アタラ

アトリビューション特別対談:Fringe81代表田中弦×アタラCOO有園雄一(2/4)

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第2部/全4部(2011年7月27日公開分)

広告代理店さんがアトリビューションを取り入れる場合

田中:ちょっと視点が変わりますが、広告代理店さんでこうしたアトリビューションをやろうとすると部署がわかれているのでややこしいと思いますね。

有園:そうですね。

田中:アトリビューションはやる方が大変だと思いますが、お客さんにとってアトリビューションはとても得なことだということを伝えたいです。

有園:伝えたいですね。

田中:アトリビューションは新しい概念で、捉えどころのないフワフワしたものと思われがちです。しかし、やり尽くしたものもあれば、まだ手をつけていないもの(ディスプレイ)もある。これらを適切に組み合わせたら、もっと改善できるし結果も出せるでしょう。それを実現するのがアトリビューションだよということを強烈に謳っていきたいです。

有園:そうですね。代理店さんの話が出ましたけど、実は、代理店さんからもアタラにお問い合わせがあります。代理店さんに対してアトリビューションの勉強会をさせていただいてたり、代理店さんからのご依頼でクライアントの情報を分析してシミュレーションしてお返ししたり、ということをやり始めてます。

田中:そうですか。

有園:代理店さんのなかにも、「アタラと一緒に仕事をやりたい」というスタンスのところもあれば、「やりにくい」という声もあるかと思いますが、部署を横断的に考えてアトリビューションについて前向きに捉えようという動きは代理店さんの中でもかなりでてきていると感じています。

田中:それは本当に思いますね。先日、ある代理店さんに聞いて「ほ〜う」と思ったことがあります。

有園:ぜひ聞かせてください。

田中:その代理店さんはサーチをかなり大規模にやっていて、ビッグクライアントも沢山もってらっしゃるのですが、「アトリビューションとか出てくると、また面倒臭い事になると思います?」って質問したら「そうではない」と。

有園:へぇ〜。

田中:「サーチとディスプレイを組み合わせる」と言う考え方は広告代理店の得意分野なんだと。広告代理店は、いろんな集客手段を組み合わせてどういう風に集客していこうか考えるのが仕事なので、アトリビューションの概念は好きだよと言っていました。そういう考え方をしてくる代理店さんもいるんだなというのが驚きでした。

有園:なるほど。ある意味、アトリビューションは代理店さんの本領発揮みたいなところがありますよね。複数媒体を扱えるからこそできることがありますね。

田中:そうなんですよね。だから余計に、広告代理店さんがどんな組み合わをするのか見てみたいって思っています。代理店さんからもアトリビューションに対して前向きな言葉をかけていただくんで、一斉に声をかけられると大変ではありますが、きっと盛り上がると思います。

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アトリビューションを解明する

田中:あと、アトリビューションについては、日本で誰も解明していないというところが良いですよね。

有園:解明?

田中:ビュースルーコンバージョンって本当にあるんだっけ?とか、ディスプレイって本当にサーチに貢献してる?とか、みんな気になっているけれど誰も解明していないじゃないですか。これを解明できたら楽しいですよね。

有園:なるほどなるほど。多分、そういうことをきちんと調査してリリースを出している広告代理店さんや会社は日本ではまだ無いですよね。アメリカのほうだとけっこうありますが。

田中:アメリカにはありますね。実績あるはずなのに、小出しにしているかんじではありますが。もっとデータを出してくれたら良いのにって思いますよ。

有園:まだアトリビューションという言葉だけではちょっと響かないときもありますが、アトリビューションに関連するニーズの高まりという点では、広告主の方は段々と高まってきたと思います。媒体社さんの反応はどうですか?

田中:媒体社さんはまちまちですね。ただ、RSSのアドネットワークは専門系の媒体社さんが多いので、専門系の媒体社さんは単価が高いからCPC換算すると広告主さんは、「ちょっと高いよね」と必ず二の足を踏んでしまうんです。

有園:そうですね。

田中:でも、メディアさんに、「実は、それは間接効果を出したら結構なボリュームのコンバージョンを出していたことが分かると売りやすくなりますよね?」と聞けば「そりゃそうですね」という風になります。これは喜ばしいことです。

有園:はい。

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第三者配信エンジンの魅力

田中:そもそも、三年位前には同じことをやるためには第三者配信エンジンが必要なんですけど、「第三者配信でやりましょう」と言うと「嫌だ」と言われましたね。

有園:ちょっとそこに、それを入れたくないみたいな。入れたくない理由って何なんですかね?

田中:いろいろあると思うんですけど、一番大きかったのは掲載可否確認。特にアメリカの第三者配信でいうと自由にばんばん入れ替えられるって方式が主流なのでチェックできないところがあったりするので。

有園:では掲載可否の管理ということですね。いわゆる枠管理みたいなのはどうなんですか?

田中:枠管理はあらかじめ何枠と決まっているので、それは例えば30枠あって10枠が第三者配信になるかどうかというのはあまり問題じゃないですね。

有園:ということは、変な広告は出したくないというところの確認は人間がしなければならないのでしょうけれど。

田中:はい。でもそれはベンダーとメディアさんでちゃんと紳士的にやれば解決します。全部事前に可否をとっておくとか。あとは第三者配信でやると全部見えてしまうということがあったりします。

有園:全部見えるんですか?全部見えるというのは、クリック数とかインプッション数とかという話ですか?

田中:それもそうですし、例えばフリークエンシーとかもわかるので。ただ多いフリークェンシーが駄目だというわけでもないので、そこはちゃんと言えばいいですし。なので、間接コンバージョン見て、もっと価値上げていきましょうよという話をして、第三者配信をしましょうと言うと、まあ90%は大丈夫です。

有園:そうですか。なるほど。では、見えてしまうということよりも効果を見せる方が大事だという風に媒体社さんの意識も変わってきているわけですね。

田中:かなり変わってきています。

有園:媒体社さんによって反応はまちまちだけれども増えてきていると。例えば、10社に話をするとどのくらいですか?

田中:9社はOKです。

有園:なるほど。それで間接効果を出していきましょうというのも皆その方向で動いていると。

田中:そうですね。

有園:大手も結構そうですか?

田中:大手もそうですね。

有園:新聞社さんであったりとか、日本で一番大きなYahoo!さんとかはまた違うかもしれませんが。

田中:Yahoo!さんとかはまだですけれども、他の媒体社さんはもうほとんどOKじゃないですかね。あまり駄目と言われたことがないんですよ。ポリシー的にまだ受け入れていないというところはありますけれども「ここだけだったらどうですか」という話をすると「それはOKです」と言われます。

有園:それは中面みたいな話ですか?

田中:そうですね。「中面だったらいいですよ」というのは出てきてますね。なので、今は拒否されることがない状態ですね。

有園:実は、私もとある媒体社さん、大手のニュースペーパーなんですけど、アトリビューションの勉強会をしてほしいと言われてお話をさせていただいたことがあります。そういう意味では、媒体社さん側でも温度が上がってきていますね。

田中:そうですね。

有園:媒体社さんとしてもアトリビューションをやることで広告の間接効果をきちんと出せるようになり、売り上げを上げていけるんじゃないかという思いが出てきているんでしょうね。

間接効果と直接効果はどっちが偉い?

田中:ところで、方法論とかそっちの方に入っちゃうかもしれないんですけど「直接コンバージョン」っていうとめちゃくちゃ偉い感じがするじゃないですか。「間接コンバージョン」「間接効果」っていうと、あんまり偉くない感じですよね。

有園:あははは。それは、「所詮、間接的でしょ」「あんた最後に力発揮してないじゃん」みたいなことですか?

田中:そうです。そうです。日本語の印象では、直接よりも間接の方が弱いと思われることってあるんじゃないかなと思って。

有園:たしかに。

田中:たとえば、バーナーを見て実際にクリックする人ではなく、バナーを見て、後から他の経路で、たとえば、サーチとかでアクセスする場合をビュースルーアクセスというのですが、計測してみるとクリック数の二倍から十倍のアクセス数が出ます。直接のクリック数が100だとすると、200から1000ぐらいアクセス数が出るんです。純広告で良い枠だと、そりゃあ広告を見たでしょうね。そうじゃないとなかなかサーチってしませんよね。

有園:はい。

田中:ということを考えると、純広告をCPC換算で300円で買ってました、という場合、トータルの流入数はまた違うわけです。二倍でも実は150円でした。アクセスを誘発しているので。十倍だったらCPCってあれ何だったっけとなる。

有園:なりますね。

田中:だから純広告ってアクセス稼ぐだけにしても単純に直接のクリック数だけ見たのではだめだなと。ビュースルーだけ見てみても、二倍から十倍に増えているじゃないですかと、アクセスめちゃくちゃ増えていますよと。それでも間接効果って言うんですかね?って気がしてしまうんです。

有園:なるほどね。

田中:何かいい言葉ないかと思ってます。間接って言葉のインパクトが弱くて。間接効果っていうと、たまたま流れ弾にあたったみたいじゃないですか。

有園:流れ弾って(笑)田中さんの会社の資料に「迂回コンバージョン」って書いてあるのは、そうゆう理由からですか?

田中:そうそう。間接って言葉が嫌いだから、自分で考えてつけたんです。

有園:そうでしたか、正直「迂回ってなんだよ。間接でいいじゃん」って思っていました(笑)いま納得です。

田中:流れ弾って言ったら語弊があるかもしれないですが、「たまたま効果があった」みたいに思われるのが悔しいんです。

有園:たしかにね。

田中:アシストってあったじゃないですか?あの概念。あれも、すごくショボイネーミングな気がするんですよね。ゴール前でちょろっとパスしましたみたいな。

有園:しょせんアシストだろう?と。アシスタントみたいな感じですね。主役ではないと。なるほどね。じゃあ、「リードジェネレーション」とかどうでしょう?ちょっと違うかな?

田中:どうなんですかね。多分、アトリビューションっていった時に「間接効果を明らかにして予算配分を変えましょう」と話をすると、間接とかアシスト効果って言うと軽くちょろっとしかやっていない感じがしちゃうので、実際はすごく重要なことなのにその大切さが伝わらないような気がして。それがネックです。

有園:おもしろいですね。言葉に関してはそこまで敏感には考えていなかったのですが、田中さんがおっしゃりたいことは理解できます。

田中:よかった(笑)

松井とイチローはどっちが偉い?

有園:じつは、先日、Attribution.jpに投稿したのですが(http://www.attribution.jp/000069.html)、その中で、松井とイチローの例を使っています。最後に刈り取るのが得意なのはリスティング広告になるわけですが、野球でいうと、リスティング広告は打点をあげているようなものです。そうすると、松井はリスティング広告。最初にウェブサイトにランディングさせる施策は一塁ベースに出ていくことに似ています。シングルヒットを打つイチローです。バナー広告はイチローだと。

田中:おもしろい例えですね。

有園:そういったときに「松井とイチローはどっちが偉いんですか?」と聞けば、現状で評価が高いのっておそらくイチローの方ですよね。あれだけシングルヒットを打つイチローには高い評価がある。

田中:そうですね。

有園:ウェブサイトにランディングさせるためには、たくさんのビュースルーが必要です。そのビュースルーを評価しないということは、イチローを評価しないのと同じですよってことを言いたかったのです。田中さんのいう、間接効果を評価しなくてもいいのか、みたいに。

田中:うんうん。

有園:サッカーに例えた「アシスト」と「ゴール」と言う説明は使い古された感があるので、あえて野球に例えてみました。イチローって偉大だろうと。

田中:偉大ですね(笑)一塁に出れないと点数は入らないですからね。間接っていうとバントだけしているみたいに聞こえます。

有園:そうそう。イチローは一塁にも出るし、盗塁だってするんだぞと。さらに先に進塁するのは、ある意味で、態度変容を引き起こしているみたいなもんですよ。イチローを評価するならバナー広告だって評価しないとダメですよってことが言いたくて。

田中:おっしゃるとおりですね。きっかけは何ですかって話ですよね。

有園:そうなんですよ。

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コンバージョンのきっかけは何か

田中:商品名とか知らない人が、いきなり指名買いワードで検索してくるわけないですよ。知るきっかけが必要で、それがバナー広告だってことはよくあります。もちろん、記事広告やタイアップ広告などいろいろありますが、きっかけを評価しましょうってことを強く言いたいですね。

有園:そうですね。

田中:アシストを評価する、間接効果を評価するって言うと響かないのかもしれませんが、コンバージョンとなるきっかけを評価しましょうって言うと少しは違うのかなぁと。きっかけがないとコンバージョンしませんからね。

有園:ごもっともです。広告の言葉で言うと、アテンションとかインタレストとかAISASでいうやつですね。購買サイクルの中での認知。認知していないと指名検索はないじゃないですか。だから、アトリビューションは認知を評価しましょうって言っているのに近いと思うこともありますね。いかがですか?

田中:どうなんでしょうね。いわゆる、AISASとかはマーケティング的には正しいと思いますよ。ただ、おもしろいことに、バナーを一回見ただけでコンバージョンする人もいるんです。

有園:へぇ〜。

田中:ダイエット食品のバナー広告を見ただけで「痩せたいから買おう!」即クリック、即購買と。いきなりAIDMAのAからAまでボーンと飛んでしまうんです。

有園:おもしろいですね。

田中:そう考えると、AさんとBさんとCさんにとってバナー広告の果たす役割は違うんですよね。Aさんにとっては認知。Bさんにとっては即コンバージョン。Cさんにとっては検討するきっかけになってサーチに結び付くことはあります。そう考えると「認知」だけではないのかなって思っています。

有園:認知だけではないと思います。きっかけとおっしゃったので、そこでいうと認知かなと。

田中:コンバージョンパスの中にある認知ならそうですが、単なる認知ならちょっと違うのかなと思いますね。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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3/4に続く(2011年7月28日公開予定)】

第1部(2011年7月26日公開予定)
第2部(2011年7月27日公開予定)
第3部(2011年7月28日公開予定)
第4部(2011年7月29日公開予定)

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アトリビューション特別対談:Fringe81代表田中弦×アタラCOO有園雄一(1/4)

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特別対談です!先進のインターネット広告テクノロジーソリューションを輩出し続ける革命家ゲバラ隊長ことFringe81の代表 田中弦さんをお迎えし、独自のアトリビューション・メソッドを編み出すアタラCOO有園雄一と、アトリビューションを中心にした様々なトピックについて語り合います。全4部の対談を今週は連日お届けします。

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アトリビューションがインターネット広告業界に革命をおこす

第1部/全4部(2011年7月26日公開分)

アトリビューションとは何か

有園:本日は、Fringe81代表の田中弦さんをお招きしていろいろをお話を伺っていきます。

田中:アトリビューションについて語る会、はじめましょうか。

有園:よろしくお願いします。

田中:はじめに、いったいアトリビューションって誰が言い出したんですか?

有園:誰が言い出したのかは私にもわかりませんし、誰が言い出したって明確な誰かがいるわけではないのかもしれませんね。

田中:そうなんですね。

有園:ただ、私が知っている限りでは、2009年ごろにサンノゼで開催されたSES(Search Engine Strategies)というイベントでレノボさんやクリアセーリングというベンダーなどがアトリビューションについてのセッションでディスカッションを行っていて、その頃から注目がたかまり始めたのはたしかだと思います。

田中:そうでしたか。2009年なんですね。

有園:実は、そのときのイベントに参加した訳ではありませんが、当時グーグルに勤務していて社内でも話題になっていたことを記憶しています。SESとは検索業界のイベントなのですが、サーチに携わっている人たちのなかで、コンバージョンにつながったものを分析するのは、いまでいうラストクリックを評価対象にしているのですが、そのラストクリックに至る前の媒体への接触が検索を誘導していて、そこがとても重要ではないのか?という問題提起になっと理解しています。

田中:へぇ~。

有園:たとえば、日本ではテレビCMに検索ボックスが入っていて、見て気になるものを検索した場合やバナーをクリックしてブランド名を覚えて、そのあとに検索するなどがありますよね。

田中:ありますね。

有園:指名検索をしてリスティング広告をクリックすることはありますが、その前にバナー広告がリスティング広告のクリックを後押ししているのではないかと考えられていました。

田中:はい。

有園:リスティング広告は何かに誘発された結果であって、リスティング広告のクリックを誘発したバナーやその他のほうが、リスティング広告より重要なのではないか、そこに予算を振り分けたほうがいいのではないか、ということについて調べて、問題提起をして、実際にやってみたら良い結果が出たんです、というような話しをレノボさんも発表したんだと思いますね。

田中:おもしろいですね。

有園:アトリビューションという言葉ですが、英語で貢献度合いを、1コンバージョンは何から発生したのか、貢献は何のお陰なのか、というのを意味する言葉が attributeと言います。そこからattributionといわれるようになっただけではないかと思います。誰がアトリビューションやアトリビューションマネジメントという言葉を言いだしたのかは分かりませんけど。

田中:最初はサーチのほうから実はね、と言う感じになってきたんですか?

有園:SESではそうですね。

田中:グーグルとかヤフーは、彼らはディスプレイネットワークをもっているんで、サーチとディスプレイの相関関係どうなっているんだっけ、というところが判明してくると、両方儲かってきますよね。

有園:そういう売り手側の戦略というものが働いていたかもしれませんね。

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アトリビューションとアトリビューションマネジメントの違い

田中:ところで、アトリビューションとアトリビューションマネジメントってちょっと違うんですよね?

有園:違うといいますと?

田中:僕の理解だと、アトリビューションはどこがどういう風に寄与していますねってことを分析することで、アトリビューションマネジメントはアトリビューションの結果を受けて、予算をディスプレイにもってきたり、媒体AとBがあったら、実はBのほうが貢献していたので予算を媒体Bに傾けましょうというような、予算管理がアトリビューションマネジメントなのかなって思っていました。その認識って合っていますか?

有園:合っていると思います。

田中:アトリビューションの定義が、サーチの数だけ増やしましょうという定義だったり、アクセス数を増やしたい場合、一番効率の良い広告の組み合わせは何なのか、という定義だったり、ディスプレイと、サーチのワードと組み合わせなどを分析してコンバージョン数を増やしていくのがアトリビューションマネジメントだと思っている人もいるのかなと思っていました。いろいろな立場によって違うので定義が難しいですよね。

有園:マネジメントというくらいですから、何かをマネジメントしているわけで、そのときに予算配分であったり、メディアプランであったりを見ていくと田中さんはイメージされているわけですね?

田中:そうですね。

有園:私自身も、そのような理解でアトリビューションという言葉をつかっていますね。アトリビューション分析といったら、1コンバージョン発生したときは、どこの何がどのくらい貢献したのかを考えてやっています。

田中:はい。

有園:アタラの話をしますと、アトリビューション分析をやった結果にもとづいて、シミュレーションをして、バナーAとバナーBがあったとして、バナーBのほうが効果が高いと判断されるならば、バナーBに予算を振り向けましょうというようなシミュレーションまでして、実施して結果を見て、結果が良ければまたやりましょうというようなPDCAサイクルを回していけるようにするのがアトリビューションマネジメントであると言っていいのではないかと思っています。

田中:そうすると、今度は、そもそもアトリビューションマネジメントってやったほうが良いんだっけ?という話になりますよね。

有園:そうですね。

田中:いまって、サーチやっている人はサーチの人、ディスプレイやっている人はディスプレイの人という感じに分かれていて、Googleディスプレイネットワークはその真ん中くらいの位置づけで、それぞれが分断していますよね。

有園:おっしゃる通りですね。

田中:それを一緒に、予算管理して予算の振り分けを考えたりするようになれたらお客さんにとってお得なのでは?ということですよね。僕は明らかにお得だと思っているんですが、有園さんはどうですか?

有園:私もそのほうがお得だと思っているのでアトリビューションに携わってその分析を仕事としているわけですが、お客様のなかにはそのこの課題をきちんと把握されていないケースもあるかもしれませんね。

田中:そうですね。

有園:ただ、アトリビューションって言葉は誰が言い出したのかわかりませんが、ここ3~4年で耳にする機会は増えましたね。海外事情にもお詳しい田中さんは、広告を配信する側としていまの流れをどう感じていますか?

田中:自分の立場を無視すると、アトリビューションっていったい誰が得なんだって思ったときがありました。重要なのは、お客さんにとって得かどうかってことじゃないですか。

有園:おっしゃるとおりです。

田中:そうすると、サーチとディスプレイが分断していると、それぞれが個別に最適化するしかなくて、特に大手広告主さんのリスティング広告の個別最適化ってほとんどやり尽くした感がありますよね。

有園:ありますね。

田中:そうなると、リスティング広告の最適化というと、さらなるものが必要になりますよね。

有園:はい。

田中:だから、バナー広告を実際に見た人、クリックした人がどれだけサーチの刈り取りに貢献できたかを見ていこうよって話が出てきたのかなって思いました。それで、結局はコンバージョン数がめちゃくちゃ増えましたって話になると良いなって思っています。どうも増えそうだって感じが僕とアタラさんの共通理解としてあるのかなって思っています。

有園:ありますね。

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リスティング広告の課題

田中:そこで広告主さんは「アトリビューションマネジメントやって本当にコンバージョン増えるの?」って話が出てくるのかなぁと思います。

有園:そうですね。アタラとしては、アトリビューションの普及を課題としています。そこで、Attribution.jpというアトリビューション情報サイトを開設して情報発信をしています。

田中:いつからでしたっけ?

有園:2010年11月30日ですね。アトリビューションを日本へ導入したほうがいいよねって話になるきっかけとして、アタラの代表である杉原が海外の情報を収集したりアメリカのSESなどのイベントに参加するなかで「アトリビューション」という言葉をよく聞くなと。日本にも導入したほうがいいよねってことになって、アタラを起業するころからアトリビューション情報サイトを作る予定でいたわけです。

田中:へぇ~。

有園:私自身も杉原とはグーグルで一緒に仕事をしていたので、アトリビューションという概念が出てきているということは認識していました。お客様のなかにはリスティング広告をたくさん出している企業がいます。リスティング広告を月額数千万円単位で使っている企業は、なかには億単位の企業もいますが、そうした企業はキーワードを100万単位で出稿しているわけですが、そうした企業は改善をやり尽くしています。

田中:やりきっている感はありますね。

有園:リスティング広告で可能性のあるキーワードはほぼいれていますし、自動化ツールもいれて最適化をやりつくしています。

田中:そうですよね。

有園:もちろん、細かい微調整や改善の余地は残りますが、人間ができる範囲はやり尽くしてしまっていますよねという状況が多いのです。それでも、コンバージョンは増やしたい、やれることは頭打ちであってもコンバージョンを増やし続けなければならないというミッションを背負っている担当者は多いのです。

田中:なるほど。

有園:企業としては常に伸びていかなければならない。そうなってくると、リスティング広告だけではもう伸びない、というときに何ができるかという話になります。
そういう状況の中で、たとえば、とある外資の大手コンシューマー向けパッケージグッズを提供している企業が、グーグルでいうコンテンツターゲットをうまく最適化して出稿した結果、リスティング広告よりもCPAが安くなったという結果がでました。

田中:へぇ~。コンテンツターゲットでリスティングのCPAを上回れるんですね。

有園:私がグーグルにいた頃に同じチームの人間がこの案件を担当していたのですが、試行錯誤した結果、コンテンツターゲットも効果的だという結論に至りました。そうすると、検索連動型広告だけではなく、他のものにも可能性があるのではないかという流れができていきましたね。

田中:おもしろいですね。

有園:あとは、検索ボックスにキーワードを入力して検索すると検索結果がだーって出ますよね。

田中:はい。

有園:検索で来たときにはリスティング広告でお客様を捕まえることはできなかったけれど、自然検索結果の一つのサイトへ飛んだ先に自社のアドセンス広告枠が出ていてクリックをしてもらえれば、そこで捕まえられることもあると。その流れでグーグルは儲かります。

田中:儲かりますね(笑)いいなぁグーグルは。

有園:でも、うまく組み合わせることで広告主にとっても効果があれば双方共に良いのではないかと。リスティング広告で行き詰まっているお客様にとってアトリビューションというのは次のソリューションとして選択肢になるんだろうなって思いはじめたきっかけとなる出来事です。

田中:そうでしたか。個別でも最適化できた、となると次は組み合わせ、ですね。

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アトリビューションの果たす役割

有園:つまり、検索連動型広告とそれ以外のコンテンツターゲット広告への予算配分を最適化する余地があるな、と。そのような流れで、お客様のニーズが検索連動型広告以外にも向いてきたことを感じました。

田中:いま有園さんからサーチ由来のアトリビューションについてお話いただきましたが、いままで僕はサーチの世界の人間ではなかったのです。ディスプレイ広告のソリューションをやっていますので、広告主さんからは、純広告やアドネットワークの出稿ってどうやって改善するんですかという質問が来ますし、アドネットワークをやっていることもあって、メディアさんとのお付き合いが多いのですが、「いまは純広告がなかなか売れないんです」って言う話はよく聞くのです。どのくらい売れないのかと言うとセルスルーレートで言うと50%~30%あまっている、ということもよくあります。

有園:なるほど。

田中:じゃあアドネットワークに在庫を出すといっても純広告の部分を全部出してしまうと売り上げが低減してしまうんですね。純広告が100%売れたら問題ないのですが、なかなか高くて売れないとか原因はいろいろあります。お客さんにも「どうせバナー広告はコンバージョン数でないでしょ」と言われてシュンとなっちゃうみたいな話をたくさん聞いてきたので。

有園:聞きますね。

田中:今日本のインターネット広告市場において、サーチが2000億円くらいでしたっけ?

有園:そうですね。最近はもう少しいっているかもしれませんが。

田中:ディスプレイはまだ2800億円くらいあると思いますが、そうするとディスプレイのほうから影響を受けて、実はコンバージョンって出ているんだってことが立証できると、つまり、間接効果としての効果や改善する余地があることを伝えられると、もう少しディスプレイへの出稿金額も増やせるかもしれませんね。

有園:たしかに。

田中:広告主の皆さん、サーチはやり尽くした感がありますが、バナーと組み合わせたときにもっと効果が出ることを伝えられるといいなと。それは、アトリビューションを通じて伝えられると違ってくるのではないかと思いました。バナーの効果はまだまだあるぞと。

有園:田中さんは媒体社さんと話していてバナー広告の販売に悩んでいる、という話を聞くなかで、もっと媒体やバナーの価値を立証していきたいということでアトリビューションに興味をいただいたわけですね。

田中:はい。いろいろ調べていくうちに、バナー広告とサーチは密接な関係にあることに気づき、これは両方見なければならないなと思ってきたわけです。

アトリビューションは難しい?!

有園:ところで、私の場合、去年の今頃と比べるとアトリビューションという言葉も浸透してきて、かなり日本での理解が広まってきていると思います。田中さんはお客さんや代理店、市場でどう思われていると思いますか。

田中:うーん。広告主さんに「アトリビューションの話をしましょう」といくと「まだわからん」と言われる状況だと思います。しかし、「コンバージョン数をもっと増やすための方法を考えませんか?」と提案すると少しは聞いてもらえます。リスティング広告をやり尽くしていても、ディスプレイとサーチは関連性があるので、これらをうまく組み合わせてやるとコンバージョン数がもっと増えるかもしれません。それを一緒に考えませんか?と言うと相手は「そうかもしれないね」と聞く耳をもってくれます。

有園:そうですね。

田中:アトリビューションマネジメントと言うとまだまだ難しいと思われがちです。

有園:はい。

田中:どちらかというと「各チャネルの予算管理をちゃんとやりましょう。そうするとコンバージョン数が増えますよ。そうなると嬉しいですよね」と言うのが一番刺さります。

有園:うちはattribution.jpというサイトを運営している関係もあって、アトリビューションに関する問い合わせがきます。アトリビューションという言葉を知っていて、言葉の意味もある程度は理解されている方が多いです。

田中:そうでしょうね。

有園:ただ、お客さんにとって「アトリビューションのモデルが何か」というような詳細な話しは気にならないようです。

田中:そうですか。

有園:田中さんがおっしゃったように「予算の最適化をするソリューションなんです」と言い方を変えて伝えると分かりやすいようですね。

田中:うちはCPA系やBtoB系のクライアントさんがいるので「本当にコンバージョンが増えるのか」というのは皆さん謎に思っていて「やってみてください、増えましたよね」というとやはり喜ばれますよね。

有園:「増えましたよ」となると喜ばれますよね。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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2/4に続く(2011年7月27日公開予定)】

第1部(2011年7月26日公開予定)
第2部(2011年7月27日公開予定)
第3部(2011年7月28日公開予定)
第4部(2011年7月29日公開予定)

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アトリビューションCPAとTotal CPA

前回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)ではアタラ・メソッド(ATARA Method)について紹介したが、掲載後に読者の方々からいくつか質問と激励をいただいた。その中で気になったものがあったので、回答してみたい。

気になったものの中に、「アトリビューションCPAの合計値と全体の費用があわないのはおかしいのではないか?」という質問があった。具体的に質問の意図を説明するために、前回の投稿で使った<表2>を再掲してみる。

<表2>

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この<表2>にあるアトリビューションCPAを、バナーA、バナーB、リスティング広告で足し合わせてみると、1800万円となるから「これはおかしいのではないか」というのが質問の趣旨だ。バナーA、バナーB、リスティング広告の費用の合計は600万円なので、これと一致しないといけないのではないか、と。これはとてもいい質問だが、アトリビューションCPAの合計値は、費用の合計値と一致するものではないので、問題視する必要はない。たとえば、これまでのラストクリックCPAも同様に一致しないはずである。ここで前回の投稿の<表1>をみてみよう。

<表1>

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これまでのラストクリックCPAは、リスティング広告が300万円、ほかは計算できないので、NAとなっている。そのため、合計しても、バナーA、バナーB、リスティング広告の合計値=600万円にはならず、300万円となってしまう。これまでのラストクリックCPAもアトリビューションCPAも同様だが、発生したコンバージョンに対しての流入元別の獲得効率を示している指標であるため、全体の費用の合計と一致するものにはならないのである。

ただし、いい質問であると言ったのには訳がある。全体の費用の合計と一致するという視点でのCPAもあり得るからだ。前回の投稿で例示した流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)を一つのコンビネーション(組み合せ)として捉えてみよう。そうすると、発生したコンバージョンは1個であり、そのコンビネーション単位でかかった費用は、バナーA=100万円、バナーB=200万円、リスティング広告=300万円で、合計すると600万円である。このコンビネーション単位でみたときのCPAを計算すると、費用の合計(600万円)をコンバージョン1個で割ることになるので、600万円÷1=600万円となる。つまり、流入経路という一つのコンビネーション単位でみたときのCPAと費用の合計は一致するのだ。じつは、これと同じ視点で算出したCPAを「Total CPA(TCPA)」と呼んで紹介している秀逸な論考がある。マーケティングメトリックス研究所の中川氏の「CPA至上主義からの卒業 トータルでいくらかかったの?を評価する新指標『TCPA』」(http://markezine.jp/article/detail/11999)だ。この中で中川氏は「TCPA は、ユーザーがコンバージョンに至るまでに経由した広告CPC(Cost per Click)を合算したものです」と定義して紹介している。

ここで、議論の筋から逸れるが、「Total CPA」という用語について、同じ言葉で異なる概念を表しているケースもあるため紹介しておきたい。それは、Fringe81 代表取締役社長の田中氏の記事「純広告は博打か? 第三者配信による真の広告効果測定|第三者配信その2」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/06/09/10265)で「トータルCPAは、媒体費÷(直接コンバージョン+10〜15日以内のビュースルーコンバージョン数)で算出できる」として直接効果だけでなく間接効果も計測することの重要性を説いている。こちらも、第三者配信の効用を正しく理解するために、ぜひ読んでおきたい記事である。

さらにここでは「Total CPA」についてもう一つ、触れておきたい。オーバーチュアとグーグルでリスティング広告の営業に携わっていたころに、個別のキーワードのCPAではなくて、キャンペーン全体のCPA、あるいは、アカウント全体のCPAを表す用語として「Total CPA」という単語をよくみかけた。たとえば、アカウント全体で月間のコンバージョン数が2万でその時の費用が2000万円だったとすると、2000万円÷2万コンバージョン=1000円という数字になる。そして、この数字を改善するために運用していくという話しだ。

このように「Total CPA」はそれぞれの立場で異なる定義で使われているケースがあるため、注意が必要であることを覚えておいて欲しい。

さて、話しを元に戻すと、アトリビューションCPAはラストクリックCPAと同様に、全体の費用と合計値が一致するものではないことを理解していただければと思う。じつは、このアトリビューションCPAという用語だが、どのように呼称すべきかについていろいろと悩んだのも事実だ。これまでのラストクリックCPAとの違いを明確に示しつつも、さきほどの「Total CPA」との混同を避けられるようにしなければならないと考えていた。結局、今回の質問のように「Total CPA」との混同を招いてしまったので、ネーミングとしてはいまいちだったのかもしれない。ただ、アトリビューションCPAという、ある意味、なんの捻りもない名前にしたのは、やはり、アトリビューションということを強調しかったからである。

アトリビューションの視点から、ラストクリックCPAとアトリビューションCPA、そして、さきほどの「Total CPA」を説明すると、次のようになる。

「ラストクリックCPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中でコンバージョンに至ったラストの流入元だけに100%の貢献度を与えて、そのラストの流入元の費用をそのコンバージョン数で割って算出する。

「アトリビューションCPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中で、初回〜中間〜ラストに至るすべての流入元にそれぞれ貢献度を割り振り、それぞれの流入元の費用をそれぞれの流入元の貢献度で割って算出する。アタラ・メソッドでは、それぞれの流入元の貢献度をアトリビューション・スコアで表す。

「Total CPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中で、初回〜中間〜ラストに至るすべての流入元にそれぞれ100%の貢献度を与えて、それぞれの流入元の費用をその100%の貢献度で割って算出し、それらを合計して得られる。

ラストクリックCPAとアトリビューションCPAについては、これまで<表1>と<表2>で説明したので、<表3>としてこの「Total CPA」のケースを示してみる。

<表3>

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バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン に至る経路はこれまでと同じでコンバージョン1個が発生したとする。このとき、アトリビューションCPAの合計値を全体の費用の合計値と同じにするためには、この<表3>のように、バナーAの貢献度=1、バナーBの貢献度=1、リスティング広告の貢献度=1として、アトリビューションCPAを算出し、それらを合計しなければならない。この場合は、バナーAのアトリビューションCPAは100万円÷1=100万円、バナーBのアトリビューションCPAは200万円÷1=200万円、リスティング広告のアトリビューションCPAは300万円÷1=300万円で、合計すると600万円となる。この合計を「Total CPA」と呼んでいると考えてよい。ただ、これでは、コンバージョン1個の貢献度をそれぞれに配分していることにはならないことが分かるだろう。コンバージョン1個に対して、バナーAもコンバージョン1個分の貢献、バナーBもコンバージョン1個分の貢献、リスティング広告もコンバージョン1個分の貢献としていることになる。つまり、各流入元の貢献度を足し合わせると3になってしまい、もともとのコンバージョン1個を超えてしまうのだ。したがって、たしかに、この場合には、アトリビューションCPAの合計値とそれぞれの流入元の費用の合計値は一致するのだが、繰り返すが、これでは、貢献度を割り振ったことにならないのである。割り振っているというよりは、それぞれが1個のコンバージョンを発生させていると仮定して計算していることになる。つまり、アトリビューション分析をおこなうという視点で考えると、アトリビューションCPAの合計値と費用の合計値を一致させるという考え方は適切ではないことが分かる。アトリビューションという視点、あるいは、1個のコンバージョンの貢献度を各流入元に割り振るという視点では、各流入元の費用をトータルで考えるというのは適切ではないことが分かる。

ところで、さきほどの中川氏の記事の中でも、後段に「CPAとTCPAの違い」について解説していて、個別の流入元を評価する際には、分析対象以外の流入元の費用を足したり引いたりしている。流入経路を評価するのと、個別の流入元を評価するのは別なのだ。つまり、アトリビューションCPAと分析手法は異なるが、間接効果を見えるようにしたいという試みとしては、向かっている方向は同じであると考えてよいだろう。

また、アトリビューションという視点を離れて考えると、この流入経路の費用をトータルで考えるという視点は非常に重要になる局面がある。流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)を一つのコンビネーション(組み合せ)として捉えてみようという話しをしたが、このコンビネーションについて、実際にクライアントのデータを分析すると、非常にたくさんの異なるコンビネーションが出てくる。1万個のコンバージョンがある場合でも、このコンビネーションは何千という桁で出現する。それだけコンビネーションのパターンは分散しているということだ。分散しているパターンではあるが、詳細に分析すると、コンバージョンを多く生み出しているパターンと1個だけしか生み出していないパターンに分けることができる。そして、もちろん、最も多くコンバージョンを発生させているパターンも分かるのである。さらに、そのパターンごとの費用を考慮して獲得効率を算出すると、最も効率のよいコンビネーションのパターンも明らかになる。このような分析を便宜的に「勝ちパターン分析」と呼んでいるのだが、この分析もクライアントにとって非常に有益なものになる。たとえば、仮に、バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン というコンビネーションが最も獲得効率のよいパターンであると分かったとしよう。そうすると、このクライアントの場合には、バナーAをクリックしてクライアントのサイトに流入し離脱してしまったユーザーに対しては、バナーBを表示させて再訪問を促すことが効果的である可能性があることが分かるだろう。なぜなら、バナーAからバナーBと経由してくる場合は勝ちパターンになる可能性が高まるからである。第三者配信によって、このような特定のユーザーに対して特定の広告(ここではバナーB)を表示させる、出し分ける、というコントロールが技術的に可能になるので、この勝ちパターン分析はアトリビューション分析の応用として視野に入れておきたいものである。

さて、あらためて、アトリビューションCPAのネーミングでのこだわりについて記したい。これは、「割り振っている」ということを強調するために付けた名前である。<表1>、<表2>、<表3>でそれぞれ説明したように、それぞれの違いは、適切に貢献度を割り振っているかどうかである。ラストクリックCPAはラストだけに100%の貢献度を割り振っている。これでは他の流入元が無視されているので適切ではないことは自明だろう。そして、<表3>も、すべてに1を振っていることになるため各流入元で貢献度を適切に分け合ってはいない。<表2>は、コンバージョン1個の貢献度を、各流入元に均等に割り振っているのだ。割り振っているため、それぞれの流入元のアトリビューション・スコアを足すと1になる。つまり、コンバージョン数と同値になるのである。この割り振りを適切におこなって算出しているのがアトリビューションCPAということになるのだ。

次回は、前回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)で紹介したアタラ・メソッド(ATARA Method)に対して寄せられた質問の中で気になったものがもう一つあるので、その質問に対しての回答をしたいと思う。その質問の趣旨は「アタラ・メソッドでは結局、広告の価値をコンバージョン効果でしかみていないのですか?認知や態度変容については考慮していないのですか?」というものだ。この質問への回答は字数が必要となるので、次回の投稿で丁寧に回答することにしたい。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
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【アトリくんの視点】
普段自然と使っている用語も、それぞれの解釈があるので注意が必要ですね。ところで関係ありませんが、梅雨明けしてとても暑いのでスーパークールビズで浴衣で登場してみました。似合うでしょう?皆さんも暑いですが体調管理に気をつけて!

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アトリビューション分析→シミュレーション→改善の具体的なフロー(やり方)とは?(Web担当者Forum Attribution.jp分室)

先日のアタラCOO有園による「アタラのアトリビューションコンサルティング」が若干編集され、We担当者Forum Attribution.jp分室でも掲載されました。

アトリビューション分析→シミュレーション→改善の具体的なフロー(やり方)とは?(Web担当者Forum Attribution.jp分室)
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/07/11/10647

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【アトリくんの視点】
安田編集長、おおきにです!

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アタラのアトリビューションコンサルティング

「アトリビューション」を取り巻く誤解

アタラでは、アトリビューションについての総合情報サイト「Attribution.jp」を2010年に開設し、それと軌を一にしてアトリビューションコンサルティングを事業として始めた。少しずつ、アトリビューションが日本市場にも普及していることを感じているが、お問い合わせの内容はさまざまで、アトリビューションについての理解度は、かなりのバラツキがあるようだ。

「御社では、どのようなモデルで分析をしているのですか?」という比較的レベルの高い質問もあれば、「アトリビューションって何ですか?」や「アトリビューションって、どんなメリットがあるのでしょうか?」というような基本的な質問もあり、多岐にわたる。

ときには、「アトリビューションというツールについて教えてください」という質問もあり、誤解を招いているものもある。ちなみに、今後は分からないが、いまのところ、アタラではアトリビューションのツールを提供してはいない。

アトリビューションには障壁が多い

このような状況を踏まえ、正しい理解の一助となればとの思いもあり、アタラでおこなっているアトリビューションコンサルティングの一端を紹介することにした。アトリビューションは、その分析をおこない成果を上げるのには多くの障壁があるといわれていて、現場の実務で実践することが困難であるとの認識がある。

事実、実務でおこなうのは、とても大変だ。そのような中で、アタラとしては現状の課題を受け入れつつも、現時点で取得できるデータで対応できる範囲での分析とコンサルティングをおこなっている。そのすべてを紹介するのは難しいが、ここではコアとなる考え方を紹介してみたい。

アタラのアトリビューション

基本的に、アタラではアトリビューション分析とシミュレーションをコンサルティングサービスとして提供している。
アトリビューション分析とは、簡単にいうと、コンバージョンに至るまでの流入元の履歴のデータを使い、コンバージョンへの貢献度を各流入元に配分することである。

「アトリビューション・スコア」と「アトリビューションCPA」

アタラでは、各流入元に割り振った貢献度を数値で示すために「アトリビューション・スコア」という言葉を用いている。

また、この「アトリビューション・スコア」で、各流入元にかかった費用を割って得られる数値を「アトリビューションCPA」と呼んでいる。これは、これまでのラストクリックだけで算出したCPA(以下、「ラストクリックCPA」)と同様に、費用を成果で割って得られる数値である。

「アトリビューションCPA」では、成果つまりコンバージョンにあたるのが貢献度を示す「アトリビューション・スコア」になる。費用は、これまでのラストクリックCPAと同様に、その流入元に投下した費用となる。

「アトリビューション・ランク」

もうひとつ、アタラでは「アトリビューション・ランク」という用語も使っている。これは、各流入元を「アトリビューションCPA」によって比較するもので、最も効率がよかったものはどれか、2番目によかったものはどれか、という違いを表すために使っていると考えていただければよい。

ちなみに、「アトリビューション CPA」と同様に「アトリビューション ROAS」も算出できるが、CPAとROASは逆数の関係になっているだけなので、ここでは「アトリビューション CPA」で説明を進めていくことにする。

それでは実際に、「アトリビューション・スコア」、「アトリビューション CPA」、「アトリビューション・ランク」をどのように使うのか、簡単な例でみてみよう。

ラストクリック重視の落とし穴

たとえば、最初に、バナー広告Aをクリックして、広告主のサイトにアクセスしたユーザ(正しくはブラウザ)がいたとする。初回では、すぐにコンバージョンに至らず離脱するが、しばらくしてバナー広告Bをクリックして広告主のサイトに再訪問する。この2回目のアクセスでも、コンバージョンには至らず結局、離脱する。

しかし、2回の接触を通じて、ユーザの記憶に広告主のブランド名が残る。その結果、ブランド名で検索をして、リスティング広告経由で3回目のアクセスをした際、コンバージョンが1個発生したとする。

つまり、バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン となったとき、投下している費用がそれぞれ、バナーA=100万円、バナーB=200万円、リスティング広告=300万円だったとしよう。

まず、ここで比較のために、これまでのラストクリックCPAを算出してみる。すると以下の表のようになる。

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発生したコンバージョン1個は、リスティング広告のみのお陰であると考えるのが、これまでのラストクリックでの分析の仕方である。そのため、貢献度を各流入元に割り振ると、表にあるように、バナーA=0、バナーB=0、リスティング広告=1となる。

したがって、ラストクリックCPAはリスティング広告のみでしか算出されず、表にあるように、バナーA=NA、バナーB=NA、リスティング広告=300万円(300万円÷1=300万円)となる。

通常、このような結果をみて、バナーAとバナーBは、リスティング広告に比べて獲得効率が悪い、コンバージョンにまったく貢献していないと判断されてしまうのが、これまでのやり方だった。

均等配分モデル

これに対して、「アトリビューション・スコア」「アトリビューション CPA」「アトリビューション・ランク」を使って表を作ってみる。

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ここでは、「アトリビューション・スコア」をそれぞれ3分の1としている。これは、いわゆる、均等配分モデルを使っているからで、流入元であるバナーA、バナーB、リスティング広告を、それぞれ均等に扱い、発生した1個のコンバージョンの貢献度を、それぞれ均等に割り振っている。この場合、流入元が3つあるため、3分の1ずつ割り振っている。

アトリビューションのモデルには、いろいろな考え方がある。詳細は、また別の機会に触れることにして、ここでは均等配分モデルで単純に配分したと理解して欲しい。

さて、このように均等に割り振った状態で、それぞれのCPA(「アトリビューションCPA」)を算出すると、表にあるとおり、バナーA=300万円(100万円÷1/3=300万円)、バナーB=600万円(200万円÷1/3=600万円)、リスティング広告=900万円(300万円÷1/3=900万円)となる。「アトリビューション・ランク」は、バナーA=1、バナーB=2、リスティング広告=3となっている。

表1と表2の違いをみて欲しい。表1では、リスティング広告が最も獲得効率がよいと判断されていた。一方、表2では、どうだろうか。説明するまでもないが、最も効率のよいのはバナーA、順に、バナーB、リスティング広告となっている。

表1と表2の大きな違いは、各流入元に貢献度を割り振っているか、いないかだけだ。それを、するかしないかで結果は大きく変わってしまうのである。

これまでの表1のやり方では「バナー広告は効果が悪い」と、出稿予算を減らされる、あるいは出稿停止になってしまっていた。しかし、この結果をみると、それが本当に適切なやり方なのかどうか、一考の余地があることが分かるだろう。

イチローと松井をアトリビューション分析

日本人メジャーリーガーを例にとってみよう。イチローはシングルヒットを大量に打つバッターで、松井は打点を稼ぐのが得意なバッターである。

これまでの表1のラストクリックCPAで評価するなら、イチローはチームに対してまったく貢献していないことになる。それはなぜか。打点を稼がないからだ。ラストクリックCPAでの評価は松井を過大評価し、イチローを過小評価しているようなものだ。

イチローは打点が少ないのに対して、松井は、得点圏にランナーがいるときにきっちりと打点を挙げてくれる。ラストクリックでコンバージョンを発生させるのが得意なリスティング広告のようなものである。

イチローを先発メンバーから外したらどうなるか

それでは、もし、ラストクリックでのコンバージョンが少ないイチローを評価せずに、先発メンバーから外したらどうなるだろうか。松井のような打点を稼ぐバッターばかりを1番から9番まで並べるのである。

その場合、チームとしての得点力は落ちるだろう。イチローのようなシングルヒットを確実に打つバッターもいないと、効果的に得点を挙げることはできないはずだ。また、そのように評価されているからこそ、イチローは起用され続けているはずだ。いや、年棒だけで判断するならば、松井よりもイチローの方が高く評価されているのが現実のはずだ。

チームにはイチローも松井も必要

つまり、バナー広告のように初回や中間クリックを発生させてくれる流入元、イチローのようなバッターも、メジャーリーグにおいては高い評価を得ていると考えていい。チームには、イチローのようなバッターも、松井のようなバッターも必要であり、それぞれのコンビネーションで得点力を高めていくはずだ。

先の流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)の例も同様で、バナー広告とリスティング広告のコンビネーションで、コンバージョン力を高めていくことができる。そのためには、ラストクリックだけを評価する現在のフレームワークを捨てて、初回、中間、ラストのそれぞれを正当に評価するアトリビューション分析が必要だ。

事例で読み解くアトリビューション分析

ここまでは単純な例を使って、アタラで実施しているアトリビューション分析の基本的な考え方を紹介してきた。次に、具体的なクライアントのケースに沿ったアトリビューション分析と、その分析結果に基づいてシミュレーションをおこなった結果を紹介しよう。

ラストクリックCPAで媒体評価

このクライアントは、リスティング広告に月額2,000万円ほど、バナー広告に月額500万円ほど投下していた。合計で月額2,500万円だ。

これまでは、ラストクリックCPAで媒体の評価をおこなっており、バナー広告は、あまり効果が高くないようにみえるため、需要期以外では使わないという状況だった。このクライアントから依頼を受け、4月の広告出稿状況とコンバージョンに対してア、トリビューション分析を実施した。結果は次のとおりであった。

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表3のCVは「コンバージョン数」、A-スコアは「アトリビューション・スコア」、L-CPAは「ラストクリックCPA」、A-CPAは「アトリビューションCPA」とする。

ちなみに、リスティング広告は、10万個ほどのキーワードをGoogle AdWordsとYahoo!リスティング広告にそれぞれ出稿しており、バナー広告は純広告、アドネットワーク、リターゲティングなどを含み、それらの集計値、平均値を、この表には掲載していると考えて欲しい。ここで、バナー広告にアドネットワークやリターゲティングを入れているのは、あくまでも議論を簡略化するためである。

なぜ、バナー広告の評価が低い?

ラストクリックベースの評価では、リスティング広告が20,000個のコンバージョンをたたき出し、ラストクリックCPAは1,000円となっている。その一方で、バナー広告は1,000個のコンバージョンで、ラストクリックCPAは5,000円である。この状態では、バナー広告の評価が低いのも無理はない。

しかし、アトリビューション分析結果では、リスティング広告の「アトリビューション・スコア」は16,750スコアで、バナー広告の「アトリビューション・スコア」は4,250スコアとなる。そして、「アトリビューションCPA」をみると、リスティング広告が1,194円で、バナー広告が1,176円となっている。これは何を意味しているのだろうか。

バナー広告は、これまでのラストクリック評価ではコンバージョンが1,000個、「アトリビューション・スコア」は4,250スコア。単位はここでは関係ないので、1,000が4,250に増えたと理解していい。この差分である、3,250(4,250−1,000=3,250)は何なのか。

これは、初回や中間のクリックでコンバージョンを発生させていたものが、これだけあったということだ。いわゆる、間接効果の数だといっていい。

「アトリビューション・スコア」の合計に注目

ここで、次のことに注意して欲しい。気づいている方はいるかもしれないが、ラストクリック評価のときのリスティング広告のCV=20,000個とバナー広告のCV=1,000個を合計すると21,000個になり、リスティング広告の「アトリビューション・スコア」=16,750個とバナー広告の「アトリビューション・スコア」=4,250個を合計すると21,000個となって、この両方の数字は同じ値になる。

コンバージョン貢献度を異なるやり方で割り振ったあと、それぞれを合計しているので結局、最後のコンバージョン数としては同じになる。この合計値が異なっていれば、計算間違いをしているなど、なんらかの原因があるはずだ。

バナー広告の方が獲得効率はよい

つぎに、「アトリビューションCPA」でみると、リスティング広告=1,194円、バナー広告=1,176円になっている。ということは、間接効果も含めて考えると、わずかながらバナー広告の方が獲得効率はよいという結果が出たのである。

そうなると、これまでのリスティング広告重視の姿勢を変更して、バナー広告の出稿金額を増やした方が、コンバージョン数の増加する可能性も出てきたといってよい。

約10万個のキーワード、出稿最適化のシミュレーション

さらに、このアトリビューション分析結果に基づいて、出稿最適化のシミュレーションを実施してみる。このクライアントはリスティング広告に約10万個のキーワードを出稿していた。

キーワードの中には、コンバージョンに寄与しているものもあれば、寄与していないものもある。当然、コンバージョンに寄与しているキーワードの中には「アトリビューションCPA」が1,194円と、リスティング広告全体の平均値よりも高くなっているものが存在している。これらは、獲得効率があまりよくないキーワードになるため、ここで投下している費用をバナー広告に再配分することが考えられる。

同様に、実は、ラストクリックでのコンバージョンも発生していなければ、間接効果としてのコンバージョンも発生していない(いわゆるアシストもない)キーワードもある。これらのキーワードは、「アトリビューション・スコア」が0になり、間接効果も直接効果もないものになる。このようなキーワードも出稿停止にして、そこで使っている費用をバナー広告に配分する。

キーワードを整理して約800万円を捻出

「アトリビューションCPA」が1,194円より高いキーワード群と、間接効果も直接効果もないキーワード群の両方で、使っていたコストを割り出すと、このクライアントの場合、約800万円もの金額を捻出できた。

キーワードの中には、300円程度でコンバージョンしているものもあれば、5,000円以上かかっているようなものまであった。

それらすべての「アトリビューション・スコア」と「アトリビューションCPA」を算出し、「アトリビューション・ランク」の低いものから順番に、バナー広告への再配分対象としていく作業をおこなった。そして、「アトリビューションCPA」が1,194円以下で獲得できているキーワード、つまり効率のよいキーワードだけを残して、引き続きリスティング広告をおこなうことにする。

この800万円も「ちょっと多いかな」と最初は思ったが、他のクライアントでも同じような結果が出ているケースがあるので、もしかすると、よくあることなのかもしれない。

とくに、リスティング広告での出稿キーワード数が多い場合、リスティング広告全体の平均でみたCPAが見合っていればOKのケースが多い。そのため、個別キーワードでコンバージョン貢献度を厳密に測っていないケースがあり得る。今回のケースは、それにあたり、そのような例は他にもあると考えてよいだろう。

捻出した800万円をバナー広告にスライド

このようにして、捻出した800万円をバナー広告にスライドしたとして、シミュレーションを実施してみる。全体の出稿金額は、引き続き月額2,500万円で変更はない。

まず、バナー広告経由でのコンバージョン数は、どうなるだろうか。1コンバージョンが「アトリビューションCPA」=1,176円で獲得できるとすると、800万円をバナー広告に追加で投下することによって、6,800個のコンバージョンが追加で獲得できることになる。

ただ、ここで、リスティング広告によるマイナスの影響も考慮しないとならない。リスティング広告では、出稿金額を800万円減らすことになる。この800万円は、さきほど説明したとおり「アトリビューションCPA」が1,194円より高いキーワード群と、間接効果も直接効果もないキーワード群の両方から捻出したものなので、これらのキーワードで獲得していたコンバージョンは減ることになる。その数を計算すると、約2,000個のコンバージョンがあった。

出稿金額は変更なしで、4,800個のコンバージョンが増加

つまり、800万円をバナー広告にスライドさせることによって、プラスで6,800個、マイナスで2,000個となり、プラスマイナスでトータルは4,800個のコンバージョンが増加するという結果になった。出稿金額は月額2,500万円のまま変更なしで、4,800個のコンバージョンが増加するという結果だ。

表3にあるとおり、4月の実際のコンバージョン数は21,000個だ。プラスで4,800個も増加するというのは、とても大きいといえるだろう。

シミュレーションに振り回されない

この最適化シミュレーションは、あくまでもシミュレーションであって、出てきた数値も参考値程度に解釈すべきものである。そもそも、シミュレーションとは、そういうものであり、コンバージョン数を予測して正確にあてようとするものではない。

とくに、今回のシミュレーションでは、4月に発生した流入経路のすべてが5月にも、まったく同じだったと仮定して算出していることになる。当然のこととして、初回、中間、ラストに至る流入経路が、4月と5月でまったく同じであることはあり得ない。初回、中間、ラストのコンビネーションは変わるはずである。

また、アトリビューションモデルも均等配分でおこなっているが、実際には他のモデルを当てはめた方がよいという可能性も否定できない。そのため、あくまでも単純なシミュレーションであると理解して欲しい。

ただし、確かに単純なシミュレーションではあるが、まったく意味がないかといえば、そんなことはない。単純なモデルと単純なシミュレーション方法で導いた結果とはいえ、これまで貢献度を評価していなかったラストクリック以外の各流入元も考慮した上で、シミュレーションをおこなっている。少なくとも、ラストクリックだけに偏っていた、これまでの手法よりは現実に近い形で、評価ができている可能性がある。

クライアントを、どう説得するか

どの程度、このシミュレーション結果が確かかを調べるためには、シミュレーションにしたがって、実際に800万円分をバナー広告にスライドしてみればいい。ただ、クライアントには「確からしさを調べたい」というような冒険心はないのが普通だ。当たり前である。実際のお金を使ってマーケティングをおこなっているからだ。

今回の分析では、バナー広告の獲得効率が良い可能性があり、シミュレーションの結果に従えば4,800個もコンバージョンが増えると主張しても、クライアントは「はい、分かりました」とはならない。クライアントは、もちろん半信半疑だった。いろいろと議論した末に、実験的に200万円分だけバナー広告へスライドさせることに落ち着いた。

スライドさせた結果、プラスマイナスで500個ほどのコンバージョンがプラスになった。実は、200万円分で同様のシミュレーション計算をすると、800個ほどのプラスになるという結果が得られていた。それと比較すると、やや下振れしたことになる。

シミュレーションの結果どおりにはならなかったが、月額2,500万円で、コンバージョン数は21,000個から21,500個に増えたことになる。200万円をリスティング広告からバナー広告にスライドさせたことによって、獲得効率はよくなったといってもいい。

コンバージョンが増えた要因は複数ある

もちろん、断定はできない。コンバージョンが増えた理由は、季節的な要因などもあり得るし、バナー広告のフリークエンシーなどが変化したことや、初回、中間、ラストのコンビネーションが大きく変化したことなども影響を与えるかもしれない。

200万円をスライドさせたこと以外にも、いろいろと検討する余地があるのは確かである。コンバージョンへの影響は、さまざまな要因が考えられるため、単純化して考えることにリスクが伴うのは承知している。しかし、現場で実際に最適化のオペレーションをおこなっていくためには、ある程度の単純化はやむを得ないと考えている。

さまざまな要因があり得るとはいえ、それらを厳密に分析することが非現実的である以上、分析できるデータと使用可能なモデルを使ってソリューションを導き出し、少しでも前に進んで行く方が懸命であろう。

すくなくとも、これまでのラストクリックでの評価よりは、良い分析ができるはずだ。ラストクリックでの評価は、ここで紹介しているものよりも、はるかに単純な手法であるのはいうまでもない。

均等配分モデルの影響

さて、コンバージョンが増加した要因は、さまざまなことが考えられるが、仮にそれらが変化しなかったとしよう。200万円をスライドさせたこと以外は、変化をしなかったと仮定すると、このシミュレーションでは800個増加のコンバージョンと実際の500個増加のコンバージョンの差異=300個は、何から発生しているのだろうか。

これは、アトリビューションモデルとして、均等配分を採用していることから発生していると考えられる。つまり、リスティング広告もバナー広告も、すべて均等に配分して「アトリビューション・スコア」「アトリビューションCPA」を算出していたのだが、他の条件が一定と考えると、このシミュレーションの結果が下振れしたということは、その分だけ、バナー広告への評価を高めに配分していたからだと考えられる。

つまり、本当は、もっと低めに配分した方がよかったといえる。したがって、次のアトリビューション分析では、リスティング広告とバナー広告への配分を均等ではなく、バナー広告への配分を少し割り引くことで、このクライアントへのアトリビューション分析とシミュレーションの精度を向上することが可能であろう。

ところで、他のクライアントでは、シミュレーションよりも上振れすることもあった。その場合は、バナー広告への配分を少し割り増して、再度アトリビューション分析をおこない、シミュレーションすることになる。

プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチ(Progressive Optimization Approach)

このように、上振れ/下振れに応じてアトリビューションモデルの修正プロセスを繰り返しおこなっていくことで、全体の精度が向上していく。この繰り返しの手法を、アタラでは「プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチ(Progressive Optimization Approach)」と呼んでいる。

アタラ・メソッド(ATARA Method)

また、「アトリビューション・スコア」「アトリビューションCPA」「アトリビューション・ランク」を使ってアトリビューション分析を実施し、最適化シミュレーション、そして、プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチを取る一連の方法を、「アタラ・メソッド(ATARA Method)」と名付けて紹介している。

先述した、イチローと松井の例でいえば、この「アタラ・メソッド」によってイチローの貢献度を、これまでのラストクリックベースの評価に比較して、より正当に評価できる。その結果、全体の得点力=コンバージョン力の向上につながるのである。

ラストクリック評価から脱却

今回のアタラ・メソッドの紹介では、議論を簡略化するために、リスティング広告とバナー広告という2つに流入元を分けて考え、最適化シミュレーションの例をだした。

実際の現場の実務においては、さまざまな純広告、タイアップ広告、動画広告、アドネットワーク、アフィリエイト、ソーシャルネットワーク、リスティング広告、自然検索など、多数の流入元別に分析することになる。そのため、リスティング広告からバナー広告への出稿予算のスライドという、単純なシナリオになるとは限らない。

また、リスティング広告への出稿金額に対して、バナー広告への出稿金額が少なすぎた場合、シミュレーションがうまくできないケースも実際にあった。というのは、初回や中間でコンバージョンに影響を与えているクリック数が、あまりにも少なかったために、バナー広告の「アトリビューションCPA」が非常に高い数字になってしまったのである。

このように、実務においては、今回紹介したケースよりも複雑であるし、場合によっては、うまくシミュレーションできないケースもあるのは確かだ。しかしながら、多くの場合はサイトカタリストなどの効果測定ツールで、コンンバージョン・パスのデータ、つまり、流入経路と流入元のデータが計測できているならば、ここで紹介した方法を使ってコンバージョンの効率を向上できる可能性が高い。

ラストクリックだけを評価していた評価方法から脱却し、初回、中間の各流入元まで含めて評価する方法を使って、コンバージョン数を増加できる可能性は大きい。もし、データが計測できているのであれば、ぜひ、アトリビューション分析をご自分でも試していただきたい。それによっては得られるメリットは大きいと信じている。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
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【アトリくんの視点】
アタラのメソッドをここまで解説したのは初めてです。参考にしていただけましたでしょうか?今回を皮切りに、有園さんのコラムの連載を開始します!

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アタラ「アトリビューション・スコア」「アトリビューション・ランク」を発表

マーケティングテクノロジー開発企業のアタラは、インターネット・マーケティングを実施した際に、ユーザーがコンバージョンに至るまでに接触した媒体や各流入元の成果貢献度を評価する「Attribution/アトリビューション評価」の独自指標「アトリビューション・スコア」と「アトリビューション・ランク」を開発したことを発表した。

リリースの内容はこちらまで:
http://www.atara.co.jp/pr/attributionscore.html

無料アトリビューション評価キャンペーン実施中
アトリビューション評価を 抽選で10社に無償で実施いたします。現状におけるマーケティング施策を簡易診断し、アトリビューション分析の必要性や問題点を分析、評価します。各広告キャンペーンの費用対効果の見直しのみならず、適切な予算配分、他社との差別化、より効果的なキャンペーン実施が実現できます。
■費用:無料 ■期間:3月29日(火)〜4月30日(土) ■定員:抽選10社

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【アトリくんの視点】
兎角難しくなりがちなアトリビューションの概念、サービス。それを具体的かつ簡単に理解するのが目的。自社コンサルティングのみならず、自社ツール、サードパーティーのツールにおける採用も積極的に働きかけていく方向性。

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アタラ、アトリビューションコンサルティングサービス提供開始

マーケティング・キャンペーンの全体最適化を支援する「Attribution Management(アトリビューション)コンサルティングサービス」提供開始
http://www.atara.co.jp/pr/attribution_management.html

アタラが、「Attribution Management(アトリビューション)コンサルティングサービス」を提供開始した。

多くの場合、アトリビューション分析はすぐに開始できるものではない。そのため、いくつかのステップを経て実施する。

1. ヒアリング
アトリビューション分析実施の目的、ゴール、予算、組織、体制、過去の広告出稿状況、データの有無など。

2. 環境分析
アトリビューション分析を行うことができるデータを取得できる測定ツールが導入されているかは大きな問題である。既存アクセス解析ツールで実施できるか、新規で導入する場合は、適切なツールを推奨し、分析のための適切な設定をアドバイスする。

3. モデル策定
どのような分析モデルを採用するか。

4. 広告プラン策定
仮説を立て、分析でその仮説を検証するためのシナリオを複数組む。
ディスプレイ広告はビュースルーを含むか、クリックベースか。TV、新聞などは含むか。季節性、時期などの変数なども考慮する。

5. 分析

6. 評価
分析結果から評価を行い、広告プランへ反映。

基本的な流れは上記の通りだが、計画、準備、実施、評価、改善のサイクルを半年〜1年に渡って実施するのが基本的な条件となっている。

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【アトリくんの視点】
日本では初となるアトリビューションのコンサルティングサービス。特定のツールに依存せず、クライアントの環境、ニーズに合わせるところは独立系のアタラの特長でもありますね。

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2011年 新年ご挨拶

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あけましておめでとうございます!今年もattribution.jpもアトリくんもよろしくお願いいたします。

アトリくんも普通の鳥並みにお正月を過ごしておりました。
こたつの中でTwitterを読んでいたら、新年から第三者配信、ディスプレイ広告の盛り上がりを予測する声も出ており、2011年、アトリビューション分野も楽しみだな、と思っています。

今朝、リスティング広告業界では必読の、阿部さんのブログ、SEM-LABOでAdWordsのビュースルーコンバージョンについてのエントリーがありました。なんてエキサイティング!

アトリくんとしてはビュースルーに関してはアトリビューションという取り組みには考慮すべきと思っておりますが、AdWordsのビュースルーコンバージョンに関しては、阿部さんとほぼ同じ意見です。

その理由ですが:

1) 機能的にイマイチ(今後に期待はしてますが!)
Google AdWordsのビュースルーコンバージョンレポートも、サーチファンネルも、Google Analyticsも、せっかくGoogleの資産なのに連携が悪く、かつ、それぞれもアトリビューションの観点からするとやや中途半端な機能のため、ここからのデータを分析して、キャンペーン設計に活かすのは難しいからです。
ビュースルーコンバージョンレポートが中途半端なのは:

a) 過去 30 日間しか遡れないのは、もはや古いです。広告主によってはコンバージョンに要する期間はもっと長く必要なケースも多いのです。また、期間は任意に設定できるべきかと思います。

b) 特にAdWordsの場合は、AdSenseサイトにおけるプレースメントが様々で、あまり影響がないと思われる箇所や広告フォーマットでもビュースルー計上されてしまうと思います。せめてビュースルー計上するのはファーストビューエリア(Above the Fold)の決められたフォーマットの広告だけに限定するなど、はあってもいいかもしれません。

b) 最終的にコンバージョンがなければ結局何もわからないわけです。せっかくGoogleネットワークの豊富なデータがあるわけですから、どのキーワード検索の誘因に貢献したのか(コンバージョンに至らなくても)、のほうがよほど価値があるように思います。そのほうが広告文やランディングページの改善に使えます。

2) 今AdWordsで重視すべき点は他にもある
本質的な意見ではないかもしれませんが、Google Display Network(GDN)の単価はやり方によっては今のところ(2011年1月現在)はサーチよりも安くあがる可能性があるので、もしあまりGDNに取り組んでいない広告主は特に、仮説を立てて幅広くGDNに出稿して、コンテンツターゲット方式、プレースメントターゲット方式それぞれで成功するポイントの勘所をつかむべきかと思います。別の言い方をするのであれば、現在は直間効果共になかったサイトを「削る」しかないわけですが、AdWordsのコンテンツターゲット/プレースメントターゲットはターゲティングの奥深さがかなりあるため(マッチングするキーワード、適切なサイト選定、広告ABテスト、リマーケティングなどなど)、削る前に検証するポイントがかなりあるのでは、ということです。

Google AdWordsに関しては、上記には書ききれないほど単体ネットワークでも考慮すべき点が色々あるため、これについてはまた取り上げることができればと思っています。

2011年はこういったディスカッションが増えそうですね!楽しみです。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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アタラ(ATARA)について

ATARA(アタラ)は3つのA(API/Ads/Attribution)による最先端のマーケティング・テクノロジー・ソリューション&サービスを提供し、企業の「新しいもの」、「新しいアイデア」、「あったらいいな」を実現します。

特にアトリビューション(Attribution Management、Attribution Modeling)については、その可能性を感じ、日本で最も早く取り組んでいた会社になります。

アトリビューションを一つの手法に、マーケティングデータ統合、マーケティング全体最適のニーズは今後もますます高まるでしょう。そして、それらを実現するツールやサービスも出てくるでしょう。別の見方をすると、企業はこれらの取り組みをしないと、グローバルなビジネスの中で、取り組みの早い企業と比べマーケティング力で次第に劣り、本来の力を発揮できないことになりかねません。

ATARAはアトリビューションの日本での普及を促進し、企業の国際競争力の強化に貢献したいと考えています。そのため、最新の情報提供や、システム導入サポート、高度な解析などのコンサルティングサービスを提供してまいります。広告主様のみならず、アトリビューションをサービスとして取り組もうとしている広告会社様もご相談ください。

ATARA(アタラ合同会社)の会社概要はこちらをご覧ください。

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