態度変容

特別寄稿:第三者配信で活きるアトリビューションマネジメント – 最適化手法にみるエージェンシーの本質的価値とは(朝日広告社)

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今年に入り、デジタルマーケティング業界におけるアトリビューションマネジメントの盛り上がりは更に加速を見せており、具体的な事例やコラム、分科会等を通じて様々な議論がなされるようになった。朝日広告社もこのアトリビューションマネジメントに引き続き取り組んでおり、前回に続く第二弾としてAttribution.jpに寄稿させて頂いた。この回では、アトリビューションマネジメントに第三者配信アドサーバーを用いる意義とその活用方法、更にアトリビューションマネジメントに基づいた最適化フェーズについて考えていきたい。

はじめに、アトリビューションマネジメントに使用するソフトについて整理しておきたい。使用するソフトは大きく分けて二種類に分類される。一つはアクセス解析ツールを使用し、クリックベースでチャネル間のユーザー行動を記録するパターン。もう一つはMediaMindを始めとする第三者配信アドサーバーを用い、ビュースルーベースでチャネル間のユーザー行動を記録するパターンだ。大きく二つの選択肢がある中で、朝日広告社では第三者配信アドサーバーを用いたアトリビューションマネジメントを推進している。その理由は大きく二つある。

一つ目の理由は、ビュースルーの効果を正当に評価するためだ。生活者がある商品に対し需要を喚起するまでのステップには、ビュースルー、つまり広告を見た効果を加味するのが妥当だと考えている。例えクリックされなかったとしても、広告は生活者の需要を喚起することができるかもしれない。クリックベースの計測を行うことでその可能性の芽を一切取り去ってしまうのではなく、評価に柔軟性を持たせることがここでの主な目的となる。

通常のスタンダードバナーもそうだが、大容量で配信される豊かな表現が売りのリッチメディアや、媒体が語り手となりコンテンツとしての説得力を増すタイアップ広告は、例えクリックされなくとも特にその効果を発揮しやすい。これらの広告は、クリック数の多い少ないで評価すべき類のものではない。より正確に書くと、これらの広告をクリック量で評価すべきでないことは、デジタルマーケティングに従事される多くの方が認識しているものの、困ったことに効果を数値で表現することができなかったのだ。「目に見えない効果」が発揮されていることはこれまでの経験を通じて頭では分かるものの、「その効果が何であるか」は明示することができなかった。クリック偏重主義の世界では、効率的にクリックやコンバージョンを確保できない広告は自然な流れとして悪とされる。効果が明確に説明されないものは、イコール効果がないものとして処理され、削られていく。しかし、その広告は本当に削って良いものであったのかは誰も知らなかった、というのが真実なのだろう。こうしたクリック偏重主義は、マーケティングにおける正しい判断を狂わせ、結果的に需要を喚起するタイミングやチャンスを逸することで、最終的なコンバージョンを減少させてしまう。この悪循環を回避するための、第三者配信アドサーバーという選択なのだ。こうして評価していくと、広告効果とはインターネット広告にクリック偏重主義が台頭する以前の、広告本来の意義に立ち戻っていくことになる。

二つ目の理由は、その配信機能にある。MediaMindを始めとする高機能な第三者配信アドサーバーには、多彩なディスプレイ広告配信機能が実装されており、その機能は大きく二つに分けることができる。一つは時間帯や配信比率、順序等のローテーション機能、もう一つは地域情報やサイト訪問履歴、購買履歴に基づくターゲティング機能だ。

ここで特に注目すべきは、「順序」と書いた広告クリエイティブのシーケンス配信が可能な点にある。つまり、一人のターゲットの「需要を喚起する」ことを目的として、広告クリエイティブによる段階的な訴求の切り替えを、配信コントロールによって図ることができるのだ。この機能は、アトリビューションマネジメントに基づくディスプレイ広告の配信最適化において、心強い味方となってくれる。

※1. シーケンス配信……
ユーザーごとに接触するクリエイティブの順序と接触回数を任意でコントロールした配信。

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従来の最適化では、直接コンバージョンやクリックに対して効率の良い媒体・メニューのみを選定し、直接効果の効率論だけでCPAの悪いものを削り落としていく手法が取られてきた。リスティング広告では、CPAの悪いビッグワードの順位を下げて、浮いた投下予算でCPAの安価なミドル、スモールワードで全体CPAのバランスを取り、目標CPAに合わせる。これらの手法は、そう時間を要さずして必ず限界が来る。厳密には目標CPAは守れるかもしれないが、コンバージョン数を伸ばすことはできなくなる。前回の寄稿でも少し触れたが、「需要を喚起された人」の母数が増えない限り、市場は競合社とのパイの奪い合いに過ぎず、自社のコンバージョン数を維持することですら、とても難しいということだ。

リスティング広告に当てはめると、あるビッグワード(一般名詞)の検索数が突然増えることはとても稀で、増えた場合は何かしらの要因によって「需要が喚起された人」そのものが増えていることが多い。この限られた資源とも言える検索数に対し、市場に競合社が一社参入すれば、自社が得るコンバージョンは多かれ少なかれ減少する(実際は商品の競争優位性に依存する部分がある)。他社が攻勢に出れば、更に状況は悪くなるのだ。

この状況を打破するためには、ターゲットへ需要喚起を意図的に働きかけることが必要不可欠となってくる。ここで鍵となるのは、効果的なユーザーシナリオを発見・開発することにある。強いシナリオの種を発見し、そのシナリオを更にクリエイティブとして開発することができれば、シーケンス配信を使うことでユーザーごとに「適切なクリエイティブ」を「適切な順番」で「適切な回数ずつ」届けることが可能になる。ここでの適切とは、「態度変容に必要十分な」という意味を示している。第三者配信を通じたシーケンス配信を活用することで、効率的な態度変容を促すことができる可能性が開かれるのだ。

それでは、ディスプレイ広告配信の中で「需要を喚起」し、更には「態度変容を促す」ユーザーシナリオとはどうやって発見すればよいのか。朝日広告社ではこのユーザーシナリオの発見を目的として、第三者配信を通じたクリエイティブの検証を行なっている。この検証は、媒体だけでなくクリエイティブに対しても貢献度をスコアリングして評価を行なっており、ターゲットがコンバージョンに至るまでの一連のプロセスにおいて、クリエイティブがどの段階で作用しているのかを紐解くものだ。下記例は、クリエイティブごとのパフォーマンスをマッピングした図になる。横軸はユーザーが態度変容しコンバージョンに至る過程で、クリエイティブが作用したフェーズを表現しており、1を基点として数値が小さいもの程、需要が喚起されていない初期段階のターゲットに作用しているクリエイティブ、数値が大きいもの程、態度変容からコンバージョンへのクロージングに作用しているクリエイティブとなっている。

図1. クリエイティブマッピング

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最適化はこのマッピングを元に、初期段階のターゲットに対して効果的に作用するインサイトが何であるのか、クロージングに作用するインサイトが一体何であるのか、をクリエイティブ表現から紐解いていくところから始まる。このインサイトの発掘までを分析サイドで行い、分析結果に基づいたクリエイティブ開発はコピーライターやデザイナーがその役割を担っていく。アトリビューションマネジメントは、その分析手法や貢献度スコアの配分方法に注目が集まりがちだが、実運用では予算配分の最適化だけでなく、配信の最適化まで行なっていく必要がある。その過程では、インサイトの発掘からクリエイティブの開発、ユーザーシナリオに基づくシーケンス配信の活用といった一連のフェーズを、アナリスト、プランナー、コピーライター、デザイナーがチームとなりコミュニケーションを組み立てていくのだ。アトリビューションマネジメントは、データの統合や分析だけでなく、その次にあるステップとして「いかにコミュニケーションを設計していくか」が欠かせない大切なポイントとなる。

ここまでシーケンス配信による最適化について書いてきたが、そもそもアドネットワーク等の自動最適化機能がある媒体に関しては、自動最適に任せておけば良いのではないか、という考え方もあると思う。ここで考慮しなければならないのは、その最適化にはアトリビューションによるチャネル評価が現状加味されていない、という点だ。事実、朝日広告社の事例では、アトリビューションマネジメントに基づき人の頭脳によって設計されたクリエイティブとユーザーシナリオの組み合わせが、媒体サイドで提供される自動最適化のパフォーマンスを上回ることが分かってきている。

 今まさに活発な議論がなされているアトリビューションマネジメントだが、その定義や分析手法、貢献度スコアの配分方法にその本質はない。大切な部分は最適化にあり、分析結果を元に人の頭脳でターゲットの気持ちに想いを巡らせ、コミュニケーション設計をしっかりと行うこと、生み出されたコミュニケーション・プランをテクノロジーに乗せて適切にターゲットへ届けることにある。この最適化サイクルを実現するためには、プラニング、クリエイティブ、テクノロジーがシームレスに融合する必要があり、そこにこそエージェンシーが取り組まなければならない価値があるのだ。

こうして考えていくと、アトリビューションマネジメントは「コミュニケーションを考える」、というエージェンシーがクライアントへ提供する価値の原点に帰着する。アトリビューションマネジメントは、この盛り上がりを牽引されているコンサル、テクノロジーベンダー、クライアント、メディアといった立場の方々からだけでなく、本来的にはエージェンシーが発信し取り組まなければならない課題だと考える。朝日広告社は、デジタルマーケティングの総合最適化を図る手段として、アトリビューションマネジメントに今後も真摯に向き合っていきたい。

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株式会社朝日広告社
iコミュニケーション局
デジタルマーケティング部
前田 初

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【アトリくんの視点】
朝日広告社前田さん、お久しぶりです!2度目の登場、ありがとうございます。シーケンス配信による最適化は、アトリビューションとからめると非常におもしろいことができそうですね!それにしても後半部分はその通りだとアトリくんも感じてます。アトリビューションマネジメントそのものに意義があるのではなく、アトリビューションマネジメントは、より本質的なコミュニケーションを考えるための取り組みの一つに過ぎないということですね。そして、エージェンシーがその上で担うポジションについても考えさせられます。

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アトリビューション分析は認知や態度変容も対象にしているのか?

初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)について紹介し、その後、いくつかの質問があったと前回の投稿(http://www.attribution.jp/000072.html)でも書いたが、一つ気になる質問があるので回答しておきたい。

今回の質問は「アタラ・メソッドでは結局、広告の価値をコンバージョン効果でしかみていないのですか? 認知や態度変容については計測していないのですか?」というものだ。まず、この質問に回答し、その後、さらに論を進めて、認知や態度変容についてアトリビューション分析でどのように数値化しているかについて解説していきたい。

計測はしていないが、考慮はしている
「認知や態度変容を計測していないのですか?」と問われれば、もちろん、「計測はしてはいない」という回答になる。では、もし「認知や態度変容について考慮していないのですか?」と問われれば、答えは「考慮はしている」である。

これは、どういうことだろうか。認知や態度変容について測ってはないが考慮はしているとはどういうことなのか? 認知や態度変容について計測する場合に多くみられる手法は、アンケート調査を実施することだ。特定のブランドやキャンペーンについての純粋想起や助成想起などを調べる。あるいは、特定のブランドに対する好意度や購買意向などを調査し、認知の変化や態度への影響を測定するのである。このような従来のアンケート調査などでの計測は、アタラでは通常、実施してはいない。ただし、アトリビューション分析では、認知や態度変容について考慮していないのかというと、そうではないのだ。これは、アタラ・メソッドに限った話ではなく、米国などでアトリビューション分析が紹介される場合にも同様だと考えていい。

各流入元には役割がある
アトリビューション分析では、コンバージョンに至るまでの流入経路のデータを測定し、各流入元のコンバージョンへの貢献度を算出する。どのようなアトリビューション・モデルを使った場合でも、この基本的な考え方は同じだといっていい。

たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C → コンバージョン という流入経路があったとしよう。このような経路の説明として、アタラでは、初回 → 中間 → ラスト → コンバージョン と呼び換えている。同様に、米国の資料などでは、First Engagement → Middle Engagement → Last Engagement → Conversion あるいは、Introducer → Influencer → Closer → Conversion などと言い換えているケースも多い。Engagement をあえて翻訳すれば、「顧客との関係構築」という意味になる。つまり、最初の顧客との関係構築 → 中間の関係構築 → ラストの関係構築 と展開していくことを示す。Introducer は「顧客に紹介した流入元」という意味だろう。Influencerは「顧客に影響を与えた流入元」、Closerは「顧客との取引を締結させた流入元」といった感じだろうか。

流入経路の各流入元をこのように言い換えているのはなぜだろうか? それは、各流入元が顧客との関係性において何らかの役割を担っているという考え方が根底にあるからだ。

たとえば、初回の流入元を First Engagement や Introducer と言い換えているのはなぜか。それは、初回の流入元が顧客との最初の接点であり、顧客に対して商品やサービスを最初に紹介するという役割を担っていると考えているからだ。最初に紹介するということは、顧客の側からみると、その商品やサービスを初めて「認知(Awareness)」した瞬間であると言える。

同様に、Middle Engagement や Influencer というのも、顧客に何らかの影響を与え、コンバージョンする可能性を高めてくれる役割だと考えていることになる。つまり、コンバージョンする可能性を高めたということは、コンバージョン意向を、あるいは、購買意向を高めてくれる役割を担っているということだ。これは、まさしく、「態度変容(Attitude Change)」にあたる。

Last Engagement や Closer とは、コンバージョンに至る顧客との最後の接点で、顧客に最終決定を促す役割を担っていると考えていることになる。顧客にコンバージョンという「行動(Action)」をさせた役割を担ったことになるのだ。

購買プロセスの中で認知や態度変容を考えている
アトリビューションで分析する流入経路は、このように顧客との関係構築やその変遷を前提としている。いわゆる、購買プロセスや購買サイクル、すなわち、消費者の意思決定プロセスを前提にして、初回の流入元が「認知」、中間の流入元が「態度変容」、ラストの流入元が「行動」という役割を担っていることを仮定しているといってよい。そのため、この初回〜中間〜ラストの各流入元に貢献度を配分するという手法は、認知や態度変容も考慮して貢献度を割り振っているということになるのだ。

そもそも、アトリビューション分析のはじまりは、「認知や態度変容に影響を与えているはずの初回や中間の顧客接点を考慮しないのはおかしいではないか!」という叫びにも似た訴えではなかったのか。ラストの顧客接点だけを対象にした従来のラストクリックCPAが、コンバージョン効果だけしかみていないと問題視され、その代替的アプローチとして勃興してきたのがアトリビューション分析なのだ。アトリビューション分析はその起源において、認知や態度変容を分析対象にしているのは明らかである。

コンバージョンに至らなかったものも何らかの効果があるはずだ
このようにアトリビューション分析は、認知や態度変容も考慮している。しかし、コンバージョンに至った流入経路だけを分析対象にしているのであれば、まだ不十分だと言える。コンバージョンには至らなかったとしても、認知させたり、態度変容を促したりしている可能性はある。だから、広告の効果としては、コンバージョンに至った流入経路とコンバージョンに至らなかった流入経路の両方を分析した方がよいのである。

実際によくあることだが、広告は非常に効果的に展開されていて、多数の流入をサイトにもたらしている。それにもかかわらず、サイトのユーザービリティが悪く、コンバージョン数が非常に少ないということがある。この場合に、その原因を広告に求めることは不当であろう。同様に、商品やサービスが魅力的ではないために、せっかくサイトに流入してきた消費者を逃してしまうこともある。ブランド力がないために消費者の信用を得られず、コンバージョンに至らないケースもあるだろう。一般的に、サイトのユーザービリティ、商品・サービスの競争力、そして、ブランドの競争力がコンバージョンに与える影響は大きい。これらの競争力が低いクライアントの場合は、広告出稿を効果的に展開したとしても、コンバージョン数をあまり稼げないという結果に陥りがちだ。このようなケースでは、コンバージョン数が少なかったとしても、広告が悪かったからだとはいえないであろう。

アトリビューション分析では、コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にできる。使用するデータは、流入経路で得られる範囲に限定されはするものの、コンバージョン効果だけではなく、認知や態度変容も考慮して評価できるようになる。つまり、コンバージョンには至らなくても、その流入経路の中に出現する各流入元には何らかの効果があったはずだと考え、そこを分析対象とするのである。ただし、認知や態度変容をアンケート調査などで測るのとは別である。あくまでも、考慮して評価するということになる。たとえば、認知率が何パーセントあるか、クライアントのブランドイメージがどのように変化したか、などを流入経路のデータ分析で把握するのは難しい。そのようなことを把握したい場合、現時点では、アンケート調査などの手法を使った方がよいであろう。

コンバージョンに至らなかった流入経路の分析方法
さて、コンバージョンに至らなかった流入経路を分析対象にする場合、実際にはどのようにして分析をすればよいのだろうか。コンバージョンに至らなかった流入経路とは、たとえば、流入元A → 流入元B → 流入元C で終わっていてコンバージョンは発生していないものである。

アタラでは、コンバージョンを発生させなかった流入経路の分析をする際には、まず、すべての流入経路(コンバージョンに至ったものと至らなかったものすべて)を履歴数ごとにグルーピングすることから始めている。履歴数とは、この流入経路の中に出現する流入元の数のことだ。流入元A → 流入元B → 流入元C の場合は履歴数が3回となる。グルーピングでは、履歴数が1回のグループ、履歴数が2回のグループ、履歴数が3回のグループ、履歴数が4回のグループ、…… と分けていく。測定ツールの設定などによって、取得できる履歴数の上限が決まっている場合は、その上限までグルーピングしていく。グルーピングしたあとに、グループでのユニークユーザー数を分母にコンバージョン数を分子にして、コンバージョンレート(CVR)を算出する。これを各グループでそれぞれ算出していくと、履歴数1回グループのCVR、履歴数2回グループのCVR、履歴数3回グループのCVR、履歴数4回グループのCVR、…… と算出できる。このようにグルーピングしてCVRを算出した場合、どの履歴数のグループがもっとも高いCVRになるのかをみていくのである。

いくつかのクライアントのデータを分析して分かったのだが、クライアントや分析時期によって差はあるが、だいたい履歴数5回ぐらいまではCVRが徐々に上昇していき、そこをピークとして、その後はCVRが低減していく現象がある。つまり、1回、2回、3回と履歴数が増えるにつれて顧客育成が起こり、消費者がコンバージョンしやすい状態に変わっている。態度変容が起こっているといってもよいだろう。そして、5回前後を境にして効果が飽和し、CVRが下がり始めると考えられる。このようなCVRの変化は、コンバージョンのしやすさが変わっているからだと判断できる。1回よりも2回、2回よりも3回の方がコンバージョンしやすくなっているからこそ、CVRが上がっていくのだ。

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コンバージョン性向を高めるために
アタラでは、このコンバージョンのしやすさを表すために「コンバージョン性向(Propensity to Convert)」という用語を使っている。経済学を学んだ人なら馴染みがあるかもしれないが、消費性向(Propensity to Consume)という言葉があり、可処分所得のうちで消費支出にあてられる額が占める率のことを指す。この消費性向は消費意欲を示す指標として使われている。消費性向が高いほど、消費意欲が高いことになる。たとえば、「アメリカは日本よりも消費性向が高い」などと使われる。この消費性向とのアナロジーで、「コンバージョン性向」という用語を使っている。そもそもコンバージョンとは消費という大きな概念の一形態であるため、このアナロジーも分かりやすいだろう。「コンバージョン性向」が高いほど、コンバージョン意欲が高い、つまり、コンバージョンしやすいことを示す。この用語は、アタラの造語ではない。欧米のウェブマーケティングの資料の中でも使われているので言葉としての新しさはないが、アタラにおいては、この「コンバージョン性向」を確率として捉えて、アトリビューション分析に導入している。

初回の投稿(http://www.attribution.jp/000069.html)でアタラ・メソッド(ATARA Method)の基本的な考え方について紹介した。その中で、アトリビューション・スコアやアトリビューションCPAを用いてアトリビューション分析をおこない、シミュレーションを実施していることを書いた。このシミュレーションは、実際に得られたデータを分析し、その結果に基づいて予算配分やクリエイティブなどを変更したり、組み合せを変えたりして効果を高めること目的としている。予算配分の組み合せを変えることによって、より多くのコンバージョンを発生させられないかを模索する。あるいは、より多くのコンバージョンを発生させられる状況を作ったり、よりコンバージョンしやすい状態にしたりする方法を探していると言ってもよい。要するに、シミュレーションでは「コンバージョン性向」を高めようとしているのだ。コンバージョンする確率が高くなるように操作しようとしているのである。

コンバージョン性向として数値をはじきだす
履歴数グループごとにCVRが変化するという事実は、それぞれのグループごとにコンバージョンする確率が変化していることを示す。「コンバージョン性向」が変化するといってもよい。そして、すでに発生した過去の事象が分かっていれば、それに基づいてコンバージョンする確率を推定できると考えてよい。たとえば、履歴数1回グループのCVRが1%、履歴数2回グループのCVRが2%と過去のデータが示していれば、今後も大きく外的状況が変わらない限り同様のCVRになると推定できる。このような推論を展開していくと、コンバージョンが発生しなかった流入経路についても、どのくらいの確率でコンバージョンが発生するのか予測できるのだ。

履歴数1回グループにコンバージョンに至らなかった200個の流入経路があったとしよう。つまり、クライアントのサイトに1回訪問したが、コンバージョンせずに離脱したのが200あったとする。このうちの50%が2回目の訪問をするとする。この履歴数1回グループのうちで履歴数2回グループに推移する率も過去のデータを分析すれば分かることである。この200個のうちの50%が履歴数2回グループに推移すると、履歴数2回グループが200個の50%分だけ増加するので、100個増える。先述のように履歴数2回グループのCVRは過去のデータで2%になっているならば、履歴数2回グループの増加分100個の2%で、2個のコンバージョンを発生する確率になる。

このように過去のCVRに依拠してコンバージョンが発生する確率を計算していくと、すべての流入経路に対して「コンバージョン性向」を算出することが可能になるのだ。

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ここからは、また、アトリビューション・スコアの話に戻る。つまり、コンバージョンが発生しなかった流入経路については、確率を使うことによってアトリビューション・スコアを割り振っていくのだ。「何個のコンバージョンを発生させる確率がありますよ」ということが分かるので、その確率で捉えたコンバージョン数をアトリビューション・スコアとして流入元に割り振っていくのである。その結果、実際にはコンバージョンに至らなかった流入経路も、どのくらいコンバージョンしやすい状態になっていたかを数字で示すことができる。そして、そのどのくらいコンバージョンしやすいか、つまりは、「コンバージョン性向」をさらに高めるためには、どのように予算配分やクリエイティブなどを変更すればよいかをシミュレーションできるようになる。シミュレーションを通じて、次なる施策をよりよいものにしていけるようになるのだ。

従来の手法とあわせて使っていく
今回は、広告の効果として、購買プロセスを前提に解説した。しかし、広告の効果や広告の役割については、さまざまな議論や指標があり、短絡的に論じることは危険であることも承知している。あくまでも、アトリビューションという視点で、流入経路から取得できるデータに限定して、分析をおこなう際の考え方や手法に絞って解説している。当然のことであるが、アトリビューション分析にプラスして、これまでのアンケート調査などによる認知や態度変容の把握は引き続き重要だ。アタラとしても、予算的に余裕のある広告主に対しては、従来の手法での認知や態度変容の把握も勧めている。理想を言えば、アトリビューション分析と従来の手法をあわせて、広告の認知や態度変容への影響を測定し、広告プランニングに活用していきたいものである。

アタラ合同会社
COO
有園 雄一(Yuichi Arizono)
Google+

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【アトリくんの視点】
コンバージョンに至った流入経路と至らなかった流入経路の両方を分析対象にすることが、アタラの場合は一つのポイントになっています。また、初期の頃から、従来の手法での認知や態度変容の把握も並行して行うことを勧めています。

コメント

国産DSP「FreakOut!」が Google Analytics と連携

フリークアウトは、RTB(リアルタイム入札)で広告枠の買付を行う国産の専業DSP。

広告配信が可能なアドエクスチェンジにおけるビュースルー、クリックスルーのパフォーマンスをどう測定、評価するかが大きな課題の一つであるが、このたび、フリークアウトではGoogle Analyticsとの連携を実現。フリークアウトのDSPを利用しているクライアント環境で検証を行った。
その結果が出てきたので、内容について寄稿をいただいた。

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今年 1 月にリリースされた国内初の RTB (リアルタイム入札) 対応 DSP 「FreakOut!」は、アクセス解析ツール「Google Analytics」との自動連携を開始しました。

「広告接触によるオーディエンスの態度変容をどのように捉え、オンラインマーケティング活動にいかにフィードバックするか」という、7 月に入りアドテクノロジー界隈のブログを中心に盛り上がりを見せている課題 (*1) を、本記事では、より実務的な視点から事例を元に解きほぐしていくことができればと思います。

態度変容をどう計測するか

ディスプレイ広告を視線の端に捉え、なんとなくブランド名が記憶に残った。複数回広告を見たことで、その商品にちょっと興味が湧いた。このような心の動きだけでは、その効果を計測することはできません。心が動いたことで、どのようなアクションにつながったのか。そのアクションを捕捉することで、初めて態度変容を測ることができるようになります。

心が動いた後に行うアクションの中でも、FreakOut! では検索行動に注目しています。FreakOut! が配信するディスプレイ広告に接触し、最終的に別経路からコンバージョンした顧客の直近サーチクエリから、心の動きを炙り出す。これを実現するための方法のひとつが、Google Analytics との連携になります。(*2)

導入事例

今回は、ポーラ・オルビスグループで高品質なスキンケアブランドを展開する「株式会社ディセンシア」様の実際の事例をご紹介いたします。

本レポートでは「1 度でもディスプレイ広告に接触し、最終的に別経路でコンバージョンに至ったケース」の中から、アクセス解析ツールのデータを活用することで本当に意味のある = 顧客の心を動かしたケースのみを抽出し、見えづらかったディスプレイ広告効果の可視化を目的としています。

■ まずは、多数発生した間接コンバージョンの分類

調査期間内において、直接 (=ラストクリック) コンバージョン件数に対し、間接コンバージョン件数は、約 12倍。初来訪から商品購入までに検討期間を要する商材であることから、妥当な比率といえます。

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■ 続いて、ブランドキーワード検索を抽出

間接コンバージョンは、検索、外部サイト、メール、などを最終接触経路としています。この中から、検索エンジンでブランドキーワード (*3) を使って検索して間接コンバージョンに至ったケースのみを抽出すると、全間接コンバージョンの約 45 %が該当しました。

*3 ブランドキーワードとは、会社名、商品名、ブランド名などクライアント様固有の名詞を指す

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ブランドキーワード検索を抽出したのは、ディスプレイ広告との接触を繰り返すことで、クリエーティブ内に含まれるブランドキーワードの認知が高まり、結果的に検索想起されやすくなる = ディスプレイ広告による態度変容 と、今回クライアント様が定義しておられたためです。

■ 接触数における、ブランドワード検索傾向

ディスプレイ広告との接触を経て、最後は検索エンジン経由で商品購買に至った間接コンバージョンを精査し、ディスプレイ広告接触回数と検索キーワード傾向に相関関係があるかを調査した結果が以下になります。

・接触回数が増えるほど、ブランドキーワード検索が占める比率が上がる。
・接触回数が増えるほど、ブランドキーワードの中でも変化が見られた。
  - 接触回数が少ないと、不正確な検索ワードが目立つ
  - 正しいスペルのアルファベットで検索した顧客のほとんどは、最終接触がリターゲティング広告で、接触回数が高い

■ 期待通りの広告接触を経たオーディエンスの検索傾向

本キャンペーンにおいて狙う購買ファネルは、(下図参照)
 1. オーディエンス拡張配信 (*4) で広く認知&クリックで LP 誘導
 2. リターゲティング広告によるリマインド効果
 3. ブランドキーワード検索で刈り取り

という形で設計しており、ブランドキーワード検索による間接コンバージョンのうち、40 %が、この設計通りのファネルを描いて商品購買に至っていました。

*4 オーディエンス拡張配信とは、リターゲティング/コンバージョンしたオーディエンスデータを加工し、類似するオーディンスにも配信先を拡げる FreakOut! の独自技術

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逆に残りのブランドキーワード検索による間接コンバージョンは、

 1. 最初からリターゲティングオーディエンスであった
 2. オーディエンス拡張のまま、リターゲティングを飛び越えてブランドキーワード検索をするオーディエンスに育ってしまった

のいずれかになります。

1 については、フリークアウト実施以前からリターゲティングオーディエンスであったことから、既存顧客か、もしくは他社の広告によってすでにコンバージョン直前まで育成されていた可能性が高いと考えられます。
いずれにしても、FreakOut! によるコンバージョン貢献度は低いと言えるでしょう。

2 については、慎重な議論を要します。クライアントサイトに一度も来たことがないのに、しっかりとブランドキーワード検索で訪れてコンバージョンしてしまうケースです。もし、ウェブ以外のプロモーションをクライアントが行っていなければ、ディスプレイ広告との接触の繰り返しのみで、検索想起されたことは説明がつきやすいですが、本クライアントにおいては、雑誌等でもプロモーションを行っており、この場合も、FreakOut! によるコンバージョン貢献があったとは言いづらいと考えます。

以上より、設計通りの購買ファネルを描いて間接コンバージョンに至った場合のみを、一定のコンバージョン貢献があったと見なすこととします。

■ 抽出した間接コンバージョンをどのように評価するか

以上より、貢献があったと見なせるブランドキーワード検索経由の間接コンバージョン件数は、直接コンバージョンに対して、約 2 倍の件数となりました。

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しかしながら、ここで単純に

直接 CV 1+ 間接 CV 2 = 3

として、「実は 3 も広告効果が良い」といった話にはなりません。間接コンバージョン 1 件あたりの貢献度を、直接コンバージョン 1 件と比べて、どのように評価するかがポイントになってきます。このあたりの議論は、本 Attribution.jp の記事でもありますが、FreakOut! では今のところ、他広告キャンペーンの実施状況や、商品特性といった情報から、クライアント様とのお打ち合わせの中で納得感のある数字を決めております。概ね 0.5 件程度でしょうか。

算出方法については、今後も議論や技術革新が求められますが、予算配分の最適化を迫られる現場としては、ポイントを与えるべき間接コンバージョン数がわかるだけでも、同じ予算内でより高い成果をあげることに繋がるのではないかと考えております。

次の一手

今回の連携を通じ、Google Analytics を利用しているクライアント様であれば、自動的に DSP の広告配信レポートと Google Analytics のデータが統合されます。特別な設定をする必要もなく、上述のケースのようなデータをご覧頂くことが可能になります。

これらのデータを元に、例えば検索連動型広告のビッグワード予算をディスプレイ広告に寄せることで、同予算内での獲得数を伸ばすといった、他施策も含めた予算最適化を行うことはもちろん、DSP の単価設定や配信ロジック、配信先設定の見直しを行うなど (*5)、単純に「媒体を評価する」こと以上の PDCA サイクルを回すことができるようになります。

最後に、本事例はディスプレイ広告の態度変容に対する貢献を完全に評価したものではもちろんありません。貢献度を測る方法論は今後さらなるイノベーションが必要です。我々もテクノロジー企業として、理想を追い求めていくことでこそ革新が起こると確信しております。と同時に、クライアント様のマーケティング活動の現場で、リサーチャーの役割に留まらず、今でき得る範囲の、価値のあるソリューションを提供できるよう開発を進めていきたく思います。

Google Analytics だけでなく、メジャーなアクセス解析ツールとの連携も予定しております。RTB による広告枠買付、また最新のオンラインマーケティングに関するクローズドセミナーも定期的に開催しております。ご関心のある方は info@fout.jp 、もしくは 03-6365-5958 までご連絡ください。

株式会社フリークアウト
佐藤 裕介

*1 特に Fringe81 田中社長のこちらの記事や、@sembear さんのこちらのシリーズATARA 有園さんの ATARA Method の論考は非常に参考になります。

*2 Fringe81 Blog にて同様のご指摘があります。図示による概念整理が極めてわかりやすく、参考にさせていただきました。

*5 今回の場合、間接コンバージョンした顧客は、主に Yahoo! 検索を利用していることがレポートからわかりました。(Y!:G = 90:10) FreakOut! では、リアルタイム入札するオーディエンスがどちらの検索エンジンユーザーかを指定できるので、このようにコンバージョンデータからフィードバックがあると、更にパフォーマンスを改善することが可能です。

株式会社フリークアウト
2010 年 10 月創業。RTB (リアルタイム入札) で広告枠の買付を行う国産の専業DSPです。 広告テクノロジー会社でありながら、媒体に設置された広告枠の管理を一切行わず、 自社テクノロジーを広告枠の買付に特化させることで、 事業ミッションをご利用頂く広告主様のROI最大化のみに絞りました。

佐藤 裕介
Google の広告部門、技術系スタートアップへの出資、開発支援を経て株式会社フリークアウトの創業に参画。Twitter ID: usksato

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【アトリくんの視点】
DSPによるアトリビューションの取り組みについての報告は日本で初めてではないでしょうか?ユーザの多いGoogle Analyticsとの連携というのも画期的です。検索キーワードとの関連性など、色々見えるので、キャンペーンの設計、予算配分決定に役立ちますね。
ところで今日はリアルにfreak outしないよう、サングラスで強がってみました!前が見えない!

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