事例

アトリビューションCPAとTotal CPA

前回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)ではアタラ・メソッド(ATARA Method)について紹介したが、掲載後に読者の方々からいくつか質問と激励をいただいた。その中で気になったものがあったので、回答してみたい。

気になったものの中に、「アトリビューションCPAの合計値と全体の費用があわないのはおかしいのではないか?」という質問があった。具体的に質問の意図を説明するために、前回の投稿で使った<表2>を再掲してみる。

<表2>

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この<表2>にあるアトリビューションCPAを、バナーA、バナーB、リスティング広告で足し合わせてみると、1800万円となるから「これはおかしいのではないか」というのが質問の趣旨だ。バナーA、バナーB、リスティング広告の費用の合計は600万円なので、これと一致しないといけないのではないか、と。これはとてもいい質問だが、アトリビューションCPAの合計値は、費用の合計値と一致するものではないので、問題視する必要はない。たとえば、これまでのラストクリックCPAも同様に一致しないはずである。ここで前回の投稿の<表1>をみてみよう。

<表1>

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これまでのラストクリックCPAは、リスティング広告が300万円、ほかは計算できないので、NAとなっている。そのため、合計しても、バナーA、バナーB、リスティング広告の合計値=600万円にはならず、300万円となってしまう。これまでのラストクリックCPAもアトリビューションCPAも同様だが、発生したコンバージョンに対しての流入元別の獲得効率を示している指標であるため、全体の費用の合計と一致するものにはならないのである。

ただし、いい質問であると言ったのには訳がある。全体の費用の合計と一致するという視点でのCPAもあり得るからだ。前回の投稿で例示した流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)を一つのコンビネーション(組み合せ)として捉えてみよう。そうすると、発生したコンバージョンは1個であり、そのコンビネーション単位でかかった費用は、バナーA=100万円、バナーB=200万円、リスティング広告=300万円で、合計すると600万円である。このコンビネーション単位でみたときのCPAを計算すると、費用の合計(600万円)をコンバージョン1個で割ることになるので、600万円÷1=600万円となる。つまり、流入経路という一つのコンビネーション単位でみたときのCPAと費用の合計は一致するのだ。じつは、これと同じ視点で算出したCPAを「Total CPA(TCPA)」と呼んで紹介している秀逸な論考がある。マーケティングメトリックス研究所の中川氏の「CPA至上主義からの卒業 トータルでいくらかかったの?を評価する新指標『TCPA』」(http://markezine.jp/article/detail/11999)だ。この中で中川氏は「TCPA は、ユーザーがコンバージョンに至るまでに経由した広告CPC(Cost per Click)を合算したものです」と定義して紹介している。

ここで、議論の筋から逸れるが、「Total CPA」という用語について、同じ言葉で異なる概念を表しているケースもあるため紹介しておきたい。それは、Fringe81 代表取締役社長の田中氏の記事「純広告は博打か? 第三者配信による真の広告効果測定|第三者配信その2」(http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/06/09/10265)で「トータルCPAは、媒体費÷(直接コンバージョン+10〜15日以内のビュースルーコンバージョン数)で算出できる」として直接効果だけでなく間接効果も計測することの重要性を説いている。こちらも、第三者配信の効用を正しく理解するために、ぜひ読んでおきたい記事である。

さらにここでは「Total CPA」についてもう一つ、触れておきたい。オーバーチュアとグーグルでリスティング広告の営業に携わっていたころに、個別のキーワードのCPAではなくて、キャンペーン全体のCPA、あるいは、アカウント全体のCPAを表す用語として「Total CPA」という単語をよくみかけた。たとえば、アカウント全体で月間のコンバージョン数が2万でその時の費用が2000万円だったとすると、2000万円÷2万コンバージョン=1000円という数字になる。そして、この数字を改善するために運用していくという話しだ。

このように「Total CPA」はそれぞれの立場で異なる定義で使われているケースがあるため、注意が必要であることを覚えておいて欲しい。

さて、話しを元に戻すと、アトリビューションCPAはラストクリックCPAと同様に、全体の費用と合計値が一致するものではないことを理解していただければと思う。じつは、このアトリビューションCPAという用語だが、どのように呼称すべきかについていろいろと悩んだのも事実だ。これまでのラストクリックCPAとの違いを明確に示しつつも、さきほどの「Total CPA」との混同を避けられるようにしなければならないと考えていた。結局、今回の質問のように「Total CPA」との混同を招いてしまったので、ネーミングとしてはいまいちだったのかもしれない。ただ、アトリビューションCPAという、ある意味、なんの捻りもない名前にしたのは、やはり、アトリビューションということを強調しかったからである。

アトリビューションの視点から、ラストクリックCPAとアトリビューションCPA、そして、さきほどの「Total CPA」を説明すると、次のようになる。

「ラストクリックCPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中でコンバージョンに至ったラストの流入元だけに100%の貢献度を与えて、そのラストの流入元の費用をそのコンバージョン数で割って算出する。

「アトリビューションCPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中で、初回〜中間〜ラストに至るすべての流入元にそれぞれ貢献度を割り振り、それぞれの流入元の費用をそれぞれの流入元の貢献度で割って算出する。アタラ・メソッドでは、それぞれの流入元の貢献度をアトリビューション・スコアで表す。

「Total CPA」:この指標は、コンバージョン・パスの中で、初回〜中間〜ラストに至るすべての流入元にそれぞれ100%の貢献度を与えて、それぞれの流入元の費用をその100%の貢献度で割って算出し、それらを合計して得られる。

ラストクリックCPAとアトリビューションCPAについては、これまで<表1>と<表2>で説明したので、<表3>としてこの「Total CPA」のケースを示してみる。

<表3>

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バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン に至る経路はこれまでと同じでコンバージョン1個が発生したとする。このとき、アトリビューションCPAの合計値を全体の費用の合計値と同じにするためには、この<表3>のように、バナーAの貢献度=1、バナーBの貢献度=1、リスティング広告の貢献度=1として、アトリビューションCPAを算出し、それらを合計しなければならない。この場合は、バナーAのアトリビューションCPAは100万円÷1=100万円、バナーBのアトリビューションCPAは200万円÷1=200万円、リスティング広告のアトリビューションCPAは300万円÷1=300万円で、合計すると600万円となる。この合計を「Total CPA」と呼んでいると考えてよい。ただ、これでは、コンバージョン1個の貢献度をそれぞれに配分していることにはならないことが分かるだろう。コンバージョン1個に対して、バナーAもコンバージョン1個分の貢献、バナーBもコンバージョン1個分の貢献、リスティング広告もコンバージョン1個分の貢献としていることになる。つまり、各流入元の貢献度を足し合わせると3になってしまい、もともとのコンバージョン1個を超えてしまうのだ。したがって、たしかに、この場合には、アトリビューションCPAの合計値とそれぞれの流入元の費用の合計値は一致するのだが、繰り返すが、これでは、貢献度を割り振ったことにならないのである。割り振っているというよりは、それぞれが1個のコンバージョンを発生させていると仮定して計算していることになる。つまり、アトリビューション分析をおこなうという視点で考えると、アトリビューションCPAの合計値と費用の合計値を一致させるという考え方は適切ではないことが分かる。アトリビューションという視点、あるいは、1個のコンバージョンの貢献度を各流入元に割り振るという視点では、各流入元の費用をトータルで考えるというのは適切ではないことが分かる。

ところで、さきほどの中川氏の記事の中でも、後段に「CPAとTCPAの違い」について解説していて、個別の流入元を評価する際には、分析対象以外の流入元の費用を足したり引いたりしている。流入経路を評価するのと、個別の流入元を評価するのは別なのだ。つまり、アトリビューションCPAと分析手法は異なるが、間接効果を見えるようにしたいという試みとしては、向かっている方向は同じであると考えてよいだろう。

また、アトリビューションという視点を離れて考えると、この流入経路の費用をトータルで考えるという視点は非常に重要になる局面がある。流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)を一つのコンビネーション(組み合せ)として捉えてみようという話しをしたが、このコンビネーションについて、実際にクライアントのデータを分析すると、非常にたくさんの異なるコンビネーションが出てくる。1万個のコンバージョンがある場合でも、このコンビネーションは何千という桁で出現する。それだけコンビネーションのパターンは分散しているということだ。分散しているパターンではあるが、詳細に分析すると、コンバージョンを多く生み出しているパターンと1個だけしか生み出していないパターンに分けることができる。そして、もちろん、最も多くコンバージョンを発生させているパターンも分かるのである。さらに、そのパターンごとの費用を考慮して獲得効率を算出すると、最も効率のよいコンビネーションのパターンも明らかになる。このような分析を便宜的に「勝ちパターン分析」と呼んでいるのだが、この分析もクライアントにとって非常に有益なものになる。たとえば、仮に、バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン というコンビネーションが最も獲得効率のよいパターンであると分かったとしよう。そうすると、このクライアントの場合には、バナーAをクリックしてクライアントのサイトに流入し離脱してしまったユーザーに対しては、バナーBを表示させて再訪問を促すことが効果的である可能性があることが分かるだろう。なぜなら、バナーAからバナーBと経由してくる場合は勝ちパターンになる可能性が高まるからである。第三者配信によって、このような特定のユーザーに対して特定の広告(ここではバナーB)を表示させる、出し分ける、というコントロールが技術的に可能になるので、この勝ちパターン分析はアトリビューション分析の応用として視野に入れておきたいものである。

さて、あらためて、アトリビューションCPAのネーミングでのこだわりについて記したい。これは、「割り振っている」ということを強調するために付けた名前である。<表1>、<表2>、<表3>でそれぞれ説明したように、それぞれの違いは、適切に貢献度を割り振っているかどうかである。ラストクリックCPAはラストだけに100%の貢献度を割り振っている。これでは他の流入元が無視されているので適切ではないことは自明だろう。そして、<表3>も、すべてに1を振っていることになるため各流入元で貢献度を適切に分け合ってはいない。<表2>は、コンバージョン1個の貢献度を、各流入元に均等に割り振っているのだ。割り振っているため、それぞれの流入元のアトリビューション・スコアを足すと1になる。つまり、コンバージョン数と同値になるのである。この割り振りを適切におこなって算出しているのがアトリビューションCPAということになるのだ。

次回は、前回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)で紹介したアタラ・メソッド(ATARA Method)に対して寄せられた質問の中で気になったものがもう一つあるので、その質問に対しての回答をしたいと思う。その質問の趣旨は「アタラ・メソッドでは結局、広告の価値をコンバージョン効果でしかみていないのですか?認知や態度変容については考慮していないのですか?」というものだ。この質問への回答は字数が必要となるので、次回の投稿で丁寧に回答することにしたい。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

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【アトリくんの視点】
普段自然と使っている用語も、それぞれの解釈があるので注意が必要ですね。ところで関係ありませんが、梅雨明けしてとても暑いのでスーパークールビズで浴衣で登場してみました。似合うでしょう?皆さんも暑いですが体調管理に気をつけて!

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アトリビューション分析→シミュレーション→改善の具体的なフロー(やり方)とは?(Web担当者Forum Attribution.jp分室)

先日のアタラCOO有園による「アタラのアトリビューションコンサルティング」が若干編集され、We担当者Forum Attribution.jp分室でも掲載されました。

アトリビューション分析→シミュレーション→改善の具体的なフロー(やり方)とは?(Web担当者Forum Attribution.jp分室)
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/07/11/10647

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【アトリくんの視点】
安田編集長、おおきにです!

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特別寄稿:電通レイザーフィッシュのアトリビューションの取り組み(3)

電通レイザーフィッシュによるアトリビューションの取り組みに関する特別寄稿第3回目(全3回)。最終回です。

第1回はこちら
第2回はこちら

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7. ケース3 : ディスプレイ広告とサーチの関係性
続いては、本サイトで多く取り上げられているディスプレイ広告とサーチの関係性についてのケースです。オンラインビジネスのサービスで、資料請求、申込がサイトの目的です。本件では、MediaMindを活用したケースです。検証のポイントは以下の通りです。

  • MediaMindのチャネルコネクトフォーサーチ機能(CC4S)を活用し、アドネットワーク、サーチのコンバージョン数をMediaMindというプラットフォームで重複を省き、評価する。
  • MediaMindの広告接触履歴分析機能を用い、クリックしたユーザー、接触したユーザー(ここでは、広告をクリックせず、Cookieでマーキングされたユーザーを指します。その後、コンバージョンした場合は、View conversionと見なす)を分析する。
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この分析では、予想以上にアドネットワーク経由のコンバージョンが多く、それに伴いアドネットワークのCPAに変化見えた。検索においては、Google、ヤフーからの媒体によるコンバージョンデータが250件であったが、MediaMindといったプラットフォームで一元的に見ると、100件となった。案件の特性や業界カテゴリーにより、比較的極端な結果となったが、広告配信ツールでこのように複数のオンラインマーケティングの手法に対して、コンバージョンの重複を省くトラッキングを行うと、今まで得られていたCPAデータにも変化が見られることが分かる。

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8. アトリビューションの今後

●ソーシャルメディアにおけるクリックデータの取得
アドネットワーク広告への接触や検索行動の他に、当然オンラインユーザーのソーシャルメディア内の行動も増えてくる。Twitter, Facebookでは広告配信ツールにおける間接効果のトラッキングはできないので、最低でもクリックベースによるトラッキングをすることで、アドネットワーク、検索、ソーシャルといった範囲でアトリビューションの手法を模索できると考える。

●ソーシャルメディアにおけるクリックデータ以外のデータとの関連性
また、ソーシャルメディアでのユーザーの行動は、ソーシャルメディアサイト内の広告のクリック、他人の口コミのなかにあるリンク(例えば、xxよかったよ。サイトへのリンク)のクリック以外に、当然ながら、自発的なテキストベースの感想(口コミ)を発信することのほうが多い。

この場合、クリックデータだけを追跡しても、ソーシャルメディアでの口コミというの行動を見過ごすことになりかねない。このようなソーシャルメディア上の会話はやはりソーシャルメディアリスニングツールで「会話データ」として、別途多角的にモニタリングする必要がでてくる。

最後にまとめとなるが、ユーザーの行動はますます複雑化し、その行動を正確に100%トラッキングするのは理想的ではあるが、「あるべき論」で終わってしまう可能性もある。当然、より多くのデータを取得すれば、ツールのコストや、取得したデータの分析コスト(自社のリソース、またはアウトソースするにせよ)が増えるわけで、全ての行動データをトラッキングすることはできない。各企業のオンラインマーケティング活用において、本当に重要かつ自社のブランディングや売上アップに影響力の高い部分(例えば、KGIに一番影響力のある施策の部分)に軸を絞り、企業独自のアトリビューションモデルを構築するのが現実的なのではないかと考える。

株式会社電通レイザーフィッシュ
マーケティング室 
清水秀和

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【アトリくんの視点】
ソーシャルは今後の課題ですね。一時期はFacebookでもビュースルーコンバージョンが取れていたのですが撤廃されてしまったようです。かなり前からアトリビューションの取り組みをされていた電通レイザーフィッシュさん、清水さん、とても説得力がありましたし、本当に勉強になりました。ありがとうございました!

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アタラのアトリビューションコンサルティング

「アトリビューション」を取り巻く誤解

アタラでは、アトリビューションについての総合情報サイト「Attribution.jp」を2010年に開設し、それと軌を一にしてアトリビューションコンサルティングを事業として始めた。少しずつ、アトリビューションが日本市場にも普及していることを感じているが、お問い合わせの内容はさまざまで、アトリビューションについての理解度は、かなりのバラツキがあるようだ。

「御社では、どのようなモデルで分析をしているのですか?」という比較的レベルの高い質問もあれば、「アトリビューションって何ですか?」や「アトリビューションって、どんなメリットがあるのでしょうか?」というような基本的な質問もあり、多岐にわたる。

ときには、「アトリビューションというツールについて教えてください」という質問もあり、誤解を招いているものもある。ちなみに、今後は分からないが、いまのところ、アタラではアトリビューションのツールを提供してはいない。

アトリビューションには障壁が多い

このような状況を踏まえ、正しい理解の一助となればとの思いもあり、アタラでおこなっているアトリビューションコンサルティングの一端を紹介することにした。アトリビューションは、その分析をおこない成果を上げるのには多くの障壁があるといわれていて、現場の実務で実践することが困難であるとの認識がある。

事実、実務でおこなうのは、とても大変だ。そのような中で、アタラとしては現状の課題を受け入れつつも、現時点で取得できるデータで対応できる範囲での分析とコンサルティングをおこなっている。そのすべてを紹介するのは難しいが、ここではコアとなる考え方を紹介してみたい。

アタラのアトリビューション

基本的に、アタラではアトリビューション分析とシミュレーションをコンサルティングサービスとして提供している。
アトリビューション分析とは、簡単にいうと、コンバージョンに至るまでの流入元の履歴のデータを使い、コンバージョンへの貢献度を各流入元に配分することである。

「アトリビューション・スコア」と「アトリビューションCPA」

アタラでは、各流入元に割り振った貢献度を数値で示すために「アトリビューション・スコア」という言葉を用いている。

また、この「アトリビューション・スコア」で、各流入元にかかった費用を割って得られる数値を「アトリビューションCPA」と呼んでいる。これは、これまでのラストクリックだけで算出したCPA(以下、「ラストクリックCPA」)と同様に、費用を成果で割って得られる数値である。

「アトリビューションCPA」では、成果つまりコンバージョンにあたるのが貢献度を示す「アトリビューション・スコア」になる。費用は、これまでのラストクリックCPAと同様に、その流入元に投下した費用となる。

「アトリビューション・ランク」

もうひとつ、アタラでは「アトリビューション・ランク」という用語も使っている。これは、各流入元を「アトリビューションCPA」によって比較するもので、最も効率がよかったものはどれか、2番目によかったものはどれか、という違いを表すために使っていると考えていただければよい。

ちなみに、「アトリビューション CPA」と同様に「アトリビューション ROAS」も算出できるが、CPAとROASは逆数の関係になっているだけなので、ここでは「アトリビューション CPA」で説明を進めていくことにする。

それでは実際に、「アトリビューション・スコア」、「アトリビューション CPA」、「アトリビューション・ランク」をどのように使うのか、簡単な例でみてみよう。

ラストクリック重視の落とし穴

たとえば、最初に、バナー広告Aをクリックして、広告主のサイトにアクセスしたユーザ(正しくはブラウザ)がいたとする。初回では、すぐにコンバージョンに至らず離脱するが、しばらくしてバナー広告Bをクリックして広告主のサイトに再訪問する。この2回目のアクセスでも、コンバージョンには至らず結局、離脱する。

しかし、2回の接触を通じて、ユーザの記憶に広告主のブランド名が残る。その結果、ブランド名で検索をして、リスティング広告経由で3回目のアクセスをした際、コンバージョンが1個発生したとする。

つまり、バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン となったとき、投下している費用がそれぞれ、バナーA=100万円、バナーB=200万円、リスティング広告=300万円だったとしよう。

まず、ここで比較のために、これまでのラストクリックCPAを算出してみる。すると以下の表のようになる。

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発生したコンバージョン1個は、リスティング広告のみのお陰であると考えるのが、これまでのラストクリックでの分析の仕方である。そのため、貢献度を各流入元に割り振ると、表にあるように、バナーA=0、バナーB=0、リスティング広告=1となる。

したがって、ラストクリックCPAはリスティング広告のみでしか算出されず、表にあるように、バナーA=NA、バナーB=NA、リスティング広告=300万円(300万円÷1=300万円)となる。

通常、このような結果をみて、バナーAとバナーBは、リスティング広告に比べて獲得効率が悪い、コンバージョンにまったく貢献していないと判断されてしまうのが、これまでのやり方だった。

均等配分モデル

これに対して、「アトリビューション・スコア」「アトリビューション CPA」「アトリビューション・ランク」を使って表を作ってみる。

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ここでは、「アトリビューション・スコア」をそれぞれ3分の1としている。これは、いわゆる、均等配分モデルを使っているからで、流入元であるバナーA、バナーB、リスティング広告を、それぞれ均等に扱い、発生した1個のコンバージョンの貢献度を、それぞれ均等に割り振っている。この場合、流入元が3つあるため、3分の1ずつ割り振っている。

アトリビューションのモデルには、いろいろな考え方がある。詳細は、また別の機会に触れることにして、ここでは均等配分モデルで単純に配分したと理解して欲しい。

さて、このように均等に割り振った状態で、それぞれのCPA(「アトリビューションCPA」)を算出すると、表にあるとおり、バナーA=300万円(100万円÷1/3=300万円)、バナーB=600万円(200万円÷1/3=600万円)、リスティング広告=900万円(300万円÷1/3=900万円)となる。「アトリビューション・ランク」は、バナーA=1、バナーB=2、リスティング広告=3となっている。

表1と表2の違いをみて欲しい。表1では、リスティング広告が最も獲得効率がよいと判断されていた。一方、表2では、どうだろうか。説明するまでもないが、最も効率のよいのはバナーA、順に、バナーB、リスティング広告となっている。

表1と表2の大きな違いは、各流入元に貢献度を割り振っているか、いないかだけだ。それを、するかしないかで結果は大きく変わってしまうのである。

これまでの表1のやり方では「バナー広告は効果が悪い」と、出稿予算を減らされる、あるいは出稿停止になってしまっていた。しかし、この結果をみると、それが本当に適切なやり方なのかどうか、一考の余地があることが分かるだろう。

イチローと松井をアトリビューション分析

日本人メジャーリーガーを例にとってみよう。イチローはシングルヒットを大量に打つバッターで、松井は打点を稼ぐのが得意なバッターである。

これまでの表1のラストクリックCPAで評価するなら、イチローはチームに対してまったく貢献していないことになる。それはなぜか。打点を稼がないからだ。ラストクリックCPAでの評価は松井を過大評価し、イチローを過小評価しているようなものだ。

イチローは打点が少ないのに対して、松井は、得点圏にランナーがいるときにきっちりと打点を挙げてくれる。ラストクリックでコンバージョンを発生させるのが得意なリスティング広告のようなものである。

イチローを先発メンバーから外したらどうなるか

それでは、もし、ラストクリックでのコンバージョンが少ないイチローを評価せずに、先発メンバーから外したらどうなるだろうか。松井のような打点を稼ぐバッターばかりを1番から9番まで並べるのである。

その場合、チームとしての得点力は落ちるだろう。イチローのようなシングルヒットを確実に打つバッターもいないと、効果的に得点を挙げることはできないはずだ。また、そのように評価されているからこそ、イチローは起用され続けているはずだ。いや、年棒だけで判断するならば、松井よりもイチローの方が高く評価されているのが現実のはずだ。

チームにはイチローも松井も必要

つまり、バナー広告のように初回や中間クリックを発生させてくれる流入元、イチローのようなバッターも、メジャーリーグにおいては高い評価を得ていると考えていい。チームには、イチローのようなバッターも、松井のようなバッターも必要であり、それぞれのコンビネーションで得点力を高めていくはずだ。

先の流入経路(バナーA → バナーB → リスティング広告 → コンバージョン)の例も同様で、バナー広告とリスティング広告のコンビネーションで、コンバージョン力を高めていくことができる。そのためには、ラストクリックだけを評価する現在のフレームワークを捨てて、初回、中間、ラストのそれぞれを正当に評価するアトリビューション分析が必要だ。

事例で読み解くアトリビューション分析

ここまでは単純な例を使って、アタラで実施しているアトリビューション分析の基本的な考え方を紹介してきた。次に、具体的なクライアントのケースに沿ったアトリビューション分析と、その分析結果に基づいてシミュレーションをおこなった結果を紹介しよう。

ラストクリックCPAで媒体評価

このクライアントは、リスティング広告に月額2,000万円ほど、バナー広告に月額500万円ほど投下していた。合計で月額2,500万円だ。

これまでは、ラストクリックCPAで媒体の評価をおこなっており、バナー広告は、あまり効果が高くないようにみえるため、需要期以外では使わないという状況だった。このクライアントから依頼を受け、4月の広告出稿状況とコンバージョンに対してア、トリビューション分析を実施した。結果は次のとおりであった。

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表3のCVは「コンバージョン数」、A-スコアは「アトリビューション・スコア」、L-CPAは「ラストクリックCPA」、A-CPAは「アトリビューションCPA」とする。

ちなみに、リスティング広告は、10万個ほどのキーワードをGoogle AdWordsとYahoo!リスティング広告にそれぞれ出稿しており、バナー広告は純広告、アドネットワーク、リターゲティングなどを含み、それらの集計値、平均値を、この表には掲載していると考えて欲しい。ここで、バナー広告にアドネットワークやリターゲティングを入れているのは、あくまでも議論を簡略化するためである。

なぜ、バナー広告の評価が低い?

ラストクリックベースの評価では、リスティング広告が20,000個のコンバージョンをたたき出し、ラストクリックCPAは1,000円となっている。その一方で、バナー広告は1,000個のコンバージョンで、ラストクリックCPAは5,000円である。この状態では、バナー広告の評価が低いのも無理はない。

しかし、アトリビューション分析結果では、リスティング広告の「アトリビューション・スコア」は16,750スコアで、バナー広告の「アトリビューション・スコア」は4,250スコアとなる。そして、「アトリビューションCPA」をみると、リスティング広告が1,194円で、バナー広告が1,176円となっている。これは何を意味しているのだろうか。

バナー広告は、これまでのラストクリック評価ではコンバージョンが1,000個、「アトリビューション・スコア」は4,250スコア。単位はここでは関係ないので、1,000が4,250に増えたと理解していい。この差分である、3,250(4,250−1,000=3,250)は何なのか。

これは、初回や中間のクリックでコンバージョンを発生させていたものが、これだけあったということだ。いわゆる、間接効果の数だといっていい。

「アトリビューション・スコア」の合計に注目

ここで、次のことに注意して欲しい。気づいている方はいるかもしれないが、ラストクリック評価のときのリスティング広告のCV=20,000個とバナー広告のCV=1,000個を合計すると21,000個になり、リスティング広告の「アトリビューション・スコア」=16,750個とバナー広告の「アトリビューション・スコア」=4,250個を合計すると21,000個となって、この両方の数字は同じ値になる。

コンバージョン貢献度を異なるやり方で割り振ったあと、それぞれを合計しているので結局、最後のコンバージョン数としては同じになる。この合計値が異なっていれば、計算間違いをしているなど、なんらかの原因があるはずだ。

バナー広告の方が獲得効率はよい

つぎに、「アトリビューションCPA」でみると、リスティング広告=1,194円、バナー広告=1,176円になっている。ということは、間接効果も含めて考えると、わずかながらバナー広告の方が獲得効率はよいという結果が出たのである。

そうなると、これまでのリスティング広告重視の姿勢を変更して、バナー広告の出稿金額を増やした方が、コンバージョン数の増加する可能性も出てきたといってよい。

約10万個のキーワード、出稿最適化のシミュレーション

さらに、このアトリビューション分析結果に基づいて、出稿最適化のシミュレーションを実施してみる。このクライアントはリスティング広告に約10万個のキーワードを出稿していた。

キーワードの中には、コンバージョンに寄与しているものもあれば、寄与していないものもある。当然、コンバージョンに寄与しているキーワードの中には「アトリビューションCPA」が1,194円と、リスティング広告全体の平均値よりも高くなっているものが存在している。これらは、獲得効率があまりよくないキーワードになるため、ここで投下している費用をバナー広告に再配分することが考えられる。

同様に、実は、ラストクリックでのコンバージョンも発生していなければ、間接効果としてのコンバージョンも発生していない(いわゆるアシストもない)キーワードもある。これらのキーワードは、「アトリビューション・スコア」が0になり、間接効果も直接効果もないものになる。このようなキーワードも出稿停止にして、そこで使っている費用をバナー広告に配分する。

キーワードを整理して約800万円を捻出

「アトリビューションCPA」が1,194円より高いキーワード群と、間接効果も直接効果もないキーワード群の両方で、使っていたコストを割り出すと、このクライアントの場合、約800万円もの金額を捻出できた。

キーワードの中には、300円程度でコンバージョンしているものもあれば、5,000円以上かかっているようなものまであった。

それらすべての「アトリビューション・スコア」と「アトリビューションCPA」を算出し、「アトリビューション・ランク」の低いものから順番に、バナー広告への再配分対象としていく作業をおこなった。そして、「アトリビューションCPA」が1,194円以下で獲得できているキーワード、つまり効率のよいキーワードだけを残して、引き続きリスティング広告をおこなうことにする。

この800万円も「ちょっと多いかな」と最初は思ったが、他のクライアントでも同じような結果が出ているケースがあるので、もしかすると、よくあることなのかもしれない。

とくに、リスティング広告での出稿キーワード数が多い場合、リスティング広告全体の平均でみたCPAが見合っていればOKのケースが多い。そのため、個別キーワードでコンバージョン貢献度を厳密に測っていないケースがあり得る。今回のケースは、それにあたり、そのような例は他にもあると考えてよいだろう。

捻出した800万円をバナー広告にスライド

このようにして、捻出した800万円をバナー広告にスライドしたとして、シミュレーションを実施してみる。全体の出稿金額は、引き続き月額2,500万円で変更はない。

まず、バナー広告経由でのコンバージョン数は、どうなるだろうか。1コンバージョンが「アトリビューションCPA」=1,176円で獲得できるとすると、800万円をバナー広告に追加で投下することによって、6,800個のコンバージョンが追加で獲得できることになる。

ただ、ここで、リスティング広告によるマイナスの影響も考慮しないとならない。リスティング広告では、出稿金額を800万円減らすことになる。この800万円は、さきほど説明したとおり「アトリビューションCPA」が1,194円より高いキーワード群と、間接効果も直接効果もないキーワード群の両方から捻出したものなので、これらのキーワードで獲得していたコンバージョンは減ることになる。その数を計算すると、約2,000個のコンバージョンがあった。

出稿金額は変更なしで、4,800個のコンバージョンが増加

つまり、800万円をバナー広告にスライドさせることによって、プラスで6,800個、マイナスで2,000個となり、プラスマイナスでトータルは4,800個のコンバージョンが増加するという結果になった。出稿金額は月額2,500万円のまま変更なしで、4,800個のコンバージョンが増加するという結果だ。

表3にあるとおり、4月の実際のコンバージョン数は21,000個だ。プラスで4,800個も増加するというのは、とても大きいといえるだろう。

シミュレーションに振り回されない

この最適化シミュレーションは、あくまでもシミュレーションであって、出てきた数値も参考値程度に解釈すべきものである。そもそも、シミュレーションとは、そういうものであり、コンバージョン数を予測して正確にあてようとするものではない。

とくに、今回のシミュレーションでは、4月に発生した流入経路のすべてが5月にも、まったく同じだったと仮定して算出していることになる。当然のこととして、初回、中間、ラストに至る流入経路が、4月と5月でまったく同じであることはあり得ない。初回、中間、ラストのコンビネーションは変わるはずである。

また、アトリビューションモデルも均等配分でおこなっているが、実際には他のモデルを当てはめた方がよいという可能性も否定できない。そのため、あくまでも単純なシミュレーションであると理解して欲しい。

ただし、確かに単純なシミュレーションではあるが、まったく意味がないかといえば、そんなことはない。単純なモデルと単純なシミュレーション方法で導いた結果とはいえ、これまで貢献度を評価していなかったラストクリック以外の各流入元も考慮した上で、シミュレーションをおこなっている。少なくとも、ラストクリックだけに偏っていた、これまでの手法よりは現実に近い形で、評価ができている可能性がある。

クライアントを、どう説得するか

どの程度、このシミュレーション結果が確かかを調べるためには、シミュレーションにしたがって、実際に800万円分をバナー広告にスライドしてみればいい。ただ、クライアントには「確からしさを調べたい」というような冒険心はないのが普通だ。当たり前である。実際のお金を使ってマーケティングをおこなっているからだ。

今回の分析では、バナー広告の獲得効率が良い可能性があり、シミュレーションの結果に従えば4,800個もコンバージョンが増えると主張しても、クライアントは「はい、分かりました」とはならない。クライアントは、もちろん半信半疑だった。いろいろと議論した末に、実験的に200万円分だけバナー広告へスライドさせることに落ち着いた。

スライドさせた結果、プラスマイナスで500個ほどのコンバージョンがプラスになった。実は、200万円分で同様のシミュレーション計算をすると、800個ほどのプラスになるという結果が得られていた。それと比較すると、やや下振れしたことになる。

シミュレーションの結果どおりにはならなかったが、月額2,500万円で、コンバージョン数は21,000個から21,500個に増えたことになる。200万円をリスティング広告からバナー広告にスライドさせたことによって、獲得効率はよくなったといってもいい。

コンバージョンが増えた要因は複数ある

もちろん、断定はできない。コンバージョンが増えた理由は、季節的な要因などもあり得るし、バナー広告のフリークエンシーなどが変化したことや、初回、中間、ラストのコンビネーションが大きく変化したことなども影響を与えるかもしれない。

200万円をスライドさせたこと以外にも、いろいろと検討する余地があるのは確かである。コンバージョンへの影響は、さまざまな要因が考えられるため、単純化して考えることにリスクが伴うのは承知している。しかし、現場で実際に最適化のオペレーションをおこなっていくためには、ある程度の単純化はやむを得ないと考えている。

さまざまな要因があり得るとはいえ、それらを厳密に分析することが非現実的である以上、分析できるデータと使用可能なモデルを使ってソリューションを導き出し、少しでも前に進んで行く方が懸命であろう。

すくなくとも、これまでのラストクリックでの評価よりは、良い分析ができるはずだ。ラストクリックでの評価は、ここで紹介しているものよりも、はるかに単純な手法であるのはいうまでもない。

均等配分モデルの影響

さて、コンバージョンが増加した要因は、さまざまなことが考えられるが、仮にそれらが変化しなかったとしよう。200万円をスライドさせたこと以外は、変化をしなかったと仮定すると、このシミュレーションでは800個増加のコンバージョンと実際の500個増加のコンバージョンの差異=300個は、何から発生しているのだろうか。

これは、アトリビューションモデルとして、均等配分を採用していることから発生していると考えられる。つまり、リスティング広告もバナー広告も、すべて均等に配分して「アトリビューション・スコア」「アトリビューションCPA」を算出していたのだが、他の条件が一定と考えると、このシミュレーションの結果が下振れしたということは、その分だけ、バナー広告への評価を高めに配分していたからだと考えられる。

つまり、本当は、もっと低めに配分した方がよかったといえる。したがって、次のアトリビューション分析では、リスティング広告とバナー広告への配分を均等ではなく、バナー広告への配分を少し割り引くことで、このクライアントへのアトリビューション分析とシミュレーションの精度を向上することが可能であろう。

ところで、他のクライアントでは、シミュレーションよりも上振れすることもあった。その場合は、バナー広告への配分を少し割り増して、再度アトリビューション分析をおこない、シミュレーションすることになる。

プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチ(Progressive Optimization Approach)

このように、上振れ/下振れに応じてアトリビューションモデルの修正プロセスを繰り返しおこなっていくことで、全体の精度が向上していく。この繰り返しの手法を、アタラでは「プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチ(Progressive Optimization Approach)」と呼んでいる。

アタラ・メソッド(ATARA Method)

また、「アトリビューション・スコア」「アトリビューションCPA」「アトリビューション・ランク」を使ってアトリビューション分析を実施し、最適化シミュレーション、そして、プログレッシブ・オプティマイゼーション・アプローチを取る一連の方法を、「アタラ・メソッド(ATARA Method)」と名付けて紹介している。

先述した、イチローと松井の例でいえば、この「アタラ・メソッド」によってイチローの貢献度を、これまでのラストクリックベースの評価に比較して、より正当に評価できる。その結果、全体の得点力=コンバージョン力の向上につながるのである。

ラストクリック評価から脱却

今回のアタラ・メソッドの紹介では、議論を簡略化するために、リスティング広告とバナー広告という2つに流入元を分けて考え、最適化シミュレーションの例をだした。

実際の現場の実務においては、さまざまな純広告、タイアップ広告、動画広告、アドネットワーク、アフィリエイト、ソーシャルネットワーク、リスティング広告、自然検索など、多数の流入元別に分析することになる。そのため、リスティング広告からバナー広告への出稿予算のスライドという、単純なシナリオになるとは限らない。

また、リスティング広告への出稿金額に対して、バナー広告への出稿金額が少なすぎた場合、シミュレーションがうまくできないケースも実際にあった。というのは、初回や中間でコンバージョンに影響を与えているクリック数が、あまりにも少なかったために、バナー広告の「アトリビューションCPA」が非常に高い数字になってしまったのである。

このように、実務においては、今回紹介したケースよりも複雑であるし、場合によっては、うまくシミュレーションできないケースもあるのは確かだ。しかしながら、多くの場合はサイトカタリストなどの効果測定ツールで、コンンバージョン・パスのデータ、つまり、流入経路と流入元のデータが計測できているならば、ここで紹介した方法を使ってコンバージョンの効率を向上できる可能性が高い。

ラストクリックだけを評価していた評価方法から脱却し、初回、中間の各流入元まで含めて評価する方法を使って、コンバージョン数を増加できる可能性は大きい。もし、データが計測できているのであれば、ぜひ、アトリビューション分析をご自分でも試していただきたい。それによっては得られるメリットは大きいと信じている。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
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【アトリくんの視点】
アタラのメソッドをここまで解説したのは初めてです。参考にしていただけましたでしょうか?今回を皮切りに、有園さんのコラムの連載を開始します!

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特別寄稿:電通レイザーフィッシュのアトリビューションの取り組み(2)

電通レイザーフィッシュによるアトリビューションの取り組みに関する特別寄稿第2回目(全3回)。

第1回はこちら

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5. ケース1 : View Conversionを含めたROI評価
それでは、実際のケースを見ていきましょう。通販サイトでDouble Clickを活用したケースを取り上げます。View Conversion、ROIをエージェンシー側が正確に把握し、ROIを倍増させたケースです(ROIの算出方法は、通常SEM施策などで使われている、広告費、利益額を用いた計算式で算出)。

  1. 新規参入の通販サイトで、認知拡大と新規顧客が課題
  2. 間接効果を評価する文化がグローバル企業なので、すでに浸透

この通販サイトのサービスは市場参入時のタイミングではターゲットが限られており、認知拡大を達成しつつ、売上にも貢献する手法として、第三者配信による広告配信、間接効果を含めた広告評価手法を選ばれました。目標とするROIを達成するために、弊社で以下のような戦略を策定した。

  • View / Click Conversionを把握、ROIの算出時は両方を評価する
  • 「より多いクリック、誘導数」は大きな意味をなさない →CTRの向上はそれほど重要ではない(購入する人を集客したいから)
  • CPAフォーカスではなくROIフォーカス →利益率の視点でOptimizationを継続(CPC700円でもROIが達成していれば、それが正解とする)
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結果としては、上記のような数値が得られた。「高いCPCでもROI視点では見合う」、「セグメントもある程度できて、安いCPCだけど、ROIは良くなかった」といったケースを踏まえ、実際のオプティマイズの現場では、むやみにCTRが高いメディアを選択しない判断を行った。CPC、CTR視点で改善方法を考えてしまうと、気がつけないインサイトと言える。間接効果を測れば、ROIが見合う媒体は多数存在することになり、以下の2点の発見があったと言えます。

  • CTRが低くても、View Conversionも含めて評価すると、メディア選定が異なってくる
  • 媒体により、獲得できるView Conversion数に変化が見られる。仮説を立て、テストを実施することで、具体的な数値が得られる。

(追記として、このオプティマイゼーションでは獲得数よりも効率を重視している)。

6. ケース2 : 間接効果を含めたクリエイティブ評価
続いては、間接効果をクリエイティブ評価でも役立てたケースです。CTR視点だけでなく、View Conversionを含めたROIベースで検証します。検証ポイントは以下の通りです。

  1. 直接効果、間接効果の両方の視点で評価する
  2. 広告に接触し、Conversionしたユーザーがいくらの利益が生んだのか?どちらのクリエイティブがROIを達成したのか?
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Creative A / Bを比較し、結果を分析しました。CTRの点では、Bが高い。View Conversion数の点ではAが50、Bが10。ROIの点では、AがView Conversionを多く獲得し、優位であったという結果になりました。この分析では以下のようなインサイトが発見できました。

  • Aは、テキスト中心のメリットを訴求したバナー。クリックしなくても視覚的に記憶にとどまるメッセージの伝達に成功していた。それがView Conversion増加に貢献(その後のユーザーアクションに繋がる)。
  • Bは、よりブランド寄りの抽象的なバナー。「なんとなくかわいい・いいな」と思ったユーザーがクリックする傾向にあり、CTRは上昇する。しかし、視覚効果として、広告接触後、明確に覚えられるまでに至らなかったと推測(メッセージが覚えられ、行動を引き起こすには十分なメッセージではなかったと判断)

以上のような分析も間接効果をとっていなかったら、Click Conversion数では同じ、CTRで勝るCreative Bが選択されていたのではないでしょうか。アトリビューションモデルとはこのように、実施したキャンペーンのデータの見方(角度やレンズのフィルターとも言えます)に大きな影響を及ぼし、効果に対する今までの評価の方法を大きく変える可能性が大きいのです。次回では、ディスプレイ広告とサーチの関係性を話したいと思います。

株式会社電通レイザーフィッシュ
マーケティング室 
清水秀和

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【アトリくんの視点】
取り組みによりますが、CPC、CTR偏重の評価に一石を投じる内容ですね。数字で実証した点が大きいのと、低いCTRのサイトでオプティマイズを行った点は興味深いですね。一部のグローバル企業の取り組みは確かに進んでいますし、評価のための環境も、組織の理解もありますね(欧米ですでにやっているので日本でも、という話は確かに多いです)。第3回目(再来週予定)もお楽しみに!

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特別寄稿:電通レイザーフィッシュのアトリビューションの取り組み(1)

電通レイザーフィッシュは、米国Razorfishにおける手法やノウハウを活かしつつ、日本において、かなり早くからアトリビューションに取り組んできた。

その背景、考え方、取り組み内容を聞く機会があり、今回寄稿をお願いした。3回に渡って取り上げる。

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1. 寄稿の背景
今回、Attribtuion.jpというサイトを拝見し、とても興味深いテーマと感じました。なぜならば、弊社では2007年のRazorfishとの資本・業務提携後、この分野に積極的に取り組み、専門チームを設け、実際のクライアントとともに、多数の事例を作り上げてきたからです。今回は3回にわたり、実際のケースも掲載し、業界でのAttribution Modelに対する理解をより深めたいと考えます。

私は2008年にRazorfish シアトルオフィスにて3か月間勤務し、エージェンシーのビジネスモデル、第三者配信、分析業務を学びました。第三者配信ツールを単なるツールと捉えるのではなく、オンラインエージェンシーの存在意義にも直結するモデルを構築する基幹ツールであったと当時を振り返ります。

広告配信をエージェンシーが実施することで、メディア代理ではなく、大量のCookieデータ、間接効果(View Conversion、Post Impressionなどを指します)、ユーザー行動データ、売上データを扱い、分析主体の業態で大きな付加価値を生むコンサルティングを提供していました。例えて言えば、メディア投資信託会社のようなサービスをRazorfishは当時から提供してました。メディア販売主体ではなく、あくまでもビジネスゴールに沿ったROI視点で、クライアントと長期的な関係を築いていたのが印象的です。

2008年から、弊社は複数社のグローバル企業に第三者配信サービスを提供。Atlas, Double Click, Media Mindなどのツールを用い、社を挙げて各担当者が広告配信管理業務をスタートさせました。そこで得られたノウハウをメンバーで共有し、ラーニングを蓄積。今回は、それらの実務で得たノウハウ、実務レベルで弊社コンサルタントが行った分析業務を取り上げます。

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2. 第三者配信の台頭
欧米では2003年頃から、オンラインエージェンシー、広告主を中心にAtlas、Double Clickといった第三者配信ツールを用いて大量のCookieデータの取得し、分析やデータ統合を積極的に推進してきた背景があります。2009年以降は、データ分析がさらに進化し、今でいうところのAttribution Model、Atlasの ”Engagement Mapping”などがオンラインビジネス企業に積極的に導入され、最適な予算配分の模索が始まったと言えます。現在、Efficient Frontier、Core matrixなど専門企業が詳細な分析サービス、ツール提供を始めており、2010年は日本にとっても、Attribution Model元年と言えるのではないでしょうか。

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3. 間接効果(以降、View Conversion)の意味
実例を示す前に、一度、広告配信領域におけるView Conversionについて理解したいと思います。例としてマス広告とオンライン広告の比較から考えてみましょう。通常、マス広告は露出量、想定接触者数に対して対価を払うモデルです。しかし、マス広告接触後の消費行動1つ1つの接触に対する売上促進を正確に測定するのは難しいと思われます。反面、ネット広告では接触(閲覧・クリック)後の購買行動が正確に把握できます。以下のようなユーザー行動を例としてみよう。OOHを見て、コンビニに行き、炭酸飲料を購入するという一般的な行動です。

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欧米では、上記のマス広告でのユーザー行動をシンプルにオンライン上のユーザー行動にも当てはめることで、業界内(エージェンシー、配信ツールベンダー、媒体社)に自然とView Conversionを測定する文化を形成させたと言えます。しかしながら、日本市場では、なぜがオンライン広告になると、クリック行動のみでメディアが評価され、クリックという限られたユーザー行動を中心にモデリングされているのが現状ではないでしょうか。

4. メディア評価を行う現場
それでは、現場においてこのようなView Conversionの貢献度をどのようにして決めているのでしょうか。実際にはすべてのオンライン広告のすべての接触効果の貢献を認めるか(クレジットを与えるか)は、キャンペーンを開始する前にクライアントと以下の点で協議をし、決定されます。

  1. 市場におけるブランドの浸透度、成熟度
  2. ビジネスモデル
  3. 認知拡大を目的とした広告露出量(マス広告に触発され、ネットでアクションする可能性もあり得るため)

一般的にはネットビジネス企業の場合、ビジネス成長期は100%の間接効果にクレジットを与え、その後、数年かけて成熟期に入るとともに、クレジット率を70%, 50%と減少させていく傾向にあるようです。以上が簡単な背景と概要です。次回からは具体的なケースを取り上げたいと思います。

株式会社電通レイザーフィッシュ
マーケティング室 
清水秀和

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【アトリくんの視点】
先日、この寄稿の件で清水さんと打ち合わせた際、色々お話しができてとても勉強になりました。2008年に米国で学んだということは、米国はそれよりも以前にかなり取り組んで広告効果を評価する手法を確立してきたということです。第三者配信をベースにしたView-through conversionも含めた評価になっている点は、第三者配信が普及している米国で、かつ、大手企業のキャンペーンを手がけるRazorfishだからとも言えますね。日本においては第三者配信はこれからですが、すでに手がけた事例をベースに、市場を牽引してほしいですね。第2回目(来週予定)、第3回目(再来週予定)もお楽しみに!

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小川さんブログ「アトリビューション分析」連載(その4)

RealWebAnalytics
http://d.hatena.ne.jp/ryuka01/20110516/p1

小川さんのアトリビューション連載のその後です。その4:アトリビューションの評価モデルを考える。

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【アトリくんの視点】
そう。またまた分かりやすく解説をいただいていますが、評価モデルは実にいろいろあります。そして、評価をする企業のビジネスモデルやプロダクトライフサイクルのステージなどによっても、その選び方は変わってきます。ただ、最初から難しく考えるとスタックするので、まずは均等配分でやってみる、というのをアトリくん的にはおすすめします。

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小川さんブログ「その2:アトリビューション評価の難しさ」連載

RealWebAnalytics
http://d.hatena.ne.jp/ryuka01/20110322/p1

小川さんのアトリビューション連載の第二弾。

またまたわかりやすいです。

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【アトリくんの視点】
難しい概念を引き続き図解入りでとても分かりやすく説明しておられます。そう、難しいんです。あと、正解は現在もないですし、ある程度の手法は確立していきますが、取り組む各社によって、恐らく様々な方法があるものだと思います。

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SMNのアトリビューション関連ウェブキャスト(米国)

Search Marketing Now
http://searchmarketingnow.com/

非情に興味深そうなアトリビューション関連のウェブキャストがSearch Marketing Nowで予定されています。

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Marketing Attribution Demystified: Ask The Experts
Visual IQによるアトリビューションハウツー(日本時間 3/16 2:00am)
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Measuring Brand Lift With Google TV Ads and PPC: Lenovo Case Study in Online-Offline Attribution
CovarioによるGoogle TV Adとリスティング広告のオンライン-オフラインアトリビューション。レノボの事例。(日本時間 3/25 2:00am)
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【アトリくんの視点】
レノボは2年前からアトリビューションに積極的に取り組んでいるので、興味深い話が聞けそうです。時差はありますが、興味のある方はぜひ!

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TagMan ユニバーサルコンテナタグ管理によるアトリビューション

TagMan
http://www.tagman.com/

タグの一括管理ソリューションプロバイダーであるTagManがアトリビューションの機能を提供し、事例をアップしています。

Virgin Atlanticのケーススタディ(PDFファイル)
http://res.tagman.com/files/TagMan_case_study-Virgin_Atlantic.pdf

スター・ウォーズ風の紹介動画がおもしろいです。映画の予告編のようです。
http://www.tagman.com/index.php/about-tagman.html

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【アトリくんの視点】
アトリビューションを実施するにあたり、複数のタグ管理が課題になるので、この切り口はなるほどという感じです。

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