【海外ニュース】 Sizmek が Aerify Media を買収しモバイルトラッキング・アトリビューション機能を強化

8月11日、広告配信プラットフォームであるSizmek(旧:MediaMind)が、モバイルトラッキング、アトリビューション、リターゲティングソリューションを提供する Aerify Media(本社;ニューヨーク CEO; Andreas Vagelatos)の買収を発表しました。

 

Sizmek Acquires Aerify Media to Bolster Mobile Tracking, Attribution and Retargeting Capabilities
http://www.adotas.com/2014/08/sizmek-acquires-aerify-media-to-bolster-mobile-tracking-attribution-and-retargeting-capabilities/

 

Aerify Media のチームはそのまま Sizmek に参加し、Aerify Media の技術が Sizmek の MDXプラットフォームに統合されるようです。これにより、モバイルのトラッキングの強化、およびクロスデバイスでのアトリビューション分析、リターゲティング機能が拡充されるとのこと。

 

Sizmek の CEO Neil Nguyen氏 は、「モバイルが指数関数的な成長を続ける環境において、Aerify の買収は我々の世界的なアドテクプラットフォームのリーディングカンパニーというポジションを更に増強するものだ」とコメントしています。

 

アトリくん
【アトリくんの視点】先日の Medialets の Total Attribution の発表でも感じましたが、各社のモバイルへの投資から、クロスチャネルの分析や統合マネジメントの動きが加速していることが分かりますね!マルチスクリーンの環境が進むにしたがって、こういった動きはこれからも加速していきそうです!

【海外ニュース】Medialetsがモバイル・アトリビューション事業に着手

先月30日、モバイル広告会社であるMedialets(本社;ニューヨーク CEO; Eric Litman)が業界一総合的なROI測定モバイルソリューション、Servo Total Attributionを発表しました。

 

Medialets Gets Into Mobile Attribution http://www.adexchanger.com/mobile/medialets-gets-into-mobile-attribution/

 

Servo Total Attributionは、今年2月に発表したServo(アトリビューション機能を持つバイサイド側のモバイルアドサーバー)の機能を拡大したもので、利用者はセルフサービスでモバイルのアトリビューションを行うことが可能になるようです。

 

具体的には、アプリやモバイルブラウザを通して、モバイルコンバージョンをインプレッションと結び付けることで、メディアバイヤーや広告代理店がリアルタイムでモバイル広告のROIを測定出来る機能となります。

 

アトリくん
【アトリくんの視点】2014年のMillward Brownの調査によると、今や消費者はデスクトップコンピュータに比べ、モバイルデバイスに約2倍もの時間を費やしているそうです。モバイルアトリビューションの進化が未だ初期段階にある中で、MedialetsのServo Total Attributionの発表はモバイルアトリビューションの新たな一歩になるかもしれません。Rakuten Marketingのオムニチャネル・アトリビューション会社であるDC Stormの買収もあり、これからはモバイルも含めたアトリビューション動向に目が離せませんね!

アトリビューション特別対談:One-to-Oneコミュニケーションをチャネル横断で管理~クロスチャネル・キャンペーンマネジメントの最新動向~ ディレクタス岡本氏×アタラ有園

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有園:本日は、Eメールマーケティングなどクロスチャネルマーケティングの支援を行っている株式会社ディレクタスの岡本さんを迎え、キャンペーン・マネジメント・システムの最新動向やクロスチャネルマーケティングなどについて、お話を伺います。最近では、DMPとアトリビューションを絡めたご相談も多く、ディレクタスさんと一緒に仕事をすることもあります。ディレクタスさんで取り扱っているOracle Responsys Marketing Cloud(オラクル レスポンシス マーケティング クラウド)をはじめとする、クロスチャネル・キャンペーンマネジメントや第三者配信エンジンと連携して、プライベートDMPを構築し、それらをアトリビューションという概念で計測するといったことが増えてきました。レスポンシスのような、キャンペーン・マネジメントの存在は重要だと思っています。キャンペーン・マネジメントに造詣が深い岡本さんに、今後の展開などについてお話を伺えればと思います。

紙のDMからEメールマーケティングへ

岡本:ディレクタスの岡本です。私は、1993年にディレクタスを設立したのですが、設立当初は、ダイレクトメールを支援するダイレクトマーケティングエージェンシーでした。

有園:それは、紙のダイレクトメールですか?

岡本:そうです。紙のダイレクトメールです。当時はインターネットがない時代だったので。起業前は、リクルートで学生向けの就職情報誌の仕事をしていました。学生向けの販売促進がビジネスになるのではないかと思い、まず学生向けの販促ダイレクトメールの事業で独立しました。ダイレクトマーケティングは、A/Bテストなどで効果を明確に測定することができる点がすごく面白いと思っていました。DMの仕事はそれなりに順調だったのですが、2000年頃からインターネットがマーケティングのインフラとして浸透してきて、ダイレクトメールは紙からEメールに移っていくなと思い、Eメールを使ったマーケティングにシフトをしていきました。

有園:1990年代後半には、ワン・トゥー・ワン・コミュニケーション、ワン・トゥー・ワン・マーケティング、CRMといった言葉があり、流行ってもいましたね。

岡本:全盛期でしたね。そういう波に乗って、僕たちもダイレクトメールの仕事は広がりを見せたのですが、その時点ではテクノロジーが未熟でインフラも貧弱だったという理由もあり、あまり上手くはいきませんでした。ちょっと早かったのかもしれません。当時、ワン・トゥー・ワン・マーケティングをする手段は、紙のDMくらいしかなかったんです。紙のDMを出すか、電話をかけるかくらいしか方法がなかった。Eメールはまだマーケティングに使える規模にはなっておらず、手段が限定的だった時代です。

有園:1990年代後半のことですね。僕は2000年に、日経BPに勤めていたのですが、そこではメールを使った電子DM(電子ダイレクトメール)のことをEDMと呼んでいました。DMといっても、メールを一斉送信しているだけなんですけどね。

転機はANAのEメールマーケティング支援

岡本:ワン・トゥー・ワン・マーケティング、CRMといっても、現実的な手段が少なかったので難しかったですね。インターネットが本格的に浸透し始めた2000年頃からメルマガが流行り出しました。企業から「Eメールマーケティングを本格的にやりたい」という声が出始めたのは、2001年頃からですね。僕たちも経験は浅かったのですが、お客様と一緒に勉強をしていくような形でコンサルティングのご依頼をいただくことになりました。少なくとも紙でのダイレクトマーケティングの経験があったので、その経験を活かしてEメールマーケティングの立ち上げ、運用のコンサルティングと、メールの企画制作で事業を少しずつ展開していきました。

当時、本格的なお手伝いをさせていただいたのがANAさんで、2002年頃からプロジェクトが立ち上がりました。それ以来、いまもお手伝いを続けています。

有園:今年は2014年ですから、13年目ってことですね。

岡本:そうですね。ANAさんでは、戦略を作るところからメールの企画制作、結果の分析と改善提案までお手伝いをしてきました。PDCAサイクルを回すことをいまでも続けている感じですね。

その後ずっと、弊社はEメールマーケティングの支援が主力事業でした。現在提供しているサービスは4つあります。一つ目は、戦略立案や実行プラン策定などのコンサルティング。二つ目はツールの提供ですが、実はこれは最近始めた事業です。三つ目はコンテンツの企画制作。主にメールコンテンツですね。最後の運用アウトソーシングは、メール配信のオペレーションをお客さまのオフィスに常駐してお手伝いするケースと、弊社内のセキュリティールームからお手伝いするケースがあります。Eメールマーケティングに関しては、必要なサービスをワンストップで提供しています。

ツール提供の事業ではレスポンシス(Responsys)をはじめとする主に海外ベンダーの、Eメールだけに限らない、いわゆるクロスチャネルでキャンペーンを管理していくツールを取り扱うようになりました。今はまさにそちらの事業を拡大しようとしているところです。

Eメールからクロスチャネル・キャンペーンマネジメントへ

有園:レスポンシス(Responsys)の取り扱いは、きっかけのひとつだと思いますが、キャンペーン・マネジメントの分野に事業を拡大していらっしゃるのは、どのような理由からでしょうか?

岡本:もともと日本の場合、Eメールマーケティングというと、大体はメルマガの配信のことだと思われてきたんですね。毎月メルマガを作って配信することがメールマーケティングだと捉えられていて。でもメルマガの効果はこの10年で次第に低下してきました。

有園:効果というのは、基本的には率のことだと思ってよいですか?

岡本:はい。開封率、クリック率、その先のコンバージョン率とかですね。

有園:2000年以降、インターネット広告業界では、インターネットユーザーが増え、配信する広告のボリュームも増えました。当然、メールの利用者も増えているので、メルマガを配信するボリュームも増えていくのかなと。

岡本:そうですね。

有園:だけど、開封率が10パーセントだったものが、例えば2パーセントになってしまうこともあると。

岡本:はい。もちろん会社によりますが、毎月配信するメルマガだと、最近の開封率は大体10パーセント程度じゃないでしょうか。以前は20パーセント以上あった開封率が、この10年弱の間に10パーセント程度に落ちています。

有園:なるほど。

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配信頻度が上がり過ぎると反応率は落ちる

岡本:というのも、例えばEコマースならメールを1本送ると確実にいくらか売り上げが上がる。そうすると、もう1本メールを送る。当然ながら、頻度が上がるんです。一方、受け取るお客さまからすると、あまりに頻繁にメルマガが届けば段々とスパムメールに近い感覚になっていく。面倒だから直接ゴミ箱に振り分けるようにしちゃう。メールの開封率はどんどん低下していく。だいたいどこの企業でも同じようなことが起きていました。

そんな中で5年前くらい前に僕たちが取り組み始めたのが、お客さまのweb上の行動に合わせてメールを送る『行動ターゲティングメール』という手法です。当時オムニチュアのSiteCatalyst(サイトカタリスト)を使ったマーケティングの先進的な事例で、アクセスログを使ってメールを送信するというのがありました。「あ、これだな」って思ったんです。いま、お客さまは何に関心があり、どのような動きをしているか。それに合せて最適なメールを配信することができたら、お客様にも喜ばれてきちんと効果も上がるだろうと。

そこでオムニチュアさんとも話をさせていただいて、パートナーになってSiteCatalystのことを勉強し、アクセスログを使ったメール配信を始めました。当時、ANAさんと日産自動車さんで取り組ませていただけることになり、このページを見た人にはこのメールを送るというのを手動でやっていました。

例えば、飛行機の空席を検索しているけどまだ購入していない方に、検索している路線の情報をメールでお送りするとか。

そういうメールは一斉配信のメルマガと比べるとはるかに高い効果を上げました。

有園:それは何年頃のことですか?

岡本:2009年ですね。

有園:わりと最近のことなんですね。

レスポンシス(Responsys)が日本進出

岡本:そうですね。この方法は、効果は出るのですが、ものすごく手間がかかります。それに本当にOne-to-Oneにしようと思ったら一人一人配信すべきタイミングも違う。手動じゃ無理なんですね。なんとか自動化できないものかと思いました。アメリカの例を見ても、自動化が進んでいます。日本でもできないかと思ったのですが、そのような開発をしているメールベンダーさんがいなくて。困ったなぁと思っていたところ、今はオラクル(ORACLE)に買収されていますが、レスポンシス(Responsys)が日本に進出するという話を聞きました。レスポンシス(Responsys)はSiteCatalystのアクセスログを自動的に取り込んで、それをもとにターゲティングする仕組みを、すでに作っていました。

有園:アメリカでは、すでにそのようなニーズがあり、インテグレーションの開発も進んでいたわけですね。

岡本:そうです。レスポンシス(Responsys)のことは以前から知っていたので、日本に進出するなら、パートナーになりたい、なるべきだと思い、日本での販売代理を始めました。それが2012年のことです。アメリカではコミュニケーションの自動化だけでなくクロスチャネル化も進んでいて、レスポンシスはディスプレイ広告をターゲティング配信する機能まで実装していました。

有園:つまり、アクセス履歴、行動に基づいてメールを送るだけでなく、アクセスログを分析して興味関心を類推し、それに合せたバナー広告をDSPで配信していたというわけですね。レスポンシス(Responsys)にDSP機能があるのですね。

自動化のカギを握るキャンペーン・マネジメント・システム

岡本:そうです。日本では、色々な理由で結局実装されなかったのですが、こうやってコミュニケーションチャネルが広がっていくんだなということは感じました。

これからはクロスチャネルでのワン・トゥ・ワンコミュニケーションの自動化が進むし、キャンペーン・マネジメントがその鍵を握りそうだということで、その後弊社も営業を本格化していきました。ところがお客様の環境やニーズも色々で、例えば個人情報はクラウド上に置けないという企業さんもあるし、メール配信システムは変えられないという企業さんもある。そうするとレスポンシスでは対応できないケースも多いんですね。それに一つのシステムだけを扱っているとノウハウも偏るし、同じキャンペーン・マネジメント・システムと分類されていても実際の機能はかなり違う。それをきちんと理解して最適なソリューションをご提案できるようになりたくて、色々特性の違うキャンペーン・マネジメント・システムを取り扱うことにしたんです。

「キャンペーン・マネジメント・システム」は存在しない!?

有園:岡本さんがイメージする、キャンペーン・マネジメント・システムって、どのようなものですか?

岡本:キャンペーン・マネジメント・システムというのは、顧客のデータをもとにセグメントを作って、セグメントごとのコミュニケーションのシナリオを設計し、そのシナリオをクロスチャネルで実行する仕組みだというのが私なりの定義です。アメリカの調査会社フォレスターの資料などを参考にしました。

24 hour performance

実は、言葉の定義をきちんと整理するべきだと思っているんです。統一していくべきというか。そういう運動をしたいなって思って。なぜかというと、まずアメリカでは、キャンペーン・マネジメント・システムという呼び方はあまりしていないんですね。もともとは、クロスチャネル・キャンペーン・マネジメントとか、マルチチャネル・キャンペーン・マネジメントという風に分類されているんです。クロスチャネルとかマルチチャネルという概念が必ずついてくる。私はクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント、CCCMと呼ぶことにしています。

有園:それは、分かるような気がします。アメリカ人の発想として。たとえば、広告のキャンペーンといっても、テレビCMを打つのも広告キャンペーンなので、アメリカ人にとっては「so what?」になってしまうのかなと。マルチチャネルだからマネジメントできる。メール、バナー、ランディングページ、スマホのアプリ、紙のDM、テレアポなどがあるのを、どう連携して、マネジメントしていくかになって初めてマルチチャネルだから。複数のチャネルがあるからマネジメントが必要だってことですね。

岡本:そうです。

有園:もちろん、チャネルが1つでもマネジメントは必要ですが、1つだったら手作業でできるという話だと思うんですよね。

クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)の役割

岡本:はい。アメリカのマーケターはCRMのデータベースに登録されている顧客に対してダイレクトメールやアウトバウンドコールなど複数のチャネルを使ったキャンペーンを行っていて、それらを管理するためのツールとして、クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)が作られました。だから予算管理のような全体管理機能もあります。

有園:クロスチャネルでキャンペーンをやるための。

岡本:そうですね。

有園:アドワーズ広告の管理画面やYahoo!プロモーション広告の管理画面も、リスティング広告キャンペーン・マネジメント・システムですよね。

岡本:そういうことですよね。

有園:予算管理もできるし、期間の指定もでき、ターゲットごとに配信キーワードを設定するとか、あれもキャンペーン・マネジメント・システムなんですよ。いつから、いつまで配信するか。リスティング広告の場合、終わりがなく、基本的にはずーっと配信することが多いですが、それらをコントロールするのが管理画面の役割です。

岡本:発想は同じですよね。

有園:そこに、メールだったり、DMだったり、DSPだったりを一緒に管理できるようなものかなと。

岡本:まとめて実行しようとすると当然手動ではできないから、徹底して自動的にやろうとするわけですよ。

おそらく日本の会社の場合、マーケティング担当者がクロスチャネルでキャンペーンを管理するという発想そのものが無かったんだと思うんです。そういう機能は大手企業の場合は広告代理店がやってくれていた。だから日本に紹介されたときは自動化機能ばかりがクローズアップされて、クロスチャネルという言葉が抜け落ちたんじゃないでしょうか。そうやって日本独自の呼び方ができてきた。そういう意味では日本では「マーケティングオートメーション」という言葉もアメリカとは少し違うニュアンスで使われています。

クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)とマーケティング・オートメーションとの違い

有園:実は、そこの違いも今日は聞きたかったんです。

岡本:アメリカで製品ジャンルとして「マーケティング・オートメーション」という言葉を使う場合は、いわゆるリード管理、見込み顧客の管理機能と、キャンペーンの管理、キャンペーンマネジメント機能の両方を備えていて、B2Bのマーケティングに使われていることが多いです。見込顧客を発掘して、その見込顧客の「見込度」を評価して、コミュニケーションで「育成」して、SFAにデータを渡して営業担当者がアプローチする。そういったマーケティング活動を支援するために使われているのがマーケティング・オートメーションです。BtoBだけじゃなくて、住宅とか自動車のような見込顧客を営業担当者が時間をかけてフォローしていくような業態ならマッチします。

最近日本に入ってきたMarketo(マルケト)や、オラクルが買収したEloqua(エロクア)、それからHubspot(ハブスポット)も同じジャンルに分類されてますね。マーケティング・オートメーションというと、だいたいそういったシステムのことを指していることが多いんです。

ただ、話がややこしいのは、機能が被っていることです。クロスチャネルでのキャンペーン管理はどちらも出来るので、アメリカでもクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)とマーケティング・オートメーションの両方に分類されている製品があります。

有園:Marketo(マルケト)や、Eloqua(エロクア)が日本に入ってきたことは知っていますが、実際どのようなことをしているのか詳しくありません。マーケティング・オートメーションとは、リードを管理して、ナーチャリングするってことですか?

岡本:そうですね。見込顧客管理とリードナーチャリングを支援するツールだと言っていいと思います。見込顧客とのコミュニケーションにキャンペーン・マネジメントの機能を使っているわけですね。メールを送ったり、DMを送ったり。それをお客さまの動きに合わせてワン・トゥー・ワンで行うようになっています。そこの機能だけとって見れば、キャンペーン・マネジメントと特に変わりはないんです。ただ、見込顧客の管理・育成という意味ではやはりBtoBビジネスでの利用がメインになってくるし、開発側もそういう意識を持っているはずです。

有園:たとえば、コカ・コーラを自動販売機で買おうとした際、ナーチャリングは必要ありませんからね。B2Cではなくて、B2Bの方がナーチャリングという概念がフィットしやすいってことですね。

岡本:そういうことです。

有園:マーケティング・オートメーションは、リードを管理しナーチャリングするところも含めて自動化していく。クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)は、どちらかというとリード部分をとってくることは気にしていないんだけど、メール、バナー広告、ランディングページ、アプリ、プッシュ通知、紙のDMなど、もろもろ含めて、どういうコミュニケーションをとればよいか、キャンペーンの効率化をするという分け方になっていると、岡本さんはおっしゃっているかと思います。

岡本:そうですね。

有園:それが、ごっちゃになることは、あまりよろしくないのでしょうか?

岡本:機能は被っていても、元々目的が違いますからね。マーケティングオートメーションは主にBtoB企業のマーケターをターゲットとして開発してるはずだし、クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)はクロスチャネルで顧客とダイレクトにコミュニケーションしたいBtoC企業をイメージしている。今後の開発の方向性も自ずと異なります。

それをまるで同じジャンルの製品のようにごっちゃにして語るとユーザーから見て非常に分かりにくいし、行き違いも起きやすいですよね。営業から説明を受けて初めて「あれ、マーケティングオートメーションだと聞いてたけど全然イメージが違う」とか。

有園:岡本さんとしては、マーケティング・オートメーションと、クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)は別物なんですね?

岡本:そうですね。名前はどうあれ、分けて考えるべきだと思っています。

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クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)にはどのようなものがあるのか

有園:クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

岡本:大きく分けると、トラディショナルな生粋のクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)とメール配信システムなど他の仕組みから発展したものがあると思います。

トラディショナルなクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)としては、IBMが買収した旧ユニカ(Unica)、現IBM CampaignやSAS Marketing Automationなどが代表的です。SASの製品は製品名が「マーケティングオートメーション」なんでちょっとややこしいんですけど。
歴史もあるので基本的にオンプレミス型が多いですね。

有園:オンプレミス型というのは、簡単に言うと、お客さまのハードディスクやサーバーにインストールして、ライセンスをとって、買い取る方法ですね。

岡本:そうです。導入した側は、それを資産として償却していきます。

有園:たとえば、会社で、マイクロソフトのオフィスを購入して、パソコンにインストールして、会社の資産として5年で償却するのと同じですね。

岡本:同じモデルですね。

メール配信システムからの進化系

岡本:もう一つ、メール配信システムなどから進化してキャンペーン・マネジメントになったものがあります。例えばOracleが買収したレスポンシス(Responsys)やセールスフォース・ドットコムが買収したエグザクト・ターゲット(ExactTarget)、エクスペリアンなどは元々メール配信システムでしたが、シナリオ作成と自動実行の機能を追加し、さらにメール以外にもソーシャルやモバイルなど対応するチャネルを拡大しました。そして調査会社の評価レポートなどでもキャンペーン・マネジメントとして評価されるようになったんです。

有園:評価というのは、フォレスターとかの評価ですか?

岡本:そうです。フォレスターやガートナーの評価レポートですね。

あと、これらのシステムはSaaS型で提供されることが多いです。

有園:SaaSとは、Software as a Serviceの略ですね。

岡本:はい。クラウドとも呼ばれますね。導入が簡単だし同じクラウド上だとデータ連携も楽なので今後はSaaS型の方が増えていくと思います。

大手ITベンダーによるクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)の買収

岡本:これは最近の話なんですが、ご存知のように、大手のITベンダーがクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)に分類されるベンダーを次々と買収しています。具体的にはIBM、Oracle、Adobe、Salesforce.comなどですが、この動きはこれからのクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)を考える上で重要な示唆があると考えています。

大手のITベンダーは、買収したクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)やメール配信システムなどのコミュニケーション実行系のソリューションを自社のプラットフォーム上で一つにつないで、まとめて提供し始めています。今までは、例えばアクセス解析ソフトからアクセスログをクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)に取り込んで、シナリオの実行にはそこからメール配信システムなどに指示を出していたのですが、全部最初から繋がっていて一つのソリューションになっている。

大手ITベンダー各社が2010年以降買収したマーケティングテクノロジーベンダー

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いままではマーケティング分野では存在感の薄かったITベンダーも、一気にマーケティング分野に参入してきていて、さまざまなソリューションを買収しているんですが、共通して必ず買収しているのが、クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)なんです。

クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)を核にしてメールやソーシャルやモバイルなど、それぞれのチャネルでの実行機能を揃え、クロスチャネルでのワン・トゥー・ワン コミュニケーションを一つのプラットフォームで実現できるようにしようと。そうすると、同じプラットフォーム上でクッキー(Cookie)データなんかも最初から共有しているので、データの連携や開発が必要なくて、しかもデータを全てリアルタイムで活用できる。

流通業でいうところのオムニチャネルに対応できるワン・トゥー・ワンコミュニケーションを実現できるソリューションとして提供され始めていて、このあたりの競争が2013年あたりから本格化しています。

見逃せないのが、広告のところまで取り組んでいることです。データベースをつかったマーケティングの一つとして捉えていて、そこまで含めた統合と管理が視野に入っている。

DMPとクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)

 有園:マーケティング分野に参入してきているITベンダーの中にオラクル(Oracle)があって、BluekaiのDMPも入ってますね。日本にも、いわゆる、XrostDMPやAudienceOneなど、データセラーとしてのDMPがあります。クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)の定義として、セグメントを作るという話が出ましたが、セグメントをつくって、自動的にキャンペーンを実行する部分ですが、いわゆるデータセラーとしてのDMPを導入してバナーのDSP配信につなぐことができます。メールも打てるわけですが、そこと、どう違うのでしょうか?

岡本:いままでのクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)は顧客データを使ったCRM的なコミュニケーションを想定していました。基本的にはすべて個人情報をベースにしています。それがいま、個人情報はないけれどCookieデータだけはある、といった人がいます。自社の顧客であるかどうかも実は分からないんだけど、サイトには何回も訪問していて、買い物をしようとしてくれている人。そういう人とコミュニケーションをとろうとすると従来のクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)では十分な対応ができません。DMPのような機能が必要になるのだと思います。今後は個人情報のない人たちもコミュニケーションの対象にすることになると思います。

有園:いま、おっしゃっているような話は、『USERS 顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略』(アーロン・シャピロ 翔泳社)に書かれているようなことですね。

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岡本:そうですね。CRMの今後の姿を考える上でとても示唆に富んでいました。カスタマーというと既存顧客だと捉えられていますが、実際には、顧客ではなくてもサイトを訪れていたり、ソーシャルメディアで書き込んでくれたりしている人も全てコミュニケーションの対象となる。この本ではそういう人たちを「ユーザー」と定義しています。そのユーザーが、ある時は商品を買ってくれて顧客になるけれど、それはユーザーの一つの形態に過ぎない。企業がコミュニケーションの対象として考えるべきはユーザー全体だ。そのような考え方です。

私たちは商品を買うときに、その会社の評判を必ずチェックしているし、自社の顧客以外の人たちが、ものすごく影響力を持つようになっています。たとえば、サイトに1回でも来てくれた人に「このサイトいいな」「この会社いいな」と思ってもらうことが重要な要素になっていきています。もちろん、2回、3回きてくれるような人たちも、まだ顧客ではないけれどファンかもしれない。口コミを書いてくれているかもしれない。

私はこれまでは顧客に限定して考えられていたCRMが今後対象を大きく広げていくことになると考えています。そのためにはDMPのような機能がCCCMなどのマーケティングテクノロジーと連携する必要があります。

広告配信とクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)

有園:ところで、先ほどのお話しだと、メールマガジンを一斉送信しているだけでは効果が下がっていくので、メールはシナリオ配信するようになったということですね。

岡本:はい。お客様一人一人のサイト上の行動などに合わせて最適なシナリオでメール配信するようになってきました。

有園:例えば航空会社であれば、フライトを毎月する人、年に2回の人、滅多に飛行機には乗らない人など、いろいろいます。最近、飛行機に乗っていない人が、たとえば、今年になって、国際線のウェブページでイタリア行きの航空券を探していることがわかったとき、その人にはイタリア旅行のメールを送ったほうが反応はよいってことですよね。

岡本:そうですね。

有園:コミュニケーションのシナリオを描き、そのとおりに送る、開封しなかったら再度送るといったシナリオを組んでいく。クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)を導入すると、イタリア行きのフライト情報を探した人には、その行動履歴に基づいて自動的にメールを送れるし、そのメールを開封していない人にイタリア旅行のバナー広告を表示することもできる。会員なら年齢や性別も分かるので、30代女性には青の洞窟のツアーの広告を表示することができる。それは、既存顧客であればできるわけですよね。そのほうが、自動化できて効果も出る。

岡本:そうですね。ただ実はクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)とDSPの連携は、まだ日本ではあまり実績がありません。

有園:CCCMとDSPを入れるだけでCRMデータに基づいてバナーを配信できるわけではない。そこは、開発が必要になるわけですね。

岡本:DSPの場合は運用面も問題になってくると思います。ただ、これからは先ほどお話ししていた広い意味でのCRM的な視点で、何らかのデータを保有しているユーザーに対しては、バナー広告もメールなどと同じコミュニケーションシナリオの中に組み込んでいくことになると思います。

実際CCCMのクロスチャネル展開はどんどん進んでいて、例えば今年6月に日本でローンチされたセールスフォース・ドットコムのエグザクト・ターゲット・マーケティングクラウドは、LINEとの連携で話題になりましたが、facebook広告のターゲティング配信機能も既に実装されています。

有園:Xrost DMPやAudienceOneなどが、いろいろと連携しているリリースを見かけますが、それらも結局、顧客の情報は分かりません。たとえば航空会社であれば、CookieのIDと顧客がサイトにログインして航空券を買ったときの情報を格納して、普通のインターネット検索では、どのような行動をとっていて、航空券ページでは、どのような行動をとったかが分かった上で、適切なコミュニケーション手段がみえてくるわけですね。現時点では、メールを送って5日経っても開封しない人には、バナーを見せようといったシナリオを組んで対応しているけれど、それを手作業でやるのは大変なので、自動的に実行できるようにするのがクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)の役割だと思ってよいですか?

アドテクとマーケティングテクノロジーの融合

岡本:はい。いずれにしても広い意味での顧客データに基づいてシナリオを自動実行する仕組みが広告の視点からも必要になってくると思います。大手ITベンダーは一部で既にDMPを取り込んでいますが、DSPを開発しているアドテク企業がキャンペーンマネジメント機能を開発してDMPと繋いでいる例もあります。

ただ、もともとCCCMのようなCRM系のマーケティングテクノロジーとDMPのようなアドテクノロジーは全く別な進化を遂げてきているので、そこがきれいに繋がって成果を上げている例はまだあまり見かけません。

マーケティングテクノロジーとアドテクノロジーの融合が今後の焦点の一つになってくると思います。

有園:オラクルやIBMのような大手ITベンダーが、広告の領域に入ってくる動きが加速するのかもしれませんね。ただツールを買収しても使いこなすことは難しいのではないでしょうか?ITベンダー側は導入のコンサルティングができても、利用イメージを描けなければカスタマイズができない。実際のマーケティングに活用するには、利用イメージを、きちんと設計に落として使える形にしなければならない。

それを現状、日本の広告代理店がやっているのでしょうか?出来る人はいるのかもしれませんが、広告代理店としては全体の総力は媒体を売ることに注いでいるので、メールマーケティングなどのことには、それほど強くないでしょう。

例えばシナリオを組んでDSPとメールの効果を見てメールをやりましょうとか、コールセンターの方の画面に、こういったことを表示しましょうといった対策を練る、設計をすることは、いまの代理店ではネット系代理店も総合代理店も難しいのではないかと思います。広告主企業内で担当者が行うといっても、部署異動もあるし、在籍期間も短くてナレッジがたまらない、長けている方は少ない。そこのコンサルティングって、ぽかっと穴が空いていますよね。ディレクタスさんは、その穴を狙っていらっしゃるのでしょうか。

岡本:まさに、そこをお手伝いできる会社になりたいと思っています。拡大版のCRMとして広告も含めたクロスチャネルでのワン・トゥー・ワン・コミュニケーションのシナリオを組み立てて、それをクロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)のようなツールを使って運用する。私たちの強みはこれまでのEメールマーケティングのノウハウを活かして実際の運用もしながらPDCAサイクルを回すことができる点だと思っています。結局そこができないと、「ツールは導入したけど使いこなせない」ということになるので。

効果測定にアトリビューションが必要

有園:ところで、ちょっとだけアトリビューションの必要性に触れておきますが、クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント(CCCM)を入れました、DMPを入れましたといったときに、その効果測定をするとアトリビューションに落ちますよね。シナリオって、一回のコミュニケーション、二回のコミュニケーションと、組んでいくからシナリオであって、ラストクリックだけ見て効果測定していたのでは意味がないと思っています。

岡本:まさにその通りだと思います。チャネルのフラグメンテーションが進んでいますからね。ワン・トゥー・ワン・コミュニケーションのチャネルも、中には「メールは終わった」という人もいますが、実際は無くなる訳ではなくて単に細分化が進んでいってる。リアルのダイレクトメールなども含めて全部残っていて、そこにLINEのような新しいチャネルも増えてくる。そういったチャネルをまとめて管理できないと、一貫した顧客体験が作れなくなると思います。

有園:ありがとうございました。

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対談者プロフィール

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株式会社ディレクタス ( Directus Inc. )

代表取締役  岡本 泰治 ( Yasuharu Okamoto )

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サングラスのアトリくん
【アトリくんの視点】

CCCM(クロスチャネル・キャンペーンマネジメント)とマーケティング・オートメーションの違いから、それぞれ代表する企業をめぐるこれまでの歴史や背景、アドテクノロジーとの連携など、データを軸にしたマーケティングを考える上で示唆に富むお話を聞くことができました。大変勉強になりました!
チャネルのフラグメンテーションが進んでいくなかで、単に分析するだけではなく統合管理を実践していくことが、アトリビューションを進めていく上で非常に大事だと思いました。岡本さん、ありがとうございました!

 

【海外コラム】モバイルアトリビューションの現状と課題

 

マルチデバイスでのアトリビューションにはまだまだ課題が山積しているといわれています。その現状を理解するために、Marketing Landに掲載されていたモバイルアトリビューションの現状と課題を解説した記事を抄訳してご紹介します。

 

Understanding The Complexity Of Mobile Ad Attribution http://marketingland.com/understanding-complexity-mobile-ad-attribution-90881

 

近年、モバイル端末の利用は急激に加速しているものの(下図)、モバイル広告の取り組みについては遅れを取っています。マーケターはタブレットやモバイルの利用が急激に伸びている事実を知っていますが、モバイルキャンペーンにおけるアトリビューションや正確な計測については数多くの課題が残されています。

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(図:本文より引用)

 

モバイル決済やクーポンといった顧客獲得のためのクローズドループはモバイルキャンペーンを計測する確実な手法のように思われます。しかし、これらの方法の多くは明確な基準を持たず、まだ初期段階にあります。特に、モバイル端末がより活躍する見込み客へのアプローチ段階の効果を測定するのは困難でしょう。クッキーはデバイスを越えて、またはアプリ間の行動を追跡することができないため、もしユーザーがスマートフォンで広告を見てタブレットやPCでコンバージョンに至った場合、最初のタッチポイントの貢献度は無視されるからです。

 

また、オフライン購買におけるデジタル広告の影響を追跡することも困難です。モバイル端末でセールの広告を見た顧客が実店舗で直接購入に至った場合、そのつながりを測定する追跡メカニズムがないがために正当な貢献度の配分が行われません。

 

モバイルアトリビューションの進化が未だに初期段階にある現在、マーケターがメディアミックスでモバイルの貢献度を測定するにあたり心に留めておくべきことはそれほど多くはありませんが、下記のものが挙げられます。

 

クロスデバイス・アトリビューションモデルの採用

ファーストパーティ(自社)のログインデータを使ってデバイスのマッチングを行うことはまだ欠点も多いですが、クロスデバイスの分析はログインデータなしには不可能であり、現在はこのモデルを使うべきでしょう。

 

ブランドメッセージの効果測定

ブランドメッセージの効果を分析することで、モバイル広告のエンゲージメントの度合いを測ることができます。

 

モバイル決済やクーポン、QRコードによるキャンペーン

モバイル決済やクーポン、QRコードは効果的にトラッキングを行うことが可能です。これらをモバイルマーケティングのプラットフォームに統合することで同じ予算内でより効果を得ることができます。

 

位置情報データの使用

位置情報データを分析することで、オフラインにおけるモバイルマーケティングの影響を測定します。具体的に、広告キャンペーンを表示したモバイル端末と、その後特定の場所で確認された同じデバイスの数を分析し効果を測定します。

 

浴衣のアトリくん
【アトリくんの視点】モバイルの利用率が急激に拡大する中で、クロスチャネルでのアトリビューション分析は過渡期にあるように思います。筆者が述べるように、現段階では正確性にはやや不安が残るものの、実践可能な効果測定を試していくことが重要ですね! GoogleのAdometry買収などもあり、今後もクロスチャネルのアトリビューション分析は進化を続けていくと思われます。要ウォッチですね!

 

 

アトリビューション特別対談:広告人はみんなティンカーベルになろう!HDYMP宮腰卓志氏×アタラ有園

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①自己紹介のパート

ダイレクトマーケティングとアトリビューション

有園:株式会社博報堂DYメディアパートナーズの宮腰さんとは、3年くらい前に初めてお会いしました。私は、これまで10年以上に渡り、博報堂DYグループの皆さんと仕事をしてきましたが、宮腰さんの第一印象は「いままでに出会ったことのない人種の人が出てきたな」でした。それくらい、インパクトが大きかったです。宮腰さんが携わっているお仕事の話を聞いて「それって、今でいうアトリビューションと同じですよ」と声をかけたことを覚えています。あれから3年以上経って、お仕事の内容は変わっているかもしれませんが、あらためて自己紹介をお願いします。

宮腰:入社以来、ダイレクト保険や通信販売などのお得意先様を担当させていただき、ダイレクトマーケティング業務に携わってきました。マーケティングプロモーションのゴールを何らかの注文獲得に設定したときに、メディアをニュートラルに評価し、クリエイティブと併せてプロモーションの効率化・効果最大化をプラニングするという業務から私のキャリアはスタートしています。

有園さんと知り合った3年前は、テレビや新聞・チラシ経由で、問い合わせや注文を電話で受け付ける通信販売の業務のほかに、徐々にウェブだけで注文を獲得する広告主様の業務の割合が増えていた時期でした。

最初から、ウェブマーケティングありきでトレンドを追いかけていたわけではなく、顧客獲得チャネルのひとつにウェブもあるというところからスタートしています。

そこからいまは、だいぶ変わりました。顧客獲得チャネルとしてのウェブの存在が圧倒的になって、私の業務もウェブでの獲得が軸になっています。それまでのテレビやチラシから電話で顧客を獲得する業務経験を活かして、現在はウェブでの顧客獲得を考える上で、テレビやチラシも含め、オフラインとオンラインのメディアとクリエイティブを統合してアトリビューションを応用する視点になっています。

有園:当時はマス広告、確かテレビCMを出稿して、紙の広告かコールセンターかウェブサイト経由か分かりませんが、コンバージョンにどのような影響を与えるのかを統計的に分析していると聞き「それはオフラインアトリビューションに該当しますよ」と話をしたのが最初だったように思います。

宮腰:そうでしたね。

有園:そこから段々と、ウェブの方に入ってこられたわけですね。宮腰さんというと、博報堂DYグループの中でも最先端のことに取り組まれている印象があります。せっかくなので、宮腰さんがどのような考えでお仕事をされているのか。また、紹介できる事例があれば伺えますか。

オンラインのアトリビューション分析

宮腰:携わっている仕事は大きく分けて2つあります。ひとつは、チャネルが複数ある、広告主様のパターン。来店とウェブとか、電話とウェブとか、複数チャネルでの申し込みが、同じコンバージョン1として計測される世界。もうひとつは、ウェブで完結するものです。

私自身の役割は、オフラインだけを使うにせよ、オンラインを使うにせよ、コンバージョンの目標があって、それを達成するために1年間どのように運用していくのか、マスメディアも含めた運用をディレクションしている業務ばかりです。自動車メーカや情報通信系、カードローンや保険、あるいはエネルギー系など、お得意先様の業種はさまざまです。。それだけ、オフラインとオンラインを統合したアトリビューションという概念は広い応用が可能ですし、話を聞いていただける状況にもなっています。

有園:お忙しいですね。

 

②アトリビューション分析の昨今について

アトリビューションには4つのレイヤーがある

有園:宮腰さんと初めて一緒に仕事をしたとき「アトリビューションも、いくつかのレイヤーがあるよね」という話をしました。

宮腰:しましたね。

有園:CPAを見ていくラストクリックレベルでの「ラストクリックアトリビューション」があり、それはデイリーでやること。その上に「オンラインアトリビューション」があって、それは一か月単位で見ていく。さらに上には「オフラインアトリビューション」があり、四半期に一回くらいできたら良い。最後に、マーケティング予算以外、ビジネスでの予算配分という経営レベルの「ビジネスアトリビューション」があり、レイヤーごとに役割が違うという話をしました。

宮腰さんの話を伺っていると、モデルを別々に分けていて、オンラインアトリビューションとオフラインアトリビューションのモデルが違うのですね。オフラインのアトリビューションモデルは、大枠としてのリスティング広告とDSPとテレビCMと交通広告と、年間でそれぞれの予算を、どうするべきか回答を出す。決まった予算の中で運用レベルまで落とし込むとなると、オンラインのアトリビューションをしないと落ちていかないから、そこは違う回帰分析とかをかけて、それぞれの答えを出していくのかなと思いました。イメージとして。

宮腰:計測できるデータの粒度や質によってレイヤーを分けていますね。オフラインのデータは、オンラインのようにCookieでつながった経路データではないですから、なんらかの回帰式でモデル化するしかないですね、手法的に。たとえば年間の予算配分を計算するには、オンライン・メディアも、オフライン・メディアと同列に扱う必要があって、オンライン・メディアならではの詳細なデータでも次元を落とし数値をサマライズして扱う必要がでます。だから、分けていましたし、扱うデータの粒度と質に合わせてレイヤーを分けるべきです。

有園:実際は分けていたけれど、オンラインのアトリビューションをやる中で因果が出てきそうだと仮説が立って、そこにオフラインのアトリビューション分析もかけているということでしょうか。

オンラインとオフラインを接続する

宮腰:たとえば、年間の予算を策定するところでは、オフラインアトリビューションの枠組みで、オンラインメディアもどれくらい使うか、使えるかをシミュレーションすればよいわけですね。でも、実際にプロモーションをはじめて見ると、オフラインのモデルでは、日々起きる運用の悩みには答えられないことがわかります。オンライン・メディアの運用の機微が、データの次元を落とす際に、欠落するんですよ。実際には運用努力でなんとかしたりしているのですが、よりアトリビューション・マネジメントを広げていくには、「これではマズイ」と。

そこで最近、「つなぐ」ことに注目しているんです。(資料①)獲得に近いレイヤーが右側のセールスのレイヤーですが、ここにウェブのトラフィックが決まってセールスが決まるモデルになっています。トラフィックを決めるメディアは別にあって、親しみや知名のような認知指標につながっています。何かの変数で接続してあげるんです。取得できるデータの違いからオフラインのアトリビューションの世界とオンラインのアトリビューションの世界はつくることができるモデルが最初から違うので、もっと大局的に購買プロセスのモデルをつくるようにしたんです。

オンラインのアトリビューションの世界、オフラインのアトリビューションの世界、その上にビジネスの世界、ブランドの世界かもしれませんが、それらを何かの変数でつなげることによって、購買プロセスのアトリビューションを描けるようになっています。いまは次第にこのような大きなモデルの概念が求められていると思います。

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有園:いまの話ですと、(資料①)テレビがきていて、リスティング広告のクリックからブランディング系のキーワード経由で入ってくるのは、指名系のワードにつながってきているという流れと、ニュアンスは近いですか。

宮腰:近いですね。一つのモデルで最後のコンバージョンまで描かれていますが、分けてからつないでいるんです。大きな宇宙があって、その中に銀河があって、惑星が存在していることに近いイメージです。ウェブの世界まできたら、VTCなど分析してオンライン・アトリビューションに落とし込んでいます。

パス図を読み解く

宮腰:ただ、アトリビューションというと、パス図のようなグラフィカルなモデル図ができていれば、モデルができたと錯覚している方が多いような気がします。

有園:こういう絵は、オンラインだけでなくオフラインも含めてパス図を作ったときに、いまはある程度、想定で線が引かれていますが、実際には粒度が違うので綺麗な線は引けないということでしょうか。

宮腰:オンラインとオフラインの両方から、獲得までのパス図を作ることは可能です。たとえば、Yahoo! JAPANのバナー広告を一枠、出稿したとします。そこからクリックが何件発生して、CTRが何パーセントで、そこからコンバージョンが何件発生して、CVRが何パーセントというのが直接ルートとしてあって、これだけ出稿すると何インプレッション稼げて、何インプレッション稼げたことによって、検索が何クリック発生して、ここからコンバージョンが何件獲れますという話になります。ここのパスも、アシストのCTRが出て、アシストのCVRが出るという形になります。この線に全部が入っている形です。

有園:Yahoo! JAPANに掲載したバナーをクリックしなくても、その後に自然検索が起こっているだろうという、ビュースルーサーチコンバージョンみたいなものが獲れるということですね。

宮腰:はい。それも、何インプレッションであれば、どれくらいのビュースルーサーチが発生して、その上でのコンバージョンが発生するかどうかは、数字をもとに作ります。その絵は、実際には経路までとれているデータを使って分析しています。

有園:実データでやるわけですね。

宮崎:それを書き起こすと、パス図にはなります。構造方程式などで相関関係から描いていくオフラインのアトリビューションと、Cookie単位で経路がデータ取得できているオンラインのアトリビューションと、全く異なる方法でも、モデルを表現すると同じようなパス図になってしまうんですね。

でも、この1本のパスが表現している内容が全然違うわけです。構造方程式の場合は、ある変数とある変数の相関をもとにした関数になりますが、経路データをつかった場合は、明確な因果関係になります。

有園:相関と因果、要因は違うということですね。

宮腰:違いますね。ここがいま、世の中では混在してしまっているんです。かたや、統計に携わる人や、マスメディアを中心としたマーケターの人たちの中は、構造方程式モデリングを使って、オフラインまでを相関関係で見ていくという人もいらっしゃいます。もちろん因果関係を含んだやり方もあるにはあります。

ところがこれは、ウェブのプロモーションを運用している側からいうと、実用に耐えないものなんです。なぜならば、テレビCMをどれくらい出稿したから検索でこれくらい獲れるという間には運用の要素がいっぱい入ってくるわけです。100パーセントでインプレッションを買うべきなのか、1位入札すべきなのかどうか、そのときにCPCがどれくらい上がるのかによって決まってきますので、これを一緒くたに扱う構造方程式モデリングで分析したからといって、ウェブの獲得までを扱えていたわけではないんです。

反対にオンラインのアトリビューションだけやってらっしゃる方にとって、オンラインのプロモーションにマス広告がどのような影響を与えているのかというのは、同じようなユニークなデータとして扱えるわけではないので、相関を見るしかない。

どちらにせよ因果関係がはっきりわかるわけではないんです。因果関係を構造方程式モデルにするときも、分析する側が「こういう構造なのではないか」と仮説を当てはめます。分析から自動的に因果関係がでてくるわけではありません。それで最近、最も実用に耐えうる因果関係に、ウェブの運用という概念も入れていくことに取り組みはじめました。

ここで描いたことは、テレビCM単体では、ウェブのコンバージョンを誘発しないという割り切りをしています。あくまで、検索総量までは恐らく、テレビCMの影響を受けているだろうと。

検索総量が決まったら、運用の段階に入っていきます。そこでやっているのが、こういうイメージなんですが、運用のインプレッション総量が決まってくると、そこに対して、何パーセントまでインプレッションを買っていこうかとか、そのときのCPCはいくらになるのかということを、別のモデルをつくっています。

有園:なるほど。構造方程式モデリングのパス図では描ききれない、運用に関わるレイヤーのものに関して、別のモデルを作って分析をしていると。これからいくと、回帰分析とかをしていくのでしょうか。

ここのCTRとかCPCとかインプレッションとか、それぞれごとに相関のあるなしを調べていくイメージでしょうか。

宮腰:そうです。このようなやり方をしている理由は、有園さんが執筆された『リスティング広告 プロの思考回路』(アスキー・メディアワークス)にも書いてありましたが、要素っていっぱいあるわけですよね。2位入札が良い場合もありますし、CVRと掲載順位が相関する場合もありますし、それらは全て運用の知恵ですよね。そういう運用の知恵も含めてモデルに組み込みたかったからです。

運用経験からくる経験値

有園:そうですね。そこは『リスティング広告 プロの思考回路』でも私が執筆したパートですが、書いていることは私の運用経験からくる経験値です。その経験値は広告主ごとに違うので、広告主ごとにデータを使って、その経験値が統計の観点から確からしいものであるかどうかというのを、きちんと分析をかけて運用に活かしていこうという話でしょうか。

宮腰:近いです。業種や会社のポジションによって、1位をとったほうがよいのか、2位でもよいのかといった、順位とコンバージョンの関係や、1位になるとCPCが極端に上がるけれど2位か3位であれば、あまり変わらないなども、業種によって、あるいは、キーワードによって全て異なります。

むしろ、モデルを作るというのも、出来たものに頭から当てはめていくという考え方ではなくて、その会社にとってコンバージョンを獲得するまでに、どのようなルートをたどっているのかをひとつずつ洗い出して、小さなものを組み合していくという作業に変換することです。

1つのモデルに全てを当てはめ、全てに通用するという80年代のシステム論のような考え方は、データを扱える人が限られていた時代においては良いかもしれません。しかし、いまは全ての人がデータを扱える状態なので、分析を専門家に委ねた汎用モデルを当てはめるのではなく、各会社の傾向を確かめる手段として分析を活用していけばよいのではないかと、そのように最近、思っています。

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クライアントごとにモデル化

有園:インプレッション数、順位やクオリティスコアは、おそらくリスティング広告だと、広告主によっては何百万キーワード、何千万キーワードとなるので、さすがに全部はやっていないと思いますが、主要なプランド指名の検索キーワードか、一般のビックワードと言われるようなものなど、キーになるキーワードについては個別に回帰分析をかけているのでしょうか。

宮腰:そうですね。

有園:同じようなことをDSPやアドネットワーク、純広告やバナー広告でもやっていらっしゃるのでしょうか。

宮腰:全体としては、そこまでやっています。ただ、手順があります。コンバージョンはゴールなので、大事なのはコンバージョンの中で、大きな意味をもつ塊なのかどうかです。大きな塊のなかにブランドの指名キーワード群を入れることは、多くの会社で大事なことです。その次に、どのような群がくるか。ある会社にとっては、ビックワードや商品カテゴリであることも。例えば、医療保険とか、がん保険とかですね。

有園:コンピューターとか。

宮腰:はい。車でいうと、コンパクトカーやSUVなどのボリュームを見て、塊に対して因果関係が立てられるかどうかです。立てられるものについては見ていきます。立てられないものについては、自然発生のものだと割り切ることも大事だと思うんです。

コントロールできないOTHERとして扱うと判断した後に、数字を使って相関係数や誤差の範囲であるとか、きちんと数字として説明しきれるものであるのかを判断して、組み合わせていく段取りをとっています。リスティング広告は、塊を作ることが大事です。DSPや純広告になると、影響する割合ではリターゲティングがある程度のボリュームがあり重要だと思いますが、クリックして直接コンバージョンすることは、ウェブの世界だけで見ると良いものだと思います。

有園:なるほど。

リターゲティングについて

宮腰:いったん、マス広告からの影響は置いておきましょう。リターゲティングについては、第三者配信やクリックスルーコンバージョンで、リターゲティングに至る前に、どこから入ってきたのかを見たとき、これがウェブの中だったら良いのですが、最近よく見かけるのは、最初は自然検索できた人が、最後はリターゲティングでコンバージョンするパターンや、リスティング広告で入ってきたのに、その後はビックワードで検索し、最後はリターゲティングでコンバージョンするといった変化です。

指名キーワードの自然検索で入ってきた場合、マス広告との相関を見るといった遡り方をして、リスティング広告だけでなくリターゲティングやDSPなど、分析の幅を広げています。重要なのは、最初にグルーピングしてボリュームを見ることです。

構造方程式モデルの誤解

宮腰:オフラインとオンラインを統合するアトリビューションの代名詞として構造方程式モデルのようなパス図をよく見ますが、運用の実態まで組み込まれたモデルではないんです。分析する側に運用のナレッジがない、ということもあります。でも複雑なパス図になっていると、気持ちが落ち着くというか、わかった気がしちゃうんでしょう。

有園:いかにも高度な分析をしているような気がしてきてね。

宮腰:ところが、僕は、ここ1年で2件も見たのですが、モデルを見て笑ってしまったことがあって。複雑な絵にはなっているんですが、因果関係がめちゃくちゃなんです。1件目は、当たり前の関係が組み込まれていただけ。ある商品(A)のテレビCM・新聞・リスティングを出稿すると、ある商品(A)のコンバージョンが増えます。ある商品(B)のテレビCM・新聞・リスティングを出稿すると、ある商品(B)のコンバージョンが増えますと。その結果、コンバージョンの合計は何件になります。これは、商品ごとのコンバージョンを目的変数にした重回帰を足し算しただけの、当たり前の関係です。

広告を出稿したらコンバージョンが増える。これって重回帰分析をするまでもなく、ダイレクトレスポンスマーケティングでは当たり前のことなんです。モデル化する必要のないことを、小難しく説明しているケースがひとつありました。

有園:なるほどね。

宮腰:そして2件目は、分析して非常に複雑なパス図が現れたのですが、ひとつずつ見ていくと、1日前にリターゲティングの接触があり、3日前にリターゲティングの接触があり、と7日前まで遡っているんですよ。これってリターゲティングの接触の回数を数えているだけなんですよね。

有園:よくありますよね。リターゲティングの接触が続いている絵って。

宮腰:最初に何をすべきか検討する場合、リターゲティングって最初にできることではないので、意味がないんですよ。アウトプットが複雑だと、さも構造化されているように思えてしまいますが、そんなのは大間違いで、モデルの中にきちんとした因果関係、これは仮説として与えないと出てきませんが、因果関係を考察して組み込まれているかが重要なんです。それは自分でその商品の市場や購買プロセスを考察していないとできないわけです。数字を見る能力と、コンピューターを操作する能力と、分析の知識だけではだめなんです。

有園さんが『リスティング広告 プロの思考回路』(アスキー・メディアワークス)で書いていらっしゃったことは、僕の思ってきたことと違うこともありましたが「こういう観点で、こういうことが当てはまる業種もあるんだ」と気づきがあり「トライしてみよう」って思うことが多くて、ヒントがつまった本でした。必ずしも当てはまるわけではないので、自分のなかに「これとこれは因果関係がある、ない」のセットを持っていないとモデル化は出来ないんですよ。

単純なモデルほど本質をえぐり出す力がある

有園:複雑にやるのが良いわけではないって大事ですよね。学生時代に当時、東京大学の経済学部学部長だった岩井克人先生の『貨幣論』(筑摩書房)を読んで感銘を受けたことを思い出しました。世の中には国ごとに貨幣があるので、たくさん貨幣があるという前提で考えると複雑になるけれど、世の中に貨幣が一つしかないと仮定して「世界貨幣」という概念で、すべての商品が売買交換できるという単純なモデルをつくり、その「世界貨幣」を前提に資本主義の脆弱性をえぐり出すという仕事をしています。彼は、ハイパーインフレーションで資本主義が崩壊するという可能性について論じています。その本の中で、単純なモデルほど本質をえぐり出す力があるということが書かれています。

僕は、その考えに影響を受けています。岩井先生は不均衡動学の理論という難しい分野の論文を専門書では書いているのですが、一般書では単純なモデルこそ本質をえぐり出す力があるということを分かりやすく書いていらっしゃっていて「そのとおりだな」って思ったことがありました。

アトリビューションであれ、その他の広告の分析であれ、モデルを作ることが多々ありますが、最初は単純なモデルをつくって、きっちり本質を見抜くことをしてから、複雑なモデルに移っていくことが大事であることを、宮腰さんの話を聞いて、あらためて感じました。

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正しく、シンプルに

宮腰:シンプルさは大事ですね。でも、シンプルさの誤解もあります。テレビCMを出稿したら検索数が平均で1.2倍の差があるというデータがあったとき、すべてのケースで1.2倍を当てはめるといった単純な取り組みはたたき台にはなりますが、これもさらに因果関係を考察する努力を怠っており、数字がでればいいという勘違いをおこしています。

有園:そのシンプルさは間違っていますね。

宮腰:シンプルさの考え方が違うんですよ。大事なのは、シンプルな因果関係を描くことだと思うんです。それがシンプルなモデルってものになると思います。AをやったらBがこうなって、そのあとCがどうなってという、いろいろなことに応用できる因果関係を見つけることが、一番大事な考えるべきポイントですね。

 

③広告会社のあるべき姿

広告会社のあるべき姿

有園:宮腰さんがやっていらっしゃることって、旧来の広告会社がやっていることとはイメージが違うように思います。宮腰さんが特殊なわけではないと思いますが、宮腰さんは、ご自身で統計的な作業もされていると伺っています。得意先への定例会にも参加されてプレゼンし、そこで出た宿題は持ち帰ってご自身あるいはチームで分析をされていることと思います。その結果は、マス広告の方にも「こういった結果が出ているから、こんな風にクリエイティブを作ったほうがよいのではないか」とか「ターゲットを変えたほうがよい」とか「訴求点を変えたほうがよい」みたいな、他にも影響を及ぼす動きをされていると思います。

そうなると「広告会社の人って、そこまで分析とかするんだっけ」という感想をもつのですが、いま、宮腰さんのような仕事をしている方は増えているのでしょうか。いま、ビックデータなど、データを取り扱い、分析することが求められているので、今後、宮腰さんのような人を増やしていかないといけないのかもしれません。そのような状況下で、御社の中での課題や、今後どのような人を必要としているのかを、お話しいただけると有難いなと思っているのですが。

宮腰:大きく言うと、広告会社で働く人間、総合広告会社にせよ、ウェブ広告の専門会社にせよ、得意先にとってのマーケティング領域の専門アドバイザーであるという立場は変わらないと思います。プロフェッショナルアドバイザリーサービスなわけですよね。

得意先の役に立つ助言が、どういう人によってなされるのかを考えていくと、これまでは、ビジネスの感覚を持ったクリエイターや、専門知識を有したコンサルタントでした。有名クリエイターなどは、時代の感覚を自分の中に取り込んで「いまこういうことをやっていくと、あなたの会社は世の中の人に受け入れられますよ」「このようなイメージを抱いてもらえると、ビジネスとして成長できますよ」といったアドバイスをしていました。かたや、MBAをとっていてマーケティングの専門知識をもっている方によるコンサルティングでは、いろんなフレームワークや調査データをつかって戦略的な提案をおこなってきました。

有園:ストラテジックプラナーとかでしょうか。

宮腰:たとえば、そのような存在ですね。そうしたこれまで広告会社に存在した類型とは別の形で、経営者へのアドバイザーとして存在しうるのが、増えているデータの中から意味のあるアドバイスを抜き出したり、創造してアドバイスできる人間です。

クリエイティブな才能をもったクリエイターや、MBAなどの知識や専門的な能力をもったマーケターが、膨大なウェブ・データを分析することはほとんどないわけです。ですから、データを読み解き、アドバイスすることを得意とする存在が、生きていける土壌ができたのではないかと思っています。僕としては、世の中が求めているという感覚は、あまりないのですが、そのようになりたいと思って、これまでやってきました。

マーケターは刑事

有園:実際、そのような環境が整いつつある中で、宮腰さんはご自身の役割を、どのようにお考えですか。

宮腰:刑事だと思っています。

有園:刑事コロンボの刑事ですか。

宮腰:そうです。刑事コロンボとか、相棒とかの刑事です。経営者の方々の一番の仕事って判断することですよね。判断するのは裁判官や判事の仕事です。

有園:最後は、経営判断ですもんね。

宮腰:経営判断をしていただく前に、誰が容疑者でありそうかを見つけ出してくる役割が、刑事だと思うんです。データの世界でいうと、とにかくデータを集める、証拠を集める鑑識のような役割も兼ねています。

24 hour performance

これは、データを扱うのが得意で、統計の知識があり、プログラミングが書ける、データをハンドリングするスキルが高い方々がやっていく仕事だと思います。経営と現場の間をつなぐ役割ですね。事実を整理し、ナイフについていたDNAはこのようなもので、逃走経路はこのあたり。一体、この事件を引き起こした犯人は誰なのか。それを見つけない限りは、施策には落ちないし、判断はできません。事実を積み上げ、分析し、一番、疑わしい人間を見つけ出す。これも推測なんです。

課題を、見つける力、解く力、使わせる力

有園:裁判官みたいな人がいます。(資料②)これが経営者ですね。裁判官が判断するために必要なデータを集めてくる人が、刑事ですね。きちんとジャッジするための示唆を与えるわけですね。

いま「データサイエンティスト」が流行っています。この言葉をよく耳にします。宮腰さんのお考えでは、データを分析する人と、データを分析するだけでなく示唆を与えるまでが出来る人を分けているように思うのですが「データサイエンティスト」というのは、その両方が出来る人のことをいうのでしょうか。

宮腰:この点については『会社を変える分析の力』(講談社現代新書)の著者である、河本薫さんの主張が正しいと思っています。当然、データをいじるスキルは必要ですが、データをいじる前に、問題を発見して分析する前提を作る、課題を見つける力が必要だと河本さんはおっしゃっています。僕も、それがまずは必要だと思っています。そして、その問題を解く力。これが分析の力です。最後に強調されているのが、使わせる力です。分析の結果を経営者が活かせるよう変換するところまで出来ないと、データサイエンティストではないのではないかと思っています。

有園:課題を、見つける力、解く力、使わせる力。

宮腰:By河本薫さんです。

有園:たぶんいま、データを操作する人はいます。もちろん、課題を見つけて、解いて、使わせる力も備わっていて、ハンドリングできる人もいますが、ハンドリングすることしかできない人は、データサイエンティストではないということでしょうか。

宮腰:私の知る限り、業種によってばらつきがあります。IT系企業の場合、分析する力、つまり解く力の強い方が多い印象です。

広告会社はどうかというと、問題を見つける力のある人は多いけれど、解く力のある方が少ない。私たち広告、マーケティング側から見ると、解く力のある方というのが、とてもポテンシャルを持っている方々なのではないかと思っています。

解く力を持つ方が、マーケティングの観点から仮説を立てる、問題を見つける力を養っていく、自ら高めていくことができれば、いままさに、データサイエンティストになるポテンシャルの高い方なのでしょう。

有園:それは、広告会社から見てということですね。

宮腰:なぜかというと、いくら見つける力と使わせる力があっても、もとのデータ自体を見ていないと焦点を絞るべきところを見つけ出せないんです。刑事に例えた理由もそうなんですが、現場百遍っていう言葉が昔から好きで、それこそ私が分析するときも相関係数とか誤差なんかを読むだけではなく、重視するのは最初のデータセットです。

データセットをどう作るかで、分析結果ががらりと変わってきますので、正しいデータセットを作っているかどうかが非常に大事なわけです。もしくは、変数をどういう定義でつくっているか、どのようにデータを抽出してきたか。これをやらない限り、データサイエンティストにはなれません。

発言が矛盾するかもしれませんが、データハンドリングの側を十分やっているからこそ、見つける力と使わせる力が備わってくるわけで、見つける力と使わせる力だけ持っていると思っていても、いまこれだけデータが膨大な時代で、データを見ていない限り、正しい分析はできないんですよ。

ですから、さきほど両方やるのか片方でよいのかという話が出ましたが、言ってみれば両方です。軸足がどちらにあるかの違いはあると思いますが。

有園:そうだとすると、大阪ガスの河本さんがおっしゃっているような、課題を発見する力があって、課題を解き、広告主さんに使っていただくために使わせる力が必要で、これは説得力のあるソリューションに落とし込む力でしょうか。広告主さん側で「これを使いたい」と思ってもらえるように。このような3つの力を持っている人が、広告会社にはいなければならないということですね。

宮腰:そうですね。

プログラミングのスキルは必須?

有園:旧来型のマーケットインサイト、コンシューマーインサイトに対して「こういうクリエイティブが良いですよ」と提案するクリエイター、ストラテジックプラナーのように事業戦略まで語れる人も引き続き必要ですが、データを使いソリューションまで導き出せる人も必要になってきたということですね。

宮腰:そうですね。

有園:そのような生き方もあると。そうすると、広告会社で働く人はプログラミングもできたほうがよいのではないかと思ったりするのですが。

宮腰:僕は、できたほうがよいと思います。世の中にマーケティング系のデータっていっぱいあります。アクセス解析のデータであれば、自分のパソコンで過去1年間分くらいのローデータをごそっと引き出すことができます。一般公開されている市場動向の調査データなどもたくさんありますし、統計局ホームページからごそっと引き出すこともできます。

そのような時代に、私たち広告会社、マーケティングプラナーたちは、パソコンを、メールを読んだりウェブサイトを見たりするためだけに、使っていてよいのかということです。マーケターが、与えられたパソコンでメールとウェブサイトだけを見て、あとは机上の空論のようなマーケティングプランを立てているとしたら、料理人にたとえると、コンビニで買ってきた料理をレンジでチンして出しているようなものなんです。オープンデータを集めてくるようになってから、コンビニで買ってきた料理に自分の空想でちょい足しするような世界になってきたわけです。

なぜ、僕が広告会社に勤めるものたちがプログラミングまでできたほうがよいと考えているかというと、データを使うというのは、スーパーで食材を買ってきて、自分の好きなように料理をしていくためには、SQL(シークェル, エスキューエル)を自分でたたいたり、Ruby(ルビー)とかPython(パイソン)でプログラミングを書けて、ローデータを加工したりというところまでいかないといけわけです。僕らはマーケティングのプロですから、ここまでいく気概を持って取り組むべきではないかと思うんです。

たとえば、有園さんがやっていらっしゃるウェブのオンラインのアトリビューションの世界でいうと、APIをたたくことも必要になってきますよね。そのためには、インターネットがなぜつながっているのか、APIの仕組みはどうなっているのかといったことまで把握していないと、机上の空論になってしまいますよね。

有園:なるほど。いまの話でいうと、アタラでもっているプロダクトに「glu(グル―)」というものがあります。「glu(グル―)」は、レポーティングツールであり、分析ツールでもあります。ヤフーとグーグルのプロモーション広告のAPIをたたいてデータを持ってきてソリューションに落としているんです。

それを、ネット専業の広告会社を含め広告業界でやる方がいなかったので、サービスにしようということでつくったプロダクトです。そこが皆さん分かっていれば、同じことをやってきたかもしれませんね。そういう意味では、ウェブのAPIまで理解して分析できれば、より幅が広がるなって思います。

ちょっと余談ですが、「読み・書き・ソロバン」っていいますよね。10年ぐらい前には、ビジネスの「読み・書き・ソロバン」は、「英語・会計・IT」と言われていました。いまは、それが、「英語・会計・プログラミング」になっているんじゃないかと思います。ITって、エクセルやパワーポイントができますとか、インターネットで情報取得できますってレベルじゃ意味がないので、やっぱり、プログラミングかなと。とくに、情報やコミュニケーションに関わる仕事をする広告会社の人は、プログラミングができるレベルじゃないと時代についていけないと思いますね。

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クリエイターはテクノロジーに強い

宮腰:広告の世界で、テクノロジーを取り入れる速度が一番速いのは、クリエイターなんです。

有園:分かる気がします。

宮腰:マーケターの方が遅いのは心配ですが。いま、ほとんどの広告写真はフィルムではありませんね。ときどき、フィルムにこだわる方もいますが。フィルムの時代から、広告会社のクリエイターって、なぜこのレンズで撮影するのか、焦点距離がどれくらいで、縁がどれくらいで、引き伸ばし方をどうするのかまでをやっていたわけですよ。

ところが、コンピューター、データとなると、そこまでやらなくなってしまうのはおかしいなと。昔、コンピューターで音楽を作れるといったら、イメージするのはYMOさんや坂本龍一さん、富谷勲さんだったりするわけです。確かな音楽理論があって、高価なシンセサイザーで作曲するようなイメージです。

有園:坂本龍一さんは東京藝術大学にいき、教授と異名をとるぐらい音楽理論にも造詣が深くて、ピアノも弾けて、クラシックの知識もある人が、YAMAHA(ヤマハ)のDX7(ディーエックスセブン)などをつかって作曲していたわけですね。

宮腰:YMOさんのときはProphet Vなどアナログなシンセサイザーで。昔は、膨大な知識量を吸収して、大学を出て理論的にやらなければならないという。日本人って、テクノロジーとの接し方が誤っていて、難しくとらえがちなんです。

ところが、音楽の世界って、たとえば石野卓球さんは座学で研究されたわけではないですが、家でシンセサイザーをいじっていたら面白い音ができて、それが世界で売れたりします。写真も昔は、決定的な瞬間というと、アンリ・カルティエ=ブレッソンなどのマグナムという国際的な報道写真家のグループが有名だったわけです。でも、いまは、糸井重里さんのウェブサイトでも「味写」というのを集めていますが、一般の人が決定的な瞬間を撮影して、それを投稿しているわけですね。いまでは誰でも決定的瞬間は撮影できるようになっているんです。知らず知らずのうちに。

宮崎駿監督の作品「風立ちぬ」主人公のモデルにもなった堀越二郎は、膨大な設計図面を作って、一生に何度あるか分からない飛行のためにテストを繰り返してきましたが、いまはこれですよね。テクノ手芸といわれている、自分で配線して電子工作をはじめられるキットが売られているわけです。小さいLinux(リナックス)が入ったRaspberry Pi(ラズベリー・パイ)という手のひらサイズのチップで何度も実験できます。

データが膨大にあり、分析するツールも膨大にあるわけです。低価格なものから高価格なもの、簡単なものから複雑なものまで。ではなぜ、そこに自分は行かないのか、自分から取り組んでみないのか。取り組むときに、難しいものと思わず、気楽にやってみるべきなんですよ。

テクノロジーとの関わり方を変える

有園:それがテクノロジーとの関わり方なのでしょうか。

宮腰:特に、広告のクリエイティブの世界は、Macintosh(マッキントッシュ)が登場してからの世界ですが、デザイナー自身がAdobe Illustratorでデザインをするようになりました。昔は、デザイナーが手書きした原稿を、マッカーと呼ばれるMacintosh(マッキントッシュ)使いの人が起こして、さらにそれを製版していく段取りがありました。

でも、いまはデザイナーが自らMacを使ってデザインしています。広告会社のアートディレクターも自分でやるようになりました。自分でできる範囲が、どんどん広くなって、いろいろなクリエイティブが実現できるようになりました。僕らのいる分析の世界も同じようなっているはずなんです。

有園:クリエイターは、Adobe IllustratorやAdobe Photoshop などを使いこなしているでしょと。分析する側も、広告会社の人間なら、プログラミングできるほうがよいと。

宮腰:クリエイティブでいうと昔は、デザイナーがいて、アートディレクターがいて、Macのオペレーターがいてと役割が分かれていましたが、いまは一人のクリエイターがパソコンを駆使して幅広く手掛けています。

でもいま、マーケティングのプラニングというと変わらないわけですよ。リサーチャー、PR、メディアのプラナー、アナリスト、エンジニアがいて、相変わらず分業の状態です。今、必要なのはデータサイエンティストという呼び名もあり、その延長線上にあるのかは分かりませんが、マーケティングの世界において必要なのは、マーケターとしての気質と、アナリストやエンジニアの側面も兼ね添えて、施策に落とし込むメディアのプラニング、PRのプラニングに変換することのできる人。さきほどの3つの力「見つける力」「解く力」「使わせる力」を兼ね添えていかなければならないと思います。

有園:いまの20代、30代の若い人たちには、研修などでもプログラミングを教える機会を設けると、大いに活躍する可能性が高まるということですね。

ThinkingからTinkeringへ

宮腰:3つの力を身に付けることは、なにも、若い人に限った話ではないと思います。世の中が、広告業界全般にいえることですが、データサイエンティストを特別視しすぎです。「メディアプラナーやマーケターは、自分でデータをいじくろうよ」という運動にしていったほうがよいと思います。いままで、プラナーもマーケターも考えることが仕事になっていくのですが、自分自身にも強制していることは「考える前にデータをいじくる」ということです。ティンカリング(Tinkering)しろよと。

有園:ディズニーの「Tinker Bell」のティンカーですね。ティンカーベルって手先が器用で、物を作る妖精です。

宮腰:あぁ、なるほど。

有園:いじくるのはティンカーですね。

宮腰:大規模なデータベースをつくって、分析の仕組みをつくってと大掛かりなシステムから考えるよりも、自分の手元にあるデータを自分でいじくった結果が、単純な集計でも大きな施策に活かせる大きな発見がある可能性があるわけです。複雑な分析が、必ずしも正しいわけではないんです。いじくっていくことによって経験値が高くなり、できることも複雑になるわけです。

最初は、自宅で日曜大工して椅子を作っていたけれど、段々と出来るようになって、いつしか大工になって家を建てられるかもしれない。研修を用意するよりも、日頃からデータに触れる習慣をつくっていったほうが良いのではないかなって思っています。

「みんなティンカーベルになろう」

有園:ThinkingからTinkeringへ。「みんなティンカーベルになろう」って運動だったらよいんじゃないですか。

宮腰:そういう運動いいですね。

有園:いま、僕もすごく納得したのは、単純なこと、ちょっとしたことが、実はとっても大事なのではないかと。アトリビューションの話をするとき、複雑なモデルの方が、より精度が高いと思われがちで、実際にそうかもしれないんですが、発見って、単純なモデルや単純なことをきっちりやることで見えてくることがあって、複雑になるとかえって見えなくなったりするので、単純なことをやって方向性を見極めて、そのあとに定めた方向性のもと複雑なことをやっていく手順を経ないと、良いソリューションって仮説を設定してやることができないと思うんですよね。

有園:ありがとうございました。

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対談者プロフィール

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株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
ダイレクトマーケティングビジネスセンター
パフォーマンスマーケティング部
アナリティカルプランニングディレクター
宮腰 卓志
MIYAKOSHI Takashi
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アカデミックなアトリくん
【アトリくんの視点】机上の議論ではなく、非常に実際的なアプローチをされていることに感銘を受けました!あるモデルに全体をあてはめていくのではなく、クライアントごとに異なる状況をモデル化し、運用の要素をインストールしていくことは、まさに「現場百遍」で実際のデータに日々取り組まれているからこそ出てくる本物の知見ですね!「広告会社の人間なら、プログラミングできるほうがよい」本当にその通りだと思います。アトリくんもアトリビューション分野のティンカーベルになれるようにがんばります!宮腰さん、大変貴重なお話ありがとうございました!

【海外コラム】Google Analyticsにおけるアトリビューションモデルの検証

Google Analyticsのアトリビューションモデリングツールについての記事がState of Digitalに掲載されています。

Google Analyticsで利用できる7つのアトリビューションモデルについて、わかりやすい例を用いながら解説されていましたので紹介します。

 

Attribution: What’s available in GA and which should you use?

http://www.stateofdigital.com/attribution-whats-available-ga-use/

 

 

顧客が以下の①〜④の順番で100ポンド相当の商品の購入まで至ったとします。

 

コンバージョンに至るまでの4つのタッチポイントとその順番

①   オーガニック検索をしてクリック。製品、FacebookでのブランドページをLikeする。

②   1週間後Facebookのリンクをクリックし、製品を宣伝しているブログ記事を見る。

③   ブランド名で検索をし、有料の検索連動型広告をクリック。今回は購入する暇がなくお気に入りに登録。

④   サイトにお気に入りから直接アクセスし購入。

 

この場合、Google Analyticsで使える7つのアトリビューションモデルでは、それぞれ以下のように評価されることになります。

 

 

  1. ラストクリックモデル (The Last Click Model)

売上の貢献度の100%を最後の接点へ結びつけているため、今回の場合お気に入りからの直接のアクセスになり、きっかけを作ったチャネルには貢献度がまったく割り振られません。(補足:Google Analyticsでは標準でこのラストクリックモデルを利用していると思われがちですが、標準では2の最後の間接クリックモデルが利用されています)

 

  1. 最後の間接クリックモデル (Last Non Direct Click Model)

顧客がコンバージョンに至る前に最後にクリックしたチャネルに販売の貢献度の 100% が割り振られます。つまり、今回の事例の場合は有料検索広告が100%の貢献度を得ることになります。初回の訪問など誘導したそれ以前のサイトやチャネルには貢献度は割り振られません。

 

  1. AdWords広告の最後のクリックモデル (Last AdWords Click)

この例では有料検索チャネルのラストクリックに収益の100%が割り振られます。AdWords推しになるこのモデルが必要なシチュエーションはなさそうです。

 

  1. 起点モデル (First Interaction)

最初の接点に100%を振り分けるモデルですが、今回の例でオーガニック検索のみが貢献したということは明らかな間違いです。ラストクリックモデルと同様、正しい評価をしているとは言えません。

 

  1. 線型モデル (Linear)

すべての接点に平等に貢献度が振り分けられます。今回の場合、収益換算でオーガニック検索、Facebook、有料検索広告、ブランドサイトのそれぞれが25ポンドずつ振り分けられます。ラストクリックモデルや起点モデルより良いですが、必ずしも正確とは言えません。

 

  1. 時間減衰モデル (Time Decay)

コンバージョンから時間的に最も近いチャネルに価値が高く、最大の収益が割り振られるモデル。起点モデルやラストクリックモデルを使いたくない場合に使えるシンプルなモデルであり1~5のモデルよりも実際の貢献度に即しています。

 

  1. 接点ベースモデル (Position Based)

デフォルトの設定では最初と最後の接点にそれぞれ40%を分配し、残りの20%を中間の接点で均等に配分するモデル。今回の場合初回の自然検索と最後の直接のアクセスに40%が割り振られ、Facebook、有料広告には10%ずつが割り振られます。

貢献度の割り振りに関してはカスタマイズもでき、対象のビジネスに即して「初回の貢献度を下げ、中間の貢献度を高める」といった使い方が可能。

 

 

筆者は以上のように評価した上で、結局完璧なモデルはなく、接点ベースモデルか時間減衰モデルのどちらかを使いつつ、モデルの検証、発展を続けるべきだと述べています。

 

 

喜ぶアトリくん
【アトリくんの視点】Google Analyticsにアトリビューションモデルの比較ツールが実装されてから約1年が経ちますが、まだまだ活用できている事例は多くないと思います。この記事では、分かっているようで曖昧な各モデルを事例を交えて説明してくれているので分かりやすかったです!Analyticsでペイドメディアを活用されている方は、改めてモデル比較をしてみると発見があるかもしれません。

 

 

【海外ニュース】Sizmekがクロスチャネル分析に向けた新しいアトリビューション機能を発表

 

Adotasにて、広告デジタル広告の管理・配信プラットフォーム会社大手Sizmekがクロスチャネル分析に向けた新しいアトリビューション機能、The Sizmek Attribution Suiteを発表したことが紹介されています。

 

Sizmek Announces New Attribution Suite For Cross-Channel Analytics

http://www.adotas.com/2014/06/sizmek-announces-new-attribution-suite-for-cross-channel-analytics/

 

これにより広告主は顧客がコンバージョンに至るまでの経路をどのメディアが最も効果的だったかを測りながら分析することが可能になります。詳細な機能は以下の通りです。

 

アトリビューション・レポートビルダー

ユーザーは、クロスチャネルパスをカスタマイズ、スケジュール化でき、また膨大で複雑なデータを含んだコンバージョンレポートと引き合わせることができる。

 

モバイル端末、クッキーレスな環境への対応

モバイル端末上やクッキーの少ない環境での顧客のコンバージョンへ至るまでの経路をより正確に把握できるようになる。

 

自然検索・インバウンドトラフィック

Sizmek’s Versatagのタグマネジメントシステムにより、自然検索とインバウンドトラフィックのデータを集計しメディアの貢献度を測るのに使うことが可能になる。

 

有料検索

アトリビューションレポートへのSEMのデータの統合が可能。Sizmek Search Connectにより有料検索データはほとんど食い違いなしにKenshoo SearchやMarin SoftwareといったSEMプラットフォームと統合できる。

 

ソーシャルメディア

コンバージョンやコンバージョンへの経路の記録は、Facebookや他のソーシャルサイトの、包括的なパフォーマンス目標に対する貢献度を理解するのに役立つ。

 

 

ウィンクするアトリくん
【アトリくんの視点】3PASの雄であるSizmek(旧:MediaMind)だからこそ非常に意義深いリリースですね!モバイルや動画、ソーシャルなど、さまざまなチャネルが影響力を増す中で、それぞれの経路や影響度が分析できるのは、横断的に配信を管理できるSizmekならではの強みだと思います!

 

 

 

アトリビューション特別対談:SEM特化型プライベートDMPで売上急増 〜笑っちゃうぐらい売上が伸びています〜 トリップアドバイザー杓谷氏・伊藤氏×アタラ有園

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グーグル時代の上司と部下

有園:本日は、ホテル・旅行の口コミサイトのトリップアドバイザーの杓谷さん、伊藤さんを迎え、お話を伺います。トリップアドバイザーでは、リスティング広告いわゆるSEM広告に特化した、データマネジメントプラットフォーム(DMP)のようなシステムを自社で開発しているそうですね。それを使ったリスティング広告の運用を、かなり高度なレベルで実施していらっしゃるとフェイスブックのフィードを見て知りました。その担当が昔、一緒に仕事をしたことのある杓谷さんだと分かり、今回の対談が実現しました。

杓谷:よろしくお願いいたします。私の経歴を簡単にご紹介しますと、新卒でグーグルに入社し、当時はDSOと呼ばれる大手の広告主を相手に営業をする部署に配属されました。

有園:DSOとは、ダイレクト・セールス・オーガニゼーションの略で、アドワーズ広告の法人営業部隊のことですね。グーグルは、社外に対してDSOという言葉は使っていなかったと思います。業界の関係者は知っているかもしれませんが。

杓谷:私が入社した2008年当時、グーグルジャパンは300名くらいで、同期はエンジニアを含めて40名くらいでした。右も左も分からない状態でグーグルに入社し、有園さんをはじめ、アタラの皆さまにはグーグル時代に大変お世話になりました。

有園:そうでしたね。

杓谷:2008年の入社当初は、リクルート、楽天といった日本でもトップクラスの大手広告主の営業を担当した後、組織変更に伴い金融業界、自動車業界を担当するチームに配属され、グーグルには2年半おりました。

有園:職種は、アカウントマネージャーでしたっけ?

杓谷:最初の1年はアカウントマネージャーで、2年目からデータを深掘りするアカウントストラテジストになりました。

有園:上司は小野さんですか。

杓谷:そうですね。25パーセントは小野さんにレポートして、75パーセントは金融業界担当の上司にレポートしていました。

有園:あぁ、当時、グーグルのセールスは業種業界別の組織がメインでしたね。

杓谷:はい。

有園:小野さんは、アドテック東京(ad:tech Tokyo)などに5年連続で登壇している方なので、業界でもご存じの方は多いでしょうね。

杓谷:その小野さんがレポートしていたのが、有園さんでした。

有園:そういえば、小野さんの上司が僕でしたね。小野さんはしっかりしているので、小野さんが上司かと思っていたぐらいでしたけど。

杓谷:今でも覚えているのは、入社当時にOJT(On-the-Job Training:実地研修)でネット広告専業代理店へ行って「キーワードツールで検索数が見られるようになりました」と報告したのが最初の仕事でした。それまでは、キーワードツールで検索数を調べると「とても多い」「多い」「少ない」「とても少ない」くらいしか分からなかったんですが、それが見られるようになりまして。まだ、モバイルは見られない状況でしたが。私が入社した2008年のSEM業界はまだまだそんな時代でした。

有園:ほんと?全然、覚えてないわ。

杓谷:2008年からアドワーズ広告に携わっているというと、30歳前後の年代では古い部類に入る気がします。

グーグルのリスティング広告「アカウントマネージャー」の仕事

有園:グーグルでリスティング広告のアカウントマネージャーというと、自分で入札したりはしないんですよね?アカウントの状況を見て、キーワード追加やタイトル説明文の変更、あるいはキーワードの出稿停止を提案するのが仕事ですね。

杓谷:そのような活動が中心です。キーワードのカバレッジを拡げたり、世の中の検索キーワードのトレンドを広告主に伝えることが仕事でした。印象に残っているのはモバイルです。当時は、モバイルといってもガラケーのことで「モバイルで物を買うの?」と疑問が抱かれるような時代だったので、モバイルの検索キーワードや検索数を調べて広告主に提案していました。キーワードツールはモバイルに対応していなかったので、グーグルのロンドンオフィスで誰か個人のデスクトップで動いているサーバーを利用して、モバイルの検索数を調べていました。

有園:グーグルのロンドンで?

杓谷:はい。グローバル全員で1つのデスクトップのサーバーを使っていたので、複数の人が集中するとダウンしてしまって使えないんです。だから、「この時間は使うので予約」とスプレッドシートで管理していました。しかも、クエリを1回たたくと、返ってくるのに2分くらい待ちました。時間がかかっていましたね。徹夜してキーワードを調べていました。

トリップアドバイザーでのお仕事

有園:いまや、グーグルは入社したい人気の会社だと思いますが、そこを辞めてトリップアドバイザーへ入社され、ビジネスインテリジェンスアナリストという肩書をお持ちですが、どのようなお仕事をされているのですか。

杓谷:2013年2月にトリップアドバイザーへ入社し、当時は、SEM専属で配属され、SEM経由の売り上げの最大化を目標にして、運用に従事しておりました。その後、2013年9月に新しくカントリーマネージャーが就任したことに伴い、売上の推移、トラフィック、マーケティング施策の効果測定、人気の観光施設、口コミの件数など、日本におけるユーザーの動きをモニタリングするビジネスインテリジェンスアナリストを兼務して現在に至ります。

有園:トリップアドバイザーに入社して1年ちょっとなんですね。

世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」

有園:トリップアドバイザーというと、アメリカでの認知度は高く、世界中でも有名ですが、日本では、まだ知らない方もいらっしゃると思うので、簡単にご紹介いただけますか。

杓谷:トリップアドバイザーは、世界最大の旅行口コミサイトを運営しています。旅行関連のサイトでは世界で一番のトラフィックを誇ります。

図1 ユニークユーザー数ランキング

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有園:ワールドワイドで、アメリカでもトップですか。

杓谷:はい。コムスコアのデータ上でアクセス数1位を獲得しています。

有園:トリップアドバイザーのサービス開始は、いつですか。

杓谷:2000年2月に創業し、2005年からはエクスペディアの子会社でしたが2011年にスピンオフして独立企業となり、現在に至ります。日本にオフィスができたのは2008年です。

有園:エクスペディアは、旅行系の予約サイトですね。日本でいう「じゃらん」とかに近いですか。

杓谷:オンライン旅行予約サイトの「じゃらん」「楽天トラベル」とよく比べられますが、トリップアドバイザーのサイト上では直接ホテルの予約をすることができないので、旅行の口コミサイトというカテゴリーが正しいかと思います。「じゃらん」「楽天トラベル」が旅行代理店だとするならば、トリップアドバイザーは旅行の口コミサイトで、『地球の歩き方』などの旅行メディアの方が近いかもしれません。

有園:旅行の口コミサイトということですが、トリップアドバイザーのサイトを見ていると、旅行関連のツイッターかな、フェイスブックかなっていう印象を受けました。「このホテルに泊まったんだけど、良かった」といった口コミが目に留まります。

伊藤:日本にあるサイトで例えると「価格ドットコム」や「食べログ」の旅行版というイメージがわかりやすいと思います。

有園:インターフェースのデザインで勘違いしたのかもしれませんね。私がフェイスブックやツイッターにログインしていて。

杓谷:ログインしていると友達の口コミが見られます。旅行に関するSNSと考えていただいてもよいと思います。

トリップアドバイザー3つのビジネスモデル

有園:どのようなビジネスモデルになっているのですか。

杓谷:3つのビジネスモデルがあります。1つめは、CPC広告モデル。

有園:クリック課金型ですね。

杓谷:グーグルのアドワーズ広告と同じようなモデルです。トリップアドバイザーのサイトには、世界中のホテルが網羅されているページがあり、そちらのページに広告を出稿することができます。大手のトラベルエージェンシーが、ここにCPC広告を出稿しています。その広告をユーザーがクリックするたびに、広告費をいただくというビジネスモデルです。これが、トリップアドバイザーの収益の柱です。

図2 CPC広告

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有園:クリック課金型の広告枠を売っているわけですね。

杓谷:広告主は各ホテルのページ単位で広告を出稿できるのですが、掲載順位は入札額が高い順に上位に表示される、シンプルなオークションモデルです。SEM のような品質スコア等はありません。また、上位3つの広告は大きなスロットで表示されます。

有園:お金をたくさん出せば上に表示されるわけですね。

杓谷:2つめは、ディスプレイ広告です。旅行に関係のある、航空会社やホテルなどの広告主に、バナー広告を出稿していただいております。こちらはCPM 課金モデルです。

図3 CPM広告

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3つめが、各ホテルが自社ページに、電話番号や住所や特典、割引情報などが掲載できる仕組みです。

図4 ビジネスリスティング

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有園:「ビジネスリスティング」ということですね。

杓谷:タウンページに広告を出すようなイメージに近いですね。

リスティング広告の由来

有園:もともと、リスティング広告は、電話帳に広告を出すことから始まっているんですよ。

杓谷:そうだったんですか。

有園:インターネットディレクトリというものがありますね。ディレクトリという言葉は、ビルの入口にあるインフォメーション、何階にどの会社が入っているというような案内は、欧米に行くと「ディレクトリ」って書いてあります。また、電話帳も「あいうえお順」や「ABCD順」に並べることをディレクトリといいます。電話帳で「あいうえお順」に並んでいると、例えば、和田さんは「わ」のページなので、いつも後ろの方のページに掲載されます。和田建設という会社があったら「うち、和田建設なんだけど、お金を払うから一番前のページに載せてよ」って言うかもしれない。商売をしていると、目立つところに載せてほしいわけです。前の方のページに載っているほうが、目に留まりやすいわけですし。「わ」のページまで見ないかもしれない。そこで、順番だと最後の方のページだけど、お金を払えば一番前のページに載せてあげるのが、インターネットディレクトリ、リスティング広告です。トリップアドバイザーだったら旅行系の情報が集まっている場所なので、旅行に関連するサービスを扱っている広告主を目立つところで紹介してあげる、広告を出してあげるわけですね。

杓谷:そうですね。

有園:検索連動型広告でなくても、リスティング広告って呼ぶってわけで、それで「ビジネスリスティング」すね。

杓谷:はい、その通りです。広告業界でリスティング広告と言うと、検索連動型広告をイメージしますが、トリップアドバイザーの「ビジネスリスティング」の名前の由来は有園さんのご説明のとおりです。

トリップアドバイザーの内部

有園:クリック課金型の広告モデルと、CPMといったディスプレイ広告を扱う広告モデル、そして最後のビジネスリスティングという広告モデル。これら3つの広告ビジネスを手がけているわけですね。

杓谷:はい。その3つだけです。

有園:ちなみに、御社は何人くらい、いらっしゃるのですか。ワールドワイドになると大きな会社になるのかなと。

杓谷:いまは、約2,000人ほどだったと思います。ほぼ、アメリカですね。日本に関しては言えませんが。ワールドワイドな数字だけ。

有園:でた!外資っぽい。日本に関しては言えない!

杓谷:アメリカのボストンが本社で、サンフランシスコ、ロンドン、シンガポール、中国にもオフィスがあります。中国では「daodao」という名前で運営しています。

有園:主要な都市にはあるわけですね。

杓谷:でも、本社のボストンはわりと郊外のほうにあるんです。高級住宅地にぽつんと。

有園:ビジネスを回す実動部隊、広告の枠を作って、その枠に広告を出稿してくれる企業を探す営業部隊など、さまざまな仕事があると思いますが、主に、どんな仕事をしている方が多いんですか。

杓谷:エンジニアですね。社員の半分くらいはエンジニアだと思います。主な広告主はオンライントラベルエージェンシーなどに限られてくるので、営業部隊もそこまで多くはないんです。他には、マーケティングチームや、投稿された口コミを審査するチームなどがあります。

有園:ウェブサイトをつくって、運用するためのデータベースや基幹的な仕組みをつくるのは、自社でやっていらっしゃるんですか。

エスタブリッシュなカルチャー

杓谷:サーバーから、なにからなにまで、自社でやってきました。エンジニアが多いということもあり、カルチャーとしては、旅行業界ではなく、ITのカルチャーが強いです。ただ、グーグルのような西海岸の自由なカルチャーとは違って、ボストンのある東海岸特有の、独特な雰囲気があります。

有園:エスタブリッシュなわけですね。

杓谷:はい。エスタブリッシュなカルチャーです。

MITやハーバード出身のエンジニアが多く、みんな頭が良すぎて数字やデータに強く、困ってしまいます。

有園:西海岸の人たちは、何でもオッケーって感じですからね。

杓谷:バランスボールに座って仕事をする世界とはまたちょっと違う印象ですね。ボストンの本社へ行くと、一人ひとりキューブの個室があるといった、少し昔のアメリカの会社の雰囲気です。

有園:Ally McBeal(アリー・マクビール)が出てくる感じですね。

杓谷:すみません。ちょっと存じ上げませんが。

有園:え?知らない?ボストンにある法律事務所で働く女性弁護士、アリーが主人公のアメリカドラマなんだけど。たしか、日本では「アリー my Love」ってタイトルだったと思うけど。

トリップアドバイザーのSEMアナリストのお仕事

有園:エンジニアが、それだけたくさんいらっしゃって、杓谷さんはビジネスインテリジェンスアナリストということですが、どのようなお仕事をされているんですか。エンジニアの方々と一緒に動くことも多いのですか。

杓谷:私は、ビジネスインテリジェンスアナリストとSEMアナリストを兼任しておりまして、どちらかというと、SEMアナリストとしての仕事が大半を占めています。

有園: SEMチームはどのような方がいて、何名くらいいらっしゃるのですか。

杓谷:キーワードを追加したり、クリエイティブを作る際にその言語が分かる者が必要なので、アナリストは各主要言語に一人はいます。また、エンジニアが主要な検索エンジンのAPIを駆使してSEM運用ツールを開発し、そのツールを使ってアナリストが運用しています。さらに、昨年から新たにデータサイエンティストがチームに加わり、データを分析して自動入札のアルゴリズムをアップデートしていくなどしています。

言語の分からない人が多言語を担当することも

 伊藤:ユニークなのは、その言語を分からない人がSEMを担当していることもあることです。例えば、杓谷が中国語とポルトガル語のアカウントを運用することもあります。

杓谷:そうですね。実際には、私は日本のアカウントしか見ていませんが、一人が複数の国、マーケットを担当することもあります。

有園:基本、トリップアドバイザーさんの中では、インハウスでリスティング広告運用しているわけですね。ワールドワイドで、代理店を使っていないと。言語の分からない人が広告文を書くのって難しくないですか?

杓谷:社内にトランスレーションチームがいるので、英語のひな形を使って広告文を書き、多言語に翻訳してもらいます。

システムを自社開発

有園:ということは、トランスレーションチームがあって、SEMのアナリストがいて、エンジニアがいて、データサイエンティストがいるわけですね。そして、リスティング広告を運用するシステムを、御社内で持っているという理解でよろしいですか。

杓谷:はい。アマゾンやイーベイは、自社の在庫とつなげて自動でAPIで広告を出稿するシステムを持っていると思いますが、それと同じように弊社も主要な検索エンジンのAPIとつなげて管理できるシステムを作っています。

有園:具体的に、どのようなことができるのですか。

杓谷:基本的には、マリンソフトウェアのようなツールを自社で内製しているというイメージです。自動入札機能や弊社のデータベースと連携した高度なレポーティング機能だけでなく、新規で追加したキーワードが自動的に適切な広告グループに入稿されるシステムなどがあります。検索エンジンをまたいで使えるアドワーズエディターと言えばイメージが掴みやすいかもしれません。

図4 運用のイメージ

キーワードの選び方

有園:リスティング広告って入稿、入札、レポートって業務が発生しますが、キーワードを入れるのは入稿の段階です。キーワードを選ぶのは誰ですか。

杓谷:アナリストが選びます。ただ、キーワードツールを使ってキーワードを取得するのではなく、トリップアドバイザーのホテルのページに、どんな検索クエリで訪問したのかを保存しているので、そのデータを使ってキーワードの候補を取得します。

有園:例えば、トリップアドバイザーに、ホテルオークラが紹介されているページがあって、そのページに、どんなキーワードで検索流入してきているのか、リファラーのキーワード情報があるってことですね。

杓谷:ホテルのページに固有のIDがあるので、そのIDとリファラーのキーワードを紐づけて入稿しています。

毎月20パーセントは新しいキーワード、クエリが生まれていく

有園:昨今、リファラーのキーワードがとれなくなっていると思うのですが。

杓谷:はい。かなり大きな問題です。何年も前からSEMを運用してきたので、主要キーワードはカバーできていますが、理論的には一般論として、毎月20パーセントは新しい検索クエリが生まれていくわけなので、その20%がキャッチアップしづらくなるのは弊社にとっては大きなマイナスです。

有園:グーグルさん、なんとかしてほしいですね。

杓谷:サンフランシスコのオフィスに行ったときに、「なんで、こんなことになっているの」と聞いたら、スノーデンのせいだって言ってました。

有園:スノーデンって、ロシア亡命中だったかな?CIA元職員のスノーデンですか?

杓谷:冗談で言ってただけかもしれませんが(笑)

広告文の作り方

有園:入稿するキーワードは自動で取得して、データアナリストが分析して、検索ボリュームを考慮して入稿していくわけですね。広告文は、どうやって作られていくんですか。

杓谷:2行あるディクスリプションは定型があって、タイトルはキーワードインサーションを使っています。KPIが売上なので、広告文が多少おかしくてなっても、クリックされやすく、売上が発生しやすいということで、このような使い方をしています。日本ではキャンペーン構成を細かくグルーピングすることで、キーワードインサーションを使う広告主は少なくなってきている状況なので、少し対照的ですね。

有園:キーワードインサーション機能を自動的に。

杓谷:はい。そのホテルに対して何件レビューがあるか、とか、ある地域に何件ホテルがあるといった数字を社内データベースから引っ張ってきて、広告文に自動的に入れるようにしています。APIのアドパラメーターのような機能を使っています。新たに自分で広告文を作るときは、「ここはホテルの名前」、「ここはホテルのレビューの件数」とワイルドカードを指定しておいて、入稿しています。具体的なホテル名が文字数の関係で入れられないときは、別の広告のIDを指定しておくことで、自動的に文字数が制限内に収まるように調整して入稿されるようになっています。

有園:グーグルのアドワーズ広告にも同じような機能がありますよね。キーワードインサーションで、長すぎる名称はジェネラルな方を出すようにと。

APIの活用

杓谷:SEMの運用は自社開発したツール経由で行われるので、基本的にはAdWords APIを使用して運用しています。ヤフーも同様です。

有園:Yahoo! JAPANのAPIに対応しているわけですね。

杓谷:全世界の検索エンジンのAPIに対応しています。

有園:ヤフーって、Yahoo! JAPANとヤフー本体がありますね。

杓谷:検索エンジンが違いますね。アメリカの場合はBingを使って、日本の場合はグーグルを使って。でも、APIはグーグルのものではなく、Yahoo! JAPAN独自のものを使っていますね。グーグルの検索エンジンを使いはじめて二年弱くらいだと思いますが、日々どんどんAPIも変わっていきます。その対応が難しいです。また、サーバーがボストンと日本で地理的に離れているし、インフラの環境も違うので、Yahoo! JAPANのキーワードの入札価格大量にアップデートしようとすると、グーグルに比べてだいぶ時間がかかります。そういうところが、ボトルネックになっています。ただ、Yahoo! JAPANはAPIを公開しているので、良いほうです。ロシアの検索エンジンЯндекс(ヤンデックス)や韓国の検索エンジンNAVER(ネイバー)、中国の検索エンジンBaidu(バイドゥ)などは、なかなか難しい。NAVER(ネイバー)に関しては、韓国企業にしかAPIを公開しない規定があります。

伊藤:ユーザーインターフェースは韓国語でしか提供されていません。

杓谷:日本でも、韓国の広告代理店の日本支社に頼めば使えるかもしれませんが。また、NAVERは完全一致しかキーワードがないので、「ハワイ ホテル」と「ホテル ハワイ」を両方入れなければいけないんです。あとは、インプレッションしなくなったキーワードは、ある一定期間を過ぎると、自動的に削除されてしまいます。キーワードはSEMでは資産なので、それが消えてしまうのはやりにくいですね。

伊藤:しかも、韓国には、SEOがほぼないので、余計に辛いです。

杓谷:NAVERのコンテンツを検索結果に優先的に出しているので、SEOがやりにくいです。伊藤を中心としたMarket DevelopmentチームがAPACのSEOのトラッフィク等も見ているのですが、NAVERは難しく、韓国市場では他の国の成功事例が応用できないので苦労しています。

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広告キーワードのグルーピング

有園:入稿したキーワードがあり、それに対するタイトル説明文はあらかじめ用意したものに当てて出稿していかれるわけですが、広告キーワードのグルーピングは、どのように行っていますか。

杓谷:キャンペーンは、ほぼ一つです。キャンペーンを細かくわけなくても社内データベース上にID がふられていてデータが取り出しやすいので、キャンペーン構成はざくっとしてます。これはAPIを使用して運用している広告主には共通のことだと思います。広告グループはホテル名または地域名で1つ作っています。トラフィックの多いホテルについては「ホテル 安い」「ホテル 五つ星」など、検索ワードの種類によって分けることもありますが、基本的には1つのホテル、地域に、1つの広告グループです。

有園:施設名で分けているのですね。レストランなどのコメントは、レストラン名で分けているのですか?

杓谷:今のところ、レストランのページに対してSEMは行っていません。弊社のビジネスモデルは、ホテルページのCPC広告をクリックしてもらうことで成り立っていますし、CPC広告のクリックをコンバージョンとしています。、レストランや観光施設など、広告枠のないページには広告を出稿していません。

有園:イタリア旅行などのキーワードにも、広告は出していないのですか?

杓谷:「旅行」というキーワードはホテルより広い意味のキーワードで、必ずしもユーザーはホテルを探しているわけではありません。したがってトラフィックはあるけれど、コンバージョンレートが低い傾向にあるため、積極的には出稿していません。

有園:ということは、「ホテル 格安」や「ホテル 五つ星」などホテル周りのキーワードと、ホテル名の広告グループを作っているわけですね。日本だと数百万キーワードになりますよね。

杓谷:ヤフーとグーグルを合わせると、そのくらいになります。

入札ロジック

有園:それらがすべて自動で入稿され、その後の入札もヤフーとグーグルのAPIを通じて自動で行われているわけですね。入札は、どのようなロジックで行われているのですか。

杓谷:APIを通じて自動入札をすること自体は、どこのツールでもできますが、入札ロジックが肝だと思います。変数が多いんです。旅行業界は季節によってトラフィックの変動の激しい業界ですし、旅行代理店の入札価格も変わります。

有園:それは、リスティング広告の入札で競合相手になる旅行代理店のことですか。

杓谷:リスティング広告の競合の入札もそうですし、コンバージョンに設定している弊社のCPC広告の入札価格も変動します。それによって、SEM経由での売上やコンバージョンレートも変わってくるので、日々最適な入札価格を計算し直す必要があります。

有園:3つあるビジネスモデルの中の、クリック課金型の入札額が季節によって変わるわけですね。御社の収入も上がったり下がったり激しいと。

 

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独自の計算式で入札価格を決定

杓谷:季節やオンライン旅行代理店の在庫状況によって変動が激しいのでROASが変わってしまうんですよね。それに対応するために、独自の計算式を作って入札しています。過去のデータを2年分くらいためておいて、それをもとに適切な入札価格を計算して入札しています。

有園:たとえば、夏のこの時期に、「ホテルオークラ」というキーワードで、トリップアドバイザーでリスティング広告を出稿するには、どのくらいの価格で入札すれば良いかを計算式ではじき出し、その価格で入札しているということですか。

杓谷:はい。

有園:数百万のキーワードを運営して、それらすべてが瞬時に計算されているわけですね。なおかつ、入札するわけですから、「このくらいだったら損をしない」といった計算もされるわけですね。

杓谷:損益分岐ラインの、ぎりぎりのところで入札するようにしています。

有園:損益分岐ラインのぎりぎり? 損する場合もあるし、儲けすぎる場合もあると思うのですが、儲けすぎるのはよくないのでしょうか。

杓谷:トリップアドバイザーのSEM運用のゴールは「ROAS 100%をキープしながら売上を最大化させること」です。儲けすぎるということは、もっと入札価格を高くしてクリック数を増やして、売上を最大化する余地があるということなので良くないんです。

有園:粗利がたくさんになってはいけないと。

杓谷:まだ売上を伸ばすポテンシャルがある、ということですね。

有園:そのときは、自動的にキーワードが追加されるのですか。

杓谷:いえ。入札価格が変わります。たとえば、ゴールデンウィークに入って急に売り上げが上がり、プラスに転じて儲けすぎた場合は、儲けた金額に応じて計算し直して「もうちょっと高めに入札価格を変更しよう」とアルゴリズムが判断して入札していきます。

在庫連動

有園:入札のロジックの中には、よくECなどでは「在庫連動」があります。私は昔、ユニクロを担当していて、季節の変わり目、2月などは、冬物が売れていて、春物はまだ売れない時期なんです。でも、冬物で「コート〇○」って検索しても在庫切れの場合が多い。ユニクロが、そのキーワードでリスティング広告を出していて、クリックされて入ってきても儲からない。課金されるだけで、お客さんは「在庫ないじゃん」って思ってブランドイメージを壊してしまうこともあります。だから、在庫との連動は重要で、昔は手作業で行っていました。いまは、APIで対応していますが、ホテルの場合も同様ですか?

杓谷:ホテルの名前が変わったり、ホテルが無くなったりするので、そういうキーワードは自動的に停止するようにしています。

有園:自動的に停止するってことは、ホテルのデータベースがあって、フラグが立っているのでしょうか。「このホテルは名前が変わりました」とか「このホテルはトリップアドバイザーで扱わないことになりました」のように。

杓谷:はい。

データベースを参照して、自動的にキーワードを止める

有園:そのデータベースを参照して、自動的にキーワードを止めたりしているわけですね。

杓谷:この他にも、弊社のホテルページに掲載している広告の入稿状況によって自動的にキーワードを停止する場合もあります。例えば、ホテルオークラのページに、2月は広告主がたくさん広告を出稿していたけれど、3月はどこも出稿しなかったというケースもあります。それではSEM を出稿していても売上が上がらなくなる可能性が高いので、自動的に止めてしまいます。ホテルの施設単位で広告グループを作っているので、広告グループのステータスを自動的にオフにします。その結果、マネタイズできるページだけにSEMの広告が出稿されるという仕組みになります。

有園:完全に御社のクリック課金型の広告枠に出稿している、ホテルまたは広告代理店等の広告主がいなければ、リスティング広告を止めてしまうわけですね。

杓谷:はい。

トリップアドバイザーのリスティング広告の規模

有園:それでも数百万キーワードあるわけですから、御社のクリック課金型広告は売れているわけですね。売れていないとリスティング広告はできませんから。グーグルのワールドワイドの売り上げの、けっこうな売り上げをトリップアドバイザーさんが占めていることを、グーグルに勤務していた頃にも聞いていました。

杓谷:具体的な数字に関することはお答えできませんが、先日、グーグルがホテルサーチを始めるというニュースが話題になっていました。その記事の中で、Booking.com(ブッキングドットコム)やAgoda(アゴダ)などの親会社であるPriceline(プライスライン)と、Expedia(エクスペディア‎、hotels.com の親会社でもある。)で、グーグルの5パーセントの売り上げを上げているというニュースが出ていました。弊社は、そこまでの売上を占めていませんが、旅行業界がグーグルの売り上げの大きな割合を占めていて、トリップアドバイザーはその中でも比較的上位にいます。

有園:グーグルの売り上げが、仮に3兆円くらいとして、そのうちの5パーセントが1,500億円くらい。

ワールドワイドで、数十億から数百億くらいリスティング広告で使っている可能性があるわけですね。

杓谷:さすが有園さん、するどいですね。すぐに計算されてしまう(笑)

SQLでレポート作成

杓谷:あと弊社のSEMツールで特徴的なのはレポーティングですね。弊社のSEM のキャンペーンは、さまざまな検索エンジンをまたいているんで、それぞれの管理画面からレポートを出しているといくら時間があっても足りません。SQLのデータベースの中にSEMの表示回数、クリック数、コスト等のパフォーマンスデータをすべて保存して、それをSQL のクエリを書いて引っ張り出す形になっています。SQLを書けないとアドワーズ広告の運用ができない状態です。

有園:独自に管理画面を用意しているわけではなく、SQLでデータを引っ張ってきてレポートに出すわけですね。御社内で使うレポートで、外部に出すわけではないですからね。

杓谷:僕は基本はSEMのデータを見ていますが、リターゲティングやアフィリエイト等の広告の配信結果等もデータベースとつながっているので、その他の広告のキャンペーンも分析することもできます。DMPという言葉が日本で流行る前から取り組んできました。

売上が昨年比60パーセントアップ

有園:リスティング広告に特化したDMPを作って、どのくらい売り上げに貢献していますか。

杓谷:いままで、入札金額は各アナリストが自由に決めていましたが、いまは、データサイエンティストチームがデータを分析し、微分積分の式がPDFで送られてきて「今度はこういう入札アルゴリズムでいこう」と新たな入札方法を試したりしています。その結果、2013年に比べて60パーセントから70パーセント成長している状況です。8月までに2倍の成長を目指しています。

有園:すごいですね。システムを入れてからですか?

杓谷:データサイエンティスト達がアルゴリズムの改善に着手し始めてからですね。データサイエンティストが入ったのは半年前です。ランディングページをCPC広告がクリックされやすいレイアウトに変えたり、地道に行っています。

伊藤:グローバル全体で見ても、SEMは笑ってしまうくらい伸びています。

有園:笑ってしまうくらい伸びているんですね。リスティング広告をやっている広告主であれば、自社でシステムを作ったほうがよいですか?

サーチは広告主主導で伸びる

杓谷:そう思います。日本の広告主は、自社でシステムを作るケースは少ないようですが。グーグルの方と話していても、日本の広告主や代理店から「サーチはやりきった」という声を聞くそうですが、僕は違うと思います。サーチは新たなステージにいくというか。これからはDMPをうまく利用していくことでまだまだ飛躍的に伸びていくのではないかと予測しています。

有園:リスティング広告の出稿データがあり。過去のキーワードごとに、いくらで課金されて、いくらのCPAで、コンバージョン数がいくつで、クリック数なども残っていて。それと、御社の広告枠の商品データがあって。いまの話だとウェブページなども加味して分析しているそうですが。それらが同じデータベースなのか分かりませんが、そこにデータサイエンティストを投入することで、笑っちゃうくらいリスティング広告経由で売上が伸びているわけですね。

杓谷:はい。

Trip Advisor

リスティング広告運用の課題

有園:これまでやってきての課題は、どのように感じていますか。

杓谷:アドワ―ズ広告の運用を自動車の運転に例えると、手作業での運用は通常の自動車の運転みたいなものです。素人でも免許を取れば一人で運転できます。一方、APIをつないでガリガリやるのはF1のようなもので、素人は運転できません。APIをつないでの運用は、アルゴリズムを理解しないと、正しく運用できませんし、数学や統計の知識がないと、深いところまでできません。僕もアカウントを触るのに、一か月くらいはかかりました。初期のラーニングコストがかかりますね。

有園:社員を教育しなければならないわけですね。

杓谷:研修が大変です。SQLであったり、社内のデータベースの構造や社内だけの専門用語のなど、細かいこともいろいろ覚えることがあります。

伊藤:数学が分からないと厳しい世界になっています。

杓谷:データサイエンティストたちは、ベイジアンネットワークや、Rでグラフを出したり。

有園:最近みなさん、Rやベイジアンって言いますね。御社もベイジアンを使って分析しているのですね。他に課題はありますか。

杓谷:キーワードインサーションを使って広告を出してるので、ときどき広告の文章がおかしいときがあります。クリック率が良いので結果的に売上もキーワードインサーションを使わない広告よりも高かったので、そのまま使っているのですが、ユーザー・エクスペリエンス的にどうかなと思うときがあります。売上至上主義になると、その点がおろそかになりがちなのが問題かなと。あとは、これだけ売上を最大化するためにデータを分析しているにもかかわらず、まだまだアトリビューション的な発想が全くありません。そういうところも本当は見ていかなければいけないと思います。オーディエンスデータなどを使ったターゲティングも必要です。いまちょうど検索広告向けのリマーケティング「RLSA(Remarketing Lists for Search Ads)」をトライアルではじめましたが、それを使って今度、ホテル以外のキーワードとかにも、もしかしたら出稿していけるのではないかなと思うのですが、売上がどのくらい増えるとか予測が成り立ちづらいので、そういうところにはなかなか手を出という課題があります。

多くの広告主はラストクリックアトリビューションすらできていない

有園:アトリビューションとオーディエンスデータの話ですが、杓谷さんはアトリビューションというと、ラストクリック以外の経路データを見ると言う意味でお話しされたかと思います。そういう風に広めてしまったので、それはそれで良いのですが、ラストクリックだけで見ると言うアトリビューションもあります。「ラストクリックアトリビューション」という言葉がありますね。経路データを見るのだけがアトリビューションではありません。実は、ラストクリックを見ることすら、きっちりやっていない広告主は結構多いです。媒体社のコンバージョンタグでデータがあがってきて、グーグルやヤフーの管理画面に出てくるCPAを見て入札するのが一般的です。

杓谷:そうかもしれませんね。

有園:それって、たとえば、同一ユーザーが、ヤフーで検索してトリップアドバイザーのページに入ってきて、その後に、その人がグーグルで検索してトリップアドバイザーのページに入ってきて、グーグルでコンバージョンした場合、ヤフー側でもヤフーのリスティング広告をクリックしていて、グーグルでもグーグルのリスティング広告をクリックしているので、なおかつ30日以内にコンバージョンが発生していると、両方にコンバージョンのフラグが立ち、ヤフー側のレポートでも1コンバージョン、グーグル側のレポートでも1コンバージョンとなります。でも、御社は媒体社のレポートを使っていないので、この現象は起こっていないと思います。そういう重複カウントが発生していないので、正しくラストクリックアトリビューションをやっているということになりますよ。

杓谷:そうですね。

有園:多くの広告主は、ラストクリックアトリビューションすらできていない。サイトカタリストを入れて、サイトカタリスト上で取得したデータを使って毎日、入札管理をしているかというと、していないんです。連動していない。結局、入札管理は、サイトカタリスト上で取得したデータではなく、媒体社の管理画面を使って、そのデータを使っていて、サイトカタリストのデータは月単位のレポートで使うだけ。運用に全然反映されていないんです。データを厳密に考えていますかって話なんです。そこに、10パーセント、20パーセントのずれがあって、その10パーセント、20パーセントのずれを制御していくと、御社みたいにシステマティックにCPCを計算して入札していくと、その分だけ無駄が省けて成長します。20パーセントって大きいですよ。

杓谷:大きいですね。

有園:そういうことを御社はちゃんとやった結果、60パーセントくらい伸びているわけですよね。いまのは単なるラストクリックの話ですが、そこの20パーセントをきっちりとっていくこと、また広告文はキーワードインサーションさせることで、クリック率も上がるわけですし、そのような細かいことをひとつひとつ積み重ねて60パーセントの伸び率を達成されたのかなと思います。御社はアトリビューションをやっていないとおっしゃいましたが、経路を見ていないだけで、ラストクリックアトリビューションをしっかりやっていると思います。

杓谷:「カスタマージャーニーを追っていない」という表現の方が適切だったかもしれませんね。

オーディエンスデータ

有園:そうかもしれませんね。アトリビューションをやっていないと言ってもいいんですよ。ただ、他社に比べるとやっている方になりますね。御社の場合、オーディエンスデータって、私もフェイスブックログインを使ったり、会員ログインを使ったりしますが、そのCookieの履歴は追えるのでしょうか。

杓谷:データベース上にはあると思います。

有園:そうすると、たとえば、私がリスティング広告経由でトリップアドバイザーのページに入ってきたら、フェイスブックにログイン状態でなくても、有園がきたって分かる状態になっていますよね。

杓谷:そうです。

有園:であれば、有園が一回ログインしていれば、40代の人だって分かるので、40代の人に向いたランディングページに切り替えるとか、広告枠も、40代はホテルオークラに泊まるけれど、20代は他のビジネスホテルに泊まるとかが分かっていたら、そこも切り替えることができたりするわけですね。

杓谷:今後はそういうことも、できるようになると思います。

有園:それを使ってRLSAを使うときに、顧客の会員情報と紐づけて表示を切り替えたりできるようになるわけですね。実際に、マリンソフトウェアはブルーカイ(BlueKai)と提携して、BlueKaiのデータを使って30代の女性って分かっていれば、その30代の女性が検索したときは、30代の女性に適した広告文に変えることを、RLSAとマリンソフトウェアとBlueKaiが連携して出来るようになっています。御社の中には、ブルーカイに該当するようなユーザー属性情報も会員であれば持っていると思うので、それと御社の入札の仕組みとRLSAとAPIを使えば出来るのかなと思いました。

杓谷:今後の課題というか、そこまでできたらすごいですよね。

やっぱりサーチでしょ

有園:おもしろいですね。結論から言うと、それなりに年間億単位でリスティング広告をやっているところなら、自社でシステムを作ったほうがよさそうですね。その方がリスティング広告経由の売上が圧倒的にあがる。データサイエンティストを育てなければなりませんが。

杓谷:そうですね。いままで、SEMアナリストと言われる人たちは文系が多かったのですが、そこに理系の人たちも加わって、車に例えるとドライバーとメカニックが二人三脚でいけると、良いのではないかなと思います。

有園:まだまだ成長の余地ありと。サーチこそ面白いのではないかと。

杓谷:最近は、サーチブランディングという話も出てきて、一見、コンバージョンと関連がなさそうなキーワードにも広告を出稿してリードをとってくるという考え方があります。僕らは昔から知っていますが、一部ではそのような話も最近出てきているようです。そういうことも、データを見ながらやっていけるのではないかと思っています。やっぱりこれからもサーチだと思います。

有園:ありがとうございました。

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■対談者プロフィール

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トリップアドバイザー株式会社

ビジネスインテリジェンスアナリスト

杓谷 匠 (Shakuya Takumi)

 

早稲田大学第一文学部卒業後、08年にグーグル日本法人に入社。

自動車、金融業界のアカウントストラテジストとして、業界に特化したデータ分析業務に従事。

2013年2月にトリップアドバイザーにシニアSEM アナリストとして入社し、SEM の運用に携わる。

9月よりビジネスインテリジェンスアナリストとしてトラフィック、売上などの広範なデータ分析に携わる。

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トリップアドバイザー株式会社

マーケットディベロップメント(APAC)マネジャー

伊藤彰彦 (Ito Akihiko)

 

東京大学経済学部卒業後、09年に東京大学大学院経済学研究科を修了し、ソニーに入社。

オーディオ・ビデオビジネスの商品企画として、主に新興国を対象とした新商品の企画に従事。

2013年1月にトリップアドバイザーへ入社し、アジアパシフィック地域の商品を担当。

サービス改善案の企画、実装、テスト、分析を繰り返してビジネスを成長させる役割を担う。

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アカデミックなアトリくん
【アトリくんの視点】旅行業界のような変数もキーワードも多い業界でリスティング広告を運用していくのは非常に大変だと思いますが、データベースとの連携や損益分岐点に合わせて自動入札する仕組みを開発していたのですね。すごい! アトリくん的にも、アトリビューションマネジメントの成功のポイントが実は検索連動型広告の改善だったりすることが多いので、「サーチはやりきったと聞くことが多いが、違うと思う。」という杓谷さんの言葉は、納得感がありました!杓谷さん、伊藤さん、大変勉強になりました。ありがとうございました!

【海外コラム】 Googleの検索ユーザー行動経路のアトリビューションモデリングツール4つの不足点

 

iMEDIA CONNECTIONにて、これまでのGoogleの提供する検索ユーザー行動経路のアトリビューションモデリングツールの欠点を簡潔にまとめた記事が掲載されていました。

 

4 shortcomings of Google’s attribution modeling tool
http://www.imediaconnection.com/content/36259.asp#CTJL36cDssuOgtSJ.99

 
今年初め、GoogleはAdWordsの検索ユーザー行動経路分析機能にアトリビューションモデリングツールを追加したことで、コンバージョンの価値やキャンペーンごとの差異を加味したアカウントマネジメントの促進を可能にしましたが、このGoogleのアプローチにはいくつか不足している点も存在しています。

 
1.検索連動型広告のみに焦点を置いている
Googleの検索ユーザー行動経路のアトリビューションモデリングツールはAdWords用であり、検索連動型広告のみを測定しており、他社のディスプレイ広告、アフィリエイト広告、ソーシャル広告、リターゲティング広告など他のチャネルデータを組み込んでいません。

 
2. 検索行動の全てを測定できるわけではない
コンバージョンに至るまで他のチャネルを見逃しているのに加え、このツールは検索ユーザーの行動経路の全域を網羅していません。つまり、Googleで検索されたキーワードでのデータのみを収集する一方、BingやYahoo!などの他のサーチエンジンからのキーワードは網羅していません。

 
3. 接点ベースの結果のみに焦点を向けている
Googleの検索ユーザー行動経路のアトリビューションモデリングツールは接点ベース(起点と終点それぞれに予算枠の 40% が割り振られ、残りの 20% は中間点に均等に割り振られます)モデルの結果のみを測定する傾向にあり、広告クリエイティブなど他の要因を組み込んでいません。顧客企業のアトリビューションモデルを構築するにあたっては、接点ベースのモデルは要因の一つでしかなく、他の要因も極めて重要な指標になってきます。

 
4. マーケターは完全に主観でモデルを選択している
どのモデルが最適であるかをマーケターは完全に主観で選択しなければならなくなっています。Googleの検索ユーザー行動経路のアトリビューションモデリングツールは5種類のモデルを提供していますが(ラストクリック・ファーストクリック・線型/均等・時間減衰・接点ベース)、マーケターは何のロジックも知らぬまま自身のフィーリングや考えで最大3種類のモデルを選択することになっています。全てのデータを厳密に処理して最適なモデルを選択する、アルゴリズムを使ったアトリビューション・アプローチとは違い、あくまでマーケターの主観で選択しています。

 

 

 

 

アカデミックなアトリくん
【アトリくんの視点】Googleの検索ユーザーの行動経路のアトリビューションモデリングツールが他のサーチエンジンのキーワードを網羅していないとなると、特に日本ではYahoo!検索も人気なため完全とは言い難いかもしれません。ただ、Googleは5月初旬にクロスチャネル・アトリビューションの大手会社であるAdometryを買収したので、従来のアトリビューションモデリングツールの改善・強化が期待されますね!

【海外ニュース】Convertroが欧州他へ進出

Convertro Brings its Attribution Solution to EMEA

http://performancein.com/news/2014/04/09/convertro-brings-its-attribution-solution-emea/

マルチタッチ・アトリビューション会社のConvertro(米国)が、アトリビューション機能を新たにEMEA地域(欧州・中東及びアフリカ)へ拡大させることを表明しました。

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アカデミックなアトリくん
【アトリくんの視点】ここで注目すべきは、Convertroが日本よりも先に中東・北アフリカ地域への進出を計った点です。Zenith Optimediaによれば、12~2013年にかけての地域別広告費支出の伸び率は、日本の2.4%に対し、MENA地域(中東・北アフリカ)は倍以上の5.5%を記録。14年には6.8%、15年には8.9%の広告費支出が予想されています。ConvertroのCEOであるJeff Zwelling氏の考えと同社の行動力が、先見性という形で展開するか、今後に注目していきたいと思います。