対談

アトリビューション特別対談: フラグメンテーション時代のデータとアトリビューション – マリンソフトウェア CMO マット・アックリー氏 vs アタラ CEO 杉原剛

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■ワナメーカーの謎を解くために

杉原:今回は、マリンソフトウェアのCMOであるマット・アックリーさんを迎え、お話を伺います。まずは、自己紹介をお願いします。

マット:私は、もともとはエンジニア出身ですが、いろいろな経緯があった結果、マーケティング業界に身を置いています。

この業界での最初の仕事は、eBay(イーベイ)で、グローバルのオンラインマーケティング全般を担当することでした。eBayは、オンラインマーケティングに年間10億ドル近く費やしていることもあり、さまざまな自動化を実現するシステムを開発することは重要でした。サーチやRTB、アフィリエイトプログラムなど、すべてのインハウス管理用のシステムを開発していました。なぜなら、eBayには膨大な量のデータがあり、それを分析し、方向性を示してくれるアナリストも豊富にいたからです。私は5年間ほど、そういったツールを構築し、活用をリードしていました。

eBayの後、グーグルに転職し、YouTubeやDoubleClickなど、サーチ以外のプラットフォームのマーケティングを担当していました。ここでもその後、マリンソフトウェアに入社する理由があります。

eBayにいた頃も、お金もたくさん使い、常に「ワナメーカーの謎」(百貨店王と呼ばれたジョン・ワナメーカーの名言「広告費の半分が無駄になっていることは分かっている。しかし、どちらの半分が無駄なのかが分からないのだ」から)を解決しようとしていました。

だから、私にとって、複数チャネルをまたがった形でマーケターの予算活用、トラッキング、マーケティングタッチポイントの最適化を支援できるテクノロジーベースのプラットフォームは、自ら追求し続けている大きな課題なのです。

グーグルを去った後、ベースとなるMarinのプラットフォームと、後述するオープンスタックアプローチによって、そのビジョンを実現するためにマリンソフトウェアに加わりました。

■マリンソフトウェア

マット:マリンソフトウェアで私のタイトルはCMOになっていますが、マーケティングのみならず、コーポレートディベロップメントとプロダクトストラテジーの責任者でもあります。ご存知の通りマリンソフトウェアは、これまで非常にサーチにフォーカスした会社でしたが、株式公開後、他のチャネルにどのように展開していくべきかを理解しようとしています。

杉原:御社の競合会社にもよく聞く質問なのですが、10年前、ツールベンダーの多くは、検索連動型広告の自動入札機能を提供するツールから始まっています。日本では特に、まだこの意識が強い傾向にあるのですが、他の国では、より統合管理をしていこうという意識が高まっているように思えます。今、マリンソフトウェアは自分たちのことを、どのように呼んでいるのでしょうか。

マット:現在、当社は自らをRevenue Acquisition Management Platform(売上獲得管理プラットフォーム)と呼んでいます。今後はさらに、プラットフォーム的なアプローチを強調していくことが多くなるでしょう。

■適切なビジネス判断ができる自動入札管理ツールとは

マット:自動入札について言及されましたが、面白いことに、ちょうど先週、eBay時代の同僚と業界について話をしていたんです。よい自動入札管理ツールがあっても質の低いデータを使っていると、実に簡単に悪いビジネス判断ができてしまうんです。だから、マーケターが適切なビジネス判断を下せるように、適切なデータを蓄積できるプラットフォームにすることが、当社としての大前提となっています。そのデータがある上で、キャンペーンマネジメント、入札管理、レポーティング、ワークフローなどの機能を提供します。繰り返しますが、重要なのは、基盤部分を形成するために、さまざまなデータを取り込む部分です。

つい最近、Marin Connectプラットフォームを刷新し、売上、コスト、天気、ロケーション、ジオ、在庫、季節変動など、各種データをマーケターが取り込めるようにしました。まだ新しく、将来を見越した部分がオーディエンスデータです。当社では、サーチも含めたすべてのチャンネルにとって、オーディエンスデータはとても重要だと考えています。グーグルが進もうとしている方向を見れば、そう思います。

■アトリビューションの取り組み

マット:アトリビューションは、私にとってとても親近感のあるトピックです。なぜなら、eBay時代、アトリビューションの課題を解決するのに8割ほどの時間を使っていたからです。eBayの経理財務部門との根回しや交渉もありましたし、オンラインマーケティングの課題に関することなどもありました。「1000万ドルの予算を会社が与えたとしたら、今四半期に、どのくらいの結果をもたらしてくれると思うか?」といった上層部からの質問への回答を求めるなど、実にさまざまでした。

そのため、アドホックな分析に随分と取り組みましたが、eBayの基準からしても、実に前方の視界が悪い時期だったと思います。eBayは大きな組織だったので、適切な広告インプレッションのトラッキングもビュースルー測定もできませんでした。とにかく難しい時代だったんです。必要なデータを集めることも困難でした。アトリビューションというものは、プラットフォームに必要な部分が揃った後の最終的なレイヤーで、それが整えばマーケターは適切な判断を下しやすくなるのだと思います。

■Marin Connectはミドルウェア

杉原:Marin Connectについて、少しお話ししてもらえますか。私の理解が正しければ、御社のような統合プラットフォームのこれまでの進化は、まずサーチ、そしてディスプレイ広告、ソーシャルを取り込むというものだったかと思います。市場環境も急速に変化をしており、それまではマーケターの手中になかったオーディエンスデータや、ITシステム部門の管轄にあることが多かったCRMデータなどを、マーケティングで活用する機運が高まっています。これ以外でも、取り込む必要のあるデータは増える一方かと思います。よって、Marin Connectは、これらのデータの取り込みを少し容易にする、ミドルウェアのようなものと理解していますが、いかがでしょうか。

マット:とても的確な見方だと思います。ビジョンとしてはミドルウェアになります。新しく作ったMarin Labs(クライアントやエージェンシーと共同で、効果的なデジタルマーケティング施策の活用をテスト実施し、そのフィードバックをサービスに活かしていくことをミッションにしたチーム)があるので、常に大きなチャレンジであるデータのインテグレーションを、パートナー広告主と推進しやすくなりました。

eBayで、データウェアハウスを基盤とした自動入札管理システムを構築する前のことですが、アトリビューションの取っ掛りのようなシステムを作り、顧客のライフタイムバリューなどを理解しようとしました。自動入札は、それらのスタックの上に構築され、当初から統合されていました。つまり、eBayであるキーワードに入札すると、新規顧客のライフタイムバリューは把握でき、リアルタイムで推定クリック毎の売上計算に落とし込まれていました。それは2005年にやったのですが、それから業界全体がどれだけ進んでいないかは驚くものがあります。実際は、ライフタイムバリューなどの指標に基づいて入札しないと、無駄な費用を使っているか、機会損失をしていることになります。

先日とある米国の大手リテール企業に会って話を聞きましたが、必要なデータにアクセスし、蓄積することができていませんでした 。オフラインデータ、コールセンターデータなど、システムに集約すべきデータがたくさんあることが分かり始めているのですが、野球に例えると、まだ走者が二塁近辺をウロウロしている状況です。

■オープンプラットフォームとして進化

マット:アトリビューションのベストなソリューションは、いわゆるアトリビューション専業プラットフォームなのかと思っています。Marinではチャネルパスデータ分析を行いますが、それはアトリビューションとは呼べないと思います。もちろん、黎明期でもありますし、一つの見方としてはあります。しかし、データが完全に網羅された形でないと、データの質が低いために悪いビジネス判断をするリスクが高まってしまいます。

よって、アトリビューション分析について考えた場合、私は因果性にこだわった重回帰分析やhold-out評価を想定するのですが、現在、業界で取り組まれたり、語られたりするのは相関性だけかと思います。例えば、フェイスブックが全チャネルパスデータの50%に含まれているから、全購入の50%はフェイスブックに貢献していると見るのは、大きくミスリードしていると思います。ちょっと前に、ランディングページのA/Bテストをしていたように、hold-out評価で比較分析しなければ、アトリビューションの真の姿には迫れないと思います。

アトリビューションに取り組む際は、サードパーティー企業とご一緒することが多いです。日本の会社は存じませんが、米国では Adometry、Visual IQ、Convertroなどは「アトリビューションの科学」を追求し続ける、大変優れたソリューションを提供しています。私がこの分野に戻ってきてから、多くの優れたソリューションが出ていることが分かりました。これらの企業とは、戦略的に連携開発をしてMarinにデータを取り込むことで、次のアクションを判断しやすい結果を提供してくれます。次のアクションにつながらなければ使っている意味はありません。

当社の近い将来の目標は、このようにオープンプラットフォームとして進化することです。グーグルのプラットフォームを使いたければ、Google Analyticsの利用がどうしても前提になることが多いでしょう。他のプラットフォームでも同様なことが起きます。当社の場合はオープンプラットフォームなので、業界標準のソリューションでも、カスタム開発したシステムでも、連携する意味があると判断されるシステムはプラグインすることができることを標榜しています。

■フラグメンテーションの進行

杉原:これだけデバイスもメディアも爆発的に増えている状況を考えると、それは適切なアプローチに思えますね。つまり、「フラグメンテーション」が進めば進むほど、さまざまなシステムやデータをプラグインすることが必要になってきますね。オープンプラットフォーム構想を強く推進もするでしょうが、ネイティブ機能も拡張していくのでしょうか。両方でしょうか。

マット:まあ、両方と考えるのが妥当でしょうね。将来を考えれば、オープンプラットフォームアプローチに比重は置くと思いますが。入札管理のように特定の機能に関しては当然、より機能を追加・改善するための投資はしていきます。ただ、これも将来的には自分が望む入札管理機能をプラグインするという姿も想像できます。

別の例を挙げると、クリエイティブ最適化です。現在、BoostCTRという会社とパートナーシップを結んでいます。彼らは興味深いサービスを提供しています。クリエイティブ最適化業務の依頼をマーケットプレイスに投げることができ、プラットフォーム上でA/Bテストを実施できるのです。これなども、自社で機能として実装するというような投資はしませんが、プラットフォームで連携することを考えています。そのほうが柔軟性のある、ベスト・オブ・ブリードのプラットフォームを提供できます。

フラグメンテーションについて言及されていましたが、今までの施策に加え、Pinterest(ピンタレスト)、ツイッター、LinkedIn(リンクトイン)、その他も出現し、これからもどんどん出てくるでしょう。モバイルはインストリーム寄りのネイティブ広告に近くなっていくと思います。eBayやアマゾンのように、自社システムを構築する企業は、内部リソースでこれらのシステムやデータと接続していくことは大変困難になるでしょう。よってフラグメンテーションという概念はMarinにとっては、むしろよい話で、そのためにさまざまなものをプラグイン連携しやすくするミドルウェアでありたいと思うのです。

杉原:そういう意味ではMarin Connectはとても戦略的な機能ですね。

■API連携は大変

マット:つい最近、Channel Connectという機能を発表しました。これは、メディア企業のデータをスピーディにプラグインできるものです。大手メディアなどは、直接API接続していくことを推進しますが、より規模の小さなメディアのためのライトウェイトなミドルウェアインテグレーションだと考えてください。なぜなら、小さなメディアの多くは、グーグルのような複雑なオークション・入札システムは持っていませんし、シンプルなファイル転送で解決する場合は多いのです。

杉原:弊社のシステム事業では、多くのAPIを取り扱うのでよく分かります。接続したいメディアのAPIがあるのはとてもよいことですが、世の中で思われているよりもAPI連携は大変です。簡単ではないケースもありますし、手間もかかる。

マット:毎回、グーグルがAPIをアップグレードしたりすると大変ですよね。皆さん、エンハンストキャンペーンの際、どのくらいの労力を費やしたのでしょう。Marinは、600社のクライアント、50億ドル相当の広告費を扱っているため、スケールしやすいですが。

eBayにいた頃、私のチームはリソースの35%から40%を、APIにキャッチアップするためだけに費やしていたと思います。しかも、それはグーグル、ヤフー、そしてBingだけの世界ですからね。このオープンプラットフォームアプローチは、戦略的な優位性として捉えています。

杉原:そうですね。ファイル転送だけでやれることはとても多いんですよね。Marin Connectは、APIを持たないメディア企業にとっても、御社のような外部プラットフォームと連携しやすくするものですね。

■オーディエンスデータの戦い

マット:その次に重要な取り組みがオーディエンスデータです。キーワードベースの考え方からオーディエンスベースの考え方に、移行していくことになると思います。ソーシャル、プログラマティック・ディスプレイ広告などでは、オーディエンスデータはもはや必須です。グーグルがGoogle BoostやRLSAなどでやっていることを見ると、近いうちにサーチもオーディエンスデータでの戦いになるかもしれません。

例えば、「データ上では、Mattは45歳の男性ゴルファーだと分かっている。もし<ゴルフ中毒>というキーワードに入札していて、Mattがターゲットセグメントに入るのであれば、検索してきた際にx%入札をブーストする」ということが可能です。かつ、サーチだけでなく、ソーシャル、ディスプレイ広告、モバイルなどで横断的にオーディエンスデータを管理できます。

eBay時代を思うと、マーケティングチームの他のメンバーと共通の言語で話すことができませんでした。私はいつもクリック、コンバージョン、ROIの話をしていて、オフラインマーケティング、CRM、戦略担当の人はいつも「eBayはファッションショッピングに興味が高い女性が必要だ」と話していました。当時でも、私の活動からファッションショッピングに興味が高い女性を獲得する方法は知っていましたが、今であれば誰でもダッシュボードで共有できますし、その上「どのチャンネルから、ファッションショッピングに興味が高い女性が流入しているか。それに加え、誰のライフタイムバリューが高いか」なども分かります。私の視点では、次のフェーズは、オーディエンスのレイヤーがすべての上に乗る形になってくるのかと思います。

杉原:日本でもオーディエンスデータは熱いトピックです。DMPについての話題も多いです。御社のプラットフォームでは、どのように考えているのでしょうか。つまり、DMPを持つことになるにか、前述のようにパートナー連携するのか。

マット:オーディエンスについては真剣に検討しています。オーディエンス分野での最初の取り組みとしては、Bluekaiとのパートナーシップになる予定です。オーディエンスデータをBluekaiからMarinへ持ってこられるようになります。想像してみてください。サーチ経由で誰かが流入して広告をクリックし、Bluekaiのピクセルが飛ばされます。

私がインテリアデザインのウェブサイトを持っているとしましょう。私は「今日は20,000のビジターがサイトを訪問し、5,000はターゲットセグメント、つまり50歳以上の高所得の女性層だった」と言えます。Marinには、キーワードのディメンションを作成できる機能があります。その機能を使えば、直帰した人のうち、必要でないセグメントと必要なセグメントを分けてみることができます。必要なセグメントのデータをさらにグーグルのRLSA、フェイスブックのカスタムオーディエンス、DSPでのリターゲティングなどで活用できます。データさえシステムに入ってくれば、さまざまなオーディエンスのビューで見ることができますし、活用することができます。

■マリンソフトウェアにとっての日本市場

杉原:マリンソフトウェアにとって日本市場の重要性は、いかがでしょう。

マット:日本は、世界の中でも最速で成長しています。市場参入してから、いろいろと想定以上で驚いています。

eBayの時は、非常にパワフルなシステムを構築しました。でも、それは車のエンジンのようなもので、大きな役割は果たすのですが、そこから、例えばレポートを抽出したい場合は自分でSQL文を書いてDBをたたく必要がありました。

マリンソフトウェアが開発したものの驚くべきパワーは、画面上でさまざまなことができる点、分かりやすい点、そしてワークフロー面が充実しているところです。これらのパワーを多くの国に提供する機会はたくさんあると考えています。

5年前は、実現が可能とは思っていなかった、大量のマーケティングデータを管理できるようになっています。そのため、「フェイスブックとグーグル、両方管理できています」や「簡単なUIで何百万のキーワードを一元管理ができるようになりました」という声が聞こえるようになったのです。予測レポートなどを簡単に出力できる機能などを見ると、正直驚きますよ。先週、米国の大手広告主と話した際も、自社システムのままで同じような問題を抱えていることが分かりました。

■日本のユーザーに最も使われている機能

杉原:御社のプラットフォーム上で日本のユーザーに最も使われている機能はなんですか。

マット:(グーグルやヤフーの)入札管理ですね。日本のほうが米国よりも採用率は高いです。前述の通り、よいデータがあってこその、よい入札管理なので、Marin Connectは重要になっていくでしょう。

■ソーシャルメディアの動き

杉原:ソーシャルで何か動きはありますか。

マット:はい、フェイスブック広告の取り扱いも世界でトップクラスです。当社には、フェイスブック向けの強力なプロダクトがあります。今後も、フェイスブックでのターゲティング性能に着目して進化を続けていきます。

アトリビューションが普及すれば、上位ファネルでのフェイスブックのインパクトはさることながら、下位ファネルでのインパクトも見えるようになると思います。FBXでのリターゲティングで成功した人は多いと思います。当社はBluekaiを通じて、フェイスブックでのリターゲティングを推進します。Bluekaiでは、自動的にカスタムオーディエンスを作成できる機能があり、FBXをバイパスしてネイティブのほうで出稿できます。

杉原:フェイスブックも、日本市場はかなりフォーカスしているようですしね。御社は、まだ日本では数少ないフェイスブック公式の「認定マーケティングデベロッパー」ですよね。

マット:そうです。ソーシャルとモバイルは今後も重要でしょうね。モバイルは、チャネルではなくデバイスタイプの一つとして捉えていますが、クロスデバイストラッキングなど特有のチャレンジがあります。そして、インストリーム中心になっていくと考えています。サーチは引き続きモバイルでは強みを発揮すると思いますが、フェイスブック、ヤフー、Pinterestなどのプレーヤーの方向性を考えると、インストリームが主になっていくのではないでしょうか。

■マリンソフトウェアの強み

杉原:最後にコメントはありますでしょうか。
マット:Google AdWordsの広告費の10%はMarinを経由しています。当社はフェイスブックの最大級のパートナーでもあります。全世界で600社のクライアントがいます。そのため、プラットフォームを提供していくスケーラビリティがあります。まだ、この分野は初期の段階ですが、今のところの成果にはある程度満足しています。ただ、成長の余地は大きいと考えています。
<以上>

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【アトリ君の視点】マリンソフトウェアは検索連動型広告の自動入札ツールという位置づけでしたが、いまではRevenue Acquisition Management Platformと呼んでいるんですね。時代の変遷を感じます。ディスプレイやSNSなどを取り込んで管理できるオープンプラットフォームに進化しているのはすごいです。アトリビューション的な観点からも非常に意義が大きいと思います。Marin Connectでさまざまなデータが集約されていくと理想的なプラットフォームになりそうです。BluekaiなどDMPとの連携でオーディエンスデータも取り込まれる日も近いようです。そうなると、検索したユーザーのオーディエンスも分かるようになるのですね。とても楽しみです。マットさん、とっても勉強になりました。ありがとうございました!

コメント

アトリビューション特別対談: 経営には統計の知識とアトリビューション的思考が必須 – ブレインパッド吉沢雄介氏×アタラ有園

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有園:今回は、株式会社ブレインパッドの吉沢雄介さんをお迎えして、オフラインのアトリビューションについて伺います。

吉沢:株式会社ブレインパッドの吉沢雄介です。ブレインパッドは設立して10年弱の、データ分析及び関連サービスを専業にしている会社です。ビッグデータやデータサイエンティスト、昔だとデータアナリストという肩書でしょうか?といった言葉が世の中で認知される前から、「これからはデータ分析の時代がくる!」と予見して設立された会社です。

現在、社内には50人強のデータサイエンティストがいて、日々、データ分析の業務に従事しています。私自身は大学院を卒業後、データサイエンティストとしてブレインパッドに入社しました。最初に有園さんと出会ったのは今から3年ほど前だったと記憶しています。その後、有園さんとは約20社のクライアント様にアトリビューション分析を提供してきました。

有園:アタラでアトリビューションの分析、コンサルティングを開始した頃、広告主からデータをもらって自分たちで分析していました。でも、大きなデータ、たくさんのビュースルーコンバージョンを計るようになると、普通のパソコンではデータボリュームがおおき過ぎで分析できない、パソコンがとまってしまうという現象が起こりました。「アタラでデータサーバを買うのはちょっと違うよなぁ」とブレインパッドの社長である草野さんに相談して、お手伝いをお願いしてから4年目くらいになるでしょうか。

アタラがアトリビューション分析をする際、データの集計と分析のコアな部分はブレインパッドさんにお願いしています。そこに深い洞察を加えて広告主へ提出し、メディアプランへの落とし込みやコンサルティング、その他のフォローがアタラの仕事です。ブレインパッドさんとのはじめてのプロジェクトでお会いしたのが吉沢さんでしたね。

吉沢:そうでしたね。

ブレインパッドさんとの取り組み

有園:最初に吉沢さんにお願いしたのは、あるクライアントのサイトカタリストからコンバージョンパスデータを抽出してもらって、それを出稿データと紐付ける作業だったと思います。リスティング広告だと、キーワード別に出稿しているデータとサイトカタリストで取れているデータは別なので、各データを合体させて紐づける作業をブレインパッドさんにお願いしたんですよね。

吉沢:そうでしたね。アタラさんと一緒に取り組めて良かったことは、リスティング広告の出稿や運用経験に長けていらっしゃるので、分析結果という紙で終わらず、施策に落とし込みPDCAを実際に動かせるという期待がありました。

有園:いつもありがとうございます。ところで、最初の頃はリスティング広告とバナー広告の出稿データを使って、いわゆる、オンラインアトリビューションをおこなっていました。ただ、やはり、オンラインのデータだけで分析していてはダメだな、と当初から思っていた訳ですが、そのあたりは、吉沢さんも同じですよね?

吉沢:ウェブサイトは、広告主と消費者のコミュニケーション手段、ブランド体験の一部分でしかありません。テレビや新聞、ラジオ、雑誌や交通広告など、いろいろな影響を受けて消費者は動いています。オンラインだけでは見えないことがあります。マスメディアを含め、いろいろな媒体に分析範囲を拡張するという認識や方向性は以前から考えていたことであり、社内でも方法論として模索をはじめていました。

有園:以前は、アタラからの依頼は、オンライン、ネット広告だけのアトリビューションがメインでした。でも、マス広告などの影響が加味されない形でコンバージョン予測を出しでも、どうなのかなって思っていたわけですね。

吉沢:はい。

アトリビューション2つの方法論

有園:徐々に、オフラインのアトリビューションにも仕事の領域が広がっていきましたが、吉沢さんとは、オンライン、オフラインと、アトリビューションについてディスカッションしてきました。オフラインのアトリビューションは、特に高度な統計知識とデータを処理できるシステムが必要となってくることもあって、ブレインパッドさんのデータサイエンティスト抜きでは難しいですね。

吉沢:現在、方法論としてこのような段階にきています(Fig.1)。ここまでくるのに2年から3年くらいはかかりました。

(Fig.1)

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この方法論には2つのポイントがあります。1つ目は、たえず議論している「マスメディアの効果をどのように定量化し、実行施策に結び付ける示唆を出すか」という分析そのものに関する考え方。2つ目は、marketingQED(マーケティングキューイーディー)という分析ソフトウェアの取り扱いを開始したことです。

marketingQED社は、イギリス・ロンドンに本社を置く、最適なマーケティング意思決定を支援するソフトウェアベンダーで、分析ソフトウェアを提供しています。弊社は、2年ほど前にmarketingQED社の販売パートナーになり、海外の最新事例、考え方や分析手法などを日本市場に合った形で提供しています。マーケティングミックスモデルの実現手段の提供です。

モデルとは?

有園:オンラインのアトリビューション分析をしていても、均等配分モデルといった言葉が出てきます。モデルをつくる、モデリングする、あるいは抽象化といった言葉は、統計学の勉強をしていない人にとって理解しにくいものです。簡単に説明していただけますか。

吉沢:こちらをご覧ください(Fig.2)地図、例えばグーグルマップをイメージしてください。渋谷、六本木という場所があっても、地図に「ここが渋谷です」「ここが六本木です」と書いていなければ、どこか渋谷で、どこが六本木か分かりません。抽象化、モデル化するというのは、どこが渋谷で、どこが六本木か書いてあって、経路が線で結ばれていることです。渋谷から六本木へ行く最短距離を示し、余計な情報はそぎ落とすことが抽象化、モデル化です。

(Fig.2)

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有園:現実の世界は複雑なので、すべてを把握することは不可能です。把握するには、何らかの視点で現実を単純化して切り出していることが「モデル」、切り出すことを「モデル化する」、あるいは、「モデリング」という、そんな意味でよろしいでしょうか。

吉沢:その理解で大丈夫です。

有園:本来、人間が、現実の世界を目で見たり、耳で聞いたり、手で触ったりして得ている情報は、現実ではなかったりしますからね。そもそも、人間は現実をすべて把握することはできません。人間が見ている世界は、人間の眼が作り上げている仮の像でしかありません。仮の像をつくっているのが、人間の眼がもっているモデル化する仕組みですね。

マーケティングミックスモデルの3つのステップ

吉沢:例えば、マーケティングミックスモデルは、マーケティング施策への投資・露出と売上・店舗来店といったマーケティング活動とお客様の行動との因果関係をモデル化することです。

マーケティングミックスモデルのステップは3つです。1つ目は、アトリビューション、2つ目は予算配分の最適化、3つ目はシミュレーションです。アトリビューションは、貢献度の割り振りが困難なもの、例えばTV、ディスプレイ広告のビューなどの効果を「見える化」して、貢献度を定量化することです。

有園:貢献度を各媒体や、ものによってはキーワード別に、テレビCMやバナー広告だったらクリエイティブ別に、それらが売り上げやコンバージョンにどれだけ貢献しているのか数値化することですね。

すべて同じ軸で比べられる指標に

吉沢:ポイントは、すべて同じ軸で比べられる指標にすることです。金額は1円単位で数値化し、ウェブ広告やテレビCM、紙広告など、あらゆる媒体で比べることができます。その軸で、いくら投資したら、いくら獲得できるかを「見える化」するのがアトリビューションです。それが決まると、貢献度のバランスから、どのメディアに、いつ、どの配分で投資したら成果が最大になるのかを考えられます。

感覚として、リスティング広告に月額1千万円、テレビCMに月額1億円をそれぞれ投資することはできても、ドラスティックに配分を変えてリスティング広告に月額10億円を投資することって、なかなかできないと思います。でも、アトリビューション分析をしていれば、理論的な配分を導きだせます。リスティング広告に月額10億円投資すべき理由があれば、投資することもできるでしょう。

有園:ちなみに、会社全体としてはリスティング広告に月額10億円ぐらい使っているクライアントはありますね。

予算配分の最適化

吉沢:はい、確かにありますね。次は、予算配分の最適化について。これで、理論的に最適な配分を出すことはできます。やることは簡単で、既にアトリビューション分析でモデル式が出来ているので、最適化計算をコンピュータに任せるだけです。

アトリビューションと予算配分最適化は理論的なことですが、予測シミュレーションはシナリオに即して売上に思いを巡らすことです。この3つをぐるぐる回すことでマーケティングROIが改善していきます。手法的なアプローチと、ビジネス的なアプローチを統合したのがこの方法論です。

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オフラインアトリビューションとは

有園:日本では、これをオフラインアトリビューションと呼んでいます。アメリカの業界トップのマーケットシェアという会社はオフラインアトリビューションのことを単にアトリビューションと呼んでいますが、その他のリサーチ会社などは、マーケティングミックスモデリングをアトリビューションと呼んでいたりします。あるいは、アナリティクス2.0という表現もありますね。これらは、アトリビューションや予算のアロケーション、シミュレーションなどを指しています。

インターネット業界でアトリビューションという言葉が流行ったので、便乗してマーケティングミックスモデリングのことをアトリビューションという言葉で語っているのではないかと思います。

マーケティングミックスモデリングという名前で、かなり前からオフラインのアトリビューションの考え方はあるんですよね。

吉沢:2013年7月号ハーバード・ビジネス・レビューのマーケットシェア社の寄稿にもあるとおり、オフラインのアトリビューションという方法論は2000年初期頃からありました。IT技術の進化に伴い、分析コストが安くなったため、ビジネス分野、マーケティング分野でも利用できるようになってきました。有名なのがワコビアの事例です。2008年11月のハーバード・ビジネス・レビュー日本版に載っています。2002年、2003年頃、予算の使い先としてのウェブは今とは比べ物にならないくらい小さかったはずです。当時からすでにオフラインの事例はあって、研究もしつくされてきました。そしてここ5年から6年でネット広告に対する投資が増えてきましたが、この枠組みにどう取り組んでいくべきか、完全には答えが出ていないと思います。

有園:なるほど。

吉沢:リスティング広告などネット広告にお金をかけていても、テレビCMなどと同次元では並べられません。配分を決めるとき、どう扱ったらよいのか。あとは、ソーシャルメディアを従来のマーケティングミックスの中にどう落とし込んでいくかも課題です。

テレビCMを出稿した結果の調査や分析

有園:テレビCMを出稿した結果の調査や分析は昔から行われていました。Swimlane(スイムレーン)と言われる縦割り的な、テレビはテレビだけ、ラジオはラジオだけ、新聞は新聞だけ、といったレスポンス、効果の分析が主流でした。2000年以降、マーケティングミックスモデルなどで分析できるようになったのは、統計ソフトが良くなったからですよね?

吉沢:そこも大きいと思います。

有園:統計学の進歩もあると思います。構造方程式モデリングや共分散構造分析といった、テレビCMを出稿したら人はどういった行動をとるのかを計算させる統計ソフトも、昔は高くて簡単にできるものではありませんでした。でも、2000年以降は実務レベルで使えるようになりました。先ほど話に出たmarketingQEDで、モデルはデフォルトでも数千くらいつくると聞きました。昔はモデルを1個つくって計算するのにも高いお金がかかりました。しかも、モデルを1個つくって1回目の分析で出てくるのが、統計学的に「当てはまりがよい」と言われる有意な数値、理論的にも現実をよく表した数字とは限りません。でも、分析を2回やるとなるとまたすごいお金と時間がかかっていたのが、2000年以降にIT技術の進歩やサーバーの容量が大きくなって大量のデータの分析結果が、ボタン1個でほんの数分でかえってくるようになりました。数千個のモデルだと?

吉沢:30秒から1分くらいで数千のモデルが出てきます。その中から統計的に良いものをサジェストしてくれます。

有園:数千のモデルなんですね。そういったことができるようになったので、実務で使えるようになったということですね。

計算コストの低下

吉沢:はい、大きな進歩です。ブレインパッドでは、marketingQEDというマーケティングミックスモデリングに特化した分析ソフトウェアを取り扱っています。モデルも1個作ったら終わりではありません。分析的な視点とビジネスの視点両方を加味して、最適なものを選ばなければなりません。計算コストが下がったおかげで、それが速くできるようになりました。

marketingQEDは、遺伝的アルゴリズムを採用しています。1秒間から10秒間に、数百から数千のモデルを自動的につくることができます。その中から、統計値をつかって最良なものを選べます。マーケッターや我々のような分析官が考えることは、いかに現実に則しているか。そして、施策への落とし込みができるかどうかです。分析そのものではなく、よりビジネスへの適用について考える時間が増えました。

専門家のためのツールから、一般のマーケッターが使うツールにまで広がってきたので市場も広がり、MarketShare(マーケットシェア)やThinkVine(シンクバイン)といった専業の会社も出てきました。我々も時間がかかってしょうがなかった部分がミニマムになり、ビジネスになってきました。クライアントもそれにお気づきになり、引き合いも増えています。

ソーシャルメディアをどうモデルに取り組むか

有園:さきほど、オフラインのアトリビューションやマーケティングミックスモデルを回す際の課題は、ソーシャルメディアをどうモデルに取り組むかだとおっしゃいました。投下金額に対するゴール、目的変数が売り上げだった場合、ソーシャルメディアの拡散は投下金額に直せないから課題なのでしょうか?

吉沢:それも1つですね。特に難しいと感じていることは2つあります。1つ目は、おっしゃる通り、ソーシャルメディアは金額換算が困難なのでROIに落とし込みにくいということ。2つ目は、カスタマージャーニーという言葉ですべて表されているかもしれませんが、いまは昔よりも消費行動が複雑になっていることです。売り手と買い手の情報の非対称性が完全に崩れたのも忘れてはいけないポイントですよね。テレビCMを見て、続きはウェブでという古典的な話もありますが。

有園:え!古典なんだ!(笑)

吉沢:どうでしょうか(笑)。有園さんも関わっておられたとお聞きしていますが、直の購買ではなく、間接的により商品を理解してもらう、競合優位性をアピールするという点で、ワンクッション設けるようになりましたよね。

有園:それがモデルに入ってきたのは最近ですね。

吉沢:さきほど紹介した事例は、そういったワンクッションを意図的に設けるといった概念がほとんどなかった頃のものです。

有園:ワコビアの事例ですね。

吉沢:投資と売り上げという2つの関係ならモデル化も単純でしたが、構造的に因果の仮説として、ネット(広告)が間に入ったとき「真ん中はどうやってモデル化したらよいんだろう」というのが課題です。

重回帰分析とは

有園:重回帰分析で、なんでもやってしまう時代がありました。ワコビアの事例も重回帰分析をしていますか?

吉沢:おそらく、一部分ではそうだと思います。

有園:重回帰分析は、説明変数と目的変数。説明変数が複数あり、それに対する目的変数が1個あるという単純な形で数字を入れて、あとはソフトウェアが計算してくれる感じだったと思います。アナリストが分析する前に、ある程度の因果関係を想定してモデルを作らなければならない点で、取り扱いが難しいということでしょうか。

吉沢:そのとおりです。有園さんがおっしゃっているのはここで(Fig.3)古典的なマーケティングミックスモデルは、この重回帰という手法をつかっていました。これはいくら投資するかといった予測には向いていますが、因果関係の理解は難しい。ウェブの行動は多階層の分析が必要になります。統計的にやれば、もっともらしいものが出るだろうと思われるのですが、ここまでくると難しいです。自然検索でも良かったり、リスティング広告でも良かったりと甲乙つけがたい、判断しづらいことが出てきます。手法やマーケティングが進んでも、分析の精度や納得感は腑に落ちないのです。

(Fig.3)

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クローズドループマーケティング

有園:「インターネット・マーケティングの原理と戦略」(日本経済新聞社)という本があります。スタンフォード大学の教授が90年代後半に執筆した本です。

この中で、たとえば、テレビCMを投下したら、それに接触した人が何パーセントかいて、接触した人のうち、認知した人と認知していない人がいるわけですが、認知した人のうち、すぐに店頭へ行く人がいれば、なにも行動しない人がいます。いまだったら、インターネットで検索してネットに行く人がいますね。このように分かれていって、広告に接触したユーザーの行動は、どのようなものがありえるかをツリー構造で整理して、それぞれ何パーセントになるかなどをみていく、という方法論が書いてあります。

これを応用していくと、たとえば、ウェブマーケティングのPDCAを回すときに、ボトルネックはここだから、この点を何パーセント改善するために、クリエイティブを変更すべきなのか、投下量を変えるべきなのか、タイミングの問題なのか、ターゲティングの問題なのか、といったことを割り出すようなことが理論的には可能になることが分かるんです。

そのなかで、クローズドループマーケティング(Closed loop Marketing)ということが書かれているんです。クローズドループというのは、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、ネットなど投下したものがいろいろあり、接触した人がいろいろな行動履歴をたどって最終的にゴールである、広告主側の売り上げに戻ってくる。この流れの中で、広告主が売上をあげるために出したお金、仮に100万円出したとしましょう。それが、ループをたどって最終的に売上として広告主の元に戻ってくることが売上で、ひとつひとつのループがクローズして広告主の元に戻ってくるということを、きっちりやっていかなければならないと説かれています。

吉沢:大きくなって返ってこなければ意味がないですよね。

有園:100万円つかって100万円戻ってきたのではダメですね。たとえば、1,000万円以上ぐらい売上がかえってくるのがよいですね。そのようなクローズドループができるのがネットだと、そんなことがその本には書かれています。インターネットマーケティングの基本は、それができることで、それができるようにきっちりオペレーションすべきだと私は解釈しました。

まったくそのとおりだと思うのです。インバウンドマーケティングと呼ぼうが、アウトバウンドマーケティングと呼ぼうが、アウトバウンドしたものがインバウンドでかえってきて、広告主のお財布に戻ってこなければ意味がありません。そういったループ、あるいはカスタマージャーニーが、ネットの登場によって複雑になっています。構造化して統計的に分析して、結果的に戻ってくるということを、モデルにするのが難しい。それが課題なのかなと思っています。

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ループがクローズしていますか?

吉沢:インターネットがクローズドループの重要なポイントだと思います。それがなければ、ループではなく壁打ちでしょう。

有園:うまいたとえですね。

吉沢:そこに時間軸が加わり、なおかつタッチポイントが増えているので、モデル化が非常に難しいんです。

有園:「ネットだったらできる」という解釈を私はしていたのですが、マーケティングミックスモデルを使えば、基本的にはモデルさえ上手く作れれば、ループがクローズするような形で、どのポイントで、どこの広告出稿を増やせばよいかが分かりますね。

ループをクローズさせる3つの条件

吉沢:ただし、条件が3つあります、などと、条件は必ずついてくると思っています。

1つ目は、「データが溜まれば」という前提が、常につきまといます。現状はその段階で止まっています。

2つ目は「スピード」です。広告主はいかに早くデータを溜めて、分析して、理解できるかが非常に重要になってきます。先週のデータについて1カ月後に分析結果を出しても意味がないので。

最後は「社内組織」です。データを溜ためるスピードと活用の意思決定、いろいろなことを早める体制はリアルなところで最も厳しい成約条件となります。この3つに注意することが重要です。

クライアントには、この3つをセットで理解してもらえるよう、ツールの導入と同じくらいにご説明しているところです。

有園:なるほど。

吉沢:そこまでやらないと、marketingQEDも活かせません。

DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)

有園:最近、DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)という言葉でいろいろなことが語られています。いわゆる宣伝広告費もマーケティングミックスモデルを回すためには、テレビCM、新聞、雑誌、ラジオ、ネットの投下量がデイリーで過去2年分くらい残っているとやりやすいですね。DMPという形で入れていくのがよいですか?

吉沢:そうですね。これはルール、仕組みだと思っています。たとえば、iPhoneアプリで健康管理ツールがあります。何を食べたとか、何時間眠ったとか、体重とかを記録します。

有園:つかっているんですか?

吉沢:つかってます(笑)。あれは結局、「見える化」しているんです。そのときだけを見てもしょうがなくて、過去の推移から、何を食べたらどうなるかを押さえることが大事なんです。企業のデータも同じです。今日のことを考えがちですが、過去の連続が今です。過去のデータを貯めていくことをルール化して、健康管理だったらアプリになりますが、ビジネスのデータ蓄積だとDMPみたいなものになるのかなと思います。

有園:体重アプリをつかって痩せたんですか?

吉沢:一瞬、痩せますね。Fitbitもつかっていたんですが、途中でなくしてしまいました。そしたら体重も増えましたね(笑)

有園:そうですか(笑)。計れないものはマネージできないということですね。DMPというと、サードパーティクッキーの話がでます。オフライン広告のデータなどは、そこに入れてCRMに取り込んで、マーケティングミックスモデリング用の分析データも蓄積したほうがよいですね。

吉沢:そうですね。

有園:スピードに関しては、おっしゃるとおりです。できるだけ早く分析結果がかえってこないと、アクションに移しても意味がない、遅い、ということになるので。社内組織は今後ますます課題ですね。ひとつのブランドであっても、あるテレビCMの担当者は自身の携わっているキャンペーンの投下量は把握していても、隣の席の人が担当している別キャンペーンの投下量は知らなかったり。同じテレビCMでもそうなので、雑誌や新聞、ラジオやネットなど他のメディアのことは、なおさら把握していない状況でしょう。マーケティングでの投下金額は、ほとんどバラバラに管理され、統括されていないのが現状です。

Swimlane(スイムレーン)と言うのがまさしくそのとおりで、自分は平泳ぎしていたけれど、横の人はクロールしていて早く行ってしまったというようなことが現実に起きています。自分たちはクロールで必死に泳いでいるけれど、自社の他部門の人は背泳ぎしていた、泳いでいなかったということがよくあります。他の担当から見ると「なんでそんなことやっていたの?」と言われるような議論が生じます。「見える化」する、共有することは大事ですね。

吉沢:そうですね。

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予測シミュレーション

有園:marketingQEDでは、たくさんのモデルがつくれているわけですが、実際にはどのくらいつかえるレベルですか?予測シミュレーションはどのくらいあっているのですか?

吉沢:マーケティングミックスモデルの3つの要素のうち、予測シミュレーションに関わってくることですが、精度の追及をマーケティングの領域で求め出すと非常に難しいです。絶対的な正解を出しているわけではありませんし、出た示唆で実際にマーケティングミックスを変えて投下すると、現実を変えてしまうことになります。精度は統計的に担保されていれば十分です。マーケティング分野に限っては担保されるか、されないかの二軸でしかないと思います。

大切なことは、いかに予測シミュレーションの結果をビジネスに落とし込み活用するかです。予測して、ベストな予算と配分でも、目標の売上に達することができないという事実が出たときに、このまま積むのか、やめるのか、その判断こそが大事です。担当者レベルではなく、会社としての意思決定に、この結果を活かせるかどうかが最も重要です。5パーセント違うからもっと精度を高めようといった議論は、チャンスを逃している可能性があります。シナリオというか行動規範が作れるかが大事です。

有園:シミュレーションする数字がぴったり合うことはありませんね。

吉沢:まずありません。

有園:あくまで指針です。20億円の広告宣伝費があったとして、それを40億円に増やしたいと思っているときに、40億円に増やすことが統計的に正しい判断なのかを見たいときに役立つものです。あるいは、40億円に増やしたうちの媒体別アロケーションを、どういうふうに変えると過去のデータに基づいて適切なのかを判断する際に、指針として使ってくださいということですね。

指針もなく、前年と同じ金額、あるいは会社の業績が30パーセント伸びたので媒体別の予算も30パーセント増やすよりは、はるかに根拠もあって良いですね。実際、それで売上が改善する例が出てきています。

吉沢:おっしゃるとおりです。まったくテレビCMを出したことがないのに、テレビCMを出したらどうなるか予測シミュレーションすることは難しいです。一方で、新しい商品を出す際、過去の他商品のデータに基づいて、どのように商品が立ち上がり、どのように広告が影響するかを予測することは可能です。

有園:過去に別の商品でデータがあればということですね。

吉沢:そうです。あとは、業界に類似品があるというのが前提です。条件はつきます。なかには、統計よりは担当者の経験や勘を重視する声もあります。でも、そうした個人の経験や勘は、他人に腹落ちする形で説明できない点が課題です。マネージメントへの説明責任が果たせない、担当者が変わるときに引き継げない、そういう問題が生じます。誰にでも客観的に分かる共通言語が統計アプローチです。

(Fig.4)例えば、チーズの売り上げが3年分あり、日別でこのように売れています。「最近、売れ行きが良いな」と思ったとき、分析すると、たとえば3つの変数に分けることができます。3年間に渡る長期のトレンド。そして季節変動。チーズだったら秋から冬にかけて売れて、夏は売れない、とか。このトレンドと季節変動を取り除いたものが、マーケティングやコミュニケーション活動によって増えた売上です。アトリビューション、広告に限って話をしていますが、本来分析するときはトレンドと季節変動を除いた部分(「その他の変動」)を対象にします。分解して考えなければならないのに、できていないケースは多いです。みなさん、頭の中では分かっていて、加味されているのですが、やり方を他人に説明するのが難しいのです。でも、統計的なことは誰がやっても同じように分解できるのがメリットです。しかも、知識としてたまっていきます。それが良いですね。

(Fig.4)

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事業全体の投資のためにアトリビューション

有園:アトリビューションは、財務用語であると言う人がアメリカで出てきています。私がアトリビューションの仕事で企業の役員などにプレゼンすると、年間、広告宣伝費として使っている20億円を40億円にすべきか、それとも20億円の予算で、システムを構築したほうが良いのか、あるいは営業のスタッフを増やしたほうが良いのかといった経営全体のリソース配分の最適化に話が移ることがあります。価格戦略として価格を下げたほうが売上は上がるといった話も含まれてきますが、このようなケースが増えています。某商社からの相談は、グループ企業である保険会社に出資していて、出資の回収として、まずは、広告宣伝費からリアロケーションしたい、さらに事業としてどのように成長するかを見たいので事業全体の、つまり、広告宣伝費以外も含めた事業全体の投資についてアトリビューションをやりたいというものでした。ブレインパッドさんにもこのような相談は多いですか?

吉沢:多くはないですが、ありますね。

有園:実際に分析しているものはありますか?

吉沢:IT投資やヒューマンリソースの投資と比べることは難しいですが、CMOではなくCFOの視点での話はあります。marketingQEDのソフトウェア導入の事例です。資材調達、研究開発、ヒューマンリソース、マーケティング、これらへの投資がどの会社もトップ4になっているはずです。

資材調達は、要素を分解することによって原価が見えてくるので、比較的、投資対効果が見えやすくなってきます。研究開発はライフサイクルに応じた期限を設けると、ある程度のROIが見えます。ヒューマンリソースも労働に対して分配するための分母になるものは見えてきます。これらに比べて、マーケティングへの投資の効果は、見えるようで見えてきません。「テレビCMをやらないとブランド力が落ちますよ」と言われたら、CFOは「それなら数字で示してください」と言います。マーケティングの投資対効果を「見える化」するには、アトリビューションという大きな概念が必要となります。

アトリビューション分析を用いると、「マーケティング全体でどこにどれだけ投資して、どういう効率でどのように回収し、効果があることが分かり、最終獲得はウェブですがテレビCMも必要です」という説明ができるようになります。海外では、こうした事例はCMO向けであるとともにCFOが活用しているケースは多いです。グローバル企業であれば、国や地域で比べられます。国や地域の違いを考えることができ、グローバルROIとして全体的に底上げできるようになります。

経営にはアトリビューション的思考が必須

有園:費用対効果を意識して、投資の回収をはかっていくのは日本全体で必要なことだと思うのですが、現在はクライアント側に課題があると感じています。壁になるのが「分析結果がよく分からない」ということです。分かる人が見れば分かるけれども、統計学を知らない人には何をやっているのか全く分からないという話になります。ブレインパッドさんの方で良いソリューションを用意していたりしませんか?

吉沢:あります。marketingQEDは、統計の知識がなくてもユーザーフレンドリーな画面を見るだけで結果が分かります。ただ、マーケッターや分析結果を見る人は、基礎的な統計の知識は身に付けておいたほうが良いので、当社では実践的な統計の知識を扱う「データサイエンティスト入門講座」を開催しています。企業向けに講座内容のカスタマイズもおこなっています。日本では内製志向の企業が多いかと思いますが、ファーストステップは内製化にこだわらず、まずは外部をうまく使いながら知識を身に付けて、使いこなせるようになってから社内でやるのが良いと思います。

有園:アトリビューションや統計についてアメリカ人と話をしていると、日本との違いに驚かされます。アメリカの大企業の役員クラスは多くの人がMBAを取っていて、MBAの授業に統計やデータ分析があるので、統計に関する知識が身についています。でも、日本の場合は大企業の役員クラスであってもMBAを取っている人はそれほど多くなくて、統計を学んでいない人の方が多いでしょう。日本の大学で学ぶ統計学も、実務で使えるレベルではありません。経営陣の統計学の知識の差が、日本とアメリカの差ではないかと感じています。経営に関わる方は統計学を学んでいただくことで、アトリビューションへの理解、分析結果への理解が高まるのではないかと考えています。

吉沢:弊社の目標は持続可能な社会を作ることです。それを実現するのは、人、モノ、金を適正に配分することで、争いなく配分するには、分析的な視点が必要だと思っています。アトリビューションに関しても、経営に近い方に腹落ちする形で理解していただくことが重要になります。統計的な知識をもっていただいたほうがよいですね。経営資源の配分もある種のアトリビューションですので。

有園:経営者にはアトリビューション的思考が必須ということですね。ありがとうございました。

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【アトリ君の視点】有園も執筆に関わった「アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法」はオンラインアトリビューションを日本で初めて解説した書籍でしたが、オフラインアトリビューションも含め、手法論も含めた形で体系的に説明したものは初めてかもしれません。さらには事業全体のアトリビューションまで進んできており確かな進歩を感じることができました。ただ、課題は多く、「ループをクローズさせる3つの条件」で挙げられたポイントの改善が恐らくどの企業も必須で、組織運営上の各種問題と共に取り組まないといけないことがますます浮き彫りになったように思います。まだまだやることは多いですね!吉沢さん、今回はありがとうございました!

コメント

アトリビューション特別対談: 電通からのMBOで、いま注目のイグニッションワンが語る! – イグニッションワンジャパン代表取締役 松本英人氏xアタラ有園

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電通からのMBOで、いま注目のイグニッションワンが語る! デジタルメディアのバイイング最適化とマーケティング自動化ツールを統合した「デジタルマーケティングスイート(DMS)」が実現するアトリビューション分析の自動化
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出会いはサンフランシスコ

有園:本日は、株式会社イグニッションワンジャパンの代表取締役、松本英人さんにお話を伺います。さっそくですが、松本さんが代表に就任したのはいつからですか?

松本:イグニッションワンジャパンの松本です。代表には2012年11月に就任しました。2008年に入札管理ツールのサーチイグナイトが立ち上がった際、創業メンバーとしてジョインしました。

有園:最初は何人でスタートしたのですか?

松本:2人です。すぐに3人目が入り、しばらくは4人でした。

有園:インターネット広告業界に入ったきっかけはなんですか?何年くらい、この業界にいるのですか?

松本:業界歴は、12年から13年くらいです。大学卒業後にサンフランシスコでホテルマンを目指していたのですが、求人広告を見ていたら検索のディレクトリをつくる会社が日本語のできるメンバーを探していて。90年代後半のドットコムバブルと呼ばれていた頃のことです。結果的に「チャレンジしてみよう!」ということになりまして。そこで有園さんにお会いしたんですよね(笑)

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LookSmartの同僚時代

有園:そうでしたね(笑)実は、LookSmart(ルックスマート)という会社で松本さんとは同僚でした。90年代後半にサンフランシスコで一緒に仕事をしていたのです。

松本:懐かしいですね。

有園:LookSmart(ルックスマート)では、日本のマイクロソフトネットワーク向けのインターネットディレクトリをつくっていましたね。

松本:当時、有園さんにライティングを徹底的に鍛えられたことを覚えています。その後、LookSmart(ルックスマート)が日本に上陸するのと一緒に日本へ帰国し、ずっと検索に携わってきました。

有園:ライティング?当時は、ウェブサイトのレビューを書くことが仕事だったんですよね。LookSmart(ルックスマート)の後はどうしたんですか?

ジェイ・リスティングの立ち上げに参加

松本:ジェイ・リスティングの立ち上げに参加し、1年たたずにライブドアに買収されてグループに入り、ライブドアが検索を強化する時期だったのでディレクトリをつくったりしていました。

イグニッションワンに入社したきっかけ

有園:イグニッションワンに移るきっかけはなんですか?

松本:イグニッションワンの前身はサーチイグナイトという会社で、入札管理ツールを開発している会社でした。アメリカのジョージア州アトランタ市で立ち上がった会社です。サーチイグナイトの親会社がイノベーションインタラクティブで、イノベーションインタラクティブが2005年にライブドアに買収されました。当時、私はライブドアにいたのですが、サーチイグナイトをジェイ・リスティングの中で内製しようという動きがありました。その後、縁があってサーチイグナイトを法人化して、ライブドアとは独立した形で会社を立ち上げることになったときにジョインしました。

有園:それが2008年ですか?

松本:2008年の2月です。

資本関係

有園:そのとき、ライブドアの資本は入っていたのですか?

松本:入っていません。

有園:引き続き、イノベーションインタラクティブはイグニッションワンの親会社ということですか?

松本:直接の親会社です。イノベーションインタラクティブが電通ホールディングスUSAにM&Aされたのが2010年の2月で、そのタイミングで電通グループに入りました。

有園:電通ホールディングスUSAの子会社がイノベーションインタラクティブで、イノベーションインタラクティブの子会社がイグニッションワンということですね?

松本:そうです。

サーチイグナイトからイグニッションワンへ

有園:サーチイグナイトがイグニッションワンに名前が変わったのはいつですか?

松本:2011年の4月11日です。

有園:まだ2年くらいなんですね。

松本:はい。そして、今年7月の事になりますがイグニッションワンの経営陣が主導するかたちでMBOを実施し、電通グループ100%子会社の枠を離れて、より独立性を持った事業体として新しいスタートを切ったところです(詳しくは、こちらのリリース)。

共通キーワードは「検索」

有園:90年代に出会ってから、その後もお互いに検索に携わってきたわけですね。

松本:そうですね。ずっと、検索エンジンや検索キーワードに縁がありました。

入札管理ツール戦国時代

有園:イグニッションワンは評判が良いと聞いているので、その理由やアトリビューションについて伺いたいと思います。サーチイグナイトとして営業をはじめたのが2008年ということですが、その頃の日本は入札管理ツールを導入する企業が多かったのですか?

松本:入札管理ツールの認知度が高く、企業も導入の意欲があり、競争の激しい時代でした。海外系ツールも参入していたのが2008年、2009年頃のことです。カタログ化ではないですが、スペックで比較され、ポートフォリオ型?ルールベース?という二択や、ホワイトボックス?ブラックボックス?という話もよく出ました。

ホワイトボックスとブラックボックス

有園:ホワイトボックスは最適化のロジックが分かりやすいという意味で、ブラックボックスは分からないという意味ですね。

松本:事前に根拠が分かりづらいこともあり、広告主に根拠を問われることも多かったです。ただ、我々は当時から透明性を重視し、明確にしていました。事前にどのような入札をするのかチェックできたので、広告主が納得した上でオンにするようにしていました。シミュレーションが出せたので、それも喜ばれていました。

淘汰された今

有園:私の知る限り、2005年ごろから2009年ぐらいの間に入札管理ツールがたくさん登場し、2013年のいまは、ある程度淘汰されたように思います。生き残っている入札管理ツールは、それぞれ特徴が際立っていますね。最近のイグニッションワンの動きを見ていると「もしかしたら入札管理ツールとは呼ばないでほしいのかな?」と思ったりするのですが、そのあたりはいかがですか?

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入札管理ツールと呼ばないで

松本:そのとおりですね。2011年にイグニッションワンとブランド名を変えて、もう一度市場にアピールしたのは、まさにその点です。「サーチ」と社名に入れているとおり 検索畑からスタートしてはいますが、サーチだけでは手狭になってきました。会社名としても実態を表していないのでは?という考えもありました。2009年頃には、イノベーションインタラクティブがネットマイニングというベルギーを拠点としたアクセス解析の技術をもちつつ、行動分析のスコアリング技術に長けた会社をグループ化しました。この会社は、ネットマイニングの技術を応用してサイトに訪問したユーザーの行動を分析し、興味のある商品や購入意向をスコア化する技術をもっており、サイト内を最適化できるようになりました。それを一時、平行して販売していました。

サイト内行動の最適化

有園:サイト内行動の最適化ですか?

松本:サイト内の行動を分析して、一番スコアが高まった最適なタイミングでインタラクションを仕掛けられるのが一番の売りです。あるスコアに達した特定のユーザーへのみクリエイティブを表示したり、LPを最適化したり、コンテンツを差し替えたり、CRMと連動してメール本文をカスタマイズしたり。そうした施策をおこなえるツールと二本柱で販売していました。

有園:ネットマイニングは、サイト内の行動を分析して、その履歴に基づいてスコアをクッキーにつけて、クリエイティブの出し分けができるんですね。旅行系サイトの場合「イタリア旅行に興味がある」というスコアを用意しておいて、そのスコアがたとえば200に達した人には動的にイタリア旅行のクリエイティブ、バナーなどが表示されたり、動的にサイトのコンテンツを差し替えたりできるということですね。

松本:ヨーロッパでは、自動車系メーカーにも導入していただいています。検討期間が長い、最終的にオフラインで購入に至るサービスなどと親和性が高いです。来店したときに使えるクーポンを掲示し、印刷して来店を促すなど、オフラインとの連係に強いツールです。その技術をいよいよ応用していこうということになりまして、サーチだけでなくネットマイニングの技術も統合し、リブランニングしました。

有園:イグニッションワンは、サーチイグナイトとネットマイニングを足したものと考えればいいですか?

松本:はいそうです。

有園:具体的には何ができるんですか?

イグニッションワンでできること

松本:サーチに関しては、ポイントソリューションと呼んでいる、サーチイグナイト時代に培ったものがあります。ポイントソリューションとは、特定のチャネルやジャンルにおいて専門性をもったツールという意味です。バナー広告の配信システムは、ディスプレイというチャネルがあり、2012年から広く出ているDSPのチャネル、ポイントソリューションとしてのDSPがあります。そして、サイト内の最適化というソリューションではネットマイニングがあります。それらのチャネルを横断的にまたいで、すべての機能を統合したもの、広告の統合管理プラットフォームと、スコアやアルゴリズムを使った最適化ツール、この2つが組み合わさったものがイグニッションワンです。

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DSP機能を搭載

有園:サーチイグナイト時代はディスプレイをやっておらず、2011年にネットマイニングがグループ化してイグニッションワンになったということですが、DSPの機能がイグニッションワンについたのはいつですか?

松本:本格的に稼働し始めたのは、2012年からです。

有園:その機能はネットマイニングでもっていた機能ではなく、DSPを開発して、イグニッションワンに組み込んだ。つまり、サーチイグナイト、ネットマイニング、DSP機能の3つがついたものをトータルでサービスしてくれるということですか?

松本:そうです。かつての技術はスコアにつかわれ、ディスプレイもユーザー単位でコンバージョンしやすい人に絞った形で買い付けできるのもDSPの中でも特徴的な機能だと思います。

ポイントソリューションとは?

有園:ポイントソリューションとスコアは同じことですか?

松本:ポイントソリューションはサーチの管理ツール、もしくはDSP単体で販売しているプラットフォームを指しています。

有園:サーチというポイント、DSPというポイント、という意味でしたか。あとは、サイト内行動分析のポイントということですね。それを御社でポイントソリューションと呼んでいて、スコアとは関係ないんですね。それぞれの3つのポイント、ソリューションを組み合わせているということですね。話しが変わりますが、行動履歴をもとにスコアをつけていくとは、具体的にどのようなことですか?

松本:スコアの技術のもとになっている、自動学習のアルゴリズムが裏で動いています。広くつかっている要素は3つあります。まずはページの遷移です。どのページをどのくらい見ているのか。それをネットマイニングの技術を使い、タグ経由で取得しています。滞在時間、ページの遷移の情報が把握できます。項目は100くらいあり、ブラウザの情報や流入経路も管理されています。訪問頻度と最後に来てからの経過時間も取り込んでいます。

有園:フリークエンシーとリーセンシーと呼ばれるものですね。一週間に何回きているか、頻度はどのくらいか、最近いつ訪問したかなどですね。

スコアとは?

松本:スコアの概念は、実店舗を例にサイト訪問を考えると分かりやすくなります。靴屋の場合、見るだけで買わない、冷やかしに来る人がいる一方で、何回も通って自分の足に合ったスニーカーを探している人、購入を検討する人がいます。気の利いた店員であれば「この前もきたな」と覚えておいて、お客様がスニーカーを手に取って数秒経ってから「サイズはいかがですか?」と声をかけるでしょう。適切なタイミングで声をかけ、適切な流れでクロージングまでもっていくのが優秀な販売員だと思います。それと似たようなロジックを、ECサイトなどでも取り入れるべきだと考えています。購入意向が高まっている方をスコア化し、スコアに応じて適切なアプローチをするという技術です。

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有園:それは、ネットマイニングの技術ですか?

松本:そうです。

有園:スコア化する際、DSPの反応も見ているのですか?バナー広告を配信して、反応が良くて、サイトでの行動も良いというような要素も入っているのですか?

松本:ユーザーに対して、どのくらい広告を表示したかという数字はもっています。反応せず、再訪までに時間がかかるケースは、再度訪問するときスコアは割り引かれ、スコアは下がった状態で取り直します。そうした意味では、スコアリングに加味されます。

有園:自然検索経由でバナー広告には反応していないなど、外部から流入してくる情報が加味されてスコアがつくわけですね。

松本:スコアはリアルタイムに変わります。昨日までは商品Aに興味をもっていたユーザーが、明日には別の商品に興味がうつっているケースもリアルタイムに対応できます。RTBの入札の場合は特に重要な部分なのでご好評いただいています。

スコアを使ってできること

有園:スコアを使って広告主にはどういうソリューションが提供されるのですか?サイト内が動的に変わる以外に何かありますか?

松本:さきほどのポップインでインタラクションを仕掛ける場合、オンサイト最適化と呼んでいるサービスがあります。もう一つは、DSPを使ったバナーのアドエクスチェンジ経由でユーザーが掲載面のページに訪れたとき、DSPを介してバナー広告を表示できます。これを「スマートリマーケティング」と呼んでいます。スコアを加味した精度の高いリターゲティングができます。

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リターゲティングの方法

有園:一般的にリターゲティングというと、サイト内に「イタリア旅行のページに来た人にリターゲティングします」「フランス旅行にきた人にリターゲティングします」とタグを入れますが、こうした設定をするんですか?

松本:はい。

有園:スコアが高いという条件が加味されて配信されるわけですね。スコアの高さでクリエイティブは調整できるんですか?スコアが100までの人には海外旅行という抽象的なクリエイティブを、200までの人はイタリア旅行という具体的なクリエイティブをというように。

松本:キャンペーンをそれぞれのシナリオに基づいて設計することで、実現できます。

有園:とてもよいですね。

松本:設計の自由度は高いです。ユーザーとスコアに応じて、シナリオ別に設計できます。DSPはゴールさえ入れれば後はお任せというソリューションも多いですが、我々はカスタマイズ可能な運用型の設計です。

有園:リターゲティングでDSPを設定する軸は、リターゲティングのタグを広告主のどのページにはるか、イタリア旅行に興味がある人のスコアが高いか低いか、それ以外は入札金額といった軸があると思いますが、この3つくらいですか。

松本:あとは再訪から何日経過しているかですね。再訪期間のターゲットです。昨日、来た人だけをターゲットにすることができます。時間帯別もできます。

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CRMとの連携

有園:さきほどCRMと連携する話がでましたが、ここ一か月で10万円以上購入している人のみをターゲットにすることもできるんですか?

松本:お客様がお持ちのデータベースと連携する必要がありますが、オンサイト用のクッキーIDと簡易IDを紐づけることで、ある程度できます。

有園:実施している広告主はいますか?

松本:カスタマイズが必要ですが、ワールドワイドではニーズがあります。

有園:日本国内では?

松本:そこまで大がかりな取り組みはまだありません。

有園:これから出てきそうですね。楽しみです。

松本:訪問した結果の情報はお持ちだと思いまが、どういう経路で購入に至ったかは見えてこない部分です。だから、コンバージョンを底上げする施策として、我々のサービスを使っていただけたらと思います。タグを入れるだけで、インタラクティブなアクションは自動的に学習していき、手離れがよくて楽です。ユーザーを想定する必要がありません。AとBとCというサイトを訪れ、何秒滞在した人を、どういうクラスターにするといった仮説でつくる必要がなく、そこは自動的に統計でならして考えていきます。一度いれてしまえば自動学習で最適なタイミングとスコアを導き出すので、あとはお任せで回していただければと思います。商品Aを買ったお客様が、二番目に興味があった商品Bの存在は、結果論としてなかなか見えてきません。でも、会員IDと紐づけると把握できるようになります。把握できれば、レコメンドで「商品Bをいかがですか?」とマーケティングできるようになります。

行動履歴に基づいて施策を変える

有園:いまの話だと、商品Aを買ったけれど、行動履歴を分析してみると、その過程で商品Bが二番目の候補であった可能性が分かるのと。商品Bを勧めれば買ってくれるかもしれないというわけですね。クロスセルを仕掛けるためにレコメンデーションをDSPでバナー広告を配信してもいいし、サイト内で何かしら動的にメッセージを出してもいいわけですね。

松本:いまの時点では、DSPをリアルタイムに反映することはできないのですが、データはもっています。二番目に興味のあった商品にカスタマイズしたメールを配信したり、画像に差し替えたポップインを出したりはできますね。

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有園:行動履歴に基づいてサイト内のコンテンツを差し替えられるし、バナー広告も対応できるということですね。サーチはどうですか?リスティング広告とか。

リスティング広告をスコアの技術で最適化

松本:リスティング広告でもスコアの技術を加味して最適化できるように進めています。現時点では、サイトを訪問したユーザーが、キーワードAを踏んで滞在していた場合、どのページをどのくらい滞在していたか、興味があった商品ジャンルがどれであったかを、キーワード単位で取得できます。それを見ながら、ビックキーワードで入られた方が、サイト内のどのページに最も興味をもっていたかが分かるので、それに応じてクリエイティブを変えるなどもできるようになります。ブランディングが目的の広告主に有効な指標だと思います。ブランド系のビックキーワードが実際にどこで一番滞在につながっているのかを把握することで、入札が適切であったかを判断できます。コンバージョンだけでなく、エンゲージメントの指標をもつことでリスティング広告の入札にも活かせるようになります。

有園:たとえば、トヨタ、ホンダ、日産、マツダといった自動車メーカーや、ソニー、パナソニックなどの家電メーカーだと、商品を個別に紹介するページを設けています。トヨタだと、お客様は「トヨタ」というキーワードを入れているし「トヨタ 自動車」と入れたり「プリウス」「カローラ」など車種名を入れたりすることもあるでしょう。それらのキーワードで入ってきたユーザーに対してランディングページが決められていますが、キーワードごとに滞在時間の長さや遷移ページ数の多さ、どのキーワードで入ってきたときに、どのページをよく見ているのかが分かるので、その情報を使って入札や広告のクリエイティブを修正することに反映できるというわけですね。

松本:いかがですか?

有園:けっこう良いですね。

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松本:ヨーロッパの事例では、ブランド系企業がサイトで情報提供してオフラインに誘導する設計で、エンゲージメントを見て効果を発揮しました。いままで見えていなかったインサイトを発見できるのが大きいです。

デジタルマーケティングスイートとは?

有園:御社もデジタルマーケティングスイートという言葉をつかっていますが、ネットマイニング、サーチイグナイト、DSPの機能をまとめて、デジタルマーケティングスイートといっているのでしょうか?

松本:バーティカルな機能を単体で使うことはもったいないので、すべてのチャネルの管理を一つのプラットフォームですることで、同じモノサシで評価すべきだろうという発想があります。アトリビューションでも重要なキーですが、アトリビューションを加味して最終的に適切な評価をするための、統合管理プラットフォームに位置付けています。そのなかで、デジタルマーケティングスイートはしっくりくるネーミングです。2011年以降は管理画面の中にもデジタルマーケティングスイートという言葉が出てきますし、デジタルマーケティングスイート.comというドメインもイグニッションワンがもって情報サイトを運営しています。

有園:御社の考え方だと、デジタルマーケティングスイートを実現するには効果測定が中心にあるのでしょうか?

松本:そのとおりです。

アトリビューション分析もできる

有園:イグニッションワンの中でアトリビューション分析結果がレポートとして出てくるのでしょうか?

松本:柔軟に設定可能です。ラストクリック評価ではなくファーストクリック寄りの評価が正しいのか、均等配分のモデルが正しいのか、評価をどのような軸で持つかを決めていただき、それに合せて各チャネルの効果測定も自動的に反映されます。求めていく各チャネル間の予算配分も、チャネルの貢献度を評価した上で決めて、バーティカルで回すべきところの最適化、それぞれアトリビューションを加味された最適化を、恒常的にかけてゴールを達成するのが我々の目指すところです。

有園:イグニッションワンを使うと、サーチ、自然検索やリスティング広告がとれて、ディスプレイもDSPという形でとれて、サイト内の行動履歴がスコア化されて、アトリビューションのモデルも選べて、それらを加味したレポートが出てきて、なおかつ設定さえしていればアトリビューション分析結果がリスティング広告の入札価格やクリエイティブに自動的に反映されるという理解でよいですか?

松本:データとしてはすべてそろいますが、レポートは管理画面上で細かい部分までは見られません。近々レポート画面の刷新を予定していますが、まずはカスタムレポートとしてお出しすることになります。その中でレコメンデーションとして全チャネルの可視化、貢献度の分析、最適なモデルをレコメンドし、アドバイスさせていただきます。

有園:ある程度の期間に基づいてアトリビューション分析し、予算のリアロケーションするレコメンドはするけれど、実施するかの判断や設定は広告主や代理店がするわけですね。リアルタイムに自動で設定の変更が行われるわけではないということですね。

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松本:レコメンド後の実施は簡単にできます。

有園:勝手に変えられたら困る代理店も多いでしょうしね。御社以外のDSPデータもとれるんですか?

DFA、メディアマインドと連携

松本:DFA、メディアマインドと連携が実装済みです。第三者配信のアドサーバーを介してデータの取り組みは可能です。

有園:アフィリエイトや純広告も第三者配信経由でとれるわけですね。

松本:ポストクリック計測が主流ではありますが、第三者配信が可能な場合は、ビュースルー計測も可能です。

有園:第三者配信に対応しているバナーであればビュースルーのトラッキングもできるし、ヤフーのブランドパネルなどもクリックトラッキングで取得できる。メールも、HTML形式メールであればトラッキングできるということですね。

松本:テキスト形式メールでもリンクを入れていただければ取得できます。

フェイスブック広告も計測できる

有園:開封を計りたいときはHTML形式メールでしたね。イグニッションワンを入れると、オンラインのマーケティング施策については、タグがはれる限り計測できるわけですね。フェイスブック広告はどうですか?

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松本:できます。計測用リンクをいれればフェイスブック経由の導線も計測できます。

有園:計測用リンクは広告ではないフェイスブックのニュースフィードにも入れられるのですか?

松本:広告の一貫としてのフィードであればサポートしています。イグニッションワンからAPI経由で計測できます。さきほどのメルマガのような感覚ではっていただき外部に飛ばすときは計測できます。

計測できないもの

有園:計測できないものはありますか?

松本:スマートフォンのアプリです。

有園:御社のDSPはスマートフォンでも対応しているのですか?

松本:課題があり未対応です。

マーケットの様子

有園:御社から見た競合はどこですか?

松本:サーチはマリーン、ソーシャル領域でも展開されているKenshoo、デジタルマーケティングスイートだとアドビなどが方向性の似ているプレイヤーだと思います。

有園:日本での営業状況はどうですか?

松本:サーチはもちろんのこと、ディスプレイの部分が伸びています。直接の問い合わせも多いです。

有園:利用している広告主やアカウント数はどのくらいですか?

松本:現状200前後くらいです。

有園:資本関係のお話にも関連して、先日のMBOによって電通グループの100%子会社から離れられたわけですが、日本の広告代理店の人や業界の人たちは、イグニッションワンは電通しか取り扱えないようなイメージがありましたが、直接取引もできるんですね?

電通しか取り扱えない?

松本:電通・関連グループの皆さんとは引き続き良好なパートナー関係を築いていく方向に変わりはありませんが、MBO実施の背景には中立なポジションで広くサービス展開をしていきたいという思いが原動力になっているところがありますので、直接取引はもちろん、今までお取引のなかった代理店様とも積極的にお付き合いしていきたいと考えています。

有園:電通以外の広告代理店とも取引できるんですか?

松本:できます。そこは柔軟です。

有園:最後に伺います。イグニッションワンの開発の方向性やロードマップはいかがですか?

ディスプレイ版のポートフォリオ最適化

松本:バーティカルな話ですと、各分野の機能開発は1年先まで予定が埋まっています。DSPの配信、買い付けに関する「ディスプレイ版のポートフォリオ最適化機能」の実装を急いでいます。数か月以内に実現する予定です。ダイナミッククリエイティブにも力を入れていて、既に国内でも提供を開始しています。同時にユーザーの興味関心の高い商品を動的に表示する「レコメンダー」の機能もブラッシュアップをかけています。

有園:なるほど。

サーチとディスプレイを一緒に最適化

松本:あとは、今後、サーチとディスプレイの予算配分をできるかぎりオートパイロットというか、モデリングが終わって出てきた結果に対して、最適なお題を自動的に回す、サーチとディスプレイの配分も包括した最適化がおこなえる。このような状況に、現状サーチは出来ているんですが、ここにディスプレイが乗っかって、最終的にはサーチとディスプレイが一緒の最適化できるようにしたいですね。お題を一個入れればすべてが回るような。それが現状のゴールですね。

有園:いまの話を分かりやすく言うと、「お題」というのはCPAを1000円以下で回すとかそういうものですか?

松本:もしくは、投下する予算を入れて、それに対するリターンがどれだけ入ってくるかとうところの、目標値を設定するということです。

有園:そのとき普通、1000万円予算があったら500万円をリスティング広告、500万円をDSPというみたいに設定を人間がやって、その範囲で動いていくわけです。しかし、リスティング広告とDSPを統合した目標を設定し、1000万円という予算の中で効果が高ければDSPの予算が700万円になって、リスティング広告が300万円になるみたいなことを、リアルタイムに自動でやってくれるわけですか?

松本:そうです。

有園:裏でアトリビューション分析が回るのですか?

松本:そのとおりですね。現状、それに近いことを裏側でやっていますが、インターフェース側に反映させていくのがゴールの一つです。

分析から実行までを自動化

有園:データを一か月とか取得して、モデルを決めて、御社側で分析した結果、推奨モデルを導き出してくれて、そのモデルからリアロケーションしてレコメンデーションするという話が出ましたが、レコメンデーションを実行に移すということを自動でやろうとしているという理解でよろしいですか?

松本:はい。そこは理想形としてあります。

有園:今年中には実装してくるのでしょうか?

松本:今年中には頑張りたいですね。年内の大きいところとしては、管理画面の予算進捗のアラート機能の強化はもちろんしますし、アトリビューションのパスのレポートですとか、ビジュアルとして管理画面上で確認できるようにします。

有園:アトリビューションのパスのレポートというのは、コンバージョン経路のレポートということですね?

松本:はい。そのとおりです。

有園:ある程度、パターン化して見やすくしていくわけですね。それ、難しいんですよね。

松本:どうですか?

有園:御社くらい技術があればできると思います。

松本:いろいろな組み合わせのパターンがあって、それをある程度グループ化して、例えばディスプレイが前半強い傾向にあるとかを視覚化できるようにしたいですね。

動画の対応

有園:ちなみに、動画の対応はどうですか?

松本:動画のDSPの話もありまして、いま検証中ではありますが、進化も早い分野なので対応予定です。あとは在庫との兼ね合いで、どのくらい立ち上がってくるかが決まりますね。

有園:在庫というのは、動画の在庫のことですか?

松本:そうです。

有園:オーディエンスやリターゲティングのロジックで、動画が配信できるようになると効果が高そうですね。

松本:はい。

データマネージメントプラットフォーム

有園:今年のトレンドである、データマネージメントプラットフォームについても伺います。御社はCRMデータと連携できるそうですが、それってちょっとしたプライベートDMPに近い形になってくると思います。サイト内の動線がとれていて、そのクッキーIDと会員IDを紐づけて、CRMと連携するのが一つのプライベートDMPの形です。そうすると、御社のDSPの買い付けはBlueKai(ブルーカイ)などとも連携しているのですか?

松本:ケースとしては試しています。プライベートDMPにも注目していまして、方向性としてはそちらにも動いています。重要なのはファーストパーティデータ、サイト内のデータ、もしくはサイトですでにとられている会員のデータを、さらに活用しようとすることです。サードパーティのデータはボリュームがあるので、それをマージすることによってターゲティングの範囲が広がると思います。でも、それに対して入札のロジックをどう紐づけるかが課題になってきます。サイト内で取得したデータをブラッシュアップして、それに紐づけて、お客様が持っているデータを、まずは活用できるようにするのが先かなと思っています。「第三者のデータを連携しないの?」と聞かれることがありますが、まずはファーストパーティの部分でもっとできることがあると考えています。あとは、入札のロジックはブラッシュしやすいところなので、そこを研ぎ澄ましていくことがファーストステップかなと感じています。

有園:そうはいっても、DMPを日本で導入している企業はほとんどないですからね。いわゆる、第三者のサードパーティとしてのデータとかいう意味では、まだこれからということですね。

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松本:ディスプレイも盛り上がってきていますし、リスティング広告とディスプレイがようやく同じくらいの予算規模で取り組まれるようになりました。両輪で回して最適化をおこなえる時代にきているので、我々もビジネスチャンスだと思っています。機能も営業も強化します。アドテク大好きで新しいうねりの中に飛び込んでチャレンジしたい仲間を募集しています。

アドテク大好きでチャレンジしたい仲間を募集中

有園:絶賛採用中ですね。いまは何名くらい、いらっしゃるのですか?

松本:6名です。

有園:何名くらいにしたいのですか?

松本:ビジネスが盛り上がっていけば、倍にはしたいですね。

有園:けっこう売れているので人が足りなくなってきたわけですね。良いことですね。今後も御社の動向に注目しています。ありがとうございました。

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(END)

【イグニッションワンジャパンの概要資料ダウンロード】
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【アトリくんの視点】統合管理プラットフォームは、統合環境であるがゆえのメリットを活かしつつ、統合環境をさらに拡大するスピードを担保するために、内部で実装する機能部分と、外部ツールやデータとの連携部分の絶妙なバランスが重要だと思いますが、イグニッションワンはとてもいいバランスで進化している印象です。統合管理プラットフォームの最大の強みの一つは測定環境の一元化であるわけで、アトリビューションによる可視化も大きな部分ですね。定点観測しつつ、高速にPDCAを回して運用するユーザー企業の出現も先の話ではなさそうですね。松本さん、ありがとうございました!

コメント

アトリビューション特別対談:ADエビスと第三者配信機能が統合 – 株式会社ロックオン 一木稔人氏 × アタラ合同会社 杉原剛

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日本初!広告配信から効果測定まで一元管理するViewThruエビス
広告主とメディアの架け橋となるアトリビューションを推進
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ロックオン一木稔人さんのプロフィール

杉原:本日は、株式会社ロックオンの一木稔人さんをお迎えして、2012年11月にリリースした「ViewThruエビス」と、それによって実現できるアトリビューション分析について伺います。

一木:株式会社ロックオンの一木稔人です。ロックオンに入社する前は、リクルートで紙の広告を売っていました。企画デザインから携わっていたのですが、効果が分からないことが課題だと感じていました。キャッチコピーなど何度も練り直し、締め切り前は夜中まで仕事をしてようやく完成し、出稿するのですが、その結果をお客さんに聞いても「なんとなく良い」とか「効果って言われても……どうかなぁ?」といった声が返ってきました。「すごく良いですよ!」と褒められても、具体的に何がどう良かったのかは分かりませんでした。それを4年ぐらい続けてモヤモヤしていました。

杉原:4年は長かったですね。

一木:広告を見て買ってくれたお客さんのところへアンケートをとりに行って「なんで、これを見て買ってくれたんですか?」と聞きに行ったりもしていました。

杉原:それはスゴイですね(笑)

効果測定ができるウェブの世界へ

一木:でも、ちょうど2008年頃、リクルートの商品が紙からウェブへ移行する動きがあったタイミングで「どうやらウェブは効果測定ができるらしい」ということを知りました。「PVってなに??」といった知識レベルでしたが、効果測定できない紙広告に課題を感じていたので、効果測定ができるウェブという世界に興味を抱きました。それで、すぐに「ウェブ 効果測定」で検索したらロックオンが出てき「これだ!」って思って入社しました。

杉原:なるほど。

一木:ロックオンに入社してから1年くらいは技術サポートに携わり、技術の研修をやって、その後の3年は営業をやっていました。2012年10月から事業戦略として、今後の製品展開や会社の方向性を戦略的に考える仕事に就いています。

杉原:そのような経緯だったんですね。

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マーケティングメトリックス研究所とは

一木:あと、データ分析のマーケティングメトリックス研究所も僕とその他のメンバーで担当しています。

マーケティングメトリックス研究所
http://www.mm-lab.jp/

杉原:マーケティングメトリックス研究所では、どのような活動をしているのですか?

一木:弊社は効果測定のツールを提供して約10年になるのですが「測定したデータの使い方が分からない。活用できていない」という声は未だに多いんです。そこで、データの使い方を世の中に啓蒙すること、データの面白さを伝えていくのが主な活動趣旨です。社内向けには、リスティング広告の最適化ロジックの研究や開発をおこなっていたりしています。

杉原:お客さんの数字データの分析もやっていらっしゃるんですか?

一木:そうですね。ビッグデータの解析などはマーケティングメトリックス研究所で取り扱っていて、お客さんのアトリビューションのレポートなども作成しています。「ADエビス」や「THREe(スリー)」を利用していただくお客さんから、データの活用方法などのご相談も多くいただくようになりました。

ロックオンの商品ラインナップ

杉原:一木さんのいる事業戦略室が商品企画をされているとのことですが、ロックオンさんの商品ラインナップをご紹介いただけますか?

一木:弊社のサービスは主に4つです。広告効果測定システム「ADエビス」、第3世代のリスティング広告マネージメントサービス「THREe(スリー)」、ECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」とマーケティングメトリックス研究所(以下マメ研)が提供するデータを活用した戦略立案をおこなうサービス「最適化テクノロジー」の4つです。

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ロックオン サービス一覧

左から、効果測定のアドエビスは、PDCAのCheckの部分ですね。

次にTHREeはDo&Action、データ分析をおこなうマメ研がPlanを担います。これらのサービス群は「企業と消費者のコミュニケーションの最適解を導く」というコンセプトです。

また、EC-CUBEは、オープンプラットフォームとなっており、Eコマースに必須の各種EC周辺サービスとの連携を自由に組み合わせながら、独自のショッピングプラットフォームを構築できます。今では日本国内2万サイト以上がEC-CUBEを使って構築されていて、2013年からは海外版もリリースしました。

ビュースルーを含めたアトリビューション分析

杉原:そして今回、ビュースルーを含めたアトリビューション分析もできる「ViewThruエビス」が登場したわけですね。これは、ADエビスの一環ということですか?

一木:そうですね。ADエビスの拡張機能となります。そもそも「アドエビス」といっても、その種類はたくさんあります。

広告の効果だけを計測したければ「ADエビス」。
自然検索の効果を計測する場合は「SEOエビス」。
さらにランディングページの最適化をしたければ「LPOエビス」。
サイト内の導線を広告に紐付けて分析する場合は「LOGエビス」。
タグのマネジメントがしたければ「TAGエビス」。

こうしたサービスを用意しています。これらに今回リリースした第三者配信サービス「ViewThruエビス」が加わり、インプレッションから一貫して計測・分析ができるようになりました。

「ViewThruエビス」でできること

杉原:ViewThruエビスやSEOエビスを使うには、ADエビスの導入が前提ですか?

一木:そうです。ADエビスがコアになります。「ADエビス」と「ViewThruエビス」でもいいですし、「ADエビス」と「SEOエビス」など、計測の目的によって組み合わせは自由ですが「ADエビス」が基本機能になります。

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アドエビス サービスラインナップ

杉原:新登場の「ViewThruエビス」では、どういったことができるんですか?

一木:単純にいうと、第三者配信アドサーバーです。ディスプレイ広告を一元管理して配信する第三者配信アドサーバー機能に加え、「ADエビス」の全機能と統合できるのが特徴です。

杉原:なるほど。

日本初!解析ツールや効果測定ツールが第三者配信を搭載

一木:ADエビスの管理画面上で、クリエイティブを登録して配信タグを媒体へ入稿すると、ADエビス自体がアドサーバーとなって広告を配信できるようになります。母体が効果測定になるので、配信とサイト流入から成果までをつなげて一元管理できます。

杉原:それは大きな強みですね。そうしたプラットフォームは日本初ですよね?

一木:そうですね。解析ツールや効果測定ツールが第三者配信を搭載するのは日本初です。

「ViewThruエビス」を開発したきっかけ

杉原:「ViewThruエビス」を開発しようと思ったきっけは何ですか?

一木:僕自身の個人的な理由は、メディアやデバイスが進化するにつれて、広告の効果測定がクリックベースだけであることに納得感が持てなくなってきたということです。そして、会社としては当然ですが、事業戦略上、新しいサービス開発が迫られていたことです。以前、杉原さんにもお話ししましたが、取得データを増やし、分析できることを増やしていかないとダメだなぁ……という危機感がありました。そう考え始めたのが一番のきっかけですね。

杉原:2012年の秋頃ですね。

一木:そうですね。実は、杉原さんとad:tech Tokyo 2012のロックオンブースで対談した翌日に、ヤフーさんとメディアマインドさんの事業提携発表があって心が動きました。その日の夜、社内でプレスリリースの内容を共有し、翌週には企画書をまとめて社内プレゼンを実行しました。

杉原:早いですね。

一木:そのままの勢いで、3ヶ月後の2013年2月4日にリリースしたという流れです。既存事業との親和性も高く、自社開発環境があったから成しえたことだと思います。

杉原:実は、直近の話なのですね。

一木:そうですね。「やっていこうか」という話は社内でも以前から出ていました。開発環境が社内にあるため、別に第三者配信事業ではなく、DSP事業でも他社提携でも、手段はいろいろと考えられましたが、ヤフーさんの件はインパクトがありましたからね。これによって業界の動きもさらに活発化することが予想できましたし、共感できるところも多く、今後、さまざまなメディアがもっと積極的に第三者配信を受け入れていくようになると考え、先を見据えてリリースをしました。

ADエビスのユーザー動向

杉原:ちなみに、ADエビスのユーザーさんから要望があったのですか?

一木:ユーザーさんは広告代理店さんが多いので、広告主から直接目立った声はありませんでした。ただ、蓋を開けてみると効果測定の「ADエビス」を入れつつ、同時に他社の第三者配信サービスを入れているユーザーさんが多かったのです。聞くと「効果測定と第三者配信は別物だよね」という声が出てきました。各ユーザーさんが「効果測定をするための第三者配信」という位置づけで使っていたかは定かではありませんが「可視化できるものが違う」「別物だ」という感覚はあったようです。そのため「効果測定のロックオンさんに第三者配信の相談をするのは違うよね」ということだったのかもしれません。

なぜ、第三者配信機能まで実装したの?

杉原:そんな中で、広告の第三者配信機能まで実装した意図を教えていただけますか?

一木:正直に申しますと、第三者配信が我々の脅威になると感じました。ヤフーさんのリリースがきっかけで、日本国内の媒体社のスタンスが変われば、アトリビューションも今以上に実施しやすくなります。その結果、第三者配信は効果測定の領域に入ってくると思いました。また、広告技術の革新によって今後、運用型広告もさらに拡大することを考えると、広告データの取得や蓄積は多いに越したことはありません。リスクヘッジと次の事業展開も兼ねて、取り組むことを決断しました。ピクセリングでのView計測は今までも実施していましたが、それだと第三者配信に頼らざるを得ないので、それなら自分たちで持ったほうが良いということでした。

海外の動向

杉原:広告効果測定からサイト内分析、さらにはタグマネジメントまでできる御社の取組は日本初ということですが、海外ではどのような例がありますか?

一木:グーグルさんですね(笑)

杉原:そうだ。グーグルさんだ。それ以外はほとんどないですよね。

一木:事業戦略としてはグーグルさんとかぶっていること自体がリスクなので、早く別のフィールドにいかないといけないのですが(笑)

杉原:でも、競争できる形にはあるわけですね?

一木:いえいえ、決して競争したいわけではなく(汗)第三者配信に関しては、外部要因を意識してきましたが、もともと弊社のサービスは広告の効果測定からはじまってSEOやLPOと市場ニーズに合わせて必然的にサービスが広がってきました。必要なソリューションを揃えた結果、今のラインナップになりました。

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リスティング広告の自動入札機能

杉原:リスティング広告の自動入札機能は含まれているのですか?

一木:自動入札機能を持つ「THREe(スリー)」との連携は一部、APIでおこなっており、パラメータの自動付与・インプレッション数・クリックコスト・クエリワードのデータが毎日、自動的にアドエビスに登録されるようになっています。アトリビューション分析の課題にありがちな「キーワード毎の費用が反映できない」「キーワード毎のパラメータの振り分けが面倒」といったことは防げます。

杉原:リスティング広告のコストは自動的に入るわけですね。

一木:はい。ただし、効果測定のデータ(自然検索ワード・間接効果等)をリスティング広告の運用に自動反映することは実現できていません。そこについては、THREeの運用チームがアドエビスの計測データを活用してリスティング運用をおこなっています。

杉原:今は人がやっていることも、ゆくゆくは機能化していく予定ですか?

一木:はい。もちろん考えています。特に今後、運用型広告が増えると見込んでいますので、運用担当者の負担が軽減できることはもちろんのこと、データの分析がもっと簡単にできるような補助的な機能が求められると思っています。

杉原:その他、特徴があれば教えてください。

コンバージョンの100パスデータが無料出力

一木:初期費用無料で月額7万5千円からご利用いただけます。廉価でのサービス提供を実現しています。

杉原:あと、アトリビューション分析をおこなう際に必要なコンバージョンパスデータも出力できるんですよね?

一木:はい。2013年4月より、ビュー・クリック・自然検索コンバージョンパスデータを管理画面上から、いつでもダウンロードできるようになりました。広告のビューとクリック・自然検索のパスデータを、過去100セッションまでさかのぼって取得できます。膨大な量なので知らない人が見ると「何これ?」ってなると思いますが、広告代理店さんからはローデータの要望が多いんです。

杉原:コンバージョンパスデータが管理画面上から100パスとれるようになるとは、すごいですね。これは5万円でしたっけ?

一木:無料になりました。これまで、ローデータの取得というと一般的には20万円から40万くらいして、とても高額でしたが、見たいタイミングですぐに取得できるようになりました。

ノンコンバージョンデータは?

杉原:ノンコンバージョンデータも分析したければ取得できるのですか?

一木:ご相談いただければオプション(有料)対応が可能です。

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アドエビス管理画面:広告View/Click、自然検索を含めたコンバージョンパスがすぐに確認できる。
※100セッション表示はCSVデータのみ

急増!アトリビューション分析をやりたい広告主

杉原:分かりました。「ViewThruエビス」を導入する方は、アトリビューション分析をやりたいからか、純粋に第三者配信をやりたいからか、どちらのケースが多いですか?

一木:アトリビューション分析をやりたい方が多いですね。

杉原:アトリビューション分析に目的意識をもった広告主が増えているのですね。

一木:そうですね。ただ、「まずやってみたい」というスポット前提が多いです。

杉原:まだ、アトリビューション分析を中長期的に導入して定点観測するケースは稀ですね。

一木:はい。

杉原:ただ、プラットフォーム化しているということは、そこも実現できるようにしたいということですよね?

要望に応じてオーダーメイド対応

一木:そうですね。レポートも基本フォーマットはあるのですが、今はできるだけオーダーメイドで応えるようにしています。漠然と「アトリビューション分析をしたい!」というお客さんも少なくはないので、「何を実現したいのか?」「どんなデータが見たいのか?」といった声を直接お聞きして、それに合った形で個別レポートを提案・作成しています。

杉原:なるほど。

一木:お客さんの業種・業態によっても見るべき指標が異なるため、個別で対応していますが、結果的にデータをダウンロードして、分析して、結論を出して、アロケーションを提案するまでに時間がかかり過ぎていることが課題であると認識しています。PDCAのCに時間がかかり過ぎるんです。アトリビューション分析のサイクルがスムーズにいかないボトルネックは、ここにあります。人、モノ、金がかかってきます。当然、時間をかけずに質の良いアウトプットを実現したいという思いがありますので、そのひとつが、管理画面上ボタン1つでデータがダウンロードできる機能だったりします。こういった機能をドンドン増やしていきたいですね。

データを使いこなせていますか?

杉原:いまはプラットフォームで実現できていない面と、広告主さんや広告代理店さんがデータを持っても使いこなせないという課題もありますよね。

一木:個人的には、そもそも業界自体、確立できていない部分が多いと思うんです。いろいろな人が、さまざまなことをやっています。これまでは一部の人たちが第三者配信を実施して、一部の人たちがデータを見ているといった状態でした。しかし、今後は第三者配信のコストが下がり、メディアも受入れ始めることで導入障壁も下がり、アトリビューション分析やビックデータに触れることが、もっと身近になっていくと思います。

杉原:今って「やってみたいんだけど、何から始めたらいいかわからない」とか「やってみたけれど、設定の仕方が分からない」というように、気持ちはあるけれど分析できるデータは取れなかったという声が多いですね。

設定・設計が重要

一木:はい、まず設定・設計が重要ですね。「こういった分析がしたい」「こういったデータを見たい」という要望に合わせて、分析項目等のカテゴリを設計・構築する必要があります。見やすくするためには相応な設計が必要ですが、それをやるにはある程度の経験を積まないと難しいですね。本質を理解して作っていかないと大変なことになります。技術はあるけど、人の設定や運用がついてこないパターンは多いです。

杉原:広告主さんや広告代理店さんにしても、業界がこのような状況なので、プラットフォームや機能を提供するだけで普及は難しいですね。だからこそ、ロックオンさんの役割としては、アトリビューション分析を啓蒙しつつ導入を広げていくフェーズということでしょうか?その先で、やりたいことが効率よくできて、見るべきデータを見ることができる機能を提供していくという構想でしょうか?

一木:そうですね。僕らとしては、数々の事例を通じて成功も失敗も経験し、ノウハウを蓄積していますので、最前線でお客さんの課題を解決していきたいです。お客さんからツールや運用の課題を伺い「それであれば○○と××を組み合わせて見られるように開発しましょう」と提案できることが自社開発の強みであり、活かしていきたいところですね。

導入事例「オーダーメイドで作るアトリビューション分析レポート」

杉原:せっかくなので事例を紹介していただけますか。

一木:では、オーダーメイドで作る場合の、アトリビューション分析レポートの流れについてご紹介しますね。まず、弊社が考えるアトリビューションの概念や過去の取り組みなどについてご説明させていただきます。ここで「アトリビューションとは?」という点について、関係者の目線を揃えることができます。次に、クライアントがどんなことを課題に感じているかヒアリングします。一見、アトリビューション分析とは関係なさそうなことでも、どんどん語ってもらって、その課題を受けた上で、最適だと思う分析のアウトプットイメージの共有、実現するため計測指標、計測設計のご提案をおこないます。その際、計測できる範囲や項目の意味など、関係者全員で共有できるように丁寧にご説明するように心がけています。

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計測項目確認表

杉原:なにを、どこまで計測するか、お互いに共通理解をもったうえで始めないとトラブルになります。これも設計段階の話ですね。きちんと設計しないと後で「○○がとれてない」と言われたり「これしかできないの?」といった思い違いが起きてしまったりするわけですね。

一木:はい。こういう煩わしい前段階の説明をせずとも、思うようにテクノロジーに反映できたらいいのですが、まだ難しいですね。お客さんと二人三脚でやっています。

アトリビューション分析をはじめる前にすべきこと

杉原:アトリビューション分析をおこなう前に注意したほうがいいことはありますか?

一木:アトリビューション分析のトラブルの原因の一つがプレイヤーの多さだと思います。広告代理店が2社から3社いて、計測のタグを設置する制作会社がいて、広告主さんがいて、弊社がいて……。どこかが主体的にやらなければなりませんが、ツールを知っているのはベンダーなので、そのあたりは出来るだけこちらに権限を持たせていただいて、マーケティング施策の部分は広告代理店さんが持ったり、場合によっては弊社が第三者目線でアドバイスしたりしています。お互いがフォローし合わないと、アトリビューション分析はうまくいきません。

杉原:本当にそうですね。かなり細かいチェック項目と、お互いにどこを分担するか決まっていないと混乱を招きます。統一化されていない部分ばかりだし、今後、統一化されるのかは疑問でもあります。それがアトリビューション分析をやる前の準備として難しいところですね。

一木:設計などの準備が全体作業の50%以上を占めると言っても過言ではありません。準備さえできれば、あとは楽なんですけどね。決められた期間でできるかが腕の見せ所です。

杉原:いずれ自動化されてプラットフォームの中で設定や計算、分析を吸収できたとしても、事前の共通意識をもつ過程は大事ですよね。

一木:参加者の共通意識や設計は、ツールで自動化できない部分ですからね。こちらの感覚値で進めていくのではなく、目線を合わせて進める必要があると思っています。

杉原:とてもよくわかります。

CRM情報と広告情報を結び付ける機能

一木:また、どうしても計測ツールだけでは取得できないマーケティング情報の一つが「CRMデータ」です。その消費者が、過去に何回この商品を購入しているのか?というのは非常に重要な指標です。たとえば、ECサイトの場合、過去に複数回の購入履歴があるお客さんと、まったくの新規客とは、当然アプローチに違いがあります。しかし、1回だけ購入履歴がある方に2回目、3回目の購入をしてもらうために、どのようなコミュニケーションが有効なのかは、計測ツールだけでは知ることができません。

杉原:そうですね。

一木:こういった軸での分析・広告評価をおこなうために、アドエビスではCRM情報と広告情報を結び付けるための機能も用意しています。分析の幅をさらに広げることができ、クライアントの課題にも柔軟に対応することができます。しかし、逆に広がり過ぎて過度なコストや時間をかけないように注意が必要です。

杉原:無限に広げることができますからね。

誰が見ても伝わるのが良いレポート

一木:取得データや分析方法が固まったら、いよいよレポートですが、ここでも分析内容を理解できるように、評価比較や相関性など、可能な限り図に落とし込むようにして、その読み取り方なども理解できるように説明を加えます。クライアントへ提出したレポートは、その後、担当者のチームや上司の方、担当代理店など、さまざまな方が閲覧します。企業のマーケティング担当者は、そういった方たちに説明しなければならないため、誰が見ても伝わることをイメージしてレポート作りをしています。

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アトリビューションレポート例:サマリーから広告相互関係、TCPAを用いたアロケーション・シミュレーションまで。

杉原:広告業界は特に多いですね。結局はアロケーションに落とし込まなければならないのですが、その手前が重要だったりします。レポートも「分析した感」が伝わるかどうかが大切になってきます。

一木:逆に、データやグラフしかないレポートだと「それで?」ということになってしまいます。結論に至るまでのプロセスは、グラフなどで要点を絞って分かり易く。結論は、課題に対する本質を深く掘り下げていないと、それは報告している意味が無いです。それを導くために、コスト情報などはお客さんや代理店さんにも協力していただく必要がありますね。

杉原:そうですね。

広告代理店が「コストデータを渡したくない」!?

一木:現状、事前設計を主体的にやらないと、広告主さんをはじめ広告代理店などの関係者一同が同じ方向を向いてくれません。ここはぐいっと引っ張って「お互いに協力しましょう!」という意思疎通がとれないと、アトリビューション分析はできません。広告代理店が「コストデータを渡したくない」と言い出したら分析できませんが、よくある話です。

杉原:よく聞きますね。

一木:一方、どれだけ意思疎通をして分析を進めても、コストのアロケーションまで踏み込めていないことが多いです。理由は、アロケーションの納得感の無さにあると考えています。実際、懐疑的な広告主は多いです。方法論がまだまだ未熟だということも考えられますが、そもそもセンシティブな内容なので他社の情報を耳にする機会が少なく、いま一歩、踏み出せないのかもしれません。ここは、ぜひ広告主さんたちにも協力していただいて、事例を作って表に出していけなければならないと思います。みんなで業界を盛り上げようというスタンスです。

広告主さんのコミットレベルをより高く!

杉原:協力もそうですし、広告主さんのコミットレベルが、もっと突き抜けてほしいなって思います。アトリビューション分析をするということにはコミットしているのですが、コストアロケーションしてオススメしても、実際にやっているケースは少ないです。いろいろな理由があって踏みとどまったり、シミュレーションの半分でやってみましょうということもあります。半分でもやるだけいいのですが、やらないケースはまだ多いです。やってもらうために背中を押すのが「納得感」なのかなって思います。その納得感を我々はつくっていかなければなりませんね。

一木:多くの人が関わってアトリビューション分析やっても、PDCで止まってしまうのはもったいないですね。時間もコストもかけていますので。

杉原:そうですね。

一木:また、PDCAサイクルを回すうえで、コストと時間で負担をかけないようにするのがツールベンダーである私たちの使命だと思っています。

今後の展望「動画のアトリビューション分析」

杉原:今後の展望を聞かせていただけますか?

一木:あたらしい取り組みとしては、動画のアトリビューション分析も進めています。

杉原:動画が盛り上がってきましたね。動画は直接的なコンバージョンの寄与度が見えにくいので、アトリビューション分析とセットになっていくのでは?と私自身も注目しています。

一木:CPMが高いのでシビアですが、得られる情報は数百倍、数千倍だったりもするので、これによる消費者の態度変容が分かるようになると面白いですね。いままでの広告の接触ポイントや流入ポイントだけでは取りきれないこともあるので、動画も含めて見ていきましょうという話になっています。

杉原:マウス、クリック、どこで離脱したかなど、とれる情報は多いけれど、情報が多いと分析する方も大変になりますね。

一木:項目が1つ増えると、掛け算で10増えたりしますからね。

杉原:そうですね。どこまで分析するのか見極めが難しく大事ですね。

一木:弊社では、140%くらい分析してから100%に落とし込んでいます。とにかく分析事例を増やし、どこを自動化できるか、つまりサービスの機能として反映できるかを見極めています。分析と商品のバージョンアップ企画を同時に進めているイメージです。

杉原:そこから取捨選択する目利きが必要ですね。読み解く力が問われますね。

メディアとのタイアップ

一木:他はメディアさんとのタイアップも積極的におこなっています。2012年の夏にメディアジーンさんとGizmodo Japan(ギズモード・ジャパン)の分析を一緒にやったのも好評でした。

杉原:そうでしょうね。メディアさんもメディアさんの立場からのアトリビューションには興味はあるけれど、どう取り組んでいいのか迷っている様子です。

一木:技術的には以前からできたことなんですが、メディアさん側で受け入れられませんでした。Gizmodoさんの事例が世の中に出てきてから、他のメディアさんも前向きに取り組んでいただけるようになったように感じます。

杉原:アトリビューション分析によって、広告主さんが何を欲しがっているのか、メディアさんが見ようとする意識が以前よりも高まっているように思います。

一木:広告主とメディアをアトリビューションがつなぐわけですね。

杉原:メディアさんも、広告主さんがメディアに何を求めているのか知りたいけれど、どこを見たらいいのか分からないのが正直なところだと思います。

ロックオンのアトリビューション分析

一木:そうですね。弊社のアトリビューション分析の進め方としては、定型の分析ロジックが6割で、残り4割はお客さんの業種・業態に合わせて調整し、企業ごとにプライベートな分析ロジックを適用しています。定型ロジックのベーシックな部分はツールに反映させ、広い領域で手間なくアトリビューション分析をおこなえるように、ソリューションを開発・提供していきたいです。

杉原:本日は貴重なお話を伺い、ありがとうございました。

(END)

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【アトリくんの視点】広告効果測定ツールが第三者配信サーバー機能を実装するのは意外とグローバルで見ても珍しいケースだったりします。データ取得部分や媒体コスト、CRMとの紐付けは便利ですね。あとは分析系機能の実装が今後期待されます。アトリビューション分析を行う上での導入ハードルがかなり低くなっているので、ぜひ今後増えていって欲しいと思います。

コメント

アトリビューション特別対談:「メディアプランニング」ではなく「オーディエンスプランニング」の時代 – デジタルインテリジェンス代表 横山隆治氏xアタラ有園

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DMPが始動!プライベートDMP構築の勢いが加速
「メディアプランニング」ではなく「オーディエンスプランニング」の時代
アトリビューションの今後を読み解く
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有園:本日は、株式会社デジタルインテリジェンスの代表取締役、横山隆治さんをお迎えして「DMP」や「DMPとプライベートDMPの違い」そして「アトリビューション」について伺います。

横山さんはインターネット広告業界の第一人者で業界をつくってきた方のお一人でもあります。常に業界のトップランナーとして新しい分野を啓蒙、確立してこられました。

横山:私は、1982年に株式会社旭通信社(現:株式会社アサツー ディ・ケイ)に入社しました。アニメに強い広告代理店です。

そこで、キリンビールさんや資生堂さん、日清食品さんといったトップブランドを担当させていただきました。CMは12本から13本くらい撮りましたし、音楽イベントやプロモーション、ダイレクトマーケティングや商品開発など、いろいろな仕事に携わりました。

最初の15年くらいは全方位でトライができました。CMを撮るにあたっては、コピーライティングの1000本ノックをやったり、マーケティング手法を駆使したりと、いわゆるマス広告のコミュニケーション開発には相当いろいろな形で関わってきました。

そんな中、1993年頃にインターネットに触れました。まだ「Mosaic(モザイク)」だった頃です。

有園:「Mosaic」をご存じない方もいらっしゃると思うので補足すると、いまあるウェブブラウザの前身ですね?

横山:懐かしいですね。当時、もちろんメールはありましたが「インターネットのなにが面白いんだろう?」というレベルの状態でした。

ある日「インターネットを使えば、この世の中で、ある分野に一番詳しい人に質問して、学生が宿題を済ませることができちゃうんだよ」と言われ、インターネットって面白いかもって思いました。もちろん、答えてもらえたらの話です。

当時は、インターネットを駆使できる人は少なかったけれど「なるほどね。それは面白い」と思いました。

有園:そうだったんですね。

インフォシークを日本に導入

横山:その頃、インフォシーク(Infoseek)を日本に導入しようという話に賛同し、自ら動きました。当時すでに、インフォシークは消費者の心理にもとづくサイコグラフィカルなターゲティングが可能でした。いわゆる行動ターゲティングです。

もともとはイスラエルで開発された技術で「セレクトキャスト」と呼ばれていました。サイトを訪れたユーザーのブラウザにクッキーでIDを振る。各ブラウザのIDごとに、あらかじめ設定しておいた440くらいのディメンションと呼んでいた興味関心のベクトルがあって、それをつけていく。

当時のサーバーは容量が小さかったので、サイトにアクセスした際に、クッキーから情報をとってベクトルをつけ、また訪問したら新しい情報ベクトルを付けることを繰り返していました。

1995年頃には、このベクトルをもとにユーザーをカテゴリー分けして、クッキーごとに広告を送り分けるという発想があったんです。

有園:そうなんですね。

横山:それと同時に、インフォシークは他の媒体も巻き込んで、自社のアドサーバーでアドネットワークができるという構想がありました。

結果的には、同じレイヤーが集まるので競合してしまいビジネスにはならなかったのですが、そうした技術はすでに持っていました。

そういう意味では、インフォシークのロボット検索エンジンは先進的でしたね。当時、ヤフーは人力でディレクトリを作っていましたし。インフォシークが標榜していたことは今のグーグルが掲げていることと同じですが、どんなにインフォシークの検索エンジンが優れていても、技術があっても、それを発揮する環境が整っていませんでした。4年から5年くらい早かったようです。

ただ、1995年頃のインフォシークとの出会いは衝撃的でした。当時のインフォシークはすでに行動ターゲティングという考えやアドサーバーの基礎技術をもっていたんですから。そこからの学びは大きかったです。その先の15年くらいの未来が見えました。

私は30年以上広告業界にいます。最初の15年はマス広告の世界にいて、そのあとの17年はインターネット広告の世界にゼロから飛び込みました。しかし、いま考えていることは17年前に考えていたことと変わっていません。昔、マス広告をやっていたことが今の仕事に活かせていますね。

有園:インフォシークとの出会いがあってDAC(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社)の立ち上げにつながるわけですね。

横山:はい。当時は広告枠を作って手売りしていました。インフォシークに最初に掲載されたバナー広告は、フロッピーディスクに入れてバイク便が届けてくれました。

有園:フロッピーディスクってのがいいですね。

横山:歴史を感じますね。ただ、いまのインターネット広告、デジタル広告も仕組みは変わっていません。広告枠を作って広告代理店の営業マンがお客さんに提案して売っています。

掲載期間が決まっていて、何を保証して、何を保証しないかを伝え「買いますか?買いませんか?」と提案しています。この方法は、いままでのマス広告の営業となんら変わりません。2012年にDSPの本を書いたのも、そのあたりに疑問を感じていたからです。

DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門
ビッグデータ時代に実現する「枠」から「人」への広告革命(インプレスR&D)

http://www.amazon.co.jp/dp/4864780013

有園:私も拝読しました。

横山:ありがとうございます。インターネット広告業界の黎明期からいるので、GoTo.comのメンバーと日本で最初に会ったのは、実は私たちだったりします。

有園:そうなんですか!オーバーチュア(現:Yahoo リスティング)の前身の会社ですね。

横山:広告枠をオンラインで、入札で買うというリスティング広告の考え方は画期的でした。ディスプレイ広告も枠ではなく、いちインプレッションずつ買えますと。広告枠が手売りからの脱却です。

有園:画期的なビジネスモデルですよね。

横山:広告を売る側も人数に限りがありますし、オンラインで管理できると効率的です。この市場が大きくなれば効率化のニーズはますます高まります。そういう意味でも画期的なものが出てきています。そして思うのが「やっぱデータだな」ということです。

有園:オーディエンスデータということですかね。

横山:そもそも、ユーザーを特定することだけではありません。変数はいっぱいあります。広告の掲載場所が良いかどうか、どのようなタイミングで掲載するのが良いかなど。広告配信の統合プラットフォームであるDSPを使って自社でデータを格納するようになると、あらゆる広告配信に対する評価を自社データに取り込みたくなるはずです。

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2013年の広告業界予測

有園:あらためで伺います。横山さんはご自身のブログ「業界人間ベム」の中で2013年の広告業界予測として7つの出来事を予測されています。そのうち「DMP(データ・マネージメント・プラットフォーム)が始動する年」「オーディエンスデータプランニングが試行される年」になると書いていらっしゃいます。

私もこの記事を読んで今後は「メディアプランニング」ではなく「オーディエンスプランニング」が必要になると感じました。いま私がやっている仕事は「メディアプランニング」です。メディアの広告枠や広告クリエイティブに対してアトリビューションを実施しています。

でも、今後はオーディエンスに対するアトリビューションが必要になると考えていて、それが私の仕事になると思っています。

アトリビューションの流れを整理すると、DMPが出てきたことによってデータに紐づいたセグメント単位の分析が可能になります。ヤフーのブランドパネルを買った際、あるセグメント、あるオーディエンスには効果があるけれど、他は効果がないといったことが起きます。

そこを検証するために、メディアとオーディエンスの掛けあわせでアトリビューションをやらなければならない時代になっていくと考えています。

横山:まさに、おっしゃるとおりですね。プライベートDMPという言葉も聞きますが。ファーストパーティクッキーだけを見たのでは、訪れたことは分かっても、どのページとどのページを見たお客さんか、くらいしか分かりません。それだけでは大した分析もできません。

だから、プライベートDMPをつくって、サードパーティのデータとシンクロさせ、デモグラフィーを見るのは当然だし、どんな関心のある人なのかを分析して、そこからセグメントしていくことが大切です。そうすると、自分たちのお客さんが、どんな人たちであるか具体的になり、この人たちに合った広告を出したいなって考えることができます。

枠自体もオーディエンスデータで評価されるようになるでしょう。しかも、その評価はクライアントごとに異なります。

ヤフーのブランドパネルは、A社のお客さんはたくさんいるけれど、B社のお客さんはあまりいないといった評価も出きるでしょう。アトリビューションも、単純に枠を評価するのではなく、クライアントにとって欲しいオーディエンスがいる枠なのかどうかを評価することになると考えています。

有園:そうした話は、まだ誰もしていないので、ぜひお聞きしたいです。

「メディアプランニング」ではなく「オーディエンスプランニング」

横山:いままで、私が何をやってきたかと言うとメディアレップというビジネスモデルです。2万から3万もの広告メニューをデータベース化してきました。

そのなかには一度も買われたことがない広告メニューもかなりあったでしょう。メディア本部のメンバーが媒体社と相談しながら広告メニュー枠をアップデートして、営業本部のメンバーがPDCAを回しながら提案してきました。

枠を導入してみないと結果は分からないので、CPAなどを基準に枠を評価し、比較的良くない枠は排除、新たな枠をもとめてトライすることの繰り返しでした。

PDCAを回すなかで「同じ広告枠なので、オーディエンスも毎回同じなのでしょうか?」と聞かれると「そうとは限らない」という答えになります。

いつ、どんなタイミングで広告を打ったかによって効果は変わり、実は枠という概念でひとくくりにできないんです。だから「そのPDCAは現実に合っているのか?」という疑問が生まれました。

オーディエンスデータを使って広告をプランニングしたほうが良いことは、概念としては分かっていても、実行するのは大変です。そもそも、ブランドのユーザーを深く理解して、ユーザーのプロフィールが頭に入っていないとできません。「日々、そういう作業をしているのか?」と聞かれると、できている人は少ないでしょう。

そもそも、メディアレップの人間だとクライアントと直接インターフェースしているケースが少なく、ユーザーのプロフィールを共有できていなかったり。クライアント自身も、自社のブランドのオーディエンスはどんな人で、その人たちに何を当てたらいいのか具体的に把握できているケースは少ないでしょう。

有園:検証できていないケースはとても多いですね。

横山:自社のブランドを知りつくし、正しくセグメントをかけてターゲティングできる担当者は、なかなかいないと聞きます。

「このブランドには、この枠が合う」という判断には慣れていても、フェイスブック広告のターゲティングの仕組みを理解して取り入れられるような人は少ないみたいですね。広告を配信する対象ユーザーそのものをセグメントするということですね。

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DMPって何?

有園:そこでお聞きしたいのですが、そもそもDMPって何でしょうか?しっかり理解できていない人は多いと思います。

横山:DMPとは、データ・マネージメント・プラットフォームのことで、2種類あります。

1つめが、データを売る、オーディエンスデータセラーとしてのDMP。2つめが、広告主が自らデータを格納し、分析して施策につなげていくプライベートDMPです。

重要なのは後者のプライベートDMPですね。ビッグデータ時代は、プライベートDMPの構築がマーケティングの主流になると思います。

アメリカにブルーカイ(BlueKai)という会社があります。ここは、インターネット利用者の情報を収集して、クッキーなどのオーディエンスデータを販売している会社です。

アメリカと欧州では個人データへの考え方が異なります。アメリカはビジネス主導なので産業がおこりやすく、インターネット利用者情報の売買も盛んですが、欧州は慎重です。

有園:アメリカとヨーロッパの個人情報に対する考え方や文化みたいなものに違いがあります。

横山:かなり昔に、アメリカの大手インターネット広告会社であったダブルクリック(DoubleClick)(グーグルが買収)がアバカス(Abacus)というリスト会社を買収したことがありました。

ダブルクリックはクッキーでサイト訪問者を追跡していたので、アバカスが収集したリストの中にある通販カタログサイト訪問者のクレジットカード利用履歴から氏名や住所を把握してダイレクトメールを送ろうとしました。その計画を知った当時のアメリカの消費者団体がプライバシー侵害だと猛反対した結果、計画は中止となりました。

そのような出来事がありましたが、いまではビジネスとして成立しています。誰に広告を配信したら良いのか考えたとき、個人のプロフィールを活用するビジネスモデルが、ここ3年くらいで隆盛しています。ブルーカイといった会社の誕生も後押ししています。

日本では、サードパーティのオーディエンスデータを広告配信に活用するくらいは実現できています。でも、アメリカはもっと先を進んでいます。ただ、日本円で100億円くらいの市場なので、今後、劇的に大きくなる市場でもなく、アメリカではブームが落ち着き始めた印象を受けます。

そこで、新たに出てきたのがプライベートDMPという考え方です。クライアントが自らデータを格納して分析し、広告主企業独自のDMPを構築しています。自社のウェブサイトに訪れたユーザーのファーストパーティクッキーを格納し、サードバーティクッキーとシンクロさせて分析するケースも増えています。

ダイレクトマーケティングをやっていれば、CRMデータもそこにマージしたり、配信した広告の対象となったクッキーやリアルの広告やPOSデータなども取り込めます。

アメリカでは、どのデータを、どのように使うかは考えず、まずはデータを取り込んでおいて、何をするかはあとで考えよう、といった感じで動いている企業が多いです。

アメリカ人の発想はざっくりしているので、これもアリでしょうね。日本人の発想とは少し違いますが、アメリカらしいコンセプトのマーケティングツールが次から次へと誕生しています。

日本は、プライバシーの話題が精緻化されていないので、みんな、おっかなビックリしながら始めています。アメリカは、一気にガーッと始めて広がっています。欧州は、かなりシビアです。

そんななか、今後日本はどうなるかと言うと、お国や役所がすべてを決められることでもないので、スタンスが不明確です。DMPでとれるデータは逆引きしても個人を特定できる情報ではありませんが、世の中を納得させられる状態にはなっていません。

日本の場合、企業の中にファーストパーティクッキーを格納できることを、どう考えるかが問題になると思います。

「ファーストパーティクッキー」と「サードパーティクッキーと」とは?

有園:「ファーストパーティクッキー」と「サードパーティクッキーと」いう言葉があります。

広告主のウェブサイトを訪れた人に付与するクッキーをファーストパーティクッキーと呼び、媒体など自社以外のウェブサイトを訪問したときに付与されたクッキーは、自社のものではないのでサードパーティクッキーと呼ぶ。そのような理解でよろしいですか?

横山:はい。

有園:自社ウェブサイトを訪れたときに付与されたクッキー、つまりファーストパーティクッキーに、CRMや顧客DB、メルマガDBなどを連結する動きは、実際におこっているのでしょうか?

横山:おこっています。サードパーティクッキーの販売には、日本市場は神経過敏ですが、切り離して考えなければならないことがあります。それは、ユーザーがウェブサイトを訪問したからには、その企業のことやサービスについて知りたいと思っているし、企業もユーザの期待に応えられるよう情報を提供しなければならないということです。

上手にコミュニケーションを図っていかなければならない。ミスマッチを防ぐためにクッキーを利用するんです。

それと、一方的に広告を見せられるために自分の情報が売られていることとは、目的が違うので分けて考えなければなりません。だから、日本ではプライベートDMPの方が受け入れられやすいと思います。

ビックデータを取り扱い、ユーザーをきめ細かくセグメントしても、そのユーザと興味関心を一対一で紐づけることは難しいでしょう。ただ、このユーザーにはどのタイミングで何をすると効果的だといったタイミングのマーケティングなどは、ビックデータを使うことによって可能になります。

自動車や保険、住宅は購入までの検討期間が長いので、人に紐づくターゲティングは合うと思います。一方、消費財などは、人を突き詰めても効果がないかもしれません。100万人の行動を見ると特定の傾向が見え、その情報をもとにコミュニケーションを図っていくとうまくいく商材には使えますね。

有園:夕方、食べログを見ている人にはウコンの広告を出すと良いですね(笑)

横山:夜から飲みに行く可能性が高いからね。それは私たちが連想できる範囲だけど、ビックデータを使うと人間の頭脳では絶対に連想できない相関が分かるようになります。それがビックデータへの期待ですね。

プライベートDMPの日本での広がり

有園:DMPデータをマーケティングに取り込んだり、プライベートDMPを構築したりする際、企業には何が必要ですか?

横山:変革ですね。従来の組織体制ではできないので変革が必要です。DMPは新しい取り組みなので、最初は、情報システム部門から数名、マーケティング部門から数名、広報部門から数名、商品開発部門から数名といったように、主要な部署から人材を集め実験的に取り組むことになるでしょう。

DSPを使うかどうかは担当者が判断できても、企業がプライベートDMPを構築するかどうかは経営判断になります。

有園:プライベートDMPを作るのって大変だと思いますが、日本でも広がっているんでしょうか?

横山:少しずつ増えていくと思います。この話をすると必ず、組織論や人材育成論などにつながります。座学の研修で知識を身につけてマインドセットした先で、一定の知見以上のものを共有することになると、組織を変える必要がでてきます。社内でプライベートDMP構築に向けて盛り上げるために何かしないとダメです。

デジタルマーケティングへのシフトを強化している企業は多く、もっとドライブさせようという気持ちは高まっています。マグマが吹き出しそうになっています。熱意のある現場が経営陣を動かしているムーブメントを感じます。

有園:熱いですね。

横山:DMPをやるには、組織間をまたぎ、各部署の連携が必要不可欠です。ですから逆に組織がガガッと変わるいいチャンスだと思います。

アメリカのCMOのような人材は日本の企業にはいません。CMOに5つの機能があるなら、複数人でCMOの5つの機能を果たせばよいんです。日本に合った形で広まっていくと思いますよ。

有園:横山さんが開催しているDMP勉強会では、どのようなことをやっているんですか?

横山:日本におけるDMPの仕組みやデータの取り扱いについて、導入を検討している企業へ説明する場です。DMPという装置、器をゼロから作るとお金がかかるので、多くの企業はどこかのデータ格納装置を利用することになります。

どこのテクノロジーやサービスを使うのが良いかを含め、DMPの構造や実際に動かしたときに想定される問題などを勉強しています。

コンバージョンが4倍に!

有園:私も住宅情報系のクライアントから、プライベートDMP構築の相談を受けました。すでに近いことはやっているんです。

自社サイトにきたクッキーの情報をためて会員IDをつけ、CRM側のIDと紐づけています。メールアドレスや過去のコンバージョン履歴、最近いつコンバージョンしたか、この一週間で3回コンバージョンしているといった情報と紐づけ、メールを送る際にセグメントして使っています。

いままではほぼ一斉配信していたけれど、いまは蓄積したデータをセグメントしてメールを送り分けています。ウェブサイト内で何度も検索しているけれど、まだコンバージョンしていない人といったように自社サイト内での行動履歴を元にして詳細にセグメント化して、その人たちの背中を押すようなピンポイントのメッセージを書いたメール原稿を100パターンくらい用意しています。

ウェブサイトもクッキー別に、メッセージを一部枠で出しわけています。たとえば、前回のサイト来訪時に渋谷の賃貸物件を探していた人(クッキー)には、次の来訪時には、渋谷の賃貸物件の情報を優先的に表示します。あと、DSPとつないでバナーの買い付けにも活かしています。

メールを送ったけれど開封していない人には、次はバナーを配信して追いかけるといったことをやっています。クライアントはコンシェルジュと呼んでいて、ユーザーのステージごと、セグメントごとに最適なコミュニケーションが実現できています。

サイトに訪れたユーザー(お客様)に適切なコミュニケーションをしておもてなしをすることで顧客満足度が高まって、クライアントの売上も上がっていく。コンシェルジュサービスをウェブ上で実現させようというコンセプトです。

びっくりしたのは、設定した目標値の4倍のコンバージョンがとれているセグメントがあるんです。100パターンのうち20パターンは実際に動き始めていて、かなり良い効果がでています。セグメントは簡単に1万通りなど作成できます。

理想的には、すべてのセグメントごとに異なるコミュニケーションシナリオを、オウンドメディア、メールマーケティング、バナー広告、リスティング広告などを連携、横断する形で作成し、出し分けていきます。

ただ、人間の作業の限界で、1万通りのセグメントがあっても、すべてのコミュニケーションシナリオを作って実施に移すのが困難なので、実験的に100パターンを作り実施に移しています。

従来、セグメント別のコミュニケーションは人間の頭の中で考えていましたが、ビックデータを解析する中で新しいシナリオを発掘することが増えるのではないかと考えています。

横山:最初はルールベースで考えて検証しないとダメですね。

有園:この取り組みは、とても大変でした。私はコンサルタントとして入っているので大枠を描けばよいのですが、実行する現場の方は大変だったと思います。でも、結果的に4倍のコンバージョンがあったので「やって良かったね」ということになりました。

実は、現場でも「セグメントを分けたからといって結果は変わらないのでは?と」いった反対勢力もいましたが、そうした人たちも納得せざるを得ない結果が出ました。

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DMPが成功する企業の特徴

横山:新しい概念のスキルセットが必要ですね。データサイエンティストという言葉もよく聞きます。企業内に最低でも1人は、データをマイニングしたりセグメントしたり、当たるセグメンテーションのできる人が必要ですね。テクノロジーをオペレーションするだけでなく、コミュニケーション全体のディレクションが出来る人も必要です。

有園:マッピングというか、全体のセグメントルールを最初に考えて決めておくと、そのあとが楽です。

さきほどのクライアントとの取り組みでも、自社のお客さんを大きく8つのステージにわけて、サイト内での行動履歴やどういう検索キーワードを使っているのかなどをもとに、マッピングするのに時間がかかりました。でも、最初に指針を作っておくと、その後の施策がぶれません。

ビックデータをマイニングしていくのも、その後に誰かが絵を描いて、誰かが絵の検証をする形でPDCAを回していく形になると思います。すべてをコンピューターが自動化してくれる時代はおそらく来ないでしょうから、やはり、人間の手がやらなければならない部分は多いです。

クライアントとも、今回の取り組みはプライベートDMP構築の一歩になったと話しています。

横山:プライベートDMPの構築方法は、企業のブランドや商品カテゴリーによって異なります。構築することによって何が解決できるかはやってみないと分かりません。

でも、何が解決できるかを立証しないことには経営陣も判断できません。ですから、まずは世の中にあるツールやテクノロジーを活用して、やってみてほしいですね。

有園:私のクライアントのケースが成功した理由は、社内にエンジニアがたくさんいて、企業規模も大きすぎず小さすぎず、インターネットへの取り組みが積極的だったことが大きいと思います。チームを作って取り組みやすい環境でした。

横山:日本の場合、いわゆるIT投資が業務管理に集中しています。基幹システム、業務管理システムを運用している情報システム部門は守りの部門です。守りの仕事をしている人たちはマーケティングのような攻めの思考ではない。

一方、マーケティングの人たちはテクノロジーに弱い。営業とマーケティングから情報システム部門に移る人は滅多にいないですね。最近うまくいっているのは、情報システム系からマーケティングや広報部門へ移ったケースですね。

ITリテラシーがないとマーケターは成立しない時代にきています。大会社になると、情報システム系の人はITリテラシーが高いけれどマーケターやブランド担当者が何を考えているのか分からず、マーケターやブランド担当者はITリテラシーに弱いというジレンマがあります。

広告代理店の役割

有園:広告代理店と広告主の会話もかみ合わなくなっていると思います。広告代理店はメディアプランニングをするけれど、広告主は「こういうターゲットオーディエンスにリーチしたいがどうすればいいか?」と質問する。質問と答えがかみ合わないように思います。

広告主は必ずしもメディアを買いたい訳ではないですよ。どういうオーディエンスセグメントがいる媒体かが大事で、クライアントのターゲットにマッチしているかです。広告代理店も、これまでのままではだめですよね。

横山:欧米ではすでに手を打っていますね。大きな広告主は、広告データを自社で蓄積し、競合しない企業同士でデータの交換もしています。許諾の問題はありますが、一社でやっているよりは大きな枠組みの中で取り組んだほうがよいです。

そこで問題となるのが、それを誰が束ねるかです。

有園:広告主同士がエクスチェンジするのは想像しづらいですね。誰かが仲介するのではないでしょうか?

横山:ヤフーとCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社)は提供業者だけど、競合しない企業同士がエクスチェンジしています。

有園:あ、そうか。ヤフーIDとTカードの関係ですね。

横山:広告代理店が間に入る必要性はなくなっています。

有園:大手広告代理店はDMPを持たなければならなくなっているのでしょうか?「メディアプランニングではなくてオーディエンスプランニングができないと困る」とクライアントに言われる時代がきています。

横山:持っていないよりは、持っていたほうが良いでしょうね。ただし、クライアントが個々のDMPでセグメントできるようになると、そこに広告代理店が働きかけられるかというとかなり難しいです。

広告代理店が、広告の配信先のタイミングやクッキーを提案して優位性を保てるのは中小の広告主に対してだけでしょう。

有園:プライベートDMPは企業ごとにカスタマイズしていく必要があるゆえ、広告代理店が個別に対応するのは難しくなりますね。

横山:広告代理店がDMPを作って、その投資が回収できるかは疑問です。

有園:広告代理店はメディアプランニングのままではダメなら、次にどうしたらいいのでしょうか?

横山:DMPが分からないとついていけなくなるので相当学習しないとダメですね。

企業はプライベートDMPが高機能化していくと自社で完結できるようになります。企業は、発注先の広告代理店にデータがたまるよりは、データも自社に蓄積できるものを使いたくなるのは当然です。結果、広告代理店の価値は低くなるでしょう。

有園:業界に革命がおこりますね。

インハウス化の勢いが止まらない

横山:電通が2013年2月21日に発表した「2012 年(平成 24 年)日本の広告費」でも、インターネット広告媒体費の小分類が変更され、検索連動広告を含む広告配信の新手法を包含する「運用型広告」というものが新たに設定されました。

手売り型と枠ものを分けて考えるようになった、つまり違う仕組みとして切り分けられたわけです。インターネット広告費8,680億円のうち、運用型広告費は3,391億円です。

いままでは、枠ものだったから広告代理店が間に入っていたものも、企業によってはインハウス化して自社でやるようになりました。仕組みが変わり始めています。

有園:私がグーグルに在籍していた頃の話ですが、アドワーズ広告の売り上げの半分は広告代理店が介在していませんでした。いまも大きく変わっていないでしょう。

横山:大手広告主も自社で管理したほうが良いという考えが強いです。

ブランドごとに代理店に任せると、同じ会社で競争入札がおこることがあってナンセンス。ブランド横断管理が必要になっています。全部任せられるハウスエージェンシーがあればいいけれど、ブランドごとに競合コンペにかけて采配を振るモデルだと横串したければインハウス化しかないということになります。世の中が変わっていきそうです。

でも、人材や能力が余っているわけではない。そこでオススメしているのは、一回は自分でやることです。そうすると運用の勘所が分かって外注のディレクションがしやすくなります。

インハウス運用も全部自社でやるか、ディレクションは自社でやってオペレーションは任せるという方法もあります。オペレーションだけお願いするケースは増えていきそうです。

そのような状況下で、広告代理店がどのような価値を生み、アピールしていくかは注目ですね。オペレーションだけ受けるのは苦しいでしょう。

有園:プライベートDMPをつかってセグメントを細かくやるのは広告主でもやれると思います。でも、そのセグメントに対して、どういうシナリオで、どういうコミュニケーションをあてていくかは広告代理店が得意であるべきですね。

横山:そうなんだけど、そういう訓練をどこで積むかですね。いまの広告代理店の中で、そのような訓練ができる会社はなさそうです。

オーディエンスアトリビューションが必要

有園:最後にアトリビューションの話を伺います。こういう動きがあるので、オーディエンスという切り口でのアトリビューションが必要になると感じています。

横山さんのブログ「業界人間ベム」でも2013年は「オーディエンスデータプランニングが試行される年」になると書かれているとおり「枠から人へ」大きなパラダイムシフトがおこなわれると思います。

オーディエンスプランニングはメディアプランニングと対峙する考えです。アトリビューションは流行っていますが、基本はメディアのアトリビューションをしています。メディアアトリビューションとオーディエンスアトリビューションの両輪で走ることが大事なフェーズになるのではないかと考えています。

横山:オーディエンスをセグメントして、どう価値をつけるかがポイントです。キーワードごとにCPCを設定しているように、オーディエンスごとに使う予算を決めるイメージです。

有園:ヤフーのブランドパネルは効果がなかったよね。没。ではなくて、Aというセグメントではペイしなかったけれど、Bというセグメントではペイできたから、Bは買い付けの金額を高くするといった検証が必要になってくるでしょう。私のクライアントは、そのことに気付いていて動き始めています。

横山:セグメンテーションと実行から管理までをつなぐ具体的なソリューションイメージができると、あとは実行するのみですね。

オフラインのアトリビューション動向

有園:オフラインのアトリビューションは、いまどのような流れがありますか?

横山:企業の関心は高いです。とくに、リアルなチャネルでビジネスをしている企業の関心が高いです。

リアルなチャネルからソーシャルやオウンドメディアのゴール、たとえば物が売れるとか送客できているといったゴールへのつながりがあって、そこに一定の価値を見出して強化を考えている企業も多いです。

昔だったら何億円もかかるようなツールでなければ分析できなかったことが、一桁、二桁も安いコストでチャレンジできるようになりました。たくさん広告費をつかっている企業ほどコスト削減、効果増大を実感しています。

外食チェーンが天候などの変数で重回帰分析して食材の仕入れをしています。そこで培ったノウハウが広告費の最適化に活かされ始めています。

ベースライン、広告では説明のつかないラインを認識して、どこで刈り取りたいか、施策をどこで打つかといったタイミングを踏まえてキャンペーンを設計し実行できるようになりました。

その結果、経営のPL部分でも期待が高まります。

有園:オフラインのアトリビューションをすると、結果的にビジネスのアトリビューションをしていることになるんですね。スマートテレビの導入でテレビ視聴行動からオフラインのリアル店舗の購入の流れまでもが測定できる可能性がでてきますね。

横山:オンラインでテレビの視聴データまでとれるようになります。テレビを見て触発されることはとても多いです。どんな衝動が起きる兆候が何かをビッグデータから予測して広告をユーザーごとのタイミングでプッシュする。こうしたことが意図的に仕掛けられるようになるでしょう。次世代のタイミングのマーケティングです。

ビールの広告を金曜日の夕方に配信するのはマスのマーケティング。今後、個々消費者のタイミングが計算されて施策に反映される個々のマーケティングが増えるでしょう。5年以内に、適切なタイミングで広告が配信されるようになると思います。

有園:ますます面白くなりますね。引き続き、横山さんには業界のトップランナーとしてリードしていただければと思います。本日はありがとうございました。

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(END)

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【アトリくんの視点】インターネット広告を黎明期から見て作ってきた横山さんですから、歴史的な流れでDMPを語っていただき深みを感じます。社内データ資産をマーケティングに融合するIT機動力のある広告主がプライベートDMPの構築に先鞭をつけ始めていて、オーディエンス視点でのマーケティングが加速しようとしているのですね。アトリビューションで最適化する対象も枠から人へと変わっていくのももはや先の話ではないですね。今は広告主も代理店も媒体社も多くを学びつつ、それぞれ来るべき変化に対して準備を推進するフェーズでしょうか。大きく、かつ、とてもエキサイティングな業界の変化ですね!ありがとうございました。

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アトリビューション特別対談:Facebook、ソーシャル、アトリビューション – Kenshoo Sivan Metzger氏、治田耕太郎氏 ×アタラ杉原

特別対談です!今回は、Kenshoo SocialのGeneral Manager、Sivan MetzgerさんとAPAC地域Sales VPである治田耕太郎さんに、Kenshooが提供するプラットフォームやソーシャルを含めたアトリビューションマネジメントへの取り組みについてなどについて話し合いました。

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第1部:ソーシャルパート

Kenshoo Social, General Manager, Sivan Metzger氏(以下Sivan)
Kenshoo, APAC Sales, VP 治田耕太郎氏(以下Ko)
アタラ合同会社 代表取締役CEO 杉原剛(以下Go)

Ko:まずは米国でのFacebook広告の状況を説明してもらえますか?

Sivan:Facebook広告自体はとてもユニークな広告だといえます。個人的にはFacebookも含めたソーシャルの各企業は成長していますが、広告という観点からは企業のマーケティング担当者が学ぶべきこと、研究するべきことは非常に多いフェーズだといえると考えています。

例えば、検索連動型広告はとても成熟しているといえるでしょう、代理店やマーケターは検索連動型広告がどういう広告モデルで、どういう風に使えば良いのかを十分に理解していると思います。

しかしながら、Facebook広告は全くといっていいほど違います。誰がInfluencerでどのように自社の評価が広まっているのか、どのような広告を発することでその効果を大きくしていくか、というのはまだまだ明確ではありません。Facebook広告を検索連動型広告と同じようには扱えないといえるでしょう。

Ko:Facebook広告を使って成功させるカギはなんでしょう?

Sivan:まず、Facebook広告を含むソーシャルメディア上でのマーケティングを成功させるには緻密な戦略が必要です。

どのようなコンテンツを準備するか。そのコンテンツでどうやってユーザーを獲得、およびエンゲージするか。その結果できたコミュニティをどのように拡大していくのか。そして、どのようにそういったユーザーをターゲティングして、よりエンゲージメントの度合いを高めていくのか。そういったプランが必要です。

そうしたコンバージョンファネルの上部に影響を与える広告手法の戦略を作ることは非常に難しいですし、大変な作業になります。実際のところ、その戦略やプランの正当性を評価するのに長い時間がかかることもあります。

ですので、まず必要なこととしてはマーケティング担当者がその価値を理解するところが大事だと思います。「いいね!」の数やビデオコンテンツのダウンロード回数がその後どのようにマーケティングや売上に貢献しているのかが可視化出来る、ということを理解することが重要です。

Ko:なるほど、よくいわれることではありますが、日本のネット広告業界はアメリカの状況から2〜3年遅れているといわれています。今まで話されてきたような考え方はアメリカの代理店やマーケティング担当者の間では広く認識されているのでしょうか?

Sivan:まず、ソーシャルでもそれ以外でもいわれることですが、マーケティングの流れとして一対多(広告主から多数の消費者)に向けてのマーケティングからOne to Oneへの流れがあります。ですので、一人一人の消費者に対してどのように適切かつ正確な内容でマーケティングが実施できるのか、という点が、広告主にも、代理店にも、ブランド企業にも必要な視点だといえるでしょう。

Ko:そのような視点に立脚すると、もはや消費者にとっては広告と有益な情報との差というのは無くなってくるでしょうね

Sivan:その通りです。

Ko:ここで杉原さんにもお伺いします。日本において「ソーシャルマーケティング」ないしは「ソーシャルマーケター」という言葉がありますが、最適化やプランの立案において、今までの話のような一種の科学的、統計的なアプローチがなされているようには見えないのですが、いかがでしょう?

Go:確かにそれはあるでしょうね。ソーシャルの活用はFacebook pageやTwitterアカウントを作って運用することに集中していて、ソーシャル広告分野へは今ちょうど広がりを見せ始めようとしている現状です。ただ、現状の日本では、オウンドメディアもペイドメディアも管理が分離してるし、Paidの中でもそれぞれの広告手法において運用がサイロ化している現状があると思います。

そういう意味で包括的な運用にはまだなっていないといえるでしょうね。米国ではどうでしょうか?

Sivan:個人的な見解では、そこがFacebookの課題といえるでしょう。オウンドメディアとペイドメディアの担当者、広告手法においては分離しているのが現状だと思います。

実際の事例ですが、FacebookのPageを管理する企業と弊社で連携して、PageやTwitterで投稿された内容についてKenshooで測定をしました。そうなると、どのコンテンツがより消費者に対して効果的だったのかもわかりますし、結果としてその投稿がいくらの売上を生み出したのかもわかります。Revenue Per Postという指標で見ることも出来ますし、そういう概念が普及することでよりソーシャルのマーケティングとしての価値がわかってくるはずです。

そういった形で、マーケティング活動の可視化、厳密な価値の測定が可能になるということがKenshooの一つの価値でもありますし、ソーシャルにおいては重要な側面だと思います。

Ko:実際に私が以前こちらのインタビューでも話した内容ですが、ソーシャルのコンテンツは一回のコンバージョンで判断するのではなく、そのコンテンツがいかに消費者をMarketedしたのかという点が重要だとも思います。

CPAやLast Clickなどにこだわって短期間の投資効果を最適化することも重要だとは思います。しかし、Facebook広告を使いこなす、という意味ではその発想では難しいような気がします。
かといって数字的な裏付けがないままでソーシャルをマーケティングに組み込むのも難しいと思います。

ポイントになるのは、ともすると感性的になりがちなコンテンツ作成と数学的な矮小化に陥りがちな測定や最適化をいかに融合していくのか、という点だと思います。
なかなかこの部分は実現が難しいところだとは思うのですが、Kenshooを使ってもらうことで、少なくとも両者の相乗効果が可視化出来るというところから次のステップに進んでいきたいと思います。

Go:2007年頃に米国を中心にアトリビューションという概念が広がり始め、その頃にちょうどソーシャルの広告も話題に上がるようになりました。当時はFacebookのコンバージョンタグのベータ版も公開されたりしてましたが、あくまでFacebook広告の成果のみを測定する物でした。最近はFacebook側のスタンスも変わってきてFacebookと他の施策のデータを一元的に管理して見える化できるようになってきましたね。

Sivan:アタラさんのようにマルチチャンネルでのアトリビューションを実施している会社さんには、そこは重要な点ですね。Facebook広告もメディアミックスの中での一つのコンポーネントに過ぎません。

実際の事例ですが、アパレルの通販サイトで非常に興味深い事例があります。その広告主さんの場合、販売している商品のメーカー、例えばNikeやAdidasに既に十分大きなブランド力があります。ですので、彼らはソーシャルにおいて、自分のサイトで商品を購入することの優位点、素晴らしさを消費者にアピールしたわけです。
つまり、広告の目的がブランディング、自社のサイトで購入することが良いことだ、という認知獲得でもありますし、その結果としてのコンバージョンでもあるわけです。

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第2部:アトリビューションパート

それではソーシャルの話もまだまだ聴きたいところではありますが、アトリビューションの話に移りましょう。

Sivan:現状では残念ながら8割以上のマーケティング担当者がラストクリックモデルを採用しています。あまり楽しい状況ではないですね。実際には、アトリビューションモデルの方がより多くのコンバージョンを獲得できる可能性があるという事実もあります。是非、多くのマーケターの方にアトリビューション分析に乗り出してほしいと思っています。

日本がアメリカの2~3年遅れであれば、もうちょっと時間はかかるかもしれませんね。
ただ、Kenshooはテクノロジープロバイダーとして次のステップを見据えています。今までのようにレポートで分析して適切なアトリビューションのモデルを選択する、という物ではなく、動的にアトリビューションのモデルを現状のキャンペーンに適用してしまう、という物です。

もちろんマーケターの方が自らの判断でアトリビューションのモデリングを選択することも可能ですが、それらを自動化していくということも出来るようになりました。

Ko:正式名称はKenshoo SmartPathという名前で提供しています。動的にアトリビューションのモデリングまで自動化するのは、おそらくKenshooが初めてだとは思います。だからこそ、マーケターの方のセンス、特にキャンペーンの構成やランディングページの選定など、システムで自動化できない部分が重要になると思っています。

Sivan:自動操縦機能があったとしても運転するのは人間ですからね。実際に、この機能を活用することで効果が劇的に改善したクライアントもいます。

我々のプラットフォームはアトリビューションなどに積極的に取り組んでいる大手の広告主さんに採用されていますが、そういった広告主の方々と次のステップに引き上げる物だと自負しています。

Kenshooでは開発を行うチーム、これは実際にコードを書くチームになりますが、そのチームに加えてリサーチチームがイスラエルにあります。そのチームでは博士号を持った人間がそろってポートフォリオ入札のアルゴリズムの開発・改善に取り組んでいますし、そういったチームの力があって、次々に機能が開発・改善されるのは本当にエキサイティングなことです。

Ko:実際にアトリビューションを実施する上での課題はどの辺りにあるのでしょうか?

Sivan:実際に代理店さんがSEMとソーシャルでのアトリビューションを実施しようと思うと、まずはコンバージョンファネルを見ることが大事だといえるでしょう。ただ、現状ではファネルというよりもコンバージョンプレッツェルといった方が正しいのかもしれませんが。(参考:プレッツェルとは

アトリビューションを実施する以前に、それぞれの広告がどのような効果、役割を担っていたかを可視化することが重要になります。Kenshoo Enterpriseに搭載されているPath2Conversionというレポートを見れば、それまで全く何の貢献もしていないと思われていたFacebook広告がコンバージョンファネルの上位、真ん中、下部のそれぞれに存在しているという事実をみることが出来るでしょう。

その結果、8割のコンバージョンにFacebookが何かしら含まれているとしたら、それはアトリビューションに取り組むには十分な状況だといえると思います。

Ko:また、どうしてもSEMは効果が高いため、現状のパフォーマンスを維持することに流れがちになります。ともすると保守的になりがち、といっても良いと思います。ですので、ソーシャルなど比較的まだ広告予算が少ない分野だからこそ積極的に新しい分野にチャレンジしてほしいと思うこともありますね。

また、運用型広告のオペレーション部分と分析・コンサルティングが分かれているが故に、アトリビューションへの取り組みに億劫になる部分もあると思っています。アトリビューションのような高度な分析が必要な運用手法は、運用チームにもそれなりの運用負荷がかかってしまうという点です。ですので、統合されたプラットフォームで一元管理する必要性があると考えています。

Go:そうなると、統合的に全てをみるプランナーが指揮をするのか、それとも個別のチームでそれぞれ動くのかという点がポイントになりますね。

Sivan:その通りですね。プロジェクトオーナーが引っ張っていくことは必要です。その点は米国でもまだまだ各社が格闘している部分だといえます。ソーシャルだけとってもオウンドとペイドではどうしても部署間の垣根のような物が出来てしまいます。

Go:なるほど。そこでKenshooは、そういったオウンドとペイドで分かれてしまいがちなマーケティングを統合していく、というところが価値になる訳ですね。

Sivan:もちろんオウンドとペイド(Facebook広告)だけではなく、SEMやFBXなども含まれます。

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ライト・インハウスとヘビー・インハウス

Ko:逆に二人に聴きたいのですが、このまま統合的なマーケティングが進展すると、CRMなど外部に出しにくいデータを持っている広告主自身が広告を管理するIn-House化が進むのではないかと思うのですが、どう思われますか?

Sivan:日本においては実際のところ代理店さんの手助け無しでそういったことが出来るとは思えませんね。代理店さんと広告主さんの間でNDAが結ばれてデータの共有化が進んでいく、と思っています。

Go:そうですね。特に大きな広告主さんにおいてはそれぞれのチャネルやメディアにおいて異なる代理店さんにお願いをする形は非常に多いです。

実際には、それはアトリビューションマネジメントを実践する際には必ずしもやりやすい形ではないのですが、広告主さん自身でデータを見て、分析し、意思決定をされ、それらに基づいて代理店さんと恊働していく、という流れになるのかもしれません。

そういう点から見て、ライト・インハウスとヘビー・インハウスの二つのトレンドが出来ると思っています。
ヘビー・インハウス化は広告主さん自身が全てを自社内のリソースで賄う、という形です。ライト・インハウスとは広告主さんがデータを見て、自社で意思決定をして、そして代理店さんと協働していくという流れです。

Sivan:ライト・インハウスとヘビー・インハウスという分類は良いですね。その言葉をアメリカでも使っても良いですか?

Go:もちろん、ぜひ使ってみてください(笑)。

まとめ

Ko:今までの話のまとめになってしまいますが、元々ネット広告は媒体側が「この広告は高いROIが期待できますよ」とか「ブランディングに効果がありますよ」ということを言っていた訳ですが、特にアトリビューションやソーシャルを語る上では、実際に価値を測定して、その価値を分析するということがとても重要だと言えます。

Sivan:Kenshoo Socialを使ってもらうことで、細かいセグメントに対して広告を配信することも出来、そのプロセスの中で生産性向上や効果も改善も期待できます。そして広告を掲載することで、この広告がどのように作用したのか、どういう役割を演じたのか、といったことがわかってくるはずです。

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Kenshoo Socialの画面

Ko:そういう意味ではKenshooの姿勢というのはアタラさんに近いのかもしれません。アトリビューションマネジメントを実施する上ではそういう考え方は必要なことですから。

Sivan:FacebookにはAPIを利用している企業に対してPMD(Preferred Marketing Developer)という認定プログラムがあるのですが、そこに認定されている300社の中で12社がSPMD(Strategic Preferred Marketing Developer)というかたちでさらに選定され、そこに弊社が選ばれています。
我々はFacebookの広告の価値を証明するという意味でも一緒に動いています。

そこで、Facebookの人に一度「2013年のプライオリティは何なのか?」と聞いたところ「日本とブラジルだ」と即答されました。それだけ日本においてはFacebook広告の伸びしろがある、ということですし、我々も日本語対応のKenshoo Social2.0をリリースしました。日本で活動する唯一のSPMDとして日本の代理店や広告主として皆様と一緒にビジネスを大きくしていきたいと思っています。

Go:本日はありがとうございました。

聞き役: 杉原 剛(Go Sugihara)

Kenshoo
http://www.kenshoo.com/japan/

Google+

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【アトリくんの視点】Facebook広告なども含め、測定環境を一元化し、データを統一できるのが統合プラットフォームの価値の一つですね。動的にアトリビューションマネジメントを実施できるのもとても興味深いと思いました。アトリビューションの評価サイクルがスピードアップしていくか注目です。Sivanさん、治田さん、貴重なお話をありがとうございました!

コメント

【特別版】Attribution.jp 2012年を振り返る!

本年も、Attribution.jp を御愛顧いただきありがとうございました。
今回の記事は年末特別版として、2012年に Attribution.jp でご紹介した多くの記事をランキング形式で振り返りながら、2012年という激動の年を振り返っていきたいと思います。




まずは人気企画である「アトリビューション特別対談」のランキングです!

第1位 株式会社リクルート小川卓 ×アタラCOO有園雄一

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第2位 MediaMind Technologies株式会社布施一樹・渡邉桂子×アタラCOO有園雄一(1/2)

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第3位 株式会社イプロス友澤大輔 × アタラCOO有園雄一

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第4位 株式会社朝日広告社酒井克明 ×アタラCOO有園雄一

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第5位 株式会社クロスリスティング治田耕太郎、岡野敬太、石橋由美子×アタラ有園

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その他、多くの方々との対談企画がありました!(対談記事をまとめて読まれる方はこちらから)
どれも業界のトップランナー・キーパーソンとの対談です、お忙しいなかご協力ありがとうございました!来年度の対談企画も進行中ですので、ご期待ください。




続いては様々な企業様からアトリビューションに関する記事を寄稿いただく「特別寄稿」のランキングです。
※2011年に寄稿頂いたものも含め、2012年を通して人気を博していた記事をご紹介致します。


第1位 国産DSP「FreakOut!」が Google Analytics と連携

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第2位 ad:tech San Franciscoから~米国アトリビューション最新事情(クロスリスティング)

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第3位 第三者配信で活きるアトリビューションマネジメント – 最適化手法にみるエージェンシーの本質的価値とは(朝日広告社)

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第4位 朝日広告社のアトリビューション評価テスト結果報告

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第5位 電通レイザーフィッシュのアトリビューションの取り組み(1)

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Attribution.jp は大変多くの方々のご協力によりアトリビューションの基礎から最新の情報、現場の生の事例をお届けすることができました。ご協力いただきました皆様には心よりお礼申し上げます。

Attribution.jp では対談・寄稿等にご協力いただける方をいつでも募集しております!
・貴社のアトリビューションの取り組みに関する寄稿
・アトリビューション分析事例のご紹介
・アトリビューションに関連するソリューションご紹介
・弊社有園とのアトリビューション特別対談
上記のいずれかにご協力いただける方はattribution[at]atara.co.jpまでご連絡お願いいたします。




最後に、ニュース記事やコラムのランキングです!

第1位 テレビのアトリビューション

第2位 Google商品リスト広告(PLA)でなぜアトリビューションが重要な位置を占めるのか

第3位 <速報>Yahoo! JAPANとMediaMindが第三者配信で提携

第4位 【イベント報告】MediaMind Insight概要レポート

第5位 朝日広告社、統合型マーケティングダッシュボード 「Attribution Dashboard」をリリース

振り返ってみると様々な記事がありました。また今年は ad:tech tokyo 2012 でも新たに「アトリビューション・マネジメント」をテーマにしたセッションが組まれ、公式カンファレンス人気&満足度セッションランキングでも第5位に入っています!(セッションのレポートはこちらでご覧いただけます。)

いかがだったでしょうか、ランキングにしてみると読者の皆様がどのようなジャンルに興味を持たれているのか少しだけ垣間見ることができ、大変勉強になりました。改めましてご協力いただきました皆様、ご覧いただいてる皆様、本当にありがとうございました。来年度もどうぞよろしくお願いいたします。

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【アトリくんの感想】2012年は、アトリビューションが揺籃期から発展期に入ったと確信できた年でした。多くの方に興味をもっていただけただけでなく、実践につながってきた1年だったと思います。
2013年、Attribution.jp はアトリビューションの今を、より分かりやすく、理解を深めていただけるよう、より一層充実のコンテンツでお届けしてまいります!今後ともよろしくお願いします!
それでは、よいお年をお迎えください〜!

コメント

アトリビューション特別対談:Adobe, Mikel Chertudi, Scott Harris × アタラ有園雄一

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特別対談です!今回は、初の海外の方との対談です。Adobeはアトリビューション分野においてもソリューションプロバイダーですが、今回のお二人はAdobeの中でアトリビューションを実践している立場の方々です。しかも経験も長いので、多岐に渡るトピックにおいて貴重なお話を伺えました。(英語での対談内容を日本語訳しています)

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【主な内容】
・ アトリビューションの課題は、その複雑性である
・ アメリカの広告主のうち、アトリビューションを導入しているのは何パーセントぐらいか?
・ もっとも高いレベルでアトリビューションを行っている広告主は1%以下
・ アトリビューションをきちんとやらないとマーケターは首になるかもしれない
・ 全体的、統合的なソリューションをオフライン、オンラインに渡って提供できるのは現時点ではMarket Shareという企業だけ
・ 広告弾力性以外に、価格弾力性もみている
・ アメリカのアトリビューションベンダーは日本に進出してくるか?
・ 企業内部の政治情勢が最適な予算配分の障壁になることはないか?
・ 日本の広告主へのアドバイス。まず、始めてみること。

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Adobeに聞くアトリビューションの可能性

有園:今日は非常に特別なセッションです。アメリカから来日中のAdobeのマイケル チャトゥーディ(Mikel Chertudi, Senior Director, Marketing, W.W.Media, Demand, & Enterprise)さんとスコット ハリス(Scott Harris, Director – Demand Marketing)さんのお二方と対談させていただけることになりました。Attribution.jpのために、このような取材が出来ること大嬉しく思います。それではお二人にいろいろとお伺いしていきます。まずは、ご自身の経歴や会社における役割、特にアトリビューションに関する部分のお話をお願いできますか?

マイケル: マイケル チャトゥーディと申します。お会いできて光栄です。デジタルマーケティングの領域で13年近く仕事をしています。13年に渡って、さまざまな役割を担ってきました。デジタルマーケティングに関する役割です。アドサービング、Eメールマーケティング、ディスプレイ、サーチエンジンマーケティング、アフィリエイトなど様々ですが、共通して言えるのは、会社の売り上げ増加のために効率と効果を追求してきたことです。そこで、まさにアトリビューションの話がはまるわけです。アトリビューションのもっともシンプルな形というのは因果関係を分析するということですから、マーケティングの活動のスタートから、最後の利益の部分まで見るということが本質です。今は、シニアディレクターという肩書きでデジタルメディア&デジタルマーケティング全般をみています。つまり、全てのメディア広告を担当しています。有料メディア全てです。例えば、PRメディア、プリント、テレビ、ディスプレイ広告、ウェブサイト、まぁ全部です。これら全てを担当している訳ですが、どれもアトリビューションに注意を払わなければいけない分野ばかりです。それでは、スコットに代わります。

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スコット:スコット ハリスです。デジタルマーケティングの経験は10年くらいです。マーケティングやその他の領域でも仕事をしてきました。アドビでの経験は4年半、マイケルと一緒に仕事をしています。エンタープライズ、企業のビジネスtoビジネスにおいてもアトリビューションは非常に重要です。私たちがやっていること、やろうとしていること、マネージしようとしていることは、マーケッターに対して関連性が高いコンテンツをオンラインで提供するということです。だから、それをやるにあたって、今まさに何が起きているのか、それぞれの領域の中で、ペイドサーチもそう、SEOもそう、データベースマーケティングも含め、全てにおいて細かく現象を理解することが必要です。現象というのは、どこにお金が払われて、どこからビジネスがやってくるのかということです。これは非常に楽しい領域であると思います。デジタルマーケティングのために、デジタルマーケティングの人のために仕事をして、デジタルマーケティングのトラッキングをしているわけですから、非常に興味深い仕事だと思っています。

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アトリビューションの課題

有園:お二人ともこの領域で10年以上仕事をしているわけですね。そのご経験のなかで、どのような課題を感じていますか?広告のキャンペーンやプロモーションにおいて、どのようなご苦労がありますか?特にアトリビューションに関してはいかがでしょうか?

マイケル:そうですね。アトリビューションの課題ということになると思いますが、過去15年に渡って、オンラインマーケティング、デジタル広告というものが進展してきました。今日まで、ソーシャルメディアなどのさまざまなマーケティングチャネルの爆発がおきています。よって複雑性が増しています。暗号を解いて理解することが本当に難しい。一体、どの活動が売り上げを伸ばしているのか、3000年前はロックアートという洞窟の中で壁に何かを書くということがきっと広告だったのでしょうが、現在は非常に複雑で複数の要素があります。繰り返しになりますが、どのマーケティング活動が売り上げに貢献しているのか、その相関関係を結ぶということが本当に大きな課題です。チャネルが増えて、拡大し、爆発していることによって複雑になっています。私たちがマーケティングをしている複数のチャネルもありますし、複数あるというだけでなく、同時に起きているということも非常に大きな課題です。というのも、ひとりの消費者が複数のチャネルに同時アクセスしていますからね。ですから、どれがどの程度貢献したのか、検索連動型広告にしても、どのマーケティング活動が効果を発揮したのかというのが一番難しい質問であり、その答えを模索するのが私たちの仕事です。非常に複雑なんですよ。ビジネスにおいては、マーケティングtoコンシューマー、これはより取引中心のものになってきます。ですから、テレビにせよ、ラジオにせよ、あるいはディスプレイ広告にしろ、電子メール広告マーケティングにせよ、今Scottがまさに言ったとおり、機会が増えれば増えるほど、一人のユニークカスタマーにとっては複数のタッチポイントができてくるということなんですね。ですから、それを分析し、どのチャネルが一番大きな影響力をもったのかということを調べるのは非常に難しいわけです。さらに複雑になることがあります。それはBtoBになった場合です。というのはBtoBになった場合は、フロントエンドにさきほど言ったタッチポイントが全部あります。でも、それだけではないんですね。インフルエンサー、意思決定者がいるんです。そのインフルエンサーの人が4つ、5つ、6つ、あるいは7つの種類の異なるメディアに触れていた可能性があるわけです。でも、そのインフルエンサーも一人ではありません。4人いたとします。その4人のうちのどの人が売り上げを牽引してくれる人なのかということも含め、BtoBにおいてはさらにアトリビューションが複雑になってきます。その複雑性が私たちのいま直面している課題です。

世界中の企業のアトリビューション導入状況

有園:非常に難しそうですね。広告主にとってはアトリビューションをやるといったこと自体が難しそうです。そのような中で、広告主の何パーセントが一体アトリビューションマネジメントをソリューションとして使っているのでしょか?

マイケル:それはとてもいい質問です。状況によります、というのは、その成熟度に違いがあるからです。その成熟度の一番下のレベルはビギナーです。初心者という人がいます。彼らがやっているのは、ウェブアナリティクスのソリューションを使ってはいるのですが、タギング、トラッキングを行なう事によって、それぞれのメディアタクティクスを使っています。サーチ、ディスプレイ、Eメールといったものをやっているのですが、単に相関関係を見ようとしているだけなんです。ラストモデルのアトリビューションはなんなのか、あるいは、リニア(均等配分)モデルのアトリビューションを見ようとしているだけなんです。システムによってはそれさえもできないこともあります。フリープロバイダーの物なんかは正確なトラッキングは出来ないのですね。なので、非常に複雑です。だた、成熟度の上のほうにいきますと、次は、システムはあるんだけれどサイロ(縦割り)化されている。ディスプレイはディスプレイ、EメールはEメールのサービスプロバイダー、サーチはサーチでマネージメントしているということで、それぞれのシステムでそれぞれのトラッキングコード、ウェブサイトはウェブアナリティクスがあるけれども全部分担化されているというサイロ(縦割り)化されたシステムという状況があります。もちろん、初級の方たちはこのシステムを使おうとしているわけですけれども、そのシステムを使うことによってなんと重複カウントがおきるんですね。重複カウントすることによって正確に把握することが出来なくなってしまいます。でも足してしまいますからね。全部足すと、実は20億円売り上げができたと思うかもしれないですが、それは正しくないわけです。さらにもう少し成熟度の上のほうにいきますと、より正しくアトリビューションをしている訳ですが、世界にある全ての企業の1パーセント程度しかそのようなレベルにはありません。厳密には1パーセント以下です。それはもちろんサイロ(縦割り)化されていない、トラッキングシステムはすべて統合されている、そして重複カウントも行なわれていないという状況を示しています。これは、もちろんregression analysis(回帰分析)をやることによってできる訳です。逆に分析していくことによって、それぞれの現象を分離して見ていきます。それができているのは世界中の企業の1パーセント以下です。つまり、いかにお金が無駄に使われているか、そして投資の分配についても、いかに正しくないかということが現れています。

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有園:回帰分析というのは、econometrics、つまり計量経済学的な手法を応用しているということですね?

マイケル:そうです。様々な分析メソッドがあります。

有園:そのレベルでのアトリビューションができている人は1パーセント以下だとおっしゃいましたが、リニアモデル(均等配分モデル)の場合はいかがですか?

アトリビューションの分析モデルについて

マイケル:興味深いですね。私はこの業界でかなり講演をやっていまして、皆さんに聞くんですが、ラストクリックを見ていますか?リニア(均等配分)を見ていますか?それとも何かの加重を使っているんですか?などと聞くと、ほとんどの人がラストクリックモデルを使っていることが分かります。たぶん70パーセントくらいだと思います。そして、リニア(均等配分)、加重は10パーセントくらいで、加重していないものも20パーセントくらいでしょうか。

有園:なぜ、この質問をしたかというと、日本ではアトリビューションが始まったばかりなんです。いろいろな人がようやくアトリビューションを話題にし始めた状況です。ですから、リニアモデル(均等配分モデル)だけでも日本の広告主の中では1パーセントだと思うんです。

マイケル:リニアモデル(均等配分モデル)で1パーセント?ラストクリックではなくて?全部見るってこと?

有園:そうです。基本的に取得できるすべてのタッチポイントを見た場合です。というのも、日本の広告主も第三者配信のアドサーバーを使い始めていますので、ビュースルーとかのデータも利用しているんですよ。

マイケル:日本では、それにEメールも入れているんですか?アフィリエイトはどうですか?トラッキングコードを入れていくんですか?

有園:そういうことをしている人もいます。

マイケル:でも、たいていは一つのチャネルだけ?

有園:私が知る限りでは、ディスプレイ広告の効果を見ようとしている広告主が多いと思います。

マイケル:その効果(ディスプレイ広告の効果)をサーチ(広告)に反映しようとしているんですね。

有園:そうです。

アトリビューションの大問題

マイケル:なぜ、いろいろと質問しかといいますと、これにはストーリーがありまして、私自身にも強い考えがあります。アタラの代表、杉原剛さんにもお話ししていますが、10年ほど前に実は発見をしたんです。アトリビューションには大問題があるぞと。当時、非常に大きなオンラインサブスクリプションシステムをトラッキングの記録用として使っていたんです。それをアドサービングに使って、オンラインアフィリエイトにも使って、サーチにも使っていたんです。それで、その会社は大きなミスを犯しました。同じトラッキングシステムを使っていると思っていたんですが、インスタンスが3種類あったんです。つまり、コンバージョンをダブルカウントではなく、トリプルカウントしていたんです。過剰投資でした。しかも、20~30パーセントの過剰投資です。ほとんどクビになりそうでしたよ、それをやっていた担当者は。ですから、私にとって、これは重要な問題だと。アトリビューションの問題は大問題だなと個人的に思ったわけです。本当に痛い経験でした。忘れることができません。だから、それ以来、私は、いままで務めた会社や仕事をさせていただいたパートナー企業に対してもアトリビューションをやろうとしていますし、カンファレンスにおいてもできる限りアトリビューションの重要性を話すとともに皆さんの状況を学ぼうとしています。学ぶなかでアトリビューションの問題を包括的に統合的に全体的にソリューションとして提供できる企業は本当に少ないことを知りました。

有園:アトリビューションをきちんとやらないと、マーケターは首になるかもしれないということですね。日本の状況で考えると恐ろしいことです。ところで、いまおっしゃった包括的にというのはオンラインとオフラインを含めてということですね。これも実は質問したいことの一つですが、アトリビューションのソリューションプロバイダにはVisual IQやAdometry、C3 Metrics、ClearSaleingといったところがありますけれども、彼らは最近オフラインとオンライのアトリビューションのソリューション、特にeconometrics(計量経済学)を使ったものをローンチしているのですが、それらについてはどのように評価されていますか?

オフラインとオンラインを統合的に見るために

マイケル:そうですね。私は他社製品について評価、コメントする立場にはないのですが、私の知る限りでは、彼らは現時点では最も高いレベルではないといえるのではないでしょうか。というのは、さっき申し上げたような、全体的、統合的なソリューションをオフライン、オンラインに渡って提供できるのは現時点ではMarket Shareという企業だけだと確信できるからです。

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有園:御社(Adobe)はMarket Shareともパートナーなんですよね?

マイケル:そうです。私たちはMarket Shareのパートナーです。

有園:AdobeのSiteCatalyst (サイトカタリスト)とMarket Shareのソリューションが連携しているのでしょうか?

マイケル:はい。私たちは共同でソリューションを作ろうとしています。ウェブソリューションのデータ、そしてサーチ、それからディスプレイ広告、全部をとってMarket Shareに入れて彼らのフィードバックをもらう。それをレポーティング用に使うというシステムを作っています。私たちは、アトリビューションのソリューションを持っていまして、サーチ、ディスプレイ、ソーシャルに対応しています。Efficient Frontier(※)という企業を買収しましたから。このEfficient Frontierという企業は、その3つの領域(サーチ、ディスプレイ、ソーシャルの3つ)に専門性をもっていますが、プリントやテレビといったオフラインに対するソリューションはもっていませんでした。だから、私たちはMarket Shareと一緒に仕事をすることによって、オフラインとオンラインを合わせたソリューションを顧客に提供しようとしています。例えば、ClearSaleingをはじめとする一部の製品は非常に良い仕事をしているところもありますが、しかしながら、オフラインへのフォーカスという意味ではデータも経験も不十分です。システムも不十分なので、オフラインのデータを十分集められてはいません。もちろん、彼らは最善を尽くしてretailer(小売業者)向けのクーポンコードとかを出してトラッキングしようとしているんですが、かなり多くの広告を打っているretail(小売り)関係の企業であればクーポンだけでトラッキングできるわけはないと思うんです。そのメディアが効果を発揮しているのかを見るのにクーポンだけでは不十分だと思うんです。だから、オンラインに照準をあてるのはよいと思いますが、オフラインとの連携がないので、私はやはりミスがあると思います。それを見ると非常に近視眼的になってしまいます。オンラインしか見ていないことになり、より伝統的なオフラインとの連携が見逃されてしまうからです。

有園:オンラインとオフラインのアトリビューションということになると、Market Shareがナンバーワンのプレーヤーということですね。

マイケル:私の意見ではそうです。だからこそ、AdobeはMarket Shareと仕事がしたいと言っているわけです。彼らの数式、アルゴリズムを活用して私たちの顧客に提供したいと思っているんです。

オンラインのアトリビューションの現状

有園:では、オンラインのアトリビューションはどうですか?

マイケル:さっきお話しなさったような企業の名前、彼らはよくやっていると思います。オンラインマーケティングだけをやっている広告主がいて、そしてオンラインのトランザンクションだけを見るということであれば彼らのソリューションはよいと思います。少なくとも伝統的な広告をやっていなければという話ですが。でも、オフラインとの連携がないのであればMarket Shareのような企業はいらないわけですよ。彼らがやってくれるのは、そのオンラインでの投資の仕方を示してくれるということです。でも、オフラインを含めた全体のミックスに対する提言は彼らにはできません。

有園:では、御社(Adobe)のソリューション、アトリビューションのソリューションについて質問をさせてください。昨日、御社のウェブページにある記事を読んだのですが、アドビコンサルティングがメディアミックスモデルをやっていて、それをもとにコンサルティングをやっていると書いてありました。

マイケル:そうですね。Adobeのソリューションはとても良いソリューションです。デジタルのソリューションなら。さきほど申しましたように、私たちはEfficient Frontierを買収しました。そして、彼らはディスプレイ、サーチ、ソーシャルに対しては非常に良いソリューションをもっています。しかし、それ以外の戦術を使っている場合は、ソリューションにならないわけです。だから先ほどの話になるわけですが、Market Shareと協業しています。

有園:なるほど。

マイケル: Efficient Frontierには非常に優秀な人がたくさんいます。私たちの顧客と一緒に仕事をし始めています。顧客に対してデジタルアトリビューションの教育をしています。彼らも一緒にMarket Shareと仕事をし、市場に対してより幅広いソリューションを提供していくことになるでしょう。ごく最近のテクノロジーがこのようなことを可能にしました。本当に最近のことです。デジタルマーケティングはトラッキングやメジャリングに注目をしてしまっていますが、そのほとんどが正しくはありません。リニアだったりしますから、そこだけにフォーカスするのではなく、Market Shareとの協業も含め、Adobeと仕事をすることによって、より統合的、包括的なサービスができるんです。

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有園:なんかすごくMarket Shareがお好きなようですね。

マイケル:そうです。私はMarket Shareが好きです。別に、好きと言ったからといって、何か得られるわけではないのですが。とにかく現時点ではMarket Shareだけが、全体を捉えたメディアミックスに対応するソリューションを提供している企業だと思うからです。それが、私がMarket Shareが好きな理由です。総括的、全体的だからです。でも、私もAdobeにおいて同じような役割をもっています。ペイドメディアのミックス全体を見るという仕事に携わっています。

ブランドの重要性

有園:スコットはMarket Shareについてはどのように考えていますか?

スコット:Market ShareとAdobeが作った独自の技術、この二つを組み合わせると素晴らしいパートナーであると思います。Adobeのパートナーであるというだけでなく、私たちにとっては非常に有効に働けるパートナーなんです。もちろん、連携部分については今後少し改善しなければなりませんが、それを使うことによって売り上げの最大化のためのソリューションを提供できます。実は、数か月前に、私たちのビジネスのデジタルメディアのスタッフと非常に面白いミーティングをしました。Market Shareと会い、私たちのインベストメント、オフライン、プリント、ディスプレイ広告、PRなどをすべて、Market Shareの数式の中にマーケットデータを入れていくということを話していました。ただし、それらに加えて、ソフトウェアや製品を再販しているチャネルがあったら、またそれも数式に入れていかなければならないのですが、それはとても複雑な要素であることを話し合いました。その会議がとてもエキサイティングでした。データを見ていたのですが、それは実は期待していた結果ではなかったのです。その会議の出席者にとって望んでいたものではありませんでした。たとえば、ディスプレイ広告は、もっと貢献度は高いはずなのにと。実は、ディスプレイよりもサーチのほうが貢献していたことが分かったりしたんです。さらに、私たち全員が少し見過ごしていたのがブランドの重要性でした。アトリビューションとメディアミックスモデリングにおいては、ベースあるいはモメンタムという考えがあります。つまりベースラインです。ある日、企業が広告を全てストップしたら売り上げがどの程度推移するだろうかというような、ベースラインの話です。重要なのはそのベースラインが時間と共に落ちていくわけですよ。広告がなければ。ベースラインが10億ドルだったとしましょう。その上に広告による増分があるんですね。サーチ、ディスプレイ、テレビ、PR、その他、全部あります。私たちの場合、ベースラインの上に乗っかってくる増分が、なんと4億ドルくらい追加分がありました。一例ですが。私たちはベースはもっと小さいと思っていましたが、実は巨大でした。4億ドルどころか10億ドルくらいあったんですね。ベースってすごいんだ、つまりブランドはすごいんだってことに気づいたんです。増分というのは意外に小さかった。ディスプレイ、サーチの人がみんなテーブルに座って「えぇ!?こんなに貢献が少ないの?」「クビになってしまうの?」というような反応をしていました。もちろん、そういうわけではありませんが。言いたかったのは、ベースがいかに高いかということ。でも、この部屋にいる皆さんは、そのベースにも貢献しているんですよという話をしたんです。そのベースというのは、四半期ごとに変わることではありませんが、時間が経つにつれベースが落ちていくわけです。だからこの部屋にいるディスプレイやサーチの皆さんも最初は「売り上げに貢献していると思ったのに違うじゃないか」とショックを受けていましたが、このデータを誤解してはいけません、皆さんはベースにも貢献しているんですよと、ベースの維持にも貢献していますよと伝えました。彼らは増分のところだけに目がいっていたんですね。ちゃんと、ベースプラス増分も見てねという話があったんで、非常に興味深く勉強になる話ができました。あれだけ洗練されたデータを見たのは生まれて初めてでした。本当の回帰分析、そして正しい加重をもとにしたフォーキャスティングがなされていました。ですから、大きなデータソリューション、私たちのウェブアナリティクス、サーチ、ディスプレイ、Eメールなどすべてを一つのシステムに入れてデータを統合して、クリーニングして戦術を出してくる。チャネルごとに見ていくということですね。売り上げに対する貢献度をここまで綺麗に見ていくというのは初めてです。

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有園:それは、チャネルごとの広告弾力性のことですか?

マイケル:そうですね。弾力性が計れるからです。微分係数を使っているとすれば、最適な投資レベルを見ることができるわけです。収穫逓減のことも念頭においたうえで、それぞれのチャネルでの貢献度を計算し、出すことができるわけです。

有園:最適ポイントはどこなのか。広告弾力性が一番いいのはどの程度の広告出稿量のときなのか、それをメディアごとに算出できるということですね。では、その弾力性について聞きたいと思います。ちょっと難しい話になるかもしれませんが、広告弾力性以外にも、販売量に影響を与えるものとして、価格弾力性もありますね。その価格の要素というのもモデルに組み込んでいるのでしょうか?

ファイナンス出身者がマーケッターに変身

マイケル:もちろんです。価格も一要素です。だからMarket Shareのアプローチ、彼らのソリューションが一番洗練されていると思うんですよね。彼らは価格を見ています。たとえば、今日本にいたら日経インデックスまでモデルに入れると思いますよ。アメリカではS&P、ニューヨーク証券取引所の数字、つまりマクロ経済のデータも入れていくんです。広告の弾力性を出すにあたってそれも入れています。競合の情報も入れています。ですから、競合の名前を入れていって、その競合のデータを入れていけば彼らが自分の会社に対してどういうタイミングでどういうプロモーションを打って、それが自社にどういう影響が出るのかとういうことを含めて分析していくことができます。競合の動き、マクロ経済も全部が広告の成果に影響を及ぼすのです。だから1パーセント以下の企業しかこれを正しく出来ていないと言っているのです。

有園:ということはつまり、Market Shareは季節性や気温なども見ているのでしょうか?暑い日はビールが売れるとか、そう言う影響がありますよね?

マイケル:ビールも売っていれば、それは参考になるでしょうね。そのため、たとえば、日経インデックス、証券取引所といったところのデータを見ているんです。彼らの数字は業界ごとに、いろいろなことを示していますからね。経済の状況、業界ごとの経済情勢を表現していますから。ちょっと笑えるかもしれませんが、Scottは実は財務的なバックグラウンドもありファイナンスは強いのですが、最近のマーケッターはファイナンス出身者が多いですよ。あるいは物理。そのどっちかですよ。私たちの部署ではファイナンスの経験を持った人が4~5人います。これだけ定量分析や数字が大事なので、ファイナス出身者をマーケッターに変身させています。係数、回帰分析といったことを理解していなければいけないので、それに合った人材を選んできました。マーケティングというのは技とサイエンスの組み合わせです。私たちがマーケティングアトリビューションを重要だと思うのは、やはりマーケッターはCFOや財務の人などにちゃんと説明ができないといけないわけですからね。きちんと描写できなければ、そのマーケッターの人にとってもビジネスケースは立てられないわけですよ。「そんな気がします」とか「勘でこう思います」とか「こうなるような気がします」とか言っても全く駄目です。広告における最も大きな問題は、ジョン・ワナメーカーが言った有名な名言にあるとおりです。「広告費の半分が金の無駄使いに終わっている事はわかっている。分からないのはどっちの半分が無駄なのかだ。」つまり、どっちの反応が上手くいっているのか分からないことだということです。ファイナンスの人間を含めて、いまでは信頼関係を築くことができています。なぜなら、サイエンスによって、ジョン・ワナメーカーの課題をかなり解決できるようになったからです。ファイナンスの人間も最近では私たちを信頼してくれています。ちゃんと収益までプロジェクションできるからです。

アトリビューションベンダーの動向

有園:ところで、博報堂という日本の企業をご存じですか?博報堂はMarket Shareと提携しました。だから、いま、Market Shareは日本への進出を試みていますね。

マイケル:もちろん知っています。

有園:他のプレーヤー(アトリビューションベンダー)はどうですか?Visual IQ とかその他の企業はどうでしょうか?日本に来そうですか?

マイケル:分かりません。それは良い質問ですね。いろいろなプレーヤーが、日本市場に参加することはいいことだと思います。

有園:私もそう思います。だから質問してみたのですが。

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マイケル:これは本当に新しい領域で大きなデータをきちんと扱う能力がなければ、こんな話さえできなかったと思うんです。5~6年前には出なかった話題です。いまは大きなデータセレクションそしてアナリティクスが出来るようになったんで、このソリューションは可能です。このテクノロジー、ソリューションは生まれたばかりの赤ん坊の段階です。Visual IQ とかその他の北米系の企業が日本に来るときは、市場のスピードに出来るだけ早く追い付くように頑張って成長しなければいけないでしょうね。

有園:私はVisual IQが、Market Shareがもっているような統合的なソリューションを持ってくると良いなと思っています。そうすると、全ての広告主にとって価格効率を上げてくれますからね。

マイケル:Adobeとしては複数のパートナーがいたらいいなと思っていますから。でも、いまはベストだと思うところが一社しかいないのでね。そこと仕事をしたいと思っています。

アトリビューションの障壁

有園:いままではテクノロジーやアナリシスの話をしてきましたが、政治的なところもお伺いしていきたいと思います。私が日本の広告主に話をしていますと、サーチは販促部、ディスプレイは宣伝部というように、担当が部門ごとに分かれていると言うんです。アトリビューションをしたいのだけれども、一部はこっちに再投資ということが部署の垣根があるために難しいと言われます。やはり、企業の政治情勢がありますから。そう意味で、企業内部の政治情勢が最適な予算配分の障壁になることはありませんか?

マイケル:その問題は私たちの中でも解決してきました。全ての有料メディアは私の責任下にあるからです。企業の中に複数の事業部門がある場合は多いです。そこでポイントとなるのは、投資レベルの話でいきますと、当社を例にすれば、スコットのところに行って「君はねデジタルマーケティングの最適リターンの責任者だよ」と言います。そして、スコットの別の同僚に「あなたはAcrobat、Creative Suiteの最適化をやりなさい」と言います。彼らはアトリビューションをベースに決めていくことができます。スコットの指示の元に決めていくことができます。サーチにするのか、ディスプレイにするのか、Eメールなのか、有料のソーシャルなのかというのはスコットの権限下にあります。彼のチームの中では政治的な動きがあるかもしれませんが、結局はスコットが全体の売り上げの責任者ですから意思決定権を持っています。あとは文化ですね。データ中心の意思決定をするということです。売上数字はどうなのか、ROIの最適な実現の仕方はどうなのかということです。ですから、そうした意味では、それほど政治的だとは思いません。私たちは、最初から構造を正しく作ったので政治的な問題はそんなに起きえないのです。チームとして全てがROIだと理解しています。各人が売り上げの各パイプラインを担当していて、それを実現するためには自由にお金を使って投資が出来るということを最初から合意していて、データが第一の優先事項であることも全員が理解していて数字を信用しているので、そのような問題はあまり社内では起きません。Do the right thing という言葉がありますが、戦術そのものを単体で見ると金額が減ることがあっても、全体として売り上げを伸ばすための数式の一部であるということを理解していれば、その一部の数式だけの立ち位置に立って投資をしすぎるのはマズイということを彼らはちゃんと理解しています。だから、やはりこの話というはヘルプするということ、マーケッターを教育し、組織における財務部門の人に対してアトリビューションの教育をするということではないでしょうか。アトリビューションやトラッキングの話は、さっき言ったような洗練されたソリューションもできるのですが、社内の改善も必要です。人の教育、アトリビューションの認知、アトリビューションの波及効果の理解も必要です。ここにはもっと投資をするという考え方を浸透させる必要があります。多くの企業がサイロ(縦割り)化されています。事業部門という縦割り、あるいは機能別にサーチ、ディスプレイ、Eメール、テレビと分断されていますので、全てを統括している人がアトリビューションを理解していないと正しく投資することができませんし、いま言ったような難しい会話をしなければならなくなります。お金を自由に動かすためには非常に難しい状況が出てくると思います。6~7年前、オムニチュアでの仕事を始めた頃、私たちの広告はほとんどトレードショーでした。ですが、アトリビューションを通して、トレードショーでお客様と接することによるコストとリターンがどれだけであるかを見ました。トレードショーでお客様を獲得するのは、デジタル手法に比べて4~5倍のコストがかかると分かりました。もちろん、リターンが4~5倍あるなら良いのですが、そうじゃなかったんです。展示会の成果はデジタルの成果と同じでした。コストが4~5倍であるにも関わらず。ですから、それから3~4年かけてトレードショーへの投資額を減らし、デジタルに投資していきました。そうすることによって、より効率的に投資できるようになりました。米ドル1ドルに対するリターンが10ドルとしましょう。私たちのミックス全体で10ドルあるとして、75パーセントがトレードショーでした。でも、そのあとに70パーセントをデジタルにして、トレードショーは30パーセントに変更しました。すると、米ドル1ドルに対するリターンが30ドルになりました。3倍です。効率に対する非常に大きな影響力がありました。予算の最適化によってこれだけの効果が出たんです。予算を再配分するだけです。

アトリビューションを始める前に理解すべきこと

有園:そろそろ時間がなくなってきましたので、最後の質問をします。日本の多くの広告主がアトリビューションに興味をもっています。アトリビューションを始めたいと思っている状況です。アトリビューションマネジメントを始める前に、どのようなことを理解しておいたらいいですか?日本の広告主に対して、アドバイスをお願いいたします。

マイケル:一点目は、出来る限り勉強をするということです。この領域において、ありとあらゆる知識を勉強しましょう。そうですね、Attribution.jpを読んでくださいということにしましょうか(笑)

有園:それはとっても重要ですね(笑)

マイケル:教育が必要なのです。必ずしもリニア(均等配分)アトリビューションあるいはラストクリックアトリビューションをやることは悪いとは思いません。特にデジタルの領域ではね。アトリビューションの仕組みを理解するには良いので、少しサイロ(縦割り)化されたシステムではありますが、そういうモデルを勉強するのは良いと思います。一番シンプルな方法からスタートするとすれば、トラッキングコードの標準化です。すべてのデジタルチャネルにおけるトラッキングコードを統一化しなければなりません。電子メール、デジタル、全てバラバラでは出来ませんので。二点目は、トラッキングコードを標準化した後に、ラストクリックモデル、リニア(均等配分)モデル、ウェイティング(加重)モデル、どれにするかを決めるべきです。できれば全部使うべきだと思います。三つの違いを見て、違いが大きければ、例えば、リニアとラストクリックの差が大きければ、それを三角関係で見て意思決定するべきだと思います。もう少し成熟度が上がれば、オンラインとオフラインの両方を見るソリューションを検討すべきだと思います。とにかくそういう形で勉強しましょうということです。そして、ラストクリックモデル、リニア(均等配分)モデル、ウェイティング(加重)モデルといったものを使ってでも勉強をしてウェブアナリティクス、サーチ、ディスプレイ、Eメール、それぞれのデータがどう関係しているのかを見るべきです。その後、アフィリエイト等その他のツールを最大限に活用するべきだと思います。やはり、伝統的な広告をやっていれば、それだけでは不十分だと理解するでしょう。でも、とにかく始めて、試してみてください。そうですね、要するに「始めよう!」というのがメッセージです。

有園:Adobeのソリューションを使ってみるのもよいですよね?

スコット:ぜひ使ってみてください。Adobeのユーザーでしたら、ぜひAdobeを使ってみてください。そうでない場合でも何でもいいので、ぜひ使い始めてみてください。とにかく何でもいいのでやってみること。それに尽きます。でも、それを過剰に信頼するのは危険ですよ。正しくない可能性がありますからね。最後に、先ほど政治という話がありましたが、システムを使うだけではなくて、その体制に会社も合わせていく必要があるということです。データだけでは十分な効果を出すことはできません。その製品、システムを使う人たち、組織、組織の改編も含めて検討する必要があります。ガバナンスですよ。

有園:力強いメッセージをありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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(※)Efficient Frontier:2011年11月30日のAdobeによる買収完了後、2012年7月18日現在「Adobe AdLens」にブランド変更されている。

マイケル チャトゥーディさんには書籍「アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法」にもご登場いただいています。

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(END)

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【アトリくんの視点】さすがアトリビューション黎明期以前から様々なことに取り組んでこられたお二人だけあって深いお話でしたね!色々なお話を伺うことができましたが、一番印象に残ったのが、アトリビューションやデータドリブンなマーケティング環境に合わせる形で組織やその中に所属する人が変わってきている点ですね。Adobeはソリューションプロバイダーであるだけでなく、最先端でアトリビューション・マネジメントを自ら実践しているのですね。これからも先端を走って業界をドライブしていただきたく思います。Mikelさん、Scottさん、ありがとうございました!

コメント

アトリビューション特別対談:株式会社クロスリスティング治田耕太郎、岡野敬太、石橋由美子×アタラ有園

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特別対談です!今回は、株式会社クロスリスティングにおいてデータ活用を推進するお三熊、もとい、お三方に業界のこと、アメリカのこと、自社における取り組みなど、いろいろお話を伺いました。熊キャラに対抗してアトリちゃんも初登場です。

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【主な内容】
・ アトリビューションという言葉がひとり歩きしていて危険だ
・ ad:tech SanFranciscoの印象:アメリカのアトリビューションは日本よりも進んでいるのか
・ アメリカではアトリビューションが単なるバズワードではなくなった
・ マーケティング(Marketing)ではなく、マーケティド(Marketed)
・ 検索ログは宝の山:「検索」はAISASのS(Search)だけでなく全ての部分に関わってくる

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有園:今回は、株式会社クロスリスティングの治田さん、岡野さん、石橋さんの3名をお迎えしてお話を伺います。最初に自己紹介をお願いします。

治田:治田です。私は19歳からこの業界にいます。最初は、ライコスジャパンというポータルサイトで検索クエリを見ながら、いわゆるディレクトリ検索を作っていました。その後、アイレップでサーチマーケティングのコンサルティングに携わった後、オーバーチュア(Overture:現在のYahoo リスティング)へ移りました。オーバーチュアではプロダクトやツール開発に携わっていました。

有園:オーバーチュア時代からアトリビューションに携わっていたのですか?

治田:まだ当時はアトリビューションという言葉が定着していませんでしたが、概念としては近いことをしていました。

有園:間接効果測定が注目され始めた時代ですね。

治田:はい。オーバーチュアの後は、モバイルのバーティカルサーチのベンチャー企業へ転職して日本以外の国のマネタイゼーションを一年ぐらいやった後、NTTレゾナントへ移り、現在はクロスリスティングに出向中という流れです。

有園:ちなみに、モバイルのバーティカルサーチとは?

治田:いわゆる、モバイルのショッピングサーチみたいなものです。

有園:クロスリスティングでは何をやっていらっしゃるのですか?

治田:実は、アトリビューションが本業ではありません。

有園:なるほど。

治田:でも、関わりはあります。検索データを使った広告以外のマネタイズ手法のひとつとして、データそのものに価値があると考えています。そのデータをどのように使うかというアウトプットの形がアトリビューション的なものだと解釈しています。

有園:19歳の頃からこの業界で活躍し、オーバーチュア時代に「アシスト」を日本へ導入したのが治田さんです。当時から、間接的、アトリビューション的な視点で考えていらっしゃったのですね。

治田:そうですね。紆余曲折した後にNTTレゾナントへ入り、いまはクロスリスティングでアトリビューション的な視点をもって検索データを分析しています。

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有園:いろいろとお聞きしたいですので、のちほど、お伺いします。それでは、次は、岡野さん自己紹介お願いします。

岡野:岡野です。私は2011年9月からNTTレゾナントに在籍し、現在はクロスリスティングに出向しています。主に新規事業開発を担当しています。治田と同じような仕事を治田と分担しながらやっています。

有園:同じような仕事とは具体的にどのような内容ですか?

岡野:検索データを使った新規事業を開発しています。そのひとつとして、分析サービスを立ち上げました。私は以前、NTTコミュニケーションズにいたのですが、そこではアフィリエイトサービスや音楽配信サイト、サッカー日本代表の動画が携帯で見られるサービスなどの立ち上げに携わっていました。

有園:昔から、マーケティングやプロモーションに深く関わっていらっしゃったんですね。

岡野:その経験を活かして今の業務をおこなっています。

有園:マーケティングやウェブサイト制作などを経て、クロスリスティングでは検索データのサービス化を手がけているわけですね。

岡野:そうです。

有園:それでは、石橋さん自己紹介をお願いします。

石橋:石橋です。私は2008年にクロスリスティングに入社し、弊社が提供するパソコン向け検索連動型広告(リスティング広告)「レモーラリスティング(REMORA Listing)」の代理店向けキャンペーン運用のサポートをしておりました。2011年の夏頃からリスティング広告運用の猛特訓を3ヶ月間受けまして、現在は検索ログデータを分析するチームにおります。

有園:猛特訓の内容も気になりますね。

石橋:極秘です(笑)検索ログデータの分析は2012年3月から始めています。

有園:実際に案件が入ってきたということは、検索ログデータを分析してほしいというニーズが増えている、ビジネスになり始めているということでしょうか?

石橋:社内やグループ内での分析から始めていますが、現在は社外のお客様から引き合いをいただいています。

有園:ちなみに、クロスリスティング入社前はどのようなことをしていらっしゃったのですか?

石橋:コンピューター系の商社で、データ入力専用マシーンのインストラクターをやっていました。

有園:データの取り扱いや活用に詳しそうですね。検索ログを調べる際「どのような視点で切り出すか」という仮説が描けないと、適切なアウトプットはできないと思います。膨大なデータを取り扱う上で、皆さんの前職での経験や培ったセンスが大変役に立っていそうですね。

石橋:ありがとうございます。

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それはアトリビューションとは呼ばないのでは?

有園:石橋さんと岡野さんには後ほど、検索ログデータの解析や、その結果を有効活用する方法について詳しくお聞きしたいと思います。その前に、治田さんにお話を伺いましょう。治田さんは、2011年10月4日にクロスリスティング、Fringe81、アタラの3社が共催したアトリビューションの専門イベント「Attribution Night 2011(アトリビューションナイト)」の発起人ですが、現在、日本で起きているアトリビューションの盛り上がりをどのようにお考えですか?

治田:アトリビューションという言葉がひとり歩きしていて危険だな~って思っています。

有園:実は、私も同じように感じています。

治田:アトリビューション分析に携わっているという方と話をしても、みなさん言っていることがバラバラで、なかには「それはアトリビューションとは呼ばないのでは?」と指摘したくなる方もいたりして。

有園:どのような点を「それはアトリビューションとは呼ばないのでは?」と感じたのですか?

治田:端的に言うと「ビュースルーコンバージョンがクリックスルーコンバージョンの5倍でした。だからアトリビューション効果がありました」みたいなことを言う人は、ちょっと違うのではと。

有園:なるほど。「ビュースルーコンバージョンの効果がクリックだけを見ているときよりもありました」と言われても、それは間接コンバージョンを数えていれば同じようなことが言えるということですね。

治田:そもそも「ビューをしてコンバージョンをした件数」と「クリックをしてコンバージョンした件数」は間違いなく前者のほうが多いです。

有園:たしかに。

治田:それを「アトリビューションをやったおかげだ」と言ってしまうのは、ちょっと違うのではないかと思います。

アトリビューションは対応するものではない

有園:そうですね。「コンバージョンパスデータを分析することがアトリビューション」だと思っている方がいらっしゃいます。コンバージョンパスデータをアウトプットできるようになったサービスを「アトリビューションに対応しました」と書いているプレスリリースもよく見かけます。

治田:ありますね。

有園:アトリビューションという言葉を使いたんだと思いますが、それはアトリビューションとは違うのでは?と思っています。

治田:そもそも、アトリビューションは対応するものではないですよ。

有園:おっしゃるとおりですね。

治田:「APIに対応しました」「無線LANに対応しました」と言うのとは違います。「アトリビューション」という言葉を使えば注目される、取り上げられやすいと思っているような気がします。

有園:私は、アトリビューションがきちんと浸透していないためにこのような状況になっているのだと思います。治田さんはアトリビューションをどのように認識していますか?

アトリビューションを単一の広告メディアの中だけで語ってはいけない

治田:難しいですね。忘れてはいけないのが「アトリビューションを単一の広告メディアの中だけで語ってはいけない」ということです。だから、先ほどの「ビュースルーコンバージョンがクリックスルーコンバージョンの5倍ありました」という話はアトリビューションではないのです。必要に応じて複数ユーザーのタッチポイントを可視化するべきです。それを、どのように活用するかがアトリビューションには含まれていなければなりません。具体的なやり方は業種によって様々だと思いますが、その観点が含まれていてこそアトリビューションだと考えています。

有園:オンラインの場合は、一人のユーザーが複数のタッチポイントに触れてコンバージョンした際、それぞれのタッチポイントがどのように貢献したのかをきちんと分析すること。それが、アトリビューション分析の基本かなと思っています。その後に、配分やクリエイティブの話になります。一般的に、初回、中間、ラストなどと言いますが、それぞれに対してどのようなクリエイティブをあてていくのか。コミュニケーション設計を含めて最適化していくのがアトリビューション・マネジメントだと思います。コンバージョンのパスデータを使った分析から得たものを有効活用するのがアトリビューション・マネジメントなのに、その手前の経路データを出すことをアトリビューションと表現している日本のツールベンダーが結構、多いですよね。

アトリビューションは広告主のためにある

治田:そうですね。私が一番危惧しているのは、アトリビューションという言葉が広告媒体側に都合の良いように解釈されて広がっていくことです。「コンバージョンする広告」が売れるのは当たり前ですが、現状はコンバージョンする広告が少ない。広告媒体側が「うちの媒体はビュー効果があります」という文脈でアトリビューションを語ることに危機感を覚えています。アトリビューションは広告媒体側の評価を助けるものではないと声を大にして言いたいです。

有園:なるほど。分析結果は広告主のマーケティング効果を最大化することに役立っていないと本質的には意味がないですね。

治田:そうです。アトリビューション分析をやった結果、本当に価値のない媒体やメディアが判別できるようになります。

有園:広告主側にとっては、媒体をふるいにかけるといった良い意味での新陳代謝が起きますね。価値のある媒体が分かると、媒体選びから施策までを適切におこなえるようになります。例えば、日経BPであればBtoBのお客さんと相性が良いですし、Yahoo! JAPANは一般コンシューマー系の検索ボリュームがあるのでBtoCに強いといった区別ができたり。

治田:日経BPであれば、ウェブサイトのコンテクストと広告主のコンテクストを合わせることが必要です。

有園:そうすると、アトリビューションは広告主のものであり、複数のタッチポイントを分析して貢献度を割り出していくことだといってもよいかもしれませんね。これは、分析手法は異なるが、オンラインだけの分析であっても、オフラインを含んでいるケースでも同じでしょうね。

治田:そうですね。

有園:2012年に入ってから日本でも、オフラインを含めたアトリビューションのニーズが増えています。アメリカでは、Market ShareやVisual IQなど複数のアトリビューションベンダー企業がオフラインでのアトリビューションについて語り始めています。オンラインの場合はコンバージョンに至る経路を分析するのが主流です。しかし、オフラインを含めたものは数理統計的な相関分析や確率論のベイズ統計を使ったモデル化なので、伝統的なメディアミックスモデリングなどと手法は本質的には変わりません。

治田:扱えるデータが増え、深さが変わりましたね。

有園:CRMと連動して、店頭の販売とテレビ、そしてオンラインのデータを結びつけ、仮想のシングルソースのような状態のデータベースを作り上げて分析できるようになりました。技術的にオフラインを含めたアトリビューションができるようになりました。

治田:そうですね。

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アメリカのアトリビューションは日本より進んでいるのか

有園:そこで気になるのが、アメリカのアトリビューションはどのような状況にあるのか、ということです。治田さんはad:tech San Francisco 2012へ行かれたそうですが、そのあたりはいかがでしたか?

治田:日本よりもアメリカのほうが技術的にも先をいっていますが、それは想定の範囲内です。アメリカは、アルゴリズミックやオートメーションの部分が進んでいます。でも、日本と全く違うわけではないので大差は感じません。

有園:4月のad:tech San Francisco 2012で発見はありましたか?

治田:「自分の考えていることは間違っていない」ことを再認識できたのが一番の収穫です。

有園:なるほど。

治田:アメリカのほうが進んでいる部分は沢山ありますが、進んでいる部分も自分のベクトル上にあり、しかも距離は離れていないと感じました。

有園:たとえば、動画配信の効果分析について何かありましたか?

治田:実は、私もアメリカへ行く前はリッチメディアの解析や効果分析の話を楽しみにしていたのですが、残念ながらその辺の話は全く出ませんでした。そこが意外というか、日本がアメリカに先行できる部分かなと思いました。

有園:なるほど。

治田:あとは、アトリビューションのコンサルティング会社の存在感が増していたことを付け足しておきます。AdometoryやEncore Mediaなどのアトリビューションコンサルティング企業が登壇する際「いまやホットトピックになりましたアトリビューションのエキスパートの方々に登壇していただきます。どうぞ」といった紹介のされ方をしていました。専門分野としての知見が求められていると感じました。

アトリビューションが単なるバズワードではなくなった

有園:アトリビューションが単なるバズワードではなくなったということですか?

治田:間違いないです。2011年8月にSESへ行ったとき、Google アナリティクスのコーナーで「Multi Channel Funnels」(マルチ・チャンネル・ファンネル)という機能が紹介されました。いわゆるクリックパスが取れる機能です。それを世間はアトリビューションだと言い始めたんです。その時に「アトリビューションってどうやるんだろう」「これ、流行るのかな?」という状況になったわけです。

有園:いわゆる、きっかけですね。

治田:そのエマージングからホットトピックになったと感じています。

有園:なるほど。

治田:エマージングからホットトピックになって、ポピュラーになって、最終的にメジャーの階段を上れるかは今後次第だと思います。

お客さんのライフタイムバリューを上げる「マーケティド(Marketed)」

有園:キャンペーンマネジメントのプラットフォームとして第三者配信を考えてもらう時に必要な要素の一つとして、CRMとの連携があると思います、その辺のデータ連携の盛り上がりはいかがでしたか?

治田:アトリビューションという言葉が一番多く出てきたセッションはEメールでした。刈り取ったカスタマーへ購買データなどの情報をセグメントして提供し、カスタマーのライフタイムバリューを上げる方法を考えた時、効果があるのがメールであると。カスタマーをよりマーケティド(Marketed)なカスタマーにするには、どのようなアトリビューションをおこなうべきかという文脈が非常に多かったです。

有園:マーケティド(Marketed)というのは、具体的にどのようなことを示すのですか?

治田:マーケティング(Marketing)という言葉はマーケット(Market)の進行形です。つまり、お客さんを自分の市場に招き入れるというイメージです。その後、招き入れてコンバージョンしたお客さんに対してライフタイムバリューを上げる施策が「マーケティド(Marketed)」です。マーケティド(Marketed)する人を、マーケティドカスタマー(Marketed Customer)と呼ぶように定着しないかなと密かに思っています。

有園:ナーチャリングみたいなことですね。

治田:そうです。以前、有園さんがおっしゃっていた顧客育成、顧客教育に近いです。コンバージョンした後にそういった動きが必要であるという考えです。いずれはコンバージョンした後のアプローチに力をいれる傾向になると思います。実際、アメリカではそういった傾向が見え始めています。

アトリビューションとEメール

有園:ライフタイムバリューを上げるために、より顧客をマーケティド(Marketed)するために、アトリビューションの貢献度を考えた施策が始まっているわけですね。先ほどのメールのセッションの例は、具体的にどのような話ですか?

治田:2011年か2010年に、ユナイテッドエアラインがコンチネンタルを買収し、マイレージプログラムを統合することになりました。そもそも、この二社はユーザー属性が違うので、これを機会にユーザーを徹底的にセグメントすることになったのです。各ジャンルに分類して、それぞれに適切なEメールの文章、コンテンツ、配信タイミングでメールを送ったところ、従来の費用対効果と比較して9倍以上の改善が見られた、というケースがありました。

有園:興味深いですね。

治田:DSPの解説でCRMリターゲティングという言葉も出ていました。

有園:最近では、メールでのアプローチを最適化する事業を行なっている企業がCRMデータや配信技術と連携することによって、様々なパターンでのアプローチをしていると聞きます。ユーザーがバナー広告経由でウェブサイトを訪れてコンバージョンした場合、コンバージョンしなかった場合でアプローチは違います。リターゲティングで追い、資料請求をした方にはそれ用のメールを送る。マーケティド(Marketed)したお客さん向け、マーケティド(Marketed)しそうなお客さん向け、マーケティド(Marketed)しそうにないお客さん向け、とアプローチを分ける時代になってきました。

治田:そうですね。例えば、Aに興味のあるユーザーが、Aに関するウェブサイトでAの広告を見た場合と、Aと関係がないBというウェブサイトでAの広告を見た場合では見え方が違います。もちろん、Aに関するウェブサイトでAの広告を見たほうが良いです。だから、AとBのウェブサイトでのビューを同じ1ビューとカウントするのはどうかと思います。違うものとして考えるべきです。アメリカではその辺は重要視されていますね。

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検索ログは宝の山

有園:話は変わりますが、私はお客さんから「コンバージョンした後は検索行動も変わるのですか?」と質問を受けます。たとえば、ある住宅メーカーさんでは、実際に住宅を購入した後と前とではその住宅メーカーのウェブサイト上での行動パターンが異なるはずで、それを分析できないかという話しがあるのですが、同じように、住宅購入以前と以後では検索行動も異なるのではないか?そのようなデータを有効活用してターゲティングできないか?みたいな質問をクライアントから受けることがあります。御社では検索ログデータを分析していらっしゃいますが、具体的にどのような分析をしていますか?担当の石橋さん、いかがでしょう。

石橋:検索ログ分析サービスの説明をクライアントにする際、「検索」はAISASのS(Search)だけでなく全ての部分に関わってくるという話をします。

有園:A(Attention)、I(Interest)、S(Search)、A(Action)、S(Share)のすべてに、検索は関わってくるということですね。

石橋:そうです。クロスリスティングでは、ユニークユーザーの行動を時系列で追えるので、ユーザーがどのようなキーワードをどのようなタイミングで検索しているかが分かります。そのログデータをもとに、より良いアプローチ方法を模索したり、ユーザーの悩みやウェブサイトの抱える問題を解析して解決策を考えたり、広告の影響度を調べてアトリビューションの重み付けに役立てていただいております。

有園:最近の発見はありますか?

石橋:検索ログはユーザーの行動をいろいろな面から見られるので、消費行動のデータマイニングの一環として分析でき、一般的なマーケティングとは異なる手法がとれます。検索ログ分析から、ユーザーの行動を把握すると、ユーザーがコンバージョンする場所が見えてきます。そうすると、あとはコンバージョンする場所へ導くアプローチを考えるだけです。

有園:なるほど。いろいろなデータを分析してデータマイニングを行なっているわけですね。岡野さんはどのようなことをやっていらっしゃいますか?

岡野:検索ログを使って広告の効果を測定したり広告を改善したりするだけでなく、マーケティング全般にも広く使える分析サービスの企画をしています。

有園:具体的にどのような使い方をしているのですか?

岡野:新しいサービスを立ち上げる案件の場合は、市場調査の観点でマクロから検索傾向を分析します。また、会員制サービスを提供している場合では、ミクロで会員一人ひとりの検索ログから検索傾向を分析します。検索ログを使えばかなり広い解析ができますし、退会の可能性等も把握することができます。

有園:携帯電話で例えると、auの携帯電話を使っているお客さんがソフトバンクに関するキーワードを検索し出したら、auを解約してソフトバンクに乗り換えてしまう可能性があるということですね?

岡野:そのとおりです。現在も会員の方とすでに解約した方のデータに絞込んで、それぞれの傾向を分析して、比較すれば対策も練りやすくなります。

有園:実際にやってみていかがですか?

岡野:まだノウハウを溜めている段階ですが、あるサービスを解約した方は、解約する前に競合他社のサービス名で頻繁に検索をする傾向があります。品質や価格とのアンド検索をする方も多いです。検索ログを見れば解約理由まで把握できるようになっています。

有園:ユーザーの傾向を把握して問題が把握できれば、そこに最適なアプローチをすることで解約を回避できるかもしれないということですね。

岡野:そういうことです。

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有園:すでに、そのようなサービスは他にもあるんですか?

治田:YahooやGoogleはやろうと思えばできると思いますが、今のところはやっていないですね。

有園:となると、クロスリスティングを使わない手はないってことですね。

治田:そうです!

有園:検索ログデータの分析でもコンバージョン後の検索行動に着目しているということで、アトリビューションが単なるメディアプランニングの最適化から、マーケティド(Marketed)するためにメールや検索ログデータを活用してモデル化する段階に入ってきたことを感じます。

アトリビューションを流行で終わらせてはいけない

有園:ところで、まだまだ深くお伺いしたいテーマなのですが、時間がなくなってきました。最後に、それぞれ、メッセージをお願いできますでしょうか。

治田:結局はマーケティングです。アトリビューションという言葉が注目を集め、画期的なサービス、最先端なツールであると騒がれています。でも、実際は昔からある考え方のひとつでしかありません。可視化できるひとつの方法論としてアトリビューションが存在していると思っています。本質的には、それはやって当たり前なことであって、概念としてはさほど新しいものではありません。だから、「これはすごい」「きますよ!」とか言われることに違和感と危惧を覚えます。このままでは単なるブームで終わってしまうのではないかと心配しています。

岡野:私からは、最後に検索ログを使う3つのメリットを紹介します。1つめは、検索ログには具体的で詳細な消費者のインサイトが入力されていること。2つめは、自社と接点がない部分の情報が得られること。3つめは、ほとんどフィルターがかかっていない人たちが分析の対象であること。謝礼目的の人とは違い、非常にリアルで面白いデータです。メリットの多い検索ログをぜひ活用していただければと思います。

有園:ありがとうございます。では石橋さんお願いします。

石橋:以前、有園さんがどこかで「素晴らしいマーケティングプランを練っても、商品やウェブサイトに問題があれば意味がない」とおっしゃっていましたが、まさにその部分が重要だと思っています。商品やウェブサイトの抱える問題が検索ログを見ることによって浮き彫りになります。マーケティングプランを練る前に、検索ログをチェックしていただきたいです。

有園:Twitterやブログなどで語られている自社のサービスや商品の問題、お客様の声を拾いましょうという話があります。検索ログを見れば、検索行動に現れる消費者の声がリアルに把握できますね。

石橋:検索をするときに他人の目は気にしません。でも、ソーシャルメディアでの情報発信は人に見られる前提でおこなっています。ある意味、セーブされた表現のはずです。だから、検索ログのほうがより本音に近い、生身の声だと思います。

有園:面白い視点ですね。治田さん、岡野さん、石橋さん、ありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

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(END)

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【アトリちゃんの視点】アトリビューションという言葉や定義の一人歩き現象はよく耳にするようになりました。新しい取り組みによくある現象ですが、きちんと理解した上で使われるように働きかけていきたいですね。Marketedの考え方は興味深いですね。顧客育成するための中間施策/KPIについてもよく語られるようになったので自然な流れなのかもしれません。それにしても、検索ログに触れたことがある身としてはクロスリスティングさんの検索ログデータ、ものすごくインサイトが豊富だと理解できますし、何と言っても見てみたいですね〜w 治田さん、岡野さん、石橋さん、ありがとうございました!

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アトリビューション特別対談:株式会社オムニバスCEO山本章悟 × アタラCCO岡田吉弘

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緊急対談です!今回は、ad:techシンガポールにブースを出されていた株式会社オムニバスの山本章悟さんに、熱気あふれるad:techのブースで緊急インタビューをしてみました。オムニバスを立ちあげられた経緯や、東南アジアにおけるアドテクビジネスの展望について伺っていきます。(シンガポールの陽射しが強かったのでサングラスをかけてみました ^^)

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ad:techとオムニバスの関係。

岡田:今回は、ad:tech シンガポール特別編ということで、オムニバスの代表取締役CEOである山本章悟さんお迎えしてお話を伺います。Attribution.jpをご覧の方であればオムニバスさんや山本さんをご存じない方はいないような気がしますが、改めて自己紹介をお願いいたします。

山本:オムニバスの山本章悟と申します。私自身はこれまでのキャリアでずっとアドネットワークに関わり続けていて、2008年当時日本でだれも関わっていないアドエクスチェンジが海外で伸びているのを知って、これはチャンスだと思いオムニバスというアドテクノロジーカンパニーを立ち上げました。創業当時は一人だったのですが、その後すぐにDSPやRTB、オーディエンスターゲティングやアトリビューションなどの単語に代表されるアドテクノロジーが注目されはじめ、その波に乗るかたちで少しずつ会社を伸ばすことができました。創業当時から考えると本当に想像もできないくらい、自分も周りの環境も変わってきたなあと実感しています。

岡田:創業当時はお一人だったとおっしゃいましたが、現在社員さんは何名ぐらいいらっしゃるんですか?

山本:現在は約20名です。

岡田:おお。すごく増えてますね。勢いを感じます。

山本:人数が増えてきたので、組織としての強みを出せるよう、コンセプトをしっかり固めようとしています。オムニバスには「Bids of Omnibus」というブランドステートメントがあるのですが、その中に「We are selling culture 単なる商品でなく文化を提供しよう。私たちは広告と同時に、デジタル広告の持つ先進性、優れたクリエイティブ表現、デジタルアドバタイジングという新しい文化を提供する会社である。」という言葉があります。アドテクノロジーを利用して、マルチデバイスによって行動が変化してきているユーザーにしっかりと適切なメッセージを届けられる、マーケティングソリューションを提供できる会社になり、社会に貢献していこうと、そんな思いを込めています。

岡田:素晴らしいですね。そこで、今回はそういったアドテクノロジーの代名詞的なイベントでもあるad:techのシンガポールにオムニバスさんはブースを出されているのですが、シンガポールでブースを出そうと思われた狙いというか、そのあたりをお聞きできればと思います。

山本:そうですね。オムニバスは元々アメリカが中心になっているプラットフォームを使ってアドネットワークを組んでビジネスを展開している会社です。もちろん今でも日本が我々のビジネスの中心であることは間違いないのですが、使っているプラットフォームがワールドワイドなものなので、東南アジアにもシームレスに使えるし、以前からチャンスがあるなと思っていました。これまではベンチャーということもあってリソースの問題でなかなか手が回らなかったのですが、おかげさまで体制も徐々に整ってきたので、本格的に東南アジアを考える前のマーケティングリサーチのような意図でブースを出してみた、という感じです。もちろん、運が良ければビジネスに繋がる話ができるかもしれない、という期待も込めてですが。

岡田:運が良ければとおっしゃいましたが、私から見ている限りだと、オムニバスさんのブースはとても盛況に見えました。実際にブースに訪れた方の反応はいかがでした?

山本:実は、かなりよかったです。繰り返しになりますがオムニバスのプラットフォームは東南アジアのトラフィックにも対応できます。そこに興味を持ってくれる企業さんが意外と多かったという印象です。日本に広告を出したいという海外の企業さんや、モバイルに関しての問い合わせも多かったです。

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(盛況なオムニバスのブース)

岡田:そうなると、日本にいながら海外の案件もやる、というだけでなく、実際にシンガポールにブランチを立てて腰を据えてビジネスをする、みたいなことを考えたくなってしまいますね。

山本:そうなんですが、あくまで今回たくさんいただいたお話がちゃんと仕事になって、ビジネスとして可能性を感じられるようになってからですね。タイミングが来たと判断できたら、どんどん進めていきたいとは思っていますが。

岡田:おおー。素晴らしい。

山本:来月もまた来る、みたいなのは普通にあると思います。

岡田:そうなんですね。それぐらいの引き合いがこの二日間にあったということですね。

山本:そうです。もちろんこういうイベントなので、みなさんテンションが上がっているというのは差し引いて考えないといけないですが、帰って問い合わせを整理して、進められそうなところはどんどん進めていきたいと思っています。

東南アジアは別に”東南アジア”というカタマリじゃない。

岡田:素晴らしいですね。私はさっきから「素晴らしい」しか言ってないような気がするので少し話題を変えます(笑)。ここ数年東南アジアは伸びる伸びると言われていて、まあ実際に市場が大きくなるのは疑いの余地がないと思うのですが、そういった期待感とは裏腹に、ビジネスの現場では苦労しているという声も多く聞きます。オムニバスさんから見て、そういった期待と現実のギャップのようなものについて今回の出展を通じて何か感じられたものはありましたか?

山本:実際にまだこちらでビジネスを開始しているわけではないので、現時点ではわからないというのが正直なところです。ただ、現地の企業と話していると、例えば広告の売り方がいまだにCPD(Cost Per Day)が主流らしいという話がある一方で、外資系企業がどっとなだれ込んできて、RTBすごいよ、オーディエンスターゲティングだよと言って、ad:techのようなイベントで煽るという構図が見えてきています。そういったad:techの中の世界と、実際のビジネスの現場との溝みたいなものは感じることがあります。

岡田:肌感覚として、そこにはだいぶギャップがあるんじゃないかと思っているということでしょうか。

山本:もしかしたらあるんじゃないかなと。ただ、実際にこっちで広告主さんや代理店さんと仕事をしてみないと見えてこないんじゃないかとは思っています。

岡田:なるほど。もう少しだけこの話をお訊きしたいと思います。初日のセッションでは、ローカルマーケットについての特徴やデータ、ビジネスを進める上での課題などを話すパネルディスカッションが幾つかありました。年々エマージング・マーケットへの注目度が増す一方で、具体的にローカルへの導入で苦労している部分とか、課題は何なのかとか、そういった発見はありましたか。

山本:ベトナムとタイについてのセッションを聞いていてよく耳にした言葉が、「Government」だったんですね。考慮しなければならない要素として政府がある。ベトナムは確かに社会主義ですが。 

岡田:私もそのセッションは出ていましたが、確かに聞きました。ベトナムは国営テレビばっかりだとか。調べると衛星放送も可能みたいですが、一部の富裕層に限られるでしょうしね。

山本:ネットのインフラとか、規制がどの程度あるのとか、そういった不透明さを感じるのは確かです。

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岡田:今年のad:techはad:techじゃなくてsocial:techじゃないかというくらい、ソーシャルの話が多かったですが、東南アジアにおけるソーシャルビジネスの広がりや、オムニバスさんのソーシャルについての取り組みなど、そのあたりはいかがですか?

山本:オムニバスはやはりディスプレイアドバタイジングの会社なので、例えばつい先日FacebookがRTBを始めるというニュースが出ていましたが、そういったところをしっかりキャッチアップしていきたいなと思っています。あと、話は少し逸れますが、ソーシャルと一口に言っても国ごとにぜんぜん状況は違うなと考えています。Facebookの人口が多いのはインドネシアですが、インドネシアはスマートフォンというよりまだフィーチャーフォンが主流です。シンガポールはスマートフォンがだいぶ普及してますが、フィリピンやベトナムもまだこれからです。

岡田:ベトナムはZING MEが強いですよね。Facebookが解禁されたので急伸しているとは言っていましたが。

山本:東南アジアという国があるわけじゃないので、当たり前なんですけどちゃんと国別に考えていかないといけないなと。国ごとのデバイスの違いや、主流のサービスも違いますし。

今が進出するにはチャンスだと思う。

岡田:話をオムニバスさんに戻します。オムニバスさんはad:techでブースを出すのは今回のシンガポールが初めてではなく、サンフランシスコやニューヨークでも既に出されているとお聞きしていますが、過去の出展の中で、一番反応が良かったのはどこですか?

山本:今回のシンガポールかもしれないです。サンフランシスコも反応は良かったですが、今回は勢いがありますね。引き合いの種類も国もさまざまですし、カオスです。

岡田:すごいですね。でも確かに、参加者のハングリーさというか、そういう勢いは感じます。

山本:いろんな国からというのはアメリカでも一緒でした。サンフランシスコで引き合いのあったところはもう取引が始まっていますが、そういった海外との取引で経験値を積んでいくことによって、その国の市場がわかってくるようになります。

岡田:そういった海外市場に強いというのも、オムニバスさんの価値になりますね。

山本:国内を考えるとそうですね。海外に活動を拡げることによって、国内から海外に広告を出したい企業さんに適切にご案内ができますし、海外の企業が日本に広告を出したいときも仲介することができる。アウトバウンドとインバウンドの相乗効果があります。 ad:techにブースを出すようになってから、そのサイクルが分かってきました。

岡田:国内と海外をそれぞれ見ていて、気づくことはありますか?

山本:そうですね。二年前にシンガポールに来たことがあるんですが、その時は誰もテクノロジーの話をしていなかったのが、今年はこの盛り上がりですから、スピード感というか、勢いはとても感じます。特に、モバイルは早いです。それはもう東南アジアとか関係なく。

岡田:そうなんですか。具体的にどういったところでそれを感じますか?

山本:例えば、モバイルアプリがありますよね。あれはひとたび流行ると世界中からトラフィックがきます。なぜか分からないけど台湾から大量にアクセスがあるとか、そういうことが割と頻繁に起きます。これをビジネスにしようとすると現地の企業と直接やり取りをするしかない。そういった流れも手伝って、モバイルは本当に海外との連携が早かったです。今回もシンガポールのモバイル企業と話す機会があったのですが、拠点は確かにシンガポールだけど、世界中にサーバーがあって、世界中のトラフィックを捌いているようです。シンガポールはあくまでハブですね。

岡田:シンガポールは人口500万人くらいですから、そこだけで広告のマーケットを考えるのは現実的ではないですね。拠点はシンガポールでも、そこから東南アジア全体でビジネスをという企業は多いですね。

山本:税金も安いですし。企業にも優しい土地柄ですしね。

岡田:もう進出するしかないって感じですか!

山本:いや、ノリで来てはダメですね(笑)。歯切れよく「来た方がいいぜ!」と言いたいですけど、やはり不透明な部分も多いので。行くぜ!というのが目的化しても意味がないと思いますし。

岡田:最初におっしゃっていたように、進出した方がメリットがあることを確かめられる状況にしないといけないということですね。急いで来ても火傷するけど、ゆっくりしてると乗り遅れるというか、それぞれのステージよる見極めが大事ですね。

山本:日本でやっていても大変なことはたくさんありますから、こっちに来たからといって別に楽になるってわけでもないですので。日本では想像できないような大変なことがたくさんあると思います。一方で、今後間違いなく伸びていく市場なので、ある程度長期的な視点でやるにはとてもいいタイミングなんじゃないかなと思っています。

岡田:なるほど。ありがとうございました。さて、このサイトはアトリビューションの情報サイトなのですが、今回のad:techではRTBやDSPの話はあっても、アトリビューションに関する単独のセッションは残念ながらありませんでした。ただ、仮にアジアでのアドテクノロジー市場の成長をラストタッチだとすると、今回のシンガポールでの二日間はファーストタッチというか、アジアのアドテクノロジーの胎動を予感させるきっかけとしてしっかり貢献度をスコアリングすべきイベントだったと思います。
と、無理やりアトリビューションに繋げたところで、山本さん、最後にメッセージをお願いします。

山本:それでは少し大きめの視点からお話したいと思います。今回様々なアドテクノロジー系のセッションの中で聞く事ができたのが、アドテクノロジーの理解が進んだ、先端市場としての日本の存在と、約10年以上前からある日本のモバイルの広告市場の存在です。その2つについてはセッション以外でもいたるところで聞く事ができました。やはり日本という国はアジアの中ではダントツにマーケットが成熟しています。そこからくるノウハウや技術はアジア市場を考える上で非常に大きなアドバンテージになると感じました。あとは僕らのメンタリティー次第です、海外に対しても物怖じする事なく全力で取り組む事ができれば道は必ず開けていくはずです。日本も全然捨てたもんじゃない、自分たちにプライドを持ってやっていきましょう! 

岡田:山本さん、ありがとうございました!

聞き役:岡田吉弘(Yoshihiro Okada)Google+

(END)

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【アトリくんの視点】日本だけでなく海外を視野に入れ実践を繰り返されている山本さんのエネルギーが感じられるインタビューでした!実際に海外に向けてアクションを起こされているオムニバスさんだからこそ得られる知見が多くあるのですね。エマージング・マーケットへの期待と現実とのギャップを少しづつ埋めていきながらビジネスを拡大していく心意気に大いに勇気づけられます。アトリビューションについてはad:tech Tokyo に期待ですね。山本さん、貴重なお話をありがとうございました!

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