Razorfish

特別寄稿:電通レイザーフィッシュのアトリビューションの取り組み(3)

電通レイザーフィッシュによるアトリビューションの取り組みに関する特別寄稿第3回目(全3回)。最終回です。

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7. ケース3 : ディスプレイ広告とサーチの関係性
続いては、本サイトで多く取り上げられているディスプレイ広告とサーチの関係性についてのケースです。オンラインビジネスのサービスで、資料請求、申込がサイトの目的です。本件では、MediaMindを活用したケースです。検証のポイントは以下の通りです。

  • MediaMindのチャネルコネクトフォーサーチ機能(CC4S)を活用し、アドネットワーク、サーチのコンバージョン数をMediaMindというプラットフォームで重複を省き、評価する。
  • MediaMindの広告接触履歴分析機能を用い、クリックしたユーザー、接触したユーザー(ここでは、広告をクリックせず、Cookieでマーキングされたユーザーを指します。その後、コンバージョンした場合は、View conversionと見なす)を分析する。
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この分析では、予想以上にアドネットワーク経由のコンバージョンが多く、それに伴いアドネットワークのCPAに変化見えた。検索においては、Google、ヤフーからの媒体によるコンバージョンデータが250件であったが、MediaMindといったプラットフォームで一元的に見ると、100件となった。案件の特性や業界カテゴリーにより、比較的極端な結果となったが、広告配信ツールでこのように複数のオンラインマーケティングの手法に対して、コンバージョンの重複を省くトラッキングを行うと、今まで得られていたCPAデータにも変化が見られることが分かる。

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8. アトリビューションの今後

●ソーシャルメディアにおけるクリックデータの取得
アドネットワーク広告への接触や検索行動の他に、当然オンラインユーザーのソーシャルメディア内の行動も増えてくる。Twitter, Facebookでは広告配信ツールにおける間接効果のトラッキングはできないので、最低でもクリックベースによるトラッキングをすることで、アドネットワーク、検索、ソーシャルといった範囲でアトリビューションの手法を模索できると考える。

●ソーシャルメディアにおけるクリックデータ以外のデータとの関連性
また、ソーシャルメディアでのユーザーの行動は、ソーシャルメディアサイト内の広告のクリック、他人の口コミのなかにあるリンク(例えば、xxよかったよ。サイトへのリンク)のクリック以外に、当然ながら、自発的なテキストベースの感想(口コミ)を発信することのほうが多い。

この場合、クリックデータだけを追跡しても、ソーシャルメディアでの口コミというの行動を見過ごすことになりかねない。このようなソーシャルメディア上の会話はやはりソーシャルメディアリスニングツールで「会話データ」として、別途多角的にモニタリングする必要がでてくる。

最後にまとめとなるが、ユーザーの行動はますます複雑化し、その行動を正確に100%トラッキングするのは理想的ではあるが、「あるべき論」で終わってしまう可能性もある。当然、より多くのデータを取得すれば、ツールのコストや、取得したデータの分析コスト(自社のリソース、またはアウトソースするにせよ)が増えるわけで、全ての行動データをトラッキングすることはできない。各企業のオンラインマーケティング活用において、本当に重要かつ自社のブランディングや売上アップに影響力の高い部分(例えば、KGIに一番影響力のある施策の部分)に軸を絞り、企業独自のアトリビューションモデルを構築するのが現実的なのではないかと考える。

株式会社電通レイザーフィッシュ
マーケティング室 
清水秀和

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【アトリくんの視点】
ソーシャルは今後の課題ですね。一時期はFacebookでもビュースルーコンバージョンが取れていたのですが撤廃されてしまったようです。かなり前からアトリビューションの取り組みをされていた電通レイザーフィッシュさん、清水さん、とても説得力がありましたし、本当に勉強になりました。ありがとうございました!

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特別寄稿:電通レイザーフィッシュのアトリビューションの取り組み(2)

電通レイザーフィッシュによるアトリビューションの取り組みに関する特別寄稿第2回目(全3回)。

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5. ケース1 : View Conversionを含めたROI評価
それでは、実際のケースを見ていきましょう。通販サイトでDouble Clickを活用したケースを取り上げます。View Conversion、ROIをエージェンシー側が正確に把握し、ROIを倍増させたケースです(ROIの算出方法は、通常SEM施策などで使われている、広告費、利益額を用いた計算式で算出)。

  1. 新規参入の通販サイトで、認知拡大と新規顧客が課題
  2. 間接効果を評価する文化がグローバル企業なので、すでに浸透

この通販サイトのサービスは市場参入時のタイミングではターゲットが限られており、認知拡大を達成しつつ、売上にも貢献する手法として、第三者配信による広告配信、間接効果を含めた広告評価手法を選ばれました。目標とするROIを達成するために、弊社で以下のような戦略を策定した。

  • View / Click Conversionを把握、ROIの算出時は両方を評価する
  • 「より多いクリック、誘導数」は大きな意味をなさない →CTRの向上はそれほど重要ではない(購入する人を集客したいから)
  • CPAフォーカスではなくROIフォーカス →利益率の視点でOptimizationを継続(CPC700円でもROIが達成していれば、それが正解とする)
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結果としては、上記のような数値が得られた。「高いCPCでもROI視点では見合う」、「セグメントもある程度できて、安いCPCだけど、ROIは良くなかった」といったケースを踏まえ、実際のオプティマイズの現場では、むやみにCTRが高いメディアを選択しない判断を行った。CPC、CTR視点で改善方法を考えてしまうと、気がつけないインサイトと言える。間接効果を測れば、ROIが見合う媒体は多数存在することになり、以下の2点の発見があったと言えます。

  • CTRが低くても、View Conversionも含めて評価すると、メディア選定が異なってくる
  • 媒体により、獲得できるView Conversion数に変化が見られる。仮説を立て、テストを実施することで、具体的な数値が得られる。

(追記として、このオプティマイゼーションでは獲得数よりも効率を重視している)。

6. ケース2 : 間接効果を含めたクリエイティブ評価
続いては、間接効果をクリエイティブ評価でも役立てたケースです。CTR視点だけでなく、View Conversionを含めたROIベースで検証します。検証ポイントは以下の通りです。

  1. 直接効果、間接効果の両方の視点で評価する
  2. 広告に接触し、Conversionしたユーザーがいくらの利益が生んだのか?どちらのクリエイティブがROIを達成したのか?
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Creative A / Bを比較し、結果を分析しました。CTRの点では、Bが高い。View Conversion数の点ではAが50、Bが10。ROIの点では、AがView Conversionを多く獲得し、優位であったという結果になりました。この分析では以下のようなインサイトが発見できました。

  • Aは、テキスト中心のメリットを訴求したバナー。クリックしなくても視覚的に記憶にとどまるメッセージの伝達に成功していた。それがView Conversion増加に貢献(その後のユーザーアクションに繋がる)。
  • Bは、よりブランド寄りの抽象的なバナー。「なんとなくかわいい・いいな」と思ったユーザーがクリックする傾向にあり、CTRは上昇する。しかし、視覚効果として、広告接触後、明確に覚えられるまでに至らなかったと推測(メッセージが覚えられ、行動を引き起こすには十分なメッセージではなかったと判断)

以上のような分析も間接効果をとっていなかったら、Click Conversion数では同じ、CTRで勝るCreative Bが選択されていたのではないでしょうか。アトリビューションモデルとはこのように、実施したキャンペーンのデータの見方(角度やレンズのフィルターとも言えます)に大きな影響を及ぼし、効果に対する今までの評価の方法を大きく変える可能性が大きいのです。次回では、ディスプレイ広告とサーチの関係性を話したいと思います。

株式会社電通レイザーフィッシュ
マーケティング室 
清水秀和

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【アトリくんの視点】
取り組みによりますが、CPC、CTR偏重の評価に一石を投じる内容ですね。数字で実証した点が大きいのと、低いCTRのサイトでオプティマイズを行った点は興味深いですね。一部のグローバル企業の取り組みは確かに進んでいますし、評価のための環境も、組織の理解もありますね(欧米ですでにやっているので日本でも、という話は確かに多いです)。第3回目(再来週予定)もお楽しみに!

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特別寄稿:電通レイザーフィッシュのアトリビューションの取り組み(1)

電通レイザーフィッシュは、米国Razorfishにおける手法やノウハウを活かしつつ、日本において、かなり早くからアトリビューションに取り組んできた。

その背景、考え方、取り組み内容を聞く機会があり、今回寄稿をお願いした。3回に渡って取り上げる。

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1. 寄稿の背景
今回、Attribtuion.jpというサイトを拝見し、とても興味深いテーマと感じました。なぜならば、弊社では2007年のRazorfishとの資本・業務提携後、この分野に積極的に取り組み、専門チームを設け、実際のクライアントとともに、多数の事例を作り上げてきたからです。今回は3回にわたり、実際のケースも掲載し、業界でのAttribution Modelに対する理解をより深めたいと考えます。

私は2008年にRazorfish シアトルオフィスにて3か月間勤務し、エージェンシーのビジネスモデル、第三者配信、分析業務を学びました。第三者配信ツールを単なるツールと捉えるのではなく、オンラインエージェンシーの存在意義にも直結するモデルを構築する基幹ツールであったと当時を振り返ります。

広告配信をエージェンシーが実施することで、メディア代理ではなく、大量のCookieデータ、間接効果(View Conversion、Post Impressionなどを指します)、ユーザー行動データ、売上データを扱い、分析主体の業態で大きな付加価値を生むコンサルティングを提供していました。例えて言えば、メディア投資信託会社のようなサービスをRazorfishは当時から提供してました。メディア販売主体ではなく、あくまでもビジネスゴールに沿ったROI視点で、クライアントと長期的な関係を築いていたのが印象的です。

2008年から、弊社は複数社のグローバル企業に第三者配信サービスを提供。Atlas, Double Click, Media Mindなどのツールを用い、社を挙げて各担当者が広告配信管理業務をスタートさせました。そこで得られたノウハウをメンバーで共有し、ラーニングを蓄積。今回は、それらの実務で得たノウハウ、実務レベルで弊社コンサルタントが行った分析業務を取り上げます。

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2. 第三者配信の台頭
欧米では2003年頃から、オンラインエージェンシー、広告主を中心にAtlas、Double Clickといった第三者配信ツールを用いて大量のCookieデータの取得し、分析やデータ統合を積極的に推進してきた背景があります。2009年以降は、データ分析がさらに進化し、今でいうところのAttribution Model、Atlasの ”Engagement Mapping”などがオンラインビジネス企業に積極的に導入され、最適な予算配分の模索が始まったと言えます。現在、Efficient Frontier、Core matrixなど専門企業が詳細な分析サービス、ツール提供を始めており、2010年は日本にとっても、Attribution Model元年と言えるのではないでしょうか。

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3. 間接効果(以降、View Conversion)の意味
実例を示す前に、一度、広告配信領域におけるView Conversionについて理解したいと思います。例としてマス広告とオンライン広告の比較から考えてみましょう。通常、マス広告は露出量、想定接触者数に対して対価を払うモデルです。しかし、マス広告接触後の消費行動1つ1つの接触に対する売上促進を正確に測定するのは難しいと思われます。反面、ネット広告では接触(閲覧・クリック)後の購買行動が正確に把握できます。以下のようなユーザー行動を例としてみよう。OOHを見て、コンビニに行き、炭酸飲料を購入するという一般的な行動です。

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欧米では、上記のマス広告でのユーザー行動をシンプルにオンライン上のユーザー行動にも当てはめることで、業界内(エージェンシー、配信ツールベンダー、媒体社)に自然とView Conversionを測定する文化を形成させたと言えます。しかしながら、日本市場では、なぜがオンライン広告になると、クリック行動のみでメディアが評価され、クリックという限られたユーザー行動を中心にモデリングされているのが現状ではないでしょうか。

4. メディア評価を行う現場
それでは、現場においてこのようなView Conversionの貢献度をどのようにして決めているのでしょうか。実際にはすべてのオンライン広告のすべての接触効果の貢献を認めるか(クレジットを与えるか)は、キャンペーンを開始する前にクライアントと以下の点で協議をし、決定されます。

  1. 市場におけるブランドの浸透度、成熟度
  2. ビジネスモデル
  3. 認知拡大を目的とした広告露出量(マス広告に触発され、ネットでアクションする可能性もあり得るため)

一般的にはネットビジネス企業の場合、ビジネス成長期は100%の間接効果にクレジットを与え、その後、数年かけて成熟期に入るとともに、クレジット率を70%, 50%と減少させていく傾向にあるようです。以上が簡単な背景と概要です。次回からは具体的なケースを取り上げたいと思います。

株式会社電通レイザーフィッシュ
マーケティング室 
清水秀和

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【アトリくんの視点】
先日、この寄稿の件で清水さんと打ち合わせた際、色々お話しができてとても勉強になりました。2008年に米国で学んだということは、米国はそれよりも以前にかなり取り組んで広告効果を評価する手法を確立してきたということです。第三者配信をベースにしたView-through conversionも含めた評価になっている点は、第三者配信が普及している米国で、かつ、大手企業のキャンペーンを手がけるRazorfishだからとも言えますね。日本においては第三者配信はこれからですが、すでに手がけた事例をベースに、市場を牽引してほしいですね。第2回目(来週予定)、第3回目(再来週予定)もお楽しみに!

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