ハウツー

アトリビューションモデルの調整方法(SEWより)

SEW(Search Engine Watch)にアトリビューションモデリングについての記事があがっていました。

Refining Your Attribution Model to Gain Clarity on Media Performance
http://searchenginewatch.com/article/2159921/Refining-Your-Attribution-Model-to-Gain-Clarity-on-Media-Performance

アトリビューションモデリングについては諸説ありますが、どのようなモデルを採用したとしても、それぞれのモデルにどのような要素を加味するかによって評価は変わってきますね。

この記事では、以下の4つのモデルと3つ要素を加味して、各要素の重み付けを変えたときにモデルから得られる結果がどう変化するのかを解説しています。

<4つのアトリビューションモデル>
・ラストクリックモデル (Last Click Attribution)
・ファーストクリックモデル (First Click Attribution)
・均等配分モデル (Equal Weighting Attribution)
・カスタム評価モデル (Custom Credit Attribution)

<3つの要素>
・エンゲージメント (Engagement Factor)
・メディア (Media Factor)
・期間 (Time Factor)

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Slingshot SEO のアトリビューションレポート

Slingshot SEO というインディアナ州に本社を置くSEO会社が出したアトリビューションモデリングに関するレポートです。

Largest Study to Date on the Value of Online Marketing Channels – Slingshot SEO
http://www.slingshotseo.com/resources/white-papers/valuing-conversions-through-multi-touch-attribution/

レポートのサマリーとして、以下の3つが挙げられています。

  • 自然検索は(従来の分析と比べて)過小評価されている
  • PPCや被リンク経由も多くの場合過小評価されている
  • サイトにダイレクトに訪問したアクセスは過大評価されている
  • 自然検索やPPC、メールや直接の訪問、被リンク経由など、さまざまなチャネルからトラフィックを横断的に分析することによって、最適な予算配分へ活かすことが大事であると書いてあります。また、実装方法としてまずは均等配分モデル(flat multi-touch attribution model)を推奨し、Google Analytics を利用した設定方法も解説しています。

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    【アトリくんの視点】
    Slingshot SEOの記事に触発されて書かれた記事ですが、参考になる内容ですね。どのモデルを採用するかどうかだけでなく、どういった要素を評価項目に含めるかによって得られる結果は変わってきます。キャンペーンの目標を考慮しながら決めていきたいですね!
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    【アトリくんの視点】
    アトリビューションの考え方になじんでいる人にとっては当たり前な内容かもしれませんが、業種ごとのデータやコンバージョンパスについても解説してあり、とても丁寧なレポートでした。まずは均等配分モデルでというところも、アトリくん的には好みです!SEW(Search Engine Watch)にも紹介記事があるので併せてご覧下さい。

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    CSS Niteでのアトリビューションの講演資料

    昨年10月に開催されたCSS Nite LP, Disk 19「アクセス解析:事例紹介とGoogleアナリティクスの新機能」のフォローアップとして、小川 卓さん(リクルート)の『「なでしこJAPAN」に見るアトリビューションの重要性と最新動向〜Googleアナリティクスの新機能「マルチチャネル」活用術〜』のスライド、音声が公開されています。

    http://cssnite.jp/archives/post_2252.html

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    特別寄稿:第三者配信で活きるアトリビューションマネジメント – 最適化手法にみるエージェンシーの本質的価値とは(朝日広告社)

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    今年に入り、デジタルマーケティング業界におけるアトリビューションマネジメントの盛り上がりは更に加速を見せており、具体的な事例やコラム、分科会等を通じて様々な議論がなされるようになった。朝日広告社もこのアトリビューションマネジメントに引き続き取り組んでおり、前回に続く第二弾としてAttribution.jpに寄稿させて頂いた。この回では、アトリビューションマネジメントに第三者配信アドサーバーを用いる意義とその活用方法、更にアトリビューションマネジメントに基づいた最適化フェーズについて考えていきたい。

    はじめに、アトリビューションマネジメントに使用するソフトについて整理しておきたい。使用するソフトは大きく分けて二種類に分類される。一つはアクセス解析ツールを使用し、クリックベースでチャネル間のユーザー行動を記録するパターン。もう一つはMediaMindを始めとする第三者配信アドサーバーを用い、ビュースルーベースでチャネル間のユーザー行動を記録するパターンだ。大きく二つの選択肢がある中で、朝日広告社では第三者配信アドサーバーを用いたアトリビューションマネジメントを推進している。その理由は大きく二つある。

    一つ目の理由は、ビュースルーの効果を正当に評価するためだ。生活者がある商品に対し需要を喚起するまでのステップには、ビュースルー、つまり広告を見た効果を加味するのが妥当だと考えている。例えクリックされなかったとしても、広告は生活者の需要を喚起することができるかもしれない。クリックベースの計測を行うことでその可能性の芽を一切取り去ってしまうのではなく、評価に柔軟性を持たせることがここでの主な目的となる。

    通常のスタンダードバナーもそうだが、大容量で配信される豊かな表現が売りのリッチメディアや、媒体が語り手となりコンテンツとしての説得力を増すタイアップ広告は、例えクリックされなくとも特にその効果を発揮しやすい。これらの広告は、クリック数の多い少ないで評価すべき類のものではない。より正確に書くと、これらの広告をクリック量で評価すべきでないことは、デジタルマーケティングに従事される多くの方が認識しているものの、困ったことに効果を数値で表現することができなかったのだ。「目に見えない効果」が発揮されていることはこれまでの経験を通じて頭では分かるものの、「その効果が何であるか」は明示することができなかった。クリック偏重主義の世界では、効率的にクリックやコンバージョンを確保できない広告は自然な流れとして悪とされる。効果が明確に説明されないものは、イコール効果がないものとして処理され、削られていく。しかし、その広告は本当に削って良いものであったのかは誰も知らなかった、というのが真実なのだろう。こうしたクリック偏重主義は、マーケティングにおける正しい判断を狂わせ、結果的に需要を喚起するタイミングやチャンスを逸することで、最終的なコンバージョンを減少させてしまう。この悪循環を回避するための、第三者配信アドサーバーという選択なのだ。こうして評価していくと、広告効果とはインターネット広告にクリック偏重主義が台頭する以前の、広告本来の意義に立ち戻っていくことになる。

    二つ目の理由は、その配信機能にある。MediaMindを始めとする高機能な第三者配信アドサーバーには、多彩なディスプレイ広告配信機能が実装されており、その機能は大きく二つに分けることができる。一つは時間帯や配信比率、順序等のローテーション機能、もう一つは地域情報やサイト訪問履歴、購買履歴に基づくターゲティング機能だ。

    ここで特に注目すべきは、「順序」と書いた広告クリエイティブのシーケンス配信が可能な点にある。つまり、一人のターゲットの「需要を喚起する」ことを目的として、広告クリエイティブによる段階的な訴求の切り替えを、配信コントロールによって図ることができるのだ。この機能は、アトリビューションマネジメントに基づくディスプレイ広告の配信最適化において、心強い味方となってくれる。

    ※1. シーケンス配信……
    ユーザーごとに接触するクリエイティブの順序と接触回数を任意でコントロールした配信。

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    従来の最適化では、直接コンバージョンやクリックに対して効率の良い媒体・メニューのみを選定し、直接効果の効率論だけでCPAの悪いものを削り落としていく手法が取られてきた。リスティング広告では、CPAの悪いビッグワードの順位を下げて、浮いた投下予算でCPAの安価なミドル、スモールワードで全体CPAのバランスを取り、目標CPAに合わせる。これらの手法は、そう時間を要さずして必ず限界が来る。厳密には目標CPAは守れるかもしれないが、コンバージョン数を伸ばすことはできなくなる。前回の寄稿でも少し触れたが、「需要を喚起された人」の母数が増えない限り、市場は競合社とのパイの奪い合いに過ぎず、自社のコンバージョン数を維持することですら、とても難しいということだ。

    リスティング広告に当てはめると、あるビッグワード(一般名詞)の検索数が突然増えることはとても稀で、増えた場合は何かしらの要因によって「需要が喚起された人」そのものが増えていることが多い。この限られた資源とも言える検索数に対し、市場に競合社が一社参入すれば、自社が得るコンバージョンは多かれ少なかれ減少する(実際は商品の競争優位性に依存する部分がある)。他社が攻勢に出れば、更に状況は悪くなるのだ。

    この状況を打破するためには、ターゲットへ需要喚起を意図的に働きかけることが必要不可欠となってくる。ここで鍵となるのは、効果的なユーザーシナリオを発見・開発することにある。強いシナリオの種を発見し、そのシナリオを更にクリエイティブとして開発することができれば、シーケンス配信を使うことでユーザーごとに「適切なクリエイティブ」を「適切な順番」で「適切な回数ずつ」届けることが可能になる。ここでの適切とは、「態度変容に必要十分な」という意味を示している。第三者配信を通じたシーケンス配信を活用することで、効率的な態度変容を促すことができる可能性が開かれるのだ。

    それでは、ディスプレイ広告配信の中で「需要を喚起」し、更には「態度変容を促す」ユーザーシナリオとはどうやって発見すればよいのか。朝日広告社ではこのユーザーシナリオの発見を目的として、第三者配信を通じたクリエイティブの検証を行なっている。この検証は、媒体だけでなくクリエイティブに対しても貢献度をスコアリングして評価を行なっており、ターゲットがコンバージョンに至るまでの一連のプロセスにおいて、クリエイティブがどの段階で作用しているのかを紐解くものだ。下記例は、クリエイティブごとのパフォーマンスをマッピングした図になる。横軸はユーザーが態度変容しコンバージョンに至る過程で、クリエイティブが作用したフェーズを表現しており、1を基点として数値が小さいもの程、需要が喚起されていない初期段階のターゲットに作用しているクリエイティブ、数値が大きいもの程、態度変容からコンバージョンへのクロージングに作用しているクリエイティブとなっている。

    図1. クリエイティブマッピング

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    最適化はこのマッピングを元に、初期段階のターゲットに対して効果的に作用するインサイトが何であるのか、クロージングに作用するインサイトが一体何であるのか、をクリエイティブ表現から紐解いていくところから始まる。このインサイトの発掘までを分析サイドで行い、分析結果に基づいたクリエイティブ開発はコピーライターやデザイナーがその役割を担っていく。アトリビューションマネジメントは、その分析手法や貢献度スコアの配分方法に注目が集まりがちだが、実運用では予算配分の最適化だけでなく、配信の最適化まで行なっていく必要がある。その過程では、インサイトの発掘からクリエイティブの開発、ユーザーシナリオに基づくシーケンス配信の活用といった一連のフェーズを、アナリスト、プランナー、コピーライター、デザイナーがチームとなりコミュニケーションを組み立てていくのだ。アトリビューションマネジメントは、データの統合や分析だけでなく、その次にあるステップとして「いかにコミュニケーションを設計していくか」が欠かせない大切なポイントとなる。

    ここまでシーケンス配信による最適化について書いてきたが、そもそもアドネットワーク等の自動最適化機能がある媒体に関しては、自動最適に任せておけば良いのではないか、という考え方もあると思う。ここで考慮しなければならないのは、その最適化にはアトリビューションによるチャネル評価が現状加味されていない、という点だ。事実、朝日広告社の事例では、アトリビューションマネジメントに基づき人の頭脳によって設計されたクリエイティブとユーザーシナリオの組み合わせが、媒体サイドで提供される自動最適化のパフォーマンスを上回ることが分かってきている。

     今まさに活発な議論がなされているアトリビューションマネジメントだが、その定義や分析手法、貢献度スコアの配分方法にその本質はない。大切な部分は最適化にあり、分析結果を元に人の頭脳でターゲットの気持ちに想いを巡らせ、コミュニケーション設計をしっかりと行うこと、生み出されたコミュニケーション・プランをテクノロジーに乗せて適切にターゲットへ届けることにある。この最適化サイクルを実現するためには、プラニング、クリエイティブ、テクノロジーがシームレスに融合する必要があり、そこにこそエージェンシーが取り組まなければならない価値があるのだ。

    こうして考えていくと、アトリビューションマネジメントは「コミュニケーションを考える」、というエージェンシーがクライアントへ提供する価値の原点に帰着する。アトリビューションマネジメントは、この盛り上がりを牽引されているコンサル、テクノロジーベンダー、クライアント、メディアといった立場の方々からだけでなく、本来的にはエージェンシーが発信し取り組まなければならない課題だと考える。朝日広告社は、デジタルマーケティングの総合最適化を図る手段として、アトリビューションマネジメントに今後も真摯に向き合っていきたい。

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    株式会社朝日広告社
    iコミュニケーション局
    デジタルマーケティング部
    前田 初

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    【アトリくんの視点】
    朝日広告社前田さん、お久しぶりです!2度目の登場、ありがとうございます。シーケンス配信による最適化は、アトリビューションとからめると非常におもしろいことができそうですね!それにしても後半部分はその通りだとアトリくんも感じてます。アトリビューションマネジメントそのものに意義があるのではなく、アトリビューションマネジメントは、より本質的なコミュニケーションを考えるための取り組みの一つに過ぎないということですね。そして、エージェンシーがその上で担うポジションについても考えさせられます。

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    アトリビューションとメディアビジネス

    アトリビューションで業界が発展する
    アトリビューションコンサルティングについての問い合わせは、主に広告主と広告代理店から入ってくる。アトリビューション分析とアトリビューションマネージメントによって、コンバージョンを増加できるという期待があるからだ。そういうなかで、ときどき、媒体社からの問い合わせも来る。そのたびに、媒体社に行ってアトリビューションの説明会を行っている。媒体社は、アトリビューション分析によって、媒体の価値を高めることができないかという期待を持っているのだ。もし、媒体社にとってもメリットがあり、広告主や広告代理店にとってもメリットが出せるとすれば、アトリビューションは業界全体にとって価値があるということになる。お金が業界により多く回るようになるということだ。業界といっても、いまはインターネット広告業界が主なフィールドだが、マスメディアのデジタル化によって、今後はメディアビジネス全体に少なからず影響を与えていく可能性も秘めている。

    市場の流動性を高めるには広告枠の評価が必要になる
    アドエクスチェンジ(Ad Exchange)とは、もちろん、ストックエクスチェンジ(Stock Exchange)のコンセプトを模倣している。NYSE(New York Stock Exchange)などを想像してもらえば分かるが、全世界から基本的に誰でもオンラインで株式の売買ができる。指値や成行で売りと買いの注文が入り、需要と供給の変化に応じて価格がリアルタイムに動いていく。アドエクスチェンジも同様に、広告枠の売り手である媒体社と買い手である広告主や広告代理店との間で「CPMがいくらで売り」とか「買い」という注文が入り、その需給のマッチングによって価格がよりリアルタイムに決まっていく。より多くの媒体社が、より多くの広告枠を売りに出し、より多くの広告主や広告代理店が買い手として参加することによって、市場の流動性が高まる。流動性が高まるということは、すなわち、より多くのお金が循環することを意味する。結果的に、インターネット広告業界の発展に寄与することになるだろう。

    市場の流動性を高めるには、より多くの参加者によって、より多くの広告枠が売買されなければならない。ヤフーのブランドパネルのような特定の広告枠だけに売買が集中しても、市場全体の流動性が高まったことにはならず、何の役にも立たない。市場全体の流動性を高めるには、個々の広告枠が個々の広告主にとって、どのような価値があるのか評価されることが必要だ。ストックエクスチェンジにおいては、個々の株式がアナリストによって評価され、その評価を参考にして売り買いの判断がなされている。アドエクスチェンジにおいても、個々の広告枠の評価が必要になる。その評価に応じて、広告主は買いか売りか(買わないか)の判断をしていく。その評価の役割をアトリビューション分析は担っている。

    流動性を高める2つの理由
    アトリビューション分析は、アドエクスチェンジの流動性を高めるのに大きな役割を果たしている。その理由は次の二つに大別できる。
    一つは、ラストクリックベースの評価から解放されていることだ。ラストクリックで広告のCPAやROASを評価していると、リスティング広告やアフィリエイトなどの効率がよく見えてしまい、それらに出稿金額が偏ってしまう。それでは市場の流動性は高くならない。アトリビューション分析は、ラストクリックだけに偏った評価はしない。そのため、リスティング広告やアフィリエイト以外の広告も、より平等に評価でき、市場の流動性を高めることにつながるのだ。
    もう一つは、ビュースルー(view-through)も評価の対象にしている点だ。バナー広告などをクリックする人は、減ってきているといわれている。そのため、クリックベースで評価することには限界があり、インプレッションベースでの評価をきちんと導入する必要がある。広告は元来、表示することに価値がある。そのため、広告を表示させることの価値が、きちんと評価されないのは大問題なのだ。テレビCMや新聞広告は、現在は、クリックできない。それでも値段がついて売れているということは、表示する(見せる)という広告の価値が評価されているのだ。ポストインプレッション効果には、認知を高めたり、好意度を高めたり、リアルの口コミを広げたり、ソーシャルネットワークで拡散させたり、あるいは、店頭に足を運ばせたりと、いろいろな効果が含まれるだろうが、そのうちの一つであるビュースルー効果を、アトリビューション分析は評価の対象にしている。アタラのクライアントでも、クリックベースでの評価に加えて、ビュースルーまで評価し貢献度を付与している。これは、第三者配信エンジンのMediaMind(MediaMind Technologies)や、同じく第三者配信エンジンのiogous mark(Fringe81)を使っているクライアントの場合だ。第三者配信エンジンを利用しないと、ビュースルーからコンバージョンまでの流入経路データを取得できない。そのため、アトリビューション分析の観点からいうと、すべての広告主が第三者配信エンジンを利用すべきだと考えている。現在、日本でも第三者配信エンジンが、かなりの勢いで普及している。今後は、ビュースルー効果まで評価するのが一般化するだろう。そうなれば、バナー広告やリッチメディア広告が、より公平に評価され、アドエクスチェンジ市場の流動性を、さらにアトリビューション分析が高めていくことになる。

    「貢献と恩恵」のネットワーク、そして新しいメディアビジネスの胎動
    アトリビューションは、広告市場の流動性を高めることに役立ち、そしてメディアビジネスの拡大に貢献する。そのことが期待されていて、大きな注目を集めている訳だ。しかし、最近、この流動性という論点以外でも、アトリビューションとメディアビジネスという視点で、媒体社や広告代理店の方から意見を求められることが増えた。とくに、広告代理店の中には嗅覚の鋭い人々がいて、アトリビューションで得られるデータをメディアビジネス開発に応用できないかと画策しているようである。大変申し訳ないが、具体的な話しはあまり書けない。水面下で動いている新しいビジネスの萌芽を摘んでしまいたくはないし、下手なことを書いて関係者の迷惑になってはならないからだ。ただし、自分の経験から一つの視点を紹介したいと思う。

    広告主にコンサルティングをしていると、各広告主によって社内用語が異なるという事実に直面する。そのため、それぞれの広告主の社内用語に合わせて資料を作るのが普通だ。そのような社内用語として、「貢献と恩恵」、「Give and Take」、「Credit – Debit」というものがある。この3つは、それぞれ別の会社で使われている社内用語だが、ほぼ同じ意味で使われている。これが、何を意味しているのかが分かるだろうか?

    旅行代理店のサイトで国内旅行と海外旅行を扱っていると、国内旅行で出稿した広告経由でサイトにアクセスし、最終的に海外旅行のコンバージョンをすることがある。あるいは、その逆のケースもある。同様に、アパレルのサイトでメンズの広告経由で流入し、レディースでコンバージョンするケース、その逆のケースがある。住宅情報サイトで、分譲マンションの広告経由で入ってきて、賃貸マンションをコンバージョンするケース、その逆のケースなど、広告主ごとに同じような事象が起こっている。「貢献と恩恵」、「Give and Take」、「Credit – Debit」とは、この事象に対する各社の呼び名だ。国内旅行での広告出稿が最終的に海外旅行のコンバージョンになった場合、国内旅行事業部は海外旅行事業部のコンバージョンに「貢献」したことになり、海外旅行事業部は国内旅行事業部から「恩恵」を被ることになる。この「貢献」のことを、別の会社では「Give」や「Credit」と呼び、「恩恵」のことを「Take」や「Debit」と呼んでいる。

    この「貢献」と「恩恵」の数が同じ数になることはまずない。たとえば、海外旅行事業部のほうが、一方的に国内旅行事業部のコンバージョンに「貢献」していて、その逆は少ないことが一般的だ。つまり、国内旅行事業部側は一方的に「恩恵」を受けているという状態が恒常化していて、海外旅行事業部にきちんとお返しができていない状況になる。ここに、「負い目」や「負債」という感情が発露する契機がある。この「負い目」や「負債」は、債権者と債務者という経済的な構造を誘発し、お金の授受によって、その「負い目」や「負債」を清算するという方法に発展する可能性がある。「貢献と恩恵」を「Credit – Debit」と呼称するケースがあるので分かりやすいが、「Credit – Debit」はそもそも金融や会計用語である。つまり、お金の流れを前提としている。

    アトリビューション分析をおこなっていると、このような「貢献と恩恵」の関係が見えるようになる。広告主のサイト内で起こっている「貢献と恩恵」だけではなく、インターネットの中で起こっている「貢献と恩恵」の関係性、ネットワークが明るみになってくるのだ。一般的に、媒体社は「貢献」する側で広告主は「恩恵」を受ける側だ。そのため、ここでは、広告主から媒体社に広告の売買によってお金が流れていく。しかし、現在の広告ビジネスのお金の流れでは捕捉できていない「貢献と恩恵」の関係もあることが、アトリビューション分析で明らかになってくる。流入経路のデータには、有料の流入元(広告)以外の無料の流入元も入っていて、その無料の流入元もコンバージョンに貢献していることが分かるのだ。ここには、お金の流れは発生していない。無料の流入元は、ある意味で、タダで広告主にいくらかのコンバージョンを提供している訳だ。その分のお金を請求してもいいのではないか、と考える人が出てきてもおかしくない。ちょっと分かりやすい例でいうと、フェイスブックやツイッター経由でも、かなりの数が流入してきて、最終的にコンバージョンにつながっている。このフェイスブックやツイッターの価値ってどうすればいいのか、と考えるのも同じような視点だ。フェイスブックやツイッター以外にも、もちろん、いろいろなサイトが無料で「貢献」している。それに気づいている人々がいる。アトリビューション分析で見えてくる「貢献と恩恵」のネットワークがあり、それを使って新しいメディアビジネスを作れないか、商品開発できないか、と動き出している。果たして成功するのかどうか。ハードルはいろいろとありそうだが、まずは、多くのデータを取得し、「貢献と恩恵」のネットワークをアトリビューション分析で見える化し、分析することが新しいメディアビジネスの第一歩となるのは確かだ。

    アタラ合同会社
    COO
    有園雄一

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    【アトリくんの視点】
    アトリビューションは広告主への恩恵がフォーカスされがちですが、メディアビジネスへのインパクトも大きいと思います。第三者配信の再注目も大きいですね。メディアビジネス側としては、まずはアトリビューション分析のための測定ができる環境を準備するところから始まると思います。米国を見ていると、土俵に乗らないと選定されない、という状況になっているように見受けられます。

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    技術評論社 Web Site Expert #38の「Webの力を測れ!」特集にてアトリビューションの紹介

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    2011年9月27日発売
    PDF版でも販売しています。こちらへ。
     

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    【アトリくんの視点】
    特集「Webの力を測れ!」の「第2章:アトリビューション分析の基本」をアタラCOO有園雄一が執筆させていただいております。ぜひご一読ください。

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    アトリビューションとコミュニケーション・デザイン

    コミュニケーション・デザイナーは作曲家であり指揮者である
    5〜6年前だろうか。「コミュニケーション・デザイナーってどんな仕事なの?」と総合代理店の知人に訊いてみたことがある。
    「たとえて言うなら、作曲家でもあり、指揮者でもあるってところかな」。
    こんな答えが返ってきた。

    コピーライターやウェブデザイナーたちは、職人気質な演奏者のようなもの。メディアであるそれぞれの楽器を使って、いかに素晴らしい音を奏でるか。それに集中する。職人はそれぞれで完成度の高い作品を作ろうとする。
    作曲家は、各楽器の特徴を把握し、緻密に計算して素晴らしい音楽を構成していく。指揮者は、各演奏者の個性まで把握して各楽器の音色を紡ぎ、反物に織り込んでいく。コンサートホールでは、リアルタイムに奏でられた生のオーケストラに、聴衆は感動し拍手喝采する。指揮者は音楽というコミュニケーション手段で聴衆にメッセージを送り、聴衆はそれによって心が動かされるのだ。聴衆は音楽の消費者であり、指揮者は音楽というメッセージの送り手であり生産者でもある。

    コミュニケーション・デザイナーとは、メディアやクリエーティブのさまざまな要素を考慮し、緻密に全体を構築していく作曲家である。そして、最終的に広告コミュニケーションを消費者に届ける指揮者でもある。

    なるほど。すてきな比喩だな、と素直に感心した。

    アトリビューションとコミュニケーション・デザインの共通点
    ところで、じつは最近、これと同じようなアナロジーを使っている記事に遭遇した。「Attribution Data Preparation: Like Rehearsing for Opening Night」(http://www.visualiq.com/press-and-events/newsletter-archive-attribution-data-preparation-like-rehearsing-for-opening-night)で、アトリビューションに関する記事だ。

    オーケストラでは開演前、各演奏者がチューニングや音を合わせたりするために、各自でバラバラに音を出している時間がある。しばらくして、指揮者が現れタクトを叩く。各楽器は静まる。そして、オーケストラが美しい音楽を奏でるのを耳にする。

    開演前のチューニングの時間、バラバラに出している音を聞いている状態は、まるで、各メディアやクリエーティブの効果をそれぞれ別々に測定しているようなものだ。過去のラストクリックベースでの分析手法はこれにあたる。
    その一方で、指揮者がタクトを振りオーケストラの美しい音楽を聴いている状態は、クロスチャネル・アトリビューション分析を実施し、各メディアやクリエーティブの相互インパクトも考慮して、シナリオどおりに広告コミュニケーションが実施できているかを分析できている状態だ。
    バラバラに音を聞いたのでは、コミュニケーション・デザイナーが設計したコミュニケーション・デザインが功を奏しているか分からない。すべての音をひとつの楽譜の上にならべて、すべてのパートを俯瞰し、すべての音の影響を測定できるように準備する必要がある。それが、アトリビューション分析をすることだ。

    アトリビューションもコミュニケーション・デザインも、すべての要素を俯瞰してみる視点を共通して持っているし、細部まで緻密に計算し全体を構成していくスタンスも同じであろう。どちらも、ある意味で”総合芸術”としての広告コミュニケーションの成功を目指しているのだ。

    アトリビューションはコミュニケーション・デザインを補完していく
    アトリビューションはコミュニケーション・デザインを補完する。フィードバックを提供し、コミュニケーション・デザインは進化していく。もちろん、アトリビューションはまだまだ不完全ではある。すべてのタッチポイントのデータが取得できないからだ。主にインターネットの領域でしか望むデータが取得できない。それでも、アトリビューションはその重要性を増していくだろう。
    技術の進歩によって取得できるデータは増え続けている。クリエーティブなコミュニケーション・デザインという仕事をアナリティカルなアトリビューション分析が補完しつつ、”総合芸術”としての広告コミュニケーションがもっともっと素敵なものになっていくといい。

    アトリビューション分析をしていると、「クリエーティブAとクリエーティブBの組み合せが効果的だ」というようなことを発見するときがある。「Aを見せてからBを見せるのがよい。その逆ではない」みたいな。今後、そのような分析結果の例も紹介していけたらいい。クライアントの許諾も必要になるので簡単ではないが、トライしていきたいと思う。

    アタラ合同会社
    COO
    有園 雄一(Yuichi Arizono)
    Google+

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    【アトリくんの視点】
    ホリスティックなアプローチがますます必要になっていく中、まさにオーケストラの指揮者のように、それぞれの分野のエキスパートを束ね、全体を俯瞰して見れ、それぞれの役割を判断できることはますます重要ですね。結局は「人」が大きな問題になっていくのは、今後も変わらないですね!

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    アトリビューションでより効率的に需要を喚起できるのはなぜか?(2/2)

    アトリビューションがコンバージョン増加につながる理由
    それでは前置きはこれくらいにして、アトリビューションによってより効率的に需要を喚起できるようになり、コンバージョン性向を高めることができ、その結果として、コンバージョンが増加する理由を解説する。

    これまでいくつか書いた投稿(http://www.attribution.jp/000069.html など)では、初回〜中間〜ラストと3つに流入経路をわけて説明してきたが、ここでは、ラストとそれ以外(初回と中間)の2つにわけてみる。すると、コンバージョンに至るパターンは以下のように4つあることになる。

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    ここで、「無料」とは自然検索経由やブックマーク経由などの有料広告以外の流入元からの来訪を表している。「有料」とはバナー広告やリスティング広告、アフィリエイトなどの有料施策からの来訪を表している。

    パターン1は、無料 → 無料 → コンバージョンとなるケース。パターン2は、無料 → 有料 → コンバージョン、パターン3は、有料 → 有料 → コンバージョン、パターン4は、有料 → 無料 → コンバージョンとなるケースだ。この4つの組み合せのいずれかにすべての流入経路が分類できることになる。

    さて、パターン1であるが、これは流入元がすべて無料のケースであるため、出稿金額を増やしたりするなどのコントロールができない。ここを操作してコンバージョンを増加させる施策をおこなうのは難しい。
    パターン2は、ラストだけが有料になっているケースだ。これはコンバージョンの直前の流入元だけを分析対象にしているラストクリックCPAの分析で、効率化を済ませているべきケースになる。つまり、これまでのやり方で効率化できるパターンだ。
    そうすると、パターン3とパターン4はこれまでのラストクリックCPAでは効率化できないケースであることが分かるだろう。パターン3は、ラスト以外も有料の流入元が影響している訳だ。そのため、ラスト以外で発生しているコストも加味しなければ、費用対効果を効率化できない。
    パターン4は、ラストは無料であるが、初回や中間などで有料の広告が貢献しているケースである。これは、これまでのラストクリックベースの分析では広告のコンバージョンとしては算入されていなかったものである。アトリビューション分析によって初めて広告の効果として見える化されたものだと言ってもよい。

    このパターン3とパターン4は、アトリビューション分析を導入しなければ、費用対効果を効率化できない領域である。この領域に分類されるケースが相当数あるために、アトリビューション分析によってコンバージョン数を増加できる可能性がでてくるといってもよい。
    とくに、パターン4は、ラストは自然検索などの無料の流入元になっているため、コスト効率がよい。初回や中間での有料の接触、つまり、広告への接触を、CPAが見合う金額で発生できれば、このパターン4を効率よく増やしてコンバージョン数を圧倒的に増加できるのだ。
    近年、アドネットワークの普及により、コスト効率よくバナー広告を出稿できるようになってきた。そのため、このパターン4のケースを意図的に増やせるようにプランニングすることも可能だ。アトリビューション分析によって、コンバージョンを増加できる可能性が高まるのは、このような理由が存在しているためである。

    さらに、サイトカタリストなどのツールでは、コンバージョンが発生しなかった流入経路も分析できる。そうすると、以下のように追加で4つのコンバージョンが発生していないパターンもわかる。

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    この赤枠で囲んだパターン5〜8のケースも、アトリビューション分析をしなければみえていなかった。これまでは、なんとなくコンバージョンに影響しているかもしれないので、とりあえず出稿していたバナー広告やリスティング広告のビッグワードがあるかもしれない。それが、コンバージョンへの役割を担っているかどうか判断できるようになる。
    もちろん、認知などを獲得するのに役立っているはずで、広告としての効果がまったくないということではないはずだ。しかし、30日などのクッキーの有効期間内でコンバージョンが発生していなければ、ツール上ではコンバージョンなしと判断される。
    これらを思い切って出稿停止にして、パターン4でコンバージョンへの役割を担っている流入元に予算をスライドすることもできる。これは、媒体という単位でも、枠という単位でも、クリエイティブという単位でも、実施しようと思えば可能になる。
    これが、アトリビューション分析とアトリビューションマネージメントによってより効率的に需要を喚起し、より効率的にコンバージョン性向を高め、その結果、コンバージョンの増加につながる理由である。ムダを省き、効率のよいところにお金を回せるということだ。

    ある意味で、「アトリビューションとは態度変容をマネージメントするものだ」と表現した方がいいかもしれない。需要喚起し、コンバージョン性向を高めるというのは態度変容を引き起こすということだ。
    流入経路を分析することで、これをより効率的におこなう方法を探す。そう考えると、ラストクリックだけを分析して効率的に刈り取る方法を探していた過去のアプローチと比較すれば、アトリビューションは態度変容をマネージメントするのが目的だと言っていいかもしれない。

    アタラ合同会社
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    有園 雄一(Yuichi Arizono)
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    【アトリくんの視点】
    「アトリビューションとは態度変容をマネージメントするものだ」という部分の考え方がキーですね。今後もアトリビューションにおいて議論されていくポイントでしょう。

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    アトリビューションでより効率的に需要を喚起できるのはなぜか?(1/2)

    アトリビューション分析だけではダメ、アトリビューションマネージメントが必要
    先日、あるクライアントにアトリビューション分析の基本についてプレゼンテーションをした際に、「貢献度を分析してもコンバージョンが増えないと意味ないよね」というコメントをいただいた。もっともなご意見だ。
    せっかくコンバージョンパスデータを取得してアトリビューション分析をしても、それだけではあまり意味がない。アトリビューション分析の結果に基づいて、クリエイティブを変更したり、フリークエンシーをコントロールしたり、出稿枠を変更したり、出稿媒体を変えたりしなければならない。あるいは、媒体ごとの予算配分を変更したりして、より効率的に需要を喚起させることによってコンバージョンが増加するようにマネージメントしていかなければ意味がない。つまり、アトリビューション”分析”だけで終わってはダメ。アトリビューション”マネージメント”までおこうことが大事なのだ。

    このクライアントの場合は、同じ商材のマーケティング施策をおこなう際、純広告などのバナー広告を担当する宣伝部とSEMなどを担当する販促部が別部隊になっていて、予算も別々に管理している。そのためアトリビューション分析をやったとしても、アトリビューションマネージメントをするには部署間の調整が必要になり、すぐにはできそうにないのだ。そのように組織的な課題が背景にあり、先のコメントにつながった訳だ。アトリビューション分析はしたいけれど、アトリビューションマネージメントができるかな。できないと意味ないよね、と。

    では、アトリビューションマネージメントまでできればコンバージョンは増加するのか? 必ず増えるという保証はない。しかし、いくつかのクライアントをコンサルティングした経験からいえば、コンバージョンが増えるのは事実である。それはなぜか? ここには明確な理由がある。アトリビューション分析をすることで、これまで隠れていたものが見える化し、その結果、より効率的に需要を喚起できる方法が見つかるからだ。

    今回は、アトリビューション分析とアトリビューションマネージメントを連動させることによってより効率的に需要を喚起し、その結果、コンバージョンの増加につながる理由について解説していく。

    確認事項1:前提条件
    解説に入る前に、確認事項がある。それは、ここでコンバージョンが増えるという場合は、広告出稿金額は一定で、かつ、クライアントサイトのコンバージョンレート(CVR)もほぼ一定という条件下での話だということだ。
    出稿金額を増やしてコンバージョンを増やすという話ではないし、クライアントサイトのリニューアルなどをしてCVRが上がった結果、コンバージョンが増えるという話でもない。もちろん、季節変動やイベントなどの影響でCVRが上昇するという話でもない。

    確認事項2:アトリビューション即コンバージョン増ではない
    もうひとつ確認したい。アトリビューション分析やアトリビューションマネージメントで即コンバージョンが増える訳ではない。そうではなくて、より効率的に需要を喚起できるようになり、その結果として、コンバージョンが増加する可能性が高まるのである。
    前回の投稿(http://www.attribution.jp/000079.html)ではコンバージョン性向(Propensity to Convert)という概念を紹介したが、これも同じ理由からだ。コンバージョンそのものは、広告以外の要因でも大きく変動するため、コンバージョンの増減を直接的に広告の効果と判断するのはリスクがある。広告はコンバージョンを生み出す構成要素のひとつに過ぎない。
    さらに言えば、広告だけでコンバージョンを増やせると信じてはいけない。どんなに広告が良くても、商品やサービスが魅力的でなければコンバージョンしないことはよくある。そのため、より厳密に書けば、アトリビューション分析とアトリビューションマネージメントによって、より効率的に需要を喚起できるようになる。その結果として、コンバージョン性向を効率的に上げることができるのである。

    本筋から離れるが、ここには私なりにこだわりがある。ある意味、需要がなければコンバージョンは増やせない。もし、広告でコンバージョンを増やせるとすれば、需要を喚起できてコンバージョン性向が高まるからだと考えている。

    リスティング広告はコンバージョンを”創出”するか
    オーバーチュアやグーグルに在籍していた頃、リスティング広告の営業に携わっていた。その経験を通じて、「リスティング広告はコンバージョンを”創出”するか」と考えるようになった。
    とくに、最大手のアパレルメーカーを約2年間、アカウントマネジャーとして担当していたのだが、そのときの経験が与えた影響は大きい。当時、リスティング広告はコンバージョン効果が高いと言われていたし、自分もそう考えていた。あたかも、リスティング広告がコンバージョンを”創出”しているような錯覚に陥っていたのだ。
    だが、このクライアントのアカウントマネージメントを通じて、そのような考え方は必ずしも正しくないと思うようになった。それには、ある”事件”があったのだ。

    このクライアントの場合、最適化をやり尽くし、目標CPAを達成した後は安定的に運用できていた。顧客満足度も上がっているのは明らかだった。
    しかし、人間とは欲深いものだ。効果がよくても、さらに上を目指したくなる。そして、クライアントは「もっとコンバージョンを増やせないか」と求めてきた。目標のCPA以下で運用できれば、青天井で出稿金額を使ってよいことになっていたので、もちろん青天井で予算を増やしたが、もはや消化できない。こちらの回答としては「目標CPAの上限を緩くしないとできません」としか言えなかった。
    最適化をほとんどやり尽くした後は、リスティング広告の改善施策によってCTRが急に上がることはないし、CVRが伸びる訳でもない。リスティング広告でできることは限界まできていた。正直に言えば他力本願な話になるかもしれないが、「クライアントのサイトをリニューアルして、もっとCVRが上がるようにして欲しい」というのが本音だった。
    ちょうどその頃、ある”事件”が起こった。それは何か? 劇的にCVRが上がったのだ。ある特定の日に約2倍のCVRをたたき出した。他の条件が同じであれば、コンバージョン数も約2倍になることになる。ある特定の日とは、1月1日、初売りキャンペーンの日だった。

    おそらく、冬物のジャケットが欲しいとかコートが欲しいとか、潜在的な需要はあったはずだ。新聞の折り込みチラシなどで初売りキャンペーンが認知され、一気に需要が喚起されて1月1日にサイトに殺到したのだろう。いや、正確に言えば、殺到したという表現は少し違うかもしれない。年末年始の検索ボリュームは落ちるので、アクセスが殺到したというほどではない。そうではなくて、購買意向の高いユーザーが集中し、CVRが高くなったというのが正しかった。つまり、初売りキャンペーンという仕掛けによって、需要が喚起された購買意向の高いユーザーが数多くアクセスしてきたのだ。そして、コンバージョンは約2倍になった。リスティング広告的には、とくに何もしていないにもかかわらずだ。

    ショックだった。自分は何もしていないのに、コンバージョンがこんなに増えたのだから。もちろん、初売りキャンペーンでコンバージョンは増えるとみていたが、これほど変わるとは想定外だった。
    リスティング広告は何なのか? 果たして、コンバージョン効果とは何なのか? 考えが変わった瞬間だ。リスティング広告でコンバージョンを創出していると言えるのか? CPAが見合っているとか、獲得効率が高いとか、そういうことが、コンバージョン効果が高いということになるのだろうか?

    生活雑貨や日用品などの業界では「棚をとる」という言葉がある。コンビニやスーパーなどの量販店で、他社より多く自社商品を棚に並べてもらう、あるいは、より目立つ場所の目に付きやすい棚に置いてもらうというような意味だと思う。あるいは、駅近に店舗を出すという立地の話に近いかもしれない。交通量があり人の往来が多い場所に店舗を構えた方が来店者数は増える。
    リスティング広告で上位に表示するのはこれに似ている。いい場所に出せば、もちろん、アクセス数は伸びる。しかし、その場所の交通量が上限だ。やり尽くしてしまえば、それ以上は伸びない。

    さきほどの、アパレルメーカー最大手のリスティング広告のケースもこれに似ている。レストランでいえば、良い場所に店舗を出してしまったということだ。そして、看板の表現を最適化し、店舗内の動線やレイアウト、メニューなど、回転数を向上するための施策はすべてやり尽くした。
    リスティング広告は、ほとんどのキーワードでCVRのよい表示順位に掲載し、広告文もA/Bテストなどで効率化した。アクセス数やCVRの改善など、リスティング広告でできることはやり尽くす。この状態までくると、もはや、そう簡単にはコンバージョン数を増やせない。

    需要を喚起しないとならない
    それでも、さらに、コンバージョン数を増やそうと思えば、需要を喚起するしかないと気づかされる。もはや、リスティング広告には多くを期待できない。リスティング広告に需要喚起の力がまったくない訳ではないが、多くを期待できるものではない。たとえば、「おいしいレストランらしいよ」というような口コミを広めたり、レストラン自体の認知を拡大したり、魅力を訴求したりして、そのレストランに行ってみたいなと消費者に思わせたいとする。そのような需要を喚起するには、リスティング広告が最適な解とは限らない。コンバージョン数を増やしたければ、需要を喚起しなければならず、それを得意とするのは、インターネット広告ではバナー広告や動画広告などリスティング広告以外の手段だと考えられる。

    このように、リスティング広告のコンバージョン効果が高いという考え方は必ずしも正しくないかもしれない。コンバージョン数を増やそうと思えば、まずは需要を喚起しなければ増えないという局面があるからだ。

    コンバージョン性向というコンセプトを使う理由
    コンバージョン性向(Propensity to Convert)というコンセプトもここから生まれている。おそらく、新聞の折り込みチラシなどで需要を喚起されて、コンバージョンしやすい状態になっている消費者の一群が形成されたのだろう。
    その人たちは、当たり前のことだが、1月1日00時00分の初売りキャンペーン開始までは、サイトに訪問してもコンバージョンはしない。つまり、コンバージョンそのものは、広告以外の要因でも大きく変動するため、コンバージョンの増減を直接的に広告の効果と判断するのはリスクがあると書いたとおりだ。
    広告に接触し、需要喚起され、コンバージョン性向が高まったとしても、それだけでは、即コンバージョンにはつながらない。1月1日00時00分を時計の針が指すまではコンバージョンしないのだ。
    もちろん、こうした時間の制約もひとつの要素に過ぎない。どんなに広告がよくて、キャンペーン開始時刻になっても、商品やサービスが魅力的でなければコンバージョンしないこともあるはずだ。こうした理由から、需要を喚起しコンバージョン性向を高めるという部分を、広告のコンバージョンへの役割として切り出し、論じたり分析したりしたいと考えているのだ。

    リスティング広告は「いまそこにある需要」を刈り取るのが得意だ。そうした意味でも、「刈り取り型の広告」であり、一見、「費用対効果が高く見える広告」でもあるというのは腑に落ちる。しかし、リスティング広告は「コンバージョン効果が高い広告」であるかといえば、上述の理由からもそうとは言えない。そうすると、テレビCMやバナー広告などリスティング広告以外の広告については、なおさらコンバージョン効果が高いとは言えないことになる。リスティング広告ですら、即コンバージョンにつながると言えないのだから。
    広告のコンバージョンに果たす役割としては、需要を喚起しコンバージョン性向を高めることと考えている。コンバージョン性向の代わりに購買意向といってもいいのだが、コンバージョンは必ずしも購買とは限らない。そのため、コンバージョン性向という言葉が適切なはずだと考えて、この言葉を使っている。

    リスティング広告以外の広告がコンバージョンに果たす役割を再認識することが重要
    アトリビューションでコンバージョンを増加させることを考える際に、リスティング広告以外の広告がコンバージョンに果たす役割を再確認することは大事である。なぜなら、コンバージョンの手前のラストクリックだけを分析対象にしている訳ではないからだ。
    ラストクリックだけを分析対象にしていると、リスティング広告はコンバージョン効果が高く、リスティング広告以外の広告、たとえばバナー広告はコンバージョン効果が低いという錯覚に陥る。しかし、アトリビューションでコンバージョンパスデータを取得し、初回〜中間〜ラストという流入経路を分析対象にすると、リスティング広告はコンバージョン効果が高く、バナー広告はコンバージョン効果が低いとは必ずしもいえないのでは?という思いに至る。
    バナー広告の需要を喚起させる力があって初めて、リスティング広告でのコンバージョンにつながっていることが、アトリビューション分析によってみえてくるのだ。需要を喚起しコンバージョン性向を広告で高めることが重要だと分かるのである。

    そして、おそらくは、アトリビューションをやり尽くして、それ以上は効率化できないという状況になるだろう。リスティング広告をやり尽くした状況と同じ地平だ。そのとき、広告のコンバージョンへの役割が、さらに抉りだされる。需要喚起が濾過されるのだ。コミュニケーションによって、人をどう動かすのか、需要をどう喚起させるのか、結局は、そのようなことを広告がきちんと担っていないとコンバージョンは増えないと気づかされるのである。
    (次回に続く)

    アタラ合同会社
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    有園 雄一(Yuichi Arizono)
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    【アトリくんの視点】
    お久しぶりです、アトリくんです。秋に差し掛かって過ごしやすくなってきました。読み物にも集中しやすくなってきたということで、有園さんのコラム再開です。リスティング広告の運用経験は有園さんにとって大きかったようです。

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    アトリビューション分析は認知や態度変容も対象にしているのか?

    初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)について紹介し、その後、いくつかの質問があったと前回の投稿(http://www.attribution.jp/000072.html)でも書いたが、一つ気になる質問があるので回答しておきたい。

    今回の質問は「アタラ・メソッドでは結局、広告の価値をコンバージョン効果でしかみていないのですか? 認知や態度変容については計測していないのですか?」というものだ。まず、この質問に回答し、その後、さらに論を進めて、認知や態度変容についてアトリビューション分析でどのように数値化しているかについて解説していきたい。

    計測はしていないが、考慮はしている
    「認知や態度変容を計測していないのですか?」と問われれば、もちろん、「計測はしてはいない」という回答になる。では、もし「認知や態度変容について考慮していないのですか?」と問われれば、答えは「考慮はしている」である。

    これは、どういうことだろうか。認知や態度変容について測ってはないが考慮はしているとはどういうことなのか? 認知や態度変容について計測する場合に多くみられる手法は、アンケート調査を実施することだ。特定のブランドやキャンペーンについての純粋想起や助成想起などを調べる。あるいは、特定のブランドに対する好意度や購買意向などを調査し、認知の変化や態度への影響を測定するのである。このような従来のアンケート調査などでの計測は、アタラでは通常、実施してはいない。ただし、アトリビューション分析では、認知や態度変容について考慮していないのかというと、そうではないのだ。これは、アタラ・メソッドに限った話ではなく、米国などでアトリビューション分析が紹介される場合にも同様だと考えていい。

    各流入元には役割がある
    アトリビューション分析では、コンバージョンに至るまでの流入経路のデータを測定し、各流入元のコンバージョンへの貢献度を算出する。どのようなアトリビューション・モデルを使った場合でも、この基本的な考え方は同じだといっていい。

    たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C → コンバージョン という流入経路があったとしよう。このような経路の説明として、アタラでは、初回 → 中間 → ラスト → コンバージョン と呼び換えている。同様に、米国の資料などでは、First Engagement → Middle Engagement → Last Engagement → Conversion あるいは、Introducer → Influencer → Closer → Conversion などと言い換えているケースも多い。Engagement をあえて翻訳すれば、「顧客との関係構築」という意味になる。つまり、最初の顧客との関係構築 → 中間の関係構築 → ラストの関係構築 と展開していくことを示す。Introducer は「顧客に紹介した流入元」という意味だろう。Influencerは「顧客に影響を与えた流入元」、Closerは「顧客との取引を締結させた流入元」といった感じだろうか。

    流入経路の各流入元をこのように言い換えているのはなぜだろうか? それは、各流入元が顧客との関係性において何らかの役割を担っているという考え方が根底にあるからだ。

    たとえば、初回の流入元を First Engagement や Introducer と言い換えているのはなぜか。それは、初回の流入元が顧客との最初の接点であり、顧客に対して商品やサービスを最初に紹介するという役割を担っていると考えているからだ。最初に紹介するということは、顧客の側からみると、その商品やサービスを初めて「認知(Awareness)」した瞬間であると言える。

    同様に、Middle Engagement や Influencer というのも、顧客に何らかの影響を与え、コンバージョンする可能性を高めてくれる役割だと考えていることになる。つまり、コンバージョンする可能性を高めたということは、コンバージョン意向を、あるいは、購買意向を高めてくれる役割を担っているということだ。これは、まさしく、「態度変容(Attitude Change)」にあたる。

    Last Engagement や Closer とは、コンバージョンに至る顧客との最後の接点で、顧客に最終決定を促す役割を担っていると考えていることになる。顧客にコンバージョンという「行動(Action)」をさせた役割を担ったことになるのだ。

    購買プロセスの中で認知や態度変容を考えている
    アトリビューションで分析する流入経路は、このように顧客との関係構築やその変遷を前提としている。いわゆる、購買プロセスや購買サイクル、すなわち、消費者の意思決定プロセスを前提にして、初回の流入元が「認知」、中間の流入元が「態度変容」、ラストの流入元が「行動」という役割を担っていることを仮定しているといってよい。そのため、この初回〜中間〜ラストの各流入元に貢献度を配分するという手法は、認知や態度変容も考慮して貢献度を割り振っているということになるのだ。

    そもそも、アトリビューション分析のはじまりは、「認知や態度変容に影響を与えているはずの初回や中間の顧客接点を考慮しないのはおかしいではないか!」という叫びにも似た訴えではなかったのか。ラストの顧客接点だけを対象にした従来のラストクリックCPAが、コンバージョン効果だけしかみていないと問題視され、その代替的アプローチとして勃興してきたのがアトリビューション分析なのだ。アトリビューション分析はその起源において、認知や態度変容を分析対象にしているのは明らかである。

    コンバージョンに至らなかったものも何らかの効果があるはずだ
    このようにアトリビューション分析は、認知や態度変容も考慮している。しかし、コンバージョンに至った流入経路だけを分析対象にしているのであれば、まだ不十分だと言える。コンバージョンには至らなかったとしても、認知させたり、態度変容を促したりしている可能性はある。だから、広告の効果としては、コンバージョンに至った流入経路とコンバージョンに至らなかった流入経路の両方を分析した方がよいのである。

    実際によくあることだが、広告は非常に効果的に展開されていて、多数の流入をサイトにもたらしている。それにもかかわらず、サイトのユーザービリティが悪く、コンバージョン数が非常に少ないということがある。この場合に、その原因を広告に求めることは不当であろう。同様に、商品やサービスが魅力的ではないために、せっかくサイトに流入してきた消費者を逃してしまうこともある。ブランド力がないために消費者の信用を得られず、コンバージョンに至らないケースもあるだろう。一般的に、サイトのユーザービリティ、商品・サービスの競争力、そして、ブランドの競争力がコンバージョンに与える影響は大きい。これらの競争力が低いクライアントの場合は、広告出稿を効果的に展開したとしても、コンバージョン数をあまり稼げないという結果に陥りがちだ。このようなケースでは、コンバージョン数が少なかったとしても、広告が悪かったからだとはいえないであろう。

    アトリビューション分析では、コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にできる。使用するデータは、流入経路で得られる範囲に限定されはするものの、コンバージョン効果だけではなく、認知や態度変容も考慮して評価できるようになる。つまり、コンバージョンには至らなくても、その流入経路の中に出現する各流入元には何らかの効果があったはずだと考え、そこを分析対象とするのである。ただし、認知や態度変容をアンケート調査などで測るのとは別である。あくまでも、考慮して評価するということになる。たとえば、認知率が何パーセントあるか、クライアントのブランドイメージがどのように変化したか、などを流入経路のデータ分析で把握するのは難しい。そのようなことを把握したい場合、現時点では、アンケート調査などの手法を使った方がよいであろう。

    コンバージョンに至らなかった流入経路の分析方法
    さて、コンバージョンに至らなかった流入経路を分析対象にする場合、実際にはどのようにして分析をすればよいのだろうか。コンバージョンに至らなかった流入経路とは、たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C で終わっていてコンバージョンは発生していないものである。

    アタラでは、コンバージョンを発生させなかった流入経路の分析をする際には、まず、すべての流入経路(コンバージョンに至ったものと至らなかったものすべて)を履歴数ごとにグルーピングすることから始めている。履歴数とは、この流入経路の中に出現する流入元の数のことだ。流入元A → 流入元B → 流入元C の場合は履歴数が3回となる。グルーピングでは、履歴数が1回のグループ、履歴数が2回のグループ、履歴数が3回のグループ、履歴数が4回のグループ、…… と分けていく。測定ツールの設定などによって、取得できる履歴数の上限が決まっている場合は、その上限までグルーピングしていく。グルーピングしたあとに、グループでのユニークユーザー数を分母にコンバージョン数を分子にして、コンバージョンレート(CVR)を算出する。これを各グループでそれぞれ算出していくと、履歴数1回グループのCVR、履歴数2回グループのCVR、履歴数3回グループのCVR、履歴数4回グループのCVR、…… と算出できる。このようにグルーピングしてCVRを算出した場合、どの履歴数のグループがもっとも高いCVRになるのかをみていくのである。

    いくつかのクライアントのデータを分析して分かったのだが、クライアントや分析時期によって差はあるが、だいたい履歴数5回ぐらいまではCVRが徐々に上昇していき、そこをピークとして、その後はCVRが低減していく現象がある。つまり、1回、2回、3回と履歴数が増えるにつれて顧客育成が起こり、消費者がコンバージョンしやすい状態に変わっている。態度変容が起こっているといってもよいだろう。そして、5回前後を境にして効果が飽和し、CVRが下がり始めると考えられる。このようなCVRの変化は、コンバージョンのしやすさが変わっているからだと判断できる。1回よりも2回、2回よりも3回の方がコンバージョンしやすくなっているからこそ、CVRが上がっていくのだ。

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    コンバージョン性向を高めるために
    アタラでは、このコンバージョンのしやすさを表すために「コンバージョン性向(Propensity to Convert)」という用語を使っている。経済学を学んだ人なら馴染みがあるかもしれないが、消費性向(Propensity to Consume)という言葉があり、可処分所得のうちで消費支出にあてられる額が占める率のことを指す。この消費性向は消費意欲を示す指標として使われている。消費性向が高いほど、消費意欲が高いことになる。たとえば、「アメリカは日本よりも消費性向が高い」などと使われる。この消費性向とのアナロジーで、「コンバージョン性向」という用語を使っている。そもそもコンバージョンとは消費という大きな概念の一形態であるため、このアナロジーも分かりやすいだろう。「コンバージョン性向」が高いほど、コンバージョン意欲が高い、つまり、コンバージョンしやすいことを示す。この用語は、アタラの造語ではない。欧米のウェブマーケティングの資料の中でも使われているので言葉としての新しさはないが、アタラにおいては、この「コンバージョン性向」を確率として捉えて、アトリビューション分析に導入している。

    初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)の基本的な考え方について紹介した。その中で、アトリビューション・スコアやアトリビューションCPAを用いてアトリビューション分析をおこない、シミュレーションを実施していることを書いた。このシミュレーションは、実際に得られたデータを分析し、その結果に基づいて予算配分やクリエイティブなどを変更したり、組み合せを変えたりして効果を高めること目的としている。予算配分の組み合せを変えることによって、より多くのコンバージョンを発生させられないかを模索する。あるいは、より多くのコンバージョンを発生させられる状況を作ったり、よりコンバージョンしやすい状態にしたりする方法を探していると言ってもよい。要するに、シミュレーションでは「コンバージョン性向」を高めようとしているのだ。コンバージョンする確率が高くなるように操作しようとしているのである。

    コンバージョン性向として数値をはじきだす
    履歴数グループごとにCVRが変化するという事実は、それぞれのグループごとにコンバージョンする確率が変化していることを示す。「コンバージョン性向」が変化するといってもよい。そして、すでに発生した過去の事象が分かっていれば、それに基づいてコンバージョンする確率を推定できると考えてよい。たとえば、履歴数1回グループのCVRが1%、履歴数2回グループのCVRが2%と過去のデータが示していれば、今後も大きく外的状況が変わらない限り同様のCVRになると推定できる。このような推論を展開していくと、コンバージョンが発生しなかった流入経路についても、どのくらいの確率でコンバージョンが発生するのか予測できるのだ。

    履歴数1回グループにコンバージョンに至らなかった200個の流入経路があったとしよう。つまり、クライアントのサイトに1回訪問したが、コンバージョンせずに離脱したのが200あったとする。このうちの50%が2回目の訪問をするとする。この履歴数1回グループのうちで履歴数2回グループに推移する率も過去のデータを分析すれば分かることである。この200個のうちの50%が履歴数2回グループに推移すると、履歴数2回グループが200個の50%分だけ増加するので、100個増える。先述のように履歴数2回グループのCVRは過去のデータで2%になっているならば、履歴数2回グループの増加分100個の2%で、2個のコンバージョンを発生する確率になる。

    このように過去のCVRに依拠してコンバージョンが発生する確率を計算していくと、すべての流入経路に対して「コンバージョン性向」を算出することが可能になるのだ。

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    ここからは、また、アトリビューション・スコアの話に戻る。つまり、コンバージョンが発生しなかった流入経路については、確率を使うことによってアトリビューション・スコアを割り振っていくのだ。「何個のコンバージョンを発生させる確率がありますよ」ということが分かるので、その確率で捉えたコンバージョン数をアトリビューション・スコアとして流入元に割り振っていくのである。その結果、実際にはコンバージョンに至らなかった流入経路も、どのくらいコンバージョンしやすい状態になっていたかを数字で示すことができる。そして、そのどのくらいコンバージョンしやすいか、つまりは、「コンバージョン性向」をさらに高めるためには、どのように予算配分やクリエイティブなどを変更すればよいかをシミュレーションできるようになる。シミュレーションを通じて、次なる施策をよりよいものにしていけるようになるのだ。

    従来の手法とあわせて使っていく
    今回は、広告の効果として、購買プロセスを前提に解説した。しかし、広告の効果や広告の役割については、さまざまな議論や指標があり、短絡的に論じることは危険であることも承知している。あくまでも、アトリビューションという視点で、流入経路から取得できるデータに限定して、分析をおこなう際の考え方や手法に絞って解説している。当然のことであるが、アトリビューション分析にプラスして、これまでのアンケート調査などによる認知や態度変容の把握は引き続き重要だ。アタラとしても、予算的に余裕のある広告主に対しては、従来の手法での認知や態度変容の把握も勧めている。理想を言えば、アトリビューション分析と従来の手法をあわせて、広告の認知や態度変容への影響を測定し、広告プランニングに活用していきたいものである。

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    COO
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    【アトリくんの視点】
    コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にすることが、アタラの場合は一つのポイントになっています。また、初期の頃から、従来の手法での認知や態度変容の把握も並行して行うことを勧めています。

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