朝日広告社

【国内事例】スカパーがデジタルでのブランド認知を獲得するためアトリビューション分析を実験的に導入

スカパーのアトリビューション分析、記憶に残り検索誘発する広告探る(日経デジタルマーケティング/有料会員のみ)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmgp/20121113/239385/

日経デジタルマーケティングは2012/11/14の記事において日本で唯一、アジア最大の有料多チャンネル放送・衛生事業を行うスカパーJSATがマス広告の持つ高い効果を認識しながらも、デジタルの中でのブランド認知獲得が必要だという危機意識を持っていると紹介している。

そのために、デジタルでのディスプレイ広告の効果やキーワード検索によるサイト訪問など可視化し、最適化するアトリビューション分析を実験に導入したという。

アトリビューション分析を行うことで記憶に残り検索を誘発する広告の重要性を認識するなど、一定の効果分析ができたが、継続実施にはコストや分析スピードに課題があると記事は紹介している。

アトリビューション分析の方法や効果、課題に関する詳細な内容は日経デジタルマーケティングの有料会員登録で閲覧できる。

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アトリビューション特別対談:株式会社朝日広告社酒井克明 ×アタラCOO有園雄一

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特別対談です!今回は、株式会社朝日広告社インタラクティブメディアのプランニング部門をリードする酒井克明さんに広告代理店としてのアトリビューションマネジメント見方や取り組み方を色々と伺っていきます。

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広告代理店から見た「アトリビューションマネジメント」

有園:本日は、朝日広告社の酒井さんをお迎えして、いろいろとお話をお伺いしていきたいと思います。まず、自己紹介をお願いいたします。

酒井:私は元々、ネットワークエンジニア出身です。その後はネット専業広告代理店でリスティング広告のビッドツールを作っていました。

有園:専業広告代理店に行かれたのはいつごろですか?

酒井:2005年から2006年頃で、1年半ぐらいいました。その後、ネットベンチャーで事業開発に携わったり、広告主側にもいき、リアルも含めマーケティングの責任者として仕事をしました。朝日広告社に入ったきっかけは共通の知人の紹介です。ネット広告やデジタル系はキャリアとしてベースがありますが、ネットだけの限界も感じており、縁があって朝日広告社に入りました。

有園:エンジニアとネット広告代理店を経て広告主側に移った際に、マーケティング全体を把握するようになったということですね。

酒井:ネット専業広告代理店にいたときも、ツールはツールで、分析後にどうするかという課題意識が自分の中にあり、次第にコンサルの領域に入っていきました。朝日広告社に入りたての頃は、コンサルチームを作り、分析を軸にしながらお客様の課題を解決していました。ただ、テクノロジーのベースをスキルとして持っているというのは総合広告代理店の中でも異色の経歴じゃないでしょうか。幸いにもこのキャリアがあったからこそ今の自分に活きているとも確信しています。ラッキーですよね。「持ってる」んでしょうね(笑)

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有園:朝日広告社に入ったのはいつですか?

酒井:2008年です。

有園:今はどのような業務をやっているんですか?

酒井:インタラクティブメディアのプランニング部署を率いています。朝日広告社のインタラクティブ領域はマーケティング、クリエイティブ、コンサルを一つにしたソリューション系の部署とメディアプランニング部署の二部体制になっていて、私はメディアプランニングの部署を統括しています。私自身のキャリアからするとよく、メディアプランニングじゃなくてソリューション側でしょ?なんて言われることもありますが(笑)

有園:アトリビューションにはどのように関わっているのですか?

酒井:昨今、ネット広告においてはメディアプランニングもCPAといった見方だけでは難しくなってきており、ディスプレイ広告等も含めて、全体のプランニングをどうするかという課題にぶつかり、アトリビューションに触れるようになりました。

有園:アトリビューションに取り組み始めたのはいつ頃ですか?

酒井:2010年に、メディアマインドさんとアドビさんと弊社の三社でアトリビューションマネジメントの評価テストを開始しました。当時テストを開始しますと言ったプレスリリースも出しているのですが、その頃からです。

有園:その結果をAttribution.jpに寄稿していただいたわけですね。

酒井:評価テストの結果を出せる範囲で寄稿させていただきました。

有園:アトリビューションマネジメントの評価テスト結果をリリースするまでに時間がかかったと思いますが、やるに至ったきっかけはなんですか?

酒井:きっかけは、御社の杉原さんにアトリビューションマネジメントのことを教えていただいたからです。最初は「なんだそれは?」という感じだったのですが、アトリビューションのことを調べていくうちに「これは、お客様の課題を解決できるのでは?」と考えるようになりました。当初は、リリースを出すことまでは考えていませんでしたが、当時国内では業界でまったく事例もありませんでしたし、せっかくだから出してみようということになりました。良い結果が出るかどうか分かりませんでしたので、リリースを出すのは不安でもあったのですが。まあ、いっとけみたいな、ある意味追い込む意味でもリリースを出しました。

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有園:弊社でもお客様のアトリビューションマネジメントをやるときは、よい結果が出るかどうか不安になることがあります。

酒井:確実に結果が出るとは言いきれないですからね。

有園:分析結果によっては良い提案がでないこともあります。現状維持が一番いいパターンもありますよね。

酒井:感覚値ではありますが、クリックベースでの最適化しかしていないお客様は結果が出やすいです。これまで見ていなかったデータに目を向けて改善すれば、それなりに結果は出ると思います。

有園:ビュースルーの見える化はインパクトが大きいと感じているわけですね。

酒井:一般的に、クリックは1%もありません。その1%にばかり目を奪われて残りの99%を切り捨てるのではなく、99%を生かすことが重要です。クリックする人はモチベーションが高いわけで、まったくクリックしない興味のない人をいかに振り向かせることができるか。ここが勝負だと思います。クリックしていない人のデータを、今までは無視してきたわけですが、もったいなくないですか。99%以上の人を無視しているんですよ。この部分に目を向ければ、クリックしたかしないかではなく、「誰に」「何を」「どこで」「どうやって」が見えてくると思っています。これってマーケティングの基礎じゃないですか。当たり前の部分にようやく目が向けられるようになったということかなと。悪いものを削るのは簡単ですが、悪いものを良くしていかないと。

有園:アトリビューションの話をすると、どうしてもコンバージョンにフォーカスしがちです。コンバージョンを重視したい気持ちは分かります。でも、本当はコンバージョン以前、クリック以前の99%の人たちをどう振り向かせるかが重要ですね。そのデータを分析しなければ、そもそもコンバージョンを飛躍的に増加できないということを世の中の方々に理解していただきたいですね。

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酒井:そうですね。ユーザーの気持ちを振り向かせることが、結果的にコンバージョンの母数を増やすことになると思います。クリックした人だけではなく、クリックしなかった人をいかに振り向かせるか。それを考えるべきです。アトリビューションは究極は「ユーザー育成」だと思っています。ユーザーのモチベーションを育成して、振り向かせ、顧客化させる。お客様に儲かっていただかないと私たち代理店も儲からないので。

有園:なによりも、広告主に儲かっていただくことが広告代理店の利益になる。そのような意識を持って仕事をしている広告代理店の方は、実際にはあまり多くないかもしれないですね。

酒井:そうかもしれませんね。広告代理店は、広告枠の代理業ではなく「代理人」であるべきと考えています。弊社は、特にその点を、大事にしています。

有園:媒体社の代理人ではなく、広告主の代理人ということでしょうか。

酒井:いえ、媒体社も広告主も、御社のようなパートナーさんも、弊社も、そしてユーザーも、みんながハッピーになるのが理想です。難しいですけどね。

有園:いい話ですね。アトリビューションに取り組む広告代理店が増えているようですが、総合広告代理店の御社には、どのような独自性があるのですか?

酒井:現在、データを可視化できるのがデジタル領域だけなので、今後はマスメディアやオフラインのデータを含んだアトリビューションの取り組みが重要だと考えています。また、専業広告代理店さんはどちらかといえば、獲得よりのクリエイティブワークは得意ですが、総合との違いは、ターゲットのインサイトから考えた、ターゲットを振り向かせるクリエイティブが総合広告代理店は得意だということです。総合広告代理店のクリエイターは、昔からやっていることなので当たり前のことですが。

有園:総合広告代理店として御社の独自性は、マス広告を含めたアトリビューションに取り組んでいけることと、クリエイティブの作り方が違うということですね。クロージングだけではなく、興味のない人をいかに振り向かせるかに長けているということですね。

酒井:そうですね。そこが広告の面白いところですし、本質だと思っています。

有園:ひとつずつお伺いします。まず、マス広告を含めたアトリビューションについては展望などありますか?

酒井:昨年、朝日広告社ではアトリビューションダッシュボードというものをリリースしました。アタラさんにもご協力いただきながらリリースいたしましたが、このダッシュボード上でマス広告も可視化できるように取り組んでいます。ただ、マス広告でユーザーの行動をデジタルのようにコンバージョンパスデータとしてデータ化するのは不可能に近いです。まずは、今できることから手をつけています。マスメディアも含め、どのように貢献しているのか。どのメディアをどれだけ投下すればどの程度効果がでるのか。ダッシュボードを使って、そういった部分を可視化できるように取り組んでいます。現状デジタルデータにおいてはAPIを介して自動的にダッシュボード内にデータが蓄積できるように作ってあります。将来的にはマスメディアのデータ蓄積も自動化したり、量的データだけでない、クリエイティブのような質的データの蓄積、DSPのようなプラットフォームとの連携等の進化も視野に入れています。今後、この取り組みが弊社の独自性にもなると思います。

有園:アトリビューションダッシュボードは、一般の広告主が使えるASP型サービスですか?

酒井:残念ながら現状では違います。今後、オープンにするかは検討中です。

有園:期待を集めているようなので、ゆくゆくはリリースしたいですね。

酒井:単なるダッシュボードだけにはするつもりはないので、いろいろな可能性を秘めています。ご期待ください。

有園:マス広告に関しては、ダッシュボードを中心に進めているということですが、もうひとつの要素であるクリエイティブは、どのような取り組みをされているのですか?

酒井:弊社独自のやり方かもしれませんが、例えば、メディアマインドを使った場合、広告の接触データが全部でますよね?それを細分化するとき、メディアのパスパターンを追いかけるだけではダメと考えています。クリエイティブのパスパターンも追うべきです。クリエイティブのパスパターンは、初回接触とコンバージョンに利いたパターンを重視しています。

有園:なるほど。

酒井:要は、初回向けと刈り取り向けの比率を出して、どのクリエイティブが初回向けで、どのクリエイティブが刈り取り向けかを算出します。この比率を指数化しておりまして、弊社ではアトリビューション・レイショ(Attribution Ratio)と呼んでいます。そのようにしてクリエイティブが整理できたら、モチベーションの高いユーザーには刈り取り向けのクリエイティブを割り当て、まったく興味のないユーザーには初回向けのクリエイティブを割り当てます。そして初回向けと、刈取り向けをユーザーに対して一つのシナリオに統合して配信する。弊社ではこの取り組みをシナリオ配信と呼んだりしています。シナリオというのは、ユーザーのモチベーションを育てるための配信の仕方で、決して配信条件を細かくしていくということではありません。条件を細かくしすぎても結果がよく分からなくなることの方が多いです。つまり、一言で言うとユーザーの気持ちの導線を見つけるということです。もっとも気持ちを動かしやすい、気持ちの導線パターン。気持ちの導線が見つかればシナリオ数は少なくして、シンプルに実施する方が結果がでやすいですし、検証もしやすいと思います。メディアのパスパターンだけではダメでクリエイティブのパスパターンを見る必要があると言ったのは、気持ちの導線設計が重要だと考えているからです。その結果、ユーザー育成ができ、母数が増えていきます。

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有園:それはコンバージョンの母数ですか?

酒井:そうです。ある程度の期間をおけば増えることが分かっています。なぜなら、もともと、モチベージョンが低い人に対してアプローチをしているので、モチベーションをクリエイティブコントロールによって徐々に上げていくからです。

有園:なるほど。その期間は30日から60日くらいとかですか?

酒井:弊社でおこなった人材会社の事例ですと、約一ヵ月後というデータが出ています。実は、それをやる前からインプレッションのコンバージョンデータと、自然検索のコンバージョンデータの波を照らし合わせたら、波のずれがちょうど一ヶ月でした。それによって検討期間はおよそ一ヶ月だろうと予測でき、その一ヶ月間にどれだけモチベーションを上げる広告に接触させられるかがキーポイントだと考えるようになりました。

有園:アドネットワークで配信した場合、自然検索の山が出てくるのは分かっていると。そして、御社のアトリビューション・レイショ(Attribution Ratio)を使って、初回、ラストとカテゴライズするわけですね。ちなみに、中間のクリエイティブは?

酒井:あります。両方に利くものも用意します。

有園:なるほど。そうやって、よりよい流れを作っていくんですね。

酒井:それをやれば一か月の間にユーザーに適切にアプローチし、モチベーションを徐々に高めることで、一か月後にコンバージョンしてくれる流れは作れると思っています。

有園:とても面白い話ですね。

酒井:実際は切り替えのタイミングもテストしていまして、何回目で初回向けから刈り取り向けに切り替えたらいいのか。これに関してはテストをして、フリークエンシーだけでなく、切り替えてからコンバージョンまでの日数を追っています。一回しか初回向けのクリエイティブをあてずに切り替えた場合の日数は、やはり長いです。しかし、初回向けを何回かあててモチベーションを上げてから切り替えた場合、コンバージョンまでの日数は短くなります。ある程度短期間で集中的に配信すればよりコンバージョンしやすくなるということですね。

有園:初回向きのクリエイティブは何回ぐらいあてるのが理想ですか?

酒井:このお客様の場合は、一ヶ月のうちに初回向けを6回あてて切り換えるのが一番良いというデータがでています。良いというのは、よりユーザーがCVするまでの期間を短くできるという意味です。広告主によって多少違いはありますが、それを上手く見つけていただければと思います。

有園:運用するものですよね。

酒井:そうです。勝ちパターンが見つかれば、逆算もできます。必要なCV数に対して必要なインプレッションはどれだけかということが逆算できるようになります。

有園:バナー広告の配信について、通常配信で最初はやるけれど、途中からリターゲティングに変えるイメージですね。通常配信で母数を稼いで、その後リターゲティングのクリエイティブをあてていく。実は、私も最近その辺の組み合わせを気にしています。通常、配信を6回あてると一度くらいサイトにきてくれますか?

酒井:クリックしないパターンが多いですからね。ただ、サーチで来る人もいるので、何かしら効果はあると思います。リターゲティングと違うのは、クリックしていないので、広告主のサイトに来ていない人においてもリターゲティングのようにクリエイティブを変えられます。

有園:そして、クロージングのクリエイティブをあてていくと。ちなみに、何回くらいあてればいいですか?

酒井:明確な数字はまだまだこれからですが、広告主ごとに適切な回数を模索しています。

有園:アトリビューションに関わって解ってきたことや見えてきたことがあると思いますが、その辺はどのようにお考えですか?

酒井:弊社がやっているアトリビューションは、ユーザーをいかに振り向かせてモチベーションを育成するかがやはり大切だと思っています。クリックだけで判断するのでなく、クリックしなかった人をどのように振り向かせるか、それが成果として出せるという部分が見えてきました。

有園:アトリビューション前後で、数字として見えてきていると。

酒井:広告主にもよるので一概には言えませんが、これまでの経験でいうと、アトリビューションを実施することで必ず結果が出ると思います。

有園:アトリビューションを実施して、お客様の反応はいかがですか?

酒井:良いです。媒体間のユーザーの重複データが見えるだけでも価値はあると理解いただけています。全体的に良い評価をいただいています。
有園:素晴らしいですね。

酒井:ただ、コストがかかるので、全ての広告配信を第三社配信に乗せられない場合があります。特に、アドネットワークですと配信量が非常に多く、配信量によっては莫大なコストがかかります。まずは、的を絞ってやりましょうというパターンからのスタートになってしまいます。絞れば絞るほどパスデータの精度は落ちるので、成功確率も減ります。本当は全部を乗せたいのですが、スタートとしてはスモールスタートですね。ただ、徐々に広がってはいる印象です。

有園:一番大事なのはお客様が満足することだと思いますが、そこが出来ているという理解でよろしいでしょうか?

酒井:はい。間違いなくご満足いただけていると思います。

■アトリビューションの課題

有園:アトリビューションの課題についてどのようにお考えですか?

酒井:やはり、データの量が多いので分析に時間がかかってしまうことですね。分析ではなく改善アクションを起こさなくては意味がありませんし、スピードが最優先されるので、極力シンプルにやらざるをえない状況です。PDCAサイクルをいかに短くするかには課題を感じています。季節要因が大きく影響するケースでは、前月の分析が翌月には使えなかったりしますので、分析に時間がかかってしまうと理想的なサイクルで回すのが難しくなりますね。

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有園:季節要因が影響する商材は、3月が需要期だと4月、5月は差し替えですもんね。

酒井:現状では、まだまだ人の力でやっている部分が大きく、分析をどれだけシステマティックに、シンプルにできるかは課題ですね。現状では、アトリビューションについての考え方も浸透しきっていないので標準がありません。つまり答えがないんですよね。ゼロからやらなくてはいけないので、大変です。

有園:今後は、ツール化も検討するのですか?

酒井:そうですね。ある程度、システマティックにしないとPDCAは回らないですからね。あとは、媒体社でも第三者配信を実施する場合、発注量を求められるなどの敷居もまだまだあります。それも実施の際には課題になりますね。

有園:ところで、業界でアトリビューションの流れは変わってきていると感じていらっしゃいますか?

酒井:最近、広告主からの依頼でアトリビューションマネジメントだけのコンペがありました。今までは一度もなかったので、これは業界としてもアトリビューションマネジメントの必要性が浸透し始めた兆しだと感じました。

有園:依頼内容はどのようなものですか?

酒井:課題はどこも一緒ですが、お客様は行き詰っています。施策を打ち尽くしています。特に刈取型のネット広告ばかりをやってらっしゃる広告主さんは改善できる施策に頭打ち感があるんでしょうね。だからこそ新しいやり方へのニーズがあると思います。

有園:弊社にもそのようなご相談は増えています。

酒井:有難い話ですが、人的な対応だけでは、対応しきれるかは不安な部分も正直ありますね。ただ、ここをやっていかないと本来の意味で「代理人」にはなれないと思っています。最近ではADテクノロジーが持てはやされていますし、配信方法も自動化が主流だと思います。弊社もADテクノロジーの分野は積極的に取り組んでいます。ただ、テクノロジーはテクノロジー。素晴らしい面もありますが、それが主になってはいけないと思っています。結局は人の気持ちを動かすために広告をやるわけですし、人の気持ちはテクノロジーだけでは動きません。テクノロジーをうまく使った上で、最後は人の気持ちと真正面から向き合うこと。それに尽きるんじゃないでしょうか。

有園:最後にメッセージをお願いします。

酒井:興味のない人をいかに振り向かせるか。振り向かせたことを可視化できるか。可視化した後に、繰り返し実行し続けられるか。ここが重要だと考えています。デジタル領域は数字が見えすぎるからこそ、数字絶対主義になりがちですが、可視化というのは数字だけを見るのではなく、数字をうまく使って全体を見渡せるようにしていくということです。本当にまだまだやることはたくさんありますね。そうゆう意味では、たくさんの同業さんと競争してアトリビューションのノウハウをお互いに深め、アトリビューションが業界全体のスタンダードになるようにしていきたいですね。競争がないと良くなりませんから。

有園:私が知る限り、売り上げ上位のインターネット専業代理店はアトリビューションを始めているという情報が入ってきています。

酒井:総合も、専業も関係なく、我々広告代理店は「代理人」です。広告主の、媒体社の、パートナーの、ユーザーの、代理人として業界全体でアトリビューションの良い事例を作っていきたいですね。アトリビューションマネジメントは本当に手間暇かかりますので、現状では広告主さんも一部の広告主さんだけが実践できていると思います。なぜならインフラ面での費用だけでなく、社内のスタッフが必要になりますし、複数の代理店とお付き合いしている場合は、それらをプロデュースしていかなくてはいけません。プロデュースできる人材や組織が広告主さん側にあるケースの方が少ないので、そういう意味では代理店が「代理人」、パートナーとしてそういった広告主さんのお手伝いしていくべきだと考えます。あとはできれば媒体社さん側からもアトリビューションの取り組み事例が出てくればいいですよね。もちろん弊社も媒体社さんの「代理人」としてお手伝いします!

有園:ところで、リッチメディアを使うお客様はアトリビューション分析にのせていますか?

酒井:まだですが、リッチメディアも当然今後やっていかなくてはいけないですよね。スタティックな広告よりも訴求力が違いますから、ユーザーを振り向かせやすいはずです。

有園:実は、私は、リッチメディアのビュースルー効果にも興味がありまして、そこを一緒にできる代理店を探しています。その辺は、酒井さんに期待してもいいですか?

酒井:ぜひぜひ。リッチメディアも一つの手段にすぎませんが、クリックしたかしないかの議論より、ユーザーの気持ちが動いたか、動かすための手段として有効か、その部分で取り組んでいきたいと思います。

有園:他にありますか?

酒井:モバイルとやスマートフォンなどデバイスをまたいだ場合のアトリビューションもやりたいですね。技術的にはまだまだできないこともありますが、できることから少しづつ、でもスピーディに。朝日広告社は総合広告代理店でありながら、ネット専業広告代理店のような一面もあります。まだまだ決して大きな会社ではないですが、大きくないからこそスピードとチャレンジは大事にしています。

有園:とても楽しみですね。本日は、どうもありがとうございました。

酒井:ありがとうございました。

聞き役: 有園 雄一(Yuichi Arizono)
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(END)

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【アトリくんの視点】早くからアトリビューションに取り組んでおられる朝日広告社さん。99%の人をどう振り向かせるかという考え方は基本ですが見落としがちですよね!Attribution Ratio、気持ちの導線パターンという考え方はすばらしいですし、MediaMindのシーケンス配信もこのロジックがあればさらに活きますね。今後の発展に期待です。アトリビューションについてはシナリオ設計力、クリエイティブが広告代理店さんの大きな強みになるんでしょうね。酒井さん、貴重なお話をありがとうございました!

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特別寄稿:第三者配信で活きるアトリビューションマネジメント – 最適化手法にみるエージェンシーの本質的価値とは(朝日広告社)

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今年に入り、デジタルマーケティング業界におけるアトリビューションマネジメントの盛り上がりは更に加速を見せており、具体的な事例やコラム、分科会等を通じて様々な議論がなされるようになった。朝日広告社もこのアトリビューションマネジメントに引き続き取り組んでおり、前回に続く第二弾としてAttribution.jpに寄稿させて頂いた。この回では、アトリビューションマネジメントに第三者配信アドサーバーを用いる意義とその活用方法、更にアトリビューションマネジメントに基づいた最適化フェーズについて考えていきたい。

はじめに、アトリビューションマネジメントに使用するソフトについて整理しておきたい。使用するソフトは大きく分けて二種類に分類される。一つはアクセス解析ツールを使用し、クリックベースでチャネル間のユーザー行動を記録するパターン。もう一つはMediaMindを始めとする第三者配信アドサーバーを用い、ビュースルーベースでチャネル間のユーザー行動を記録するパターンだ。大きく二つの選択肢がある中で、朝日広告社では第三者配信アドサーバーを用いたアトリビューションマネジメントを推進している。その理由は大きく二つある。

一つ目の理由は、ビュースルーの効果を正当に評価するためだ。生活者がある商品に対し需要を喚起するまでのステップには、ビュースルー、つまり広告を見た効果を加味するのが妥当だと考えている。例えクリックされなかったとしても、広告は生活者の需要を喚起することができるかもしれない。クリックベースの計測を行うことでその可能性の芽を一切取り去ってしまうのではなく、評価に柔軟性を持たせることがここでの主な目的となる。

通常のスタンダードバナーもそうだが、大容量で配信される豊かな表現が売りのリッチメディアや、媒体が語り手となりコンテンツとしての説得力を増すタイアップ広告は、例えクリックされなくとも特にその効果を発揮しやすい。これらの広告は、クリック数の多い少ないで評価すべき類のものではない。より正確に書くと、これらの広告をクリック量で評価すべきでないことは、デジタルマーケティングに従事される多くの方が認識しているものの、困ったことに効果を数値で表現することができなかったのだ。「目に見えない効果」が発揮されていることはこれまでの経験を通じて頭では分かるものの、「その効果が何であるか」は明示することができなかった。クリック偏重主義の世界では、効率的にクリックやコンバージョンを確保できない広告は自然な流れとして悪とされる。効果が明確に説明されないものは、イコール効果がないものとして処理され、削られていく。しかし、その広告は本当に削って良いものであったのかは誰も知らなかった、というのが真実なのだろう。こうしたクリック偏重主義は、マーケティングにおける正しい判断を狂わせ、結果的に需要を喚起するタイミングやチャンスを逸することで、最終的なコンバージョンを減少させてしまう。この悪循環を回避するための、第三者配信アドサーバーという選択なのだ。こうして評価していくと、広告効果とはインターネット広告にクリック偏重主義が台頭する以前の、広告本来の意義に立ち戻っていくことになる。

二つ目の理由は、その配信機能にある。MediaMindを始めとする高機能な第三者配信アドサーバーには、多彩なディスプレイ広告配信機能が実装されており、その機能は大きく二つに分けることができる。一つは時間帯や配信比率、順序等のローテーション機能、もう一つは地域情報やサイト訪問履歴、購買履歴に基づくターゲティング機能だ。

ここで特に注目すべきは、「順序」と書いた広告クリエイティブのシーケンス配信が可能な点にある。つまり、一人のターゲットの「需要を喚起する」ことを目的として、広告クリエイティブによる段階的な訴求の切り替えを、配信コントロールによって図ることができるのだ。この機能は、アトリビューションマネジメントに基づくディスプレイ広告の配信最適化において、心強い味方となってくれる。

※1. シーケンス配信……
ユーザーごとに接触するクリエイティブの順序と接触回数を任意でコントロールした配信。

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従来の最適化では、直接コンバージョンやクリックに対して効率の良い媒体・メニューのみを選定し、直接効果の効率論だけでCPAの悪いものを削り落としていく手法が取られてきた。リスティング広告では、CPAの悪いビッグワードの順位を下げて、浮いた投下予算でCPAの安価なミドル、スモールワードで全体CPAのバランスを取り、目標CPAに合わせる。これらの手法は、そう時間を要さずして必ず限界が来る。厳密には目標CPAは守れるかもしれないが、コンバージョン数を伸ばすことはできなくなる。前回の寄稿でも少し触れたが、「需要を喚起された人」の母数が増えない限り、市場は競合社とのパイの奪い合いに過ぎず、自社のコンバージョン数を維持することですら、とても難しいということだ。

リスティング広告に当てはめると、あるビッグワード(一般名詞)の検索数が突然増えることはとても稀で、増えた場合は何かしらの要因によって「需要が喚起された人」そのものが増えていることが多い。この限られた資源とも言える検索数に対し、市場に競合社が一社参入すれば、自社が得るコンバージョンは多かれ少なかれ減少する(実際は商品の競争優位性に依存する部分がある)。他社が攻勢に出れば、更に状況は悪くなるのだ。

この状況を打破するためには、ターゲットへ需要喚起を意図的に働きかけることが必要不可欠となってくる。ここで鍵となるのは、効果的なユーザーシナリオを発見・開発することにある。強いシナリオの種を発見し、そのシナリオを更にクリエイティブとして開発することができれば、シーケンス配信を使うことでユーザーごとに「適切なクリエイティブ」を「適切な順番」で「適切な回数ずつ」届けることが可能になる。ここでの適切とは、「態度変容に必要十分な」という意味を示している。第三者配信を通じたシーケンス配信を活用することで、効率的な態度変容を促すことができる可能性が開かれるのだ。

それでは、ディスプレイ広告配信の中で「需要を喚起」し、更には「態度変容を促す」ユーザーシナリオとはどうやって発見すればよいのか。朝日広告社ではこのユーザーシナリオの発見を目的として、第三者配信を通じたクリエイティブの検証を行なっている。この検証は、媒体だけでなくクリエイティブに対しても貢献度をスコアリングして評価を行なっており、ターゲットがコンバージョンに至るまでの一連のプロセスにおいて、クリエイティブがどの段階で作用しているのかを紐解くものだ。下記例は、クリエイティブごとのパフォーマンスをマッピングした図になる。横軸はユーザーが態度変容しコンバージョンに至る過程で、クリエイティブが作用したフェーズを表現しており、1を基点として数値が小さいもの程、需要が喚起されていない初期段階のターゲットに作用しているクリエイティブ、数値が大きいもの程、態度変容からコンバージョンへのクロージングに作用しているクリエイティブとなっている。

図1. クリエイティブマッピング

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最適化はこのマッピングを元に、初期段階のターゲットに対して効果的に作用するインサイトが何であるのか、クロージングに作用するインサイトが一体何であるのか、をクリエイティブ表現から紐解いていくところから始まる。このインサイトの発掘までを分析サイドで行い、分析結果に基づいたクリエイティブ開発はコピーライターやデザイナーがその役割を担っていく。アトリビューションマネジメントは、その分析手法や貢献度スコアの配分方法に注目が集まりがちだが、実運用では予算配分の最適化だけでなく、配信の最適化まで行なっていく必要がある。その過程では、インサイトの発掘からクリエイティブの開発、ユーザーシナリオに基づくシーケンス配信の活用といった一連のフェーズを、アナリスト、プランナー、コピーライター、デザイナーがチームとなりコミュニケーションを組み立てていくのだ。アトリビューションマネジメントは、データの統合や分析だけでなく、その次にあるステップとして「いかにコミュニケーションを設計していくか」が欠かせない大切なポイントとなる。

ここまでシーケンス配信による最適化について書いてきたが、そもそもアドネットワーク等の自動最適化機能がある媒体に関しては、自動最適に任せておけば良いのではないか、という考え方もあると思う。ここで考慮しなければならないのは、その最適化にはアトリビューションによるチャネル評価が現状加味されていない、という点だ。事実、朝日広告社の事例では、アトリビューションマネジメントに基づき人の頭脳によって設計されたクリエイティブとユーザーシナリオの組み合わせが、媒体サイドで提供される自動最適化のパフォーマンスを上回ることが分かってきている。

 今まさに活発な議論がなされているアトリビューションマネジメントだが、その定義や分析手法、貢献度スコアの配分方法にその本質はない。大切な部分は最適化にあり、分析結果を元に人の頭脳でターゲットの気持ちに想いを巡らせ、コミュニケーション設計をしっかりと行うこと、生み出されたコミュニケーション・プランをテクノロジーに乗せて適切にターゲットへ届けることにある。この最適化サイクルを実現するためには、プラニング、クリエイティブ、テクノロジーがシームレスに融合する必要があり、そこにこそエージェンシーが取り組まなければならない価値があるのだ。

こうして考えていくと、アトリビューションマネジメントは「コミュニケーションを考える」、というエージェンシーがクライアントへ提供する価値の原点に帰着する。アトリビューションマネジメントは、この盛り上がりを牽引されているコンサル、テクノロジーベンダー、クライアント、メディアといった立場の方々からだけでなく、本来的にはエージェンシーが発信し取り組まなければならない課題だと考える。朝日広告社は、デジタルマーケティングの総合最適化を図る手段として、アトリビューションマネジメントに今後も真摯に向き合っていきたい。

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株式会社朝日広告社
iコミュニケーション局
デジタルマーケティング部
前田 初

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【アトリくんの視点】
朝日広告社前田さん、お久しぶりです!2度目の登場、ありがとうございます。シーケンス配信による最適化は、アトリビューションとからめると非常におもしろいことができそうですね!それにしても後半部分はその通りだとアトリくんも感じてます。アトリビューションマネジメントそのものに意義があるのではなく、アトリビューションマネジメントは、より本質的なコミュニケーションを考えるための取り組みの一つに過ぎないということですね。そして、エージェンシーがその上で担うポジションについても考えさせられます。

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ad:tech Tokyo 2011オムニバスブースにてアトリビューションのパネル

ad:tech Tokyo 2011も間近です。

2011/10/28 14:20~14:50に、オムニバス社のブースで、アトリビューションのパネルディスカッションが行われます。Ustream配信もされます。

【パネリスト】
菅 恭一
株式会社朝日広告社
iコミュニケーション局局長補佐 兼 デジタルマーケティング部部長

有園 雄一
ATARA, LLC(アタラ合同会社)/ COO

【モデレーター】
矢野 茂樹
株式会社オムニバス / 取締役 COO

「アトリビューションが切り開く新しいメディアプランニングとは」
http://adtech-tokyo2011.e-omnibus.jp/archives/115

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【アトリくんの視点】
10/28にアトリビューションの話題を引っさげてブースに乱入します。さて、どんな話をするかな。グヒヒ。by ブラックアトリ (って冗談です。朝日広告社菅さん、オムニバス矢野さん、よろしくお願いいたします!)

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朝日広告社、統合型マーケティングダッシュボード 「Attribution Dashboard」をリリース

<企業リリース情報>

平成23 年10月3日
株式会社朝日広告社
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2011年10月3日、株式会社朝日広告社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:八代義治、以下朝日広告社)は、アタラ合同会社(本社:神奈川県横浜市青葉区、CEO:杉原剛)との共同開発により、オフライン・オンラインのあらゆる広告投下と各種レスポンスの相関関係を明らかにする統合型マーケティングダッシュボード「Attribution Dashboard」をリリースしました。

Attribution Dashboardは、近年、複雑化するマスメディア領域とデジタル領域を統合した分析を目的とし、マス広告やインターネット広告のメディア別の投下データ、オンライン・オフラインにおけるレスポンスデータ、および口コミなどの調査データ等、あらゆるデータを一つに統合することで投下とその効果の相関関係をスピーディに可視化することを目的に開発しています。

従来、マス領域とデジタル領域のデータを個別に管理するツールは数多く存在しましたが、Attribution Dashboardでは各データの一元管理し、「投下」とそれによる「反響」の相関関係を媒体別、時系列、エリア別に可視化、各広告の及ぼす影響やROIなどの評価をスピーディに把握することが可能です。これにより、従来キャンペーン終了後におこなわれていたデータ収集、分析業務がリアルタイムに展開されるようになり、キャンペーンの成功に向けた期間中でのPDCAと迅速な意思決定が可能になります。

■概念図

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■アウトプット例
※時系列レポート

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※エリア別レポート

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※Attributionにおける朝日広告社の取り組み
朝日広告社では、直接的な広告効果だけではなく、生活者が広告に接触しコンバージョンに至るまでの一連のプロセスを分析・評価・改善する「Attribution Management」に積極的に取り組んでいます。オンライン領域に限らず、オンライン・オフライン含めたユーザー導線の分析、LTV(Lifetime Value)の評価まで一貫性ある分析を実現し、総合広告会社としてあらゆるチャネルを超えた施策
のご提供を可能にすべく取り組んでおります。

※アタラ合同会社について
アタラは、企業のマーケティング課題解決で培ったノウハウとシステム開発力を融合したコンサルティング会社です。日本におけるアトリビューション(Attribution Management)を取り入れたマーケティングの拡大とプロモーション効果の最大化を支援します。

株式会社朝日広告社
[代表者] 八代義治
[設立] 1924年11月
[URL] http://www.asakonet.co.jp/
[所在地] 〒104-8313 東京都中央区銀座7-16-12 G-7ビル

アタラ合同会社(ATARA.LLC)
[代表者] CEO 杉原剛
[設立] 2009年09月 
[URL] http://www.atara.co.jp/
[所在地] 〒225-0004 神奈川県横浜市青葉区元石川町3712-12-D

[問い合わせ先]
株式会社朝日広告社
i-コミュニケーション局アカウントプランニング部 担当:川本、南里
東京都中央区銀座7-16-12 G-7ビル
TEL 03-3547-5625
E-mail : int-account@ad.asakonet.co.jp

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特別寄稿:朝日広告社のアトリビューション評価テスト結果報告

朝日広告社は2010年10月に、国内初のアトリビューション評価テストの取組みを開始すると発表した。

国内初の「Attribution Management(貢献度評価)」に関する評価テストの取組みを開始(2010/10/26)
http://www.asakonet.co.jp/news/detail.php?id=0000034

その結果が出てきたので、内容について寄稿をいただいた。

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最終クリックだけで評価する時代は終わった ~アトリビューション評価実践編~

朝日広告社では、2010年10月26日にアトリビューション評価テストの開始を発表した。今回は、この評価テストで行った検証と得られた結果についてまとめた。

まず、アトリビューション評価の技術的な基盤としてMediaMind社の有する第三者配信プラットフォームと、アドビシステムズ社の提供するAdobe SiteCatalyst®, powered by Omnitureを使用し、媒体間のコンバージョンパスからサイト訪問後の遷移状況まで検証を行った。アトリビューションの計測方法については様々な議論があるが、今回のケースではビュースルーも含む純粋な接触を評価対象とし、各媒体の貢献度については配点による重み付けは行わない事とした。投下予算の最適配分や施策としての運用は、配点のみで判断できる程にシンプルな構造にはないものと捉えたためだ。尚、本テストケースではアドネットワークとリスティング広告を対象とし、アトリビューション評価を行った。

媒体接触回数とコンバージョンの関係性
まず、アトリビューションマネジメントの検証に取り組むに当り、検証対象となる生活者がコンバージョンに至るまでに広告へ接触する回数の確認を行った。検証対象となるサンプル数において複数回広告へ接触したコンバージョンが極端に少ない場合、アトリビューションマネジメントの検証意義が薄れてしまう事から、はじめにサンプルについて確認した。

結果は図1の通り、複数回接触が63.8%と全体の6割以上が複数回広告へ接触していた。一方で、媒体へ1回のみ接触したコンバージョンは36.2%にとどまり、従来検証の対象とされてきた「直接コンバージョン」が全体の4割に満たない事が分かる(※図1参照)。つまり、「直接コンバージョン」の分析のみでは、適切な投下予算や媒体間の予算配分の判断材料としては不十分であると言える。生活者がコンバージョンに至るまでに接触したチャネルを紐解き、その貢献度を推し量るという行為は検証に値する命題である事が分かる。

それでは、複数回広告へ接触したユーザーに、質的な変化はあるのだろうか。質の評価指標として、今回のテストモデルであるリテールの業種では一回購入当りの売上単価を妥当と考え、媒体接触回数別に売上単価の比較を行った。その結果、広告へ複数回接触したグループは、1回接触のグループに比べ売上単価が高くなる傾向にあり、接触回数が増える程、売上単価に上昇が見られた(※図2参照)。本傾向から、売上単価の高いコンバージョンを更に増やすためには、広告による接触回数を増やす事で理解や共感を促し、ユーザーのモチベーションを上げていく事も重要な要素と考えられる。

図1. 広告接触回数別 コンバージョン構成

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図2. 広告接触回数別 売上単価

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広告接触回数とコンバージョンの関係性 (媒体別)
次に、広告への接触回数とコンバージョンの関係性について、媒体ごとに検証を行った。ディスプレイ広告とリスティング広告では接触者の属性、広告接触時のモチベーションも異なる事から、その関係性に差異があると考えたためである。結果、リスティングのコンバージョンは1回接触と複数回接触の構成比が半々程度であった事に対し、アドネットワークは複数回接触時のコンバージョン数、売上単価が大きくなる傾向にあった(図3, 図4, 図5, 図6参照)。この傾向から、前述の「広告により複数回接触し、理解や共感を促してモチベーションを上げていく」効果は、ディスプレイ広告の役割が大きい事が分かると同時に、生活者へ複数回接触する事で生まれる広告としてのアシスト効果の重要性が高いと考えられる。

図3. アドネットワーク 接触回数別 コンバージョン構成

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図4. アドネットワーク 接触回数別 売上単価

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図5. リスティング 接触回数別 コンバージョン構成

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図6. リスティング 接触回数別 売上単価

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コンバージョンまでの広告接触状況
ここまでは広告への接触回数とコンバージョンの関係性について俯瞰的な確認を行った。ここからはより具体的にアトリビューションの本筋となる媒体間のコンバージョンパスについて検証を行っていく。図7は、広告へ複数回接触したグループのみを抽出し、ファーストタッチからラストタッチまでの媒体間のコンバージョンパスを集計した結果だ。このグラフでは、複数回接触したコンバージョンデータのみを検証の対象としているため、ファーストタッチに計上される数と、ラストタッチに計上される数は同一となる(広告への接触回数が2回以上のデータのみを抽出しているため)。

このデータを紐解くと、リスティングは2回目~4回目の減衰率が高く、広告接触が急激に減少する傾向にある一方で、アドネットワークへの接触は2回目~4回目の減衰率が低く、複数回接触による態度変容が最終的なコンバージョンに繋がっている事が分かる。媒体の特性としてリスティングは、ラストタッチとファーストタッチがいずれも多く、初回接触と最終的な刈り取りの両方の役割を果たしている。一方で、アドネットワークはラストタッチの数に比べファーストタッチが多く、初回接触への貢献度が高い媒体であった。

一般的に、リスティングは目的意識が明確になった検索層を最終的に刈り取るための、クローザーの役割を担うと考えられがちだが、このテストケースではファーストタッチに対してもラストタッチに対しても効果を発揮するオールラウンダーとして機能している事が分かる。

一方で、検索エンジンでキーワードが日々検索される回数は、外的要素に依存する「急上昇キーワード」以外は限られており、ある日突然一般キーワードの検索回数が急増する事はない。つまり、キーワードの検索回数は有限の資源であると同時に、競合ひしめく検索結果では、限られた数のクリックモチベーションを持ったユーザーを競合各社で分け合っているに過ぎないのだ。

この事実を踏まえると、検索結果から集める「初回接触」を劇的に増加させる事は、リスティング単体の施策では至難の業だと言える。新規ユーザーへの接触を継続的に増やさなければ、未来のコンバージョンが芽吹かない事を考慮すると、アドネットワークを始めとするディスプレイ広告の重要性が高くなってくると言えるのではないだろうか。将来的なコンバージョンの母数を確保するためには、リスティング以外の施策においても、初回接触の種を蒔かなければならない。

図7. コンバージョンまでの広告接触

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図8. 初回接触に対する減衰率

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コンバージョンまでの広告接触状況 (アドネットワーク)
より実践的に運用手法を見出すには、媒体ごとの要素の検証を行う必要性があるため、アドネットワークではバナーサイズとクリエイティブのパターンについてコンバージョンパス集計を行った(図9, 図10参照)。

結果、728×90サイズのスーパーバナーは2回目以降の接触において減少幅が大きく、最終的なコンバージョンに対し複数回のフリークエンシーを要するサイズと言える。一方で、ファーストタッチの数は多い傾向にある事から、コンバージョンしたユーザーは初回のきっかけとして728x90サイズに接触している傾向が見受けられる。また、300×250サイズのレクタングルは2回目以降の接触で減少幅が小さく、ラストタッチまで持続的なアシスト効果が期待できるバナーサイズであった。同様に、クリエイティブについてもコンバージョンパスを確認したところ、パターンcが最も持続的なアシスト効果を発揮し、最終的な刈り取りにも有効な訴求である事が分かった。

図9. コンバージョンまでの接触状況 (バナーサイズ)

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図10. コンバージョンまでの接触状況 (クリエイティブ)

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コンバージョンと最適フリークエンシー (アドネットワーク)
それでは、最終的なコンバージョンに至るまでにフリークエンシーはどの程度必要なのだろうか。図17では、フリークエンシー別のコンバージョン率を算出し、1ユーザー当りの最適投下量について確認を行った。その結果、フリークエンシーは20回で最もコンバージョン率が上昇する傾向が見られた。

図11. フリークエンシー別のコンバージョン率

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ディスプレイ広告の最適配信
ここまでのアドネットワークの検証結果では、ファーストタッチとラストタッチそれぞれに効果的なバナーサイズ、クリエイティブから、コンバージョンに最適なフリークエンシーの傾向値を掴む事ができた。ディスプレイ広告単体の最適化手法としては、DSPをはじめとする広告配信環境が整った際、この傾向値を元に「何回目の接触時にどのクリエイティブをどのサイズで訴求すべきか」シナリオを設計する事ができる。この配信環境が変化した時こそ、コンバージョンパスの最適化が見えてくる。

コンバージョンまでの広告接触状況 (リスティング)
次に、リスティングのコンバージョンパスについて指名キーワードと一般キーワードに分類し、検証を行った(図12, 図13)。検索キーワードにおいて、いわゆるブランドワードを検索している指名検索層と、漠然とした一般キーワードを検索している層ではコンバージョンへのモチベーションも全く異なる事から、ここでは分けて検証を行う事とした。

結果、指名キーワードは、最終的なコンバージョンに直接的に貢献するクローザーの役割が大きい傾向にあった。一方で、一般キーワードがファーストタッチとなる件数は母数としても多く、リスティング運用の一環として一般キーワードの露出を絞ると、初回接触の入口を閉ざしてしまい最終的なコンバージョンの減少が予想される。この傾向を踏まえると、リスティングの効果指標はCPAやROAS以外に初回接触への貢献度を検証し、運用を行う必要性が高いと言える。

図12. コンバージョンまでの接触状況 (リスティング 指名キーワード/一般キーワード)

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図13. 初回接触に対する減衰率 (リスティング 指名キーワード/一般キーワード)

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コンバージョンまでの広告接触状況 (リスティング キャンペーン別)
前項では指名キーワードと一般キーワードの傾向を検証し、一般キーワードが初回接触の入口として機能している事を確認した。一般キーワード全体の傾向値を踏まえた上で、キャンペーンごとのコンバージョンパスの検証を行い、データサンプルと運用の方向性を次に示した。指名キーワードが混ざると比較にならないため、用意した2つのサンプルは、いずれも一般キーワードを運用するキャンペーンとしている。

初回接触の多いキャンペーン
このキャンペーンは、露出を絞ってしまうと最終的なコンバージョンの母数が減少する可能性が高い。初回接触の数が多いキャンペーンに関しては、CPAやROASに併せて露出の余力を確認しインプレッション数を確保する事で、初回接触の入口としての機能を保つ必要がある。(図14, 図15参照)

今回のテストケースでは初回接触の割合が非常に高く、複数回の接触を要するキャンペーンは、高単価の商材であった。単価が高い商品は一回の接触ではコンバージョンまで至る事は少なく、ユーザーは比較検討を繰り返しながらコンバージョンまで至っている事が読み取れる。このケースでは、最終コンバージョンだけで評価してしまうとせっかくのコンバージョンの機会を失ってしまう可能性がある。

図14. コンバージョンまでの接触状況

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図15. 初回接触に対する減衰率

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最終接触の多いキャンペーン
このキャンペーンは、コンバージョンに直結するクローザーの意味を持つため、積極的な露出の必要性がある。ユーザーが検索した際、上位に出稿されていなければクローザーとして取りこぼしを生む可能性があるため、上位掲載の確保が命題と言える。(図16, 図17参照)

図16. コンバージョンまでの接触状況

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図17. 初回接触に対する減衰率

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アドネットワークとリスティング 複数媒体を用いた横断型施策の可能性
ここまでは、媒体ごとにコンバージョンパスを確認し、検証結果から導き出す事ができる運用の方向性を提示してきた。一方で、媒体間のコンバージョンパスを確認した中で、当然媒体を横断して接触するユーザーもいる事が分かってきている。最後に、複数媒体を用いた横断型施策としての運用について、その可能性を検証した。

まず、リスティングが最終接触媒体となるコンバージョンの中から、アドネットワークへ接触したコンバージョンのみを抽出し、その重複率を確認した。その結果、重複は10.8%と低い数値となっており、このテストケースにおいてはアドネットワーク単体として効果を発揮している事が分かった(図18参照)。この数値に関しては、今回のテスト要件に依存する部分もあり、一般的にはもう少し高い水準にあるものと考えられる。

図18. リスティングのコンバージョンに占めるアドネットワーク接触割合

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ディスプレイ広告とリスティング広告の横断型施策をシナリオとして設計する場合、一つ描く事ができるのは「ディスプレイ広告のアシスト効果を利用し、指名検索キーワードに最終的な刈り取りの役割を担わせる」というパターンだ。今回のテストケースではアドネットワークとリスティングの重複は低いが、この重複分のうち4割以上が指名検索キーワードでコンバージョンしている事はデータから読み取る事ができた。つまり、シナリオの課題は指名検索の想起をアシストするクリエイティブやバナーサイズにあると言える。テストで使用したクリエイティブは、いずれも企業名やブランド名を前面には押し出していないものであったため、よりブランド訴求を強めたクリエイティブ等を今後検証していく必要がある。

図19. 媒体間におけるシナリオ

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図19のように今回のテストケースでは1~3三つのシナリオが見て取れた。

1のケースは、ディスプレイ広告だけで完結するパターン。前述の通り、初回接触に効くバナーサイズ、クリエイティブ、中間段階でモチベーションを上げていくクリエイティブ、クローザーとして効くクリエイティブ、コンバージョンまでに必要なフリークエンシー数はパスパターンを紐解く事である程度分かる。今後考えられる施策としては、クリエイティブシナリオの設計、DSPや第三者配信によるフリークエンシーコントロールにあり、接触回数ごとにクリエイティブを変える配信コントロールにより最適化を図る事ができる。また、コンバージョンに必要なフリークエンシー数を把握できるため、逆算のシミュレーションにより必要なインプレッション数を判断する事ができ、メディアバイイングが容易になる。

2のケースは、リスティング広告だけで完結するパターン。この場合は、クローザーとしてのキャンペーン(キーワード群)、初回接触や複数回接触が必要なキャンペーン(キーワード群)が分かるため、クローザーとして機能するキャンペーンは例えば常に1位表示させる、初回接触に有効なキャンペーンは最終コンバージョンのみの評価で露出を絞らずに、必要なコンバージョン数に応じて入札を行う等の施策が挙げられる。

3のケースは、ディスプレイ広告からリスティング広告へ遷移するパターン。この場合は、前述の通りいかにディスプレイ広告接触後の検索を想起させるかがキーとなり、検索想起させるクリエイティブ開発に注力する、ディスプレイ広告で複数回接触し、中間段階で商品訴求を強め商品やブランドを想起させた上で、最終的には商品・ブランドキーワードでコンバージョンさせる、といったシナリオ設計ができる。

このように、大きく分けて3パターンの分岐(業種や製品によっては分岐パターンが更に細かくなる)を想定した場合、各々のパターンごとの比率を算出することで、ある程度予算の最適投下割合が見えてくる。

おわりに
業界で俄かに盛り上がりを見せているアトリビューションではあるが、当社が導き出した結果が必ずしも正しいということはない。同時に、業界としてのスタンダードもまだない状態と言える。業種や広告主によっても様々な考え方や評価の手法はあるが、一つ言えることは従来の分析手法のようにクリックや、最終コンバージョン、CPAのみで判断していては当然ながら最適化には限界があり、本来的な広告の役割である「最終アクションだけでない役割」が見えなくなる。

つまり、この最終アクションだけに依存しない広告としての役割を明確にし、広告主にもっとも適した方法で、正当に評価していくことこそがアトリビューションなのではないだろうか。そのためには、媒体社や広告代理店から広告主までが、クリックやコンバージョンのみならず、ビュースルーやインタラクションといった要素を正当に評価していかなければならない。媒体社のスタンスとしてもクリックレポートのみではなく、例えば第三者配信を受け入れる事でビュースルーを正当に評価する姿勢で販売する必要があり、広告代理店もクリック率の高さやCPCの安さといった表面的な数字のみで販売してはならない。広告主は表面的に提示された指標だけで購入してはならないのだ。この姿勢を業界のスタンダードに是非して欲しい、していきたいと考える。

最後に、今回のテストケースで用いた分析手法はそれほど難解なものではない。一方で、学問的な評論を繰り返していても実践に結びつかないため、皆さんもまずは是非実践してみてほしい。今回のケースのように、実際にやってみる事で面白い結果は自ずと見えてくる。まずは実践。このスタンスが最も重要であると考える。

また、今回のテストケースでは、アドネットワークとリスティング広告をテスト対象とし評価を行ったが、当然ながらプレミアム広告、リッチアド等を含むと、ディスプレイ広告接触後の検索想起はアドネットワークとは違った結果になってくるはずである。朝日広告社では、今後もアトリビューションマネジメントのテストケースを継続的に増やす事でチャレンジを続けると同時に、サービスとしてより最適化されたデジタルマーケティングを提供していく。次回以降はプレミアム広告、リッチアドのケースでもテスト結果を発表していく予定だ。

株式会社朝日広告社
インタラクティブコミュニケーション局
インタラクティブコミュニケーション部
前田 初

ダウンロード用PDFファイルはこちら(朝日広告社_アトリビューション評価_2011-0228.pdf)
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【アトリくんの視点】
まずは日本初の本格的なアトリビューション解析を行った事例ということで、朝日広告社さんの取り組みはすばらしいと思います。
アトリくんが言いたいことはすべて「おわりに」に含まれてますね。媒体社、広告代理店、広告主がどういう意識で広告、アトリビューションと向き合うべきか、という点。あと、今回はあくまでも一つの見方を提示したわけであるが、大事なのは「まずやってみること」。試行錯誤は必須。継続も必須。

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