわけですね。

松本:そうですね。ずっと、検索エンジンや検索キーワードに縁がありました。

入札管理ツール戦国時代

有園:イグニッションワンは評判が良いと聞いているので、その理由やアトリビューションについて伺いたいと思います。サーチイグナイトとして営業をはじめたのが2008年ということですが、その頃の日本は入札管理ツールを導入する企業が多かったのですか?

松本:入札管理ツールの認知度が高く、企業も導入の意欲があり、競争の激しい時代でした。海外系ツールも参入していたのが2008年、2009年頃のことです。カタログ化ではないですが、スペックで比較され、ポートフォリオ型?ルールベース?という二択や、ホワイトボックス?ブラックボックス?という話もよく出ました。

ホワイトボックスとブラックボックス

有園:ホワイトボックスは最適化のロジックが分かりやすいという意味で、ブラックボックスは分からないという意味ですね。

松本:事前に根拠が分かりづらいこともあり、広告主に根拠を問われることも多かったです。ただ、我々は当時から透明性を重視し、明確にしていました。事前にどのような入札をするのかチェックできたので、広告主が納得した上でオンにするようにしていました。シミュレーションが出せたので、それも喜ばれていました。

淘汰された今

有園:私の知る限り、2005年ごろから2009年ぐらいの間に入札管理ツールがたくさん登場し、2013年のいまは、ある程度淘汰されたように思います。生き残っている入札管理ツールは、それぞれ特徴が際立っていますね。最近のイグニッションワンの動きを見ていると「もしかしたら入札管理ツールとは呼ばないでほしいのかな?」と思ったりするのですが、そのあたりはいかがですか?

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入札管理ツールと呼ばないで

松本:そのとおりですね。2011年にイグニッションワンとブランド名を変えて、もう一度市場にアピールしたのは、まさにその点です。「サーチ」と社名に入れているとおり 検索畑からスタートしてはいますが、サーチだけでは手狭になってきました。会社名としても実態を表していないのでは?という考えもありました。2009年頃には、イノベーションインタラクティブがネットマイニングというベルギーを拠点としたアクセス解析の技術をもちつつ、行動分析のスコアリング技術に長けた会社をグループ化しました。この会社は、ネットマイニングの技術を応用してサイトに訪問したユーザーの行動を分析し、興味のある商品や購入意向をスコア化する技術をもっており、サイト内を最適化できるようになりました。それを一時、平行して販売していました。

サイト内行動の最適化

有園:サイト内行動の最適化ですか?

松本:サイト内の行動を分析して、一番スコアが高まった最適なタイミングでインタラクションを仕掛けられるのが一番の売りです。あるスコアに達した特定のユーザーへのみクリエイティブを表示したり、LPを最適化したり、コンテンツを差し替えたり、CRMと連動してメール本文をカスタマイズしたり。そうした施策をおこなえるツールと二本柱で販売していました。

有園:ネットマイニングは、サイト内の行動を分析して、その履歴に基づいてスコアをクッキーにつけて、クリエイティブの出し分けができるんですね。旅行系サイトの場合「イタリア旅行に興味がある」というスコアを用意しておいて、そのスコアがたとえば200に達した人には動的にイタリア旅行のクリエイティブ、バナーなどが表示されたり、動的にサイトのコンテンツを差し替えたりできるということですね。

松本:ヨーロッパでは、自動車系メーカーにも導入していただいています。検討期間が長い、最終的にオフラインで購入に至るサービスなどと親和性が高いです。来店したときに使えるクーポンを掲示し、印刷して来店を促すなど、オフラインとの連係に強いツールです。その技術をいよいよ応用していこうということになりまして、サーチだけでなくネットマイニングの技術も統合し、リブランニングしました。

有園:イグニッションワンは、サーチイグナイトとネットマイニングを足したものと考えればいいですか?

松本:はいそうです。

有園:具体的には何ができるんですか?

イグニッションワンでできること

松本:サーチに関しては、ポイントソリューションと呼んでいる、サーチイグナイト時代に培ったものがあります。ポイントソリューションとは、特定のチャネルやジャンルにおいて専門性をもったツールという意味です。バナー広告の配信システムは、ディスプレイというチャネルがあり、2012年から広く出ているDSPのチャネル、ポイントソリューションとしてのDSPがあります。そして、サイト内の最適化というソリューションではネットマイニングがあります。それらのチャネルを横断的にまたいで、すべての機能を統合したもの、広告の統合管理プラットフォームと、スコアやアルゴリズムを使った最適化ツール、この2つが組み合わさったものがイグニッションワンです。

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DSP機能を搭載

有園:サーチイグナイト時代はディスプレイをやっておらず、2011年にネットマイニングがグループ化してイグニッションワンになったということですが、DSPの機能がイグニッションワンについたのはいつですか?

松本:本格的に稼働し始めたのは、2012年からです。

有園:その機能はネットマイニングでもっていた機能ではなく、DSPを開発して、イグニッションワンに組み込んだ。つまり、サーチイグナイト、ネットマイニング、DSP機能の3つがついたものをトータルでサービスしてくれるということですか?

松本:そうです。かつての技術はスコアにつかわれ、ディスプレイもユーザー単位でコンバージョンしやすい人に絞った形で買い付けできるのもDSPの中でも特徴的な機能だと思います。

ポイントソリューションとは?

有園:ポイントソリューションとスコアは同じことですか?

松本:ポイントソリューションはサーチの管理ツール、もしくはDSP単体で販売しているプラットフォームを指しています。

有園:サーチというポイント、DSPというポイント、という意味でしたか。あとは、サイト内行動分析のポイントということですね。それを御社でポイントソリューションと呼んでいて、スコアとは関係ないんですね。それぞれの3つのポイント、ソリューションを組み合わせているということですね。話しが変わりますが、行動履歴をもとにスコアをつけていくとは、具体的にどのようなことですか?

松本:スコアの技術のもとになっている、自動学習のアルゴリズムが裏で動いています。広くつかっている要素は3つあります。まずはページの遷移です。どのページをどのくらい見ているのか。それをネットマイニングの技術を使い、タグ経由で取得しています。滞在時間、ページの遷移の情報が把握できます。項目は100くらいあり、ブラウザの情報や流入経路も管理されています。訪問頻度と最後に来てからの経過時間も取り込んでいます。

有園:フリークエンシーとリーセンシーと呼ばれるものですね。一週間に何回きているか、頻度はどのくらいか、最近いつ訪問したかなどですね。

スコアとは?

松本:スコアの概念は、実店舗を例にサイト訪問を考えると分かりやすくなります。靴屋の場合、見るだけで買わない、冷やかしに来る人がいる一方で、何回も通って自分の足に合ったスニーカーを探している人、購入を検討する人がいます。気の利いた店員であれば「この前もきたな」と覚えておいて、お客様がスニーカーを手に取って数秒経ってから「サイズはいかがですか?」と声をかけるでしょう。適切なタイミングで声をかけ、適切な流れでクロージングまでもっていくのが優秀な販売員だと思います。それと似たようなロジックを、ECサイトなどでも取り入れるべきだと考えています。購入意向が高まっている方をスコア化し、スコアに応じて適切なアプローチをするという技術です。

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有園:それは、ネットマイニングの技術ですか?

松本:そうです。

有園:スコア化する際、DSPの反応も見ているのですか?バナー広告を配信して、反応が良くて、サイトでの行動も良いというような要素も入っているのですか?

松本:ユーザーに対して、どのくらい広告を表示したかという数字はもっています。反応せず、再訪までに時間がかかるケースは、再度訪問するときスコアは割り引かれ、スコアは下がった状態で取り直します。そうした意味では、スコアリングに加味されます。

有園:自然検索経由でバナー広告には反応していないなど、外部から流入してくる情報が加味されてスコアがつくわけですね。

松本:スコアはリアルタイムに変わります。昨日までは商品Aに興味をもっていたユーザーが、明日には別の商品に興味がうつっているケースもリアルタイムに対応できます。RTBの入札の場合は特に重要な部分なのでご好評いただいています。

スコアを使ってできること

有園:スコアを使って広告主にはどういうソリューションが提供されるのですか?サイト内が動的に変わる以外に何かありますか?

松本:さきほどのポップインでインタラクションを仕掛ける場合、オンサイト最適化と呼んでいるサービスがあります。もう一つは、DSPを使ったバナーのアドエクスチェンジ経由でユーザーが掲載面のページに訪れたとき、DSPを介してバナー広告を表示できます。これを「スマートリマーケティング」と呼んでいます。スコアを加味した精度の高いリターゲティングができます。

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リターゲティングの方法

有園:一般的にリターゲティングというと、サイト内に「イタリア旅行のページに来た人にリターゲティングします」「フランス旅行にきた人にリターゲティングします」とタグを入れますが、こうした設定をするんですか?

松本:はい。

有園:スコアが高いという条件が加味されて配信されるわけですね。スコアの高さでクリエイティブは調整できるんですか?スコアが100までの人には海外旅行という抽象的なクリエイティブを、200までの人はイタリア旅行という具体的なクリエイティブをというように。

松本:キャンペーンをそれぞれのシナリオに基づいて設計することで、実現できます。

有園:とてもよいですね。

松本:設計の自由度は高いです。ユーザーとスコアに応じて、シナリオ別に設計できます。DSPはゴールさえ入れれば後はお任せというソリューションも多いですが、我々はカスタマイズ可能な運用型の設計です。

有園:リターゲティングでDSPを設定する軸は、リターゲティングのタグを広告主のどのページにはるか、イタリア旅行に興味がある人のスコアが高いか低いか、それ以外は入札金額といった軸があると思いますが、この3つくらいですか。

松本:あとは再訪から何日経過しているかですね。再訪期間のターゲットです。昨日、来た人だけをターゲットにすることができます。時間帯別もできます。

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CRMとの連携

有園:さきほどCRMと連携する話がでましたが、ここ一か月で10万円以上購入している人のみをターゲットにすることもできるんですか?

松本:お客様がお持ちのデータベースと連携する必要がありますが、オンサイト用のクッキーIDと簡易IDを紐づけることで、ある程度できます。

有園:実施している広告主はいますか?

松本:カスタマイズが必要ですが、ワールドワイドではニーズがあります。

有園:日本国内では?

松本:そこまで大がかりな取り組みはまだありません。

有園:これから出てきそうですね。楽しみです。

松本:訪問した結果の情報はお持ちだと思いまが、どういう経路で購入に至ったかは見えてこない部分です。だから、コンバージョンを底上げする施策として、我々のサービスを使っていただけたらと思います。タグを入れるだけで、インタラクティブなアクションは自動的に学習していき、手離れがよくて楽です。ユーザーを想定する必要がありません。AとBとCというサイトを訪れ、何秒滞在した人を、どういうクラスターにするといった仮説でつくる必要がなく、そこは自動的に統計でならして考えていきます。一度いれてしまえば自動学習で最適なタイミングとスコアを導き出すので、あとはお任せで回していただければと思います。商品Aを買ったお客様が、二番目に興味があった商品Bの存在は、結果論としてなかなか見えてきません。でも、会員IDと紐づけると把握できるようになります。把握できれば、レコメンドで「商品Bをいかがですか?」とマーケティングできるようになります。

行動履歴に基づいて施策を変える

有園:いまの話だと、商品Aを買ったけれど、行動履歴を分析してみると、その過程で商品Bが二番目の候補であった可能性が分かるのと。商品Bを勧めれば買ってくれるかもしれないというわけですね。クロスセルを仕掛けるためにレコメンデーションをDSPでバナー広告を配信してもいいし、サイト内で何かしら動的にメッセージを出してもいいわけですね。

松本:いまの時点では、DSPをリアルタイムに反映することはできないのですが、データはもっています。二番目に興味のあった商品にカスタマイズしたメールを配信したり、画像に差し替えたポップインを出したりはできますね。

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有園:行動履歴に基づいてサイト内のコンテンツを差し替えられるし、バナー広告も対応できるということですね。サーチはどうですか?リスティング広告とか。

リスティング広告をスコアの技術で最適化

松本:リスティング広告でもスコアの技術を加味して最適化できるように進めています。現時点では、サイトを訪問したユーザーが、キーワードAを踏んで滞在していた場合、どのページをどのくらい滞在していたか、興味があった商品ジャンルがどれであったかを、キーワード単位で取得できます。それを見ながら、ビックキーワードで入られた方が、サイト内のどのページに最も興味をもっていたかが分かるので、それに応じてクリエイティブを変えるなどもできるようになります。ブランディングが目的の広告主に有効な指標だと思います。ブランド系のビックキーワードが実際にどこで一番滞在につながっているのかを把握することで、入札が適切であったかを判断できます。コンバージョンだけでなく、エンゲージメントの指標をもつことでリスティング広告の入札にも活かせるようになります。

有園:たとえば、トヨタ、ホンダ、日産、マツダといった自動車メーカーや、ソニー、パナソニックなどの家電メーカーだと、商品を個別に紹介するページを設けています。トヨタだと、お客様は「トヨタ」というキーワードを入れているし「トヨタ 自動車」と入れたり「プリウス」「カローラ」など車種名を入れたりすることもあるでしょう。それらのキーワードで入ってきたユーザーに対してランディングページが決められていますが、キーワードごとに滞在時間の長さや遷移ページ数の多さ、どのキーワードで入ってきたときに、どのページをよく見ているのかが分かるので、その情報を使って入札や広告のクリエイティブを修正することに反映できるというわけですね。

松本:いかがですか?

有園:けっこう良いですね。

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松本:ヨーロッパの事例では、ブランド系企業がサイトで情報提供してオフラインに誘導する設計で、エンゲージメントを見て効果を発揮しました。いままで見えていなかったインサイトを発見できるのが大きいです。

デジタルマーケティングスイートとは?

有園:御社もデジタルマーケティングスイートという言葉をつかっていますが、ネットマイニング、サーチイグナイト、DSPの機能をまとめて、デジタルマーケティングスイートといっているのでしょうか?

松本:バーティカルな機能を単体で使うことはもったいないので、すべてのチャネルの管理を一つのプラットフォームですることで、同じモノサシで評価すべきだろうという発想があります。アトリビューションでも重要なキーですが、アトリビューションを加味して最終的に適切な評価をするための、統合管理プラットフォームに位置付けています。そのなかで、デジタルマーケティングスイートはしっくりくるネーミングです。2011年以降は管理画面の中にもデジタルマーケティングスイートという言葉が出てきますし、デジタルマーケティングスイート.comというドメインもイグニッションワンがもって情報サイトを運営しています。

有園:御社の考え方だと、デジタルマーケティングスイートを実現するには効果測定が中心にあるのでしょうか?

松本:そのとおりです。

アトリビューション分析もできる

有園:イグニッションワンの中でアトリビューション分析結果がレポートとして出てくるのでしょうか?

松本:柔軟に設定可能です。ラストクリック評価ではなくファーストクリック寄りの評価が正しいのか、均等配分のモデルが正しいのか、評価をどのような軸で持つかを決めていただき、それに合せて各チャネルの効果測定も自動的に反映されます。求めていく各チャネル間の予算配分も、チャネルの貢献度を評価した上で決めて、バーティカルで回すべきところの最適化、それぞれアトリビューションを加味された最適化を、恒常的にかけてゴールを達成するのが我々の目指すところです。

有園:イグニッションワンを使うと、サーチ、自然検索やリスティング広告がとれて、ディスプレイもDSPという形でとれて、サイト内の行動履歴がスコア化されて、アトリビューションのモデルも選べて、それらを加味したレポートが出てきて、なおかつ設定さえしていればアトリビューション分析結果がリスティング広告の入札価格やクリエイティブに自動的に反映されるという理解でよいですか?

松本:データとしてはすべてそろいますが、レポートは管理画面上で細かい部分までは見られません。近々レポート画面の刷新を予定していますが、まずはカスタムレポートとしてお出しすることになります。その中でレコメンデーションとして全チャネルの可視化、貢献度の分析、最適なモデルをレコメンドし、アドバイスさせていただきます。

有園:ある程度の期間に基づいてアトリビューション分析し、予算のリアロケーションするレコメンドはするけれど、実施するかの判断や設定は広告主や代理店がするわけですね。リアルタイムに自動で設定の変更が行われるわけではないということですね。

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松本:レコメンド後の実施は簡単にできます。

有園:勝手に変えられたら困る代理店も多いでしょうしね。御社以外のDSPデータもとれるんですか?

DFA、メディアマインドと連携

松本:DFA、メディアマインドと連携が実装済みです。第三者配信のアドサーバーを介してデータの取り組みは可能です。

有園:アフィリエイトや純広告も第三者配信経由でとれるわけですね。

松本:ポストクリック計測が主流ではありますが、第三者配信が可能な場合は、ビュースルー計測も可能です。

有園:第三者配信に対応しているバナーであればビュースルーのトラッキングもできるし、ヤフーのブランドパネルなどもクリックトラッキングで取得できる。メールも、HTML形式メールであればトラッキングできるということですね。

松本:テキスト形式メールでもリンクを入れていただければ取得できます。

フェイスブック広告も計測できる

有園:開封を計りたいときはHTML形式メールでしたね。イグニッションワンを入れると、オンラインのマーケティング施策については、タグがはれる限り計測できるわけですね。フェイスブック広告はどうですか?

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松本:できます。計測用リンクをいれればフェイスブック経由の導線も計測できます。

有園:計測用リンクは広告ではないフェイスブックのニュースフィードにも入れられるのですか?

松本:広告の一貫としてのフィードであればサポートしています。イグニッションワンからAPI経由で計測できます。さきほどのメルマガのような感覚ではっていただき外部に飛ばすときは計測できます。

計測できないもの

有園:計測できないものはありますか?

松本:スマートフォンのアプリです。

有園:御社のDSPはスマートフォンでも対応しているのですか?

松本:課題があり未対応です。

マーケットの様子

有園:御社から見た競合はどこですか?

松本:サーチはマリーン、ソーシャル領域でも展開されているKenshoo、デジタルマーケティングスイートだとアドビなどが方向性の似ているプレイヤーだと思います。

有園:日本での営業状況はどうですか?

松本:サーチはもちろんのこと、ディスプレイの部分が伸びています。直接の問い合わせも多いです。

有園:利用している広告主やアカウント数はどのくらいですか?

松本:現状200前後くらいです。

有園:資本関係のお話にも関連して、先日のMBOによって電通グループの100%子会社から離れられたわけですが、日本の広告代理店の人や業界の人たちは、イグニッションワンは電通しか取り扱えないようなイメージがありましたが、直接取引もできるんですね?

電通しか取り扱えない?

松本:電通・関連グループの皆さんとは引き続き良好なパートナー関係を築いていく方向に変わりはありませんが、MBO実施の背景には中立なポジションで広くサービス展開をしていきたいという思いが原動力になっているところがありますので、直接取引はもちろん、今までお取引のなかった代理店様とも積極的にお付き合いしていきたいと考えています。

有園:電通以外の広告代理店とも取引できるんですか?

松本:できます。そこは柔軟です。

有園:最後に伺います。イグニッションワンの開発の方向性やロードマップはいかがですか?

ディスプレイ版のポートフォリオ最適化

松本:バーティカルな話ですと、各分野の機能開発は1年先まで予定が埋まっています。DSPの配信、買い付けに関する「ディスプレイ版のポートフォリオ最適化機能」の実装を急いでいます。数か月以内に実現する予定です。ダイナミッククリエイティブにも力を入れていて、既に国内でも提供を開始しています。同時にユーザーの興味関心の高い商品を動的に表示する「レコメンダー」の機能もブラッシュアップをかけています。

有園:なるほど。

サーチとディスプレイを一緒に最適化

松本:あとは、今後、サーチとディスプレイの予算配分をできるかぎりオートパイロットというか、モデリングが終わって出てきた結果に対して、最適なお題を自動的に回す、サーチとディスプレイの配分も包括した最適化がおこなえる。このような状況に、現状サーチは出来ているんですが、ここにディスプレイが乗っかって、最終的にはサーチとディスプレイが一緒の最適化できるようにしたいですね。お題を一個入れればすべてが回るような。それが現状のゴールですね。

有園:いまの話を分かりやすく言うと、「お題」というのはCPAを1000円以下で回すとかそういうものですか?

松本:もしくは、投下する予算を入れて、それに対するリターンがどれだけ入ってくるかとうところの、目標値を設定するということです。

有園:そのとき普通、1000万円予算があったら500万円をリスティング広告、500万円をDSPというみたいに設定を人間がやって、その範囲で動いていくわけです。しかし、リスティング広告とDSPを統合した目標を設定し、1000万円という予算の中で効果が高ければDSPの予算が700万円になって、リスティング広告が300万円になるみたいなことを、リアルタイムに自動でやってくれるわけですか?

松本:そうです。

有園:裏でアトリビューション分析が回るのですか?

松本:そのとおりですね。現状、それに近いことを裏側でやっていますが、インターフェース側に反映させていくのがゴールの一つです。

分析から実行までを自動化

有園:データを一か月とか取得して、モデルを決めて、御社側で分析した結果、推奨モデルを導き出してくれて、そのモデルからリアロケーションしてレコメンデーションするという話が出ましたが、レコメンデーションを実行に移すということを自動でやろうとしているという理解でよろしいですか?

松本:はい。そこは理想形としてあります。

有園:今年中には実装してくるのでしょうか?

松本:今年中には頑張りたいですね。年内の大きいところとしては、管理画面の予算進捗のアラート機能の強化はもちろんしますし、アトリビューションのパスのレポートですとか、ビジュアルとして管理画面上で確認できるようにします。

有園:アトリビューションのパスのレポートというのは、コンバージョン経路のレポートということですね?

松本:はい。そのとおりです。

有園:ある程度、パターン化して見やすくしていくわけですね。それ、難しいんですよね。

松本:どうですか?

有園:御社くらい技術があればできると思います。

松本:いろいろな組み合わせのパターンがあって、それをある程度グループ化して、例えばディスプレイが前半強い傾向にあるとかを視覚化できるようにしたいですね。

動画の対応

有園:ちなみに、動画の対応はどうですか?

松本:動画のDSPの話もありまして、いま検証中ではありますが、進化も早い分野なので対応予定です。あとは在庫との兼ね合いで、どのくらい立ち上がってくるかが決まりますね。

有園:在庫というのは、動画の在庫のことですか?

松本:そうです。

有園:オーディエンスやリターゲティングのロジックで、動画が配信できるようになると効果が高そうですね。

松本:はい。

データマネージメントプラットフォーム

有園:今年のトレンドである、データマネージメントプラットフォームについても伺います。御社はCRMデータと連携できるそうですが、それってちょっとしたプライベートDMPに近い形になってくると思います。サイト内の動線がとれていて、そのクッキーIDと会員IDを紐づけて、CRMと連携するのが一つのプライベートDMPの形です。そうすると、御社のDSPの買い付けはBlueKai(ブルーカイ)などとも連携しているのですか?

松本:ケースとしては試しています。プライベートDMPにも注目していまして、方向性としてはそちらにも動いています。重要なのはファーストパーティデータ、サイト内のデータ、もしくはサイトですでにとられている会員のデータを、さらに活用しようとすることです。サードパーティのデータはボリュームがあるので、それをマージすることによってターゲティングの範囲が広がると思います。でも、それに対して入札のロジックをどう紐づけるかが課題になってきます。サイト内で取得したデータをブラッシュアップして、それに紐づけて、お客様が持っているデータを、まずは活用できるようにするのが先かなと思っています。「第三者のデータを連携しないの?」と聞かれることがありますが、まずはファーストパーティの部分でもっとできることがあると考えています。あとは、入札のロジックはブラッシュしやすいところなので、そこを研ぎ澄ましていくことがファーストステップかなと感じています。

有園:そうはいっても、DMPを日本で導入している企業はほとんどないですからね。いわゆる、第三者のサードパーティとしてのデータとかいう意味では、まだこれからということですね。

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松本:ディスプレイも盛り上がってきていますし、リスティング広告とディスプレイがようやく同じくらいの予算規模で取り組まれるようになりました。両輪で回して最適化をおこなえる時代にきているので、我々もビジネスチャンスだと思っています。機能も営業も強化します。アドテク大好きで新しいうねりの中に飛び込んでチャレンジしたい仲間を募集しています。

アドテク大好きでチャレンジしたい仲間を募集中

有園:絶賛採用中ですね。いまは何名くらい、いらっしゃるのですか?

松本:6名です。

有園:何名くらいにしたいのですか?

松本:ビジネスが盛り上がっていけば、倍にはしたいですね。

有園:けっこう売れているので人が足りなくなってきたわけですね。良いことですね。今後も御社の動向に注目しています。ありがとうございました。

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(END)

【イグニッションワンジャパンの概要資料ダウンロード】
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【アトリくんの視点】統合管理プラットフォームは、統合環境であるがゆえのメリットを活かしつつ、統合環境をさらに拡大するスピードを担保するために、内部で実装する機能部分と、外部ツールやデータとの連携部分の絶妙なバランスが重要だと思いますが、イグニッションワンはとてもいいバランスで進化している印象です。統合管理プラットフォームの最大の強みの一つは測定環境の一元化であるわけで、アトリビューションによる可視化も大きな部分ですね。定点観測しつつ、高速にPDCAを回して運用するユーザー企業の出現も先の話ではなさそうですね。松本さん、ありがとうございました!

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【国内コラム】「アドテクノロジーが顧客の行動を通じてマーチャント側とメディア側をつなぐ」靴とファッションの通販サイト「LOCONDO」のアドテク活用史

先日行われたMarkeZine Day 2013 Premium Ad Technology Specialの講演がMarkeZineにて連載がはじまりました。。その中で、靴とファッションを取り扱う通販サイトLOCONDOのマーケティングディレクターの平塚裕司氏の基調講演でLOCONDOのアトリビューションとアドテクノロジーの活用が紹介されています。

「アドテクノロジーが顧客の行動を通じてマーチャント側とメディア側をつなぐ」靴とファッションの通販サイト「LOCONDO」のアドテク活用史
http://markezine.jp/article/detail/18460

特筆すべきは、氏の「ひたすらPDCAを回すことで、担当者に経験値が蓄積し、いわば”アドテク・アトリビューション職人”と呼べるまでにコントロールできるようになったのです」という言葉に集約される、様々なツールの管理運用を自社内で、高速にPDCAを回しながら行っていた点にあると思います。

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【アトリくんの視点】アトリビューションを専門とする”職人”が現時点ではほとんど存在しない中、自社内で活発にPDCAを回し経験値を蓄積していくのはとても素晴らしい取組みですね!

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テレビCMに検索キーワードが入るまで、そして、そこから学んだこと(前編)

この7月まで「MarkeZine(マーケジン)」で連載記事を書いていました。その連載の最後に書いた「テレビCMの投下量と検索数、そして売上げとの相関関係は?オフラインアトリビューションの基本【アトリビューション編:第6回】」という記事に関して、いくつか問い合わせや質問を頂きました。

自分としては、そんなに質問がくることは想定していなかったので少しビックリしていたのですが、ちょうどそのとき、ある総合広告代理店の人から「この記事の中で取り上げられたテレビCMと検索数の相関についての問い合わせは、いまだに広告主から多いのだが、総合広告代理店の中に検索からテレビまでを語れる人材が育っていなくて少々困っている」という話を聞きました。

そこで、私自身の経験から、マス広告と検索の相関に興味を抱いたきっかけや、そこから学んだことなどを書いてみたいと思います。

ひらめきは「ど忘れ」から

最初にこのアイデアを思いついたのは、ある体験がきっかけです。ある日、朝起きてすぐにパソコンに向かってインターネットをしていました。たぶん、二日酔いだったと思うのですが、頭がボーッとしている感じでした。

そのとき、関係者の方には大変申し訳ないのですが、「au」あるいは「KDDI」という名前を失念してしまい、なかなか出てこなかったのです。「あれ、あれだよ」と心の中で叫んでも、脳のシナプスがつながっていない感じで、思い出せないのです。思い出せないことにイライラしながら、とっさに思いついたのが「仲間由紀恵 ケータイ」というキーワードで検索することでした。

「仲間由紀恵 ケータイ」で検索

たしか、2002年のことだと思います。当時は、仲間由紀恵さんがauのテレビCMに出ていたんです。だから、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索すれば、そのテレビCMの広告主であるauかKDDIのウェブサイトが検索結果に出てくるだろうと期待しました。つまり、検索すれば「仲間由紀恵さんがテレビCMに出ているケータイブランド」を探せると思ったのです。

ところが、Googleで検索しても、Yahoo!Japanで検索しても、検索結果の1ページ目には出てきません。2ページ目に行っても、3ページ目に行っても見つかりません。やっと、5ページ目ぐらいになって、ちょっとだけそれらしき情報が出てきて、「あっ、そうだ。auだ」と思い出すことができました。

検索しても出てこない

このとき、自分が最初に思ったのは、「あー、残念だな。検索エンジン対策、ぜんぜんできてないな」ということでした。

ブランド名を失念してしまった自分が悪いのかもしれませんが、検索してもなかなか欲しい情報に辿り着けなかったことで、私はかなり気分を害していました。その結果、KDDIに対してマイナスイメージを持ったのです。「せっかく、こっちが検索して探しているのに、こんなに時間をかけないと見つからないなんて」と。

そして、次の瞬間。「同じような検索行動をしている人は他にもいるのではないだろうか」「テレビCMやその他の広告で得た情報やイメージを基にしてそのブランドを検索する人は他にもきっといるハズだ」。そう思ったのです。

テレビCMで検索ボックスを表示する

そのときです。テレビCMで検索ボックスを表示してキーワードを訴求すれば、そのキーワードを見て検索する人がいるのではないだろうか?同時に、検索エンジン対策として、そのキーワードでリスティング広告やSEOを施しておけば、検索した人を確実にウェブページへ誘導することができるのではないだろうか?と思いついたのです。

そうすれば、自分と同じようにテレビCMで得た情報に基づいて検索した人が、そのブランドのウェブサイトが見つからずにイライラすることもなくなるのでないか。それに、ブランド側もイメージを毀損せずに済むハズだ。ブランドに関連するすべての情報で検索エンジン対策を施せば、自分が経験したようにユーザーにイライラされて悪いイメージを持たれずに済むだろう。

このようにして、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索したことをきっかけに、テレビCMやその他のマス広告に検索ボックスを入れるというアイデアを思いついたのです。

リスティング広告の知名度ゼロ時代

当時はまだ、リスティング広告について知っている人が少なかった時代です。

私は1990年代後半からサンフランシスコにあるインターネット検索ディレクトリの会社で働き、2000年に日本へ戻ってきたあともインターネット広告関連の仕事に携わっていました。そのため、日常的に仕事でもプライベートでも検索エンジンを使っていました。

それまでの経験から、「リスティング広告は必ず普及する」と思い、近いうちに、オーバーチュア株式会社(現、ヤフー株式会社)かグーグル株式会社に転職したいとも考えていました。

そのため、リスティング広告のことも、アメリカのウェブサイトなどを読んで独学していたのですが、実際に、その後、オーバーチュアとグーグルで働くことになり、テレビCMの投下量と検索数の相関調査の仕事をし、そのような企画に関わるようになるとは夢にも思っていませんでした。

つまり、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索したときは、思いつきレベルでアイデアは浮かんだのですが、それを実現させようという意図はなく、しばらくは、すっかり忘れていました。

オーバーチュアに転職

私はその後、縁あってオーバーチュアに転職し、リスティング広告の拡販に従事するようになったのですが、ある総合広告代理店に対する営業を担当するまでは、そのときのアイデアを思い出すことはありませんでした。

オーバーチュア入社後しばらくして、総合広告代理店の担当営業になりました。総合広告代理店にリスティング広告を売ってもらうのが自分の仕事になったのです。2004年のことです。

リスティング広告を売ってもらえない!?

当時の総合広告代理店は、リスティング広告に限らずインターネット広告自体を積極的には取り扱っていませんでした。そのため、いくら説明して回っても、一部の人にしか興味を持ってもらえません。なかなか理解を得られません。総合広告代理店は何千人ものスタッフを抱えています。すべての人に説明して回るのは不可能に思われました。

「どうしたら、この人たちに興味をもってもらえるのだろう?」「どうやったら、この人たちにリスティング広告を売ってもらえるのか?」そのようなことを考えるのが日課になりました。

マス広告とリスティング広告のセット販売

そのときに、彼らが得意とするマス広告、とくにテレビCMとリスティング広告をセットで販売してもらえたら楽なんだけどな……という考えが浮かんだのです。そして、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索したときの、あのアイデアを思い出したのです。

すぐに企画書を書いて、オーバーチュア社内で同僚や上司に見てもらいました。後になって、「マス連動」とか「テレビCM連動」と呼ばれるようになったのですが、そのときの企画書には、「テレビCMとリスティング広告のセット販売企画商品の開発について」というようなタイトルをつけた記憶があります。

そのようなセット販売を総合広告代理店にしてもらうには、テレビCMの投下量(具体的には、GRP:Gross Rating Point)と、そのテレビCMに関連するキーワードの検索数に正の相関があることを示さなければならないと思い、その相関関係を調査することも、企画書には入れておきました。

その調査でうまく正の相関が示せれば、テレビCMでキーワードを訴求すると同時にリスティング広告を広告主に買ってもらうというセット販売が可能になり、オーバーチュアの売上も上がるだろうと考えたのです。

それに、テレビCMと一緒にリスティング広告を語ることによって、総合広告代理店の人たちがリスティング広告に興味を持ってくれるかもしれないと、少なからず期待を抱いていました。

テレビCMを30本分析

オーバーチュア社内では上司からすぐにOKがでたので、アポを取り、企画書を持っていきました。どんな反応を示されるかまったく読めなかったので、内心はドキドキしていました。企画書を総合広告代理店のある方に見せたところ、「これは面白いかもしれない。ちょっと待って、メディアマーケにこういうのに興味がありそうな奴がいるので呼んでくるから」と言われ、しばらくすると、そのメディアマーケティング部の人を連れて会議室に戻ってきました。話はトントン拍子で進み、簡易的な調査をすることになったのです。

調査はまず、メディアマーケティング部の人が検索を誘発しそうなテレビCMを、たしか約30本選んでくれ、それらをすべて私が視聴することからスタートしました。

一般の視聴者がそれぞれのテレビCMを見たときに、検索しそうなキーワードをリストアップしていきました。だいたい、1つのテレビCMに対して30個から50個ぐらいのキーワードをリストアップしました。

たとえば、その企業名、ブランド名、サービス名、商品名、キャッチコピー、出演しているタレントの名前など。それらを掛け合わせたキーワード。それらの打ち間違いや変換ミスのキーワードなどです。

回帰分析で検索数とGRPの相関を調査

そして、リストアップしたキーワードの検索数を日別でオーバーチュアのデータベースから抽出し、調査対象のテレビCMのGRP日別推移データと照らして、正の相関があるかどうかを回帰分析で調べていったのです。

当時からオーバーチュアの提携パートナーにYahoo Japan!があったので、オーバーチュアのデータにはYahoo Japan!のデータも含まれており、調査するには十分なデータを保持していました。

2004年当時のオーバーチュアは急成長している時期で、深夜まで残って仕事している社員が多かったです。私も、通常業務が終わるのは夜10時ぐらいというのが平均でした。通常業務が終わった後に、リストアップしたキーワードの日別検索数の推移をオーバーチュアのデータベースから抽出し、テレビCMのGRPデータとの相関を調べていきました。

オーバーチュアのデータベースからデータを抽出するのに意外と時間がかかり、テレビCM1本の分析を終えるのに数時間かかりました。そのため、午前3時〜4時ぐらいまで作業して1日あたり数本というペースで調べていったのです。

投下量に連動して検索数は増えない!?

調査を始める前は、10本ぐらい調べればテレビCMと検索数の相関を示すことができるだろうと、甘い考えを持っていました。しかしながら、いくら調べても、テレビCMの投下量に連動して検索数が増えているケースが出てきませんでした。

約2週間、毎日午前3時から4時頃まで一人オフィスに残り、黙々と作業を続けていました。20本を超えたあたりで、私は、もう、諦めていました。「これはダメだな。このやり方ではいい結果はでないんだ」と。

「テレビCMを見て検索している人もいるハズだ」という考えは変わっていませんでしたが、「回帰分析で統計的に有意な結果がでるほどは影響していなんだ」とすでに諦めていました。ただ、せっかく総合広告代理店の人たちが協力してくれたので、最後まで調べて、その調査結果を資料にまとめてお返ししないとならない。そんな義務感に駆られて、残りの調査を続けたのです。

残り3本になったときでした。テレビCM1本あたり、30個から50個のキーワードのデータを抽出し、それを加工してキーワードごとにチャートを作っていました。

約30本のテレビCMを対象に、その時点ですでに1000個以上のチャートを作り、すべてがダメな結果となり、さすがにウンザリしていたときです。

「パケ・ホーダイ」の綺麗な相関関係

意気消沈して諦めていた矢先、光が射したのです。綺麗に正の相関を示すテレビCMとキーワードが見つかったのです。もうダメだと思っていたので、自分でも目を疑いました。

それは、NTTドコモの「パケ・ホーダイ」です。「パケ・ホーダイ」は、2004年3月24日に報道発表のリリースがあり(当時のリリースがウェブサイトに残っています。こちら)、2004年6月1日にサービスを開始していました。そのサービスの宣伝のためにテレビCMを投下したのです。

ハッキリは覚えていませんが、たしか、5月の半ば頃から6月前半にかけて大量にテレビCMを投下していました。「パケ・ホーダイ」という言葉は新しくできた造語だったため、リリースが出た3月24日以前の検索数はゼロでした。世の中に存在しなかったキーワードなので当然です。

リリースの日を境に検索数が発生します。ただ、リリース直後の検索数は本当に数少ないものでした。それが、5月半ばのテレビCM開始と同時に爆発的に伸びていきます。しかも、日別のテレビCMの投下量(GRP)と連動して検索数も増加していったのです。そして、テレビCMの投下量がピークに達すると検索数もピークに達し、徐々に減少、テレビCM終了後しばらくして検索数もゼロに近づいていくという推移でした。回帰分析をしなくても、グラフを見ただけで、誰が見ても相関していると思える結果でした。

テレビCM約30本の調査を終えて、結局、正の相関を示すことができたのは、この「パケ・ホーダイ」1本だけでした。調査結果を資料にまとめて、総合広告代理店のメディアマーケティング部の人に持っていきました。

私は、1本だけしか良い結果を得られなかったので、調査結果が好意的に受け止められるかどうか不安でした。しかし、その人は非常に前向きに捉えてくれたのです。「1本でもあれば十分ですよ。テレビCMの投下によって検索数が増加しているケースが見つかったんだから」と評価してくれました。

新しいものは広告効果が高くなる

そのとき、その方に教えてもらったのですが、新商品や新サービスは一般的に広告効果が高くなる傾向があるとのことでした。つまり、「パケ・ホーダイ」は新サービスなので、その傾向に合致していたのです。

これは、いわゆるプロダクト・ライフサイクル理論でいう導入期の商品やサービスということになります。導入期→成長期→成熟期→衰退期という4つの段階の中で、最初の導入期は商品の認知を高めるために広告宣伝費がかかるということなのですが、それは、導入期にきちんと広告を打つことが大事だということも意味しています。

その後にさらに調査して分かったことですが、新商品や新サービスは、テレビCMの投下と検索数が綺麗に相関するケースが多いのです。あるいは、テレビCMで新しいキーワードを訴求した場合も、検索を誘発しやすいようです。

「パケ・ホーダイ」は新しいキーワードであり、テレビCMが投下される以前はほとんど検索数がなかったことがポイントでした。当時、「トヨタ」や「ユニクロ」などのキーワードは、月間平均で100万回〜200万回という規模で検索数が発生していました。そのような場合、テレビCMの投下によって、仮に月間10万回の検索数を誘発していたとしても、元々の母数が大きいので、テレビCMの投下が影響しているのか、季節変動なのか、それ以外の何かが影響しているのか、見極めるのが難しいのです。

極端にいえば、月間10万回の変動も誤差の範囲になってしまいかねないのです。このことが、テレビCM約30本を調べても良い結果を得られなかった主な理由だったと思います。

分析に最低限必要な投下量とは?

このときの簡易的な調査では、テレビCMが投下された期間(2週間から3週間程度のものが多かったように記憶しています)を対象にして、前後3ヶ月ぐらいの検索数のデータを調べていました。

このやり方では、「パケ・ホーダイ」のように分かりやすいものしか良い結果を得ることはできません。オフラインアトリビューション分析に関わるようになって分かったことですが、たとえば、1年以上の期間に渡るデータを取得して、テレビCMのGRPと検索数やウェブサイトへのアクセス数などを調べると、より良い結果を得ることができるようです。

また、これも後で分かったことですが、テレビCMの投下量も一定のボリュームがないと、なかなか良い結果を得られないようです。

先日も、ある通販会社の人から「テレビCMを投下してもあまりウェブサイトのアクセスが増えたようには思えないんです」と相談されました。データを見せてもらうと、3ヶ月で2000GRPほど、月間平均では700GRPぐらいのテレビCMを投下していました。しかも、とくに新しい商品やサービスはなく、新しいキーワードがないためブランド名を訴求している状態でした。

予算などの懐事情もあるとは思いますが、これまでの経験では、月間2000GRP以上ぐらいのテレビCMを投下しないと、あまり良い結果は得られません。そして、できれば、新しいキーワードがあると良いのです。

はっきりは覚えていませんが、約30本のテレビCMのうち、半分ぐらいはGRPの投下量がそれほど多くなかったと記憶しています。投下量の少ないことも、あまり良い結果が得られなかった理由だったと思います。

話を戻します。「パケ・ホーダイ」の例は、メディアマーケティング部の人に指導を受けながら事例としてまとめ、総合広告代理店の社内用資料を作成しました。その資料をもって、インターネット関連の部署へ説明に回り、部会などで報告させてもらったりしました。

“ぶら下がり”でキーワードを出してみることに

それからしばらくして、インターネット関連の局の局長代理の方から声をかけられたのです。「有園さん、今度、ぶら下がりでキーワードを出してみることになったよ」。私は、「えっ、ぶら下がりって何ですか?」と聞き返してしまいました。どうやら、ぶら下がりとは、テレビCMの最後1秒ほどのことで、そこにキーワードを表示させるということでした。

トヨタist「ほっぺの理由」

それは、トヨタistのテレビCMでした。2004年9月10日頃が最初だったと思いますが、「ほっぺの理由」というキーワードをテレビCMの最後に表示して、リスティング広告でそのキーワードを入札したのです。

はじめてテレビでこのCMを見たときは、さすがに熱いものが胸にグッと込み上げてきました。そのぐらいの達成感がありました。

トヨタistのテレビCMは、たしか、8月から流れていたのですが、期待したほどウェブサイト側にアクセスが流れてこないということで、テレビCM内でキーワードを表示させてみることになったようです。

リスティング広告と連動させる試みは、最初は1ヶ月ほどの予定でしたが、それなりに評価されたようで、その後も延長して3ヶ月以上続いたと記憶しています。いわゆる、テレビCMとリスティング広告を連動させた(マス連動の)最初のケースだと思います。

三井不動産「芝浦の島」

翌年の2005年3月頃だったと思いますが、三井不動産のマンションのテレビCMで「芝浦の島」というキーワードをテレビCMに表示して、リスティング広告と連動させるというキャンペーンがありました。(私が担当していた総合広告代理店とは異なる総合広告代理店の仕事だったため、私はこの仕事には関わっていません)

NEC「Nを追え」

その後、NECの携帯電話のキャンペーンで「Nを追え」というキーワードをテレビCMに表示して、テレビCMとリスティング広告の連動がおこなわれました。このあたりから、かなり話題になり、このマス連動の手法は一気に普及していきました。

偶然の出来事に導かれて

2005年8月に、2つの総合広告代理店から、テレビCMやその他のマス広告の投下量と検索数の関係について本格的な調査を依頼され、先日の「MarkeZine(マーケジン)」の記事「テレビCMの投下量と検索数、そして売上げとの相関関係は?オフラインアトリビューションの基本【アトリビューション編:第6回】」で書いたような、オフラインアトリビューションの仕事につながっていったのです。

偶然の出来事から導かれて、マス広告と検索の相関に興味を抱き、今に至りました。次回は、これまでの経験で学んだことや思考についてお話したいと思います。

アタラ合同会社
取締役COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
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動画でわかるプログラマティックバイイングとアトリビューション

Adotasにて、アトリビューションソリューションベンダーであるAdometryが作成したプログラマティックバイイングに関する入門動画が紹介されています。

Video: A Programmatic Buying & RTB Primer

http://www.adotas.com/2013/08/video-a-programmatic-buying-rtb-primer/

プログラマティックバイイングとRTB(Real Time Bidding)が同義語のように使われることもありますが、この動画ではプログラマティックバイイングの仕組みのなかの一つがRTBであることや、なぜプログラマティックバイイングが必要なのか、わかりやすく説明されています。

その上で、プログラマティックバイイングを最適化するためにアトリビューションパフォーマンス指標をRTBへのインプットの一つとして扱う、という説明になっています。

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【アトリくんの視点】前半はプログラマティックバイイングの入門動画としてもとてもわかりやすいですね。直接・間接の貢献度があるかを判断した形でのディスプレイ広告の最適配信ができるのは自然な考え方ですね。一方で、自動化ソリューションで起きがちな過度な縮小均衡にどのように対応するのか、興味があるところです。

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【News】Placedがモバイル広告と実店舗を繋ぐアトリビューションツールを発表

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ロケーションアナリティクスを提供等を提供しているPlaced(http://www.placed.com)より、モバイル広告と実店舗をつなぐPlaced Attribution(http://www.placed.com/attribution)というプロダクトが発表されました。スマートフォンを通してモバイル広告に接触し、その後広告主の店舗に訪れた人を計測できるツールです。

http://www.placed.com/press/placed-attribution-launch

Placed Attributionでできること
Placed Attributionが用いるデータはPlaced Insightsという製品で収集したものになります。Placed Insightsは、デバイスの位置情報を集めるアプリケーションをインストールした人々から構成され、Placedはその生のデータをもとにデバイスの位置を特定の場所に指定します。公式な発表によると一日に1億以上の位置を、10万人から集めることが可能になっているとのことです。

結果として得られるデータは主に以下の3つになります。

  • Store Visits(来店数)
  • Lift – Standard(リフト)
  • Audience Features(オーディエンスの特性)

Store Visitsではどの程度モバイル広告が実店舗へ貢献していたかを、Liftでは広告を出稿しなかった場合の予想値と実際の売り上げの比較を、そしてAudience Featuresでは実際に店舗まで訪れた人のデモグラフィック・ジオグラフィックなデータをみることができます。特性を見極めることで、より効果的なキャンペーンに活かせるとのことです。

Placed Attribution ではできないこと
このアトリビューションツールのではできないことのひとつとして、店舗まできたことはわかるものの、「実際に購入に至った」かどうかはわからないということがあります。業種によっては(ex.ファストフードチェーン)店舗にいくことがほぼ100%オーダーにつながるようにとらえることができるところもあり、現段階では業種による向き不向きが大きくありそうです。

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【アトリくんの視点】普段話している貢献度を分配するという意味のアトリビューションとは少し意味合いが違いますが、O2O、オフラインアトリビューションの文脈でとても興味深いですね。まだまだ発展段階のオフラインアトリビューションですが、このようなツールはオフラインの行動をどう測定するか、といったところで現段階で考えれるひとつのソリューションであると思います!

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