アタラ

アトリビューションをテーマにしたパネルディスカッション

2012年7月24日-25日に開催される日経BP社主催のイベントで、アトリビューションをテーマにしたセッションが行われます。

7/25(水)15:10 ~ 16:00
「研究から実践のフェーズへ『アトリビューション』が生む効果と課題とは」

【モデレータ】アタラ COO 有園雄一
【パネリスト】
デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山 隆治 氏
博報堂  宮腰 卓志 氏
リクルート  小川 卓 氏

「モバイル&ソーシャルWEEK 2012」「スマートフォン&タブレット2012夏」
http://expo.nikkeibp.co.jp/msw/2012/program/#a23
会場:六本木アカデミーヒルズ49
主催:日経BP社

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アタラとデジタルインテリジェンス、マス広告を含む「トータルアトリビューション分析手法」開発で提携

<企業リリース情報>

平成24年5月23日
アタラ合同会社

アタラとデジタルインテリジェンス、マス広告を含む「トータルアトリビューション分析手法」開発で提携

マーケティングテクノロジー開発企業のアタラ(本社:神奈川県横浜市、CEO:杉原剛)と、総合デジタルコンサルティングを提供するデジタルインテリジェンス(本社:東京都渋谷区、代表取締役:横山隆治)は、マス広告を含む、広告効果の評価に関する「トータルアトリビューション分析手法」の開発領域で提携することに合意しました。

アトリビューション分析を提供できるアタラが、デジタルマーケティングとマス広告の知見を有し、総合的なデジタルマーケティング・コンサルティングを提供するデジタルインテリジェンスと提携することにより、まず、リスティング広告やディスプレイ広告といったデジタル広告、ソーシャルメディア、自社サイト、CRMなどを含む、デジタル施策を横断したアトリビューション分析を共同で提供します。これに加え、マス広告を含む広告全般を統合したアトリビューション分析手法を共同で研究・開発していきます。

これまで、分析が難しかったテレビ、新聞、雑誌、ラジオといったマス広告やOOH(屋外広告・交通広告)も、アトリビューション分析の対象とすることで、マーケティング目標に対する各媒体の貢献度を正確に測定、評価できるようになります。広告主はこれまで以上に、自社で設定したKPIに対する各広告の効果を知り、より正確に広告を評価できるようになるため、効率的な広告出稿の統合管理が可能となります。

また、リスティング広告やDSPを利用した入札型ディスプレイ広告の運用、Web解析やアトリビューション分析などのスキルをもつ人財の育成にも注力します。単一分野の専門知識だけでは、企業のマーケティング効果の最大化が困難になっています。各施策を効率的に運用し、それぞれの特徴を理解した上で評価し、最適な予算配分をおこない、適切なタイミングで適切な施策を投下できる人材を育成します。

さらに、取得したビッグデータを解析し、顧客情報に関連づけた大規模なマーケティングデータ分析も実現します。広告・CRM・ソーシャルメディア・自社サイトの顧客ID、会員ID、メールアドレス、クッキー、ソーシャルアカウントを結びつけ、ビッグデータ解析による次世代マーケティングデータの分析と有効利用を推進します。

アタラは、アトリビューション分析のリーディングカンパニーです。独自のアトリビューション分析メソッド「アトリビューション・スコア」「アトリビューション・ランク」を開発し、適切な予算配分でマーケティング・キャンペーンの全体最適化を支援する、アトリビューションコンサルティングサービスを提供しています。
アタラでは、デジタル広告だけでなくマス広告を含むトータルの広告データを活用した、新しいアトリビューション分析手法を開発してまいります。

ATARA, LLC(アタラ合同会社)
[代表者] CEO 杉原剛  [設立] 2009年09月10日  
[URL] http://www.atara.co.jp/
[所在地] 〒225-0004 神奈川県横浜市青葉区元石川町3712-12-D
[事業内容]・Webを活用したテクノロジー・ソリューションの開発 ・Webマーケティング戦略立案、導入、運用コンサルティングサービス ・企業のデータ分析コンサルティングサービス
■報道関係の方のお問い合せ先  広報担当  直井(なおい) E-mail: pr@atara.co.jp
■サービスに関するお問い合せ先  セールス担当  有園(ありぞの) E-mail: sales@atara.co.jp

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アトリビューション特別対談:株式会社イプロス友澤大輔 × アタラCOO有園雄一

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特別対談です!今回は、株式会社イプロスの友澤大輔さんに、今までのご経歴の中におけるアトリビューションマネジメントへの取り組みや現在、将来展望などを伺っていきます。

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アトリビューションは日本の広告市場の活性化のために必要だ

有園:今回は、イプロスに転職された友澤大輔さんお迎えしてお話を伺います。友澤さんは業界で有名なので、ご存知の方も多いと思いますが、改めて自己紹介をお願いいたします。

友澤:友澤大輔と申します。社会人暦は18年ほどになります。元々は、ベネッセに在籍しており、DMやインターネットサービス、CRMの立ち上げを行っておりました。その後、プライスウォーターハウスというCRM系のコンサルティング会社を経て、ニフティへ移った後、リクルート、楽天へ行きました。

有園:リクルートに入られたのは、いつ頃ですか?

友澤:2005年頃です。リクルートは沢山の広告を扱っていますが、第三者配信の取り組みは日本初ではないかと思います。私は、アドテクノロジーを事業成長の糧にする実践的な取り組みとして第三者配信による全社でのネット広告予算の最適配分を実践し、ARINAというMVPのような賞をいただきました。そこから、深くデジタル広告の運用に関与するようになりました。

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有園:私が友澤さんの名前を知ったのはリクルート在籍時だと思います。リクルートは独自で第三者配信をサービスとしてやっていらっしゃるのですか?

友澤:そうです。今、リクルートでも独自のアドネットワーク事業をやっていますが、その前進として全社のネット広告費の最適化を推進するプロジェクトやっていました。リクルートは自らが広告主であり、媒体社であるという特殊なポジションでした。このポジションを上手く活かして、いかに、ユーザーとのコミュニケーションを最適化するか、新しい集客手法の開発に取り組むか。それが命題でした。独自にアドテクを活用し、データを取得して改善する日々でした。それに挑んでいたのがリクルートの初期の時代ですね。

有園:その後はどのような活動をしていらっしゃったのですか?

友澤:2011年までは、IMO、IM室という全社のネットマーケティングのスタッフ部門的立場で全社横断的に、様々な事業の重要案件に関与してきました。このなかでもアドエクスチェンジやAudience TargetingやAttribution分析などに従事し、2011年にご縁あって楽天へ行きました。楽天では、広告事業企画室室長という立場で全体戦略立案やオーディエンスターゲティングなどの開発に関与しました。その後、家庭の事情で職を辞し、今に至るという流れです。

有園:イプロスへ転職されたのが今年(2012年)4月ですね。イプロスではどのような活動をされているのですか?

友澤:キーエンスグループであるイプロスは製造業のマッチングビジネスを展開している企業で、月間数百万のユニークユーザーを有しており、約数万社のクライアントを有しています。製造業に特化したマッチングビジネスで業績も非常に好調です。私は、グループ全体のインターネットサービスの改善や新しいサービス開発などの統括をさせていただいております。

有園:引き続き、インターネットを中心としたマーケティングに携わっているのですね。

友澤:そうですね。今まで、ずっとBtoCをやってきました。なかでも結果的に、EC系のようなダイレクトレスポンス型事業モデルに長く携わってきました。ダイレクトレスポンス型事業モデルは効果がはっきり分かるぶん、効率性を求めるようになります。そこでの経験から、効果の高いインターネット媒体による集客運用ノウハウを身につけました。広告主の立場では「CPC」「CPA」などわかりやすい指標で運用することで効果を出すことができました。しかし、リクルートや楽天で媒体社や代理店の立場に立ったときに、自分たちが運用してきた手法で広告主と媒体社はWin-Loseの関係になっていると気づかされました。「この関係が維持する以上、日本のネットマーケティングは成長しない」と感じ、BtoBにその活路を見いだそうと決心しました。BtoBマーケティングはまだまだ進化する余地があると思いますし、アクション以外の価値、認知してもらう価値などを作れるのではないかと思ったのです。現状、アトリビューションの可能性を信じて、広告主、媒体社、広告代理店などと日々議論し、チャレンジしている毎日です。

■アトリビューションに取り組むきっかけ

有園:なるほど。それでは、アトリビューションについてお伺いします。友澤さんとアトリビューションとの関わりなど、ご経験を教えていただけますか。

友澤:実は、3、4年前のリクルートにいた頃、マイクロソフトが買収したアトラスのエンゲージメント・マッピングに、とても感銘を受けました。色々な広告手法が重なって分析されていたんです。マス広告は1つの手法で大きな消費行動を生み出そうとするアプローチに見えますが、ネット広告はイチローがヒットを積み重ねるかのごとく、小さな施策を複数重ねていくことで真の効果が出るものだという確信がありました。各施策の直接効果だけをみて施策の善し悪しを判断していたのでは、見誤るのではと感じたわけです。たとえば、CTRが0.1%ぐらいの場合、99.9%に対する価値はないのか?などです。そこで、各施策の間接効果を加味して分析することにチャレンジするようになったのが、いま思えばアトリビューションに取り組むきっかけだと思います。

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有園:広告主としての立場でアトリビューション分析をされていたのですか?

友澤:そうです。

有園:媒体社側の経験もおありですよね。クリック以外の99%のインプレッションに疑問があったのは、広告主と媒体社の両方を経験されていたからでしょうか?

■間接効果を考えないとキツイ

友澤:リクルート時代は、各事業部から広告予算をあずかり、運用代行をしていました。媒体社からCPMで仕入れて事業にはCPAなどの成果で売っていたのです。様々な事業を横断運用してくる中で、検索広告とDisplay広告の関係性やAudience Targetingの可能性を追求することを実践していました。その中で、広告主としてディスプレイをやるにしても間接効果を考えないとキツイと感じました。

有園:なるほど。

友澤:楽天へ行って広告事業企画室長をやる機会があったのですが、今度はデータを活用した新しい広告商品を売ろうとすると、実施する前から「CPAはいくらになるの?効果はよくなるよね」と、それ以外の効果をすべて否定されるような発言をよく耳にしました。デジタル広告全体の成長を考える場合、広告主と媒体社と代理店の三者が良い関係を構築する必要があります。そのための共通言語、目標が「KGI」「KPI」なのですが、現在は盲目的に直接効果のCPC、CPAになっていることで誰も得をしていないと感じました。広告主にとっては無駄な出稿をやめて、より効果のある施策に予算を配分できるように。媒体社にとっては、自身が何の効果に対して貢献できうるのかを見定め提案できるように。代理店には、全体を統合して最適なプランニングができるように。この3つを同時に実現させていくためにはアトリビューションが必須だと考えています。

■アトリビューション分析の失敗

有園:当時、リクルートではマルチセッションでの分析をおこなっていたかと思います。コンバージョンパスデータを取得してやっていたのですか?

友澤:そうです。データが膨大すぎるので、数セッションくらい前まで取得して分析していました。

有園:具体的にお聞きできますか。

友澤:「旅行」や「住宅」といった特定事業のなかでは、サーチ、アライアンス、アフィリエイト、もちろんディスプレイ等様々な手法を実施しています。それぞれの関係がどのようにコンバージョンに貢献しているかをワンセッションではなく分析していました。本来は、その価値をそれぞれの流入経路に返すのがプロジェクトの目的でした。しかし、当時は、それぞれの関係性が少ないという結果に至ってしまったんです。 

有園:それは、どういうことでしょうか。

友澤:例えば、サーチとディスプレイをやったら単体でやるよりもアクション数が増えるというのが、最初に出した仮説でした。でも、当時は上手く数値で証明できませんでした。

有園:上手く出来なかったのは、どのような理由が考えられますか?

友澤:当時は、ビュースルーのデータが処理できる環境がなかったのです。現在は、並列分散処理をHadoopなどで実現できます。しかし、当時はその辺をSPSSでやっていました。モデルは現在でも通用するものでしたが、そのモデルを活用するのに有意なデータや各種非構造データを構造化するまでに、かなりの時間を要したのでできなかったのが理由です。また、本当に成果を出すために必要なデータは、アクセスログやアドサーバーなど様々な場所に分散されています。それを、蓄積、初期処理をするためのH/Wに多大な投資が必要でした。そのROIが当時は算出できなかったのも理由でした。

有園:当時は、リクルートが望むような効果は得られなかったということですか?

友澤:正確には、分析結果によってコストカットができるロジックまではできました。しかし、そのカットした予算をどこに最適配分するかの答えまでたどりつきませんでした。アトリビューション分析をして得たい価値は皆さんそれぞれあると思いますが、当時の目的は「アクション数を増やしたい」というのがテーマでした。そのような中で、過去の分析を元にして出てくる答えは「アクションに貢献が少ない広告群」という結果でした。そうすると、営業効率性は高まりますがアクション数は若干減ってしまいます。それを補うために他の手法を活用したかったんですが、当時は目的に沿う広告手法がありませんでした。結果、効率的にはなったのかもしれませんが、売上げ増加には貢献できませんでした。

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■ディスプレイ広告の価値を再発見

有園:そのような失敗を経験しつつも、アトリビューションを前向きに捉えている理由はなんですか?

友澤:ひとつは、今の日本の状態に理由があります。

有園:日本の状態?

友澤:アメリカもそうですが、日本はサーチに依存しています。これから、広告主がますますサーチに乗り出せば確実に入札価格が上がります。このようにサーチ偏重での短絡的なデジタル広告施策だと、結果的に必要とする効果を出すことができず、デジタルの広告効果が悪いという印象を持つ広告主を増やす可能性があると考えています。サーチの効果をさらに高めるためにも、そしてデジタル広告のオプションを広げるためにも、次に広告在庫が多く、様々なテクノロジーで進化を遂げているディスプレイ広告に目をつけました。

有園:なるほど。アトリビューションによってサーチだけではなくディスプレイ広告の価値を再発見できるはずだということですね。そのことによって、日本のデジタルの広告効果もよくなることにつながっていくのではないかという期待があるんですね。

友澤:はい。

■短期的なROASを見ているだけでは駄目

有園:ところで、さきほどの話しでは、アトリビューション分析をやって無駄がたくさん見つかり、それを切った途端にROIが良くなったと。

友澤:はい。

有園:でも、ROIは良くなったけれど、コンバージョンの増加までには至らなかったということですね。

友澤:そうです。

有園:私自身アトリビューションやリスティング広告のコンサルティングをやっています。たとえば、ROASの目標が2000%のクライアントがいたとして、目標を達成する過程においては無駄を省いたほうが早いので、無駄を切って出稿金額を減らしました。そうすると次は、2000%をキープしつつ現状の1億5000万円の売上を2億にしてほしいというような要望が出てきます。この辺の課題は非常に厳しいと思いますが、友澤さんのケースではいかがでしたか?

友澤:無駄を省いて効率化したあとに売上を増やすには、効率化させた広告予算で他の新しいアクション数を増やす手法を編み出す必要があります。これがデジタル広告に限って言うと、日本の場合、サーチの次に有効だと考えているのが、ディスプレイ広告です。ただし、ワンセッションのような直接的・短期的な効果を生み出しにくいディスプレイ広告を、ビジネスゴールであるコンバージョン向上や売上向上につなげていく仕組みを、どのように作っていくかが課題だと考えています。ブランド広告主が安心して様々なデジタル広告手法に予算をシフトできるような仕組み(ソリューション、指標など)を見いだすことが、ITの力でできるのではないかと考えています。また、ダイレクトレスポンス的なビジネスゴール以外の指標、たとえばブランドアウェアネスなどの間接的な評価を組み込んだ、各デジタル広告の最適役割配分と広告予算全体の最適配分を決めていくというマーケティング戦略が不十分であると言うことも課題だと考えています。

有園:なるほど。いくつか論点がでたので、いったん整理します。アトリビューションによって、ROASを高めて目標を達成することができた。ただし、ROASをキープしたまま売り上げを上げようとすると、短期的なROASを見ているだけでは駄目だという課題が出てきたのですね。

友澤:はい。

有園:それで、バナー広告が影響を与えられるということをアトリビューションで示せて、なおかつ結果的に売り上げ増加につながるというアプローチが取れるといい、ということですね。

友澤:そうですね。

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■アトリビューションと売上向上の関係

有園:私自身は、さっきの例でいえば、ROASの2000%をキープしながら売上目標2億が達成できたのですが、なぜ出来たかというと、理由はリターゲティングです。リスティング広告だけでは1億6千万円くらいしかいかなかったのです。リターゲティングもセッション単位だけで見れば上手く伸ばしきれません。しかし、通常配信のバナーも使ってリターゲティングできる母数を徐々に増やしていくことで、現在のところ、ROASをキープしながら売り上げを伸ばせています。そこで効いたのが、アトリビューション的な見方でした。すべてのクライアントで効果があがるかどうかは分かりませんが、こういったデータはアトリビューション分析をすることで取れるようになりました。ただし、課題として強く感じているのは、友澤さんもおっしゃっていた売上向上との関係性がよく分からないままであるということです。

友澤:広告主としても、非常に短期的に物事を考えて、ゴールを何かしらの短期的なコンバージョンとしてしまいがちです。やはり、効率はサーチが最上で、いろいろなリターゲティングなどを組み合わせていくという文脈でディスプレイ広告はコンバージョンに寄与していきます。しかし、こういった「焼き畑」的マーケティングでは長続きしません。維持するには、種をまいていかなければいけないと思います。その種まきとなる各種データの獲得やコンテンツの制作に対する広告主の理解が、まだまだ乏しいと感じます。データマイニングをやれば全ての問題が解決できるとか、テクノロジーを導入すれば解決できるという風に誤解している方もいらっしゃると思います。アトリビューション分析をやれば効果があがると思う人がいるなら、それは大きな間違いです。ただし、そのような課題を解決するためのヒントを与えてくれるのはアトリビューション分析かもしれません。

■アメリカではアトリビューションが根付いている

友澤:ディスプレイ系のセッションの中で面白かったのが、CPC、CPAといった言葉がほとんど出てこなかったことです。アトリビューション分析を行い、様々な指標を用いて広告効果を証明しようとしていました。

有園:アメリカではアトリビューションが根付いていますか。

友澤:そうですね。様々なデータが取れるようになったことで重要性が増していると言うべきでしょう。そういう意味で、データをちゃんと正確に理解するべきだという話もよく出ていました。たとえば、インプレッションとビューアブル、ビュードをきちんと分けましょうという話です。

有園:ビューアブルとは、ユーザーが見られる場所に表示される広告のことですよね。それとインプレッションを別々でカウントしましょうということでしょうか。

友澤:そうですね。

有園:アメリカではビューアブル、ビュードの意識は高まっていますか?

友澤:かなり高まっています。インプレッションとは、バナー広告等の表示回数のことです。インプレッション全体には、見られているモノと見られていないモノがあります。見られていないモノを削除すれば広告効率は良くなります。削除して浮いた予算を他に回すという試みが、すでにアメリカではたくさんあります。こうした分析をするためにアメリカでは第三者配信サーバーを多くの広告主が導入して活用しています。

有園:アトリビューション分析をするにしても、ビューアブルじゃない部分の影響は考える必要ないですか。

友澤:そうですね。すでに、アタラさんはその辺を実施されているかもしれませんが、広告主はインプレッションとは見られたものだけだと思っている方もいるかもしれません。でも、それは違います。表示回数でしかなく、見られていないものが沢山あります。全体の表示回数をクリック数で割ってしまったら当然CTRが悪くなるに決まっています。この辺の解析を、もっとしっかりとやるべきだと思います。もちろん多くの人に表示をしてもらうという目的ならよいのですが。

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■タブルカウントを避ける

有園:そうですね。あと、ちゃんとデータを取るとは、第三者配信サーバーを活用してログを取得するということですか?

友澤:そうです。

有園:第三者配信サーバーで配信していないと、Googleで検索してリスティング広告をクリックしてコンバージョンした場合、リスティング広告にだけ1カウントつきます。しかし、そのコンバージョンの前に、たとえば、バナー広告をクリックしていた場合、バナー広告の媒体社側のレポートではバナー広告に1カウントついてしまいます。そのため、Googleからのレポートでも1件のコンバージョンがあがってきて、バナー広告の媒体社からのレポートでも1件のコンバージョンがあがってきます。その結果、2件のコンバージョンがあったかような錯覚に陥ってしまうのですよね。これが、ダブルカウントです。

友澤:はい。

有園:それが積み重なると、実際のコンバージョン数が分からなくなってしまうという課題意識を持っている広告主が、日本には少ないのではないかということを、友澤さんはおっしゃりたいんですよね。

友澤:そうです。その裏返しとして、つまり、ダブルカウントを避けるために、広告主はワンセッションしか見なくなります。ワンセッションで見ると、本来はアシスト効果があったものを捨ててしまうというジレンマがあったと思います。

有園:それをしないためには、つまり、タブルカウントを避けるためには、サイトカタリストなどのセッション単位でコンバージョンを計測するツールを使って、媒体社のレポートを見ないということを言っているのですね。

友澤:はい。これが前職、前々職で続けてきたことですが、ほとんどの広告主は同じような状況なのではないかと考えています。盲目的にダブルカウントで運用していたり、あるいは、ワンセッションで効率化にばかり力をいれていたり。こういった状態は改善したいですね。

■アトリビューションの可能性

有園:まだまだお話しをお伺いしていきたいのですが、時間がなくなってきましたので、ここまでの友澤さんのお話しをまとめてみると、まず、リクルートにいたときに、セッション単位の分析には限界を感じ、クリックベースでのアトリビューション分析を試みてみたが、当時はビュースルーを捨てていたこともあって、ROIやROASの改善につながっても、コンバージョン数の増加や売上拡大にはつながらなかった。そのような経験もあって、ROIやROAS重視で広告を、とくに、ネット広告を使っていても、企業の目標達成のためにはならないのではないかという問題提起をしたいという感じですね。

友澤:そうですね。

有園:そして、そのような問題に対して、改善策を提示してくれる可能性があるのは、アトリビューション分析であり、日本のデジタル広告市場の活性化のためにも、アトリビューションをどんどん普及させていくべきであると。技術的には、第三者配信エンジンをもっと積極活用し、ビューアブルなインプレションの計測技術などの進歩にも期待しつつ、広告主にも媒体社にもメリットのある形でネット広告をもっと育てていきたいという感じでしょうか。

有園:ところで、最後に、友澤さんからこの「Attribution.jp」の読者に対して、あるいは、広告主側のマーケターや媒体社に対して、メッセージなどいただけますでしょうか?

友澤:はい。私が他者から有園さんが執筆された「『アトリビューション』という書籍のどの章が一番重要ですか?」という質問を受けると、必ず「序文」と答えます。クリックしなかったユーザーの気持ちや興味をアトリビューション分析から見つけ、潜在的顧客を発掘することでビジネスに貢献していくというテーマを今後も続けていくつもりです。この辺は1社・1者ではできないので、いろいろな情報を交換しながら進めていけたらと思います。一緒にがんばりましょう。

有園:長い時間、ありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

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(END)

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【アトリくんの視点】広告主でもあり媒体社でもある会社などでの深く実践的な経験を長く積んでおられる友澤さんだからこそのインサイトが満載でしたね。試行錯誤を繰り返しつつもアトリビューションの将来性を見いだしておられる点も心強いですね。先取りしてきたアトリビューションに関しては様々な環境がようやくついてきた部分はあるかもしれません。でも、常に半歩、1歩先の取り組みをしてこられたと思いますので、BtoB市場における次なる先進的な動きも期待です。そして、業界として情報交換をしながら進めていくという点もその通りですし大賛成です。友澤さん、貴重なお話をありがとうございました!

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アトリビューション特別対談:株式会社朝日広告社酒井克明 ×アタラCOO有園雄一

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特別対談です!今回は、株式会社朝日広告社インタラクティブメディアのプランニング部門をリードする酒井克明さんに広告代理店としてのアトリビューションマネジメント見方や取り組み方を色々と伺っていきます。

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広告代理店から見た「アトリビューションマネジメント」

有園:本日は、朝日広告社の酒井さんをお迎えして、いろいろとお話をお伺いしていきたいと思います。まず、自己紹介をお願いいたします。

酒井:私は元々、ネットワークエンジニア出身です。その後はネット専業広告代理店でリスティング広告のビッドツールを作っていました。

有園:専業広告代理店に行かれたのはいつごろですか?

酒井:2005年から2006年頃で、1年半ぐらいいました。その後、ネットベンチャーで事業開発に携わったり、広告主側にもいき、リアルも含めマーケティングの責任者として仕事をしました。朝日広告社に入ったきっかけは共通の知人の紹介です。ネット広告やデジタル系はキャリアとしてベースがありますが、ネットだけの限界も感じており、縁があって朝日広告社に入りました。

有園:エンジニアとネット広告代理店を経て広告主側に移った際に、マーケティング全体を把握するようになったということですね。

酒井:ネット専業広告代理店にいたときも、ツールはツールで、分析後にどうするかという課題意識が自分の中にあり、次第にコンサルの領域に入っていきました。朝日広告社に入りたての頃は、コンサルチームを作り、分析を軸にしながらお客様の課題を解決していました。ただ、テクノロジーのベースをスキルとして持っているというのは総合広告代理店の中でも異色の経歴じゃないでしょうか。幸いにもこのキャリアがあったからこそ今の自分に活きているとも確信しています。ラッキーですよね。「持ってる」んでしょうね(笑)

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有園:朝日広告社に入ったのはいつですか?

酒井:2008年です。

有園:今はどのような業務をやっているんですか?

酒井:インタラクティブメディアのプランニング部署を率いています。朝日広告社のインタラクティブ領域はマーケティング、クリエイティブ、コンサルを一つにしたソリューション系の部署とメディアプランニング部署の二部体制になっていて、私はメディアプランニングの部署を統括しています。私自身のキャリアからするとよく、メディアプランニングじゃなくてソリューション側でしょ?なんて言われることもありますが(笑)

有園:アトリビューションにはどのように関わっているのですか?

酒井:昨今、ネット広告においてはメディアプランニングもCPAといった見方だけでは難しくなってきており、ディスプレイ広告等も含めて、全体のプランニングをどうするかという課題にぶつかり、アトリビューションに触れるようになりました。

有園:アトリビューションに取り組み始めたのはいつ頃ですか?

酒井:2010年に、メディアマインドさんとアドビさんと弊社の三社でアトリビューションマネジメントの評価テストを開始しました。当時テストを開始しますと言ったプレスリリースも出しているのですが、その頃からです。

有園:その結果をAttribution.jpに寄稿していただいたわけですね。

酒井:評価テストの結果を出せる範囲で寄稿させていただきました。

有園:アトリビューションマネジメントの評価テスト結果をリリースするまでに時間がかかったと思いますが、やるに至ったきっかけはなんですか?

酒井:きっかけは、御社の杉原さんにアトリビューションマネジメントのことを教えていただいたからです。最初は「なんだそれは?」という感じだったのですが、アトリビューションのことを調べていくうちに「これは、お客様の課題を解決できるのでは?」と考えるようになりました。当初は、リリースを出すことまでは考えていませんでしたが、当時国内では業界でまったく事例もありませんでしたし、せっかくだから出してみようということになりました。良い結果が出るかどうか分かりませんでしたので、リリースを出すのは不安でもあったのですが。まあ、いっとけみたいな、ある意味追い込む意味でもリリースを出しました。

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有園:弊社でもお客様のアトリビューションマネジメントをやるときは、よい結果が出るかどうか不安になることがあります。

酒井:確実に結果が出るとは言いきれないですからね。

有園:分析結果によっては良い提案がでないこともあります。現状維持が一番いいパターンもありますよね。

酒井:感覚値ではありますが、クリックベースでの最適化しかしていないお客様は結果が出やすいです。これまで見ていなかったデータに目を向けて改善すれば、それなりに結果は出ると思います。

有園:ビュースルーの見える化はインパクトが大きいと感じているわけですね。

酒井:一般的に、クリックは1%もありません。その1%にばかり目を奪われて残りの99%を切り捨てるのではなく、99%を生かすことが重要です。クリックする人はモチベーションが高いわけで、まったくクリックしない興味のない人をいかに振り向かせることができるか。ここが勝負だと思います。クリックしていない人のデータを、今までは無視してきたわけですが、もったいなくないですか。99%以上の人を無視しているんですよ。この部分に目を向ければ、クリックしたかしないかではなく、「誰に」「何を」「どこで」「どうやって」が見えてくると思っています。これってマーケティングの基礎じゃないですか。当たり前の部分にようやく目が向けられるようになったということかなと。悪いものを削るのは簡単ですが、悪いものを良くしていかないと。

有園:アトリビューションの話をすると、どうしてもコンバージョンにフォーカスしがちです。コンバージョンを重視したい気持ちは分かります。でも、本当はコンバージョン以前、クリック以前の99%の人たちをどう振り向かせるかが重要ですね。そのデータを分析しなければ、そもそもコンバージョンを飛躍的に増加できないということを世の中の方々に理解していただきたいですね。

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酒井:そうですね。ユーザーの気持ちを振り向かせることが、結果的にコンバージョンの母数を増やすことになると思います。クリックした人だけではなく、クリックしなかった人をいかに振り向かせるか。それを考えるべきです。アトリビューションは究極は「ユーザー育成」だと思っています。ユーザーのモチベーションを育成して、振り向かせ、顧客化させる。お客様に儲かっていただかないと私たち代理店も儲からないので。

有園:なによりも、広告主に儲かっていただくことが広告代理店の利益になる。そのような意識を持って仕事をしている広告代理店の方は、実際にはあまり多くないかもしれないですね。

酒井:そうかもしれませんね。広告代理店は、広告枠の代理業ではなく「代理人」であるべきと考えています。弊社は、特にその点を、大事にしています。

有園:媒体社の代理人ではなく、広告主の代理人ということでしょうか。

酒井:いえ、媒体社も広告主も、御社のようなパートナーさんも、弊社も、そしてユーザーも、みんながハッピーになるのが理想です。難しいですけどね。

有園:いい話ですね。アトリビューションに取り組む広告代理店が増えているようですが、総合広告代理店の御社には、どのような独自性があるのですか?

酒井:現在、データを可視化できるのがデジタル領域だけなので、今後はマスメディアやオフラインのデータを含んだアトリビューションの取り組みが重要だと考えています。また、専業広告代理店さんはどちらかといえば、獲得よりのクリエイティブワークは得意ですが、総合との違いは、ターゲットのインサイトから考えた、ターゲットを振り向かせるクリエイティブが総合広告代理店は得意だということです。総合広告代理店のクリエイターは、昔からやっていることなので当たり前のことですが。

有園:総合広告代理店として御社の独自性は、マス広告を含めたアトリビューションに取り組んでいけることと、クリエイティブの作り方が違うということですね。クロージングだけではなく、興味のない人をいかに振り向かせるかに長けているということですね。

酒井:そうですね。そこが広告の面白いところですし、本質だと思っています。

有園:ひとつずつお伺いします。まず、マス広告を含めたアトリビューションについては展望などありますか?

酒井:昨年、朝日広告社ではアトリビューションダッシュボードというものをリリースしました。アタラさんにもご協力いただきながらリリースいたしましたが、このダッシュボード上でマス広告も可視化できるように取り組んでいます。ただ、マス広告でユーザーの行動をデジタルのようにコンバージョンパスデータとしてデータ化するのは不可能に近いです。まずは、今できることから手をつけています。マスメディアも含め、どのように貢献しているのか。どのメディアをどれだけ投下すればどの程度効果がでるのか。ダッシュボードを使って、そういった部分を可視化できるように取り組んでいます。現状デジタルデータにおいてはAPIを介して自動的にダッシュボード内にデータが蓄積できるように作ってあります。将来的にはマスメディアのデータ蓄積も自動化したり、量的データだけでない、クリエイティブのような質的データの蓄積、DSPのようなプラットフォームとの連携等の進化も視野に入れています。今後、この取り組みが弊社の独自性にもなると思います。

有園:アトリビューションダッシュボードは、一般の広告主が使えるASP型サービスですか?

酒井:残念ながら現状では違います。今後、オープンにするかは検討中です。

有園:期待を集めているようなので、ゆくゆくはリリースしたいですね。

酒井:単なるダッシュボードだけにはするつもりはないので、いろいろな可能性を秘めています。ご期待ください。

有園:マス広告に関しては、ダッシュボードを中心に進めているということですが、もうひとつの要素であるクリエイティブは、どのような取り組みをされているのですか?

酒井:弊社独自のやり方かもしれませんが、例えば、メディアマインドを使った場合、広告の接触データが全部でますよね?それを細分化するとき、メディアのパスパターンを追いかけるだけではダメと考えています。クリエイティブのパスパターンも追うべきです。クリエイティブのパスパターンは、初回接触とコンバージョンに利いたパターンを重視しています。

有園:なるほど。

酒井:要は、初回向けと刈り取り向けの比率を出して、どのクリエイティブが初回向けで、どのクリエイティブが刈り取り向けかを算出します。この比率を指数化しておりまして、弊社ではアトリビューション・レイショ(Attribution Ratio)と呼んでいます。そのようにしてクリエイティブが整理できたら、モチベーションの高いユーザーには刈り取り向けのクリエイティブを割り当て、まったく興味のないユーザーには初回向けのクリエイティブを割り当てます。そして初回向けと、刈取り向けをユーザーに対して一つのシナリオに統合して配信する。弊社ではこの取り組みをシナリオ配信と呼んだりしています。シナリオというのは、ユーザーのモチベーションを育てるための配信の仕方で、決して配信条件を細かくしていくということではありません。条件を細かくしすぎても結果がよく分からなくなることの方が多いです。つまり、一言で言うとユーザーの気持ちの導線を見つけるということです。もっとも気持ちを動かしやすい、気持ちの導線パターン。気持ちの導線が見つかればシナリオ数は少なくして、シンプルに実施する方が結果がでやすいですし、検証もしやすいと思います。メディアのパスパターンだけではダメでクリエイティブのパスパターンを見る必要があると言ったのは、気持ちの導線設計が重要だと考えているからです。その結果、ユーザー育成ができ、母数が増えていきます。

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有園:それはコンバージョンの母数ですか?

酒井:そうです。ある程度の期間をおけば増えることが分かっています。なぜなら、もともと、モチベージョンが低い人に対してアプローチをしているので、モチベーションをクリエイティブコントロールによって徐々に上げていくからです。

有園:なるほど。その期間は30日から60日くらいとかですか?

酒井:弊社でおこなった人材会社の事例ですと、約一ヵ月後というデータが出ています。実は、それをやる前からインプレッションのコンバージョンデータと、自然検索のコンバージョンデータの波を照らし合わせたら、波のずれがちょうど一ヶ月でした。それによって検討期間はおよそ一ヶ月だろうと予測でき、その一ヶ月間にどれだけモチベーションを上げる広告に接触させられるかがキーポイントだと考えるようになりました。

有園:アドネットワークで配信した場合、自然検索の山が出てくるのは分かっていると。そして、御社のアトリビューション・レイショ(Attribution Ratio)を使って、初回、ラストとカテゴライズするわけですね。ちなみに、中間のクリエイティブは?

酒井:あります。両方に利くものも用意します。

有園:なるほど。そうやって、よりよい流れを作っていくんですね。

酒井:それをやれば一か月の間にユーザーに適切にアプローチし、モチベーションを徐々に高めることで、一か月後にコンバージョンしてくれる流れは作れると思っています。

有園:とても面白い話ですね。

酒井:実際は切り替えのタイミングもテストしていまして、何回目で初回向けから刈り取り向けに切り替えたらいいのか。これに関してはテストをして、フリークエンシーだけでなく、切り替えてからコンバージョンまでの日数を追っています。一回しか初回向けのクリエイティブをあてずに切り替えた場合の日数は、やはり長いです。しかし、初回向けを何回かあててモチベーションを上げてから切り替えた場合、コンバージョンまでの日数は短くなります。ある程度短期間で集中的に配信すればよりコンバージョンしやすくなるということですね。

有園:初回向きのクリエイティブは何回ぐらいあてるのが理想ですか?

酒井:このお客様の場合は、一ヶ月のうちに初回向けを6回あてて切り換えるのが一番良いというデータがでています。良いというのは、よりユーザーがCVするまでの期間を短くできるという意味です。広告主によって多少違いはありますが、それを上手く見つけていただければと思います。

有園:運用するものですよね。

酒井:そうです。勝ちパターンが見つかれば、逆算もできます。必要なCV数に対して必要なインプレッションはどれだけかということが逆算できるようになります。

有園:バナー広告の配信について、通常配信で最初はやるけれど、途中からリターゲティングに変えるイメージですね。通常配信で母数を稼いで、その後リターゲティングのクリエイティブをあてていく。実は、私も最近その辺の組み合わせを気にしています。通常、配信を6回あてると一度くらいサイトにきてくれますか?

酒井:クリックしないパターンが多いですからね。ただ、サーチで来る人もいるので、何かしら効果はあると思います。リターゲティングと違うのは、クリックしていないので、広告主のサイトに来ていない人においてもリターゲティングのようにクリエイティブを変えられます。

有園:そして、クロージングのクリエイティブをあてていくと。ちなみに、何回くらいあてればいいですか?

酒井:明確な数字はまだまだこれからですが、広告主ごとに適切な回数を模索しています。

有園:アトリビューションに関わって解ってきたことや見えてきたことがあると思いますが、その辺はどのようにお考えですか?

酒井:弊社がやっているアトリビューションは、ユーザーをいかに振り向かせてモチベーションを育成するかがやはり大切だと思っています。クリックだけで判断するのでなく、クリックしなかった人をどのように振り向かせるか、それが成果として出せるという部分が見えてきました。

有園:アトリビューション前後で、数字として見えてきていると。

酒井:広告主にもよるので一概には言えませんが、これまでの経験でいうと、アトリビューションを実施することで必ず結果が出ると思います。

有園:アトリビューションを実施して、お客様の反応はいかがですか?

酒井:良いです。媒体間のユーザーの重複データが見えるだけでも価値はあると理解いただけています。全体的に良い評価をいただいています。
有園:素晴らしいですね。

酒井:ただ、コストがかかるので、全ての広告配信を第三社配信に乗せられない場合があります。特に、アドネットワークですと配信量が非常に多く、配信量によっては莫大なコストがかかります。まずは、的を絞ってやりましょうというパターンからのスタートになってしまいます。絞れば絞るほどパスデータの精度は落ちるので、成功確率も減ります。本当は全部を乗せたいのですが、スタートとしてはスモールスタートですね。ただ、徐々に広がってはいる印象です。

有園:一番大事なのはお客様が満足することだと思いますが、そこが出来ているという理解でよろしいでしょうか?

酒井:はい。間違いなくご満足いただけていると思います。

■アトリビューションの課題

有園:アトリビューションの課題についてどのようにお考えですか?

酒井:やはり、データの量が多いので分析に時間がかかってしまうことですね。分析ではなく改善アクションを起こさなくては意味がありませんし、スピードが最優先されるので、極力シンプルにやらざるをえない状況です。PDCAサイクルをいかに短くするかには課題を感じています。季節要因が大きく影響するケースでは、前月の分析が翌月には使えなかったりしますので、分析に時間がかかってしまうと理想的なサイクルで回すのが難しくなりますね。

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有園:季節要因が影響する商材は、3月が需要期だと4月、5月は差し替えですもんね。

酒井:現状では、まだまだ人の力でやっている部分が大きく、分析をどれだけシステマティックに、シンプルにできるかは課題ですね。現状では、アトリビューションについての考え方も浸透しきっていないので標準がありません。つまり答えがないんですよね。ゼロからやらなくてはいけないので、大変です。

有園:今後は、ツール化も検討するのですか?

酒井:そうですね。ある程度、システマティックにしないとPDCAは回らないですからね。あとは、媒体社でも第三者配信を実施する場合、発注量を求められるなどの敷居もまだまだあります。それも実施の際には課題になりますね。

有園:ところで、業界でアトリビューションの流れは変わってきていると感じていらっしゃいますか?

酒井:最近、広告主からの依頼でアトリビューションマネジメントだけのコンペがありました。今までは一度もなかったので、これは業界としてもアトリビューションマネジメントの必要性が浸透し始めた兆しだと感じました。

有園:依頼内容はどのようなものですか?

酒井:課題はどこも一緒ですが、お客様は行き詰っています。施策を打ち尽くしています。特に刈取型のネット広告ばかりをやってらっしゃる広告主さんは改善できる施策に頭打ち感があるんでしょうね。だからこそ新しいやり方へのニーズがあると思います。

有園:弊社にもそのようなご相談は増えています。

酒井:有難い話ですが、人的な対応だけでは、対応しきれるかは不安な部分も正直ありますね。ただ、ここをやっていかないと本来の意味で「代理人」にはなれないと思っています。最近ではADテクノロジーが持てはやされていますし、配信方法も自動化が主流だと思います。弊社もADテクノロジーの分野は積極的に取り組んでいます。ただ、テクノロジーはテクノロジー。素晴らしい面もありますが、それが主になってはいけないと思っています。結局は人の気持ちを動かすために広告をやるわけですし、人の気持ちはテクノロジーだけでは動きません。テクノロジーをうまく使った上で、最後は人の気持ちと真正面から向き合うこと。それに尽きるんじゃないでしょうか。

有園:最後にメッセージをお願いします。

酒井:興味のない人をいかに振り向かせるか。振り向かせたことを可視化できるか。可視化した後に、繰り返し実行し続けられるか。ここが重要だと考えています。デジタル領域は数字が見えすぎるからこそ、数字絶対主義になりがちですが、可視化というのは数字だけを見るのではなく、数字をうまく使って全体を見渡せるようにしていくということです。本当にまだまだやることはたくさんありますね。そうゆう意味では、たくさんの同業さんと競争してアトリビューションのノウハウをお互いに深め、アトリビューションが業界全体のスタンダードになるようにしていきたいですね。競争がないと良くなりませんから。

有園:私が知る限り、売り上げ上位のインターネット専業代理店はアトリビューションを始めているという情報が入ってきています。

酒井:総合も、専業も関係なく、我々広告代理店は「代理人」です。広告主の、媒体社の、パートナーの、ユーザーの、代理人として業界全体でアトリビューションの良い事例を作っていきたいですね。アトリビューションマネジメントは本当に手間暇かかりますので、現状では広告主さんも一部の広告主さんだけが実践できていると思います。なぜならインフラ面での費用だけでなく、社内のスタッフが必要になりますし、複数の代理店とお付き合いしている場合は、それらをプロデュースしていかなくてはいけません。プロデュースできる人材や組織が広告主さん側にあるケースの方が少ないので、そういう意味では代理店が「代理人」、パートナーとしてそういった広告主さんのお手伝いしていくべきだと考えます。あとはできれば媒体社さん側からもアトリビューションの取り組み事例が出てくればいいですよね。もちろん弊社も媒体社さんの「代理人」としてお手伝いします!

有園:ところで、リッチメディアを使うお客様はアトリビューション分析にのせていますか?

酒井:まだですが、リッチメディアも当然今後やっていかなくてはいけないですよね。スタティックな広告よりも訴求力が違いますから、ユーザーを振り向かせやすいはずです。

有園:実は、私は、リッチメディアのビュースルー効果にも興味がありまして、そこを一緒にできる代理店を探しています。その辺は、酒井さんに期待してもいいですか?

酒井:ぜひぜひ。リッチメディアも一つの手段にすぎませんが、クリックしたかしないかの議論より、ユーザーの気持ちが動いたか、動かすための手段として有効か、その部分で取り組んでいきたいと思います。

有園:他にありますか?

酒井:モバイルとやスマートフォンなどデバイスをまたいだ場合のアトリビューションもやりたいですね。技術的にはまだまだできないこともありますが、できることから少しづつ、でもスピーディに。朝日広告社は総合広告代理店でありながら、ネット専業広告代理店のような一面もあります。まだまだ決して大きな会社ではないですが、大きくないからこそスピードとチャレンジは大事にしています。

有園:とても楽しみですね。本日は、どうもありがとうございました。

酒井:ありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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(END)

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【アトリくんの視点】早くからアトリビューションに取り組んでおられる朝日広告社さん。99%の人をどう振り向かせるかという考え方は基本ですが見落としがちですよね!Attribution Ratio、気持ちの導線パターンという考え方はすばらしいですし、MediaMindのシーケンス配信もこのロジックがあればさらに活きますね。今後の発展に期待です。アトリビューションについてはシナリオ設計力、クリエイティブが広告代理店さんの大きな強みになるんでしょうね。酒井さん、貴重なお話をありがとうございました!

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書籍「アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法」

アトリビューションについての国内初の解説書がインプレスジャパンより発売されます。
アトリビューションの定義、取得データと準備、モデリング、マネジメントなどをカバーします。また、アトリビューションに取り組んでいる業界各社の担当者コラムも含まれます。

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アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法
佐藤康夫、 杉原剛、 有園雄一、 田中弦 著
定価:1,680円 (本体1,680円)
発売日:2012/3/26
サイズ・判型:A5判
ISBN:978-4-8443-3184-1
発行:インプレスジャパン

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アトリビューション特別対談:株式会社リクルート小川卓 × アタラCOO有園雄一

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特別対談です!今回は、株式会社リクルートの住宅情報事業であるSUUMO(スーモ)においてアトリビューション分析に取り組んでおられる小川卓さんに色々と伺っていきます。

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広告主が語る「アトリビューション分析」

有園:今回は、リクルートのSUUMO(スーモ)で実際にアトリビューション分析をなさっている小川卓さんをお迎えしてお話を伺います。最初に自己紹介をお願いします。

小川:私は、新卒でマイクロソフトに入社し、1年くらいたって電子マネーの会社に移り、そこで初めてアクセス解析の導入や運用に携わりました。その後、2006年にリクルートに入社し、最初の5年間はアクセス解析ツールの導入や教育、運用をやっていました。2011年の4月からSUUMO(スーモ)に入り、ウェブアナリストとして仕事をしています。その中のひとつとして、アトリビューションを担当しています。

有園:小川さんのFacebookを見てきたのですが、英語がお得意のようですね。大学はロンドンだと伺いましたが、どのような勉強をしていたのですか?

小川:アクセス解析とは関係のない化学をやっており、数学の学士をとりました。中学3年生のときからロンドンへ行き、そのまま大学に入りました。化学をやる上でコンピューターにも通じるところがあり、1998年頃からウェブサイトをつくっていましたので、馴染みがあってこの業界にきました。

有園:なるほど。それでは、統計学もやっていたのですか?

小川:基礎的な部分でしたが学びました。

有園:『入門 ウェブ分析論~アクセス解析を成果につなげるための新・基礎知識~』(ソフトバンククリエイティブ)という著書を小川さんは出していらっしゃいますが、統計的な部分が多かったので詳しいのかなと思いました。

小川:本著の発売当時、そういった情報があまりなかったので触れておこうと思いまして。

有園:すごく勉強になりました。結構、売れていますよね?

小川:改訂版がもうすぐでますよ。

有園:改訂版を買わせていただきますね。日本では大学院を出ていらっしゃるのですか?

小川:ロンドン大学を出て 日本で早稲田の大学院へ入りました。

有園:早稲田では何を勉強していたのですか?

小川:化学ですね。コンピューターを使う化学だったので、そのままIT系の企業にいこうかなと思いました。

有園:そのような経緯で2006年にリクルートへ入られて、アトリビューションに業務として携わったのはいつ頃からですか?

小川:SUUMO(スーモ)にくる前に、スタッフ部門でアクセス解析の導入・運用・教育・分析などを担当していました。各部門とやり取りをする中で、SUUMO(スーモ)からアトリビューション分析をやりたいという話があり、集客の可視化とコストを削減していきたいと。どういう風にやっていくか話しているうちに自ら異動して、正式なキックオフは2011年4月からでした。それまでは情報収集や、誰とやるのかなどを進めていました。

有園:2010年に私は小川さんと初めてお会いしたと思うのですが、そのときにアトリビューションに関して打ち合わせしたと記憶しています。あの時から基礎研究をなさっているんですね?

小川:そうですね。

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データを揃えることからスタート

有園:2011年4月にプロジェクトとして何から手をつけられましたか?

小川:基本的なことですが、まずデータを揃えることからです。

有園:データはそろいましたか?

小川:集まりましたが綺麗にするのに2、3ヶ月かかりました。規模が膨大であり、データの精度の部分が厄介でしたね。実装ミスなども見えてきたので、そのあたりの整理や仕様の再確認も必要でした。

有園:そのデータの整理をする過程で、一番大変だったことはなんですか?広告主として独自に取り組んでいる上で課題になる部分はどこですか?

小川:私が直接は担当してはいませんが、広告系のデータを集める部分が一番大変だったようです。かけるお金は時期によって違いますし、決まった時期に決まった金額というほど単純ではありません。例えば、バナー広告だと5か所に掲載してまとめて100万円という出し方があります。その場合、各媒体の算出をしていないので分かりません。SEOもキーワードあたりいくらというのが分かりません。アトリビューションの施策が行いやすいという観点から、リスティング広告とバナー広告から手をつけています。これらは手を入れやすい、修正しやすいかなって思っています。

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バナー広告は最初の流入に貢献している

有園:整理しますと、2011年4月からやっていることは、2、3ヶ月のデータ整理をして、基本的には、リスティング広告とバナー広告でアトリビューション分析をしているということですね。

小川:もともと、バナー広告には仮説があって、初回の流入と2回目の流入に効いていることは、アクセス解析データを分析すると分かっています。それと同時に、セッション単位のコンバージョンで見ると効率が悪いということも分かっています。

有園:これは結構、重要なことですよね。

小川:はい。バナー広告は初回や2回目など、最初のほうの流入には貢献していることが分かっています。

有園:アトリビューション分析をしなくても、セッション単位で見たときに初回や中間でクリックされている、サイトに入ってきていることが分かるということですね。

小川:アクセス解析のデータから、訪問回数と流入を掛け合わせしてあげれば分かります。

有園:その一方で、最後のコンバージョンに至る部分では、バナー広告はコンバージョン率が低い、効果が低いと。

小川:SEOやノーリファラーと比べてしまうと悪いよねと。私たちが考えているバナー広告の目的としては、集客として大勢の人たちを連れてくるというのがあります。SEOやリスティング広告は検索エンジンにきて検索しないと、そもそも流入の対象になりません。しかし、バナー広告は検索をしなくてもカスタマーとなる方が見ているサイトに表示されリーチもするし、もしかしたらクリックをしてもらえるかもしれない。単純にコンバージョンを増やそうという目的ではなく、そもそも認知や流入を増やしたいという目的があったので、コンバージョン率が悪いことは必ずしも悪ではありません

有園:そこは、ユニークユーザー数とかで見ていますか。

小川:そうですね。ページビュー数も見ています。バナー広告が効果なくても、全部止めるということはありません。最初は効いているけれど、最後は効いてないぞ。でも、セッションで見るとつながっていないけれど、もしかしたら初回はバナー広告を見た人が3、4回目でコンバージョンしてくれているのではないか。そういったバナーもあるのではと考えています。

広告代理店との付き合い方

有園:ところで、リスティング広告とバナー広告を分析しようとデータをそろえるところでは、代理店さんのご協力をいただいているのですか?

小川:はい。リスティング広告もバナー広告も代理店を通して実施しております。

有園:アトリビューション分析に取り組むにあたっての課題として、代理店さんとの関係があると思います。複数の代理店さんとお付き合いがある場合、どうしていますか?

小川:当社も、リスティング広告だけでも複数の代理店さんにお願いしていますし、バナー広告もいろいろなところに出しています。それぞれに代理店さんがいらっしゃいます。

有園:データの提出をお願いすると、すぐに対応していただけますか?

小川:分析にどうしても必要なデータなのでご協力をお願いしています。複数の代理店さんとお付き合いしているので、それぞれデータの管理の仕方も違います。そのため、データのフォーマットの統一は我々がやらなければなりません。そのあたりは時間がかかりますね。

有園:代理店さんに「アトリビューション分析をしたいのでデータをください」というと、「それなら、アトリビューションの分析をこちらでやらせてください」という営業をうけませんか?

小川:アトリビューション分析の話をもらいますが、我々の規模感だと出せません。また、複数の代理店さんとお仕事をさせていただいているので、特定の代理店さんに一括でお願いするのは難しいですね。また、アトリビューション分析だけをしているのではなく、需要予測であったり、レコメンドのロジックへの活用だったり、そこまで加味した設計ができるかどうかですね。アトリビューション以外の分析にもそのデータを使いますし。一部だけを取り出してお願いするのも難しく、かといって全部をお願いするのも難しいのが現実です。

アトリビューション分析の効果

有園:リスティング広告とバナー広告を分析して約十ヶ月たちますが、ある程度効果はあがりましたか?

小川:我々としても、分析は完了しているのですが明確な効果はまだ出ていません。どのバナー広告が良いかなどは見えてきています。ただ、実行の部分では苦労しています。駄目だと判断されたバナー広告を減らしたところで、本当にコンバージョンは減らないのだろうか。予算配分を変えたときに、本当にアトリビューション分析のおかげで効果が上がることを証明しなければなりません。バナー広告を止めた効果が半年後くらいにならないと出ないとして、その間にサイトを修正したり季節要因があったりするので、良い結果に至ってもアトリビューション分析の結果であることを証明するのが難しく。そこに悩んでいます。

有園:アトリビューションの分析をして、効果の良いバナー広告や悪いバナー広告、効果の良いキーワード、悪いキーワードは見えているということですね。

小川:そうですね。

有園:それは、セッション単位でラストだけを見ていたときは、評価が低かったバナー広告が、アトリビューション分析の結果、評価が高くなったバナー広告もあるということでしょうか?

小川:実際、アトリビューション分析の前後で、8、9割のバナー広告は評価が変わりません。なぜなら、バナー広告やリスティング広告は5年くらい前から続けていることなので、その間にかなり最適化されてきて、セッション単位で悪いバナー広告は既にきっている場合が多いのです。セッションで良いものは残っています。ここは変わりません。ただバナーなどはその目的からセッションで悪いのが当然なので、その中から一部、ユーザー単位で見ると悪くないね、というものが出てきています。

有園:そうした分析結果が完全には施策に反映できていないということですね。メディアの予算を変更して、効果の悪いものは減らし、良いものに寄せることはすぐにできると思いますが、もしやったとしたら何パーセントくらいコンバージョンがアップしそうか試算されていますか?

小川:需要予測という仕組みを作りこんでいまして、過去データから未来を予測する仕組みはつくっています。ただ、具体的なバナー広告ひとつひとつ単位での予測はできていません。全体は見られるようになっています。

有園:アトリビューション分析を需要予測に活かしていくのですか?

小川:双方向ですね。アトリビューション分析で出た結果を需要予測に取り込みたいし、需要予測をもとに実施した結果をアトリビューション分析に取り込みたい。そうして精度を上げていきたいですね。お互いを利用しながら精度を上げていきます。ここはパートナーさんに協力いただいている部分になります。

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アトリビューション分析の使用モデル

有園:需要予測と現実の値に乖離があると思います。精度をあげるために、いまはどのようなモデルで分析しているのですか?
 
小川:アトリビューションの効果配分という観点では、マルコフと時間減衰という二つのモデルを提案いただき、そちらを利用しています。

有園:マルコフってロシアの統計学者の名前ですよね?統計学として使われるモデルである状態遷移。物事が移っていく際に、移っていく確率を出していくという事ですよね。 Aというバナー広告でサイトに訪れた人が、その後サイトに訪れる確率が何パーセントかということをベースに計算するわけですよね。 

小川:そうですね。サイトに再度連れてくる集客元が偉いんですよってことです。

有園:モデルで一番基本的なものは均等配分モデルといわれています。小川さんのブログでも、均等配分や初回重視などが紹介されていますが、いきなりマルコフにいったのですか? 

小川:色々な話も出たのですが、正解はないですね。たぶん、サイトごとに違うと思います。このモデルのほうが実態をよりよく表しているかも、というものもあると思います。ロジックは感情を反映するので、その人の思いや、やりやすさで一番良いものは変わってきます。我々としても、これが一番というものを持っていません。SUUMO(スーモ)というサイトは検討期間は長いし、再訪も多いです。だから、価値を「複数回訪れてもらうこと」におきました。それに近いモデルを探したときに、マルコフの状態遷移にいきつきました。

有園:ということは、購買サイクルが比較的長いという事実があって、それに比較的あっているモデルがマルコフの状態遷移だったということですね。

小川:期間が短いサイトにはアトリビューション分析は向いていないと思っていまして、1回目2回目でコンバージョンしてしまうサイトは評価があまり変わらないので、期間が長いサイトのほうが向いていると思います。

有園:それと時間減衰。

小川:それは何かというと、バナー広告A経由でサイトを訪れてからバナー広告Bで訪れるまでの日数も大事だよねということです。再訪までの期間が短い方が影響度は高いです。期間を開けずに再訪してくれたときは、バナー広告が印象に残っていたと考えられます。3か月後にサイトを訪れた場合、ユーザーはバナー広告Aを見たことなど覚えていないでしょう。期間が短いほど貢献度の割合を高くして取り込むという考え方を利用しています。

有園:先ほどおっしゃったマルコフの状態遷移というモデルと時間でさらに減っていくというモデルを掛け合わせてアトリビューション分析の重みや貢献度を出していると。そこには、もはや均等配分という考え方はまったく入っていないということですね?

小川:はい。結果的には均等配分になるかもしれませんが、考えてはいません。

モデルの精度を上げるためのチェック

有園:モデルの精度を上げるためにチェックをしているんですか?

小川:はい。今後の課題ではありますが、取り組んでいきたい部分になります。我々のサイトは季節変動の要因が大きいので、そこが重要です。たとえば、賃貸ならば4月に引っ越すので3月までに決めたいと。ここはモデルに組み込みづらい部分ですが、賃貸には3月末に契約しなければならないというゴールがあります。1月から検討しようが、2月に検討しようが、3月に契約しなければならないことは決まっています。だから、検討期間が平均で2カ月みたいなことは出しづらいんです。ある特定の月だけコンバージョンが増えるわけです。新築マンションなどは決まった月に必ず買うものでもないし、リフォームの場合も、すでに家に住んでいるわけですから、タイミングはまちまちです。いろいろな形態があるので、それぞれごとにモデルも違うという面からも、まだ課題は沢山あります。

有園:季節変動を取り込もうとしているけれど、そこまではできないと? 

小川:季節変動要因は需要予測に入っています。マス広告の出稿状況も入っているし、昨年3月の震災の変数も入るような仕組みを作成していただきました。ただ、それらを加味して月ごとにモデルを変えていくところには至っていない状態です。月ごとにモデルを変えるのが正解なのかもしれませんが。

有園:そうなんですよね。その商材の購買サイクルによるとは思いますが、月ごとにモデルを微調整できるのが理想的だな、と私も感じています。実際にやるのは難しいことですが。さて、ここで視点を変えてお伺いしたいのですが、私自身、お客様や代理店さんに呼ばれてアトリビューション分析のお話をさせていただく際、モデルの話でつまずく方が必ずいらっしゃいます。「正しいモデルがないよね」という話になるのですが、そのような時の「正しいモデル」とはどのような意味があるのですか?

小川:我々の言う「正しい」とは、例えば、あるモデルができて、そこに何かを足したり引いたりして、シミュレーションをして出た数字が、実際に3か月やったら本当に同じ数字が出るのか、ということですね。想定と現実の数字が近ければ、精度の高いモデルだといえます。

有園:シミュレーションと現実の値が一致するということですね。 

小川:ずれていれば計算の仕方、配分が間違っていることになります。

有園:現実におこっていることをすべて把握できて、それをモデルに組み込めるなら、シミュレーションで出てきた値が現実の値と一致すると。

小川:一致するとなにができるかというと、予測ができるようになるんですね。来年、達成したい売上額、資料請求数というゴールに対して、どれだけ予算を投下して集客をすればいいか予測ができます。

アトリビューション分析の最終ゴール

有園:アトリビューションをやっている最終ゴールは需要予測ということですか?

小川:アトリビューション分析はミニマムコストで最大限のゴールを達成したいという思いから行なっているので、最終ゴールは「目標達成のための集客コストの最適な予算配分」と「その配分が正しい」ということですね。

有園:最小限のコストで目標を達成したい場合、正しいモデルというのは現実をすべて把握していなければ作れず、それはできません。できないからモデルを使う訳ですが、正しいモデルがないという表現が引っ掛かる人もいると思います。 

小川:正しいモデルが無いというよりは、どの会社にもあてはまる一つのモデルはないという意味ですね。サイトごとに違うのが前提で、100パーセント正しいモデルはないので、何回か回していくなかで、80パーセントを90パーセントへと、理想に近づけていくというのが現実です。

有園:理解してくれる人もいる一方で、毎月モデルが変わる可能性があるため、毎月モデルが変わると評価する軸が変わるので疑問に思う人もいます。あるバナー広告の今月の評価と2、3か月前の評価軸がぶれるのは問題ではないですか、と質問を受けます。

小川:アトリビューション分析は途中プロセスだと思っていまして、最終的に見るのは流入とコンバージョンです。実際はセッションベースのものを見ると思います。月次のモニタリングする際はセッションベースでモニタリングすることを統一しておきます。アトリビューシ分析をするのは、コスト削減や集客予算の最適化のためにやるのであって、報告のためではありません。報告は通常のモニタリングとは別の軸で行う事が大切だと考えています。アトリビューション分析をやる前に、セッション単位で評価をしていたのであれば、それは変わってしまいますが、どういう風に変わっているかが重要です。いままでより良くなっている、精度が高くなっています。変わるけれど、いままでより良くなっていることを受け入れなければなりませんね。精度が上がっていることは、より最適化しているとか、より正しく自分の現状を理解できるということなので良いことです。評価軸は別にもっておくという事で統一すればいいのかなと思います。

有園:ある意味、報告するために軸を変えないことにこだわるというのは、本末転倒ですよね。最終的にコンバージョンをより安くより効率よく増やすためには、評価軸を変えなければいけないということですね。

小川:アトリビューション分析をやる時点で評価軸をかえる必要があります。セッションからユーザにすること自体がドラスティックな訳で、そこをやるんだったらあとはできるよと。

有園:アトリビューション分析に取り組むことで、評価軸が変わるわけですが、御社は抵抗はありませんでしたか?

小川:いまより良くなる、コスト削減できるはずという期待があり、セッションではなくユーザーで見たほうがいいよねという事実は誰もが受け入れてくれると思います。後は結果を出すだけです。

有園:アトリビューション分析に関して、御社内での抵抗はなかった訳ですね。

小川:そうですね。目的があり、いまより良くなるわけですし。

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アトリビューション分析の課題

有園:改めてアトリビューション分析をやるにあたっての課題をお伺いしてもいいですか? 

小川:データをちゃんと集めるということですね。成果となるURLを洗い出すのも大変です。いつ、それが変わったのか記録しなければなりません。データを集め、正しい状態にするのが大変です。また分析を開始するためのハードと人の準備ですね。分析のためのモデルなどを実装して、ログを集計して解析してくれる人の確保。彼らの活躍なしでは実現ができません。

有園:分析、集計はアウトソーシングですか? 

小川:はい、パートナーさんと一緒に協力して進めております。考え方を共有しながら、人を獲得し予算を確保します。膨大なデータも何をつかって集計して、どこに保管するのか。この辺を解決するハードウェアも必要です。

有園:アタラでやるときもサーバーを立てます。

小川:ですよね。ローカルでアクセスできるレベルではないのでそういったものは必要ですよね。先ほどの話でもありましたが、コスト削減の部分で、ログデータをもとにレコメンドなどもしていますのでそのあたりのデータや、単純にアトリビューション分析をするためのデータ集計ではなく、前後の仕組みの構築なども必要ですね。

有園:かなり時間がかかりそうですね。

小川:だから10カ月かかりました。

有園:この10ヶ月は、こうした課題解決に費やしてきたということですか?

小川:そうですね。アトリビューション分析の周辺というか、他のものと関わってきますので、アトリビューション分析を一番優先順位高くやっているわけでもなく、他との調整をしながらですね。

有園:なるほど。10か月やってきて、ある程度結果が出てきた訳ですが、今後はそれらを活かしてどういった方向に進んでいこうとお考えですか?

小川:需要予測の仕組みとアトリビューションの仕組みは作りきりたいですし、実際に施策を打ちたいです。たどりつかなければならないのは、自分や上司を含めこの結果に納得できるということが大事だと思います。色々と改善をしていき、本当に使っても大丈夫だという自信を持ちたいですね。いままでの勘などを含め、各担当者の経験だけではなくアトリビューション分析の数字も使えそうだねと担当者に納得いただければと考えています。

有園:お伺いしていると、いわゆるアトリビューション分析と呼ばれている、バナー広告とリスティング広告の出稿を最適化していくことは出来ていると思いますが、それ以上のところを目指しているわけですね。季節要因や震災の影響、個別の担当者の知見や仮説を取り込んでいくということですよね? 

小川:そうですね。彼らに使ってほしいので。ウェブサイトのオーナーや集客予算を握っている人に信じてもらえなければなりません。

有園:オフラインのテレビなどはアトリビューションのモデルに今後連携していく予定ですか?

小川:テレビCMを流せば検索が生まれるので、結果的にモデルに反映されています。除外はしていません。需要予測に関しては自分で設定できるようになっています。つまりこの月は何GRPだしますと設定すると、過去のデータをもとに予測します。

有園:ということはテレビのGRPだけではなく、御社の場合交通広告なども出している訳ですが、それらも取り込んでいくのですか?

小川:そこは手動の部分ですね。担当者が過去の経験、数字をもとに自分で変数を設定する感じです。ないものは予測できないので。

有園:あとどれくらいで、小川さんが望んでいるものができそうですか?

小川:あと1年くらいかな。どこまでやりきるか、やるべきかも考えているところですね。
 
有園:壮大なプロジェクトですよね。

小川:人数多いですし、コストもかかっています。

有園:コストってどれくらいかかっているんですか? 

小川:億単位ですね。集客予算を5パーセントから10パーセント改善できれば元はとれます。無駄な広告を減らすのはすぐ出来ると思いますが、そこまででいいのか?アトリビューション分析にはステージがあるので、最初にどこを目指すか決めておかないと、はまってしまいますね。需要予測を組み込むところまでやるんだっけ?やらないんだっけ?など。大事なのはアトリビューション分析で一回数字を見てみた時に違いがないことが分かれば自信をもって今まで通りでいいと思います。ただ、みんなにアトリビューション分析の結果を見てほしいですね。正直モデルはなんでもいいわけで、究極はファースト、ラストだけでいいです。アトリビューション分析は自分の会社に関係あるのかないのか。そこだけでも見るべきだと思います。 

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アトリビューション分析はやるべき?やらないべき?

有園:最後にお伺いしますが、小川さんはアトリビューション分析をお勧めしますか?

小川:まずは、Google アナリティクスの「マルチチャネル」レポートを見てほしいですね。成果のうちアシストが含まれる割合を見てほしいです。それが2割3割なら必要ないですね。アトリビューション分析をやるときにかかる時間とリソース、担当者の確保、担当者が費やす時間を考えると、アトリビューション分析をやるよりはSEOやリスティング広告を一生懸命やるほうがいいと思います。SEOやリスティング広告をやりきって、さらに何かというならアトリビューション分析はいいいと思います。

有園:アタラに問い合わせがある方は リスティング広告をやりきっていると言う方が多いのですが、そういった方はアトリビューション分析をやったほうがいいと?

小川:そうですね。チャレンジする価値はあるかと思います。アシストがあった割合や検討期間を見てみて、そこにサインがあれば取り組むべきですね。アタラさんに分析を任せられるなら、やる側は楽というか、嬉しいと思いますよ。我々みたいに、仕組みを作って、モデルを考えて、自社でやるのは相当大変です。

有園:なるほど、自分でやるのは、けっこう大変だということですね。

小川:膨大なデータを扱っていましたし、最初は混沌として方向性を含め定まっていなかったので、内部でやるしかなかったのが事実です。

有園:御社は内部でやるのが正解だと思います。小川さんと議論したりするのは楽しいですが、御社のデータボリュームは外に出すには大きすぎますよ。分析の時間も相当かかりそうですしね。

小川:おかしいな(笑)本当は丸投げしたいのですが。

有園:モデルがいろいろありますし、まず手をつけるのは均等配分モデルということでやったとしても、そこから先に進むのは難しいですよ。

小川:分析はできるんですよね。

有園:分析すると、シミュレーションの結果と現実はぜったいに違うので。それをモデルに当てはめるのは非常に難しいです。とくに御社ぐらいのボリュームでは大変ですよ。

小川:ワンショットではないですからね。メディアプランもありますし。

有園:そう簡単にはメディアプランは変えられないですね。お客様の中には、リスティング広告とバナー広告の扱っている部門が分かれていて予算が別であることも多いので、予算のスライドはすぐにはできませんね。

小川:まずは、分析結果を信じてもらわないと動かせませんね。

有園:ただ、リスティング広告だけでも余地はありますけどね。無駄なビッグワードを出稿していた際、間接効果があると思ってやっていたけれどアトリビューション分析の結果、コンバージョンにはつながっていないことが判明します。

小川:いらないところは削りましょうということですね。

有園:そういった意味では、コスト効率を見てリスティング広告をきちんとやっている場合、リスティング広告だけでは厳しいですね。リスティング広告が最適化されていて、とりきっているのでこれ以上伸びないことがあります。そういうときは、バナー広告との組み合わせを考えるわけです。DSPの登場のおかげで、バナー広告が安く買えて、初回で効きコンバージョンに貢献しているという傾向が見えています。

小川:バナー広告の課題としては、アトリビューション分析結果が施策へダイレクトに連動していないという事ですね。すぐに動けない。分析できました、企画を考えましょう、やりましょう、といっても時間がかかる。この辺の問題を解決するシステムが日本でも展開されると、もう少しやりやすくなると思います。アトリビューション分析ツールもないので、どうしても個人戦に近くなります。

有園:日本にはアトリビューションツールと広告の入札ツールがまだ連動してないですからね。おそらくアメリカからはいってくるでしょうね。人が介在するとモデル通りにいきませんからね。

小川:最適にしたいけれど、できないケースがあります。単純なコンバージョン獲得は違う文脈で出すバナー広告もありますし、競合対策もあります。アトリビューション分析結果で、検索順位で最適なのは3位と出たから3位にするのではなく、お客様の手前 あるいは 営業的な側面から、1位でなければならないこともあります。宣伝費として考えますが、こうした事情もあって完全には最適化できないと思います。

有園:うちでは、アトリビューション分析結果にしたがって、メディアプランを作り直したものをお客様には社内で検討していただきます。代理店さんとの調整も必要ですが、現実的には難しいことも多いのです。バナー広告Aの評価が低いから落とすと、全体の単価が上がってしまうこともあります。バナー広告Aも含めて購入することで価格を安くしてもらっていたので、落としてしまうと単価が上がってしまう。分析をしたけれど、全体の予算見なければならないということですね。バルクでインプレションを購入していたりすると、配信量を減らすことで単価があがったりと。いろいろと大人の事情もあって、理屈通りには仕事は動かないのですよね。
さて、最後に、小川さんからのメッセージをお願いします。

小川:アトリビューション分析という考え方自体は正しいと思います。誰でもわかるはずです。セッションではなくユーザーを見て分析しようというのはベースにあって、ここはみなアグリーなわけです。ただ、こういったものは5年前10年前から議論があってはしぼんでということを繰り返しています。今回のアトリビューション分析の盛り上がりはいいタイミングだと思います。集計するためのデータは取れるようになっていますし、広告も複雑化していますし。アトリビューションをやるための条件はそろっていると思います。ここで大小関係なくやりきったという事例が増えるとアトリビューション分析という活動が一般化され、残っていくんだろうなと思います。だから、やろうとしている人が情報共有して、みんなで情報をだしあって頑張っていくのが第一だと思います。当たり前のものとして定着していくことを目指したいですね。セッションというものがなくなってユーザー単位で分析する事が当たり前の世の中にしたいです。

有園:小川さんもまとまった成果を外に出せるタイミングになったら、事例としてご紹介くださいね。

小川:お任せください。

有園:ありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

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(END)

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ウェブマーケティング分野においても常に先端を走ってきたリクルートさん。実践や試行錯誤から得られたのであろう経験談やインサイトがいっぱいの話でした。モデルや分析の話だけでなく、環境準備、体制などのお話もとても参考になりましたね。
小川さん、貴重なお話をありがとうございました。

コメント

アトリビューション特別対談:MediaMind Technologies株式会社布施一樹・渡邉桂子×アタラCOO有園雄一(2/2)

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*第1部で触れた「Dwell」という指標のホワイトペーパーはこちらでダウンロードできます。

第2部/全2部(2012年1月24日公開分)

DSPと第三者配信エンジンの違いとは?

有園:DSPと第三者配信エンジンの最大の違いは何ですか?

渡邉:レイヤーですね。対象媒体のレイヤーです。DSPの場合はノンプレミアムに限られます。第三者配信エンジンはその上の階層にくるものであり、前述の通りサイト解析ツールと両壁をなすツールだと思います。基本的にDSPはバイイングツールが始点ですので、全媒体の一元管理ができるハブにはなり得ません。プレミアム媒体も全てDSP経由でバイイングできれば別ですが、近い将来に実現できる可能性はまだ低いと考えています。

有園:バイイングツールはDSPであるということですね。それ以外の枠、アドネットワークやDSPで買い付けが出来るノンプレミアム枠以外も含めたキャンペーンのマネジメントをしようと思ったら、第三者配信エンジンが必要になる訳ですね。クリエイティブの出し分けについてはいかがですか?

渡邉:部分的にクリエイティブの出し分けができるDSPもありますが、DSPを複数併用するような場合にデータが孤立してしまいます。小さい分断データは広告主さんにとってあまりよくないことだと思いますので、すべてを大きく繋げるという意味では第三者配信エンジン側の機能を使っていただく方が良いケースがあるでしょう。

布施:すべてにおいてメディアマインドのクッキーを付与して管理することがポイントであり、DSPがそれをできるのであれば我々と同等のポジショニングになると思います。しかし、基本的にはDSP単体で考えたときに複数のDSPが存在しています。やはり、全体をつなげる必要があると思います。それが無い限り、全部クッキーが分断しています。一元的にワンクッキーで管理できるのがメディアマインドです。DSPとの違いは、そこにあります。

有園:そうすると、メディアマインドを使うと、ひとつのユーザに対してのシークエンスコントロールというところを、ネットワークや純広告の違いをまたいだ形で配信できるということになりますよね。利用状況はいかがですか? 

布施:これからですね。そこを肝だと思っている方はいらっしゃいますが、正直まだ少ないです。ただ、我々もすべての用途を把握しているわけではありません。我々の理解としては、第三者配信とDSPが混乱している方が多いようです。当社のお客様は、その辺りは理解されています。

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メディアマインドの特徴

有園:他にも御社のメリットがあれば教えてください。

布施:実は、日本ではサービスにしていませんが、グローバルではメディアマインドの方にDSP機能を持ち、バイイングをしているケースもあります。

有園:日本ではリリースしていないが、メディアマインドにDSP機能があると。

布施:グローバルでは日本に先駆けてアドエクスチェンジ市場が大きくなり、DSPが乱立している状況です。当社としても、メディアマインド独自のDSP機能を持って、そこからバイイングをして、逆にプレミアムで配信したリッチクリエイティブに接触した人に対して、ビッティングをかけるなどしております。プレミアムとノンプレミアムを意識した形でのキャンペーンプランを組み、その中でROIを最大化するということを、代理店が先駆けておこなっています。

有園:日本に御社のDSPが入ってくる可能性はありますか?

布施:可能性はゼロではありませんが、我々が考えているメディアマインドの価値まで到達していません。北米市場と日本市場で第三者配信の成長の仕方が明らかに違う軌跡をたどっています。メディアマインドのDSPをサービスとして提供することが、果たして日本市場を活性化することになるかどうかは確信がありません。我々が優先的にやらなければいけないのは、DSPのインターフェイスをもつことよりもデータを一元的に管理するというカルチャーを作っていくことだと思っています。いま、それが根本的に必要です。我々がDSPで参入したとすると、別のDSPを使っているお客様からすれば、どちらを使えばいいのか迷いが生じます。両方を使えば、データが分断されます。そういったことを繰り返しているうちは、デジタルマーケティングの問題解決のスタートラインには立てないと思います。我々は、アクセス解析ツールと両壁をなすツールとして市民権を得ることが、まずはミッションでありフォーカスでもあります。そのためには、アクセス解析ツールとの連携ですね。インプレッションデータを取ることは、さほど難しくはありません。それをとった後、どのように役立てるかといったPDCAサイクルをしっかりまわせるようなプラットフォームとして、データの出し入れが柔軟にできないといけません。今後パフォーマンスをあげていくために、取得したデータをエンジンの力でどうしていくか。我々が得意とするのは、クリエイティブの配信機能、ローテーション機能と一言でくくりますが、色々あります。

渡邉:機能面でのメリットについて補足ですが、何を出すかは細かく設定が可能です。Aという原稿を1~3回出して、Bという原稿を4~6回出して、Cという原稿を7回目以降に出すといったこともできます。また、時間ベースで朝昼晩を出して、それ以外の人にはデフォルトバナーを出すということもできます。リターゲティングタグを活用して「商品の詳細ページにきたけれど、購入ページにはきていない人、なおかつ、東京からアクセスしている人はターゲットX」としてコミュニケーションを分けることもできます。より具体的な設定について知りたい方には是非お問い合わせをいただければと思いますが、様々な機能を細かく設定していくことによって、バナーでOne to Oneマーケティングに近い形を実現していきます。サイトの閲覧履歴だけでなく、CRM情報や、在庫情報とも連携できます。

布施:我々はオープン戦略をとっており、外からのデータをもとに配信するロジックを組み立てることも可能です。たとえば、媒体社がもっている会員情報であれば、男性女性でセグメントをきった情報をパラメーターとしてもらって、我々がその情報を元にロジックを組み立てることもできます。配信の柔軟性という部分では、特に自信を持っています。

有園:誰に出すかというところでは、御社以外のCRMのデータや媒体社の持っている会員情報などと連携して配信できるんですね。

渡邉:お天気のニュースサイトから情報がもらえるとします。地域情報と一緒に地域ごとの情報をもらったら、アパレルなら「この地域は雨なのでレインコートを出そう」とか、飲食店であれば「雨なのでドリンク一杯サービスというキャンペーンを出そう」ということが可能です。

有園:ほぼリアルタイムで実施できるわけですね。

布施:やはりOne to Oneコミュニケーションは理想的なコミュニケーションの在り方ですが、その際の課題としては、そこに対するメッセージが乗るクリエイティブのパターンを多く用意する必要があります。個別のバナーを用意すると非常にコストがかかりますので、One to Oneを突き詰めるほどコストがかかる仕組みです。しかし、我々はダイナッミックにクリエイティブの中身を変えられる機能を用意しております。スマートバージョニングという機能で、One to Oneコミュニケージョンをしていく上で課題を解決するソリューションだと思います。

有園:この機能はデフォルトでついているのですか?

渡邉:デフォルトの値段より少し配信費用が高くなります。

布施:実は、まだまだ認知されてないものです。これをやっていく上で、クリエイティブプランニングが重要になってきました。ただ単に安いだけでは響きません。

有園:グルーピングは自動ですか?

渡邉:グルーピングは人もしくはData Management Platform(DMP)等が必要です。

布施:ロジック作りは人ですね。それをパラメーターという魔法のキーワードの中に入れて、何を出すかというのは事前に配信設計されたものなので、数が多ければ数多く設定しますが、そこまで事細かくやるとなると自動化が必要になります。グルーピングの自動化ができてしまえば、設計したものに対してデータ連携をしてリアルタイムで動いていくという感じですね。

有園:DMPでグルーピングした際に100グループあったら、それに対する設計は人がしないといけないんですよね?メディアマインドを使う人のクリエイティブのセンスが問われそうです。間違った設定をしたら効果が出ませんし、うまく設定すれば効果が出るということでしょうか。

渡邉:広告の基本はコミュニケーションですから、クリエイティブの重要性が再認識されるところかと思います。もちろん、数多く検証したい、という場合は1グループに100パターンというパターンを作ってしまって、その中からいいものを優先するという設定などもあります。そうすると、後から一番よかったバナーなどを検出できます。最初からシナリオを組んで設計する方法とどちらが良いのか商材によるかもしれませんが、設計の仕方により結果は変わりますし、多くの方が知見を欲しているところでもあるので、今後はもっと国内事例を増やしていければと思います。協力していただけるパートナーを随時大募集中です。

有園:好きな人にとっては、とても楽しい世界ですね。ここで、アトリビューションについて伺います。第三者配信エンジンは自由な配信設計が出来るようですが、DSPとかだけでは全てのクッキーを繋ぎこんでいません。そうなると、アトリビューションのデータ、いわゆるビュースルーからのデータもとれないということになりますが、御社のメディアマインドを使うとアトリビューションの貢献度の数字も出せるということですよね?

渡邉:アドバンスレポートというものがあります。有償のサービスですが、個々のコンバージョンパスデータの詳細が分かります。例えば、コンバージョンまでに5回アドに接触している場合、3回はインプレッションのみで、どのバナーであったか、1回はクリックをしていて、どのバナーであったか、もう1回はリスティング広告のクリックでどのキーワードか等です。このデータにクライアントごとに定義された重み付けを行うことで、アトリビューション分析をしていただいています。

有園:デフォルトの費用以外にかかるのですか?

布施:そうです。モデルの考え方については3種類あります。「全てのデータを評価する」「クリックを常に評価する」「後はクリックのみ」です。アトリビューションもクリックベースでやりたいというニーズもあると思いますので、その場合はそれを選択していただければインプレッションを排除してクリックデータのみで評価します。インプレッションもクリックも同等に評価したいということであれば、フラットに両方取得して評価対象にします。インプレッションがあってもクリックがあればクリックを評価します。また、クリックがなかった場合はインプレッションを評価する。

有園:それが御社のカスタムレポートと書いてあるところで選択できるのですか?

布施:配信のタイミングで選択しているとできます。

有園:どの形でデータを取るかを決めて、初めてデータを取得するんですね。

布施:キャンペーン前に設計します。アトリビューションをやっていく上では事前設計が重要です。結果的にダイレクトレスポンスのキャンペーンなのか、ブランド重視のキャンペーンなのか。ブランド重視のキャンペーンでインプレッションを評価しないのは言語道断です。

有園:メディアマインドでは、キャンペーンする前に設定を決めてからスタートすると。御社のアトリビューション分析機能を使うのではなくて、いわゆるコンバージョンのパスデータを御社のメディアマインドから出力させて独自に分析も可能ということですね。

布施:もちろんです。その場合はフラットにイコールで取得します。

有園:インプレッションデータも出てきて、クリックのデータも出てくる形で取得をして、分析をすると。以前は、自然検索には対応していないのでデータはでてこないと聞きましたが、近い将来対応するのですか?

布施:2012年中には追加していく予定ですし、アナリティクスの部分を刷新していく予定です。チャンネルごとのグルーピングを可視化しやすいような形でレポーティング出来るような、インターフェイスにしていく予定です。それに伴い、ダッシュボードも正式にリリースする予定です。リアルタイムにキャンペーンの効果データがどのように変わっているのかという部分を、データとして出せるようになってきています。やはり、リアルタイム性というところがデジタルマーケティングの肝だと思っています。そこを、我々がより見やすくダッシュボードに出すことによって、プランナーの方は迅速な対応が出来るようになります。そこが、2012年のプランニングの目玉になるのではないかと思っています。

有園:メディアマインドさえ入れておけば大丈夫ということですね。

布施:はい。

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メディアマインドが描く未来

有園:最後に、今後の方向性と可能性についてお聞きします。

布施:今年の6月にメディアマインドがDGに買収されまして、我々はDGの広告部門の会社として存在しています。DGという会社は北米を中心に活動しているテクノロジーベンダーでして、衛星技術とインターネット技術を使ってコンテンツを配信するプラットフォーマーです。実は、90パーセント以上の北米のデジタルコンテンツがDGから配信されています。そこの広告配信部門の傘下に我々が納まることによって、今後テレビとクロスチャンネルを実現していきます。リッチメディアの第三者配信技術の中で、ポイントロール、アイワンダー、ユニキャスト、メディアマインドの4社が世界の中でトップ4だと言われていますが、ポイントロール以外の3社はDGの傘下に入っています。2011年8月に、アイワンダーの買収が発表されました。メディアマインドのプラットフォームにユニキャストとアイワンダーのリッチメディア技術が統合されます。それによって、よりリッチな物を配信していく部分が強化されます。

有園:近い将来、テレビの配信も自由度が出てきそうですね。そうは言っても、インターネットのクッキーとデジタルテレビの端末情報は繋がらないのではといった部分が懸念ではあります。

布施:アメリカの場合はボックスがついています。そのボックスを経由して出来るシステムになっているのですが、日本の場合はまた違う形でデジタルテレビが進化を遂げていくと思います。アプローチの仕方は違ってくるでしょう。やはり、テレビというスクリーンがインターネットとテレビの垣根を超えてしまっています。インターネットとテレビというコンソールは、ひとつになっていこうとしています。それを活用していく形になると思います。

有園:布施さん、渡邉さん、ありがとうございました。

布施・渡邉:ありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

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(END)

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アトリビューションの観点や本質から考えるとビュースルーを含め、配信先を越えたデータの一元管理ができ、その結果全体を視覚化できる点は大きく、このグローバルなレイヤーにある第三者配信は今後も重要なポジションを担っていくのだと思われます。ディスプレイ広告市場の変化から、日本でもようやく注目されるようになりましたが、正しく理解するための情報がまだ少ないのが事実なので今回の解説はとても役立ちました!メディアマインドのデータを活用したアトリビューション分析は今後も増えるでしょう。また、元々強みを持つリッチメディア配信、今後のアナティックス機能の充実、TV等への対応、目が離せませんね。
布施さんと渡邉さん、熱いお話をありがとうございました。

第1部(2012年1月17日公開)
第2部(2012年1月24日公開)

コメント

アトリビューション特別対談:MediaMind Technologies株式会社布施一樹・渡邉桂子×アタラCOO有園雄一(1/2)

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特別対談です!今回は、第三者配信アドサーバーの提供を行うMediaMind Technologies株式会社の、日本支社長である布施一樹さんと渡邉桂子さんをお迎えしました。独自のアトリビューション・メソッドを編み出すアタラ合同会社COO有園雄一が、第三者配信サーバーの視点から見たアトリビューションの取り組みについて伺っていきます。全2回の1回目です。

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第1部/全2部(2012年1月17日公開分)

第三者配信アドサーバーとの出会い

有園:本日は、世界標準の第三者配信アドサーバーを提供するメディアマインドの日本支社長である布施一樹さんと渡邉桂子さんにお話をうかがいます。まずは、自己紹介をお願いします。

布施:メディアマインドの布施です。当社はさかのぼること1999年、アイブラスターという社名で事業をスタートしました。当時は、リッチメディアに特化した第三者配信ベンダーとして、主に媒体社や広告会社にサービスを提供していました。日本では、2001年よりサービスを開始しており、現在は、クロスチャネルのキャンペーンを管理する第三者配信アドサバーベンダーとして64カ国でサービスを展開するまでに成長しています。

有園:布施さんは、いつから関わっていたのですか?

布施:私は2004年から関わっています。日本人社員第一号として採用されまして、当時、DACと共に国内事業の基盤作り、主に媒体社に対する事業開発をしていました。

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有園:なるほど。それでは渡邉さん、自己紹介お願いします。

渡邉:はじめまして、渡邉と申します。営業を担当しています。以前は、媒体社と代理店で勤務しておりました。媒体社に勤務していた2004年頃は第三者配信というと、その実体はよく分からないもの、ちょっとアレルギー反応がありました。でも、2006年頃からマイクロソフトやIBMなどのグローバルアドバータイザーが使い始めているのを目の当たりにし、少しずつ印象は変わってきて興味を持つようになりました。代理店に移ったときには、実際に第三者配信を提案する立場になりました。

有園:第三者配信に興味を持ったからメディアマインドに転職されたのだと思いますが、そのきっかけや理由は何ですか?

渡邉:媒体社で広告営業をしておりましたが、タイアップ記事広告さえ、ページビューではなく、コンバージョン数や関連リンクのクリック数だけを評価対象とされることがありました。記事が閲覧された事実が十分に評価されていないと感じました。閲覧という行為を評価するための物差しがなかったので仕方がないのですが、実際はポストインプレッションコンバージョンというものがあって、それは第三者配信技術で測定可能だと分かりました。その経緯で代理店に転職、次はベンダーに来たという流れです。

有園:今後、ポストインプレッションの効果を図ることはニーズが高まると思われたのですか?

渡邉:データでの裏付けといった部分に、特に重要性を感じました。

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有園:ちなみに、布施さんはカントリーマネージャーとして代表をされていますが、社員第一号として入ったきっかけを教えていただけますか?

布施:アイブラスターに転職する前は、オラクルに勤めておりました。当時のデータベース市場は非常に変革期を迎えていました。私自身、ビジネスのスタートアップ期に携わりたいという思いがありまして、新しい市場で仕事をしてみたいと考え、アイブラスターの求人を見つけました。それがきっかけです。

有園:もとから、第三者配信エンジンやリッチメディアなどに造詣が深かったわけではなくて、どちらかと言うとベンチャーマインドに惹かれて伸びそうだなということで入ったわけですね。布施さんの感性は当たっていたということで、現在、第三者配信エンジンは伸びてきていると思うのですが、アメリカでは第三者配信エンジンはどのくらい普及しているのですか?

布施:私の知る限りでは、デジタルマーケティングのキャンペーンマネジメントでは100%に近い形で代理店さんが使っています。100%というのは言いすぎだと思いますので、あくまでベンダー内の情報だと思いますが、逆に海外の広告主が日本の(あまり第三者配信が使われていない)状況を見て大丈夫かと心配する位です。

有園:現時点ではほぼ100%ということで、アメリカでは普及してきていると理解してよいと思うのですが、日本ではまだまだと思うんですね。ここ数年、第三者配信という言葉を聞いたり、使ったりしているお客様の存在を耳にするようになったのですが、いまの日本の状況をお二人はどのようにお考えですか?

布施:第三者配信という概念はアメリカからきていますので、アメリカでデジタルマーケティングに携わっている方は少なからず接触したことがある概念だと思います。しかし、日本においてはいまだに馴染みの浅い概念だと思います。もともと、日本ではリッチメディアの第三者配信エンジンとして入ってきた経緯がありますので、ごく一部の方々が知るものだったと思います。特に、アイブラスターという社名をご存じの方は、リッチメディアのキャンペーンで関わられていたことでしょう。まだ、メディアマインドって、リッチのアイブラスターのことだったんですか?と言われます。いまは、アトリビューションという概念が注目されはじめており、その状況下で第三者配信技術を活用したDSP、アドネットワークというものが注目されています。日本での第三者配信普及の歴史は欧米と異なるのではないでしょうか。どう進化するとしても、広告のパフォーマンスデータやそれに関連するデータを一元的に管理していないことの多い現状は、引き続き問題視しております。もう少し根底の部分で、この第三者配信をとらえていただきたいと思います。

有園:そうですね。

布施:第三者配信と言っても、いろいろな種類があることを整理したいと思っています。

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第三者配信エンジンを使うメリット

有園:第三者配信エンジンを使わないとビュースルーのコンバージョンがとれないということで、ここ数年、私もかなり第三者配信エンジンという言葉を耳にするようになりました。第三者配信エンジンを使うメリットは、ビュースルーのコンバージョンをとれる以外にもあると思います。そもそも、第三者配信エンジンとは、どのような物なのでしょうか?第三者配信エンジンを使うと、どのようなメリットがあるのでしょうか?

渡邉:第三者配信エンジンという言葉には、広い意味と狭い意味があります。それゆえに混乱を招いている印象を受けます。お問い合わせをいただく際に、第三者配信エンジンについてご存知の方もいらっしゃいますが、「アドネットワークのことでしょ?」とか「DSPと何が違うの?」や「そもそも第三者配信って何?」といった質問を受けます。広い意味では、当事者である自社のアドサーバー以外のサーバから配信していることが第三者配信になります。つまり、アドネットワークやDSPも第三者配信の技術の上に成立します。狭い意味での第三者配信のベンダーというのが、我々メディアマインドのような存在です。それは何かと言うと、広告主側で管理するアドサーバーであり、デジタルマーケティングのOSとしてデジタルマーケティングの機軸となる存在です。海外ではキャンペーンマネジメントプラットフォームと呼ばれています。

有園:広い意味では、第三者配信エンジンもアドネットワークと同じと言える。しかし、狭い意味ではメディアマインドさんのようなキャンペーンマネジメントができるもの、という位置付けであると。

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渡邉:キャンペーンマネジメントプラットフォームとは何かというと、アクセス解析ツールと両壁を成す広告主さんの武器です。たとえば、図のように広告主がいて自分達のデータベースを持ち、自分たちのウェブサイトを運営しているとします。メディアマインドというキャンペーンマネジメントプラットフォームは、広告主側に属し、外部施策(主に全ペイドメディア)の情報を集約します。一旦サイトを訪問してからの情報はアクセス解析ツールでマネジメントします。この両輪を上手く連結してデータを活用することが「PDCAサイクルを回す」ということになると考えています。ペイドメディアとしては、リスティング広告の媒体社だったり、ソーシャルメディアの媒体社だったり。あとはプレミアム枠と呼んでいますが、純広告枠を持つ媒体社、さらにノンプレミアム枠といわれるアドネットワークやアドエクスチェンジがあります。モバイルスマートフォン広告などもあります。これら全てに配信し、クロスチャネルのデータを一元管理します。ちなみに、よく混乱を招くDSPとの違いは、ここにあります。DSPはノンプレミアム枠をバイイングできますが、プレミアム枠についてはその対象範囲外です。確かに、DSPを活用してリターゲティングの在庫だけ購入することは効率的なのですが、リスティング広告で効率性を追求していくと母数が増やせなくなるように、ノンプレミアム枠だけで追求しても母数を増やすことに限界が訪れます。そこで役立つのが、純広告・プレミアム枠だったりします。繰り返しになりますが、重要なのは、第三者配信のアドサーバーがハブとなって、リスティング広告やソーシャルメディア、純広告、ノンプレミアム枠など、すべてをブリッジして配信し、そのパフォーマンスデータを集約することです。その結果を、広告主に戻すタイミングで、彼らのデータ(例えばアクセス解析ツール側で取れる情報)とマージをして、データをためていきます。そのデータをセグメント化し(例えば実際にウェブサイトにきて買った人=グループX、買ってない人=グループYのように定義化)セグメント別に再度配信をします。すべての媒体をつなげてネットワークを築くためのツールが、この第三者配信プラットフォームです。細かく媒体を区切って小さくPDCAを回すのではなく、広告主としての一大オリジナルネットワークを作ってダイナミックにまわす。変化する状況に応じて、施策を変えていくことが重要であって、そのためのツールが我々の提供するソリューションです。

有園:技術に詳しい方なら分かると思いますが、御社の第三者配信エンジンを使うことによって、すべての媒体、すべての枠に配信されたものが、ひとつのクッキーでつながるということですね。リスティング広告は配信するのではなく、データを連携するということですが、どのようなやり方をするのですか?

渡邉:API連携をしているので、システム側にリスティング広告のIDやパスワードを入れていただくことで、裏側でURLの書き換えラッピングをおこないます。リスティング広告側の運用に一切影響を及ぼすことがなく、データのトラッキングができる仕組みです。クリックトラッキング用のリダイレクトURLを発行するなどの苦労なく、何千というキーワードをトラックできます。

有園:ソーシャルメディアはどうですか?

渡邉:ソーシャルメディアも対象です。Facebookは配信タグ自体を受け入れていませんが、トラッキングタグは受け入れています。広告そのものは配信しないけれど、データは収集できる。すなわち、投資がすべてデータに換えられるので無駄がありません。配信を受け入れてないプレミアム媒体(Yahoo!など)もクリックトラッキングをすることで、パフォーマンスデータの中に組み込んでいくという仕組みになっています。

布施:媒体側でも広告効果促進のためにリッチ化を戦略的に進めています。たとえば、ブランディングキャンペーンの中でリッチバナーのみを配信するのではなく、リッチバナーとスタンダードバナーをミックスすることでROIの向上を目指します。ファイナンス系クライアントさんの事例では、ブランディング目的のリッチバナークリエイティブを1回目と2回目のインプレッションで出したところ、もっともコンバージョンが上がりました。スタンダードバナーで配信するよりも、初回はリッチバナークリエイティブでリーチして、その後にスタンダードバナーで刈り取る。このような異なるフォーマットを織り交ぜることによって、コンバージョンをあげていく施策がありました。通常媒体側で用意しているリッチバナーの仕様に関しては、基本的に媒体側のテクノロジーに依存します。ただ、当社側がリッチメディアソリューションを持っていることによって、媒体側の負荷を軽減しながら、かつ、一定の標準化されたものを実装できます。当社ならではの特徴は、リッチメディアではないかと思います。

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メディアマインドの測定指標「Dwell」とは?

有園:リッチメディアの話は非常に面白いと思いました。初回でリッチメディアを出したほうがもっともコンバージョンが増加したということは、それだけ効果があったということだと思います。リッチメディアを見せることの効果測定には、御社は特別な指標があると伺っています。

渡邉:Dwell という指標があります。Dwellとは、ユーザが広告と関係を持っている時間やレートのことを指します。インタラクションに近いですがDwellでは接触時間も評価対象となる点が異なります。たとえば、ビデオが入ったバナーでは、3分間再生していてもその長さをインタラクションとして評価できませんが、Dwellの場合は1秒以上のオンマウスを含む広告に滞留している時間をDwell Timeとしてカウントします。また、配信インプレッション中にユーザがエンゲージした割合をDwell Rateとし、Dwell Time とDwell Rateを掛け合わせてDwell値を算出します。マイクロソフトさんとコムスコアさんと、アメリカで実際に行ったリサーチがあるのですが、Dwell値が高ければ高いほど、ブランディングに寄与するという結果がでました。具体的には、Dwell値が高いほどブランド系のキーワード検索の比率が高まり、ウェブサイトの閲覧数が増える、コンバージョンレートが向上するなどの傾向が立証されています。

有園:Dwellというのは日本では耳にしない指標だと思いますが、御社独自の指標と考えた場合、アメリカでは結構使われているのですか?

布施:Dwellは、メディアマインド独自の指標です。前述のマイクロソフトさんとコムスコアさんとのリサーチは三社で共同のホワイトペーパーも出しています。最近ようやく、ポストインプレッションが日本で市民権を得てきたと思います。これまでは、技術面での制限からクリック依存型の評価が中心になってきましたが、リッチメディアクリエイティブですと、接触のみで(クリックしてキャンペーンページに飛ばずに)エンゲージメントが完了しています。クリックされなかったからといって、評価しなくて良いのでしょうか。デジタルのクリエイティブを評価するうえで、CTRインタラクションという指標がありますが、インタラクションはマウスの動きをベースとしたしたものですので、マウスのアクションが多いほどインタラクションが上がる仕組みになっています。その場合、クローズボタンを押したこともインタラクションとして評価されてしまうという穴があります。そこでポジティブのアクティビティーだけを評価することを、第三者配信ベンダーが共通してやり始めましたが、動画が増えてきて、動画は視聴率なのでインタラクションが交わらなくなってきました。ですから、動画と実際のマウスエンゲージメントを総括して測る指標が必要だと。それを我々はDwellと呼んでいます。

有園:メディアマインドを使うと、アトリビューション分析がビュースルー含めた形で出来ます。なおかつ、リッチメディアを配信した場合には、Dwell値とコンバージョンがどうなっているか。Dwellスルーコンバージョンみたいな感じでしょうか?調査によるとDwell値が高ければブランド系キーワードの検索ボリュームが増えていると。私の知る限り、他のツールでできるところがないという理解で大丈夫ですか?

布施:Dwellはメディアマインド独自のKPIです。もちろん、他のツールが採用したいということであれば、我々も業界標準にすべく動いていますので、ウェルカムです。

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データ一元管理への道

有園:先ほど、第三者配信のメリットとしてデータを一元管理できるという話があったのですが、そうするとGoogleディスプレイネットワークのリマーケティングとか、それ以外のサービスを使わずに、御社の第三者配信エンジンだけでとったクッキーでリターゲティングの設定をしたほうが効率的のように思います。たとえば、Googleのリマーケティングを使うと同時に、御社のリターゲティングの設定をするのはちょっとナンセンスですか?

布施:併用は可能です。KPIとキャンペーン設計次第ですね。例えば、最初は媒体側のリマーケティングを利用して、ある程度のターゲットを分類したあとで、そこからキャンペーンマネジメントという概念でクリエイティブ評価も含めてコンバージョンを高めていくということになります。そうなると、リアルタイムなプランニングが必要です。媒体側のリマーケティングメニューだとリアルタイム性や媒体横断の観点から見ると自由度が下がってしまいます。そこを、フロントでメディアマインドをキャンペーンマネージメントツールとして置くことによって、活用範囲を広げます。アドエクスチェンジの世界でも同様です。DSP自体は第三者配信ですが、そこにキャンペーンマネジメントの機能が十分で無いのです。買ったものを出すという第三者配信であり、そこをどのように出していくのか。実際に出すものをどう変えていくのか。そこはリッチメディア の出番です。恐らく、将来的にはDSPでのリッチメディア対応もあると思います。しかし現時点では、その役割は純広告だと思います。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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2/2に続く

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