事例

テレビCMに検索キーワードが入るまで、そして、そこから学んだこと(前編)

この7月まで「MarkeZine(マーケジン)」で連載記事を書いていました。その連載の最後に書いた「テレビCMの投下量と検索数、そして売上げとの相関関係は?オフラインアトリビューションの基本【アトリビューション編:第6回】」という記事に関して、いくつか問い合わせや質問を頂きました。

自分としては、そんなに質問がくることは想定していなかったので少しビックリしていたのですが、ちょうどそのとき、ある総合広告代理店の人から「この記事の中で取り上げられたテレビCMと検索数の相関についての問い合わせは、いまだに広告主から多いのだが、総合広告代理店の中に検索からテレビまでを語れる人材が育っていなくて少々困っている」という話を聞きました。

そこで、私自身の経験から、マス広告と検索の相関に興味を抱いたきっかけや、そこから学んだことなどを書いてみたいと思います。

ひらめきは「ど忘れ」から

最初にこのアイデアを思いついたのは、ある体験がきっかけです。ある日、朝起きてすぐにパソコンに向かってインターネットをしていました。たぶん、二日酔いだったと思うのですが、頭がボーッとしている感じでした。

そのとき、関係者の方には大変申し訳ないのですが、「au」あるいは「KDDI」という名前を失念してしまい、なかなか出てこなかったのです。「あれ、あれだよ」と心の中で叫んでも、脳のシナプスがつながっていない感じで、思い出せないのです。思い出せないことにイライラしながら、とっさに思いついたのが「仲間由紀恵 ケータイ」というキーワードで検索することでした。

「仲間由紀恵 ケータイ」で検索

たしか、2002年のことだと思います。当時は、仲間由紀恵さんがauのテレビCMに出ていたんです。だから、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索すれば、そのテレビCMの広告主であるauかKDDIのウェブサイトが検索結果に出てくるだろうと期待しました。つまり、検索すれば「仲間由紀恵さんがテレビCMに出ているケータイブランド」を探せると思ったのです。

ところが、Googleで検索しても、Yahoo!Japanで検索しても、検索結果の1ページ目には出てきません。2ページ目に行っても、3ページ目に行っても見つかりません。やっと、5ページ目ぐらいになって、ちょっとだけそれらしき情報が出てきて、「あっ、そうだ。auだ」と思い出すことができました。

検索しても出てこない

このとき、自分が最初に思ったのは、「あー、残念だな。検索エンジン対策、ぜんぜんできてないな」ということでした。

ブランド名を失念してしまった自分が悪いのかもしれませんが、検索してもなかなか欲しい情報に辿り着けなかったことで、私はかなり気分を害していました。その結果、KDDIに対してマイナスイメージを持ったのです。「せっかく、こっちが検索して探しているのに、こんなに時間をかけないと見つからないなんて」と。

そして、次の瞬間。「同じような検索行動をしている人は他にもいるのではないだろうか」「テレビCMやその他の広告で得た情報やイメージを基にしてそのブランドを検索する人は他にもきっといるハズだ」。そう思ったのです。

テレビCMで検索ボックスを表示する

そのときです。テレビCMで検索ボックスを表示してキーワードを訴求すれば、そのキーワードを見て検索する人がいるのではないだろうか?同時に、検索エンジン対策として、そのキーワードでリスティング広告やSEOを施しておけば、検索した人を確実にウェブページへ誘導することができるのではないだろうか?と思いついたのです。

そうすれば、自分と同じようにテレビCMで得た情報に基づいて検索した人が、そのブランドのウェブサイトが見つからずにイライラすることもなくなるのでないか。それに、ブランド側もイメージを毀損せずに済むハズだ。ブランドに関連するすべての情報で検索エンジン対策を施せば、自分が経験したようにユーザーにイライラされて悪いイメージを持たれずに済むだろう。

このようにして、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索したことをきっかけに、テレビCMやその他のマス広告に検索ボックスを入れるというアイデアを思いついたのです。

リスティング広告の知名度ゼロ時代

当時はまだ、リスティング広告について知っている人が少なかった時代です。

私は1990年代後半からサンフランシスコにあるインターネット検索ディレクトリの会社で働き、2000年に日本へ戻ってきたあともインターネット広告関連の仕事に携わっていました。そのため、日常的に仕事でもプライベートでも検索エンジンを使っていました。

それまでの経験から、「リスティング広告は必ず普及する」と思い、近いうちに、オーバーチュア株式会社(現、ヤフー株式会社)かグーグル株式会社に転職したいとも考えていました。

そのため、リスティング広告のことも、アメリカのウェブサイトなどを読んで独学していたのですが、実際に、その後、オーバーチュアとグーグルで働くことになり、テレビCMの投下量と検索数の相関調査の仕事をし、そのような企画に関わるようになるとは夢にも思っていませんでした。

つまり、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索したときは、思いつきレベルでアイデアは浮かんだのですが、それを実現させようという意図はなく、しばらくは、すっかり忘れていました。

オーバーチュアに転職

私はその後、縁あってオーバーチュアに転職し、リスティング広告の拡販に従事するようになったのですが、ある総合広告代理店に対する営業を担当するまでは、そのときのアイデアを思い出すことはありませんでした。

オーバーチュア入社後しばらくして、総合広告代理店の担当営業になりました。総合広告代理店にリスティング広告を売ってもらうのが自分の仕事になったのです。2004年のことです。

リスティング広告を売ってもらえない!?

当時の総合広告代理店は、リスティング広告に限らずインターネット広告自体を積極的には取り扱っていませんでした。そのため、いくら説明して回っても、一部の人にしか興味を持ってもらえません。なかなか理解を得られません。総合広告代理店は何千人ものスタッフを抱えています。すべての人に説明して回るのは不可能に思われました。

「どうしたら、この人たちに興味をもってもらえるのだろう?」「どうやったら、この人たちにリスティング広告を売ってもらえるのか?」そのようなことを考えるのが日課になりました。

マス広告とリスティング広告のセット販売

そのときに、彼らが得意とするマス広告、とくにテレビCMとリスティング広告をセットで販売してもらえたら楽なんだけどな……という考えが浮かんだのです。そして、「仲間由紀恵 ケータイ」で検索したときの、あのアイデアを思い出したのです。

すぐに企画書を書いて、オーバーチュア社内で同僚や上司に見てもらいました。後になって、「マス連動」とか「テレビCM連動」と呼ばれるようになったのですが、そのときの企画書には、「テレビCMとリスティング広告のセット販売企画商品の開発について」というようなタイトルをつけた記憶があります。

そのようなセット販売を総合広告代理店にしてもらうには、テレビCMの投下量(具体的には、GRP:Gross Rating Point)と、そのテレビCMに関連するキーワードの検索数に正の相関があることを示さなければならないと思い、その相関関係を調査することも、企画書には入れておきました。

その調査でうまく正の相関が示せれば、テレビCMでキーワードを訴求すると同時にリスティング広告を広告主に買ってもらうというセット販売が可能になり、オーバーチュアの売上も上がるだろうと考えたのです。

それに、テレビCMと一緒にリスティング広告を語ることによって、総合広告代理店の人たちがリスティング広告に興味を持ってくれるかもしれないと、少なからず期待を抱いていました。

テレビCMを30本分析

オーバーチュア社内では上司からすぐにOKがでたので、アポを取り、企画書を持っていきました。どんな反応を示されるかまったく読めなかったので、内心はドキドキしていました。企画書を総合広告代理店のある方に見せたところ、「これは面白いかもしれない。ちょっと待って、メディアマーケにこういうのに興味がありそうな奴がいるので呼んでくるから」と言われ、しばらくすると、そのメディアマーケティング部の人を連れて会議室に戻ってきました。話はトントン拍子で進み、簡易的な調査をすることになったのです。

調査はまず、メディアマーケティング部の人が検索を誘発しそうなテレビCMを、たしか約30本選んでくれ、それらをすべて私が視聴することからスタートしました。

一般の視聴者がそれぞれのテレビCMを見たときに、検索しそうなキーワードをリストアップしていきました。だいたい、1つのテレビCMに対して30個から50個ぐらいのキーワードをリストアップしました。

たとえば、その企業名、ブランド名、サービス名、商品名、キャッチコピー、出演しているタレントの名前など。それらを掛け合わせたキーワード。それらの打ち間違いや変換ミスのキーワードなどです。

回帰分析で検索数とGRPの相関を調査

そして、リストアップしたキーワードの検索数を日別でオーバーチュアのデータベースから抽出し、調査対象のテレビCMのGRP日別推移データと照らして、正の相関があるかどうかを回帰分析で調べていったのです。

当時からオーバーチュアの提携パートナーにYahoo Japan!があったので、オーバーチュアのデータにはYahoo Japan!のデータも含まれており、調査するには十分なデータを保持していました。

2004年当時のオーバーチュアは急成長している時期で、深夜まで残って仕事している社員が多かったです。私も、通常業務が終わるのは夜10時ぐらいというのが平均でした。通常業務が終わった後に、リストアップしたキーワードの日別検索数の推移をオーバーチュアのデータベースから抽出し、テレビCMのGRPデータとの相関を調べていきました。

オーバーチュアのデータベースからデータを抽出するのに意外と時間がかかり、テレビCM1本の分析を終えるのに数時間かかりました。そのため、午前3時〜4時ぐらいまで作業して1日あたり数本というペースで調べていったのです。

投下量に連動して検索数は増えない!?

調査を始める前は、10本ぐらい調べればテレビCMと検索数の相関を示すことができるだろうと、甘い考えを持っていました。しかしながら、いくら調べても、テレビCMの投下量に連動して検索数が増えているケースが出てきませんでした。

約2週間、毎日午前3時から4時頃まで一人オフィスに残り、黙々と作業を続けていました。20本を超えたあたりで、私は、もう、諦めていました。「これはダメだな。このやり方ではいい結果はでないんだ」と。

「テレビCMを見て検索している人もいるハズだ」という考えは変わっていませんでしたが、「回帰分析で統計的に有意な結果がでるほどは影響していなんだ」とすでに諦めていました。ただ、せっかく総合広告代理店の人たちが協力してくれたので、最後まで調べて、その調査結果を資料にまとめてお返ししないとならない。そんな義務感に駆られて、残りの調査を続けたのです。

残り3本になったときでした。テレビCM1本あたり、30個から50個のキーワードのデータを抽出し、それを加工してキーワードごとにチャートを作っていました。

約30本のテレビCMを対象に、その時点ですでに1000個以上のチャートを作り、すべてがダメな結果となり、さすがにウンザリしていたときです。

「パケ・ホーダイ」の綺麗な相関関係

意気消沈して諦めていた矢先、光が射したのです。綺麗に正の相関を示すテレビCMとキーワードが見つかったのです。もうダメだと思っていたので、自分でも目を疑いました。

それは、NTTドコモの「パケ・ホーダイ」です。「パケ・ホーダイ」は、2004年3月24日に報道発表のリリースがあり(当時のリリースがウェブサイトに残っています。こちら)、2004年6月1日にサービスを開始していました。そのサービスの宣伝のためにテレビCMを投下したのです。

ハッキリは覚えていませんが、たしか、5月の半ば頃から6月前半にかけて大量にテレビCMを投下していました。「パケ・ホーダイ」という言葉は新しくできた造語だったため、リリースが出た3月24日以前の検索数はゼロでした。世の中に存在しなかったキーワードなので当然です。

リリースの日を境に検索数が発生します。ただ、リリース直後の検索数は本当に数少ないものでした。それが、5月半ばのテレビCM開始と同時に爆発的に伸びていきます。しかも、日別のテレビCMの投下量(GRP)と連動して検索数も増加していったのです。そして、テレビCMの投下量がピークに達すると検索数もピークに達し、徐々に減少、テレビCM終了後しばらくして検索数もゼロに近づいていくという推移でした。回帰分析をしなくても、グラフを見ただけで、誰が見ても相関していると思える結果でした。

テレビCM約30本の調査を終えて、結局、正の相関を示すことができたのは、この「パケ・ホーダイ」1本だけでした。調査結果を資料にまとめて、総合広告代理店のメディアマーケティング部の人に持っていきました。

私は、1本だけしか良い結果を得られなかったので、調査結果が好意的に受け止められるかどうか不安でした。しかし、その人は非常に前向きに捉えてくれたのです。「1本でもあれば十分ですよ。テレビCMの投下によって検索数が増加しているケースが見つかったんだから」と評価してくれました。

新しいものは広告効果が高くなる

そのとき、その方に教えてもらったのですが、新商品や新サービスは一般的に広告効果が高くなる傾向があるとのことでした。つまり、「パケ・ホーダイ」は新サービスなので、その傾向に合致していたのです。

これは、いわゆるプロダクト・ライフサイクル理論でいう導入期の商品やサービスということになります。導入期→成長期→成熟期→衰退期という4つの段階の中で、最初の導入期は商品の認知を高めるために広告宣伝費がかかるということなのですが、それは、導入期にきちんと広告を打つことが大事だということも意味しています。

その後にさらに調査して分かったことですが、新商品や新サービスは、テレビCMの投下と検索数が綺麗に相関するケースが多いのです。あるいは、テレビCMで新しいキーワードを訴求した場合も、検索を誘発しやすいようです。

「パケ・ホーダイ」は新しいキーワードであり、テレビCMが投下される以前はほとんど検索数がなかったことがポイントでした。当時、「トヨタ」や「ユニクロ」などのキーワードは、月間平均で100万回〜200万回という規模で検索数が発生していました。そのような場合、テレビCMの投下によって、仮に月間10万回の検索数を誘発していたとしても、元々の母数が大きいので、テレビCMの投下が影響しているのか、季節変動なのか、それ以外の何かが影響しているのか、見極めるのが難しいのです。

極端にいえば、月間10万回の変動も誤差の範囲になってしまいかねないのです。このことが、テレビCM約30本を調べても良い結果を得られなかった主な理由だったと思います。

分析に最低限必要な投下量とは?

このときの簡易的な調査では、テレビCMが投下された期間(2週間から3週間程度のものが多かったように記憶しています)を対象にして、前後3ヶ月ぐらいの検索数のデータを調べていました。

このやり方では、「パケ・ホーダイ」のように分かりやすいものしか良い結果を得ることはできません。オフラインアトリビューション分析に関わるようになって分かったことですが、たとえば、1年以上の期間に渡るデータを取得して、テレビCMのGRPと検索数やウェブサイトへのアクセス数などを調べると、より良い結果を得ることができるようです。

また、これも後で分かったことですが、テレビCMの投下量も一定のボリュームがないと、なかなか良い結果を得られないようです。

先日も、ある通販会社の人から「テレビCMを投下してもあまりウェブサイトのアクセスが増えたようには思えないんです」と相談されました。データを見せてもらうと、3ヶ月で2000GRPほど、月間平均では700GRPぐらいのテレビCMを投下していました。しかも、とくに新しい商品やサービスはなく、新しいキーワードがないためブランド名を訴求している状態でした。

予算などの懐事情もあるとは思いますが、これまでの経験では、月間2000GRP以上ぐらいのテレビCMを投下しないと、あまり良い結果は得られません。そして、できれば、新しいキーワードがあると良いのです。

はっきりは覚えていませんが、約30本のテレビCMのうち、半分ぐらいはGRPの投下量がそれほど多くなかったと記憶しています。投下量の少ないことも、あまり良い結果が得られなかった理由だったと思います。

話を戻します。「パケ・ホーダイ」の例は、メディアマーケティング部の人に指導を受けながら事例としてまとめ、総合広告代理店の社内用資料を作成しました。その資料をもって、インターネット関連の部署へ説明に回り、部会などで報告させてもらったりしました。

“ぶら下がり”でキーワードを出してみることに

それからしばらくして、インターネット関連の局の局長代理の方から声をかけられたのです。「有園さん、今度、ぶら下がりでキーワードを出してみることになったよ」。私は、「えっ、ぶら下がりって何ですか?」と聞き返してしまいました。どうやら、ぶら下がりとは、テレビCMの最後1秒ほどのことで、そこにキーワードを表示させるということでした。

トヨタist「ほっぺの理由」

それは、トヨタistのテレビCMでした。2004年9月10日頃が最初だったと思いますが、「ほっぺの理由」というキーワードをテレビCMの最後に表示して、リスティング広告でそのキーワードを入札したのです。

はじめてテレビでこのCMを見たときは、さすがに熱いものが胸にグッと込み上げてきました。そのぐらいの達成感がありました。

トヨタistのテレビCMは、たしか、8月から流れていたのですが、期待したほどウェブサイト側にアクセスが流れてこないということで、テレビCM内でキーワードを表示させてみることになったようです。

リスティング広告と連動させる試みは、最初は1ヶ月ほどの予定でしたが、それなりに評価されたようで、その後も延長して3ヶ月以上続いたと記憶しています。いわゆる、テレビCMとリスティング広告を連動させた(マス連動の)最初のケースだと思います。

三井不動産「芝浦の島」

翌年の2005年3月頃だったと思いますが、三井不動産のマンションのテレビCMで「芝浦の島」というキーワードをテレビCMに表示して、リスティング広告と連動させるというキャンペーンがありました。(私が担当していた総合広告代理店とは異なる総合広告代理店の仕事だったため、私はこの仕事には関わっていません)

NEC「Nを追え」

その後、NECの携帯電話のキャンペーンで「Nを追え」というキーワードをテレビCMに表示して、テレビCMとリスティング広告の連動がおこなわれました。このあたりから、かなり話題になり、このマス連動の手法は一気に普及していきました。

偶然の出来事に導かれて

2005年8月に、2つの総合広告代理店から、テレビCMやその他のマス広告の投下量と検索数の関係について本格的な調査を依頼され、先日の「MarkeZine(マーケジン)」の記事「テレビCMの投下量と検索数、そして売上げとの相関関係は?オフラインアトリビューションの基本【アトリビューション編:第6回】」で書いたような、オフラインアトリビューションの仕事につながっていったのです。

偶然の出来事から導かれて、マス広告と検索の相関に興味を抱き、今に至りました。次回は、これまでの経験で学んだことや思考についてお話したいと思います。

アタラ合同会社
取締役COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
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【海外事例】Google Analyticsのアトリビューションモデリングツールでコンバージョンを47%増やしたAmari Hotels

タイを中心にアジアに店舗をもつAmari Hotelsの事例がClickZに掲載されていたので、ご紹介します。コラムの著者はGoogle Analytics認定パートナーでもあるコンサルティングファームのSparkline Analyticsの創業者であり、チーフコンサルタントのVinoaj Vijeyakumaar氏です。

Embracing the Reality of Multi-Touch Attribution
http://www.clickz.com/clickz/column/2282207/embracing-the-reality-of-multitouch-attribution

新しいものはなにもいらない

氏によるとAmari Hotelsは一切新しいリソースを使うことなく、Google Analyticsのアトリビューションモデリングツールの分析を元にしたマーケティング予算のリアロケーション(再配分)で、オンライン予約を47%も増加させることができたといいます。アトリビューション分析をもとに予算配分を最適化した結果Google Display Network(GDN)は全体の構成の7%から17%へ引き上げることになり、それまで大きく過小評価されていたことが明らかになりました。

氏は今日メジャーな測定ツールの多くはラストクリック以上の指標(ビュースルー)を提供しており、ラストクリックに固執する言い訳はもう通用しないと語っています。

最適なモデル

モデルの比較

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具体的にどのように予算を再配分かを決める際に、アトリビューションモデリングが必要になってきます。モデルによって大きく予算配分の結果変わってくるので、いくつかのモデルを比較する必要があります。氏はGoogle Analyticsのアトリビューションモデリングツールを利用した分析の結果、Amari Hotelsのケースでは接触があった全てのタッチポイントに均等に貢献度を割り振る均等配分モデル(Linear Attribution Model)と、コンバージョンの近くで接触したタッチポイントほど多く貢献度を割り振る減衰モデル(Time-Decay Attribution)が現実を比較的反映しているとし、採用しました。

管理画面と数値

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コンバージョンのデータにモデルを適用させた画面はこのようになります。ラストクリックの場合とどれだけの差があったかを一目で確認できるようになっており、ここで特筆すべきは均等配分モデルで559.73%、減衰モデルでの526.38%というラストクリックとは大きく違いが出たGDNでしょう。コンバージョンが47%増えた大きな要因はラストクリックの場合と比較して一番大きな変化であるこの部分にあったと仮説をたてることができます。
完璧に現実を反映するモデルは存在しないのですが、ラストクリックのみで評価しているモデルに比べてこのようなシンプルなモデルであっても大きくコンバージョン数を改善することができる可能性があります。

今まではテクノロジーが成熟していなかった点や予算の観点から実行するのが難しかったアトリビューションが、無料で利用できるGoogle Analyticsのアトリビューションモデリングツールの登場によりデジタルマーケターのインサイトを開いたと氏は指摘しています。

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【アトリくんの視点】全てのカスタマージャーニーをGoogle Analyticsで計測できるわけではないですが、多くのリソースをかけることなくアトリビューションマネジメントが手軽にできるようになってきています!アトリビューションの基本的な考えはとてもシンプルで「評価されるべきものをきちんと評価する」ということにあり、難しく考えることなく実行できるようになることにとても期待しています!

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【国内事例】スカパーがデジタルでのブランド認知を獲得するためアトリビューション分析を実験的に導入

スカパーのアトリビューション分析、記憶に残り検索誘発する広告探る(日経デジタルマーケティング/有料会員のみ)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmgp/20121113/239385/

日経デジタルマーケティングは2012/11/14の記事において日本で唯一、アジア最大の有料多チャンネル放送・衛生事業を行うスカパーJSATがマス広告の持つ高い効果を認識しながらも、デジタルの中でのブランド認知獲得が必要だという危機意識を持っていると紹介している。

そのために、デジタルでのディスプレイ広告の効果やキーワード検索によるサイト訪問など可視化し、最適化するアトリビューション分析を実験に導入したという。

アトリビューション分析を行うことで記憶に残り検索を誘発する広告の重要性を認識するなど、一定の効果分析ができたが、継続実施にはコストや分析スピードに課題があると記事は紹介している。

アトリビューション分析の方法や効果、課題に関する詳細な内容は日経デジタルマーケティングの有料会員登録で閲覧できる。

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<海外事例>GoogleとMarketShareによるPanasonicのオフライン-オンライン-店舗売上をカバーしたアトリビューション分析結果

GoogleとMarketShareが欧州Panasonicのキャンペーンにおいて、TV、Google系メディア(Search、GDN、YouTube Ads)が店舗売上にどのようなインパクトを与えたかをアトリビューション分析。その詳細な結果が報告されている。

キーポイントは以下の通り(以下翻訳):

  • 小売店におけるPanasonicのデジタルカメラの店舗売上はキャンペーン期間中4%増加。
  • Product Xの店舗売上はブランドマーケティングキャンペーンによってドライブされ、オンライン広告の貢献度は40%(だが、キャンペーン予算の15%しか使っていない点が特筆される)。
  • TVに比べ、オンライン広告のほうがリターンが高い結果となった。Product Xにおいて検索連動型広告のROIはTVのそれよりも9倍高かった。検索連動型広告の次はYouTube広告(プレロール型)でProduct Xのオフラインでの売上の13%に貢献する形となった。
  • 今回いい形でキャンペーンは実施されたが、メディアミックスを最適化することで同じ予算額で9%売上を増加させることが可能。

資料のダウンロード(PPT/PDF)も可能。
http://www.thinkwithgoogle.com/insights/library/studies/panasonic-online-to-store-case-study/

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ガジェット情報ブログの「ギズモード・ジャパン」記事広告を対象に効果測定、アトリビューション分析を実施

「ギズモード・ジャパン(Gizmodo)」の記事広告の効果を可視化する取り組みとして、特定の記事広告を経由したコンバージョンパスデータを分析した結果が公開されている。

※ギズモード・ジャパン
http://www.gizmodo.jp/

ニュースリリース
http://www.lockon.co.jp/release/2803/

分析結果の紹介ページ
http://www.mm-lab.jp/article/599/

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【アトリくんの視点】
記事広告を経由したコンバージョンパスデータを分析したケースとして注目してみました。ニュースリリースや分析結果の紹介ページだけでは「ビュースルーコンバージョン」「直接効果」「間接効果」といった用語の定義・使われ方や数値に若干不明な点がありますが、「非常に効果的な記事広告であったと言えると思います」と結論づけられています。昨年から、記事広告やバナー広告のアトリビューション分析に注目し、導入し始めているメディアが増えてきているという事実は、一方的なメディア視点ではなく広告主視点で自社の広告メニューを見ることがより一層求められていることを示していると思われます。そして広告主が描く全体シナリオの中の一メディアとして適切なソリューションをタイムリーに提示できるかが今後は重要になりそうです。

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セミナー:広告主が語る第三者配信によるアトリビューション効果検証と活用事例

2012年 7月4日(水)に、アトリビューションのセミナーが実施されます。

広告主が語る第三者配信によるアトリビューション効果検証と活用事例
【大和ハウス工業編】
~アドネットワークと広告主サイトの全流入データをユーザ単位で統合~

詳細はこちらまで。
http://www.activecore.jp/seminar/20120704.html

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Attribution.jpに寄稿しませんか?

Attribution.jpでは以下を募集しています。

・貴社のアトリビューションの取り組みに関する寄稿
・アトリビューション分析事例のご紹介
・アトリビューションに関連するソリューションご紹介
・弊社有園とのアトリビューション特別対談

上記のいずれかにご協力いただける方はattribution[at]atara.co.jpまでご連絡お願いいたします。

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【アトリくん(エージェントのつもりです)の視点】
ぜひ!アトリビューション分析、アトリビューションマネジメントに関する話題が多くなってきた中、皆さんのご協力が必要です。手法、事例、ソリューションを発信したい方はぜひ。

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CSS Niteでのアトリビューションの講演資料

昨年10月に開催されたCSS Nite LP, Disk 19「アクセス解析:事例紹介とGoogleアナリティクスの新機能」のフォローアップとして、小川 卓さん(リクルート)の『「なでしこJAPAN」に見るアトリビューションの重要性と最新動向〜Googleアナリティクスの新機能「マルチチャネル」活用術〜』のスライド、音声が公開されています。

http://cssnite.jp/archives/post_2252.html

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アトリビューション分析は認知や態度変容も対象にしているのか?

初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)について紹介し、その後、いくつかの質問があったと前回の投稿(http://www.attribution.jp/000072.html)でも書いたが、一つ気になる質問があるので回答しておきたい。

今回の質問は「アタラ・メソッドでは結局、広告の価値をコンバージョン効果でしかみていないのですか? 認知や態度変容については計測していないのですか?」というものだ。まず、この質問に回答し、その後、さらに論を進めて、認知や態度変容についてアトリビューション分析でどのように数値化しているかについて解説していきたい。

計測はしていないが、考慮はしている
「認知や態度変容を計測していないのですか?」と問われれば、もちろん、「計測はしてはいない」という回答になる。では、もし「認知や態度変容について考慮していないのですか?」と問われれば、答えは「考慮はしている」である。

これは、どういうことだろうか。認知や態度変容について測ってはないが考慮はしているとはどういうことなのか? 認知や態度変容について計測する場合に多くみられる手法は、アンケート調査を実施することだ。特定のブランドやキャンペーンについての純粋想起や助成想起などを調べる。あるいは、特定のブランドに対する好意度や購買意向などを調査し、認知の変化や態度への影響を測定するのである。このような従来のアンケート調査などでの計測は、アタラでは通常、実施してはいない。ただし、アトリビューション分析では、認知や態度変容について考慮していないのかというと、そうではないのだ。これは、アタラ・メソッドに限った話ではなく、米国などでアトリビューション分析が紹介される場合にも同様だと考えていい。

各流入元には役割がある
アトリビューション分析では、コンバージョンに至るまでの流入経路のデータを測定し、各流入元のコンバージョンへの貢献度を算出する。どのようなアトリビューション・モデルを使った場合でも、この基本的な考え方は同じだといっていい。

たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C → コンバージョン という流入経路があったとしよう。このような経路の説明として、アタラでは、初回 → 中間 → ラスト → コンバージョン と呼び換えている。同様に、米国の資料などでは、First Engagement → Middle Engagement → Last Engagement → Conversion あるいは、Introducer → Influencer → Closer → Conversion などと言い換えているケースも多い。Engagement をあえて翻訳すれば、「顧客との関係構築」という意味になる。つまり、最初の顧客との関係構築 → 中間の関係構築 → ラストの関係構築 と展開していくことを示す。Introducer は「顧客に紹介した流入元」という意味だろう。Influencerは「顧客に影響を与えた流入元」、Closerは「顧客との取引を締結させた流入元」といった感じだろうか。

流入経路の各流入元をこのように言い換えているのはなぜだろうか? それは、各流入元が顧客との関係性において何らかの役割を担っているという考え方が根底にあるからだ。

たとえば、初回の流入元を First Engagement や Introducer と言い換えているのはなぜか。それは、初回の流入元が顧客との最初の接点であり、顧客に対して商品やサービスを最初に紹介するという役割を担っていると考えているからだ。最初に紹介するということは、顧客の側からみると、その商品やサービスを初めて「認知(Awareness)」した瞬間であると言える。

同様に、Middle Engagement や Influencer というのも、顧客に何らかの影響を与え、コンバージョンする可能性を高めてくれる役割だと考えていることになる。つまり、コンバージョンする可能性を高めたということは、コンバージョン意向を、あるいは、購買意向を高めてくれる役割を担っているということだ。これは、まさしく、「態度変容(Attitude Change)」にあたる。

Last Engagement や Closer とは、コンバージョンに至る顧客との最後の接点で、顧客に最終決定を促す役割を担っていると考えていることになる。顧客にコンバージョンという「行動(Action)」をさせた役割を担ったことになるのだ。

購買プロセスの中で認知や態度変容を考えている
アトリビューションで分析する流入経路は、このように顧客との関係構築やその変遷を前提としている。いわゆる、購買プロセスや購買サイクル、すなわち、消費者の意思決定プロセスを前提にして、初回の流入元が「認知」、中間の流入元が「態度変容」、ラストの流入元が「行動」という役割を担っていることを仮定しているといってよい。そのため、この初回〜中間〜ラストの各流入元に貢献度を配分するという手法は、認知や態度変容も考慮して貢献度を割り振っているということになるのだ。

そもそも、アトリビューション分析のはじまりは、「認知や態度変容に影響を与えているはずの初回や中間の顧客接点を考慮しないのはおかしいではないか!」という叫びにも似た訴えではなかったのか。ラストの顧客接点だけを対象にした従来のラストクリックCPAが、コンバージョン効果だけしかみていないと問題視され、その代替的アプローチとして勃興してきたのがアトリビューション分析なのだ。アトリビューション分析はその起源において、認知や態度変容を分析対象にしているのは明らかである。

コンバージョンに至らなかったものも何らかの効果があるはずだ
このようにアトリビューション分析は、認知や態度変容も考慮している。しかし、コンバージョンに至った流入経路だけを分析対象にしているのであれば、まだ不十分だと言える。コンバージョンには至らなかったとしても、認知させたり、態度変容を促したりしている可能性はある。だから、広告の効果としては、コンバージョンに至った流入経路とコンバージョンに至らなかった流入経路の両方を分析した方がよいのである。

実際によくあることだが、広告は非常に効果的に展開されていて、多数の流入をサイトにもたらしている。それにもかかわらず、サイトのユーザービリティが悪く、コンバージョン数が非常に少ないということがある。この場合に、その原因を広告に求めることは不当であろう。同様に、商品やサービスが魅力的ではないために、せっかくサイトに流入してきた消費者を逃してしまうこともある。ブランド力がないために消費者の信用を得られず、コンバージョンに至らないケースもあるだろう。一般的に、サイトのユーザービリティ、商品・サービスの競争力、そして、ブランドの競争力がコンバージョンに与える影響は大きい。これらの競争力が低いクライアントの場合は、広告出稿を効果的に展開したとしても、コンバージョン数をあまり稼げないという結果に陥りがちだ。このようなケースでは、コンバージョン数が少なかったとしても、広告が悪かったからだとはいえないであろう。

アトリビューション分析では、コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にできる。使用するデータは、流入経路で得られる範囲に限定されはするものの、コンバージョン効果だけではなく、認知や態度変容も考慮して評価できるようになる。つまり、コンバージョンには至らなくても、その流入経路の中に出現する各流入元には何らかの効果があったはずだと考え、そこを分析対象とするのである。ただし、認知や態度変容をアンケート調査などで測るのとは別である。あくまでも、考慮して評価するということになる。たとえば、認知率が何パーセントあるか、クライアントのブランドイメージがどのように変化したか、などを流入経路のデータ分析で把握するのは難しい。そのようなことを把握したい場合、現時点では、アンケート調査などの手法を使った方がよいであろう。

コンバージョンに至らなかった流入経路の分析方法
さて、コンバージョンに至らなかった流入経路を分析対象にする場合、実際にはどのようにして分析をすればよいのだろうか。コンバージョンに至らなかった流入経路とは、たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C で終わっていてコンバージョンは発生していないものである。

アタラでは、コンバージョンを発生させなかった流入経路の分析をする際には、まず、すべての流入経路(コンバージョンに至ったものと至らなかったものすべて)を履歴数ごとにグルーピングすることから始めている。履歴数とは、この流入経路の中に出現する流入元の数のことだ。流入元A → 流入元B → 流入元C の場合は履歴数が3回となる。グルーピングでは、履歴数が1回のグループ、履歴数が2回のグループ、履歴数が3回のグループ、履歴数が4回のグループ、…… と分けていく。測定ツールの設定などによって、取得できる履歴数の上限が決まっている場合は、その上限までグルーピングしていく。グルーピングしたあとに、グループでのユニークユーザー数を分母にコンバージョン数を分子にして、コンバージョンレート(CVR)を算出する。これを各グループでそれぞれ算出していくと、履歴数1回グループのCVR、履歴数2回グループのCVR、履歴数3回グループのCVR、履歴数4回グループのCVR、…… と算出できる。このようにグルーピングしてCVRを算出した場合、どの履歴数のグループがもっとも高いCVRになるのかをみていくのである。

いくつかのクライアントのデータを分析して分かったのだが、クライアントや分析時期によって差はあるが、だいたい履歴数5回ぐらいまではCVRが徐々に上昇していき、そこをピークとして、その後はCVRが低減していく現象がある。つまり、1回、2回、3回と履歴数が増えるにつれて顧客育成が起こり、消費者がコンバージョンしやすい状態に変わっている。態度変容が起こっているといってもよいだろう。そして、5回前後を境にして効果が飽和し、CVRが下がり始めると考えられる。このようなCVRの変化は、コンバージョンのしやすさが変わっているからだと判断できる。1回よりも2回、2回よりも3回の方がコンバージョンしやすくなっているからこそ、CVRが上がっていくのだ。

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コンバージョン性向を高めるために
アタラでは、このコンバージョンのしやすさを表すために「コンバージョン性向(Propensity to Convert)」という用語を使っている。経済学を学んだ人なら馴染みがあるかもしれないが、消費性向(Propensity to Consume)という言葉があり、可処分所得のうちで消費支出にあてられる額が占める率のことを指す。この消費性向は消費意欲を示す指標として使われている。消費性向が高いほど、消費意欲が高いことになる。たとえば、「アメリカは日本よりも消費性向が高い」などと使われる。この消費性向とのアナロジーで、「コンバージョン性向」という用語を使っている。そもそもコンバージョンとは消費という大きな概念の一形態であるため、このアナロジーも分かりやすいだろう。「コンバージョン性向」が高いほど、コンバージョン意欲が高い、つまり、コンバージョンしやすいことを示す。この用語は、アタラの造語ではない。欧米のウェブマーケティングの資料の中でも使われているので言葉としての新しさはないが、アタラにおいては、この「コンバージョン性向」を確率として捉えて、アトリビューション分析に導入している。

初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)の基本的な考え方について紹介した。その中で、アトリビューション・スコアやアトリビューションCPAを用いてアトリビューション分析をおこない、シミュレーションを実施していることを書いた。このシミュレーションは、実際に得られたデータを分析し、その結果に基づいて予算配分やクリエイティブなどを変更したり、組み合せを変えたりして効果を高めること目的としている。予算配分の組み合せを変えることによって、より多くのコンバージョンを発生させられないかを模索する。あるいは、より多くのコンバージョンを発生させられる状況を作ったり、よりコンバージョンしやすい状態にしたりする方法を探していると言ってもよい。要するに、シミュレーションでは「コンバージョン性向」を高めようとしているのだ。コンバージョンする確率が高くなるように操作しようとしているのである。

コンバージョン性向として数値をはじきだす
履歴数グループごとにCVRが変化するという事実は、それぞれのグループごとにコンバージョンする確率が変化していることを示す。「コンバージョン性向」が変化するといってもよい。そして、すでに発生した過去の事象が分かっていれば、それに基づいてコンバージョンする確率を推定できると考えてよい。たとえば、履歴数1回グループのCVRが1%、履歴数2回グループのCVRが2%と過去のデータが示していれば、今後も大きく外的状況が変わらない限り同様のCVRになると推定できる。このような推論を展開していくと、コンバージョンが発生しなかった流入経路についても、どのくらいの確率でコンバージョンが発生するのか予測できるのだ。

履歴数1回グループにコンバージョンに至らなかった200個の流入経路があったとしよう。つまり、クライアントのサイトに1回訪問したが、コンバージョンせずに離脱したのが200あったとする。このうちの50%が2回目の訪問をするとする。この履歴数1回グループのうちで履歴数2回グループに推移する率も過去のデータを分析すれば分かることである。この200個のうちの50%が履歴数2回グループに推移すると、履歴数2回グループが200個の50%分だけ増加するので、100個増える。先述のように履歴数2回グループのCVRは過去のデータで2%になっているならば、履歴数2回グループの増加分100個の2%で、2個のコンバージョンを発生する確率になる。

このように過去のCVRに依拠してコンバージョンが発生する確率を計算していくと、すべての流入経路に対して「コンバージョン性向」を算出することが可能になるのだ。

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ここからは、また、アトリビューション・スコアの話に戻る。つまり、コンバージョンが発生しなかった流入経路については、確率を使うことによってアトリビューション・スコアを割り振っていくのだ。「何個のコンバージョンを発生させる確率がありますよ」ということが分かるので、その確率で捉えたコンバージョン数をアトリビューション・スコアとして流入元に割り振っていくのである。その結果、実際にはコンバージョンに至らなかった流入経路も、どのくらいコンバージョンしやすい状態になっていたかを数字で示すことができる。そして、そのどのくらいコンバージョンしやすいか、つまりは、「コンバージョン性向」をさらに高めるためには、どのように予算配分やクリエイティブなどを変更すればよいかをシミュレーションできるようになる。シミュレーションを通じて、次なる施策をよりよいものにしていけるようになるのだ。

従来の手法とあわせて使っていく
今回は、広告の効果として、購買プロセスを前提に解説した。しかし、広告の効果や広告の役割については、さまざまな議論や指標があり、短絡的に論じることは危険であることも承知している。あくまでも、アトリビューションという視点で、流入経路から取得できるデータに限定して、分析をおこなう際の考え方や手法に絞って解説している。当然のことであるが、アトリビューション分析にプラスして、これまでのアンケート調査などによる認知や態度変容の把握は引き続き重要だ。アタラとしても、予算的に余裕のある広告主に対しては、従来の手法での認知や態度変容の把握も勧めている。理想を言えば、アトリビューション分析と従来の手法をあわせて、広告の認知や態度変容への影響を測定し、広告プランニングに活用していきたいものである。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

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【アトリくんの視点】
コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にすることが、アタラの場合は一つのポイントになっています。また、初期の頃から、従来の手法での認知や態度変容の把握も並行して行うことを勧めています。

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国産DSP「FreakOut!」が Google Analytics と連携

フリークアウトは、RTB(リアルタイム入札)で広告枠の買付を行う国産の専業DSP。

広告配信が可能なアドエクスチェンジにおけるビュースルー、クリックスルーのパフォーマンスをどう測定、評価するかが大きな課題の一つであるが、このたび、フリークアウトではGoogle Analyticsとの連携を実現。フリークアウトのDSPを利用しているクライアント環境で検証を行った。
その結果が出てきたので、内容について寄稿をいただいた。

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今年 1 月にリリースされた国内初の RTB (リアルタイム入札) 対応 DSP 「FreakOut!」は、アクセス解析ツール「Google Analytics」との自動連携を開始しました。

「広告接触によるオーディエンスの態度変容をどのように捉え、オンラインマーケティング活動にいかにフィードバックするか」という、7 月に入りアドテクノロジー界隈のブログを中心に盛り上がりを見せている課題 (*1) を、本記事では、より実務的な視点から事例を元に解きほぐしていくことができればと思います。

態度変容をどう計測するか

ディスプレイ広告を視線の端に捉え、なんとなくブランド名が記憶に残った。複数回広告を見たことで、その商品にちょっと興味が湧いた。このような心の動きだけでは、その効果を計測することはできません。心が動いたことで、どのようなアクションにつながったのか。そのアクションを捕捉することで、初めて態度変容を測ることができるようになります。

心が動いた後に行うアクションの中でも、FreakOut! では検索行動に注目しています。FreakOut! が配信するディスプレイ広告に接触し、最終的に別経路からコンバージョンした顧客の直近サーチクエリから、心の動きを炙り出す。これを実現するための方法のひとつが、Google Analytics との連携になります。(*2)

導入事例

今回は、ポーラ・オルビスグループで高品質なスキンケアブランドを展開する「株式会社ディセンシア」様の実際の事例をご紹介いたします。

本レポートでは「1 度でもディスプレイ広告に接触し、最終的に別経路でコンバージョンに至ったケース」の中から、アクセス解析ツールのデータを活用することで本当に意味のある = 顧客の心を動かしたケースのみを抽出し、見えづらかったディスプレイ広告効果の可視化を目的としています。

■ まずは、多数発生した間接コンバージョンの分類

調査期間内において、直接 (=ラストクリック) コンバージョン件数に対し、間接コンバージョン件数は、約 12倍。初来訪から商品購入までに検討期間を要する商材であることから、妥当な比率といえます。

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■ 続いて、ブランドキーワード検索を抽出

間接コンバージョンは、検索、外部サイト、メール、などを最終接触経路としています。この中から、検索エンジンでブランドキーワード (*3) を使って検索して間接コンバージョンに至ったケースのみを抽出すると、全間接コンバージョンの約 45 %が該当しました。

*3 ブランドキーワードとは、会社名、商品名、ブランド名などクライアント様固有の名詞を指す

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ブランドキーワード検索を抽出したのは、ディスプレイ広告との接触を繰り返すことで、クリエーティブ内に含まれるブランドキーワードの認知が高まり、結果的に検索想起されやすくなる = ディスプレイ広告による態度変容 と、今回クライアント様が定義しておられたためです。

■ 接触数における、ブランドワード検索傾向

ディスプレイ広告との接触を経て、最後は検索エンジン経由で商品購買に至った間接コンバージョンを精査し、ディスプレイ広告接触回数と検索キーワード傾向に相関関係があるかを調査した結果が以下になります。

・接触回数が増えるほど、ブランドキーワード検索が占める比率が上がる。
・接触回数が増えるほど、ブランドキーワードの中でも変化が見られた。
  - 接触回数が少ないと、不正確な検索ワードが目立つ
  - 正しいスペルのアルファベットで検索した顧客のほとんどは、最終接触がリターゲティング広告で、接触回数が高い

■ 期待通りの広告接触を経たオーディエンスの検索傾向

本キャンペーンにおいて狙う購買ファネルは、(下図参照)
 1. オーディエンス拡張配信 (*4) で広く認知&クリックで LP 誘導
 2. リターゲティング広告によるリマインド効果
 3. ブランドキーワード検索で刈り取り

という形で設計しており、ブランドキーワード検索による間接コンバージョンのうち、40 %が、この設計通りのファネルを描いて商品購買に至っていました。

*4 オーディエンス拡張配信とは、リターゲティング/コンバージョンしたオーディエンスデータを加工し、類似するオーディンスにも配信先を拡げる FreakOut! の独自技術

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逆に残りのブランドキーワード検索による間接コンバージョンは、

 1. 最初からリターゲティングオーディエンスであった
 2. オーディエンス拡張のまま、リターゲティングを飛び越えてブランドキーワード検索をするオーディエンスに育ってしまった

のいずれかになります。

1 については、フリークアウト実施以前からリターゲティングオーディエンスであったことから、既存顧客か、もしくは他社の広告によってすでにコンバージョン直前まで育成されていた可能性が高いと考えられます。
いずれにしても、FreakOut! によるコンバージョン貢献度は低いと言えるでしょう。

2 については、慎重な議論を要します。クライアントサイトに一度も来たことがないのに、しっかりとブランドキーワード検索で訪れてコンバージョンしてしまうケースです。もし、ウェブ以外のプロモーションをクライアントが行っていなければ、ディスプレイ広告との接触の繰り返しのみで、検索想起されたことは説明がつきやすいですが、本クライアントにおいては、雑誌等でもプロモーションを行っており、この場合も、FreakOut! によるコンバージョン貢献があったとは言いづらいと考えます。

以上より、設計通りの購買ファネルを描いて間接コンバージョンに至った場合のみを、一定のコンバージョン貢献があったと見なすこととします。

■ 抽出した間接コンバージョンをどのように評価するか

以上より、貢献があったと見なせるブランドキーワード検索経由の間接コンバージョン件数は、直接コンバージョンに対して、約 2 倍の件数となりました。

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しかしながら、ここで単純に

直接 CV 1+ 間接 CV 2 = 3

として、「実は 3 も広告効果が良い」といった話にはなりません。間接コンバージョン 1 件あたりの貢献度を、直接コンバージョン 1 件と比べて、どのように評価するかがポイントになってきます。このあたりの議論は、本 Attribution.jp の記事でもありますが、FreakOut! では今のところ、他広告キャンペーンの実施状況や、商品特性といった情報から、クライアント様とのお打ち合わせの中で納得感のある数字を決めております。概ね 0.5 件程度でしょうか。

算出方法については、今後も議論や技術革新が求められますが、予算配分の最適化を迫られる現場としては、ポイントを与えるべき間接コンバージョン数がわかるだけでも、同じ予算内でより高い成果をあげることに繋がるのではないかと考えております。

次の一手

今回の連携を通じ、Google Analytics を利用しているクライアント様であれば、自動的に DSP の広告配信レポートと Google Analytics のデータが統合されます。特別な設定をする必要もなく、上述のケースのようなデータをご覧頂くことが可能になります。

これらのデータを元に、例えば検索連動型広告のビッグワード予算をディスプレイ広告に寄せることで、同予算内での獲得数を伸ばすといった、他施策も含めた予算最適化を行うことはもちろん、DSP の単価設定や配信ロジック、配信先設定の見直しを行うなど (*5)、単純に「媒体を評価する」こと以上の PDCA サイクルを回すことができるようになります。

最後に、本事例はディスプレイ広告の態度変容に対する貢献を完全に評価したものではもちろんありません。貢献度を測る方法論は今後さらなるイノベーションが必要です。我々もテクノロジー企業として、理想を追い求めていくことでこそ革新が起こると確信しております。と同時に、クライアント様のマーケティング活動の現場で、リサーチャーの役割に留まらず、今でき得る範囲の、価値のあるソリューションを提供できるよう開発を進めていきたく思います。

Google Analytics だけでなく、メジャーなアクセス解析ツールとの連携も予定しております。RTB による広告枠買付、また最新のオンラインマーケティングに関するクローズドセミナーも定期的に開催しております。ご関心のある方は info@fout.jp 、もしくは 03-6365-5958 までご連絡ください。

株式会社フリークアウト
佐藤 裕介

*1 特に Fringe81 田中社長のこちらの記事や、@sembear さんのこちらのシリーズATARA 有園さんの ATARA Method の論考は非常に参考になります。

*2 Fringe81 Blog にて同様のご指摘があります。図示による概念整理が極めてわかりやすく、参考にさせていただきました。

*5 今回の場合、間接コンバージョンした顧客は、主に Yahoo! 検索を利用していることがレポートからわかりました。(Y!:G = 90:10) FreakOut! では、リアルタイム入札するオーディエンスがどちらの検索エンジンユーザーかを指定できるので、このようにコンバージョンデータからフィードバックがあると、更にパフォーマンスを改善することが可能です。

株式会社フリークアウト
2010 年 10 月創業。RTB (リアルタイム入札) で広告枠の買付を行う国産の専業DSPです。 広告テクノロジー会社でありながら、媒体に設置された広告枠の管理を一切行わず、 自社テクノロジーを広告枠の買付に特化させることで、 事業ミッションをご利用頂く広告主様のROI最大化のみに絞りました。

佐藤 裕介
Google の広告部門、技術系スタートアップへの出資、開発支援を経て株式会社フリークアウトの創業に参画。Twitter ID: usksato

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【アトリくんの視点】
DSPによるアトリビューションの取り組みについての報告は日本で初めてではないでしょうか?ユーザの多いGoogle Analyticsとの連携というのも画期的です。検索キーワードとの関連性など、色々見えるので、キャンペーンの設計、予算配分決定に役立ちますね。
ところで今日はリアルにfreak outしないよう、サングラスで強がってみました!前が見えない!

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